平成23年8月1日(月曜日) 15時00分~17時00分
文部科学省3階 3F1特別会議室
阿部、磯﨑、浦、浦辺、平、瀧澤、寺島、増田 の各委員
笹木文部科学副大臣、田中政策評価審議官 井上海洋地球課長、鈴木海洋地球課長補佐、川口企画調査係長、竹内技術参与
【関係省庁】 総合海洋政策本部事務局 竹田内閣参事官、谷内閣参事官 資源エネルギー庁資源・燃料部 久森鉱物資源課長補佐 海上保安庁海洋情報部 冨山海洋調査課長補佐 【説明者】 東京大学大学院 工学系研究科 加藤泰浩 准教授
【浦辺主査】 お暑い中、どうもありがとうございます。それでは時間になりましたので、ただいまより、第14回科学技術・学術審議会海洋開発分科会海洋鉱物委員会を開催いたします。本日もご多忙中に関わらずご出席いただきまして、まことにありがとうございます。
【浦辺主査】 今回も、資源エネルギー庁資源・燃料部鉱物資源課の久森課長補佐、海上保安庁海洋情報部海洋調査課の冨山課長補佐に御同席いただいています。久森課長補佐は、前回まで御同席いただいていた久保田課長補佐の後任でいらっしゃいます。
【久森鉱物資源課長補佐】 はい、宜しくお願いします。
【浦辺主査】 また、内閣官房総合海洋政策本部から、谷参事官、竹田参事官に御同席いただきます。
【浦辺主査】 今回は、笹木文部科学副大臣にも御出席いただいております。どうもありがとうございます。それでは、まず、笹木副大臣から御挨拶をお願いします。
【笹木文部科学副大臣】 どうもお疲れさまでございます。海洋鉱物委員会の委員の皆様には、お忙しいところ、本当にありがとうございます。
先月でしたか、ハワイ沖やタヒチ周辺に大量のレアアースが埋蔵されている可能性があるという研究の成果が報告されたと聞いています。前回出席した際にもお話させていただいたのですが、調査、発見から最終的な資源獲得までの流れをなるべく短縮する事ができないか、ぜひ、更に色々なお知恵、御意見をいただきたいと思っております。
この研究成果は、わが国の経済水域を対象としたものではないということです。公海上のものについては、国際海底機構での手続等、色々なやり取りがあるようですが、このような点も意識した上で、獲得までの道筋について、色々なアイデア、御提案をいただけたらありがたいと思います。
私は途中で抜けさせていただきますが、なるべくたくさんの御意見をお伺いしたいと思っていますので、宜しくお願いします。
【浦辺主査】 副大臣、どうもありがとうございました。ただいま副大臣からコメントがございましたように、公務の都合上、途中で退席されるということでございます。
【浦辺主査】 それでは、議事に入ります前に事務局から資料の確認をお願いします。
【川口企画調査係長】 事務局でございます。資料の確認をいたします。資料は、お手元に揃っておりますもので、一番上に配席図、その次に議事次第がございます。議事次第にありますとおり、資料は3つございます。
資料1といたしまして、今日お話をいただきます加藤准教授からいただいた、カラーのホチキス止めした資料がございます。
資料2といたしまして、「海洋資源探査技術実証計画(案)」というものを、やはりホチキス止めで1部用意をしてございます。
資料3といたしまして、「今後の予定について」を1枚用意してございます。
更に参考資料といたしまして、海洋鉱物委員会の委員の名簿、更に委員の皆様方には、参考といたしまして、委員の皆様に御照会した版からの見え消し版という形で、先程の計画の案の見え消し版を1部用意してございます。
更に、いつものことでございますが、緑色のファイルとして、海洋開発分科会机上資料というものを御用意してございます。これにつきましては、お持ち帰りならないようにお気をつけいただきたいと思います。
事務局からは以上です。
【浦辺主査】 どうもありがとうございました。
【浦辺主査】 それでは、お手元の議事次第に従いまして、議事を進行していきたいと存じます。最初の議事は、レアアースを含む海底堆積物に関するヒアリングということで、東京大学大学院工学系研究科の加藤泰浩准教授にお越しいただいております。どうもありがとうございます。この研究は、大変大きく新聞でも報道されていまして、大変話題になって、一般の方も非常に関心の高いテーマだと思いますけれども、まず、本日は、この研究について、加藤准教授からお話をいただきたいと思います。どうぞ宜しくお願い致します。
【加藤准教授】 東京大学工学系研究科の加藤でございます。宜しくお願いします。本日は、我々が太平洋で見つけた新しい海底鉱物資源「レアアース資源泥」というものについて、その発見の経緯と特徴を、簡単に説明させていただいて、その後、実は我が国の排他的経済水域内にもかなりあるのではないかという話もしたいと思います。また、その開発の可能性がどのようなものなのかというところまで、できれば少しお話をさせていただければと思います。
さて、レアアースについて、皆様御存じかと思いますが、非常に簡単に説明させていただきます。レアアースとは、原子番号57番のランタンから71番のルテシウムまでの15元素に、化学的な傾向が似ているイットリウムとスカンジウムを加えた17元素の総称であります。我々が、レアアースについて議論する際にしばしば使うのは、質量数の小さな、軽いレアアースと、質量数の大きな、重いレアアースという分類です。これを、「軽希土」「重希土」、あるいは「ライトレアアースエレメント」「ヘビーレアアースエレメント(HREE)」といっています。これは後にまた出てきますので、覚えておいていただければと思います。
軽希土のレアアースというものは、基本的には中国だけではなくて、アメリカやオーストラリア等の陸上鉱床でも取れる資源です。それに比べて、非常に大きな問題があるのは、実は重希土の資源の方です。これは、南中国だけで生産しているというものがありまして、基本的には重希土が非常に重要である。なおかつ、産業を考える上でも、ぎりぎり重希土ではなくて中希土とよく言われるようなユーロピウム、あるいはテルビウムやディスプロジウムのような重希土が産業的にも非常に重要であるということであります。これをなんとしても確保しなければいけないのです。
レアアースエレメントの大きな問題は、基本的には中国が97パーセントを生産していて、寡占状態であるということです。そうした中で、我が国のレアアースの需要はどんどん伸びている。様々な最先端の産業に使われるようになっていて、これから減ることはなく、どんどんどんどん需要が増えてくる。そうした中で、中国は今、何をしているかというと、価格統制、価格をコントロールして、ある一定の価格以上でないと、絶対に出さないということをやっております。そのために、ここ半年でレアアースの価格は異常なほど跳ね上がっています。3倍から5倍の異常な跳ね上がりを見せていて、これは非常に大きな問題です。これは、日本だけではなくて欧米の国も巻き込んだ非常にワールドワイドな問題になっております。そうした中、昨年9月の尖閣諸島沖の件でいわれているように、中国はレアアースを外交カードとして使っています。政治のカードとして使っているということが、非常にわが国にとってストレスがかかる問題になっているわけであります。
更に、中国は国内向けのレアアースの価格と国外向けの価格を極端に違えていて、レアアースが欲しいのであれば、中国に工場を持って生産しろということをある意味では要求をしているわけです。ここで何が起こるかというと、中国に工場を持つことで、日本の最先端技術が流失するという懸念が出てくるのです。これが今、我々が一番心配しなければいけないことだと思います。
では、どうすればこういうものを解決できるのか。ひとつの非常に端的な解決の仕方として、今、中国の陸上で採っているもの以外に、新たなレアアースの資源を確保することが最も重要ということです。
そうした中、我々は、新たなレアアース資源が海の泥の中にあるということを見出しました。今日はあまり時間がないので、細かい話はできませんが、既知の海底鉱物資源として、ここに示している3種類のものがありました。我々が見つけた泥の資源は、この3種類とは全くタイプが違っています。後で説明しますが、海底に層状に積もっています。薄いところだと2メートルくらいですが、厚いところになると70メートルくらいレアアースを含む泥が分布しております。これは、今、我々がNature
Geoscience誌に公表したデータは、一部公海でなくて、フランスやアメリカの排他的経済水域のものもありますが、それを除けば、基本的には公海上のデータです。ところが、実は、我が国の排他的経済水域でもかなり確度の高いものを既に見つけております。今日は、その話も踏み込んで、ちょっとさせていただければと思います。
発見の経緯を含めて、我々の発見したレアアース資源泥というものはどういうものであるかを簡単に説明させていただきます。これは、元々、東大の海洋研究所の小林和男先生という、もうリタイヤされた先生ですが、小林先生が、1968年から84年にかけて太平洋全域で、ピストンコアという方法でコアの採取をされておりました。この方法ではあまり深くまでは採れなくて、一番深いものでも、厚みが10メートルくらいしか採れないのですが、小林先生はこれを太平洋全域でかなり広範囲にやられておりました。我々はこの泥の試料をもらい受けまして、その泥を分析したわけであります。すでに2008年とかなり前の段階で、太平洋にレアアースの泥がかなり広範囲で分布していることを既に把握しておりました。
この分布から、多分このようなモデルが成立するだろうと考えられます。中央海嶺というところでは、硫化物の鉱床を作るだけではなくて、大量の鉄やマンガンの酸化物を放出します。このような鉄に富んだ懸濁物質のようなものが放出されると、それは表面の吸着能が非常に高いために、レアアースをはじめ、バナジウム、コバルト、ニッケル、モリブデン、オスミウムのようなレアメタルをべたべたと吸着して、海底に沈積して、どんどんどんどん溜まっていくということが起こる。これは、実は1990年代にイギリスのケンブリッジ大のグループが、このようなメカニズムでレアアースが吸着されているということを既にNatureに報告しております。つまり、メカニズムそのものは、もうすでにある程度わかっていました。我々の研究成果は、こうしたメカニズムで生成したレアアースに富んだ泥がどのように分布しているかを、世界に先駆けていち早く把握したということであります。ところが、レアアースの濃集メカニズムは、実はこれだけではないということが最終的にわかってきました。これは後でお話します。
ただ、小林先生の試料は、基本的には深さ10メートルくらいまでしかない。資源として実際にどのような有用性があるかを把握するためには、もっと深い情報が必要になるわけです。そこで、私たちは、DSDP
/ ODPすなわち国際深海掘削計画で採られた、研究者であれば誰でも使える、アメリカのテキサスに保管されている試料をいただいてきて分析しました。まず、こことここ、2箇所のプロットを示しています。こちらは深度30メートル、こちらは80メートルです。これがどのようなプロットになっているかというと、ヘビーレアアースについてのトータル量ですが、中国が採っているものは大体、この緑のゾーンです。それに比べて、2倍くらいに達するようなものが、大体、10メートルくらいの厚みでタヒチ沖に存在している。さらに、ハワイの近くでいうと、中国と同じくらい濃度であれば、厚さ70メートルにもわたって沈積しているということがわかったわけであります。
基本的な特徴はヘビーレアアースに非常に富んでいるということです。それから、これだけ広範に分布しているとなると、資源量としては非常に膨大で、かつ、探査が容易である。海の広い範囲に泥として溜まっているものですから、たとえば極端な話、ある海域10キロメートル四方の海域にどのくらい資源があるかを調べるときに、4点、ボーリングを行えば、それだけで大体の資源量を把握できるわけです。非常に簡単に量がわかる。どのくらい資源があるかということが、非常に把握しやすい。そのような意味で探査が容易という特徴がここには書いてあります。
さらに、もう2点、非常に大きいメリットがあります。それは、開発の障害となる放射性元素、ウランやトリウムのような放射性元素の問題です。もし、放射性元素が泥の中に多量に含まれていれば、開発した場合にそれを拡散してしまうことになります。ですから、放射性元素が含まれているかどうかが非常に重要なポイントです。地殻濃集度という、一般的なその辺の石ころ、大陸地殻の濃度に対してどれくらいその元素が含まれるかという値がありますが、我々の発見したレアアース資源泥に含まれる放射性元素は、大陸地殻の5分の1あるいは数分の1くらいしかないことがわかります。つまり、ほとんど含んでいない、問題がないということです。このプロットを見ていただくと、中国の陸上鉱床に比べて、重希土が高いという特徴がよく現れています。対数目盛でプロットを書いていますから、大体、一般的な地殻濃集度の20倍くらいのものが、一番高いものになるということがわかります。
それと、もう一つの非常に大きなメリットは、これがきめの細かい泥だということです。きめの細かい泥なので、薄い酸で、短時間で、室温でサラサラと洗うだけで、ほぼすべてのレアアースを回収することが可能です。これは、非常に薄い硫酸と塩酸に、それぞれ、1時間、3時間さらしたときのデータです。室温に置いて短時間さらしているだけでもうまく回収できるということを確認しております。このように、レアアース資源泥は、三拍子も四拍子も揃った非常に有望な資源であると我々は考えております。
ところが、小林先生の試料だけを見ていると、海底に近いところしか情報がない。もっと深いところを知りたい。そこで、科学技術研究費補助金の基盤研究(S)、科研費の基盤Sという研究費をいただいて、とにかくたくさんのデータを取りたいということで、アメリカのテキサスに保管されている合計71か所のコア試料をいただいてきました。全部で総数7,000個弱の試料を得ております。大体、コア全部について50センチおきに、1試料ずつ採っていきます。これは非常に単純ですが、忍耐力の必要な作業です。このようなことを地道に繰り返しながら、基本的には太平洋全域にどのようにレアアース資源泥が分布しているのかを把握したいということです。高密度の三次元情報を取得するということを、我々はどんどん進めているわけであります。
2つ目にはちょっと難しいことが書いてありますが、海の泥というものは、今現在も溜まっている。今現在の海底に溜まっているものは、現在の海で溜まっているものですが、コア試料では、下に行けば行くほど、過去の海で溜まったものです。過去の海の情報を見ていることになるのです。大体どれくらいかというと、新生代といって6,500万年前くらいの過去の太平洋で溜まったものを実は見ていることになります。過去の太平洋にはどのように元素が分布していたか、物質循環がどうなっていたのかということを復元することができます。この復元ができると何が重要かというと、実は太平洋で71本採られていて、すごくいっぱいあると皆さん思われるかも知れませんが、これは太平洋という広い領域に71本しかコアがないわけです。そうすると、コアとコアの間というのは、空白域が200キロ、300キロ離れている。1本1本、すごく離れている。ある意味、空白域だらけで、その空白域を補完するためには、どのように分布しているかというサイエンスが必要なのです。科学が必要で、科学をしっかり押さえることで、最終的には、さらに高精度の資源量の予測ができる。言ってみれば、非常にサイエンティフィックな研究を展開して、我々は、科研費の基盤Sを昨年からいただいて、こうしたものを包括的に研究したいということを始めたわけであります。2年目である程度、把握ができて、Nature
Geoscience誌に論文を発表したわけです。
これは泥の様子ですが、こういった茶色い泥にレアアースが多く含まれています。大体、コアは1本1.5メートルくらいで、大体6メートルくらいのコアの試料を並べて、我々は50センチおきに一箇所ずつ採ってくる。この白い所は、別の人が別の目的ですでに採っている部分です。つまり、泥の研究を別の目的でやっている方がいるわけです。こちらは、先ほどの茶色のものとは違う真っ白い色の泥です。これは何かというと、有孔虫という生物の化石がいっぱい入っている泥が溜まっているわけです。このような泥は、基本的にはレアアースをほとんど含んでいない、ものすごく濃度が薄いわけですが、我々はそのようなところもあえてすべて採取しております。「ある」ところだけを把握するのではなくて、「ない」ところもしっかり把握しないとダメだという目的で全部取ってある。これは、その中間的な色合いのものですが、そのようなものもサンプリングしてきたわけです。
これは、Nature Geoscience誌の論文のですね、第1図でありますが、これはですね、表層2メートルです。要するに海底面から2メートル、今現在の海の中で、ごく最近溜まった泥のどこにレアアースが多いかということをプロットしております。こうやって見ていただくと、∑REYというのは、レアアースとイットリウムを足した濃度でありまして、これが、大体400ppmを超えるものは資源としてポテンシャルを持っている、と我々が考えているものであります。そのように見ていただくと、タヒチはサイト76の近くにありますが、このサイト76を中心とすると、タヒチの東側にかなり濃度の高いものがある。それから、ちょうどハワイがこの辺ですが、ハワイの東側西側に、濃度としてはタヒチ沖よりも若干落ちる、大体平均でいうと700ppm弱くらいのものが分布しているということがわかりました。更に深度方向にどうなっているかというと、タヒチ沖、南太平洋で見ると、ちょっとわかりづらいですが、濃度が高い部分を黒で示していますが、軒並み黒い部分がすごく多いです。ただし、すごく濃度は高いけれど、厚みが薄い。タヒチ沖は厚みが薄くて、2メートル、3メートルくらいのものから、厚いもので10メートルくらいのものがある。場合によってはですね、上10メートルには全然ないのですが、下30メートルくらいにはかなり濃いものがあることもある。このようにバリエーションがあるのですが、基本的には、南太平洋は濃度がものすごく高いけど厚みが薄いという特徴があります。それに対して、ハワイ周辺、北太平洋では、レアアースの濃度は400ppm~1,000ppmくらいのものが卓越するのですが、そういったものが、30メートル、50メートル、あるいは、一番厚いものだと70メートルを超えるものが分布しているということがわかっているのです。これはいくつか代表的な深度プロファイルを示したものですが、今言ったように濃度はあまり高くないけれどやたら分厚いというものと、濃度はすごく高いけれど厚さ2メートル弱ですというもの、それから、上の方10メートルの濃度は薄いけれど下にすごく濃い濃度のものがあるということを示しております。こういった深度情報も全部、把握しているわけです。
では、元素の資源泥がどうやってできるか。最初に話しましたとおり、これは中央海嶺の熱水活動で放出された鉄の酸化物の懸濁物質に吸着したものであろうと単純に考えていました。横軸に鉄をとって、レアアースを縦軸に取ると、レアアースの資源泥のもとになる鉄質の懸濁物質が堆積物中にたくさん入ってくれば、横に、鉄の濃度が高くなる。そうすると、レアアースの濃度が高くなるというトレンドが見えるわけです。確かにここに傾きが緩やかなのですが、そのようなトレンドがわかります。しかし、それと比べて、実はそれよりもレアアースの濃度が非常に高いものにどのような特徴があるかというと、鉄の濃度がそれ程高くなくて、非常に急激な傾きのトレンドを持っているものがあるということがわかりました。これは、堆積物中にPhillipsite、十字沸石というものがかなり多いということがわかりました。
今、福島の原発の事故で沸石というものを使ってセシウムを吸着して、処理をしているわけですけれど、それと原理的には同じです。沸石というものは表面の吸着能が非常に高いので、海底の泥では、沸石がレアアースを吸着しているということがわかる。鉄のトレンドとPhillipsiteのトレンドと混合したようなものがあるわけですが、基本的には、そういったものがレアアースの資源泥を形成しているらしいということがわかってまいりました。我々はこの2つの海域で総量としてどのくらいレアアース資源があるか見積もってみました。手に入るデータはというのは、南太平洋で4本のコア、厚みはかなりバリエーションがありますが、1.6~18.5メートル、資源泥の厚みですと平均で8メートルくらい、平均濃度が1,054ppmとなっています。こちら側がハワイ、北太平洋で、23.6メートル、625ppmという平均値です。こういったことをすべて勘案すると、今言った、この2つの海域で、大体、陸上埋蔵量の800倍のレアアースがあることがわかりました。
今日は、Nature Geoscience誌に全く書いていないことをお話したいと思います。日本近海にもありそうだ、ということです。日本の太平洋側のこの海域には、1億から1億2千万年前に南太平洋で生まれた島があります。南太平洋で生まれた島が、プレートが動くのに従って日本近海まで移動してきて、現在に至っています。その途中で、このような資源泥を作る可能性が高いところを通ってくることに注目しました。この島を載せた海洋底が、現在資源泥が溜まっているあたりを通ったのは、今から8~9千万年前、白亜紀の頃と考えられます。白亜紀の頃というのは、熱水活動が最も盛んな時期として知られていますので、資源泥が現在より効率的に生成された可能性があります。そうすると、ある深さより下の泥にはレアアース資源泥が相当あるのではないかと考えられます。そこで、日本周辺海域で採られた3本のコアを調べてみました。残念なことに、コアの回収率が極端に悪くて、あまりうまく採れていないのですが、泥が採れた部分を見てみると、想像以上にレアアースの濃度が高いことがわかりました。そして、我々が予想したとおり、白亜紀の頃にこのような泥がかなり溜まっていることもわかりました。ただし、我々が持っているデータというか、得られているデータというものが非常に限られている。非常に断片的なデータしかないので、私たちとしては、この海域でも多数のコアを得たいと思っています。コアを得ることによって排他的経済水域内に、レアアースの資源泥がどのくらいありそうだということを、一刻も早く把握したいと思っております。
資源泥には、メリットだけでなくデメリットも当然あるわけで、それは何かというと、深海にあるということです。どのくらい深いかというと、タヒチ沖だと大体、4,000メートルくらいです。一番、条件のいいところで4,000メートル。ハワイの近くですと、大体5,000メートルです。5,000メートルくらいのところがターゲットになるのかなと思っているわけです。では、そういった非常に深いところから、実際に泥が採れるのかという問題があるわけです。実は、紅海に重金属泥といって、銅や亜鉛の硫化物を含む泥がありました。その資源として開発ができないかというので、1979年に、サウジアラビアがドイツの鉱山会社に委託して、ドイツの鉱山会社がテストを行っております。水深2,000メートルのところから年間4,000万トンの泥を採掘、回収できるというテストを、1979年ですから30年も前にしております。30年前に2,000メートルでそれくらいできているのだったら、4,000メートルを超えていたとしても、今の技術であればいけるのではないかと、今のところ単純に思っています。
では、どのくらい、泥が資源的な価値を持つかということですが、サイト76、タヒチ沖の一番濃度の高いところの厚さが10mくらいあったところですが、そこの実海域で4平方キロメートルくらいを開発すると、泥の部分というのは2,600万トン、つまり4,000万トンの半分強ですね。これくらい採れるのではないかと。採るとどの程度のレアアースの量になるかというと、総レアアース量でいうと日本の年間消費量の大体1倍、同じくらいになると言われています。一番重要だと言われているディスプロシウムだと日本の年間消費量の大体2倍くらいが手に入るということであります。ちなみに、これは書いてありませんが、今もレアアースの価格が非常に高いので、大体、どのくらいの価格になるかというと、8,600億円、1兆円弱の価値を持つことになります。
私は、もともとサイエンティストなので、開発ということに関しては素人ですが、現時点で会社の名前を出すことはできないのですが、海底資源の開発ができる会社の方々と検討しております。リフティングシステム、つまり泥をひき上げるシステムですが、これはエアリフトといって、要するに管で空気を送り込んで泥に混ぜて浮力を与えて、泥を上に揚げることができるのです。そのような一般的に行われているエアリフトの方法で、これは十分にできるだろうというようなことを聞いております。リーチングシステムそのものは、確立された技術でありまして、この辺はうまくいくでしょう。ロードマップと書いてありますが、今、何がやりたいかというと、実際に採れるということを実証したい、採って見せようじゃないか、ということがその会社の方の言い分です。大水深からのリフティングはPhase1に来ています。数値モデルでは十分いけそうだというので、今、細かいところをチェックしている。次のPhaseが非常に重要ですが、我々は、実際に採った泥をある程度の水深、4,000メートルくらいのところからどのくらい引き上げることができるかという実証実験をぜひしたいということを考えていて、それを受けて実海域に拡張できるのではないかと考えています。最終的には、私たちとしては、何としても、日本の将来のために、レアアース資源泥を実際に開発したい。私自身は、鉱床学や古海洋学、つまり資源探査の部分ですが、いろいろな探鉱や製錬、あるいは環境評価、経済評価の方々と一緒に、日本のためになるということで、オールジャパンで実際にこうしたものを開発したり、実現したりしたいと思っています。以上です。
(拍手)
【浦辺主査】 ありがとうございました。それでは、御質問等お願いいたします。
【笹木文部科学副大臣】 御報告ですと、有害なものはあまり出ない、海洋汚染的な物はあまりないということでした。そうすると、あとはコストということだろうと思うわけですけれど、これはやってみないとコストはどのくらいかというのは、実際にはわからないのでしょうけど、リフティングの実証実験をやることで、大体、コストは出てくるものなのでしょうか。
【加藤准教授】 コストについてはですね、まずレアアースの価格がすごく重要です。現在は、価格が異常に高いわけですが、半年前くらいの価格が、もし適正な価格とすると、その価格でも経済的には多分大丈夫だろうと思っています。先ほど、我が国の年間消費量分のレアアースの価格を8,600億円と言いましたが、あれが4分の1、2,000億円になってできるかできないかとなったら、それはできると踏んでおります。
どこが一番難しいのかと言われたら、多分、環境ということでよく言われるのですけれど、泥を上に揚げてレアアースを採った後に、それをどこに処分するかということです。非常に単純に、陸上に泥を廃棄してあげるということが、一つのやり方だと思います。もう一つは、海に戻すという方法です。表面に泥をばら撒いてしまうと、それはやはり、表層にいる生物にとっては非常にダメージがある、悪い影響が出るのは間違いありません。ですから、たとえば500メートルや1,000メートルくらいの深さのところで下に落とす、ばら撒くということを考えています。泥を戻す管をあまり長くして、回収しているところと同じところでばら撒いてしまうと、既に吸い上げて製錬した泥をもう一回吸い上げるという馬鹿なことになってしまうので、500メートルや1,000メートルからばら撒けば、非常に広い範囲で拡散するので、吸い上げる側にはそれほど問題ないだろうというのが、一つの案ではないかと思っております。
ただ、先ほども言いましたが、別に言い訳ではないですが、私は環境評価のようなことをやる専門家ではないので、ぜひとも、それは専門家のお知恵を借りながらやるべきだと考えております。
【笹木文部科学副大臣】 細かい条件は考えずに、たとえば、輸入している量の大体3割くらいを、このやり方で獲得しようと思うと、実現まで何年くらいかかるものですか。
【加藤准教授】 まず、基礎研究として、どこにどれくらいありそうかということを調査するのに、多分、最速で3年かかるでしょう。僕自身は、太平洋の泥71地点分を2年間でやったので、その経験からすると、もし、ある海域で35本のコアを採ってくるのであれば、1~2年で全部のデータを出せる自信はあります。その自信はあるのですが、その先、ではどの海域が一番良さそうかということをもう一回、精査しなければいけない。もっと細かく、そこが本当に一番良いかどうかを精査するのに、多分、1~2年かかります。
私はそこの専門ではないのですが、実証試験はそれほど難しい話ではなくて、既存の掘削船を流用する形で実証試験ができるのではないかと開発会社の方は言っています。実証試験そのものは、多分、半年もあればできるのではないでしょうか。そう考えていくと、最速で行くと、5年後くらいにはいけるのではないかと思っています。私はあまり、悲観的な人間でないので、やろうと目標を持ってやることがものすごく重要だと思います。
【笹木文部科学副大臣】 はい。わかりました。
【阿部委員】 住友金属鉱山の阿部です。この話は以前にも、何かの折に聞いたことがありました。そのときに社員が報告を聞いたときとちょっと印象が変わっておりましたが、改めて聞くと非常に興味深いことだと思います。
ただ、今、レアアースというのは、我々、日本の鉱山会社というのは、手がけられないのです。というのは、今、お話されたとおり、中国に非常にものすごく価格をコントロールされている。我々が入っていったら、叩きのめされるだろうという恐れを鉱山会社は持っていて、アンタチャブルになっています。正直な話、我々には陸上でも海上でも、やろうという機運は全く生まれていません。
先ほど、そのマーケットのお話がございましたが、その規模について、8,600億円というお話がありました。我々は、今のマーケット規模は以前から2,000億円ないし4,000億円くらいかなと考えておりました。最近、値段が上がっているのは間違いないのですけれど、このような採掘船のコストを、いっぱい努力して下げなければ、とてもじゃないけど、やれないだろうなと考えています。たとえば市場規模4,000億円のものに対して、1日5,000万円くらいかかる採鉱船を頭に置いたら、はて、どうなるかな、というのが、民間なものですからすぐ頭に浮かんでおりました。
でも、これだけのものでしたら、もう調査をやって、ぜひ、進めていただきたいと思いますね。我々も協力できるところは協力していきたいと思います。以上です。
【平委員】 私はものすごい興味を持って聞いております。この間、ちょっと、加藤さんのお話を聞いて、そのあと、酒飲んで盛り上がりましたけれど、今日もちょっと、酒飲みたい気分になりました。すばらしく面白い話だなと思いました。
我々もレアアースが海底の泥にあるということはわかっていましたけど、資源という目で見ることによって、全く違う見方ができるという発想の転換がすばらしいと思います。
同時に、色々な御意見がありましたけれど、このライザーシステムは、かなり色々なところで使われているシステムです。場合によっては、貨物船にライザーを乗せて、石油の開発をやっているところもありますし、掘削船でなくてこのような開発のシステムというものは、割と多く存在しますし、かなり格安にできるのではないかなと思います。技術も前にJOGMEC、その前身の金属鉱業事業団がマンガン団塊の開発の時にエアリフトの問題があって、相当研究したという実績もあるし、日本にその蓄えもありますので、5年と言わず、3年くらいでやると、力を貸していただければと思います。宜しくお願いいたします。
【浦委員】 東大の生産技術研究所の浦でございます。
まず、日本近海を調べるということで、見せていただいた中には、それまでは、濃いものが発見されていないわけですね。それはどういう理由なのでしょうか。何か特別な理由があるのでしょうか。
【加藤准教授】 あまり発見されていないというよりは、ちゃんと調べられていないというのがひとつあると思います。
【浦委員】 今まであまり、おもしろくないところだったという意味ですか。
【加藤准教授】 いや、そういうわけでは全然ありません。我々も、元々は太平洋全域をやっていて、それで、経済水域中で可能性、ポテンシャルのあるところはどこだろうかと考えました。ちょっと毒々しい色の図で、海洋地殻の年代を表したものですが、先ほどもお話しましたとおり、この海域が一番古いのです。古い海洋地殻にのっているということは、履歴がそれだけ複雑だということです。ずっと太平洋をドリフトしながら、色々なところで泥を獲得しうるという可能がある。そのような意味で、もともとポテンシャルを持っているとしたら、この辺の泥ではないかというので、調べました。実際には、ちゃんとあんまり細かくは調べられていないと多分思いますが。
今回、調べてみて思ったのは、とにかく、コアの状態があまり良くないですね。コアが得られているところが非常に少ない、ほとんどノーコアですね、ここの特徴というのは。それだけコアを採る時に失敗していて、あまりよろしくない。よろしくないコアの採り方になっているので、ここはしっかり採り直したい。断片的ですが、明らかに濃度は高い。予想されたとおり、濃度の高い部分があって、実際に調べていくと、部分的ではあっても、私がびっくりしたのは、海底下10メートルのような比較的海底に近いところでも、かなり濃度の高いものがありそうだということで、これは、資源としては重要です。海底に近いところに濃度の高いものがあるというのは、やはり重要なのですが、ただ、どのように分布しているか、いち早く知りたいと思っています。
【浦委員】 さっきお見せになったマンガン団塊との関係ですね。それがいったいどういうことなのかということ。
【加藤准教授】 マンガン団塊との関係ですが、これは非常に関係があると思っています。実は、あまりそのような視点で今まで見られていなかったのですが、最初にハワイのこのあたりに資源泥があるのですが、ここは正に、今までマンガン銀座と呼ばれていて、マンガン団塊の鉱区が各国に分配されているエリアと重なるのです。多分、マンガンノジュールは基本的には、資源泥と関係していて、続成作用でできています。資源泥のような、下の堆積物中にマンガンや鉄が多いと、続成の関係でその海底面の上に、マンガンノジュールが生成しやすい。ある意味では、マンガンノジュールがあるところの下を掘れば、今言ったように、レアアース泥があるのではないかと僕は思っています。そのような整合関係があるだろうと思って、臼井先生がいろいろ調べて、精力的に調べたものと重ねると、あるところは重なるのですが、たとえば、このようなところはあまり重ならない。それは、この海域ではマンガンモジュールのデータが足りないためだろう思っています。臼井先生が、マンガンノジュールがあると言っているところでも、実はコアが採られていて、岩相を見ると、正に我々が言っているレアアース資源泥があります。だから、多分、続成作用でマンガンノジュールが上にできているだろうと考えられます。
ちなみにですね、さっきのコアの回収率が悪いのは、昔ですね、マンガンノジュールがあるにも関わらず、多分、モニターで見ることもなく、グリグリ回して採ったものですから、多分、回収率が悪くなったのではないかなと想像しています。
【浦辺主査】 ちょっと、時間がオーバーしていますので、大変、面白いお話ですが、「あまりにも過熱しないように」ということを言っておく必要があると思います。
レアアースは、陸上の資源だけでも1,000年分くらい埋蔵量があるということで、基本的には足らない資源というわけではありません。ただ、短期的に中国があのようなことをしているので価格が高騰しているということがあります。日本の必要量、年間3~4万トンですので、ここで猛烈な資源量がありますといわれて、それをとってしまうと価格が暴落するということがあります。ですから、必ずしも経済的には成り立つことではないと考えられています。
レアアース資源泥の最大の問題は、99.9パーセントを棄てなくてはいけないというところにあります。つまり、0.1パーセントは資源ですけれども99.9パーセントは廃棄物です。コバルトリッチクラストに関しては、資源として回収できるものの量が半分以上あるわけですが、このレアアース資源泥で資源として回収できる量は非常に少なくて、0.1パーセントです。また、海底の泥を酸で処理するとそれで生物が死んでしまいます。さらに、その泥を海に戻すと、また大変な環境問題が起きてしまうのです。ものを採ることは採れるのですけれども、戻すものはいわゆる産業廃棄物になってしまうので、泥をどこに捨てるのかというのは、非常に難しいだろうということでございます。
大変楽しい話ですけれども、この何年かで回収するということは、ありえないだろうと思っております。
【笹木文部科学副大臣】 日本が独自にオーストラリアで買い付けしたにも関わらず、レアアースの価格が下がっていないのですから、価格を下げることが大事なので、これは日本としてやっていく価値があると思います。あわせて確認したいのは、公海上での発見について、もちろん日本だけが発見して活用できるものではないでしょう。国際海底機構でそのようなことについて交渉をやっていくのでしょうから。どのようなことを幾つかの国とやり取りをしておけばいいのか。その体制等について、一言教えていただければと思います。
【浦辺主査】 経済産業省からお答えになったほうがいいと思うのですが。
【久森鉱物資源課長補佐】 公海上で探査をするという権利を得るにあたって、国際海底機構に対して「探査権」というものを申請して得ることになるのですが、レアアース泥についての「探査規則」というものはまだありません。通常この規則を策定するのに、国連の会議ですから2~3年要します。探査規則を作って、申請して、権利を得て、実際に探査を経て賦存を確認した上で、今度は、開発段階に移ることになります。
開発段階については、「開発規則」も国際海底機構で作ることになりますから、15年程度の探査契約機関を経て開発ということになりますと、先ほどお話のあった2年、5年というタームで考えるのは難しいのかなというところが実際のところだと思います。
【平委員】 ぼくは、これはもうはほとんど民間の段階にきているものだと思っています。要するに存在することがわかっているので、あとは投資だけですから。排他的経済水域の中は、別に外国と交渉も要りません。ほとんど加藤さんも同じ認識だと思いますが、民間の投資がどこまで行われるのかという段階の話であって、国がどうするかという次元を超えている。「ある」ことはわかっているし、あとは色々な問題をクリアすればいいというところまできていますのであとは、民間に期待したいと思います。
【浦辺主査】 まだ、いろいろご意見があるかと思いますが、予定がすぎておりますけれども、どうしても最後にひとつという方がおられれば、お受けしますが。
【加藤准教授】 私自身も平先生と同じように感じています。私のところに民間の方が来ることも含めて。実際に私たちは公海上の資源というものを考えているのではなくて、あくまで、排他的経済水域内の資源ということでできるのではなかろうかと思っています。
ところで先ほど99.9パーセントは捨てなくちゃいけないというお話がありましたが、今度は捨てるのではなくて、実はその中には有用なものが結構あるのです。バナジウム等色々なものを含んでおりますし、これを鉄資源として使うという、別の見方もできるのです。考えようで、そこを考えることが今後非常に重要なことだと思います。
【浦辺主査】 どうもありがとうございました。大変、残念ですけれども、笹木副大臣には、このお時間をもちまして御退席ということで、本当に長時間ありがとうございました。
【笹木文部科学副大臣】 どうもありがとうございます。報告書読ませていただきます。
(拍手、笹木文部科学副大臣 退席)
【浦辺主査】 それでは、2つめの議事にはいりたいと思いますが、その前に7月29日付で、事務局に異動があったということですので、ご紹介いたします。堀内前海洋地球課長に代わり、井上新課長が着任されたということですから、井上新課長からご挨拶をお願いいたします。
【井上海洋地球課長】 ただいま、ご紹介いただきました井上でございます。
これまでの3年間は、次世代コンピュータシステムの開発、整備という仕事をしていました。この度、この海洋立国でありますこの日本にとって非常に重要な海洋地球課の仕事をさせていただくことになりまして、先生方の御協力をいただきながら、しっかり職務を全うしてまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【浦辺主査】 井上課長、どうもありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。また、加藤先生はこれで御退席と言うことで、どうもありがとうございました。
(加藤准教授 退席)
【浦辺主査】 それでは、議事にもどりまして、2番目、報告書の案ということでございます。これについては、前回骨子案に基づき議論をしたわけでございますけれども、いろいろとみなさんからいただいた御意見をもとに事務局に案を作っていただきましたので、まずは、事務局から簡単に説明をいただいてそれに基づいて議論をしたいと思います。よろしくお願いします。
【川口企画調査係長】 事務局でございます。資料2、委員の皆様方におきましては、机上の参考資料もご覧いただくと参考になるかもしれませんが、これに基づきまして御説明申し上げたいと思います。
簡単に前回いただいたご意見をおさらいいたしますと、主だったものといたしましては、この計画、文科省あるいは海洋機構がどういったところまでやるのか、経済産業省やJOGMEC等と仕事の切り分けというところをきれいに書き分けたほうがよいのではないかというその1点に結局は集約されていたように考えております。そこで、その点に気をつけながら若干、直しをしてございます。
構成の前に、まず3ページの1章をご覧いただけるとよろしいかと思います。ここのところで本計画の目的ということで、一つ目の丸のところで、この計画の目的は海洋鉱物資源の探査システムを確立させることだということを明確にさせまして、そのために技術開発を進める。技術実証のための海洋調査を行う。技術実証のための海洋調査の時に、資源の分布の把握や資源量評価の役に立つデータがとれないようでは、技術として確立されたものにはなりませんね、という形で目的を明確化させています。
2つ目の丸におきまして、とってきたデータを使って研究をやりましょう。
3つ目の丸で、関係機関のあいだで緊密な連携をいたしましょうという形になってございます。
構成自体もこの流れに沿った形になってございまして、目次にもどっていただきますと、前回、骨子としてご紹介した時と変わっておりまして、2章と3章がきれいに入れ替わったような形、どういった技術開発をやらなければならないかということをまず先に書きまして、その後に技術を実証するための海洋調査をどのようにやりましょうかという形に構成を変更していたしております。
それでは、本題に入りたいと思います。
まず、「はじめに」のところは、検討の背景、本計画を立てるにあたっての事情というものを書いておりまして、2ページ目の下から2つ目の矢印ですが、この計画というものは、5箇年程度の中長期的な技術実証計画として策定した物であると言うことをお示ししております。
1章の総論につきましては、さきほどお話をいたしましたので、飛ばしまして、2章の探査技術開発の進捗状況と課題という所につきましてです。
最初の丸のところは、骨子のときにも2章にあった、すなわち本来であれば3章に移っているべき内容ではありますが、これが探査のやり方、探鉱のやり方そのものに非常に見えて仕方がないということでしたので、どういった技術を開発する必要があるのかということを明確にさせるために、現在の2章の部分、「現在の技術開発の進捗状況と課題」というところに移しました。この計画の実施により、総合的な探査システムの技術としての確立を図る部分ということで、4項目あげてございます。
さらに3つ目の丸でございますが、センサー及び探査機の開発者がばらばらにやっていたのでは意味がなくて、それぞれ緊密に連携していくことが大事です、ということが述べてございます。
それでは、中身についてです。
「(1)センサー等の探査技術の開発」ですが、進捗状況の現状につきましては、これまで出てきました「探査技術開発のあり方」での指摘事項や「基盤ツール」でやってきた内容を記述してございます。その中で、最後の部分にあたりますが、深海底での試験を十分に行えていない、生値を適切に評価する方法が確立されていない、あるいは大きさ、重さの問題から探査機に乗せることが難しい、探査技術の開発者以外の人で取り扱えるように汎用化をすすめなければいけないといった課題が明らかになってきていることを述べています。
そこで今後、取り組むべき課題としては、こういった課題を解決するために、1つ目の矢印でございますが、十分に実証実験を行って課題を解決する、探査技術として確立していくことが必要である。2つ目の矢印として、得られた生データを適切に評価する必要がありますし、いくつかのセンサーを組み合わせて使うことが効率よく探査を行うために必要ですので、ソフト面での技術開発が重要である。そこでセンサー技術の開発者とアースサイエンスの研究者たちが連携をして研究開発を進める必要がある、ということを述べています。この今後取り組むべき課題について本日御議論をいただけると幸いでございます。
(2)につきましてです。現在の状況ということで、最初の矢印として海洋機構での取り組み、2つ目、3つ目の矢印として探査技術のあり方等で指摘をしていることについて記述をしております。
今後取り組むべき課題としては、資源探査に使えるような探査機を作らなければいけませんねということ。実際に作ったものが本当に使えるのかということを、資源のあるようなところで実証していく必要がありますね、ということを記述してございます。2つ目、3つ目の矢印はAUV、ROVにつきまして、必要となる機能というものをひとつずつ記述しているところでございます。4つ目の矢印としまして船の問題でございまして、1隻の船で色々な調査を総合的にやるということが、効率的に実証を進める上で大事なことだということですので、船を整理するべきではないかということを記述しております。プラットフォームの方に関しましても、今後取り組むべき課題というところを中心に、御意見いただければと思います。
第3章にうつります。最初のところには、探査技術実証のための海洋調査をやることが大事ですと、最初に総論で申し上げたことを繰り返して述べてございます。さらに運用などのソフト面の技術の確立が大事であるということを述べてございます。具体的には、熱水鉱床とコバルトリッチクラストとその他という3種類に分けて記述してございます。
熱水鉱床につきましては、最初はデータのそろったところで調査を行う。次のステップとして既知の熱水活動の周りを対象にやって技術の高度化をしていきましょう。さらに、いままであまりデータのないようなところでも使ってみて、さらなる技術の高度化を目指していくというところが必要ではないかと記述しています。
コバルトリッチクラストにつきましても似たような形でございまして、最初はある程度、過去の実績でデータのあるようなところをやる。その次のステップとして、これまで十分に調査をなされていないような部分も加えて、さらなる高度化を目指して調査を進めていくということが大事であろうと記述をしてございます。
その他といたしまして、マンガン団塊、本日お話を聞きましたレアアースを含む海底堆積物のお話でございます。これに関しましては、特にレアアースを含む堆積物に関しましては、今日初めて我々も詳しいお話を伺ったということでありますので、あまり積極的な記述にはしておりませんで、3つ目の丸に書いてありますように、今後の研究開発の進展や商業開発に向けた機運の高まりを見極めつつ、必要に応じた検討を行うということでどうかと記述にしております。
この3章の中身については、これから実施していく中身そのものでございますので、大いに御議論いただければと思います。また、「その他」の2つにつきましては、この海洋調査の対象としては取り上げてございませんが、例えば次の章の研究のところになにか書くべきではないかという御議論がありましたら、それも御意見もいただければと思います。
次に4章でございます。ここは研究の課題についてです。冒頭のところでは、御利益について書いてございまして、1つ目の丸では研究をやることで資源の開発の推進に大きな意義がある。2つ目の丸として学問としても大きな意義がある。3つ目の丸として、若手人材の育成を図るために、若手を生かしながら積極的に進めていきましょうとしています。前回、浦辺主査からももう少し踏み込んだ形で記述してはどうかという御指摘もございましたので、若干、踏み込んだ形での記述にしてございます。
具体的な研究課題といたしまして、海底熱水活動と、コバルトリッチクラストと石油天然ガス等の炭化水素資源の3つに分類して記述をしてございます。それぞれ最初の項目の下の柱書きのようなところでは、「熱水活動とは」「コバルトリッチクラストとは」というものを記述しております。そのあとこれまでにわかっていることとして、これまでにヒアリング等々で、先生方からご指摘のありました項目を列挙してございます。そのあとに研究すべき課題として、示してございます。
海底熱水活動の研究すべき課題ですが、1つ目の矢印として、熱水循環系の規模や特徴、成因あるいは各種元素の起源等を調べる必要がある。2つ目として、熱水の周辺の生態系をちゃんと調べる必要がある。3つ目として、古い、活動を停止したような熱水活動の痕跡と古い海洋底の歴史について調べておく必要がある。この3つが代表であろうということで取り上げております。この研究すべき課題について中心にご議論をしていただければと思います。
次に、コバルトリッチクラストの研究すべき課題ということで、1つ目の矢印といたしまして、金属元素が集まってくる、沈殿してくる条件であるとかプロセス、そのクラストがどのように成長するのか。成長速度、成分の構成、中身がどのようになっているのか、微生物の活動との関係はどうなのかを明らかにする必要がある。2つ目の矢印といたしまして、コバルトリッチクラストがへばりついている海底というのは、海洋底の移動によって動いてきておりますし、長い時間にかけて溜まってきておりますので、海洋環境の変動等を記録している可能性があります。ですから、そういったものを明らかにしていく必要があるのではないかなということを記述してございます。これにつきましても研究すべき課題、というものを中心にご議論いただければと思っております。
3番は、石油、石炭等の炭化水素資源について記述しております。前回、骨子案の時には、その他といたしまして石炭、天然ガス等の炭化水素資源についてお話をしつつ、泥火山については別立てで記述をしておりましたが、若干重複のようなものが見えるようでございましたので、この度、記述をひとつにまとめてすっきりさせたところでございます。これにつきましても研究すべき課題のみご説明いたします。1つ目の矢印といたしまして、炭化水素資源として出てくるにあたって、微生物の働きというものが大きいことから、微生物の分解のプロセスと微生物の代謝活動の関係。2つ目の矢印として、新たな分析手法を開発してその分析手法を使うことによって、どういったところがメタンの生成に適しているのかという条件を明らかにする。それを通じましてどういったところに炭化水素資源が分布しているのか。地球の歴史の中で炭素がどのように循環しているのか。それが気候変動等々にどのようにかかわりがあるのか。固体地球の深いところを含めた循環にどういった影響があるのかといったところを研究していく。3つ目の矢印といたしまして、泥火山におけるメタンハイドレートの産状。泥火山に含まれているといわれております高濃度のリチウムというのをはじめとした元素が集まってくるプロセス。天然ガスや圧搾流体の起源、移動のメカニズムや吹き出してくるメカニズム。その中に生命がいるのかどうか、いるのであればどういった代謝活動があるのか。そういった研究が必要であるだろうと記述しています。最後の矢印といたしまして、いうなれば微生物を使ったCCSのようなことができないかというところを研究していくことが必要ではないか、と記述しております。これにつきましても研究すべき課題を中心にお話いただければと思っております。
最後に関係機関との連携につきましてですが、これは前回とほぼ同じで、事実誤認の修正がメインでございまして、特段、説明をするところはございません。1点だけ申し上げますと、15ページの上の方に産総研については新たに項を立てて説明を加えてございます。
「(2)各機関間の連携」では、1つ目の丸の最初の矢印としてセンサー等の研究開発機関とJAMSTECとの連携の重要性や、JAMSTECにおけるシップタイムの確保と確実な実証の実施の必要性を指摘しています。さらに、次の矢印としてJAMSTECが実証をすすめていく上でのJOGMECとの連携の必要性や、最後の矢印として場所の重複や内容の重複とかを防ぐことをためにも各機関との調整の重要性について述べています。2つ目の丸といたしまして、無人探査機をJAMSTEC以外の船でも使って実証するということを検討すべきではないかということを記述してございます。
(3)といたしまして、結果や知見の共有ですけれども、安全保障上の問題もございますので、情報共有は必要ですけれどもその取り扱いというものには、注意が必要である、協議・調整が必要である、というところを記述しているところでございます。
別紙シリーズにつきましては、今まで御議論いただきました、あるいは御議論いただいたあとにいただきました御意見を踏まえまして、探査機の仕様を別紙1と2につけてございます、別紙3といたしましては、想定をされている船について、別紙4といたしまして、海洋機構として考えている探査技術検討の5箇年計画というものをつけておるというものでございます。
事務局からのご説明は以上でございます。
【浦辺主査】 はい、川口さんどうもありがとうございました。だいぶ、色々な記述が整理させてわかりやすくなってきたと思います。それでは、委員の皆様のご意見、ちょっと急に読んでなかなか難しいかもしれませんが、お願いいたします。
【磯﨑委員】 15ページに書いてありますように、我々が開発しているAUVあるいはROV、あるいは動かしているセンサーの関連です。特にJAMSTECとして、基盤ツールに必要なシップタイムを確保することに協力しなさいということは、それは別途提案されていることを協力していきます。ですが、そもそも研究開発した基盤ツールを最終的にどのように実証するかということについて、我々の中にも議論はあるのですが、最終的には基盤ツールを開発して実証というか海底試験したらおしまいということではなくて、その次のステップをどうするかということについて、この基盤ツールのプロジェクトが立ち上がったときにその先を見据えてやっておられたかと。それがあると、我々がどのように関わっていくかということがもう少しクリアになるのかなと思います。
【鈴木海洋地球課長補佐】 基盤ツール事業を開始した頃は、まだどのようなものができるかわからない中で、なかなかそのようなところまでは決まっていなかったのではと思っています。今後の展開といたしまして、ひとつひとつの基盤ツールの技術実証については今の基盤ツールのプロジェクトの中でやっていくものと思います。ですが、例えば、重力センサーと磁力センサーのように、実際の探査では様々なセンサーを組み合わせて使っていくものと思っておりまして、そのやり方については、またプロジェクト形式でやるというのもありえるのかなと思ってございます。それについては、報告書の中でも記載しておりまして、報告書の中の5ページの真ん中に今後取り組むべき課題というのがございまして、その2つ目の矢印の「現在開発中のセンサーを用いて効率よく探査を行うには、得られた生データを適切に評価し、複数種類のセンサーを組み合わせて使用することが必要である。」との考え方を記載しております。
ただし、この記述のとおり実現するかどうかについては、今後の検討や基盤ツールの進捗状況も確認しなければいけないですし、先生方がどうお考えになるかということにもなるかと思いますが、このようなやり方もあるのではないかとは思っております。海洋機構ともよく調整をした上で、実際のやり方については検討していきたいと思っております。
【浦辺主査】 はい、どうも鈴木さんありがとうございます。平委員、この辺のところで今後取り組むべき課題ということでなにかコメントございますか。
【平委員】 私もちょっと気にしていたところで、ここに「具体的には地球科学等の研究者と探査技術の開発者が共同で調査を行う研究開発を実施すべき」だというところが鈴木補佐の言われたことだと思いますが、それは基盤ツール開発段階の次のステップと明確にうたっていただけると非常にありがたいなと思います。要するに、次の段階がありうるということをうたって欲しいです。そうでないと、たぶん、作りっぱなしに終わって、その目的である総合的な探査システムをつくるという段階までいかないのではないか心配しています。このあとは個別の努力ですね、というのはなにか中途半端すぎると思います。もうちょっと書き込みがいるのではないかという気がします。
【鈴木海洋地球課長補佐】 本報告書に必要であるとして書いてあるものが、必ずプロジェクトになるというものではありませんので、是非、必要性について補強する御意見をいただければ、そこについて記載したいと思っております。
【増田委員】 今のところに関連するのかもしれませんが、基盤ツールで実証試験、実証調査をされて有効なセンサーだ、あるいは有効な技術だとなれば、JOGMECとしてやっている資源量評価、あるいは広域調査に是非、積極的に取り込んでいきたいと思っております。
【浦辺主査】 はい。この点は、以前の委員会でも増田委員はじめ、JOGMECも資源エネルギー庁からもそういう方針が説明されたと思います。ただ、ここに書かれている今後取り組むべき課題の中には、さきほど平委員からありましたように、もう少し基礎的な部分もございます。センサーの開発や基礎的な部分につきましても非常に役に立つということが書かれているので、やはりもう少し、平委員のおっしゃったような記載が少しあってもいいかなと。両方のバランスがとれていると一番いいかなと思いましたけれども。
【浦委員】 全体の構成としてはこの第2章に技術的な課題というものがまあ主としてセンサーとプラットフォームを中心に書いてあると理解しています。それで、「第4章 海洋鉱物資源に関する研究課題」のところに、サイエンティフィックな研究課題を中心としてとりあげられているのですが、そのサイエンティフィックな研究課題をこなすために非常にイノベイティブな新しいシステムなり、要するに技術的課題が必要です。イノベイティブな調査手法やセンシング手法、システム作りについても第4章にも書き込んでおかないといけないのではないでしょうか。それが1点です。
もう1点は第5章ですが、関連する機関として、JAMSTECとJOGMECがあげられておって、それぞれがなにをしているかを最初に書いてあります。そしてその次には、連携が必要であるとあるのですが、連携が必要であるということを言ってもいつまでたっても連携をしないということがあります。姿勢かもしれませんし連携する仕組みがうまく作られていないのではないでしょうか。例えばJOGMECとJAMSTECで定期的に作戦計画を立てるのか、勝手にやればいいという個別問題なのかどうかです。なにか総合化して連携して評価する仕組み、議論するような仕組みがないような気がします。いま、谷さんがうなずいていらっしゃいますが、総合海洋政策本部の仕事かもしれませんけれども、そのあたりの仕組みづくりをきっちり作っていって、連携を促進するような提案を是非いれていってほしいと思います。
【浦辺主査】 非常に重要な点で、この報告書は、部品というか、パーツは非常によくできているので、そのあたりをもうすこし足すと、非常によくなると思います。
【谷内閣参事官】 今の浦委員のご指摘はまったく同感でございまして16ページの(3)の一つ目の丸の最後「調整や情報共有が重要である」そのとおりです。でも重要であって「あとはよろしくね」とどこかに書いてあるのでしょうが、それでは動かない。内閣官房が出てきてなんとかという代物ではないだろうと思いますが、もちろん必要であれば出て行きますけれども。その前に平さんの前でレビューがございまして、いくつもの機関が関係したり、今後関係したりしようとしている。この立派なプログラムがあって、非常に多岐にわたっています。
全体のプログラムマネジメントがどうなっていて、誰がどこまで到達していて、時間管理がどうなっていて、どうプログラムマネジメントがなされているか。どこまでアチーブされていて、試験航海がいつあって、情報ベースがきちんとあって。独立に管理されているのではなく、たとえば、JOGMECのプランはこれですよ、JAMSTECのプランはこれですよ、いうことについても、両機関の間だけで話していても周りの人は入ってこられないわけですから、全体のプログラムとして動くための調整の場、情報共有の場を別途もたさないといけないのではないかと思っております。そこについては、まったく触れられていなくてちょっと怖いところかなという気がします。うまくいくならいいのですけれども、普通はこのような連携はうまくいかないものだという経験がございますので。ご検討はされているのかなと思っております。
【浦辺主査】 はい、どうもありがとうございます。非常に重要な指摘があったと思います。たとえば、第3章に研究すべき課題というのがたくさん、ちょっと難しい言葉で書かれています。資源というテーマに当っていくということで、社会全般といいますか、国民の立場からといいますか、このようなことは是非やってほしいというところが、多分、あるのではないかなと思います。寺島委員、滝澤委員のからどちらかその点についてご指摘いただければありがたいなと思います。
【寺島委員】 今日はちょっと所用があって帰り支度を始めてしまっていて申し訳ありません。個別の技術の開発というところは、それぞれのところで頑張っておられるし、こういう場でさらに全般的な視点から検討するということでさらに精緻なものになると思います。同時に、それを全体的にどうまとめるかという議論がさきほどからでていますが、私もまったく同感です。当事者の間だけで、全体のビジョンを共有して検討することも大事ですが、もうひとつ進めてこのようにやるよと、一般社会というのでしょうか、そちらに対して発信するということが極めて大事なことではないかなと思います。海洋開発分科会は、昔の海洋開発審議会の系統を引いていて、海洋基本計画等にも、各省に及ぶような全体的な問題もここで議論すると書いてあるわけです。すべてこの場で、この計画でやることがいいかどうかということは別の問題ですが、そのような議論もどこかでやる必要はあるし、できればそれとのつながりをこの計画でつけておいてほしいというのが私の意見でございます。
(寺島委員 退席)
【瀧澤委員】 素人的な意見になってしまうかもしれませんが。私も、寺島委員がおっしゃったように、全体的にどうなっていくのだろうかと思いました。個々の技術についてはすごくまじめにというか細かく検討されているのですが、どうなっていくのかちょっとわかりにくいかなと思っています。
例えば、今日の前半の議題でありましたレアアース泥に関して、8ページ、9ページあたりにありますけれども、少し正直すぎるというか、もう少し国家としてどうしていきたいということについて、ちょっと受身的な表現すぎるのかなと思います。メッセージが。これを国民が受けとった時に、せっかく資源があるのに、どうしたのだろうと率直に感じると思うのですが。先ほどの阿部委員の話があって、ぜひ国家的に取り組んでいただきたいという話があった一方で、既に商業開発段階のものなのではないかという話もあって、一体どこがどのようにやるのだろうと率直に感じたのですが。今、熱水鉱床やノジュール類のようなものが、研究や開発が進んでいった時に同じような構図になってしまうと非常に恐ろしいなと感じました。
すみません。非常に素人的な意見なのですけれど、どのように考えたらよろしいでしょうか。
【浦辺主査】 はい、どうもありがとうございます。
先ほどは主査から、若干水をさすような話をしてしまいましたが、これは色々と心配なことがあったからです。特に廃棄物の問題は相当慎重にやらないといけません。領海内であっても国際的な了解を得ながら進めていきませんと、泥は全世界に広がってしまう可能性がありますので。報告書ではネガティブな表現になっていますが、それはもう少し工夫をするというふうなことは必要かなと思います。
やはり、資源全体に対する、レアアース泥を含めた海底資源全体について、どのような期待があって、どのようなことをしてほしいというのが一般の方々の見方なのでしょうか。多分、滝澤さんが一番広く調べておられるのかなと思いますが、一般の社会からの要請にはどういうものがありますでしょうか。
【瀧澤委員】 やはり、資源という可能性について適切に把握しておいて、また技術開発しておくことによって、将来的に、実際に使えるものであれば使うという実力を着々とつけておくという、回りくどいですけれどもそのようなことだと思います。
【浦辺主査】 はい、どうもありがとうございます。企業からというか、民間からといいますか、先ほどもご発言いただきましたけれども、阿部委員から。資源といいますとやはり企業からの期待というものがあると思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
【阿部委員】 ここで、基盤ツールで探査技術を開発していくとき、それが使えるものであるか、使えないものであるかをどのように検証していくのか。誰が検証するのか。この辺が抜けているのかなという気がします。先ほど、増田さんがある程度確立されたらJOGMECで引き受けます、という趣旨の御発言があったかと思います。けれどもそのようなことを、ここでやったことを誰が検証して、次にどうする、誰がどうするということに、もう少し立ち入っていかないと、発散してしまうのではないかという気がします。以上です。
【浦辺主査】 技術のバリエーションが非常にむずかしいと思いますけれども、それをまた実証する、機械としての完成度をどうやればいいのか。大変、難しい問題があると思いますけれども、経験者の磯崎さん、JAMSTECの立場を離れて、技術者としてどのようにすればいいとお考えでしょうか。
【磯﨑委員】 立場はあるのですが、やはり私の主観としては、まずは、実験室といいますか部屋の中で開発して、それをある程度、製品化して、実際のフィールドで使ってみて、リファレンスと比較して検証してみて、それが本当に役立っているかと見てみることが必要かと思います。私たちもそのようなステップを踏もうとします。
我々が開発しているAUVにしても、ROVにしてもしかりですけれど、ひとつの技術や機器の開発ではなく、我々がここで求められているのはシステムを開発することです。先ほどから議論がありますが、まだ単体機種を開発する段階です。それぞれのシステムというものは、まだどちらかというと研究室の中にとどまっているような格好で、そこで合わさって初めてフィールドへ出してみて、この前、JOGMECさんからお話ありましたように実際に検証されたフィールドを使ってシステムをチェックしてみて、本当に実際のものときれいに合っているかどうか確認する。それで初めて世の中に問うていけるものになると思います。
ですから、最終的には我々も開発しているAUV、ROVにしても、それは実際のJOGMECさんのフィールドを貸していただいて、そのような検証をしたいと思っているのです。そういった時と、別々に開発されているセンサーが、ひとつのものではなくていくつか合わさってはじめて、ひとつの大きなシステムとしてそれを検証するというのが本来のこの目的であって、海洋資源探査システムの実証という取組であると思います。
そのためには総合的にどう組み合わせていくのか、それは当然のことながらこのような大きなプロジェクトチームを組んだり、プロジェクトマネージャーがある程度権限をもって、これを強引に引っ張っていったりすることもあると思いますので、その旗というか顔。そのあたりのところがなかなか見にくくなって、それぞれが優秀な開発がされているけれども、やはり総合技術とした時の別の取り組みというのは、何か大きな旗印がいるのかなと感じます。
【浦辺主査】 みなさん、御意見もそのとおりだと思います。やはりシステムを組んでいって、それが実証されて、そして実証されたものが委員のおっしゃるように現場で検討されていけば、非常に前に進むのかなと。どうすればそれが可能なのかというところですけれども。
【浦委員】 今、磯崎さんもおっしゃたように前回、たとえば伊是名海穴で実証試験をする。色々なことを調べられていますから、非常に同感できるのですが、一つは私が思うには、「わかっているところ」が「わかっているように」わかりましたという道具ができるだけではダメではないか。やはりそれをもうひとつ先に進めて、技術者がきちんとついていって、「わかっていないところ」に何か新しい発見ができるということをやって見せて初めて役に立つということがわかるのではないかと思うわけです。
ですから、そこの仕組みまでを基盤ツール、あるいはこの全体の連携チームを作るなりをして、そこを見据えたところまでやらないといけないのではないでしょうか。「伊是名はうまくいきました」「ああよかったですね」それで「よくやりました」で終わってしまってはダメなのです。その次をやっていくイニシアチブ、それはさきほど増田さんがおっしゃたように、それはもちろん伊是名でやったことが役に立つということがJOGMECに理解されればそうなるのでしょうが、それは「JOGMEC次第」になってしまいます。「文科省次第」でいくとすれば、やはりここでチームを作って、新しいものに向かっていって新しいことまでやるというべきではないかと思います。
【平委員】 前回も言ったことですけれども、基盤ツールは、一種、国家基幹技術的な、日本の独自の使える資源探査技術をこれで開発しようということ。それは浦さんも言ったようにユニークなオンリーワンの探査技術を作っていこうということが、元々の発想だったと思います。
その時に、今までの商業ベースの技術とは違うことは、サイエンスベースの考えがあって、鉱床の成因論や鉱床の様々な様態を一緒に考えて探査技術を開発するから、今までの商業ベースのものを単に利用すればいいというものではないということが明瞭なメッセージとしてあったような気がします。したがって、それをJAMSTEC中心に文部科学省とプラスアルファ、JOGMECと関係省庁が一体となってやっていくということだと思います。
サイエンスは書き方が難しいのはわかりますけれども、起源論と資源の成因論と一緒にそれを調べることによって。資源を「調べる」ということと「探査する」ということは基本的には同じことだと思っています。それを明瞭に分けないでやっていくことが大事だと思うので、そこの書き方が難しいとは思いますが、初めに技術開発をやって、そのあとに、それをやるとサイエンスができますね、付け足しで書いてあるので、そこのところどのように合体させて書くかということが一番大事なメッセージではないかと思うので、頑張っていただきたい。丸投げしてしまって申し訳ありませんが、頑張っていただきたいと思います。
【浦辺主査】 今の時点で、答えておきたいということは事務局側にはございますか。
【鈴木海洋地球課長補佐】 特にありません。なかなか難しい宿題をいただきましたが、なるべく努力して、主査の浦辺先生に御相談差し上げたいと思います。
【浦辺主査】 大変難しい要求であることは重々わかっていますけれども、先ほど申しましたとおり、ひとつひとつのことは非常によくできていると思います。けれども、できた時点でもう一度話し合って考えてみると、また大分ハードルが高くなって、ここまで出来ているならもう少し、というところがあることは事実だと思います。あまり時間もありませんけれどもそれぞれ、最後にコメントがあればと思います。
【浦委員】 短いコメントですが。別紙1と2には探査機についてスペックが書いてありますけれど。まず、1のAUVの方について、大きさは書いてありますが、重量を書いていない。重量というものは、非常に重要なキーですが、それがシステム仕様の中に出てきていないのはいかがなものかと思います。どんどん大きくなっていってしまうという可能性があるのかなと感じます。直さないといけなくなってくる。
それから別紙2の方のROVですけれども、開発コンセプトが若干弱いかなと感じます。もっとすばらしいコンセプトをもとに、世界に2つとない、これをもっていけば熱水鉱床のことがなんでもわかる、新しいものがわかるということを実現させることができる、ということがひとつ重要な開発コンセプトであるべきではないでしょうか。何か、ちょうと言っていることがちまちましているなあと、非常に情緒的な見方で申し訳ありませんけれども、美しい未来が見えるような開発コンセプトを書くようにお願いしたいと思います。
【平委員】 この別紙3の船ですけれども。前回、何かしょぼい絵があって、そこからは少し進歩したような気がしますが、機能について、これも世界に2つとない、すばらしいという感じがあまりしない。船も大事でありますので、これも世界に2つとない資源科学探査船としてお願いします。
【浦辺主査】 今までご発言のなかった、海上保安庁、冨山さんなにか付け加えることはありますか。
【冨山海洋調査課長補佐】 特段、ございませんが、これまで振り返ってきましたとおり、我々海上保安庁も海洋調査を実施しております。資源のコミュニティの中でも、我々の取ったデータを使っていただくという形で、役割を果たしていきたいと考えております。
【久森鉱物資源課長補佐】 初めて今日、参加させていただきまして受けた個人的な印象を述べさせていただきます。
まづ、誰がこの技術をシステムとして開発して、その確立されたシステムを使って誰が探査をするのか。常にこの主語の部分が曖昧で、技術を開発する人と使う人のデマケがはっきりしていないような気がいたしました。探査システムを確立する側と、確立されたものを使うユーザーは違うはずですが、当然、連携しあうべきで、ユーザーの声を常に反映させながら新しい開発、システムの改善に生かしていくべきだと思います。どこかで御発言がありましたとおり、その具体的な連携の方法というか、どのようにお互いの声を反映させあっていくのかというそのシステムについても計画書の中で触れていただければと思いました。どうもありがとうございます。
【谷内閣参事官】 さきほど、申し上げたので尽きているのですが。小林先生の昔の採泥の仕事というものは、今日、ここでレアアースエレメントが足らないから計画的にやってくれというものではなかったはずです。ただ、小林先生のされたお仕事が、加藤先生の御発言にあったところに結びついているというのは、何かすごく象徴的だなと思うのです。私共勉強させていただいている中身というものは、あとで花開くようにもっていければいい。
私、先に情報を話ましたけれども、情報の管理も同様にすごく大事だと思っておりまして、みなさんがシェアできる部分はちゃんととシェアできる仕掛けが必要だなと思いました。以上です。ありがとうございました。
【竹田内閣参事官】 もう一度報告書を読ませていただき、皆さんの色々な御発言を聞かせていただいて、我々としても、どのようなことができるのかもう一度考えていきたいなと思ったところであります。いずれまた報告書ができた段階で、本部としていろいろ検討すべき課題が出てくるのだろうと思いました。以上でございます。
【浦辺主査】 はい、どうもありがとうございます。それでまだ追加で、ぜひ、これだけは最後にという方はいらっしゃいますか。いらっしゃらないようですので。
それでは、ただいまたくさん宿題をいただきましたけれども、いただいた宿題を基に、報告書を作っていきたいと思います。できあがったものを最後に委員の方々にメールで御確認いただいて、できあがった報告書はこの委員会の親分科会にあたります海洋開発分科会というものに諮られることになります。それで今度の報告書を作るうえで、大変貴重な御意見を伺いましたので、文言等の修正追加ということに関しては、主査であります私に御一任いただければと思います。よろしいでしょうか。
(はいと呼ぶ者あり)
【浦辺主査】 ありがとうございます。
【浦辺主査】 それでは最後の議事です。事務局からお願いします。
【川口企画調査係長】 事務局でございます。資料3をご覧くださいませ。みなさまお集まりいただきましての御検討は本日で終わりでございます。次は、先ほど主査からもお話ありましたとおり、本日いただきましたご意見を踏まえまして報告書の修正を施しまして、再度、皆様方にメール等で御照会した上で、報告書を完成させるということになります。出来上がりました報告書は、8月中に予定をしております第30回の海洋開発分科会に諮りまして、御報告するということを予定してございます。今後の予定は以上でございます。
【浦辺主査】 はい、ありがとうございます。よろしいでしょうか。それでは、最後の最後になりますけれども事務連絡をお願いいたします。
【川口企画調査係長】 再び事務局からご連絡申し上げます。いつものことでございますが、旅費の手続きのために、書類を皆様の机の上にお配りしてございますので、遺漏なきようご記入の上、忘れずに事務局までご提出お願いいたします。資料につきましては、机上に残しておいていただきましたら、のちほどお送りいたします。以上でございます。
【浦辺主査】 それでは、5回にわたりまして大変熱心な御議論ありがとうございました。普通の委員会とは違って、御意見が自由にでるという大変面白い委員会であったと思います。私自身も大変楽しませていただきました。本当にどうもありがとうございました。これで散会といたしたいと思います。
(拍手)
研究開発局海洋地球課
-- 登録:平成23年10月 --