平成23年5月18日(水曜日) 09時30分~11時30分
文部科学省17階 17F1会議室
磯﨑、浦、浦辺、沖野、平、瀧澤、寺島、増田 の各委員
堀内海洋地球課長、鈴木海洋地球課長補佐、川口企画調査係長
【関係省庁】 総合海洋政策本部事務局 竹田内閣参事官、谷内閣参事官 資源エネルギー庁資源・燃料部 久保田鉱物資源課長補佐 海上保安庁海洋情報部 冨山海洋調査課長補佐 【説明者】 海洋研究開発機構 海底資源研究プロジェクト 木川プロジェクトリーダー
【浦辺主査】 それでは只今より、第12回科学技術・学術審議会 海洋開発分科会 海洋鉱物委員会を開催したいと思います。大分暑くなって参りましたので、上着を脱がせていただきます。よろしくお願い致します。今日も実は来るときにマンションの前に小さな亀が歩いていまして、これは夏だなと思って、ちょっと遠回りして近くの公園の池に投げ込んできたら、大きな鯉がパクっと食べてしまって。大変に自然の理を学びながら来ました。
【浦辺主査】 今回も総合海洋政策本部の事務局から、谷参事官、竹田参事官にお越し頂いております。また資源エネルギー庁 資源・燃料部 鉱物資源課から久保田課長補佐、それから海上保安庁 海洋情報部 海洋調査課の冨山課長補佐にご同席いただいております。
【浦辺主査】 それでは事務局から資料の確認をお願い致します。
【鈴木海洋地球課長補佐】 それでは資料の確認をさせていただきます。議事次第に配布資料の一覧がございまして、それに沿って確認させていただきます。資料1-1と致しまして「海底熱水鉱床開発計画にかかる第1期中間評価報告書ポイント」これは経済産業省から頂いた資料です。資料1-2と致しまして「海上保安庁における海洋調査について」、資料2と致しまして「JAMSTECにおける資源探査技術実証5ヶ年計画(案)」、資料3と致しまして「関係機関との連携について(論点)」です。資料4-1として「海洋資源の利用促進に向けた基盤ツール開発プログラム 平成20年度採択課題中間評価の結果について」、資料4-2として「当面の予定について」をお配りしてございます。参考資料といたしまして、本委員会委員名簿、「海洋鉱物委員会(第11回)議事録」、前回の配付資料「海洋資源に関する研究課題について」をお配りしています。机上資料集と致しまして、緑の冊子をお配りしております。配布資料については以上です。不足等あればご連絡頂ければと思います。
また、5月からクールビスになっておりますので、暑いようでしたら上着を脱いでご参加頂ければと思います。
【浦辺主査】 ありがとうございました。今回は海域の議論をなるべく活発にやって頂きたいということですけれども、一方で議論の中で機微な情報が出てくる可能性があります。海洋開発分科会運営規則第4条第2項「分科会が、前条の各号に掲げる事項について調査審議を行った場合は、分科会長が分科会の決定を経て当該部分の議事録を非公表とすることができる。」に基づき、議事録のうち資源エネルギー安全保障上の観点から公開することが不適切と判断される部分につきましては、非公表としてよろしいでしょうか。
よろしいということで、それでは、議事に入りたいと思います。
【浦辺主査】 今日は、どのようにこれから進めていくかという議論ですので、最初に関係省庁でどのような取組がなされているかを承知しておく必要がありますので、資源エネルギー庁と海上保安庁からそれぞれの取組について、お聞きしたいと思います。
【浦辺主査】 まず、昨年度末に、資源エネルギー庁において、「海底熱水鉱床開発計画にかかる第1期中間評価」を取りまとめられたとの事ですから、資源エネルギー庁資源・燃料部鉱物資源課の久保田課長補佐にその内容についてご説明いただきます。よろしくお願いします。
【久保田鉱物資源課長補佐】 経済産業省・資源エネルギー庁鉱物資源課でございます。当課では海底熱水鉱床、それからコバルトリッチクラスト等をやっていますが、資源エネルギー庁全体は、メタンハイドレードもやっておりまして、当課で担当しております金属海底鉱物資源のうち海底熱水鉱床について、現在進んでいる10年計画に基づいて、ちょうど第一期五カ年計画の中間評価がまとまりましたので、そのご報告をさせて頂きたいと思います。お手元の資料ですと資料1-1です。タイトルの一番上に報告書本文のアドレスを記載してございます。この報告書自体は50ページ程のボリュームがあるもので、今回はそこからエッセンスだけを引いたものをご紹介させていただきます。それから報告書本文に載っております、この50ページくらいあるものについては、サイトを見て頂くとクレジットとして、海底熱水鉱床開発委員会という名前も入っていまして、実はこの委員会の委員長は、平先生にやって頂いていますし、副委員長は浦辺先生にやって頂いておりますので、もし説明の間違え等がありましたら、ご指摘頂きたいと思います。
お手元の資料ですと、一枚めくって頂きまして、これが平成21年3月に経済産業省で取りまとめをさせて頂きました「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」の海底熱水鉱床の部分であります。大きく分けてこの10年計画、左側が向こう5年間の基礎調査になります。右側の5年間がいわゆる実海域での実証試験といいますか、調査になります。今回の第一期中間評価では、この平成20年から平成24年度までの第一期5年間のうち、平成20、21、22年の3年間の成果の評価をしております。この中間評価では、後半5年間における試験候補海域を選定するということが、ひとつの大きな目標になっております。これは海底熱水鉱床の調査海域とありますが、厳密には、「海底熱水鉱床」になるものは、我が国の海域には存在していないということが資源エネルギー庁の見解でございます。いわばこれは、海底熱水鉱床の可能性のある鉱徴地、もしくは、可能性はそこまで高くなくとも兆候が見られるエリアとお考え頂ければと思います。
現在、伊豆・小笠原では、ベヨネース海丘というところをモデルマウンドとして調査対象としております。沖縄海域では伊是名海穴をモデルマウンドとしてやっております。それ以外にも広域調査としてポテンシャル調査を並行してやっております。これが、現状でございます。これは平成20年、21年、22年の実績をまとめたものです。大きく分けて4つの課題・テーマを設けていまして、1つ目が「資源量評価」、これは一言で言ってしまえば埋蔵量はどのくらいあるか、ということです。それから「環境影響評価」「資源開発技術」「製錬技術」は、これはまさに海底熱水鉱床を開発する技術を確立するための課題です。「環境影響評価」では、実際に採鉱することによって、環境影響がどの程度あるか、事前把握してそれを予測する環境影響予測プログラムに着手しておりまして、これを検討してございます。「資源開発技術」は海底から鉱物を取ってくる、採鉱する技術の開発でございます。4つ目が「製錬技術」、金属を抽出する技術でございます。資源開発技術と製錬技術の2つについては今、机上の検討から次のステップに移動しようというところで、実際に現状、船を使って、実海域で調査しているのは資源量評価と環境影響評価でございます。
今回海洋鉱物委員会で議論頂く資源量評価、どのくらいあるかという前段階のポテンシャルを把握するために、文科省でのセンサー開発、あるいは海底下の地下構造が把握できるような技術実証をやって頂くことになりますが、これが今後の連携をしていく1つのテーマだと思います。
環境についてはすでに調査しているJOGMECとJAMSTECとの間ですでに連携を行って頂きまして、ほとんどの機材をJAMSTECの船、あるいは器機を使わせてもらっていて、すでに省庁連携が進んでいる分野になっています。
資源開発分野につきましては、どちらかというと民間企業の方とのコラボレーション、あるいは研究開発を行っております。バックにはいろんな研究機関や大学の先生方も御参加いただいております。
製錬技術につきましていまだにまだサンプル数が少ないということもありますが、ビーカー試験、試験管レベルという研究室レベルのものが多くて、どちらかというと研究機関、大学の機関で今基礎研究をして頂いているのが現状でございます。
今回、第一期中間評価の大きなテーマが後半5年間における実証海域をどこにするかということを決めることにあります。今、前のページでご報告させていただいた資源量評価の結果でございますけれども、ここの海域では基本的に集中的なボーリングを行いまして、全ては把握できていませんが、海域全体では約5,000万トン程度あるのではないか、という期待値、推定を今回致しました。
それから、環境影響評価につきましては、基本的には3つの事業があります。環境ベースライン、これは環境基礎調査です。それからもうひとつは、環境保全、これは遺伝子解析をします。これら2つのデータをもとにして、最終的に予測モデル、後半5年間では実際に環境を破壊してみてそれが1年で元に戻るかどうか、3年かかるのか、5年かかるのか、実証するモデルになります。
それから資源開発分野では、あくまでも最終的に開発技術を確立することが目標になりますが、検討では、1日5000トン程度、これは年間130万トン程度になりますが、このくらいないと経済的に採算が合わないということを踏まえて、鉱床の採鉱、上に持ちあげる揚鉱、それから母船システムという基礎的な検討を致しました。実際には、後半5年間で実海域で実際に沈めるための試験機の要素毎、例えばカッター群だけ、集鉱の部分だけの実機、あるいは試験機の製作を開始したいと思っています。
製錬についてのポイントはこの2つの海域それぞれに適した金属回収プロセスを検討することです。伊豆・小笠原と沖縄では、入っている鉱物組成、品位が違うので製錬プロセスが異なるということがわかってきています。
これらの結果から海底熱水鉱床開発委員会では優先順位1番目として沖縄海域、2番目として伊豆・小笠原と決定致しました。この優先順位があるのは、これから実際の採掘、「試験」とは言いながら、漁業調整なりいろんな調整が必要となってきますので、あるいは新しい情報が今後出てくるかもしれませんので、それを踏まえて現段階でこの優先順位で決定しております。
今後の計画では大きく分けて、資源量評価のところについては、先ほど5,000万トン程度あると言った「推定」ですが、今使っているボーリングマシンでは20メートル以上掘れないという限界があり、実は全く情報がない部分があります。したがって「推定」までしかできません。今後新しい船を導入させて頂く予定でございまして、海底着座型で最高50メートル、船上設置型ですと400メートル掘れる掘削機械を搭載する予定でございまして、垂直方向の資源情報がより得られると思っております。推定が、ある程度実際の量とマッチするようなデータを得ることが、これが大きな課題であります。また、広域調査については、これは実際、産業技術総合研究所とJOGMECでやっておりますが、今後この委員会で議論されているプロジェクトで、例えば海底地下構造の探査技術開発、あるいは技術実証が得られたら、その機器も導入して広域調査をやっていきたいと思っております。
環境、資源開発、製錬については、後半5年間は、まさに実証試験候補海域に向けた環境のシミュレーション、開発技術の検討、それから製錬については沖縄、伊豆・小笠原それぞれに適したものと、この試験候補海域に適した選鉱処理について検討するというのが今後の計画でございます。
最後に関係者の皆様に御尽力頂きまして、実は昨年度末、3月23日に進水を迎えることが出来まして、来年平成24年の2月には就航する、実海域調査をする「白嶺」という海洋資源調査船の建造が着実に進んでおります。実は船舶建造委員会の委員長も平先生に引き受けて頂きまして、着実に資源探査に向けて邁進している状況でございます。簡単ではございますが、経済産業省資源エネルギー庁から報告させて頂きました。
【浦辺主査】 大変コンパクトにまとめて頂きまして、ありがとうございます。これについて質疑を受けたいと思います。今日の議論で、どのようにやっていくかということについて、皆さんのお考えを是非お聞きしたい、実質的に議論をしたいということですので、それも踏まえて、もし、ここで聞いておきたいことがありましたらご質問をお願い致します。
【平委員】 4ページに「3年間の実績・成果」というものがございます。その一番上の「マウンドの断面イメージ」という図がありますが、このイメージは伊是名海穴に見られるマウンドとその地下の状況を示したイメージ図です。非常に示唆に富んだ図でございます。
従来マウンドに硫化物があることはわかっていましたが、その下に堆積物があって、その下にも少なくとももう一層、硫化物の層があるらしい。要するに今までのマウンドのモデルだと上部だけが注目されていたわけですけれども、海底下、堆積層の下にも硫化物の層があるらしい。ただこれの存在については、まだ十分には確認できていない。ボーリングで一部そのような層の存在が認められてきたというわけです。実は全体の鉱量の推定評価で、この下の層がどのくらいの広がりをもっているかというのが非常に重要だということになります。したがって、資源量評価というのはマウンドの下、あるいは堆積物の中にある硫化物の層をどのくらい評価するか、というのが1つの重要なポイントになるかと思います。ちょっと付け加えさせて頂きました。
【浦辺主査】 ありがとうございました。このような結果は非常に重要です。相当いろんなことが80本くらいボーリングをされてわかってきた。ただそのボーリングで、新たな課題がこういう形で出てきているということで、これはセンサー開発にとっても、地下のものをどうやってみていくのかという非常に大きな課題がわかってきているということだと思います。他にございますか。
【浦委員】 2つ質問があります。ボーリングをしていて、いろいろデータが出てきて、全貌が明らかになりつつあるかなと。
今のお話で気になるのは、冒頭に「経産省としては、熱水鉱床は海にはまだない、という認識がある」と明言されていて、これは一体どういうことかなということをご説明頂きたいということが1つ。定義の問題がいろいろあると思いますが、どういうような定義を考えていらっしゃるか。
第2点は伊是名を第1として、ベヨネースを第2にしたということは、一体どういうお考えでされたのでしょうか。簡単に申し上げれば伊是名は、1500から1600メートル、ベヨネースは、600、700、800で深度は倍違います。この深度の差は技術的に重大で、揚鉱、採鉱におきましては非常に大きなものでございまして、それを考えても伊是名を第1とするということは、それなりの根拠があるのかなというところで、その根拠のところをお示し頂きたい。以上2点お願い致します。
【久保田鉱物資源課長補佐】 今ご質問ありました2点について、回答させて頂きます。経済産業省資源エネルギー庁の見解では海底熱水鉱床は、いわゆる陸上でいえば陸上鉱山にあたります。開発の対象となるかどうかというのは、いわゆる経済性、ビジネスとして参入できるかどうかでございます。したがって、今の段階では、ビジネスとして民間企業が単独で、あるいはコンソーシアムを組んで、開発の対象となるほどの情報はわかっていない。我々はこれを正確には海底熱水鉱床の鉱徴地、もしくは兆候が見られるエリアと整理しております。
2点目のご質問でございますが、将来の実証試験の海域の優先順位を沖縄1,600メートルくらい、伊豆・小笠原が約800から900メートルくらいで、水深は沖縄の方が深い。技術的には普通に考えれば、深くなるほど難しくなるというのも一理ございます。ただ、10年計画の中の平成20年度については、計画がまとまったのが平成21年3月と、すでに平成20年度が始まっていまして、丸3年というよりは2年半、あるいは2年3カ月という限られた期間の中での検討結果がこれであります。実は沖縄の方は、80本程ボーリングを掘っていまして、伊豆の方は20本程しかボーリングデータがございません。それ以外にパワーグラフのデータとかたくさんございます。この最大の原因は伊豆・小笠原は黒潮の影響もございまして、浅いが故に定点保持が難しいのでボーリング、1回10メートル、15メートル掘ろうとすると6時間から10時間かけて、定点に留まっておく必要があるのですが、それが現在の「第2白嶺丸」の性能上、長時間定点保持ができなくて、ボーリングもできない。ボーリング調査の今の限界が20メートルということもありまして、これ以上の深さが全然わかっていない。今の段階で伊豆・小笠原海域、ベヨネースのモデルマウンドの情報は、沖縄と比べると雲泥の差がございまして、評価できないというのが、海底熱水鉱床開発委員会での評価でございます。したがって消去法的に優先順位は1位が沖縄、2位が伊豆としましたが、浦先生からもご指摘があったように、やはり浅いところという可能性は、ポテンシャルは十分あると経産省資源エネルギー庁も認識しております。今後新しい情報が得られれば、もしかしたら優先順位は変わるかもしれませんが、平成23年3月時点では、情報が多く、特に沖縄はマウンドの在り方も、マウンド状、瓦礫のもの、それからチムニーとして立っているもの、その周りのある程度細かくなった砂状、すべての採掘試験という観点からはいろいろなバリエーションに富んだ、むしろ難しい方の情報がすべて整っております。環境影響の情報も沖縄の方が伊豆よりも多く出ているということもありまして、委員会では最終的に沖縄を優先順位1番とさせていただきました。
【浦委員】 おっしゃっていることはわかりました。10年計画のうちに経済性ということを観点にして、というのは重要なポイントで、鉱床であるかないかは、経済性によって開発できるか決めるということになってくるわけですね。それはいいのですが、そうすると今、伊是名海穴の経済性、調査ができているか、進んでいるかということと、経済性というのは若干別なような気がします。
つまり経済性は連続的に、継続的に採鉱していって、それを揚鉱するという、日々のランニングコストの見積もりと、それから開発するための前段階のシステムの開発の経済性の見積もりが非常に関わってくるわけです。そこをどのようにお金を計算して、経済性のあるなしを議論しているのかということを、それは報告書を読めばきっとよくわかるのでしょうけれども。そのへんのところの兼ね合いといいますか。私は倍深度があるということは相当ランニングコストが嵩むと理解している。相当というのはいい加減な言葉ですけれども。その見通しが報告書できちんとされているのかをお聞きしたいと思います。
【平委員】 報告書を我々も執筆した関係上、今の1つのアスペクトですけれども、ベヨネースは圧倒的に鉱量が少ない。1日5,000トンというような採掘で取組むと一年以内になくなってしまうくらいのものです。ただその下に岩脈状とかカルデラの岩石の中に鉱脈のようなものがないというわけではない。しかしそれは今まで発掘、発見されていない。ともかく、今の段階で見積もると圧倒的に量が少なくて、とてもコマーシャルベースに乗るようなものではない、という判断です。もちろん探査は続けていくわけですけれども、まず、最初の開発に結びつける候補としては伊是名という判断です。
【浦辺主査】 ありがとうございました。
【浦辺主査】 それではまだ議論はあるかと思いますが、次に、海上保安庁における海洋調査に関する取組について、海上保安庁海洋情報部海洋調査課の冨山課長補佐からこれまでの取組をお聞きして、合わせて議論をしていければと思います。準備ができましたら、よろしくお願いします。
【冨山海洋調査課長補佐】 海上保安庁でございます。御承知の通り海上保安庁はダイレクトに鉱物を対象とした調査、取組ということはやっておりません。海洋調査についてご紹介いただきたいということでございましたので、若干この委員会の趣旨とはピントが合わないかもしれませんが、ご容赦頂きたいと思います。
組織の紹介でございますけれども、非常に古くから海洋調査をやっております。最初は明治4年に兵部省水路局として発足致しまして、その後、海軍水路部という形になっております。そもそも当庁の海洋調査は、海図を作成するということを一番の目的としておりまして、ここには発足後1年後、釜石で最初に作成されたものをお示ししております。戦後は、海上保安庁に所属することになりまして、平成14年には海洋情報部と名称を変更しました。ここに1929年「日本近海水深図」をお示ししております。近海の海図ということで仕事をはじめておりますが、その後、順次海洋調査能力が向上致しまして、昭和に入りますと遠方まで、非常に広域のマッピングを一通り完成させています。ちなみにこの海域は現在の技術で作るとこのくらいの詳しいデータになる。このように130年以上に亘りまして、海の地図を作るという仕事をやってきたのが我々でございます。
海底地形調査というところから始めておりますが、船を持っておりまして、海上での調査技術を順次培い、最近ではいろいろな目的の調査を推進しております。航海の安全というのが一番主ではありますけれども、最近では海洋権益の確保の重要性も言われており、大陸棚調査も進めて参りました。その他、防災という点では、地形・地質の情報を取ることで地震予知・火山噴火予知に必要な情報の整備をし、東北地方太平洋沖地震の際に、海底に設置しております位置を測る基準点が、地震の前と後でこれだけ動いているということを検出したという成果も出ております。その他、今日の話にはありませんが、環境保全、海洋汚染、放射能の調査、その他あまり知られておりませんけれども、海域で遭難等ありました場合はどこを捜索するかが非常に重要になってきますので、そのための漂流予測などもやっております。
ちょっと鉱物の話ではありませんが、東北地方太平洋沖地震で東北地方一帯、港湾域は甚大な被害を被っております。これは石巻の例ですけれども、あらゆるものが海に流れまして、コンテナでありますとか、車、家、建物といったものが海に沈んでいるということで、地震の直後から海洋情報部の測量船、全勢力を投入しまして、港の調査を進めて参りました。その目的としましては、例えば大船渡港の防波堤の近くのサイドスキャンソナーを用いた調査のイメージですけれども、例えばこのように津波防波堤のケーソンが崩落して海に沈んでいるというのを捉えて、航行に危険がないかどうかということを調べてきたということです。イニシャルな目的としましては、たくさんの港がありますけれども、重要な港について緊急に物資輸送を可能にするということを目的としまして、とりあえず1本航路を開けて、1か所岸壁を使えるようにするということで、11ヶ所の港ですぐさま調査を行いました。ちょっと余談になりました。
我々が現在持っている調査の能力でありますが、これは東京の本庁に所属しております測量船5隻、大型の測量船が、「昭洋」「拓洋」の2隻、それから中型測量船を3隻所有しております。これは主に沖合の調査をやりますが、その他に7隻、全国に出先の機関がございまして、そこに全長20メートル程度の測量船を所有しております。こちらは主に港湾域ですとか、航路、ごく沿岸部の調査をして海図を作っていくという仕事をしております。
どのような調査をしているかですが、海図ということで海底地形、それから地質構造、合わせまして、地磁気、重力の調査、先ほど地殻変動のお話もありましたが、地図を作るには位置をきちんと決める必要がありまして、測地。その他にも水温、海潮流、放射能といった水を調べる調査もやっております。 我々の調査はどういう性質のものかと考えますと、地図を作るということでございます。鉱物資源ですと、ピンポイントでありそうなところを非常に精密に調べるということだと思うのですが、海上保安庁としましては、地図を作る観点から最新の技術を用いて極力広域を順次埋めていくことが我々の調査だと思っております。マッピングと思っております。
このような性格を活かしまして、大陸棚調査。ご承知と思いますけれども、昭和58年からずっと取組んできまして、お示ししているこの図は25年間で測量船が走った航跡でございます。大陸棚延伸の可能性があると考えられる海域につきまして、調査の総走航距離にしまして108万キロ。地球27周をまわるような距離ですが、このような調査をしまして、国連への資料の提出に至ったということです。南方域でこれだけの非常に詳細なデータが得られたということでございます。
1つ重要であると思いますのは、特に大陸棚の調査の期限が迫って参りまして、調査もそれまで考えていたものでは足りない、期限も迫っているということが判明しました頃から、内閣官房で総合調整を頂きまして、JAMSTEC、JOGMEC、それから海上保安庁が大連携を組んで調査をするというような取組がされました。具体的に申し上げますと、この場合の連携は、調査を分担するということでございました。地殻構造の調査につきまして、海上保安庁とJAMSTECでシェアをすると。それから海底地形調査については我々が行う。また、これは「第2白嶺丸」の写真ですけれども、基盤岩を採取するということをJOGMECにやって頂いたということで。これらの成果が非常にクオリティの高い日本の大陸棚申請につながったと思っております。
大陸棚の調査は平成20年に終わりまして、その後ですけれども、このように日本の南方、大陸棚延伸の可能性がある海域については非常に詳細なデータが取られたということなのですが、それ以外に日本の経済水域は広くて、東シナ海、日本海と、こういったところの地形につきましては、マルチビーム測深機という最新の技術を使った調査というのは甚だ不十分でございまして、真っ白と言っていい状態でございます。これを平成20年から取組んでおりまして、調査項目と致しましては、海底地形の調査、それから地殻構造の調査、それから領海・EEZを決める際のベースになる低潮線、領海基線の調査。この3点セットをもちまして、平成20年から取組んでいまして、その成果につきましては海洋権益保全の他、いろいろな目的に活用頂けるものと思っております。
鉱物資源ということで言いますと、大陸棚調査、それから平成20年からの領海・EEZ調査の中でも、熱水活動の可能性があるようなカルデラ地形を発見して、そこが以後の探査につながったということもありまして、広域の調査でお役に立てればと思っております。以上でございます。
【浦辺主査】 どうもありがとうございました。海上保安庁の様々な取組をお話頂きました。最後におっしゃったように、沖縄が空白になっているということで、沖縄の調査を随分お進めになっていて、新たな非常に有望らしい、ポテンシャルの高そうな地域をたくさん発見されました。そのうちの1つで何回か調査がなされて、海底熱水活動が見つかるという、夢のような話が沖縄でございます。それでやはり最初はこのような地形調査かな、という強い印象を持ったわけですけれども、只今のご説明に対してコメント、質問ございましたらお願い致します。
【浦委員】 終わりから2つ目のスライドのところに海洋調査の推進といって、ストリーマーケーブルを使った観測が目的だと思うのですけれども、これは大陸棚に関してこのようなことをやっておられたと理解をしたのですが、こと、熱水に関して、効果があるか別ですが、こうした地形情報はマルチビームナローで計測されていますけれども、それ以外にこうした調査をやられている、あるいはやる予定はございますか。
【冨山海洋調査課長補佐】 データの空白域と申しました東シナ海につきましては、平成20年度からマルチストリーマを使った調査。これは地下の構造の基本的な情報を得るということを目的としまして、海底地震計を用いた地下深部の構造探査と合わせまして、ストリーマーケーブルを用いた調査をやってきているということでございます。
【浦委員】 つまり、これが大陸棚調査と大陸棚延伸という具体的な目的があるわけですね。このことが具体的には熱水鉱床の調査、あるいは熱水活動の調査というような具体的な目的を持ってやっておられるのか、ただ一般的に調査をされているか、というその2つの観点をおききしたい。
【冨山海洋調査課長補佐】 熱水ということは意識してございません。ここの地域の成り立ちを知るという観点で測線を設定して調査をしております。
【浦辺主査】 他にございますか。
【磯﨑委員】 今の沖縄周辺の空白域を重点的にやるというお話でしたけれども、今後長期的にどのような海域で、どのくらいの年度をかけて、どのようにやるか、大まかな計画などはございますか。
【冨山海洋調査課長補佐】 順次やっていく、ということです。太平洋側は25年間かけてこれだけの地域を埋めてきたということなのですが、実は非常に早く進んだと考えております。水深が非常に深いところでは、マルチビームという機械を用いますと幅が広くデータがとれますが、浅いと逆にデータがいっぺんに取れなくなるということがあります。東シナ海につきましては、かなり水深が浅いところが多いということで、全域の調査はかなり時間がかかるかなと思っております。ですから、20年からとりあえず5カ年ということで、東シナ海、それと日本海の南部を中心にやっておりますけれども、地形調査につきましては引き続き、この領域をやっていくことになるのではないかと思っております。
【浦辺主査】 他にございますか。
【寺島委員】 今のところに関連してですが、その調査は、どの船でやっているのですか。先ほど調査船の話が出ましたけれども。
【冨山海洋調査課長補佐】 主に4隻ですね。基本的に沖合ですので、先ほどお示ししました大型測量船「昭洋」「拓洋」の2隻と「明洋」「海洋」の2隻を使ってやっております。
【浦辺主査】 最後から2ページ目のスライドに「海洋の開発・利用・保全等」の中に「海洋資源開発」と項目に書かれていますけれども、これは保安庁として、例えば海洋資源開発というような目的を持って船を出すということは、業務に入っているのでしょうか。
【冨山海洋調査課長補佐】 海上保安庁が資源開発をするということはありませんので、そういうことはないということですが、未測域を埋めていくにあたって、資源関係のコミュニティと調整をして、その調査の優先度を検討していくというようなことはあるかなと思います。
【浦辺主査】 それともう1つ質問なのですが、どういうツールを使うかということで、例えば、マルチチャンネルの話が出てきましたけれども、それ以外に、例えば資源開発の場合には、細かく見るとか、近寄ってみるとか、様々なこれまでない取組が少し必要でないかと思うのですが、そのようなことに関してはどうでしょうか。
【冨山海洋調査課長補佐】 発足当初から最新技術の導入を随時やってきておりまして、海底地形の調査につきましても、最初期はワイヤでやっていたのですが、最近は音響測深、さらにはマルチビームという形で進めてきております。また、ここにありますけれども、非常に浅い海域については航空機を使ってレーザー光線を使うと、非常に浅いところまで調査が出来るということがございますので、このようなものも導入してやってきております。前々回くらいにお話ししたと思いますが、深いところにつきましては、AUVを導入することを決めておりまして、それにつきましては平成25年から運用を開始します。
【瀧澤委員】 ありがとうございます。取得されたデータの扱いなのですが、この海域は一般公開ができる、ここはできないとか何段階に考え方を設けてられるとか、研究に供するためのデータの扱いはまた違うとかそういったことはありますか。
【冨山海洋調査課長補佐】 基本的に国が調査をして取得している一般的なデータでございますので、申し出を頂ければご提供していて、特段目的を縛っているということはございません。ただ非常に細かいデータを一般に無差別に公開するかというようなことについてはナショナルセキュリティーですとか資源セキュリティーという観点もございますので、そのあたりはご相談させていただきながら、ポリシーを決めていく必要があると思っています。
【浦辺主査】 よろしいでしょうか。それでは総合討論の時間も取ってありますので次に移りたいと思います。
【浦辺主査】 この委員会では、探査技術の実証を実施する上で、どのような海域でやるべきなのか「実証が有効な海域」について議論したいと思います。それにあたって海洋機構で、5年間程度の調査計画という形でまとめられたとのことですから、海洋機構 海底資源研究プロジェクト 木川プロジェクトリーダーからご説明をお願いします。この海底資源研究プロジェクトというものもご説明していただければと思います。
【木川プロジェクトリーダー】 ありがとうございます。只今ご紹介に預かりましたJAMSTECの木川でございます。JAMSTECは、この4月1日付をもちまして、新しい部署である海底資源研究プロジェクトというものを立ち上げました。それについてご説明してから、5カ年計画の案についてのご説明を致します。
まずこの4月に開発担当理事のもとに、この理事は平でございますけれども、海底資源研究プロジェクトが、JAMSTECの研究部門として立ち上がりました。組織が6つございまして、「地球生命工学研究グループ」、「海底熱水システム研究グループ」、「資源地球化学研究グループ」、「資源成因研究グループ」の4つの研究グループが主体的に研究を行います。また「調査研究推進グループ」、「調査研究企画調整グループ」が事務的なこと、あるいは、研究のサポートを行うというような位置付けでございます。新しい部署を立ち上げて、これだけの研究グループですが、新規雇用ということではなくて、実は研究者は別のJAMSTECの既存の研究領域等に所属する研究者でございまして、この海底資源研究プロジェクトは兼務として、所属するということになっています。大体全部で30名程研究者が所属しております。
この海底資源研究プロジェクトでこれからご説明するいろいろな研究をするのですが、JAMSTECの体制としては、磯﨑がセンター長を努めておりますが、海洋工学センターの方でAUV、ROV、あるいは資源探査技術の開発をやっておりますので、私どもは基本的にヘビーユーザーとして探査技術の実証等にも貢献していきたいと考えております。海洋工学センターとの連携についてもそのように考えております。さらに経営企画室技術企画室で基本的に予算等の対応をしていきます。組織内ではこのように連携していきたいと考えております。
パンフレットのような一枚紙を机上にお配りしておりますけれども、これは実は先週の木曜に私どものホームページに掲載しているものと基本的に同じです。海底資源研究プロジェクトでどのような研究を行うかということが書かれてございます。下から半分程のところに最先端の研究を行う4つの研究グループということで、先ほど申し上げた4つの研究グループがございまして、「地球生命工学研究グループ」というのがございますが、ここに書かれておりますように基本的にここでは二酸化炭素の地中隔離法、あるいは微生物がメタンハイドレートを作るのにかなりの働きをしているらしいということが私どもの「ちきゅう」が5年ほど前に行いました八戸沖掘削でとらえた試料でわかって参りましたこともありますので、これに関して研究を進めていきたいと考えています。
「地球生命工学研究グループ」に関しては文科省からJSPSを通して、最先端研究基盤技術ということで予算を頂いて、「ちきゅう」の下北、八戸沖での掘削を含めた研究を行っていく予定でございます。
「資源地球化学研究グループ」では、これは同じく海底資源という切り口ではメタンハイドレートを主に対象にするものでございますが、これに書いてございますようにメタンハイドレード生成における微生物の寄与というのを明らかにしていきたいということを目指しております。
「海底熱水システム研究グループ」に関しては、昨年の「ちきゅう」の掘削により黒鉱がとれたということもございましたが、そういったことからも、要は熱水循環等について我々が従来思っていたこととどうも違うような様式、あるいは規模も違うのではないかというようなこともいろいろわかってきたようなところもありますので、そういったところで、今一度研究をしていきたい。下の方に若干書いてありますが、熱水鉱床ができる過程における微生物の寄与ということに関してもここでは視野に入れております。
最後4つ目の「資源成因研究グループ」でございますが、ここもここに書いてありますようにマンガンクラスト、コバルトリッチクラストを主な研究対象として、これが海底に大きく広がっているということはわかっているのですけれども、どうしたらそのようなものができるのか、ということを化学平衡的な議論からやるところがありますし、やはり生物が寄与しているのではないかという話もございますし、あるいはもっと他の、もともと空から降ってきたものが固まっているのではないか、等いろんなプロセスがございますので、そのようなファンダメンタルなことを研究したいということでございます。
要は基本的にJAMSTECでございますので、研究機関でございますから、こういった基礎的な研究をして、将来的に資源エネルギー庁等が行っている海底資源探査というようなことに資することができればと考えています。
ただし、基本的に調査研究等するわけで、その過程で新たな熱水系の発見等もあるかもしれないのですが、その場合は情報の取り扱い、特に賦存量、位置情報に直結するようなデータ、これはやはり研究成果といえども、公開に関しては慎重にならざるを得ないということで事前に海洋地球課等を通してご相談する、というようなことになるものと理解しております。
今まで申し上げたのが、簡単な「海底資源研究プロジェクト」の概要でございますが、ここに映っております5カ年計画について簡単にご説明いたします。
今までの説明は4研究グループごとの説明をしましたが、ここにある一番左のカテゴリーは、研究課題とした場合として、熱水鉱床、コバルトリッチ・鉄マンガンクラスト、泥火山とカテゴリー分けをし直したものです。一番下の泥火山に関してはあまりなじみのない方もいらっしゃるかもしれませんが、海底に泥なのか火山のような格好をした山が結構たくさんありまして、熊野灘沖、種子島沖にたくさんあることがわかっているのですが、そこを「ちきゅう」で試験的に掘ってみたら、どうもこれはメタンハイドレートの山らしい。しかもその中に通常の海水の1000倍以上のリチウムが濃縮しているらしいというようなことがわかりまして、メタンハイドレートとは書かずに泥火山と書かせていただきました。
さらにこの図を説明する前にJAMSTECにおける航海計画について簡単に申し上げますと、ここに書いてございますが、委員の先生方もよくご存じのようにJAMSTECの航海計画は基本的に公募で決めているところもございまして、私どもがやりたい、ということになっても、しっかりした公募過程、あるいは、所内枠においても基本的に所内公募ということになります。したがってここに書いてあるものは、我々のウィッシュリストとは申しませんが、私たちは、海底資源研究プロジェクトとしては、こういった考えでやっていきたいということでございます。ですからここに書いてあるものが、公募する前にすでに決まっているということではなく、こういったことを目指して進めていきたい。それでここにも「案」という非常に便利な言葉が書いてありますが、そういうご理解をいただきたいと思います。
上から順に海底熱水鉱床に関しては基本的に昨年度の「ちきゅう」の掘削により冒頭申し上げたようなこれまでの熱水循環等に関して、熱水鉱床を形成するような熱水循環についての新しい知見が捉えられたと考えておりますので、やはり中部沖縄トラフあたりの調査を進めていって、仮説を、熱水循環系の規模把握と存在様式の解明をしていきたいと。基本的には仮説を立てるということになって、それをできれば実証していきたいということになります。そういったものの他に沖縄トラフでは、他にも熱水がふいているところもございまして、あるいは伊豆・小笠原海域でも同様の調査を行って、そういった仮説を立てていきたいと。
コバルトリッチ・鉄マンガンクラストに関しては、南鳥島周辺で基本的に我々が一番考えておりますのは、海山の頂上のコバルトリッチクラストでございます。ここも調査を行って基本的なサンプルを取るということを主なものとしたいと思っていますが、冒頭申し上げましたコバルトリッチクラスト等の形成過程というものを研究していきたいと。非常に長い時間をかけて形成されていくわけですが、その形成過程を研究していきたい。
泥火山に関しましても「ちきゅう」が掘ったのは、種子島沖ではないのですけれども、種子島沖等にかなり有望そうな泥火山があるということがこれまでのいろいろな調査で分かってきておりますので、最初の2年かそのあたりをターゲットにして調査を進めていきたいと考えております。基本的にその中には、先ほども申し上げましたように海洋工学センターで来年度運用開始となっているようですけれども、AUV、ROV
試験航海、これを使った実証ということも我々もヘビーユーザーとして一緒にやっていきたいということを考えております。当初の2年、3年が基礎的な調査をして様々な仮説を立てた後に、後の2年、3年を通して、将来的な熱水鉱床、先ほど冒頭の方で「熱水鉱床」の定義というものがございましたが、「熱水鉱床」というふうに認めて頂けるようなそういったものにするような成果を上げてJOGMECの方にも頑張っていただきたいと考えております。雑駁ではございますが、以上です。
【浦辺主査】 どうも木川さんありがとうございました。新しく今年の4月から発足したJAMSTECのリーディングプロジェクトとしての海底資源研究プロジェクト、それから「JAMSTECにおける資源探査技術実証5カ年計画(案)」というものをご説明頂きました。いくつか議論があると思うのですけれども、まずその前に磯崎さんから追加はございますか。
【磯﨑委員】 何度もこの委員会でお話されたように、今、AUVを開発しているところです。さっきちょっとお話にありましたように、後でご議論有るかもしれませんが、フリートの方が少しシップタイムというところで苦慮しているところであります。今回のような原子力災害に伴う海域モニタリングがあったりして、事前に決まっている公募航海についてもやりくりしながらやっておりまして、また資源探査も今年ROVを動かすということも条件に入れながら、いろいろ見直しをやっております。ぜひこういった資源関連については、「基盤ツール」でもいろいろ使って頂いておりますけれども、ある程度シップタイムを確保しながら入れていきたいなと思います。
【浦辺主査】 それでは質問をお願いしたいのですが。
【浦委員】 今の5カ年計画、ここに書かれているようにある程度ターゲットを絞り、サイエンティフィックにやっていくというようなことだと思います。それで仕分けはできるのですが、もう1つ重要なのは、機器開発がどこでどのようなステップになっているのかと言うことです。ここはこの委員会も1年、2年くらいやっていて、そのターゲットがこの上にどのようになって、それらが使われていくのか。「基盤ツール」というのは、書かれていますが、それ以外の機器はどうかというようなことがわかるようになっているとありがたい。
【木川プロジェクトリーダー】 その点に関してはおっしゃる通りだと思います。ここには書かれておりませんが、先ほども簡単に申し上げた試験航海等で、実際に性能試験等で実質的な調査ができるものと考えておりまして、平成24年度以降に関しましては、これから磯崎のほうからも説明があると思いますが、AUV、ROVの進行具合によって具体的にここに書き込んでいきたいと考えております。
【磯﨑委員】 先ほど木川が「ウィッシュリストに近い」と言っていましたが、我々もウィッシュリストに機器開発も入れればこれはいっぱい並ぶのですが、現実問題として限られたシップタイムの中でやりくりしなければなりません。「うらしま」がいろいろな「基盤ツール」と合体しながら新しい機能をアップしています。磁力、重力計を引っ張ったり、「うらしま」のような大型なAUVならではのことをやっておりますし、平成23年度の後半には実際に泥火山の調査に使ってみたいなと思っています。
また、現在開発中のAUVも、平成24年度からは少し試験的にいろいろ使えるので、試験を重ねながらこういった海域で使っていきたいと思っています。今の開発と合わせて言うならば、平成24年からいろいろなところに試験的ではありますが、実際の海域でそういうことを使っていきますし、またROVも合わせて「基盤ツール」の実証試験にも使えていくかなと思っています。それ以降については私どももさらにそういうフリートを拡充させていきたいし、高度化を図っていきたいと思っていますけれども、そこの線表はもうちょっと先の話かなと思っています。
【平理事】 補足ですけれども、体制について「海底資源研究プロジェクト」というのは、ある意味ではユーザーの集団で、資源科学の推進を行っていく。それから調査計画の策定とか。これはJAMSTECの中にありますけれども、日本に開かれた組織です。いくつかのグループですでに他大学や他機関の人が入っておられると、いうことで、専任の人はほとんどいません。一部のポスドクの人が専任に近い形で入ることになりますが、全員、兼任、兼務がかかっている人たちでございます。
ここでは研究推進グループと企画調整グループがありますが、このプロジェクトの特徴の1つに調査研究推進グループには、海洋地質の専門家の人がマネージャーとして入っていて、どのようなAUVやROVをどのように運用していったらいいのか資源探査や、研究において技術をどのように運用したらよいか、そのような部分のノウハウもここで蓄積しようという1つの目的があります。したがってユーザーとしてのノウハウ、それもまた運用技術開発につなげるということで工学センターの技術開発と研究と運用を少し分けたということがこのプロジェクトの在り方ということになります。以上コメントになります。
【瀧澤委員】 ちょっと一般的な視点からです。非常にさすがJAMSTECの皆さんの地質のプロフェッショナルが最先端の知見を用いて、シャープにプロジェクトを打ち立てたというように感じるのですけれども、一方で深海に関して、科学を目的とした研究所であるJAMSTECですので、是非、将来に役に立つような環境影響の、生物ですとか、いろいろな濁度の問題ですとか、何を環境影響評価の項目として立てたらいいのかという検討を同時にやって頂いたほうが、よろしいのではないでしょうか。先ほどJOGMECのプロジェクトには環境影響評価というのが入っておりましたけれども、そのような視点というのはどのように考えられているのかなと感じます。
【浦辺主査】 非常に重要な点だと思います。木川さん何かありますか。
【木川プロジェクトリーダー】 まずJAMSTECは海洋資源探査を商業ベースでするところではないので、環境アセスメントのようなものは、特段目的を持ったものというのはおそらくあまりやらないかと思うのですが、ただ現在JOGMECでやっている環境アセスメントにはうちの職員も委員として派遣されて協力したりしています。海底資源プロジェクトもそういったことに資するデータを提供することはもちろんできますし、もっと広い意味での環境変動を実は本部で所属している研究員とやっております。どちらかというとそのような面での貢献の方が大きいのかなと考えております。
【瀧澤委員】 せっかく機構内に専門家の方がたくさんいらっしゃるので、どのように資源配分するかはともかくとして、プロジェクトでそのようなことも考えていらっしゃるということを是非、明記していただかないともったいないと感じます。環境に対する意識の高い方は、心配する点だと思いますので。
【磯﨑委員】 先ほど久保田課長補佐からもご説明いただきましたように、資源に関して言えば、環境影響評価をJOGMECと連携してやっておりまして、去年も2隻の船を使って深海での環境ベースライン調査ですけれども、そのようなことをやらせていただいていますので、広い意味で言えば、JAMSTECもそういう資源における環境影響ということはやっているということではあろうかと思います。表に立って大きくこうあげているわけではありませんが、とにかく環境影響評価についても取り組んでいるということは、ご理解いただければと思います。
【増田委員】 この5カ年計画の案で、細かい話になるかもしれませんけれども、お伺いしたいのですけれども。海底熱水鉱床で大きく2つ、熱水システムの解明と埋積鉱床調査手法の確立とありますが、この埋積鉱床というのは、私聞き慣れない言葉で、もう少し具体的に説明していただきたいと。具体的なターゲットというか、どのようなことをやろうとしているのかを具体的に細かくは必要ないのですけれども、ご説明頂ければありがたいですけど。
【木川プロジェクトリーダー】 もし私が違っていましたら平先生にご訂正頂きたいのですが、埋積鉱床とは、要は実際の熱水、海底から噴いておりますよね。表面にいろいろとたまっている、見るからに熱水鉱床的なものがわかるというのがあるのですが、ある程度時間が立ってしまうとその上の方に泥等がどんどん積っていってしまうと。ですからビジュアルには熱水系の中でも昔の熱水、そんな昔ではないかもしれませんが、現在活動で熱水を確認しているマウンドからはちょっと離れたようなところにあるものと私は理解しています。
【平委員】 ちょっとよろしいですか。埋積鉱床というのは我々の独特の言葉ですけれども、海底下の地層の中でできたか、あるいは埋もれている海底下の鉱床のことです。重要なポイントは我々考えている熱水システムでは、埋積鉱床ではブラックスモーカーやチムニーというようなものはあまりない。しかし、ゆらぎのようなもの、サイドスキャンソナーだと温度の高い海水のゆらぎのようなものが見えている。要するに熱がまだ下に少し残っているような場所。しかしそこには大きなマウンドのようなものが見えないような箇所、というのが1つの方法です。ゆらぎを探せといいますか、それが重要なポイントになってくると思っています。サイドスキャンソナーの性質をもって海中の熱の状態、ゆらぎの状態、もやもやとしたものを基本的にはまずどのくらい広範囲にそのような現象があるのかというものを探したいというのがポイントです。
【増田委員】 そうすると表面にあまり、鉱物のようなものが見えないと、地下が見えないのである程度深いところにそのものが埋もれていると、鉱床なり鉱石なり。そういったイメージなのでしょう。
【平委員】 そのとおりです。ともかく、地下になんらかの熱水のシステムがあるような、しかしそれは表面には見えるようなチムニーやブラックスモーカーのような形で表れていない。しかし海水の温度のゆらぎはある。そういう場所を1つの重要なターゲットとしたいということです。
【増田委員】 そうすると、その検証には「ちきゅう」なりで、ボーリングするということになる、ということですよね。
【木川プロジェクトリーダー】 そうですね。最終的には掘削をしないとやはり。
【増田委員】 はい、わかりました。
【浦辺主査】 ここで今増田委員からも質問がありました埋積鉱床、海底下鉱床というものを、この5カ年計画が単なるウィッシュリストではなくて、具体的に本当に発見できるかどうかということが、非常に重要なポイントだと思います。
5カ年計画の資料では具体的にやることが一番小さな字で書かれておりますが、海底熱水の場合には潜航調査、微地形の調査、高解像度物理探査、画像観測というようないくつかのことが書かれています。この高解像度物理探査というものが本当に前に進めば、増田委員の御懸念の海底下のこともわかるのではないかと思いますが、ちょっとこのプロジェクトの体制を見ておりますと微生物の研究者、それから化学の研究者という方々で、高解像度物理探査をやられる方は入っていないように思うのですが、どのようにしてやられるのでしょうか。
【木川プロジェクトリーダー】 実はそういうことではございません。ホームページの方で担当研究員の名前は全部載せているのですが、例えば海底熱水システム研究グループに関しては、グループリーダーは微生物の研究者ですけれども、その下にこのような調査を想定しておりますので、具体的には実際に現場で見ていて、高解像度物理探査、あるいはものを取ってきて測るというような研究者もメンバーに入っております。実際の調査研究を考えた体制になっております。
【浦辺主査】 他にございますか。先ほど平さんの方からこれは日本に開かれたシステムだということで「基盤ツール」の実証というのがここにも書かれていますけれども、そことの連携はどのようにやっていくのか、「基盤ツール」でやっておられる方と具体的にはどういうふうに話し合ってやっていかれるのかがもう少しわかるといいなという感じがするのですが、そこに何かプランはございますか。
【木川プロジェクトリーダー】 具体的には基盤ツールとJAMSTECの関連というのは、若干微妙なところもあるのですが、実際に基盤ツール、例えば、電磁気探査的なことをやっているような人たちとも実際に連携して、調査航海に出ましょうという話もございます。その中には、冒頭の説明で申し忘れましたが、海底資源研究プロジェクトの研究員は機構内の研究員の他に他大学、あるいは関連機関から招聘研究員として招いた人たちもいまして、そういった形で入って頂いて、基本的にJAMSTECはほとんど関わっていないところもあったのですが、これまで「基盤ツール」を進めてきた大学の先生、あるいは関連機関の先生たちと連携していくことを具体的に考えております。
【平委員】 これは浦辺さんに言われるほど、重大ではなかったのですけれども、プロジェクトはマネージャーと言いますか、何が行われているか全体を見て、どのようなツールがどこで活躍していて、どのような成果が出ていて、一方でこのような熱水鉱床の兆候があったり、あるいは、メタンハイドレートの採掘のいろんな現場があったり、そういう情報を総合的にまとめて、今の段階がどうあって、どう「基盤ツール」を、あるいはJAMSTECをどの動かしてどこで何をやったらいいのか、ということを総合的に考えてきちっとやらないと、個々バラバラにやっていたのでは、「基盤ツール」の開発も総合力を発揮しないと思います。
ここにある調査研究推進グループと調査研究企画調整グループという2つの、このような研究グループにしては大きな事務組織、あるいはマネージメント組織を置いているわけでございます。ここに先ほど言ったようなノウハウだけではなく、将来の調査のやり方、あるいはどのような状態にあるかというデータ等々を含めたマネージメントの中枢を置きたいなと思っています。そこが機能すれば、今のような話は解決するのではないかと思っております。
【浦辺主査】 ありがとうございます。
【浦委員】 確かにその通りだと私も思います。もう一方で先週、JOGMECの方に講演して頂いて伊是名海穴の電磁データというものを見せて頂いて、それはROVを使った素晴らしいデータを見ていたのですけれども。一方で、電磁データの解釈とか、生データをどう変換して、それをマッピングしていくか、なかなか難しい問題もあるようにお見受けしました。ですので、そのあたりのデータの共有なり、解析なり、もちろんJOGMECも力を持っていると思いますが、ROVのデータを共同して解析することができないでしょうか。同じようなことを例えば文科省の方でやっていても、それらと比較するために、JOGMECの成果というのがもう少しオープンにならないのかなと。あるいはもう少し具体的に教えていただけないか、ということです。マネージングをどなたがするかわかりませんが、しているのか、ということもありますが、全体的にはうまくやれるのではないかと思うところがあります。
【浦辺主査】 ありがとうございます。平さん、浦さんから非常に重要なポイントで、どのようにマネージングしていくのか、これがやはり大きな目的にとって重要なことです。
【浦辺主査】 その議論をする前に、そういう議論に移っていきたいと思いますけれども、関係機関との連携ということで、これは資料3で事務局の方に論点を整理して頂いております。事務局の方から資料3について説明して頂いて議論を続けたいと思います。
【鈴木海洋地球課長補佐】 資料3「関係機関との連携について」説明させて頂きます。今ご指摘がありましたJOGMECとJAMSTECの連携や「基盤ツール」のセンサーの実施についても、論点として記載させていただいております。
まず、最初の1ポツですけれども「基盤ツール」のセンサーについては、平成20年度採択課題は既に研究開発を開始して3年間が経過しており、もうそろそろ実際の海域で本当に使えるかどうかということを検証していくことが重要ではないかと思っております。また、技術実証のための海洋調査で得られた結果の妥当性や有効性を検証するためには、海底下構造や組成、物性等について既存の調査結果と比較することが重要ではないかと思っております。これは「答え」がわかっていないところで初めて使ってもそのデータが正しいか、正しくないか、がよくわからないのではないと考えられるからです。そのため、今後、平成24から25年度に実施する技術実証ついて、例えば、JOGMECが既に資源量評価を進めており、ボーリングデータ等の実測値と比較ができる海域で、JOGMECの調査結果を活用しながら実施することが有効ではないかと思っております。またJAMSTECについてですけれども、「基盤ツール」のセンサーの実証をしたくても、公募航海に採択されないということもあるので、実証のためのシップタイムを確保するなど、資源探査に有効なセンサーを確実に海域において実証させることが必要ではないかと思っております。そのためには、大学の先生、JOGMEC、JAMSTECが事前によく調整した上でやっていくということが重要ではないかと思っております。
その次ですが、「JAMSTECが開発中のAUVやROVなどの無人探査機の実証」についても、JOGMECが現在お持ちの船や、現在建造中の海洋資源調査船に搭載して、使っていくということも考えられるのではないかと思っております。さらに、海上保安庁が海洋調査を実施するということでしたので、そこで得られる地形データを活用することにより、効率的な探査ができるのではないかとも思っております。
情報の公開についてご指摘もございましたが、3ポツ「調査結果や知見の共有」です。1ポツや2ポツの実証において得られた知見が、資源エネルギー庁が実施する資源量把握等に活用されるためには、JAMSTECとJOGMECによる事前の調整や情報共有が重要ではないか、また、学術的成果については、広く発信し、国際的な学術コミュニティで共有することが重要ですが、その取扱に注意することが必要であると考えられるデータについては、発表の内容等について事前によく調整することが必要ではないかと考えております。論点としましては以上です。
【浦辺主査】 このことを残りの時間を全て使って議論していきたいと思うのですが、ついでに資料4で、最初に書いてあった「開発中のセンサー」とはどういうものであるかというのを皆さんに一度記憶をリフレッシュして頂いた方が、議論が進むかと思いますので、合わせて資料4についてもご説明いただけますか。
【川口企画調査係長】 それでは資料の4-1について事務局から説明申し上げます。この資料は、「海洋資源の利用促進に向けた基盤ツール開発プログラム」、今年度からは、「海洋資源利用促進技術開発プログラム」のうちの「海洋鉱物資源探査技術高度化」と名前が変わってございますが、これの平成20年度に採択した課題、最初3年間で基礎的な研究開発を行ってあと2年で実証をする5年のプロジェクトでございますが、これについて昨年度末に行った中間評価をまとめた紙でございます。このプログラムそのものに関しましては、平成21年度に採択した課題が他に6課題ございますが、それに関してはこの紙に記してはございません。
まず1つ目が「海底位置・地形の高精度計測技術の開発」につきましては、音響技術でございまして、海底探査機の位置や海底の地形の情報というものを高精度に計測をするということを行うものでございます。どういう進捗状況かと申し上げますと、従来よりも素早く、精度よく測るというような技術が開発されておりますし、高精度の合成開口インターフェロメトリ技術というものを使いまして、実際に浅いところでやってみると目標の制度を達成することができたというところでございまして、2年間の実証の方に移行するということになっております。若干ものが大きいと重たいとか、そういうところがございますので、AUV等にも乗せることができるように小さく、軽くして頂きたいなというところでございます。
次の「海底熱水鉱床探査の為の化学・生物モニタリングツールの開発」に関しては、そのものズバリ化学成分のセンサーでございます。平たく言うと海底熱水活動というのは海底の温泉ですので、その成分が海水中に影響を及ぼして海水の成分が変わることを利用して、何か見つけられないか、というものでございます。この成果と致しましては、とにかく小さくすること。今までの技術で作られたものより小さくすることができたというところに尽きます。先ほど、海上保安庁のからのご説明にも話題として出てきましたが、沖縄海域で保安庁の測量船で見つけられていた海底熱水活動の存在する可能性がある地形の場所で実際に試験をしてみたところ、未知の海底熱水活動を新たに発見することができたという成果を上げております。先ほど保安庁から紹介のあった「海上保安庁による海洋調査が以後の探査につながった例」というのは、実はこのプログラムの中で出てきたものでございます。今後につきましては、全体として小さくなってきてはいるのですが、ポンプであるとか、そういったことも含めて、装置全体として小さくするようにしましょう、というところでございます。
さらにその次が「電磁気学的手法を用いた高精度海底地質構造探査ツールの開発」というものでございます。海底熱水鉱床というようなものは、金属硫化物でございますので、電気であるとか、磁気であるとかそういうものに反応するという性質を利用しまして、下に何か埋まっているか、ということを調べるという技術の開発ございます。これも概ね順調に進んでいるということでございますが、ただこれに関しては先ほど委員からもご指摘がありました通り生値と実際の解釈との突き合わせというところをしっかりとやっていく必要があり、解析技術の高度化を図っていきましょう、というところでございます。
最後に裏面の一番下でございますが、「コバルトリッチクラストの厚さの高精度計測技術の開発」というところで、今まで無理であろうと言われてきました音響を用いてコバルトリッチクラストの厚みを測るセンサーを作ろうというものでございます。これに関しては難しいだろうと言われていたことを見事にひっくり返しまして、非常に正確に測ることができるという非接触型の音響センサーの開発に成功しているところでございます。
全体としまして、開発中のものでございますので、作った先生方がいらっしゃらないと、というところがありますので、誰でも使えるようなものにしていくということが大事なのではないかというところでございます。事務局からの報告は以上です。
【浦辺主査】 はい、ありがとうございました。今資料3、資料4-1を紹介頂いたのですが、何かわからないことはありますでしょうか。資料4-1は平成20年度の課題ということで、中間評価がされてコメントがなされていますが、これは、この後はどういうふうになりますか。
【鈴木海洋地球課長補佐】 この後、2年間は研究を続けるということです。技術実証については、先ほど発表したように、海域を決めてできる部分もあればいいかなと思います。開発もまだ必要ですので、技術実証しながら開発も進めていくものと思っております。
【浦辺主査】 はい、どうもありがとうございます。そのあとのご説明で平成21年度は6課題あり、来年、評価を行うわけですが、それについてはどのような将来予測になっていますか。
【鈴木海洋地球課長補佐】 平成21年度課題については公募段階では、3年間ということで公募されておりまして、そのあとの2年間については今のところ未定という状況です。センサーの開発状況等を見ながら、今後どのように続けていくのかということについて、検討しなければいなけいのではないかと思っています。ただフィージビリティ・スタディを平成21年度に実施したことから、本格的に開発が始まったのは実質的に平成22年度と理解しておりますので、今すぐにこれが使えるかという判断を出来るところではないと思っております。
今後、平成24年度、25年度について、どうしていくかということは、概算要求との関係もあるので、検討していかなければいけないと思っていますし、このことについてご意見があれば、是非頂きたいと思っております。
ご参考までに、机上配布資料で緑の資料をお配りしていますが、最後のページに「基盤ツール」採択課題の一覧が載ってございます。これに平成21年度採択課題についてどのような課題があるか、が載っております。
【浦辺主査】 はい、どうもありがとうございます。資料4-1にある平成20年度課題ついてはあと2年実証ということで、まだ具体的には、決まっているわけではないけれども、こういう方針でやっている。平成21年度の課題については、どのように実証するかまだ決まっていないということでございます。これを踏まえて、もう一度資料3に戻って頂いて、1番「海洋鉱物資源探査技術高度化」で開発中のセンサーの実証ということで丸が3つ書かれておりますけれども、これについて、皆さんとぜひどうすればいいのかという議論をしていきたいと思います。何かありませんか。
【増田委員】 資料3にJOGMECがたくさん出てくるので、何か言わないといけないのではないかと、いうわけではないのですけれども。この1番について「センサーの実証」。ここに3つ書いてありますけれども上の2つというのは非常にそのとおりだと、重要なことだと思います。センサーが本当に機能しているかどうかというのは、ボーリングデータの実測値、実際にどんなものを測っているのかというものがわからなければ実証にならないので、これは非常に重要だと思います。従って、我々が持っているボーリングデータをそのセンサーの実証に使って頂くということはできるのではないかと思います。
ただ、最後の3番に書いてある、情報共有というところまではいいと思うのですが、いつも問題になることとして、成果の発表という点になると非常にこの資源の場合は難しい点があります。やはりその位置や量を推察できるようなデータというのは、権利が確定するまでは、出せないというところがありますので、ここが非常に難しいなという感じがします。「学術的成果についてはいいではないか」という議論になるのですが、実際は区別がつかなくて、どんなデータも何らかの重要情報を含んでいるということになりますので、ここが一番難しいところではないかと思います。とりあえず以上です。
【浦辺主査】 この点についていかがでしょうか。これまで浦さんからもデータの取り扱いについてご指摘ありましたが、なかなか難しい問題はあるのですが、鉱業法も新たに改正をしようということで、上程されているわけですけれども、これは資源エネルギー庁の方でそのようなことが、もう少し前に進めば、少し改善する見通しがあるのかどうか、いかがでしょうか。
【久保田鉱物資源課長補佐】 資源エネルギー庁からコメントさせて頂きます。今の資料3の3ポツですが、やはり機微情報があるというのは当然です。ただ、機微情報があるから、科学的成果を発表するにあたっても全面的に発表しないということではなくて、発表できる方向でそこは検討すればいいのだと思います。その時に取扱注意のものを違う表現にするのか、あるいはある一部の情報を隠すとか、そういうことは必要だと思っています。あと1ポツについては増田委員が言われたとおり、JOGMECのデータを用いた検証というものについて全面的に協力したいと思っています。
【磯﨑委員】 JAMSTECのことについて触れた部分を少し。1ポツの3つ目ですけれども、先ほどありましたシップタイムの問題なのですが、先ほどちょっと木川も触れましたとおり、今JAMSTECの7隻の船を使うときには、まずJAMSTEC内での所内利用課題を募集して、次は一般公募といって、JAMSTEC外に研究船利用について公募する。これを毎年繰り返しているということで、ちょっと戦略的にシップタイムを確保しようとするときに、なかなかそれに、そぐわないことがあります。ある程度このようなシップタイムの確保を戦略的に、単年度ではなくて、複数年度をベースに考えるものを、全部とはいきませんけれども、そういったものを確保する必要があるというようなことも思っています。それを従来から行っている科学研究、あるいはこのような資源に関連するものと、少し使いわけながら、複数年度で船を戦略的に使って、余ったところでまた従来の公募というやり方も必要かなと少しJAMSTECの中でも議論していきたいと思っております。いかんせん、特に今は油代の高騰もあったりして、なかなか苦慮しながら船を動かしているということがありますけれども、なんとか、その中でもこういった戦略的な動かし方をしたいなと思っております。
それと2ポツのところでJAMSTECが開発中のAUVやROVですけれども、「白嶺」ではROVは用意されると伺っています。AUVにつきましては、特に船を決めないでも使えるようなものを作っております。私たちのAUVを365日自分たちの船で動かすことができるというわけではありませんので、機会があれば、機能がJOGMEC側にマッチすれば、ぜひ使って頂くことは大いに結構なことだと思います。また、先ほど申しました環境ベースライン調査においては、私たちのROVをJOGMECの調査に使って頂いているということもありますので、今後も連携が重要になってくるのではないかと思います。
【浦辺主査】 いろいろとお話がありました。増田委員から、実検証のための場所というのは、JOGMECの方で、掘削データのある地下の情報がわかっている地域で、開発中のセンサーを使った調査をやることは歓迎するというお話でございました。磯﨑委員からは、JAMSTECの方もAUVを「白嶺」に提供することもかまわないし、また様々なところでJOGMECと協力していきたい。JAMSTEC自身の船についても数年度戦略的な方法でシップタイムを確保する。それから平委員からもオープンに日本全体でいろいろな形でこのようなことをやる方と連携していくという、非常に前向きな発言がたくさん出てきたと思います。
海上保安庁の発表の中にございましたけれども、大陸棚延伸のときの調査では、三省庁が非常に連携して大変に成功した例だと、高い評価だと思います。資源探査においてもそのような連携が継続されることで国民の期待に非常に大きく応えられるのではないか、という感じがしております。
それから2つ目の重要な点は、データの公開ですけれども、資源エネルギー庁から、発表できるように工夫しようと、大変積極的なご提案がございました。もちろん、今日最初に申し上げたように機微に関わるようなことはあるとはいえ、全体としてそのような理解を進めるようなことをやっていけば多くできると思いますし、これは総合海洋政策本部の方でも全体の調整ということで、このような面についてはぜひ御協力をお願いしたいと思いますが、何か竹田さんの方でコメントはありますでしょうか。
【竹田内閣参事官】 特にということではないですけれども、各機関で様々な連携を進めて、調査を加速していくなり、いろいろと実施していく中で我々も必要なことがあれば調整等させて頂きたいなと思っています。本委員会の議論を踏まえて、検討させて頂きたいと思います。
【浦辺主査】 ありがとうございます。まだ議論が必要な点がいくつかあるのですが、この先ほど紹介にありました「基盤ツール」をどうやっていくか、ということですけれども。どのようなことに注意すればいいのか、一番の専門は沖野さんだと思うのですが、沖野さんの方からどうやっていけばいいのか、ご提案ございますか。
【沖野委員】 原則としてはここに書かれているとおりで、このあと実証試験をする段階で、特に物理探査系はグランドトゥルースをとるという形が重要でシップタイムの確保というのは先ほど磯崎さんがおっしゃったとおりで、少し戦略的にとった方がいいかなと思います。
それからJOGMECのボーリングデータとの比較というのはすごく大事なのですが、それは3ポツのデータの公表とすごく関わっていて、「基盤ツール」の研究をされている方は基本的には、学術目的と思ってやっておられるわけで、成果の公表が、保証がないという言い方は非常によくないですけれども、「位置情報を出しではいかん」といわれると、研究者のモチベーションはめちゃくちゃ下がります。私が研究者の立場として発言させてもらえるならば、そうなるようなことに一生懸命やるかというとすごくつらいものはあります。センサーの実証ということで、その非公開なものを比べるということは有りうるのですけれども、もっと一歩進んでなにか新しいものをやってみたいとか、そのようなところに結びつけるためには、なるべくご協力いただいて、ある程度、国際的なコミュニティに出せるようなものを作っていかないと、研究者を育てて、ステップアップしていくことにならないと思います。非常に短期的に「基盤ツール」のセンサーだけの実証試験のために、例えば、ボーリングデータと比較できるというのは、それはそれで有効ですけれども、もっと長い目で見るとなるべくデータを公開できるような形で協力体制がないと困ると思います。
【浦辺主査】 協力を進める上で、ここでは大学の名前はあまり出てきていませんけれども、そのような意味では非常に重要だと思います。それからツール開発の中でどう実証試験をやっていくかというやり方について、いくつかコメントが書いてありますけれども、これについてはいかがでしょうか。このような形でやっていけばいいのかということですね。何を重要視してやっていけばいいのか、という点はありますか。
【沖野委員】 これは前回、この「基盤ツール」の話をしたことがほぼ反映されていますので、よろしいかと思います。ただ一番問題になっていたのは、電磁気系の実証試験だと思うのですけれども、例えば、すごく細かいですけれども、最後の早稲田の担当部分とか、「実海域試験の経験がないのでそれを実施すべき」のように、コメントするのは簡単なのですけれども、これまで海域観測をしていなかった人にそれを2年で、というのは実はすごくハードルが高い。うまくプログラムマネージメントの方で、全体としてうまく進むように少しサポートする必要はあるかなと思います。
【浦辺主査】 この関係機関との連携について、大体議論ができたと思います。地形データに関しても先ほど、海上保安庁の冨山さんから、必要があれば出していくというコメントもございましたので、一応、関係機関との連携というものは、このような会議の中で実現に向かっていると大変私も期待をしております。
1つ、最後残っている問題として、面的探査というものがあると思います。個々のポイント、ポイントには面白い問題があって、サイエンティフィックにやっていくということがあるわけですけれども、どなたかがやはり資源量を確実に増やす、あるいは「基盤ツール」を使って、新たなところに出かけていく必要がある。どこに出かけていけばいいのかを前回議論して、沖縄、伊豆というのがあがったわけですけれども、では誰が実際に行くのか、というところも、未解決だと思います。先ほど、資源エネルギー庁から産総研という名前も少し出しておられましたけれども、この辺のところは時間もかかるし、人もかかることですので、この辺の体制がまだ遅れているかなと思いますが、その点について何かコメントございますか。
【平委員】 まだ人の手当は十分ではないですけれども、我々のリーディングプロジェクトのところでは、例えば、掘削船だと「オフショア
スーパーインテンデント」という立場の人のがいて、研究チームとクルーのマネージメントのトップ、現場監督の人がいて、様々な現場のコーディネーションをやっていく。そのようなことが継続されないと一航海に首席研究員が乗ってきて、首席研究員の人が自分で好きなことをやって、次の航海にまた別の人がやってきて、また別の人が別の方法で好きなことをやって、ということがずっと継続していくようでは、統一的なオペレーションのやり方とか、データの取得の仕方とか、前回の経験が次に生かされるとか、そのようなことがあまり効率よく働かないと思っています。ぜひ「オフショア
スーパーインテンデント」という現場監督のような人をぜひJAMSTECとして育成していきたいと思っています。先ほどのようなコーディネーションですかね、JOGMECのデータと「基盤ツール」をどのように結びつけていくのかというような問題については、やっぱり誰かかなり系統的に考えないとできないことですし、一種のフィールドの住み分けがあるのかわかりませんが、JOGMECが将来、商業開発を目指したところと、少し学術的な調査を集中するところと、場合によっては少し分けなければいけないかもしれない。それはどのように分けて、お互いのどのような関係性を持たせるのか、ということも非常に問題になってくると思います。
それからデータですが、発表という方向で考えて頂けるのは、非常に大事ですけれども、JAMSTECでは、JOGMECを訪問して我々リーディングプロジェクトの紹介も兼ねてお話合いをもったのですけれども、やはりそこのところのハードルは相当高い。国の資源セキュリティーに関わることですから。そう簡単にはいろいろなところで発表というわけにはいかないと思うのですけれども。しかしそこに一種のガイドラインがあって、どういう場合にはこうだ、というのが見えてくれば、いろんな対応の仕方もあるだろうと思います。この点、JOGMECでも完全に詰めきれていないというように思いますので、そこは、継続した話合い、情報の交換をかなりみっちりやっていかなければならないと思います。その意味でも、資源エネルギー庁と我々のところでしっかりやっていきたいと思いますし、内閣官房総合海洋政策本部等も一緒にガイドライン作りをやってゆくべきと思っています。
【浦辺主査】 どうもありがとうございました。大変いろいろな議論がありますが。
【浦委員】 この「基盤ツール」は自分も関係しているのですが、エンジニアの立場として新しい道具は使っていかないと意味がないので、それで使って、改良されていって、その成果が見えてくると思うわけです。ですから今の現状の時点だと、浅田さんのこのインターフェロメトリにしても、彼が提案してJAMSTECのプログラムにのせて計測していく。このような体制をいつまでやっていてもよくはならない。平さんが言ったように全体的なプログラムがあって、そのプログラムの中に位置づけて、それを使って計測してその成果を出していくということにしないと、「好きな技術者が楽しいものを作って終わり」ということになります。
しかしながら「基盤ツール」ということをやっているのは、それを超えて実際のデータを取っていくことに意義があるので、そのデータを取っていく道筋というのが単にボトムアップでいいのかと思うわけです。私ども資料4-1の4番目の課題をやっているわけですが、自分で勝手に海山で調査をしているというだけなのですけれども。ボトムアップ的な作戦ではどうも先が見えてこない。トップダウンできちんと、たとえばコバルトリッチクラストだったら、このセンサーを使ってこのようにやるというストーリーが必要だというのが1つです。
そのためにはどうしてもシップタイムが必要で、現状ではシップタイムが明らかに足りない。おまけに震災が起こったのでますます減っている。ですから、それに代わるような船を持つとか持たないとか、ということは別にして、傭船をしてでもシップタイムの確保をするようなプロセスを考えていかなければ、今のところは先が見えないのではないかと思います。傭船は単にJAMSTEC以外の船ということです。いろいろなところに他にも船がありますし、国が持っている船もあります。そのようなことを総合的に比較して、観測していかなければいつまで経っても前に進まないなと思うので、その案をぜひ、文科省で、あるいは経産省と共同して考えて頂かないといけないと思います。
【浦辺主査】 はい、ありがとうございました。大変重要なまとめだと思います。他に何か、ぜひこの際、最後に発言しておきたい方がございましたら。
【寺島委員】 最後に発言するほどのことではないのですが、最初のところで、ちょっと聞きそびれてしまったのですけれども、1つは実証海域で、優先順位として1沖縄、2伊豆というその意味ですけれども、これは実証海域を1つに絞り込むという趣旨なのですか、それとも、なぜ2つやるのか、そのへんがよくわからなかったのですけれども。それをお聞きしたいのともう1つは最後の今の話で、調査を全体的な目で見る、という非常に重要なポイントだと思うのです。私は前々からやはり海洋調査について、少し総合的な調査戦略のようなものをどこがまとめるのか、本部事務局に音頭をとって頂くのかどうかわかりませんが、調査の全体的な総合的な戦略を作って、今のような議論もその中で入れ込んでやる必要があると思いました。
【久保田鉱物資源課長補佐】 資源エネルギー庁でございます。今ご質問のあった1点目ですが、これは実証試験候補海域というのは、実際に採掘をガリガリとしまして、どれだけ環境が破壊されるか、というのも並行してやりますので、相当大規模な、お金もかかるものです。今後も、予算制約がずっと続きますので、可能性としては1海域に絞られる可能性は十分あると思います。予算が許すのであれば、冒頭浦辺先生からもご指摘があったように、やはり水深の違いによる技術的な違い、簡単にいうと海底から海面まであげる揚鉱管の長さも違いますし、両方の技術がどこかで異なってくる可能性は十分ありえますので、両方で実施したいとは考えています。予算の制約がある程度見えてきた段階で決める予定ではございますが、今の段階では、たぶん1海域が限度であろうという状況でございます。
【浦辺主査】 はい、どうもありがとうございました。議論は尽きないところですけれども。
【浦辺主査】 最後に事務局の方から連絡事項等よろしくお願いします。
【鈴木海洋地球課長補佐】 資料の4-2が当面の予定でございますけれども、次の6月の委員会で、これまでのご議論をまとめた報告書の骨子案について、ご議論を頂きまして、その後報告書を取りまとめたいと思っております。
【浦辺主査】 はい、それでは時間を超過してしまいましたけれども、今日は議論ありがとうございました。それではこれで散会いたします。どうもありがとうございました。
研究開発局海洋地球課