資料1 次世代深海探査システム委員会(第1回) 議事録

1. 日時: 平成28年1月8日(金曜日) 13時00分~15時15分
2. 場所: 文部科学省5F3会議室
3. 議題
(1) 次世代深海探査システム委員会の開催について
(2) 深海探査に携わる関係機関へのヒアリング
(3) 今後のスケジュール

4.出席者
【委員】道田主査、浦委員、織田委員、小原委員、瀧沢委員、竹内(章)委員、竹内(真)委員、竹山委員、辻本委員、西山委員、中野委員、山崎委員、大和委員
【文部科学省】 田中研究開発局長、森大臣官房審議官、林海洋地球課長、三宅海洋地球課課長補佐 他
【オブザーバー/説明者】海洋研究開発機構 堀田理事、磯崎海洋工学センター長 他

5.議事録
【道田主査】  科学技術・学術審議会海洋開発分科会、次世代深海探査システム委員会、第1回を開催いたします。
申しおくれましたが、私は審議会の海洋開発分科会の浦辺分科会長からご指名をいただきまして、本日付の、先ほど、指名書ございますけれども、主査を務めさせていただきます東京大学の道田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
委員会の開催に当たりまして、主査として一言ご挨拶を申し上げたいと思います。
年初の大変お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。
後ほど、詳しいご説明があるかと思いますけれども、我が国の深海探査システムのうち、しんかい6500も建造から既に二十数年を経過しておりまして、世の中の情勢も変わっているということから、次世代の深海探査システムを検討する時期に来ている。これは皆様、同じ認識に立っておられることと思いますが、今回、この委員会に求められているのは広い立場から深海のシステムがどうあるべきか、探査システムはどうあるべきかということを議論してほしいということだそうでございますので、皆様、活発なご意見をいただきまして、よりよいシステムのアイデアの宝庫みたいなもものができればいいかなというふうに思っております。
私自身、専門は海洋物理学でございまして、必ずしも深海をこれまでやってきた者ではないんですけれども、少し引いた立場から何かものが申せるということから主査に指名されたというふうに理解しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、早速でございますけれども、事務局から委員及びご出席者の方々のご紹介をお願いいたします。
【事務局】  それでは、座席順で恐縮ではございますが、お名前のみご紹介させていただきます。ご所属等につきましては参考資料1をごらんいただければと思います。
まず、浦委員でございます。
【浦委員】  浦です。よろしく。
【事務局】  織田委員でございます。
【織田委員】  織田でございます。よろしくお願いします。
【事務局】  小原委員でございます。
【小原委員】  小原でございます。よろしくお願いいたします。
【事務局】  瀧澤委員でございます。
【瀧澤委員】  瀧澤でございます。よろしくお願いいたします。
【事務局】  竹内章委員につきましては、交通機関の遅れにより、若干遅れての参加となっております。
続きまして、竹内真幸委員でございます。
【竹内(真)委員】  竹内でございます。よろしくお願いします。
【事務局】  竹山委員でございます。
【竹山委員】  竹山です。よろしくお願いいたします。
【事務局】  辻本委員でございます。
【辻本委員】  辻本でございます。よろしくお願いいたします。
【事務局】  西山委員でございます。
【西山委員】  西山です。よろしくお願いいたします。
【事務局】  中野委員でございます。
【中野委員】  中野です。どうぞよろしくお願いします。
【事務局】  山崎委員でございます。
【山崎委員】  山崎です。よろしくお願いいたします。
【事務局】  大和委員でございます。
【大和委員】  大和でございます。よろしくお願いいたします。
【事務局】  なお、藤井委員につきましては、本日ご欠席とのご連絡をいただいております。
続きまして、本日は海洋審査の研究開発に携わっている代表機関として国立研究開発法人海洋研究開発機構から堀田理事。
【堀田理事】  堀田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【事務局】  磯崎センター長。
【磯崎センター長】  磯崎でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【事務局】  オブザーバーとしてお越しいただいております。
最後に事務局をご紹介いたします。
文部科学省研究開発局長の田中でございます。
【田中局長】  田中でございます。よろしくお願いいたします。
【事務局】  大臣官房審議官、森でございます。
【森審議官】  よろしくお願いいたします。
【事務局】  研究開発局海洋地球課長の林でございます。
【林課長】  林でございます。よろしくお願いします。
【事務局】  私、海洋地球課課長補佐の三宅でございます。よろしくお願いいたします。
【道田主査】  よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
本委員会は昨年の7月15日に開催された第44回海洋開発分科会において、次世代深海探査システム委員会の設置が決定されたところでございます。
本日第1回の開催ということでございます。ということですので、開催に当たりまして、田中局長より一言、ご挨拶をお願いいたします。
【田中局長】  文部科学省研究開発局長の田中でございます。委員の皆様方におかれましては、日ごろより海洋分野の研究開発にご理解を賜り、また、このたびはこの次世代深海探査システム委員会の委員を快くお引き受けいただいた上で、本日、大変お忙しい中、お集まりいただいたこと、誠にありがとうございます。
次世代深海探査システム委員会の開催に当たりまして、一言ご挨拶を申し上げます。
本委員会は昨年7月に開催をされました科学技術・学術審議会の海洋開発分科会におきまして、深海探査システムのあり方について調査を行うことを目的に設置されたものでございます。本日はその第1回ということになってございます。
我が国では研究機関や大学などにおきまして、深海探査が実施されております。特に今日もご出席いただいておりますが、国立研究開発法人の海洋研究開発機構におきましては有人深海潜水調査船しんかい6500や、かいこう、あるいは、うらしまといった無人探査機を保有しておりまして、深海生物、海洋鉱物資源や地震防災の分野などにおいて、これまで実に多くの成果を上げております。
そのうち、しんかい6500でございますけれども、既に建造から25年以上の年月が経ってございます。その間、非常に多くの科学的な成果ももたらしておりますし、また、非常に多くの映画や小説の題材としても取り上げられてございます。たしか、私の記憶では宇宙飛行士の毛利衛さんもしんかい6500には乗って、実際、成功された経験もおありだというふうに思っております。
ただ、今、申し上げましたように既に25年以上の年月がたったということで、当時の設計や建造に携わっていた方々、そういった関係者の方々が現役では少なくなってきているという状況でございます。
また、近年まではしんかい6500が世界一深く潜れる有人の潜水船でございましたけれども、諸外国におきましても深海探査機の建造などが行われているところでございまして、深海探査の優位性も危ぶまれかねない状況にあるということでございます。
日本は四方を海に囲まれておりまして、さらにプレートの沈み込み帯に位置しているということでは、世界有数の深海フィールド、非常に学術的にもおもしろい深海フィールドを有しているところでございます。
今後とも、深海分野において世界トップレベルのインフラや技術を保有し、世界の深海分野を我が国としてはリードすべきであろうと考えてございます。
委員の皆様方におかれましては、本委員会におきまして次世代の深海探査システムのあり方について活発にご議論いただきまして、ご示唆をいただければ幸いでございます。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
【道田主査】  田中局長、ありがとうございました。
それでは事務局より配付資料のご確認をできますでしょうか。
(資料確認)
【道田主査】  それでは、早速議事に移りたいと思います。
まずは議題1でございますが、当委員会の運営規則につきまして、事務局よりご説明をお願いいたします。
【事務局】  それではご説明いたします。資料につきましては資料1及び参考資料2から4までをご参照いただければと思います。
本委員会につきましては参考資料2のとおり、親委員会である海洋開発分科会のほうで委員会の設置が決定しております。こちらは平成27年7月15日付の海洋開発分科会決定として本委員会の設置の決定が行われております。
また、委員、主査につきましては参考資料4のほうで、分科会の運営規則ではございますが、第2条第2項と3項で、委員会に属するべき委員につきましては分科会長が指名するというふうにされておりまして、分科会の浦辺会長から道田主査及び各委員の指名をさせていただいたという形になっております。また、第2条第9項におきまして、委員会の議事につきましては主査が委員会に諮って定めるとしておりますので、今回、資料1の運営規則案を示させていただいております。
資料1のほうをごらんください。こちらが本システム委員会の運営規則でございます。基本的に通常の委員会規則をベースにつくっておりますが、基本的には第2条で作業部会を置くことができること、第3条で委員等の過半数が出席しなければ会議を開くことができないこと、第4条については資料の公開について、第5条については議事録の作成及び公表について、第6条について必要がある場合の臨時の出席について、その他、規則については第7条で必要な事項はその都度、主査が委員会に諮って定めるという形で案を作成させていただいております。
以上でございます。
【道田主査】  ご説明ありがとうございました。
ただいま、ご説明いただきましたとおりのこの委員会の位置づけ等でございますけれども、何か、特に運営規則の案についてご質問、ご意見等ございますでしょうか。
よろしいですか。もうちょっと見てみましょうか。大丈夫ですか。
通常のこの種の委員会としてつくられているということですから、特に問題ないと思いますけれども、よろしければ、特に問題なければ、これで本日付で規則を決めたということにさせていただければと思います。よろしいでしょうか。
ありがとうございます。
それでは、続きまして、次世代深海探査に関する背景、近年の動き、今後の議論のスケジュール等につきまして、また、事務局からご説明をよろしくお願いいたします。
【事務局】  資料2-1及び2-2に基づきまして、ご説明いたしたいと思います。
基本的には資料2-1を使ってご説明いたします。次世代深海探査システム委員会の設立経緯及びスケジュールでございます。「1.次世代深海探査システム委員会の設立経緯」ということですが、先ほど、運営規則のときにもご説明させていただきましたが、こちらの親委員会である海洋開発分科会において、次世代有人調査船システムの検討を行いまして、そのシステムの開発に向けた検討を実施すべきとの評価を行ったところでございますが、その際に以下の点について留意すべきとされております。
1つ目ですが、次世代有人潜水調査船システムへのニーズや目的を具体的に明らかにすべきこと、2つ目ですが、自律型無人探査機(AUV)、遠隔操作型無人探査機(ROV)との役割の違い等を精査すること、3つ目ですが、国民の理解の増進や産業界への波及効果という面を踏まえ、新たな技術の導入を検討することとされております。また、これを踏まえて、7月15日にこちらの委員会が新規設置をされたという現状でございます。
続きまして、「検討の進め方案」でございます。読み上げさせていただきます。
国立研究開発法人海洋研究開発機構が運用する有人潜水調査船「しんかい6500」については、建造から25年以上が経過した現在、建造に係った技術者の定年退職等により製造メーカー等の知見や技術が失われようとしていること等から、後継船の検討を行うべき時期にある。
また、運用開始からも25年目を迎えており、その間の調査と成果は国内外で評価されている一方で、無人探査機(ROV)や自律型無人探査機(AUV)の進歩も見られるところである。
このため、「しんかい6500」のこれまでの成果や有人潜水調査固有の必要性についてヒアリング等を実施すると共に、ROVやAUV等の無人潜水調査との関係等も踏まえ、今後の深海探査システムの在り方について総合的に検討する、としております。
裏にまいりまして、こちらも議論の進捗によって柔軟に見直していきたいと思いますが、大まかな「スケジュール案」を示させていただいております。
本日1月8日、第1回をやらせていただきまして、委員会の背景、設立経緯、今後の進め方等について議論いただければと考えております。また、JAMSTECからの深海探査のヒアリングを行いたいと考えております。
その後、2回か4回程度ですが、引き続き、JAMSTECにおけるヒアリングや各分野における深海への取り組みについてのヒアリングを実施したいと考えております。それから第5回、第6回にかけて国家基幹技術の視点から今後の深海探査の重要性であったり、民間企業からのニーズ、また、これまでの報告、議論のまとめということで第6回以降につきましては今後の次世代深海探査システムの方向性の議論、第7回ということで7月ごろをめどに、本委員会として次世代探査システムの中間取りまとめ、平成29年度概算要求への提言という形で、7月をめどに一旦、中間取りまとめというスケジュール感で進めさせていただきたいと思っています。それ以降、第8回以降につきましては最終取りまとめ案に向けた議論を進めさせていただければと考えております。
資料2-2につきましては、先ほどの設立の経緯及び近年の海洋基本計画等、政府での議論及び計画・運営につきましてまとめた資料になっております。
また、最後に深海に関する近年のメディア等での動きについてもまとめさせていただいていますので、適宜ご参照いただければと思います。
以上でございます。
【道田主査】  ご説明、ありがとうございます。
ということで、設立の経緯、趣旨、それから今後のスケジュールについてご説明をいただいたところですけれども、ごらんいただきますとわかりますように、かなり難しい課題を仰せつかっているかなという気もいたしますし、スケジュール感につきましては7月ごろまでに取りまとめということですので、かなり急ピッチに議論を進めていく必要があるということをご理解いただければと思います。
毎月1回程度の委員会という頻度になろうかと思いますので、お忙しい先生方にとっては大変かと思いますけれども、ぜひよろしくご協力をお願いいたします。
なお、今、ご説明いただいた今後のスケジュール等につきましては、後ほどまとめてご意見を拝聴いたしまして、今後に生かしていきたいというふうに思っておりますので、とりあえず、現時点ではこれを見ていただいて、大体こういうことが求められているということをご理解していただいた上で、今日の議論に入っていきたいなというふうに思います。
それでは、次の議題です。今日のメーンの部分でございますけれども、「深海探査に携わる関係機関へのヒアリング」ということで、特にこの分野を担ってこられております海洋研究開発機構から今日ご出席いただいておりますので、JAMSTECの堀田理事、よろしいでしょうか。ご説明をよろしくお願いいたします。
【堀田理事】  開発担当理事の堀田でございます。
今、主査からお言葉をいただきました。私ども、深海探査の技術、それからそれに使ったサイエンス、そういうものを担ってまいりました。一連の説明の中で、順番として、まず私どもの法人の概要、それまでの法人の設立の経緯、そして、その中で深海探査システムをどういうふうに今まで発展させてきたかというところをご紹介させていただこうと思います。
最初に、概要としては、まず私どもの紹介のビデオがございますので、それをごらんになっていただいて、それからこのお手元の資料を使ってご説明させていただきます。
(ビデオの紹介)
既にJAMSTECのことをご存じの方はいらっしゃると思いますけれども、今、こういう概要であるという、法人の説明をさせていただきました。
資料3-1からご説明をさせていただきます。今、私どもがやっている活動を動画でごらんになっていただいたんですが、今回、深海探査システムをご議論いただくに当たって、そもそもの私どもの法人を知っていただくという背景をご理解いただければというふうに思っておりまして、本日、この資料を作ったところでございます。
目の前に見ていただくパワーポイントとお手元のコピーは同じものでございますので、字がいっぱい並んでいますから、お手元の紙を使ってご理解いただければと思います。
まず最初に「JAMSTECの設立」というのがございます。最初の議論にありますけれども、海洋科学技術審議会、これは科学技術・学術審議会海洋開発分科会の前身だったと私、認識しておりますけれども、その中でJAMSTECを設立する前に何回かの議論が行われている中で、こういう法人が必要であるということもありました。
一方で、民間の日本海洋開発推進会議と経団連の、今、海洋開発推進委員会というふうになっていると思いますけれども、当時、海洋開発懇談会。その中で国に対する要望としてJAMSTECの設立の要望が出てまいりました。
当時を思い起こしていただきますと、北海油田の開発が非常に盛んになって、世界全体で深海域を対象とした海洋開発が非常に強く求められる時代の中で、我が国もそのニーズに参入しようということで、非常に技術的にチャレンジングなところもありますので、国がチャレンジングな部分を担って、官民一体で開発していこうという中で、当時、認可法人として海洋科学技術センターが設立されてまいりました。昭和46年10月の設立でございました。これで45年目になりますか。
その設置に当たって、設置法が当然、法案として出てきまして、その中でどういうふうに私どもが業務を定義したかというのがその下の箱の中に入っているところでございます。
4つのアイテムがございまして、「多数部門の協力を要する総合的な研究開発の実施と成果の普及」、それから2番目に「大型共用研究開発施設の整備、運用、共用」とございます。そういう意味で、我が国の海洋科学技術全般を支えるということ、それからみずからも研究を行うということがございまして、支えるという部分、それから研究開発を推進するというところで大型共用研究開発施設、その一環として海面に浮かぶ船舶もありますけれども、今回、ご議論いただく深海探査システム、こういうものを私どもが整備し、運用していくということになってきたことでございます。
今一つ、「総合的な研究開発の実施」という一番目があるんですが、基本的に私ども、技術開発についての基本的な考え方を、ここに書いていないんですが、申し上げますと、やはり世界に負けないと言いますか、世界をリードするようなサイエンス、それから技術の成果を出していくためには、サイエンスの基盤、例えばとってくるデータであるとかサンプルであるとか、そういうものは誰も見たことのない、誰もとれない、そういうものをとってくる。それからそういうものを分析するということによって、初めて世界をリードするような論文が書けるという認識を持っておりまして、そのためにも世界をリードするような機材、ここで言う研究開発施設、こういうものを整備してまいったわけでございます。
それから次のページになりますが、その後、2004年、平成16年に独立行政法人となります。「海洋研究開発機構」という名前になるんですが、この設置法の中をごらんになっていただいても、これも同様に、「基盤的研究開発を行う」と筆頭に当然あるんですが、4番目に「施設及び設備を科学技術に関する研究開発又は学術研究を行う者の利用に供すること」という定義をされております。
さらに2015年、昨年なんですが、4月に国立研究開発法人になりますけれども、そこでも同様にそういう機能、役割を担うということを定義されておるところでございます。
その中で私どもが、設置法をご覧になっていただいて、その役割をご理解いただいている中でどんなところをやってきたか、ビデオをご覧になっていただいたんですが、簡単にプロジェクトの、非常にかい摘まんだところだけご紹介しますと、まず最初に、直接潜水技術、飽和潜水技術という技術ですけれども、これは最初に申し上げましたように、北海油田での海底での活動を技術的に開発するということで、JAMSTEC最初の、1号プロジェクトでございます。
その後、石油ショックがあって自然エネルギーに着目されてきたときに、海洋の波力エネルギーのプロジェクトをやるとか、その時代も去って、今度は地球温暖化に伴う全球的な気候変動、そういうものが着目される中で、赤道域に設置するブイであるとか、それからフロート、そういうものを開発していったわけです。
それと同時に、やはり先ほどもビデオにありましたように、我が国周辺での海溝型地震、それからそれに伴う津波という防災という意識が非常に高まりました。そういう中で、私どもの海底にセンサーを、ネットワークでつなぐというシステム、そういう開発が進められてきたわけでございます。
その次のページになりますが、そういうさまざまな活動をするに当たってのプラットフォーム、基盤としては、まず調査船、船舶が必要となります。そこに今、全部で9隻の写真がございますが、一番最初は1981年にしんかい2000という有人潜水船の母船という位置づけで、なつしまという船が建造されてから、この写真の下の段に先ほどのちきゅうという大きな海底掘削船の写真もございます。最後に海底広域研究船かいめいとありますが、これはまだ建造中で今年度末に引き渡しを受けるということで、今、その直前のところでございます。
残念なことに、なつしまとかいようというのは大分古い船になってしまいまして、既にかいようは先月で完全に業務を終えまして退役しております。なつしまは今月で全ての業務を終えて退役させるということで、今年度中に2隻の船が戦列から離れ、全部で一度、6隻になりますけれども、来年4月1日で今一度、7隻になるというようなことです。
それぞれの船はそれぞれの機能を持っていまして、先ほど、潜水船の母船というふうに申し上げましたが、ロボットの母船であるとか海底を掘削するのもそうですけれども、例えばみらい、先ほど、映像に出てきましたけれども、砕氷能力を持ちながら、非常に大きな船でございますので、ブイを展開したり、北極海に入って北極の観測をしたり、そういうさまざまな、その船に応じた機能を持っているところでございます。
そういう中で、本日、ご議論の対象となる深海を対象とした探査システム、特にそのプラットフォームの議論になるんですが、有人潜水船、これはご承知のことだと思います。まず最初にしんかい2000というものが1981年に建造されました。それからその後、8年後にしんかい6500が建造されるんですが、これは、どうしても我が国に、人を乗せて深海まで入る、非常に高圧下でのさまざまな技術開発を一挙にしんかい6500までの技術を開発できることに対しては、非常に難しいだろうということで、ステップを踏むということで、まずは2,000メートルまでの潜水船をつくり、つくった後、実際、これはサイエンスとしてかなり使ってきたんですが、その技術をもとに、またしんかい6500を開発、建造、運用しているということでございます。
最初の道田主査のお話にもありましたように、既に1989年から昨年25周年ということで迎えておりまして、1,400回、1,500回に近い潜航を行っているんですが、人が入る耐圧壁については、特段の、今までの強度等に問題はございませんが、問題はやはり搭載する機器。当然、IT技術であるとか、さまざまな電子機器等の技術が進んでいる中で、「陳腐化」と私どもは呼んでいるんですけれども、たびたびにリプレースしていきませんと、製造していないものがどんどん出てくる。そういうことを追いかけられていました。ですから時々は予算をなんとかやりくりしながら大改造していくんですけれども。
今日、多分、議論になると思いますけれども、今後のいろいろなIT技術とかさまざまな映像技術、そういうものを俯瞰してみますと、やっぱり新たな技術を導入しながら次の展開をしなければいけない時代に直面しているんじゃないかという認識を持っているところでございます。
それから、その右側になりますけれども、無人探査機になります。これは船と実際のビークルと言いますか、現場を走り回る潜水機材がケーブルで結ばれています。そのケーブルではパワーと信号を送って、逆に、信号を船の上で受け取る。その船の上にコントロール部があって、船の上で操縦しているというものでございまして、リモート・オペレーティング・ビークル、ROVと呼んでおります。これも私ども、一番最初には1995年にかいこうという1万メートルを超えるところまで深く潜れるものをつくったんですが、その後、ビークルという部分を紛失してしまいましたけれども、その後、作業に応じてハイパードルフィン、それ以外の幾つかのROV、こういうものをつくって、ケース・バイ・ケースで運用しているところでございます。
さらに下の段にはAUVとあります。自律型無人探査機、これはみずからが、ケーブルでもつながれていない、人間が乗るわけでもない、単純にロボットだけであらかじめ入力されたデータに基づいて、船から降ろされた後、航走して回って、また船に回収されて、回収された後にデータを船上で抜き出すというロボットでございました。これは海底直上をゆっくり走ったりすることが非常に得意でございまして、それを海底のかなり精密なデータをとるということが得意なものでございます。
次のディープトウはさっき映像にも出てきました。一番最初につくった深海探査技術と装置と考えて結構だと思いますけれども、自力では航行できない、センサーを積んだフレームのような形ですけれども、それを船で引っ張って海底直上を低速で航行することによって映像を撮ったり、もしくは音響で海底の状況を調べるというふうな装置でございます。
私どもの法人の経緯ということからだんだん離れてしまったんですが、概略として、深海の探査ってどうするんだ。当然、この中にはよくご存じの方はいらっしゃいますが、ということもあるんですが、簡単にご紹介させていただきます。
先ほどの映像の中にもちらっと出ていたんですけれども、海の海水というのは電波を非常に通しづらい、厳密にいうと数メートルで減衰するということなんですけれども、電波が通らない、電波を使えないという中では、基本的には音を使ってさまざまな調査を行います。
例えば海底の地形をとるに当たっても、船の船底に数多くの音を発信する装置をつけて、海底から一定のところ、海底に向かって音を出して、それの反射するまでの時間を捉えて、あとは解析しながらそこまでの距離を調べていくということが海底の地形をつくり上げていくということです。さらにパワーの強い音を発することによって、これは物体の密度が違うところの境界面で必ず音が反射してきますので、それを捉えて、コンピューターにかけて分析しますと、海底の地層構造がわかる、地殻構造がわかるということをやっています。
基本的には音を使ってやるんですが、それ以外に、ここには書いていないんですけれども、重力であるとか磁力であるとか電気抵抗であるとか、そういうリモートセンシングで海底の様子をいろいろそれぞれの目的に応じて調べるということもできますし、ピストンコアラーとありますけれども、やはり船の上から海底のものをとってくるというための道具、ピストンコアラーとかドレッジとありますけれども、船で引っ張って探査機をとってくる、もしくは海底のサンプリングをしてくるというものも調査しています。
その中で1つ、今回の議論の対象となる、例えば有人潜水船もしくはROVは、実際に今度は映像を撮ってくるということが非常に得意です。人間が乗り込んで、みずからの目で見ながら、いろいろ動きながら映像を撮ってくる、もしくはその目で見ながらサンプリングをする。それからROVロボットはケーブルでつないで、船の上からも同じように映像を撮ってくる、もしくはセンサーを載せて、ある程度の探索を行う。それからマニピュレーターを使ってサンプリングをする、そういうものを得意としています。
それ以外に、先ほど申しましたAUVは海底直上に音を使ったり、もしくは電磁、もしくはリモートセンシングのセンサーを乗せて、実際の海底詳細を調査する。それから最後に特異点詳細調査というのがありますけれども、例えば「ちきゅう」という掘削船であるとか、そういうものについては海底からのサンプリング、実際の現物をとってくるということで、研究対象に応じてそれぞれの船、もしくはそういう機材を使い分けて、ある研究者のターゲットに近づいてくるというようなやり方をしておりまして、どれが抜けても最終的にいろんなさまざまな研究の要請に応じることができない。要するに、こういう全体のフリートというメカニズムをキープし続けることが重要であると私は認識しているところでございます。
その中で、これは蛇足になるかもしれません。私どもは機材の開発、それからとってきたデータをもとにした将来の変動の予測計算であるとか、そういうものも、インフラも整備し、運用しているところでございます。
最後に1つ、私どもの船の運用に当たっての、簡単にご紹介しなきゃいけないんですが、船を運用して、研究者のためにデータを取ると申し上げましたけれども、基本的に我が国の研究者全員が私どもの施設を利用できる構造となっています。私どもがつくりますある程度の指針に基づいて公募が行われて、それに対してオールジャパンの中から、民間を含めて、私どもの船、もしくは施設の利用を申し込んで来られる。
それを科学者で構成される委員会の中で審査し、安全性や経費の面もありますけれども、そういうものを含めて、私どもで実施してやっていることでございます。
私どもの、国で示される中期目標に応じた中期計画というものに応じて事業を推進していますけれども、その事業を推進するための船の利用であるとか、そういうものについても、ちょっと別のメカニズムですけれども、そういうものを取り入れながら、年間のスケジュールを組むという構造を持っているところでございます。
以上が深海探査、これまでの私どもの法人の経緯と周辺の背景でございます。ここで切ったほうがよろしいでしょうか。
【道田主査】  続けていただきたいんですけれども、資料3、一通りざっと説明を先にしていただいて、後ほど、意見交換をしたいと思います。
【堀田理事】  次の深海探査への貢献ということところをご紹介させていただきたいと思いますが、ペーパーでまずご紹介します。
まず最初に私どもの探査機の比較というページがございます。潜航目的分類というところですが、5つの円グラフが書いてございます。上の3つはROV、ケーブルでつながれたロボット。それから下の2つが有人潜水船、しんかい2000、しんかい6500。しんかい2000は今からかなり前に退役させておりますけれども、全体で1,411回の潜航を行いました。しんかい6500はまだ運用中ですけれども、1,700回の潜航を持っています。
これをごらんになっていただきますとわかりますように、かいこうというのはかなり深いところまで行ける能力を持っていますけれども、深いところまで行きますと地質、地球物理、そういうものを対象とした潜航を行いますけれども、しんかい2000もしくはドルフィン3K、ハイパードルフィン、こういう、比較的浅いところを対象とした機材は生物を対象とした研究課題が中心となっているということでございます。
右下に発表論文数というのがございます。しんかい2000は910、しんかい6500はちょっと数が少ないんですが、やはり深いところまでの潜水艦というところで、実際の潜航回数がこれまでのところ、極めて多くないものですから、こういうことになっていますけれども、いずれにしましても、合わせて1,500の有人潜水船を使った論文をこれまで出しているということでございます。
基本的に、これまで果たしてきたことを簡単にご紹介します。
まず最初に、深海研究における貢献。研究、サイエンス全体のサポートとして3つ挙げています。まず、米仏に次ぐタイムリーな深海研究調査への参入。日本で有人潜水船をつくろうという議論が行われているころには既に米国、フランスが有人潜水船を建造し、運用して、さまざまな世界的研究成果・実績を出す。それに対して私どもは少し後発でしたけれども、しんかい2000、それから6500を建造して、米仏に追いつくサイエンスをサポートしてきたということでございます。
それから2番目の日本の深海研究を世界レベルにということで、今申し上げましたようなことで、結局、世界の深海研究をリードするところまでになりました。
それから次の深海探査システムとしての完成度の高さということで、実は運用当初はアメリカの、例えばパイロットなど、技術者等のサポートが必要だったんですが、その後、人事の交流なども含めて、私どものほうから、運用技術から実際のハードウエアに関する知見が固まりまして、今では逆に世界に対していろんなアドバイスができるということ。
一方で、ここに書いていないんですけれども、今、インドとかブラジル、韓国、そういうところが非常に深海有人潜水船をつくりたがっていますけれども、さまざまなアドバイスを与えられるような状況になってきているということでございます。
その次のページですが、潜水調査船・探査機がこれまで果たしてきたこと、「海底資源への貢献」とあります。まず、先ほどの映像に出てきました日本の熱水噴出域の発見、それからその次、自然界での初のCO2ハイドレートの発見、それから南西諸島海溝深部におけるマンガンノジュールの発見。こういうものに有人潜水船が非常に活躍してきたということでございます。
その次のページになります。地震発生後の調査ということで、昭和三陸地震震源域における地震の後、これは1933年の地震のためにできた海底の亀裂を実際の人間の目で見て、研究者の目で見ていくことができる。それと同様に、北海道南西沖地震、それから最近のものですと、東北地方太平洋沖地震、この映像、右下のものでございますけれども、その起きたクラックが研究者の仮説どおりにできていたということがわかるということで、地震研究に相当大きな進捗を与えました。これ以外に、2004年にインドネシアで起きたスマトラ沖地震のときにもすぐに派遣しまして、同様な成果を上げております。
それからその次になります。防災への貢献ということで、最初にVENUS計画と出てきますが、実は今、私ども、紀伊半島、紀伊水道沖に海底地震ネットワークを展開しておりますけれども、その原型となる技術開発の最初のステップでありましたVENUS計画、こういうものを当時、有人潜水船、しんかい6500で海底に設置するというような技術を行っていたわけでございます。
DONETと言いまして、今、紀伊半島沖で展開しているものについては、右下にDONET仕様ハイパードルフィンとあります。推進4,500メートルまで潜れる仕様に私どもの技術者が改造しまして、それで敷設等を行っているわけでございます。
その次になります。社会的緊急事態への貢献ということですが、これは全て、実はROV、人が乗らないロボットでございます。それの成果でございます。例えば最初にヘリコプターから出てきますけれども、船が沈没したり、もしくは過去に沈没したものであるとか、例えば4番目にありますJAXAの当時、NASDAさんのH-Ⅱロケットが失敗した際に太平洋の水深3,000メートルのところで、このロケットブースターの一部を発見することができた。そういうものが幾つか挙げられております。いずれも対象とするものは海底に沈んでいるものでございますので、有人の操作ですと少し危険が伴うであろうということで、ロボットを投入して、いずれも成功裏に収めることができております。
その次になります。産業・技術への貢献ということで、私どもはこの有人潜水船を開発するに当たって幾つかの、特に海中探査に必要な技術開発を、成功裏に進めることができました。
まず音響航法装置、これは海底のしんかい2000の位置を、音を使って船上で把握するというものでございます。それから音響画像伝送、さっきから申し上げていますように、電波が使えない中で、潜水船から船上に対してデータを送る。特にデータというのは海底の映像を送るということで、音波を使いながら、今、1秒1枚ぐらいを送るような技術まで開発しているところでございます。それから有人潜水調査船ののぞき窓、これの技術が、例えば日本の水族館の水槽などに使われるようなものになっているということもありますし、大容量リチウムイオン、これはしんかい6500が海底での活動に対してバッテリーを幾つも搭載しなければなりませんけれども、そのための開発であるということがあります。
それから5番目なんですけれども、やはりこういう潜水船をつくったはいいんですけれども、それをしっかり安全に運用しなければならないということで、それを運用するための技術については先ほど申し上げました、世界にトップクラスの技術を蓄積することができました。
幸いなことに、しんかい2000、しんかい6500を合わせて3,000回近い潜航の中で人身事故は全くありません。機材のインシデント的なものは経験しておりますけれども、完全に安全に運行することができました。
最後のページでございます。普及・広報という観点で幾つかの写真を並べています。今日は、山崎委員がいらっしゃるのでよくおわかりかと思いますけれども、こういう非常にフロンティア的な装置については、特に子供さん中心に、非常に人気が高いです。
ロボットと比べてどうか。私自身の勝手な感想なんですけれども、私ども、ROVというロボットを持ってきてますけれども、有人潜水船の前に行きますと、「ほー、これが」という、そこの感性の違いというのは非常に私はよく感じるところでございます。
簡単に貢献ということでご紹介させていただきましたが、実際、どんな映像を撮っているのかというものを少し簡単に、ビデオでまとめましたので、それを。
音が入っていませんので、私のアドリブでご紹介させていただきます。最初に分野ごとに映像が出てまいりますので、有人潜水船とロボットがごちゃ混ぜになった形ですから、それを解説しながらやります。
(ビデオ紹介・解説)
引き続き、今度は海洋工学センター長の磯崎から深海探査機の歩みをご説明させていただきます。
【磯崎センター長】  海洋工学センター長の磯崎です。少し堀田のほうから全体の概要を話してしまいましたので、あと少し補足的に細かい話をします。お時間はよろしいですか。
【道田主査】  せっかくの機会なので、意見交換の時間を取りたいんです。できれば、あと数分ぐらいでお願いします。
【磯崎センター長】  わかりました。さびの部分だけお話しします。
先ほどありましたしんかい6500、しんかい2000、我々、有人潜水船を持っている、それの大きな動きでありますけれども、実際に建造に先立つ数年前から国として、大いに有人潜水船が必要であるというお話があって、まずしんかいという、これは600メートル水深の有人潜水船が海上保安庁でつくられた。その後、さらに海洋科学技術審議会の答申があって、6,000メートルを目標にする技術的検討を行うべきであるということ。それから数年たって、JAMSTECがこの間に設立されて、その後、今度は深海を探査する潜水船の研究開発を推進するということで、実際に材料の問題でありますとか、いろんなシステム、あるいはそれのオペレーションのノウハウ、そういったものを蓄積していく。
いろいろものをつくっていく前に、まずこういった要素技術の研究が必要であるということを踏まえて、しんかいに達した。
さっきありましたように、6,500を一足飛びに6,000というのは難しいので、その前に2,000メートルの潜水船を完成するということで、しんかい2000ができたわけです。
これは全体として日本の流れでありますけれども、約90年前、85年ぐらい前になりますけれども、西村さんという方が西村深海研究所というものを設立されて、これは台湾でつくった有人潜水船ですけれども、そういうものができている。その後、数年して日本初の有人潜水船ですけれども、そういうものができた。
以来、第二次大戦の間でもどんどん技術が進んで、深く潜れるだけではなくて、いろいろな観測の装置、そういったものを含みながらやってきて、しんかい6500はできていましたけれども、先ほど、お話がありましたように既に26年になりますけれども、次の開発、技術アップを進めたいということで、私たち、この技術をどう次の時代に伝えていくか。日本がこれまで培ってきた有人潜水船に関する技術を続けていきたい、そういう意味を持っているわけであります。
有人潜水船に期待されることですけれども、これは昔から変わっていない、今でも我々、こういうことをやっています。海底鉱物資源あるいは海底地形、地質に関する調査、生物の調査、そして海洋一般、地球物理、海洋物理、そういったことの調査、これは地球海洋を研究する上での必須のものであって、これがターゲットということは昔から変わっていないということだろうと思います。
先ほどのしんかい2000、1981年にできて、2002年にリタイアしましたけれども、この間1,410回、これを動かすのはやっぱりシステムが必要でありまして、母船も必要、整備場も必要、そしてそれを動かす岸壁が必要。こういったものが整備されて、初めて全体のシステムとして動くようになってきた。1,411回の中には世界で初、日本初、さまざまな発見をしてきたことは先ほどの映像でお見せしたとおりになります。
これがしんかい6500ですけれども、1989年に完成しました。91年から運用開始して、今、1,446回、11月29日現在とありますけれども、今も1,446回。今日現在はインド洋に向かって動いています。もうすぐインド洋での調査が始まります。これも同じように、それぞれ母船がよこすか、岸壁を使って、整備場をつくってやってきております。今、1,446回。既に26年たちましたので、少しいろんなところで不具合が出ている。後ろの推進装置を大幅に交換して性能を上げたわけですけれども、昔の古いまま、26年前の技術があちこちに残っているというところであります。
それとしんかい、こういうふうに2000から6500への技術進展ということで、2,000メートルを開発して、6,000メートルに引き継がれた技術というのがあります。まず、しんかい2000のときには耐圧殻は高張力鋼を、スチールでありましたけれども、それをもとにしんかい6500ではチタン合金の耐圧殻にしました。しんかい2000で少し使ってみて、チタン合金、小さな耐圧容器を使って、それをさらに発展させた。あるいは浮力材も日本でアメリカのものをベースにしたんですけれども、シンタックティック、小さなガラス玉を樹脂で固めて、それを使えるようなもの、あるいは蓄電池、水中音響装置、そういったものをやっていきました。
何よりも、しんかい2000でやった運用技術、実際に1,411回潜らせたという技術をもとに、それをベースにしんかい6500をやってきたということで、こういった技術も、つないでいかないと、一度切らしてしまうと次につくることができないということで、今、しんかいが動いている中では世界に誇れる技術だろうというふうに思っております。
以上、有人潜水船です。
続いて、無人探査機のほうに触れさせていただきます。
まず無人探査機のドルフィン3Kという、これはROVです。先ほどありましたケーブルを使って、船の上からコントロールする、電力も送る、あるいはとれたデータは光ファイバーでリアルタイムで送れるというふうなメリットがありますけれども、ただ、ケーブルを使いますので、動きに非常に制約ができるという中での流れで動かしてまいりました。
まず、これはしんかい2000を動かすときに事前調査ということで、ここにありますように青い部分、ほとんどは事前調査、しんかいが潜るためにそこで大丈夫か、何かあったときにこれを助けるような救難機、そんなイメージを持って動かしてきていましたので、調査機というよりもしんかい2000のためのサポートです。ということであります。
その後、ハイパードルフィン、これを補うためにカナダから買ってきましたけれども、今、それをいろいろ改修しながら、今やもう元の形はない、日本製のROVである、そんなふうなことになっております。
今日現在、1,930回、おりています。年間100回を超えるような潜水をして、非常に動きもいいものですから、研究者たちから非常に高い評価を受けています。人気としては一番になるということであります。今日現在も北洋上にいるというところであります。
これがかいこうですが、少し大損害があって、最初1万1,000メートル級、世界でも一番深いところに潜れるようにということで、ケーブルを2段にして、ランチャーを通して一次ケーブル、二次ケーブルというふうに深いところに潜れるようにしたわけですけれども、この二次ケーブルが切断したことによって、流失してしまいました。ランチャーだけはずっと昔から、1995年から使い続けていますけれども、下のビークルは今日現在4代目、かいこうマークⅣというものを使っております。7,000メートルですけれども、日本海溝の底に潜れるようにということで一部、技術をグレードアップさせながら、1万メートル耐用を目指しているところであります。
これがROVです、AUVです。中にコンピューターを持って、センサーを持って、あらかじめ決められた航路を自分で海底の起伏を判断しながら、自分で避けながら動くということであります。最近、非常にこれが発達してきたというふうに思います。うらしまも完成して25年以上になりますけれども、2003年には燃料電池を使って317キロ、56時間の連続潜航をしているということであります。そういった非常に高い機能を持たせたものです。今はいろいろこれにセンサーを持たせて、海底を、人手がかかりませんので、一遍潜航させてしまうと、基本的には人手を要しないということがありますので、非常に効率的な探査ができるかな。ただ、カメラを持ちませんので、リアルタイムで撮るということは今のところはまだ難しいというところであります。
ここに全体のAUVの歴史がありますが、ここに書いていますように、やっぱりAUVができましたのは1998年から建造したわけですけれども、それ以前にいろんな基礎研究をやったり、いろんな技術開発をやってきたということがあります。
やっぱり新しいものをつくっていく。大きなシステムでありますので、そういったものでいろんな要素技術をやって、今、私たちが動かしているAUVは第3期科学技術基本計画のとき、国家基幹技術ということで5年間にわたって、いろんな要素技術を開発してきました。その成果を使って、今、実機を動かしているということがありますので、やっぱり次の、いろいろなものを新しい探査機を完成させるためには、そんなステップが必要かなというふうに思っているところであります。
以上、急ぎましたけれども。
【道田主査】  ありがとうございました。
堀田理事と磯崎センター長からこれまでの開発の歴史、それから成果の一端、それからお話しいただきましたように要素技術を開発して、実際、実機ができる。数年以上を要するということも含めて、ご説明いただきました。
今日は第1回目ですので、そのようなご説明をいただいて、今後の議論のために先生方の中での共通の認識を得るという観点から、ちょっと丁寧にご説明いただいたということでございます。
これから議論に入るんですが、先ほど、設置のところで、この委員会の設立経緯のところでお話がございましたけれども、もう一掘りしまして、論点を少し整理をして、それについて、もちろん、これに限らないんですけれども、論点を整理した上で、少し後ほど、委員の先生方にコメントをお伺いしたいと思っているんですが、事務局のほうで、まず論点整理の案というものをつくっていただいておりますので、これについて事務局のほうからご説明をお願いいたします。
【事務局】  資料4をごらんください。「次世代深海探査システム委員会 論点整理案」として事務局より案を提出させていただいております。
大きく3つの観点で整理をしてはどうかというふうな整理になっております。
1つ目ですが、「これまでの深海探査の成果及び評価について」という点でございます。我が国の深海探査が上げた実績と社会に与えたインパクトや、それらの成果がどのように評価されているか。JAMSTECが保有する探査機に関して、建造当時の目的及び達成状況への評価、また、諸外国と比較し、我が国の深海探査の特徴や優位性はどのようなものがあるのかという点を切り口にしてはどうかという点でございます。
2つ目が「深海探査における新たな課題について」でございます。こちらにつきましては探査の研究者や技術者が検討している深海探査における新たな課題はどういうものであるか。また、産業界や社会に求められている具体的なニーズについてはどのようなものであるか。
また、国際社会や諸外国の研究機関は、今後、どのような深海探査を目指しているのか、また、日本に対してどのような深海探査が期待されているのかという点でございます。
3つ目が1、2を踏まえましての全体的な話でございますが、「次世代深海探査システムのあり方について」でございます。研究者や技術者が検討している課題、産業界や社会からのニーズ等を踏まえ、次世代のシステムが目指すべき分野や領域はどのようなものであるのか。また、我が国として保有すべき国家基幹技術であったり、しんかい探査機製造の技術伝承、探査機のパイロットの人材育成の観点から、どのようなあり方があるかという点。
また、そのようなシステムを構築するに当たり、具体的にどのようなスペックやシステムが必要となるのか。なお、これについては有人探査、無人探査、それぞれにおいて異なっても構わないと考えています。
また、次世代のシステムが科学技術以外の点で、どのような分野にどのような貢献ができるかという点。また、システム開発された場合、日本の深海探査技術は国際社会へどのような貢献ができるのか。
このような点についてご議論をいただくということではどうかということで論点整理を示させていただきました。
以上でございます。
【道田主査】  ありがとうございました。
今、資料4をご説明いただいたところですけれども、資料2-1に書かれていることと対をなすと言いますか、資料2-1に書かれている設立の経緯、こういうことを考慮して検討してくださいということを書かれていますが、それをちょっともう一段、丁寧に書くとこういうことかなということで、事務局の方からご説明いただいたところでございます。
さて、今日は第1回ですので、何か議論をどっちかに収斂させようということではなくて、少し広い観点から検討していったほうがいいかなという風に思っていまして、そういった観点から先ほどの海洋研究開発機構からのご説明、それから今の事務局の論点整理を踏まえて、今日は第1回目ですので、それぞれ委員の先生方、ご専門の観点からそれぞれご意見を伺いたいと思いますので順にお願いしたいんですが、まずその前に、委員の先生方のお手元に資料が置いてありますけれども、本日、東京大学の生産技術研究所の藤井先生がご欠席でございますが、事前にコメントを頂戴しているようでございますので、これについてまず事務局からご説明いただいて、その後、今日、ご出席の先生方から自由なご意見をいただくという風に進めたいと思います。
事務局のほう、よろしくお願いいたします。
【事務局】  それでは、藤井先生からのコメントを読ませていただきます。
海洋観測技術は総合的なものであり、海の理解につながる観測はプラットフォーム技術単独では成立しない。空間解像度や時間応答特性、さらにはデータの受け渡しといった面で計測先進技術、並びにデータ統合・モデリング技術の間で相互にマッチングを図り、総合的にシステムの方向性を考えるべきである。
2つ目としまして、プラットフォーム技術としてはどのような役割分担や運航を考えるのか、全体としてのグランドデザインが必要である。具体的には有人、無人、ビークル、インフラ、空間解像度などの切り口で目的、用途、さらにはユーザーからの要望をどのようにカバーするのかを考えておくべきであろう。また、個々の要素の必要性の観点から、コーディネートユース、個別ユースの双方についてどのようなオペレーションがあり得るのかを検討してはどうか。
3つ目としまして、国際的な動向を踏まえる必要があるので、主要国が保有するシステムのレビューをしてはどうか。特に近年では海洋調査並びに調査技術開発自体のオープン化が進みつつあるので、公的機関が保有運航するシステムとして備えるべき要件がどのようなものであるのかを明確にしておく必要がある。
4つ目としまして、例えば観測結果をより理解しやすい形で広く一般社会に示すことは、上記の要件のうちの重要なものの1つである。したがって、次世代のシステムを考えるにおいては現在、飛躍的に発展している情報、メディア技術や先進技術等の最先端技術を積極的に取り入れるべきである。同時に、深海における探査の活動をどのように視覚化するかについても検討しておくべきであろう。
以上でございます。
【道田主査】  ありがとうございました。藤井先生のご意見をごらんいただきますとわかりますように、先ほどの論点整理とそんなに方向性は違っていないコメントをいただいているかなというふうに認識をしました。
それでは、繰り返しですが、今日は第1回目ですので、それぞれ先生方のご自身の自己紹介的なことも含めて、先ほどの海洋研究開発機構のご説明、及び事務局からの論点整理等の説明について、それぞれご意見を伺いたいなというふうに思います。
どなたからでも結構ですが、どうしましょう。
順にいきましょうか。浦先生、何かございますか。
【浦委員】  そうくるかと思っていろいろ考えたんですが、九州工業大学の浦でございます。私の専門は、現在はフィールドロボティクスということを標榜しておりますが、自律型海中ロボットの研究開発をしております。
いろいろこのことに関しては議論があるんですが、今日はまず一般論として、今、藤井先生が言ったように、先ほどからご紹介されたのはプラットフォーム技術です。プラットフォーム技術はそのアプリケーションとしての科学があって、その科学に対して、どれだけコントリビューションしたかということで評価されるのではないかというふうに思います。
つまり、要するに、すばらしい、世界で一番速く走るものができたのよと言っても、それが科学にコントリビューションしなければ、それは一体何だったんだろうかということになるんではないかと思います。
そのコントリビューションの仕方が非常に重要で、コントリビューションは実は2つあるんではないかなと思います。
1つは誰もしなかったことを急に発見する。それは1回発見しただけで、それで十分というようなこと。それからもう1つの方法は海は広く、それからいろいろなダイバーシティがあるので、1回だけじゃなくて、かなりの回数、いろいろなところを調べなくちゃいけない、時間的な要素、面積的な要素ということがあると思います。
この2つのどっちを狙う、どっちが目的として開発するんでしょうかねということをよく考えないでやると、どっちつかずのものになってしまうと思います。
一発大逆転みたいな、最初のほうは1回動いたらそれで終わり、にしてしまうべきです。なぜならば、我々はエンジニアなんですが、エンジニアで非常に重要なのはできた後のロジです。できた後のロジができないと、それはお金がかかってしようがありません。このことは非常に海洋開発なり、JAMSTECが持っている総予算というのは非常に少なくて、宇宙に比べてという意味ですが、非常に少なくて、その少ない中でやりくりをしているということが非常に問題です。
実は十数年前に今のちきゅうができる前、そのプランニングのときに私、委員で呼ばれていろいろ意見を言えと言われたんですけれども、当時、300億円か400億円のぐらいのJAMSTECの予算のときに600億円のものをつくると言われて、それは大変結構ですけれども、ロジはどうなっているんですかと言ったら、300億円予算があるから、それで何とかロジができるというふうにお答えがありました。
ところが、現在はそうでしょうか。先ほど、そういう説明も全くなかったんですが、ロジは非常に大切で、ロジを考えないで開発をする者は全く意味がない開発者です。それをよく考えていただきたいというふうに思います。
一定、もう1つ申し上げたいのは、まず先ほどご説明があったROV、ハイパードルフィンですが、ハイパードルフィンの表を見ると、先ほど、非常に評価されて利用頻度が高いと言われています。それがお示しになった3枚目のところに書いてあって、今年、百数十回のオーダーで潜っています。それに比べて、しんかい6500のほうはどうなっているかという図を見ていただければ、だんだん回数が減っているし、ここ10年は平均的には20年前よりも減っています。
それはどういうことかというと、サイエンティストが実はハイパードルフィンのほうが結果が出しやすいという認識があるんではないかということのあらわれではないか。非常に微妙な言い方をしているんですが、気を使っているんです、これでも。というようなことが見えてきます。
すなわち、これは一番最初に申し上げたことで、つくったプラットフォームがどういうふうに科学に対してコントリビューションができたか。あるいはそれに期待されているかということを示していることではないかと思います。それが重要なところです。
それからもう1つ、世の中は無人のものが何かやったときに、それがとてもすばらしいものでなければ、大抵、新聞には載りません。三面の小さな、3センチぐらいの記事にしかならないんですが、人がそれをやると、一面トップに大きな記事になります。このことは非常に重要です。
先ほど、社会のコントリビューションと言ったことですが、海洋の重要性というのは大新聞のトップ記事に何回、海洋が出てくるか。宇宙と海洋と比べてください。どっちがたくさんのトップ記事が出ているか。それは圧倒的に宇宙です。それはなぜかと言うと、人が行くからです。人が行くたびに記事になります。ところが、しんかい6500は行っても、何千回も行っているんで記事にはなりませんし、よほどの発表をしなければなりません。ここのあたりのことも考えないといけないんです。
つまり、人が行ってはいけないと僕は言っているわけではなくて、人が行くということはいかに一般の日本人が世界の人たちを魅了させるかということです。魅了させるようなことでなくてはならないので、しんかい6500が今、人を入れて潜っても、ちっともトップ記事にならない。これは非常に残念です。そのことをよくお考えいただきたいと思います。
以上です。
【道田主査】  ありがとうございます。
非常に重要なポイントを幾つかご指摘いただきましたね。今、ここで1つずつ議論することはいたしませんけれども、技術開発をずっと担っておられる方から、プラットフォームのチャンピオンをつくっただけじゃだめだという発言をいただきまして、非常に心強いなという気がいたしました。
時間が限られているので、今日は初めてですので、一当たりご意見を伺いたいと思いますので、浦先生に時間を申し上げませんでしたけれども、二、三分程度で順々にお願いできると、次につながる議論の芽が集められていいのかなというふうに思いますので、続いて、織田先生、よろしくお願いいたします。
【織田委員】  織田でございます。私は専門の委員の先生方に比べると、若干異色の存在かもしれません。私は、三井物産の金属資源本部や三井物産戦略研究所での業務経験が長く、新規事業にも長年取り組んできました。当然、社内では、市場の見通し、事業リスク、収益性分析などが重要なポイントになります。今回は、経団連の推薦ということなので、産業界からの意見というところが私に対する期待だと思い、重責だと受け止めています。
色々な委員会等を通じて浦先生とは親しくさせて戴いているのですが、文部科学省の委員会は、今回が初めてでございます。よく勉強しながら発言しなければならないと考えています。
先ほどJAMSTEC設立の経緯が北海油田開発であったとお聞きしましたが、私も現在は洋上風力発電等を見ておりますので、関連インフラ産業として海底オイル&ガス開発を見る機会がございます。残念ながら、日本は海底オイル&ガス資源が乏しいので小規模開発しかありませんが、海外の巨大な海底資源開発市場では、上流権益の確保を除くと、日本企業の川中、川下分野への進出がなかなか果たせないので、これにどう挑戦するのかという議論も別のところでやっています。従って、海中や海底の話に関しては、どの様な観点でものを言うのかという点が重要になる訳ですが、少なくとも科学技術の進展や謎の解明という分野は、今、私が申し上げた様な民間企業が如何に海外で金を稼ぐのかという点とは異なる価値がある筈です。従って、その価値を金で図れるのかという点には難しさがある様に思いますが、お金には限りがありますのでそれをどうやって有効に使うのかということもひとつの視点になるとのだろうと想像しています。
以上はイントロですが、私がこの機会に良く学び、考えさせて戴きたいと考えるのは、しんかい1機をどうするというだけの話ではなく、多くの関係者と共有して生かせる様な魅力的な場を日本で作れるのかという話です。この様な努力は今までJAMSTECさんも一生懸命にやっておられると思いますけれども、研究活動を通して日本の海を使った場を提供した時に、そこに色々なメーカーや、研究者、産業界の方々が興味を持って集まり、教育にも役立つ様な魅力的な場が作れるかどうかということが重要だと思います。また重要な関連技術のなかには、海外の軍事技術や海底資源開発から大きな発展を遂げた優れた技術もありますので、国内や海外の関係者が交流したいと感じる様な魅力的な国際交流の場が作れるかという視点は重要だと思います。お互いに切磋琢磨しながら交流できる場が盛り上がれば、日本の民間メーカーが新たな技術開発を考える良い刺激にもなるわけです。
その様な観点でものを考えながら、今後、勉強させて戴きつつ意見を述べさせて戴きたいし、皆さんの意見を拝聴したいと思っております。よろしくお願い致します。
【道田主査】  どうもありがとうございます。この委員会ではいろんな分野の方々がいらっしゃいますので、ぜひご自身の観点から自由にご意見いただければというふうに思います。
すみません、小原先生。
【小原委員】  私の立場からすると、今、有人でも無人でも別にどちらでも構わないので、海溝付近、一番深いところで安定的な観測機器を設置して、それで長期間観測できる。それと、あとは面的に調査を行うということが非常に重要だというふうに考えています。
私の専門は地震発生メカニズムの解明ということで、これまで陸の観測データを使っての解析ですけれども、それでもある程度、陸の直下でのそういうゆっくり滑りというのを発見して、それがかなり世界的に注目を浴びているところですけれども、それと同様に陸のデータを使っても、海である程度、そういったゆっくり滑りが起きているということはわかるんです。
だけれども、それは何となくわかるというだけであって、時空間的な分解度は全然足らない。そういった意味で海での観測というのは非常に重要で、特に海溝付近というのは東北沖地震でも明らかになりましたように、これまではずるずると滑っていて、そこでは固着していないと思っていたところが非常に強く固着している。そういったブンキョウをきちんと明らかにするということと、それが時間的にどのように変化しているかということを見きわめることが非常に重要だというふうに考えています。
なので、私の立場はそういった今後の地震発生予測、あるいは地震防災に役に立つセンサーの設置、あるいは面的に地形であるとかクラックの状態であるとかというのを、かなり広範囲に、しかも稠密に観測できる、そういった機器があることによって、地震科学が非常に大きく発展していくということなので、そういった立場で、有人でも無人でもどちらでもいいんですけれども、そういったプラットフォームができてくるということを望んでいるということです。
以上です。
【道田主査】  ありがとうございました。
続きまして、瀧澤先生、お願いします。
【瀧澤委員】  どこからお話ししていいのかと思うんですが、たしか昨年か一昨年か前に学術会議に次世代の大深度の有人潜水船の提案がなされて、それに対して議論をする場がございまして、そこで出た全然別の分野の研究者の方々ですけれども、天文ですとか素粒子ですとか、そういった先生方にしてみても非常に夢がある。有人ということの意義というのを理解されていました。
ということで、先ほど、磯崎センター長からでしたっけ、堀田先生からでしたっけ。ご紹介がありましたように、有人であることの魅力というのは国民にアピールする意味で非常に大きな意味があると思います。ただ、一方で先ほど、浦先生がおっしゃったように、それが常態化してきたときにどうかという話もあるかと思います。
そうしたときに、やはり一番大事なのは科学者の皆さんがどういった船を欲していらっしゃるのかということにじゃないかなと思いますね。すごく視認性がよくなって、先ほどもご説明がありましたけれども、アクセスしたいところに間違いなくアクセスできたり、それからその周りの状況を眺めることによって、想像していた以上の発見につながっているという、そういうところにもしフォーカスするんでしたら、船の設計そのものにそれを反映させていくようなことを考えられてはどうかと思います。
例えば今、ちょっと話が変わりますけれども、数年前に国民的に非常に支持の高かった深海のテレビ番組がございましたけれども、あれなんかは残念ながらと言うべきか、アメリカの有人潜水船の、もちろんもっとずっと浅いところの船で、かなり広い範囲のガラスで覆われたような、非常に視認性を重視したような船でした。
たしかあの会社では今、もっともっと深い船というものを目指して、開発を進めておられるという話ですけれども、これほどの、1万メートル級の大深度で果たしてそれがどれくらいかなえられるのか。そのぎりぎりのところに挑戦することができれば非常にインパクトが強いものではないかなと私なりに考えます。
それからそのオペレーションです。オペレーションに関しても、今までは人間の経験とか勘とか、そういったものの主導でやってきたわけです。これからももちろんそれはあり得ると思うんですけれども、その次の世代のことを考えますと、もしかするとAUVとの連携となったときに、AIのようなものを積み込んで、それとの連携、そういった可能性を追及していくというようなこともあってもいいんじゃないかなと思います。
それから、しんかい6500ですと、多分、深度が非常に深かったため、降下・浮上の時間に非常に時間がかかってしまう。それも大深度にするときにはどういうふうに解決し、また、しんかい6500との運用との兼ね合いはどうしていくのか。オーバースペックになってしまって使いにくい船になってしまうとどうしようもないので、この辺のことも一緒に考えていければいいんじゃないかなと私なりにそんなふうに今、思っていますけれども、とにかく夢を感じておりまして、皆様ともっともっとずっと深い議論をさせていただくことを楽しみにしております。
よろしくお願いいたします。
【道田主査】  ありがとうございました。
非常に大事な技術的なポイントのご指摘もありました。オペレーションに関連する話ですけれども、降下、浮上に時間がかかるようだと、現場ですごい短い時間しか見られないということですので、そこら辺のブレークスルーがあるのかないのかということも大事なポイントかなという気がいたします。
続きまして、竹内章先生。
【竹内(章)委員】  富山大学の竹内章です。私は地質学が専門で、これまでのJAMSTECの船舶、それからしんかい2000、しんかい6500、ハイパードルフィンとか探査機も含めて利用させていただく立場でした。
それから先ほどもJAMSTECのほうでご紹介がありましたけれども、海洋研究課題審査部会のほうもしばらくやっておりました。今はやっておりませんが、そういう関係でこの委員会に呼ばれたかと思っています。今日これを言おうという準備はしてこなかったけれども1つだけ申し上げます。しんかい6500等の有人探査機を使わせていただいた立場からのことなんですが、地質学ということでフィールドワークが非常に重要なんですね。今、ドローンとかいろんなもので上から見て、無人でいろいろ映像だけ撮ってくるとかいうのもありますけれども、やはりじかにフィールドを歩くということが非常に重要だというふうに思っています。
それに関して、近年で言いますと、4年前の東北地方太平洋沖地震がありまして、その映像等のご紹介が先ほどもありましたが、実は非常に不満です。それはやはり海底に出たと言われる海底の断層を見ることができていない。それをじかに見たいということがあります。逆に言うと、それを実現することが私の夢で、そういうものがないか。
これは先ほどからご意見がありますけれども、1つの探査機でできるということではないと思います。やはりいろんなものを使って、総合的にいろんな、多角的にやらないとできないと思いますけれども、やはり海底の活断層が顔を出しているところを見たい。それは上から見るだけではだめでしょうから、いろんなことをしたいですね。遠くから見たり、近づいて見たり、下のほうから上をのぞいてみたりとか、いろんなことがその場で判断してできるというのが実は有人のよさで、パイロットとあうんの呼吸で探査できるという点に非常にメリットがあるということです。
有人は、言ってみれば、臨場感と言いますか、これが非常にすぐれているわけで、海底でドローンみたいなものがいずれ出てくるのかもしれませんけれども、幾らたくさん使ったとしても、人間がそこにいるのといないのとではかなり違う。程度問題かもしれませんけれども、そこが非常に違うと思います。
それから、そういう臨場感を持っている中で、そこにいる人にとっては初めての発想みたいなものが、着想と言いますか、そういうものが得られるという点があります。ハイパードルフィンもそういうことが多少ともできたんですけれども、かなり違うんじゃないか。それは私の実感というか、経験です。今日はとりあえずそういうことで私の紹介としたいと思います。
以上です。
【道田主査】  ありがとうございました。
続いて、竹内真幸先生、よろしくお願いいたします。
【竹内(真)委員】  私は民間の建設会社の設計及び開発に所属していまして、会社の仕事はほとんど99%、陸上でやっております。私自身は、地球の7割が海なものですから、会社の深海未来プロジェクト構想というものを打ち上げて、そのプロジェクトリーダーをやっております。去年はその正式な組織を使って、充実的な検討も進めているということで今日、この委員会に参加し、貢献していきたいと思っています。
意見なんですけれども、先ほどの論点整理というところで、こういうことをいきなり言っていいかどうかわからないんですけれども、最初の出だしが資料2-1の経緯のところの黒い丸が3つあります。これのうちの上2つは技術的なものの役割を明らかにするということで、これはこれで今のところ良いと思うんですけれども、3つ目の国民の理解の増進や産業界への波及効果という、ここがかなり、ある意味では推進していく大きなハードルだなというふうに、私自身は思っています。
これが資料4にいきますと、これが非常に的確に3つにまとめられているんですけれども、これは非常に王道をいっていて、成果があって、課題があって、それをどうするかとなっていると思うんですけれども、その中に国民の理解や産業界への波及というものがちりばめられてしまっているということです。
この論理ですと、普通の技術者が考える論理と同じなので、忘れないという意味では4番目に国民の理解の推進や産業界への波及の貢献というのを別立てで出して、そこのハードルをクリアするという明確な1つの事項というふうにしたほうがいいんじゃないかなと感じております。
私自身の、今、思いついただけのことですけれども、国民の理解というのは2つぐらいあって、1つは先ほども出たように、平たく言うと人気とかわかりやすさですね。有人船のほうが人気があるというのはそのとおりだと思います。人が乗るほうが人気がありますし、個人で行くよりも集団で行ければもっと人気がつく、そういうのが1つだと思います。
もう1つは最新鋭の技術の技術フラッグシップになるということ。潜水艇が新しくなったこと以外に周辺のあらゆる関連技術の波及を目的とした技術フラッグシップというのにも国民の理解というものがあると思います。そういう意味で、その辺が重要になる。
産業界への波及というのは、なかなか定量的に言うといろいろ深いものがあると思われるので、今日、コメントはできませんけれども、国民の理解の推進や産業界への波及の貢献というところを最後、この委員会でというより、さらに推進するときには予算をとったり、いろいろ国民の支援も得たりということですので、そこをちょっと大きく扱われてはどうかなというふうに思いました。
【道田主査】  どうもありがとうございます。大変重要なポイントだと思いますので、今の点はまた事務局ともご相談したいと思います。
それでは、竹山先生、お願いいたします。
【竹山委員】  私のバックグラウンドは生物多様性とか海洋の資源、バイオ系、バイオ資源をどう利活用するかということで、ただ、コア系バイオを割とベースにやっていますので、ロボティクスと一緒にコラボしたりとかしていますので、ある程度、機械化とか、要するにマーケットの考え方というのがいつもある状況で研究をしています。
海洋関係はずっと長くかかわらせていただいているので、その問題点というところは常日ごろから委員会で議論させていただいているんですけれども、どんどん後ろになればなるほど、言うことがなくなってしまうので、向こう辺だとすごい大変かなと思うんですけれども、皆さんのおっしゃっていることも本当に私も言いたかったことと随分かぶってしまうので、よく聞かれるんですけれども、「何か開発することによってお金になるか」といつも言われるんですね。難しいでしょうね。マーケットはそんなにないし、会社自身がすごく特化していて、これはやるんだと、ミッションでやってみれば、そこで仕事しますけれども、例えばメディカル系で開発している人が海に来るかといったら、絶対に来ないですよ。つくっても数売れないからということになってしまうので、私も最近思っているのは、サイエンスに対するコントリビューションかセキュリティーか軍事か、そういうところが一番大きいのかなとは思っています。
そうするとサイエンスベースというのは大きいし、あと資源開発ですね。
だから余り産業化と言ったときに、そこから爆発的な何かが起こるというのは私は余り思っていなくて、逆に聞きたかったのは、先ほど、今までの歴史の中でバッテリーに関して、これは初めてだとおっしゃったんですけれども、じゃその技術が逆にそこでつくられたんだったら、普通の私たちのやっている環境の中にそれが波及したのかどうかということなんです。
逆はありそうなんですけれども、そちらで、例えば今回、新しく技術を開発して、新しい深海艇をつくるとしたら、そこでオリジナルで何かつくって、それが私たちの普段の生活の車に使われるとか、そういうことがあるのかなと思うと、逆のほうが多いんじゃないかと思うんですね。そうするとやっぱり技術を導入していくほうだと思うので、そこのところはやっぱり波及効果となると、どっちにどうなるのかなというのがあって、もしかして深海特有のことをやる、実は私たちの生活の中で、あっというような驚きのような技術が出れば、これは非常におもしろい話で、圧力に対する耐性のあるものをつくると、実は普通の生活の中でもこれだけ耐久性が上がるんですよみたいな発想が出てきたりとか結果が出ると、非常に産業的には1つのインパクトもあるのかなと思っています。
ですので、今のお話、ずっと皆さんは基本的に開発するという前提で話している方のほうが多かったけれども、「やめろ」と言っている人は誰もいないんですかね。ちょっとそこが論点のところで、ポジティブな方向に持っていくための論点なのか、ゼロベースで話しているかによって皆さん、意見が変わってくると思うんですけれども、そこの点がクエスチョンの部分もあります。
あと、有人か無人かというときに、私たち、ほかのところでいろいろと仕事をしていますと、それこそアンドロイド型のヒューマノイドみたいなのがある中で、例えば1万2,000に人が潜ったら、たしかに新聞はすごいですよね。報道すると思うんですけれども、いろんなことを考えると、今の未来社会で、ほかのところはAI等、そちらの世界になっているので、それこそ深海に行くのにアンドロイド型で行ってもいいんじゃないかな。そのときの非常に有名な人の顔をつけて行ったっていいんじゃないか。総理大臣の顔をつけて行ったっていいわけですから、そっちのほうが本当は技術開発って大きいんですよね。未来社会の未来都市とかあったときにそういうところでは。
あと先ほど、上がったり下がったりするときに時間がかかるとありましたよね。人でそれをやって、もし健康的なことで問題があったときというのは誰がそれを担保するんだと言ったら、アンドロイドだったら、多少、ちょっと不具合があってもいいわけですよ。あと多分、耐性がある。そこに新しい技術を導入するというような、と思うんですね。
今まで培った技術が廃れてしまうからと言うんですけれども、今までの技術は廃れてもいいと思うんですよ。新しい技術を入れて新しいものをつくるから、お国に「もっとお金をください」と言うわけで、今までを継承する匠だった話をされても、誰もお金は出さないと思うので、もう少し海洋だけじゃなくて、ほかの分野でどんどん発展している技術を導入していった、新しい未来型のものをつくるということも、その中で社会とのかかわりとかサイエンスとのかかわりをコントリビューション、アウトカムということを考えた開発の仕方をしてもらいたいなと思います。
【道田主査】  ありがとうございました。
さっきのバッテリーのことについては後ほど振りますので、お答えをJAMSTECの方にお願いしたいんですが、もう1つの点、ゼロベースで検討するのかどうかという観点がありましたけれども、私らは上の会議から「こうしろ」と言われている立場なので、もう要らないとか言うとすごく暗くなると思いますけれども、ニーズや目的を具体的に明らかにするというところで本当に必要なのかというところの議論はあっていいんだと思うんです。
そういう観点からゼロベースじゃないかもしれませんけれども、少しもとに戻った形での議論はぜひさせていただきたいなというふうに思っています。
私の意見は後で言うことにしまして、辻本先生、お願いいたします。
【辻本委員】  私の所属は、経済産業省のもとにあります独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構であります。私は、特に金属鉱物資源にずっと長くかかわっております。私の本部の主たる業務は陸域で、日本は今、金属鉱物資源をほとんど産出しておりませんので、世界全域でいろんな探査活動を推進し、日本企業の鉱山開発活動を技術的、ファイナンス面、いろんな側面から支援するというのが日頃の業務であります。
そういう中で最近、皆様ご存じのように、我が国のEEZの海域等、深海、海底域で鉱物資源のポテンシャルが結構あるということで、今、最も力を入れておりますのは沖縄の西方海域のいわゆる海底熱水鉱床、これの調査と将来の商業生産に向けた生産技術の開発、これを今、一番大きな技術課題の1つとしてやっております。
先ほど、JAMSTECさんのほうから紹介があったビデオの中で、1990年前後に沖縄海域あたりでブラックスモーカーとか熱水域とか、そういうものが結構紹介されていましたけれども、ああいう成果、新たな知見というのは今、我々の大きな活動につながっております。
今、我々の沖縄海域の調査の中では、相当の海底熱水鉱床の資源的なポテンシャルがあるということが明らかになってきております。
そういう中でAUVとかROV、これを皆、かなり活用して調査を進めております。
他の資源については、沖縄海域では深度は大体1,500メーターから1,600メーターですが、それ以外にも日本の南鳥島周辺海域のコバルト・リッチ・クラストと言う資源もあります。これは大体3,000メートル。それからあと国際鉱区で、我々がハワイの近くに持っておりますマンガンノジュールと言われている資源が大体5,000から6,000メーターということで、それ以外の資源は今のところは調べてございません。
6,000メーターの深いところについては余り知見がないので、鉱物資源があるかないかもわかりませんが、ただ、商業生産を将来可能にするという点では、それより深いところについてはなかなか困難性があるので、もし鉱物資源にかかわるような情報が深いところで得られれば、科学的には意味があって、いろんな成因論にも寄与するのかなと思いますけれども、将来の開発という意味ではなかなか深いところは難しいと考えております。
それから、先ほど、浦先生からあったような観点、やはり人が今まで、深いところに実際に行くということはかなり夢があって、一般にもアピールするので、私もそれは非常に望ましいことだとは思っておりますけれども、やはり、しんかい6500でできなかったこういうことが新たな次世代の有人調査船ではできるんですよと、そういう具体的なことを示すというのが非常に重要かなと思います。
以上です。
【道田主査】  ありがとうございました。
続きまして、西山先生、お願いいたします。
【西山委員】  今回、この委員会に参加させていただきましてありがとうございます。私は現在、未来工学研究所というところに所属しています。三菱重工の名古屋航空機製作所に入りまして、「宇宙ロケットをやりたい」と言ったら、「おまえはミサイルをやれ」と言われて、ずっと40年ほど、防衛省さんとの仕事をしてきました。
その経験をもとに今日のお話も含めて、コメントをしたいと思います。まず、システム開発についてです。ご存じのように、MRJの開発は53年ぶりです。MRJの開発を決めた時、飛行機の開発経験者はいましたが、旅客機を開発した経験のある人は誰もいなくなっていました。大体、会社では30年ぐらい仕事をするわけです。そうすると30年たつと前の人はいなくて、50年もたつと亡くなっている人も多くなります。そういうくらい時間があいてしまったので、開発に非常に時間がかかるし、苦労もしているわけです。
ですから、それをどうやってつないでいくかということが技術の伝承の話になります。
よく例にとって話していたのは、伊勢神宮の遷宮です。20年に1回つくります。20年に1回つくれば、前の人が残っていて技術が伝承できる。伊勢神宮ですから同じものをつくるのかもしれませんけれど。YS(YS-11)でもMU(MU-2)でも当時、私が入社したころは、製図板を使いドラフター使い、図面を手で描いていました。計算には計算尺を使ったり、手回しの機械式計算機を使ったりしていました。それが今、全部、コンピューターを使い、CADになっています。
そういうふうにツールが変わりましたけれども、やはり開発をしていくということを伝承していく。そういう意味で深海6500から26年たったのだとお聞きし、もうかなり厳しいですねというふうに思って聞いておりました。20年ぐらいでぜひ次の開発をやってほしいと思っています。30年だと何とかなるかな、このような感じでいます。それが第1点、システム開発と技術の伝承という部分です。
もう1つは私、防衛関係をやってきたものですから、安全保障の観点でシステム開発技術の流出を防がなければいけない。最先端技術であればあるほど、技術を保護していかなければならないと思います。システム開発技術がポイントです。さらに、取得したデータ、情報です。先ほどご指摘がありましたけれども、EEZのここにこういうような鉱床が眠っていますというような情報です。これは実に国家として非常に重要な情報なわけです。それをただインターネットに載っけて、バーッと世界じゅうに流していいんでしょうか。そういう観点での検討も必要であろう。このように思いました。
【道田主査】  ありがとうございました。非常に大事なポイントを2つ、お話しいただきました。
中野先生、お願いいたします。
【中野委員】  日本の有人宇宙輸送プログラムをどうすべきかということを京都大学で取り組んでおります中野です。さきほど浦先生のご指摘に、「成功しても人間が乗っていないとメディアも取り上げない」とありました。私もそう思いたいところですが、けっこうやっかいなようです。
NASAのアポロ計画では、11号以降19号までは、いずれも有人です。にもかかわらず、目立ったのは月面第一歩の11号と、いわゆる「サクセスフルフェイリア(成功した失敗)といわれている13号です。他の号機も成功しているわけで、LRV(月面ビークル)も投入されている。しかし身近な人たちに、11号と13号以外では、どんな活動をやったかと聞いても、誰も知らない。
一方で、人が乗っていないうえにトラブルの連続だった「はやぶさ君」が、あれだけ騒がれて人々に強い印象を残しました。したがって「成功しても人間が乗っていないとメディアも取り上げない」とは言い切れないと思います。このあたりはメディアの問題もからんでいるようです。有人宇宙開発と世論について京都大学で調査しているところなので、結果を精査した上で、何らかの機会にご紹介したいと思います。
もう1つは、JAMSTECに関する私の個人的な感想ですが、1999年11月のH-Ⅱロケット8号機打ち上げ失敗のときです。第1段ロケットの不具合で指令破壊となり、爆破された機体は父島の沖合に落下しました。その後すぐに、原因究明のために第1段のエンジンLE-7を引き揚げようということになり、動いたのがJAMSTECだった。3,000メーターの海底でエンジンを発見できるのか。「そんなの無理でしょう」と思っていたことを思いだします。たしか年末でしたね。
【--】  12月です。
【中野委員】  そのあと私は、宇宙開発委員会のH-Ⅱ8号機対策の特別委員として三菱重工の小牧へ行きました。たしかクリスマスの日です。そして重工での話し合いや情報収集が終わって名古屋駅で向かうバスに乗ろうとしていたとき、同行のNASDAの人の携帯電話に、「見つかった」という連絡がありました。驚くと同時に、感動しました。ですから、先ほど見せていただいた海底に横たわる燃焼器の映像は、私には忘れられないものです。そのあとすぐにニュースで映像を見まして、「これほどのことができるのか」と感心すると同時に、「燃焼器がこの位置にあるのなら、もうちょっと向こうを映してくれないか」とか、「ほかの機器の散乱状況も映してくれないか」と見入っていたことを思い出しました。先ほど堀田理事のお話を聞いて、潜水調査船に研究者とオペレーターが乗っていると、研究者はそういう判断と情報収集に集中し、オペレーターは調査船の操作に集中しながら活動できるということがわかりました。やはり有人調査船にはそういうメリットがあるのだと思います。以上です。
【道田主査】  ありがとうございました。
H-Ⅱのときは僕、海保にいて、「どの辺、探しましょうか」と相談を受けたんです。海流がどこへ流れているかという。余計なことを言いました。
山崎先生、お願いします。
【山崎委員】  私は宇宙飛行士の訓練の一環でJAMSTECさんで潜水士の訓練をさせていただいたり、アメリカの訓練では海底でアクエリアスと言いまして、閉鎖環境を模擬した、宇宙環境と近いような形で長期滞在の訓練も実施されておりますし、最近、海洋、宇宙、サイバーというのはフロンティアということで、よく並べて表現されることも多くなってきたかなと思っています。
私は、現在は内閣府にある宇宙政策委員会の委員ということもやっているんですけれども、その中で議論される論点と非常にいろいろ共通点がありまして、今まで委員の皆様がおっしゃられたことはちょっと省きますけれども、やはりフロンティアに挑む事業、プロジェクトとなると、純粋な科学とマクロ的な科学だけではなくて、安全保障に寄与する観点、あるいは産業に寄与する観点、それからまた広い意味での社会貢献ということも求めたいというところは全く一緒なのかなと思いながら、お話、拝聴していました。
そういう意味で特に防災は、これから非常に国家的にニーズが強まっていく中で、海洋探査にどのようなニーズがあるのか。それから生命科学の観点も、宇宙でも今、他の天体で水が発見された等といろいろな発見がありますけれども、海洋探査を通じて、幅広い分野とのつながりということを意識しながらいけるといいかなと私は思っております。
ですので、一枚紙でいただいた資料4の中の論点なんですけれども、特に3のところでスペック、システムというそのあたりを詰めていく中で、具体的な技術的なスペックやシステム、深海探査システムだけではなくて、それらのデータをどう使っていくか、また運用のシステム、そのことも含めた広い利用のシステムというのも考えて、そこを提示していくことで逆により広いビジョンが示せるのかなと思っています。
その中では、当然、科学的に一般公開するものが、安全保障的な、逆に保護するものといろいろな部分も含まれると思いますけれども、そのあたりの観点を聞かせていただければと思います。
【道田主査】  ありがとうございました。
それでは、大和先生、お願いいたします。
【大和委員】  東大の大和でございます。私自身は造船の設計とか製造、という分野の研究をしておりました。学校を卒業してから、しばらく航空宇宙技術研究所というところで「飛鳥」という飛行機をつくったり、それから大学へ来てからはバスの研究をやったり、いろいろ交通システム全般の研究をやっておりました。
今日、この委員会は次世代深海探査システムのあり方と、割り方広い範囲のことが書いてございますが、何をやるかということで全然、システム設計が変わってしまうと思います。
まず、本当に見に行くのか、はかりに行くのか、あるいは何か作業をしに行くのか、そういったことでそれこそ有人、無人も全然違うでしょうし、それからロボットシステムみたいにしなきゃいけないかもしれないし、作業をするんだったらパワーが要るかもしれないしというんで、全くつくり方が違うんじゃないかなと思います。
そういった意味で、資料3-2を参考にして、何をやるのかということをまず議論しなきゃいけないなと思います。
それから2つ目、世界はどこまでいっているのか。さっきも同じようなご質問がありましたけれども、どこまでいっていて、我々はその先、どこまで行くか。世界でお金をどうやって、どうせ日本だけじゃできないんじゃないかと思われますので、世界でどういうふうにお金を集めていくかということも考えなきゃいかんかなと思います。
またこれをやると、どこまで国民生活に貢献ができるか、科学的知見をふやせるか、ということを明確にしておかないと、多分、お金にはならないかなと思います。
山崎先生もおっしゃいましたけれども、いわゆる科学で知識の量をふやす、知識を拡大するのかどうか。知識を拡大するだけであれば、ニュートリノをやるのに400億円でしたか、同様にお金を使うとどれだけの知見が得られるか考える必要があります。
それから、国民生活への貢献ということ意味で、EEZで資源だとかエネルギーだとか、そういったものをどうやって取り出してくるのかというふうなこと、そういったことも数量的にもうちょっと考えておく必要がある。
深海で何が起こって、どういうメカニズムで何ができているのかというふうなことをちゃんと知るためにこういったことをするというのをアピールすることは必要と思っています。
システム開発的に言うと、最初のほうで申し上げましたことですけれども、本当に何をやるかということによって有人にするか無人にするか、地下に基地をつくって、そこでエネルギー供給なんかも全部やるとか、そこまではケーブルで何かつくっておくとか、また違うシステムも考えられるんじゃないかなと思います。
それから今までの話だと得られるデータについても、センサーとプロセッサーとデータベース、マルチメディアデータベース、そういったものをきちんと組み合わせて、どの程度の精度でどういったことを世界にどう発信するか、これも考えていかないと設計がしづらいなと思います。
科学的知見、国民生活への寄与、何をやるかよく考えて、よくシステム設計しないと、うまくできないかなというふうに、エンジニア的には思いました。
以上です。
【道田主査】  ありがとうございました。
期待したとおり、幅広くご意見をいただきまして、ありがとうございました。
私も一言だけ申し上げます。
重なるところは省略いたしますけれども、私自身は冒頭、ご挨拶申し上げましたように、専門は海洋物理学でありまして、2000年3月まで海上保安庁にいて、半分行政、ほとんど行政で、技術的には漂流予測といって、ものがどこかに落っこちちゃった、どこを探しに行けばいいのかということをやっていました。その観点で先ほど、「H-Ⅱロケットの破片がどこに行きそうですか」という相談を受けたことがあるという話であります。
大学に移ってからはもちろん海洋物理の研究をしているんですけれども、海洋基本法が成立して以降は海保で海洋情報管理、データ管理というものを担当しておりまして、その観点から、どちらかと言うと、そちらの方面でお声がかかることが多くて、この委員会の構成を拝見したとき、私のところの専門分野に「海洋政策」と書いてあって、「えっ」とかいう感じですが、どうも世の中から最近、そういうふうに見られている人間なのかなというふうに思っています。
そういうふうに思われているので、その観点から一言申し上げますと、ポイントをはかるのか、広くサーベイするのかという観点はありますが、この時代になってEEZを含む日本の海域の管理というのは、セキュリティーのみならずですけれども、環境保全も含めてですが、管理というものが多分大事になってくるし、大事だし、大事にしなきゃいけない分野になってきていると思うんです。
管理するためには、知らないと管理できないわけですから、少なくとも、知るべき手段を持っているということが大事だと思うんです。有人の深海探査艇がもしできたとして、それではかれる海域の領域というのは非常に狭いですけれども、少なくとも、はかろうと思えばはかれるという、これも多分、大事な観点かなというふうに私自身は思っています。それが1点です。
それから先ほど、中野先生でしたか、成果のインパクトの話は非常に大事だと思いまして、我々研究者の立場だと、すぐ論文が幾つ出たとか、こんなインパクトのあるネイチャーサイエンスに載ったとか、そういう話をする、指標にしがちなんですけれども、先ほど、ご指摘いただいた点は非常に重要で、どのくらい社会に成果が浸透して、どれくらい知られているかというのを調べたほうがいいかなと、私もご指摘を伺って、非常に強く思いました。
以上の2点を含めて、今後、事務局のほうでまた論点整理も含めて、議論していただいて、次回の委員会に臨んでいきたいなというふうに思いますが、先ほど、お約束いたしました竹山先生からご質問のあった要素技術のうち、例えばバッテリーとか深海探査システムの開発を通じて開発された技術が別の分野に生かされている例はあるのかという観点のご質問だったかと思いますけれども、何かその点、コメントはございますでしょうか。
【磯崎センター長】  ご指摘いただきました1つ、導入する側じゃないというお話ですけれども、たしかに陸上に比べて、海のほうは条件が1つも2つも多いということで、陸上である機械を海で使うことによって、少し開発の問題であるとか海の中で、なかなかアクセスできない場所でありますので、その信頼性の問題、そういうところでやっぱり導入したものをさらに高めていく、そういうのがベースになるのは事実であります。
例えば燃料電池、うらしまは出力、容量が大きいのを持っていますけれども、最近のミライという自動車に使えるかと言うと、陸上のほうがどこでも酸素はとれる、あるいは水もどこにも出せるという条件があると、どうしてもやっぱりそっちが大事となる。今はと申し上げたほうがいいのかもしれません。これから世の中のニーズが変わってくれば、そういう技術も生きるかもしれない。
1つだけ、あそこで例を挙げましたのは今、水族館が非常にみんな、きれいな大きなアクリルの窓がありますけれども、ああいうアクリルの窓を見ていると、あれはもともとしんかい2000でやったときのアクリルの窓がどんどん発展して、あんな厚い窓ができることになったことによって、今のような水族館でそういうのが発達してきたということには貢献しているというふうに思います。
【道田主査】  ありがとうございました。
時間を10分ほどオーバーしてしまっているので、そろそろ締めたいと思うんですが、何かこれだけは言っておきたいということはありますでしょうか。
この時点で委員の先生方。よろしいですか。
今日に限らず、これから何回か委員会は続きますので、今後の議論も深めていきたいなというふうに思いますので、ぜひご協力をよろしくお願いいたします。
それでは、これで議題のほうはこなしたことになったと思いますので、今日は第1回目ですので、共通の認識を得た上で、大まかな観点から、大きな観点からそれぞれの先生方にご意見をそれぞれいただくということをさせていただきました。
これで終わりにしますけれども、次回以降のスケジュール、その他について事務局のほうにマイクをお返ししますので、よろしくお願いいたします。
【事務局】  本日の資料につきましては後日、文科省ホームページに掲載予定です。また、議事録につきましてはご確認いただいた後に、その後、また後日、ホームページに掲載予定となっておりますので、ご確認のほどをよろしくお願いいたします。
次回につきましては2月、3月あたりを予定しております。
日程調整につきましては事務的にさせていただきますので、ご協力、お願いいたします。できる限り、多くの委員が集まるところでセットさせていただく形になると思いますので、ご了承ください。
次回の議題につきましては、引き続き、関係機関のヒアリング、特に諸外国の調査の動向等を中心にご議論させていただければと考えております。
以上でございます。
【道田主査】  ありがとうございました。
若干、時間をオーバーしてしまいまして申しわけございませんでしたが、本日はどうもお忙しいところ、大変ありがとうございました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。以上を申し上げて、本日の会議を終了とさせていただきます。 ありがとうございました。

お問合せ先

研究開発局海洋地球課