海洋生物委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成23年1月18日(火曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省16階 16F3会議室

3.議題

  1. 海洋生物多様性研究の必要性について
  2. 海洋生物委員会の今後の進め方について
  3. その他

4.出席者

委員

田中、小池、鈴木、瀧澤、竹内、竹山、寺島、中田、西田、婁、和田 各委員

文部科学省

堀内 海洋地球課長、鈴木 海洋地球課長補佐、岩村 地球科学技術係長

5.議事録

【田中主査】

みなさんおはようございます。寒い中を朝早くからお集まりいただきありがとうございます。それではただいまより、第一回科学技術学術審議会海洋開発分科会海洋生物委員会を開催いたします。海洋開発分科会の分科長より指名いただきまして、主査を務めさせていただきます、財団法人国際高等研究所、元は京都大学の名誉教授でございました田中でございます。どうぞよろしくお願い致します。それではまずは事務局の文部科学省研究開発局、堀内海洋地球課長よりご挨拶をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

 

【堀内海洋地球課長】

おはようございます。本日はお忙しい中お集まり頂き本当にありがとうございます。昨年くらいから新成長戦略という議論をいろいろ政府の中で行ってきましたが、その中で海洋分野は、鉱物資源というところについては非常に注目を浴びて、しっかりやるべきだ、という議論が多く起こっていたのですが、観測であるとか、こういった生物資源につきましては、あまり重要だというような意見を言ってもらえず、政府としての計画の中にいろいろ盛り込むということが少し難しかったという印象がございまして、海洋政策といった「海洋」の研究開発を担当している我々としましては、そういったところもしっかり重点化をしていかなければいけないのではないかということで、その政策の議論をする場ということで、この海洋生物委員会を始めたものでございます。一方で、厳しい財政状況の中、少ないのですが、新規の予算ということで、この生物資源の関係の研究開発費を、予算要求ができることとなりました。科学技術予算は、全体で、前年度わずか少し増えるという感じなのですけれども、その多くは科研費であるとか、そういった基盤的な振興のところに当てられているという訳でありまして、独法とかこういったそれぞれの分野全てで増えているということではありませんので、当然新規なもの、プラスに大きく振れるようなものについてはとても厳しかったということでございますが、この政策はなんとか認められることになりまして、我々としては始めることができるということになったものです。あと今回は、文部科学省としてやるべきことという、予算はそれほど多くありませんのですぐに進行出来る部分というのは少ないのですが、文科省としてやるべきことということで方針を頂きまして、その中で我々事務局がやれることを予算などに反映していきたいということでご議論をして頂ければというように思っております。それで一つだけちょっと注意事項というか、少し事務方の方からということで恐縮なのですが、最近仕分けに代表されます我々の説明責任というものが非常に重要だということになっておりまして、事務方だけではなくていろいろな研究をやっている方とか機関であるとか、そういうところに一体これはどういった必要性があるのか、どういった効果があるのか、ということを当然のようにちゃんと説明できるよう、求められておりまして、この文科省としてやるべきことというご議論の中で、どういった形、どういった言い方でこの政策を説明していくか、またそのテーマを選ぶにしても、どういった観点からそういうものが重要であるかということを今までよりも、明確にしていただけると、我々も助かる次第でございます。またこの政策も発展性のあるものになるのではないかと思っております。以上、本日からの御議論、よろしくお願い致します。

 

【田中主査】

どうもありがとうございました。まあ今回が堀内課長さん始め関係者の皆さんがすごく努力してくださって、こういう海洋生物資源研究を文科省としても積極的にこれから動かしていく芽が生まれたということですので、その芽を大事にしながら、同時に少し中長期的にこれから海洋資源生物研究をどう進めていくかということまで含めて皆さんのご意見を集約して提言できればいいのではないかという気がしているのです。次に資料の確認を事務局にお願い致します。鈴木課長補佐、よろしくお願い致します。

 

【鈴木課長補佐】

はい。資料の確認をします。一番上に旅費の確認に必要な資料がありますので、内容を確認の上必要な部分を記載して、会議終了後に机の上に置いていただければ事務局で回収させていただきます。また新規の委員の皆様には人事関係の書類も机の上に置かせていただいております。続きまして、議事次第に沿って、資料の確認をいたします。クリップ留めされている資料の一番上が議事次第になりまして、4ポツに配布資料がございます。その次のページから、資料1が「海洋生物多様性に関する研究開発の重要性について」、資料2-1がカラー刷りの資料になっているかと思いますけれども、『「海洋生物資源確保技術高度化」平成23年度予算案について』、資料2-2が、「海洋生物委員会の今後の進め方について」、資料3が「当面の予定」でございます。参考資料としましては、参考資料1が名簿、参考資料2が海洋開発分科会の運営規則、参考資料3が海洋生物委員会の設置について、参考資料4が科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業について、でございます。また、机上配布資料としまして、戦略目標の提案書がございます。そのほかに、各委員の先生方から事前に頂いたご意見についても配布しています。不足等があれば事務局までおしらせください。

 

【田中主査】

それでは次に当委員会の設置および審議事項について、事務局より説明をお願いいたします。

 

【鈴木課長補佐】

参考資料を用いて説明させていただきます。参考資料3「科学技術・学術審議会 海洋開発分科会委員会の設置について」です。四角の表の下の方に、線が引いてあるところが本委員会についての記述ですが、海洋生物に関する基礎的な研究開発のあり方について調査を行うということがこの委員会の審議事項となっております。また、本委員会は昨年8月25日の海洋開発分科会において設置されました。1枚戻りまして、参考資料2ですが、第2条の3に、「委員会に主査を置き、当該委員会に属する委員等のうちから分科会長の指名する者がこれに当たる」と記載されていますが、海洋開発分科会会長の小池会長から、田中主査をご指名いただきまして、主査をお願いしているというところでございます。以上です。

 

【田中主査】

ありがとうございます。改めまして、小池海洋開発分科会長から指名をいただきました田中でございます。私は4年前に京都大学農学研究科の生物系のところを退職いたしまして、現在は京阪奈学園都市にあります財団法人海洋国際高等研究所のフェローを務めております。この研究所は非常におもしろい研究所で、関西の財界が1980年代の初めに21世紀を見越して科学の細分化と同時にもう一方では色んな分野がこれから融合していくことが極めて大事だということで設置されて、いろんな研究会を立ち上げて、文系理系関わらずいろんな研究者が議論しながら新しい芽を生み出すということです。それで、この海洋資源生物研究についても同じようなことがこれから求められるのではないかと。今までのように先端的な一方では、できるだけシャープに進めると同時に横の融合というのがこの分野にとっても非常に重要で、そういうことから少し貢献できるのではないかと。もちろん私がこういう主査を務めるに適任であるかどうかはわからないのですが、おそらくまあ年齢も含めてだんだんそういう役割が回ってきたのではないかというように感じております。それでは、今回は第1回委員会ということですので、まず事務局より委員の先生方のご紹介をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

 

【鈴木課長補佐】

はい。参考資料1の名簿に沿って紹介をさせていただきます。小池勲夫委員です。

 

【小池委員】

小池です。よろしくお願い致します。

 

【鈴木課長補佐】

瀧澤美奈子委員です。

 

【瀧澤委員】

瀧澤でございます。よろしくお願い致します。

 

【鈴木課長補佐】

竹山春子委員です。

 

【竹山委員】

竹山です。よろしくお願いします。

 

【鈴木課長補佐】

寺島紘士委員です。

 

【寺島委員】

寺島です。どうぞよろしくお願い致します。

 

【鈴木課長補佐】

西田睦委員です。

 

【西田委員】

よろしくお願いします。

 

【鈴木課長補佐】

婁小波委員です。

 

【婁委員】

婁です。よろしくお願いします。

 

【鈴木課長補佐】

北里洋委員については本日は欠席との連絡を頂いております。

鈴木賢一委員です。

 

【鈴木委員】

鈴木です。よろしくお願いします。

 

【鈴木課長補佐】

竹内俊郎委員です。

 

【竹内委員】

竹内です。よろしくお願いいたします。

 

【鈴木課長補佐】

中田薫委員です。

 

【中田委員】

中田でございます。よろしくお願い致します。

 

【鈴木課長補佐】

和田時夫委員です。

 

【和田委員】

和田でございます。よろしくお願い致します。

 

【鈴木課長補佐】

合わせて事務局についても紹介致します。先ほど挨拶もしましたが、堀内海洋地球課長です。河村技術参与です。岩村係長です。南係員です。そして私、課長補佐の鈴木です。よろしくお願いします。以上です。

 

【田中主査】

どうもありがとうございました。それでは、このメンバーでこれから色々議論を進めていくことになりますので、皆さんどうぞよろしくお願い致します。

 

(2)海洋生物委員会の今後の進め方について

【田中主査】

それでは続きまして、お手元の議事次第と順番がちょっと逆になりますが、議題2「海洋生物委員会の今後の進め方について」から議論を進めたいと思います。事務局よりご説明をお願い致します。

 

【鈴木課長補佐】

資料2-1と資料2-2について説明をします。まず資料2-1について、先ほど課長からも挨拶の中でふれましたが、海洋生物資源確保技術高度化という競争的資金を平成23年度の予算で新たに予算案に計上させていただきました。金額としては、1億6,600万円と小さいですが、今後大きくしていければいいと思っております。【現状】のところで課題について説明しております。まず、近年わが国では、海洋生物資源の確保に関した問題意識が高まっています。例えば2010年3月には、ワシントン条約締約国会議でクロマグロの国際取引の禁止が議論されており、気候変動や乱獲等による海洋生物資源の枯渇が懸念されております。このような状況ではありますが、共通基盤的な研究開発は十分に行われていないという状況にあると考えてございます。そのため、海洋生物資源を確保していくためには、海洋関係技術の振興と言う観点から基盤的研究についても政策として実施していくことが必要と考えました。具体的な研究課題としては、まずは、海洋生物の生理機能を解明して、革新的な生産に繋がるような研究開発を実施すること、その次に、海洋生物の正確な資源量予測を行うための生態系を総合的に解明するような研究開発を実施することを考えております。具体的な研究開発のイメージというものがございますけれども、最初の「革新的な生産につなげる研究開発」について、具体的には、様々な海洋生物に応用可能な基盤的な研究開発や、また既存のものには無いような革新的なもの、が本事業では対象となると思ってございます。その下の、「生態系を総合的に解明する研究開発」については、海洋生物資源を育む海洋環境やその他の生物種との関係など、生態系全体の仕組みを解明する研究を考えてございます。左側に、本事業の制度のイメージを記載しておりますが、本事業については、魚を対象にしますので、世代交代には時間が掛かるということもございまして、支援期間については若干長めの5~10年が適当なのではないかというように考えております。その下のポツになりますけれども、資金としては、人を雇用する経費みたいなものを措置して任期付研究員を雇うことや、実験用大型生けすを買うことも可能にするべき、と考えています。また、一件当りの金額については、5,000万~1億程度が適当ではないかと思っています。資料2-2が、海洋生物委員会の今後の進め方です。まず、海洋生物について、競争的資金制度を立ち上げることになりました。また、海洋生物資源の枯渇というものが懸念されるような状況になっております。その他にも、今年度、生物多様性条約国会議が名古屋で開催といったこともあって、海洋生物に対する国民の関心も高まっているというように考えてございます。以上のような状況を踏まえまして、本委員会においては、まずは23年度から新たに始める競争的資金でどのような課題を対象とするのかとか、どのような制度にすべきか、ということをご検討いただきたいと考えてございます。加えて、海洋生物全体について今後どのように振興していくべきか、についてもこの委員会でご検討いただければというように思ってございます。具体的な検討の進め方なのですが、まず本日、第1回の会議においては、今提案した進め方についてご議論いただくと共に、海洋生物多様性についてもご議論いただければと思っております。その後ヒアリング等も踏まえて、報告書として海洋生物に関する研究の在り方について6月を目処に取りまとめていただければと考えています。競争的資金の公募、審査と本委員会の関係ですけれども、公募要領の作成や具体的な審査については、外部評価委員会を別途立ち上げたいと思っています。しかし、公募要領の内容については、当然この委員会でご議論いただいた内容を反映させるということを考えてございます。以上です。

 

【田中主査】

ありがとうございます。今ざっと概略をご紹介いただきましたが、既に皆さん宛にあらかじめ配布していただいている資料もたくさんあったかと思いますが、ご質問等があればお願いしたいと思います。いかがでしょうか。資料2-2の下の方に、2月~4月、まあ1~2回程度開催で、「ヒアリング等を行いながら」とありますが、これはこのあたりが非常に重要だと言うことになれば、それに造詣の深い研究者の皆さんに来て頂いて、レクチャーを頂き、それを元にディスカッションをするというようなことを想定されたいということでしょうか。

 

【鈴木課長補佐】

はい。本日皆さんにご議論いただいた中で、こういうことを進めるということが決まれば、それに関係の深い方をお呼びして、ヒアリングを行ってはいかがかというように思ってございます。

 

【田中主査】

委員の先生方、いかがでしょうか。

 

【小池委員】

ちょっとよろしいでしょうか。

 

【田中主査】

はい、どうぞ。こういった……記録の都合上、お名前を。

 

【小池委員】

はい、失礼しました。小池です。これ5年~10年が試験期間と書かれていますけれど、今までこういう競争資金として最大5年で、それ以上というのはなかなか無かったような気がするのですけど、そういう形が可能なのか、その辺はどのように考えているのでしょうか。

 

【鈴木課長補佐】

可能だと考えてございます。やはり中間評価であったり、5年後の評価であったりは、きっちりして、説明責任を果たしていけるような形であれば可能なのではないかと考えております。

 

【田中主査】

海洋資源生物の研究ですと、まあ5年でも非常に短いということになりますので、この委員会としては最低5年を2スパン、それくらい、10年ぐらいの単位が絶対に必要だというようなことを提言の中に盛り込むというのも重要な委員会の役割ではないかという気がしています。その他ご質問等いかがでしょうか。

 

【瀧澤委員】

すみません、よろしいでしょうか。

 

【田中主査】

はい。どうぞ。

 

【瀧澤委員】

ありがとうございます。瀧澤でございます。若干質問なのですけれども、この海洋生物資源確保技術高度化という具体的に予算の付いた政策について議論をしながら、一方で海洋生物のどのような課題があるかというのを抽出するというのを、同時並行的に二つのテーマをやる、というイメージでよろしいのでしょうか。

 

【鈴木課長補佐】

今後の進め方について、本日のご議論を踏まえて決めたいとは思っておりますが、基本的には、一度、委員会で、この海洋生物確保技術高度化で何をすべきか、をじっくり検討していただいて、その他については、また別途、例えばですが人材養成について必要だと言われれば、人材養成を中心に検討する機会を設けてもいいのではないかと思ってございます。

 

【堀内海洋地球課長】

最初に申しましたように、この1億6,000万という予算規模について、ちょっとまだ足りないのかなという思いがあります。それから今日も、生物多様性の議論をしていただく予定ですが、これはこの1億6,000万とは別の制度での実施を検討しております。やはりこの分野において、今後も含めて、少し発展とか、どういったところに重点を置いて進めて行ったらいいのかという議論がまだ残っているのではないかと思っております。そういった意味で全体と、また今回は新規に始める事業についてこれを具体的にどうするかというのを両方ご議論いただけないかということであります。そういう意味では、既に決まった施策について、それをちょっと綺麗にしてくださいということではなくて、我々がこれからこの分野を振興していくにあたって、どっちの方を向いて行ったらいいのかということをお示しいただけると助かりますと、そういった意味でございます。

 

【寺島委員】

ちょっとよろしいですか。

 

【田中主査】

はい。

 

【寺島委員】

寺島でございます。確認的な質問かなと思うのですけれども、海洋生物資源確保技術高度化というこの言葉と、それからこの海洋生物多様性研究の重要性についてというのは、ちょっとまだしっくり理解ができていないというか、ちょっと理解しにくいというところがあるのですが。要するに、海洋生物の多様性をベースにして海洋生物資源確保についての研究について議論する、そんなイメージなのでしょうか。なんだか私最初に提案があったときから、「生物資源確保」でその後すぐ「技術高度化」というところに若干違和感があって。これはもう出来上がった言葉ですからいいのですが、理解としては、海洋生物資源確保の知識・技術高度化みたいな感じの理解でよろしいのでしょうか。逆に言うとその辺までちょっと広げた形の理解の下で進めたらどうかなというのが印象でございます。

 

【田中主査】

ご指摘の通りでございます。ただ、技術というところに特段何かこれからの議論に制限を加えるような意味がここにあるという訳ではありませんで、予算と議論してゆく中で、こういった用語の方がいわゆるその横並びだとか色んな話の中で都合が良いということでなったのでございまして、お願いしたいのはやはり生物資源を確保と言うか、有効に利用してゆくとか、また将来のためにちゃんとそのままの状態を守ってゆくと、そういった視点で研究開発どういったものを行っていったらいいかということをご議論いただきたい、ということでございまして、特段研究から離れて、実際応用できるような所を特にやってくれというようなことではございません。で、ちょっと言うと、そういったところを少し強調したような説明をしなきゃいけない都合、表題は予算上はこういった名前になるということでございまして。もう一回戻って、そういった全体がそこだけで全部カバーできるとは思っていないので、ちょっと広くというような、先ほど説明した説明にもう一回戻るという形になると。

 

【小池委員】

よろしいですか。

 

【田中主査】

はい

 

【小池委員】

予算確保上にこういう非常に何と言うのですかね、普通研究者が使わない言葉を、「資源確保」なんていうのは私初めて聞いたのですけれど、普通こういうときは海洋生物の持続的利用とか、そういう言い方を普通するのですけれど、そういう形にしたのはわかるのですけれども、やはり先ほどいわれたようにまた元に戻って、やはり研究と技術開発をそれに関してやるという了解でよろしいわけですよね。それでやはりもう一つは、文部科学省がやるということで技術開発と言ってもどこまでの技術開発をやるかっていうことをかなりきちんと議論しておかないといけないのではと。私は次の時に予定されている関係者のヒアリングの時に、なるべく今進行中の、例えば水産省とかそういうところの研究がどういうところにやっているのかというところへきちんと踏まえたうえでこちらをやるということが非常に大事ではないかと。

 

【田中主査】

ありがとうございます。議論がかなり核心的なところに踏み込みつつあるのですが、現実の問題とそれから少し中長期的な視点での本質的な展開、そのあたりをうまく両方考慮しながら進めていく、そして特に技術と言いますと我々は一般的には先端的な技術をイメージしがちなのですが、海洋資源生物の持続的な有効利用ということについての、こういう技術の在り方、一点突破的な技術ではなくてもっと複合的・総合的に色んなことを展開していくような、そういう海洋資源生物にとっての本来の技術の在り方も含めてこの委員会の中で議論を深めていただければということを感じております。それではまだまだご意見あろうかと思いますが、少し議事の進行上次に移らせていただきます。それでは、事務局より皆様方にお願いいましたように、各委員の先生方より大体時間の関係で4分を上限として、今後取り組んでいく課題についてご意見をいただきたいと思います。特にご意見をいただきたいのは、今回海洋資源生物について国として取り組むべき課題というのが一点。それから二点目が競争的資金の事業を行う際の注意事項、期間、期限、金額等。それから三つ目が、研究開発の整備など、その他政府として取り組んでいくこと。こうした三つの点を中心にご意見を伺えればと思います。今日残念ながら北里委員はご都合でご欠席ですが、先生の意見については机上に配布しておりますのでそれも合わせてご参考にしていただければと思います。それではこちら側からこういうように回っていくということでよろしくお願いいたします。

 

【小池委員】

私事前にちょっと考えてみたのでそこの机上のところにコメント小池と書いてありますが、それ簡単に書かせてありましたけれども。このプロジェクトをどういうように考えるかということで、やはり先ほど課長が色々事業仕分けの話をされていましたけれど、文部科学省としての視点でどういうことをやるかということが非常に大事ではないかというように思っています。日本ではやはり海洋の生物資源という、水産庁が主務的な役割としてやられているし、あともう一つ、かなり基礎的なものは大学の水産系でもかなりたくさんやられています。それはJSPSのファンドだったり、色んな形で進められていると思います。やはり私はこのレジュメに書かれているのが一番良い進め方だと思うのですけど、海洋生物の色々な機能の解明を進めること、というのが非常に基礎ですね。それからもう一つはそれの実際に生活している環境ですね。海洋現場におけるそういう生理、生態、機能を、環境を整えるのにどういうように理解するかということがやはり海洋生物の資源の、先ほど言いました「持続的な利用」には非常に大事ではないかというように思っていますので、それが一つ。それからあともう一つは、やはりこれは海洋地球課がやる競争的資金ですので、ある程度出口がはっきりしていなければならないというところがあると思います。それと先ほど言いました様に、既にもし水産庁とかそういうところで進められている研究がどういうものか、それにここで採択されるであろう研究がどういうように繋がっていくかということを前提に置いて議論をした方がいいのでは、というのが一つです。その後に考えられる研究というのを色々と書きましたけれども、なかなか今、私も幾つかそういう水産庁の方でやられているのにも多少関わっておりますけれども、どちらかというとやっぱり生産技術ですとか、周辺の、いわゆる環境ですとか食物連鎖ですとか海洋環境ということはどちらかというとマージナルな研究になってしまっているのですね。ですからやはりそれをうまく総合的にやってくような研究というのがここでは非常に大事ではないかというように思っています。それから資金のあれですけれど、やはり先ほど出ましたようになるべく5年ではなく10年くらいは続けた方がいいと思いますけれど、やはり途中できちんと見直しをした方がいいだろうと。それであと兎角日本の場合はいっぺん始めてしまうとなかなか切りにくいのですけれども、やはり4年ぐらいやってこれは駄目だと思ったものはやっぱり切った方がいいのではないかというように思っています。そうでないとなかなかずるずるずるずる行ってしまって、結局何だったのかなということが時々起こるというのはやはりちょっと問題ではないかと。それからあと研究体制に関しては、先程上流と下流側の研究というように申しましたけど、もしそういうものがきちんとしたものがあるのであったらそれを上手く繋ぐような、両方の研究の連絡委員会、そういったものを作った方がいいのではないかというように思っております。実際今いくつかそういう、例えば文科省と環境省とか、いくつかのそういう連絡の委員会もいくつかの分野でできておりますので、そういうことは割合と今の状態では比較的やりやすいのではないかと思いますので、是非そういうことを考えていただきたいというように思います。以上です

 

【田中主査】

ありがとうございます。それでは寺島委員お願いいたします。

 

【寺島委員】

小池先生の後に意見するのはしにくいところがありますけれども、私あまり自然科学の方の専門ではないのですが、ちょっと意見を、あまり系統立ってではないのですが述べたいと思います。一つ、今いわゆる有用生物資源についてはもう水産庁の方で非常に積極的に、しかも長い間研究されていると思いますが、最近言われている生態系、この地球上にどれだけ生物がいて、どういう種類があって・・・というようなことについては、あまりきちんと研究されていない。特に海洋の場合にはそうだというようなことが言われております。この前の生物多様性条約の締約国会議でも色々議論されていたと思いますが、例えばセンサス・オブ・マリンライフで、この10年間色々研究したけれども、研究した結果としてまだまだわからないことがたくさんあるというのがわかったというような感じだとおもいます。それにしても色々成果が出てきているようですので、今度の研究において、そういうものをベースにして何をやるかというようなことを考えてはどうかという感じがしておりました。それから例えば、生物多様性の方では今度海洋保護区というようなことが言われておりますが、その場合、特にいわゆる生物資源の有効活用という意味では、日本では既にかなりそういうことをやってきているということが言われていまして、保護区については日本型の定義をして、それをもっと逆に国際的にも広めていくべきではないかというような議論が行われたと思います。生物資源の保護にはある意味で地元の漁協とか、そういうベースでかなり積極的に取り組んでいて効果を上げている。ただし、それは経験的に行われていることであって、科学的に解明されていることではないのだと思うのです。生物資源の確保というのであれば、その辺のところをきちんと科学的にも解明する。そうすると日本型の保護区の主張がもっと説得力を持って、国際的に発信できるのではないかなという感じがしています。ですからそれだけを目的にするということではないですが、そういう意味でもうちょっと有用資源の研究から生物多様性あるいは生態系の研究というところに広げてその成果を生物資源の確保に役立てるというような視点が必要ではないかと思いました。そういう意味で見ていきますと、日本の周辺の海域というのは非常に多様性に富んでおります。全体として非常に生物多様性が高いということはセンサス・オブ・マリンライフにも言われておりますけれども、その中でもまた色々多様性があると思うのですね。北の方の海域、アムール川からの水の流れ出る海域もありますし、南の方の珊瑚礁やマングローブの海域もありますし、あるいはもうちょっと別の、親潮と黒潮の流れが重なって非常に豊かな漁場を形成しているという海域もありますので、少しそういう海域特性にも注目した研究が行われるとおもしろいのではないかという感じがしています。以上ちょっと雑駁ですが、研究の中身についてはそんなことを感じております。それから全体の設計といいますか、全体の構想というのがかなり重要ではないかと思います。競争的資金という形で申請はそれぞれの研究者の方が出されると思いますが、それを見る場合に少し全体的な、全体設計と言っていいのかわかりませんが、全体的な視点を持ったうえでこの研究がその中のどこに位置づけられるのかというのを見ながら研究を採択するというようなことが必要と思いました。それから先程小池先生が言われましたが、かなりそういう意味でまだ手探りのところから始まるところがあると思いますので、しかも長期の期間が必要であるとすれば、やはり中間評価というような形で研究を管理してゆくことも重要ではないかと思いました。以上でございます。

 

【田中主査】

はい。ありがとうございました。引き続きまして、竹山先生の方からお願いします。

 

【竹山委員】

はい。手元に加えられました、先生方が書いたものを読ませていただきながら、大体のことが書いてあるなと思いながらですね、ちょっとそこと違う視点のところをなるべくフォーカスしてお話させていただきたいと思うのですけれども。基本的に生物資源とは何か、ということがたぶんあると思うのです。で、それぞれ皆さん研究者は生物資源と言った時にイメージするものが非常に違っていて、今回のプログラム、小さいとはいえ、これはもう魚という形になっていますので、生物資源をいわゆる私達が食べるもの、という意味合いでしかフォーカスされていないので、そこに関しては何か文句を言うつもりは無いのですが、これから大きくしていくためには、生物資源とは何か、ということをもう少し考えなければならないと思うのですね。で、この紙にも生物資源のもうちょっと、対象は何も書いてないですけれども、そこから有用な何かを取るといったときに、微生物から始まり、もうすこし、無脊椎も入るし、色んなものが入ってくると思いますので、ちょっとそこら辺のコンセプトをもうちょっと明確にしていただきたいなという気はします。で、先程来、色々とあったと思いますけれども、確保するためには何が必要なのかと。技術的なことだけでなく知らなければならないことがあるというお話でしたので。もちろんその生態系とか、水産における色んなファクターもあるでしょうし、それが必要な微生物とか餌になるものとか、そういう食物連鎖の考え方や、あと今、昔と色んなサイエンスが変わった部分としては、ゲノムがすごく大きくなってきていて。今、ゲノム情報を今後どうやって利用するとか、確保するとか、集約するか、ということがやはり一つ出てくると思うのですね。魚一匹まるごとゲノムを読めばいいかというとそうではないと思うのですけれども、利用も含めて情報科学というものを少し意識した上で考えていただきたいと。そこで一つお願いしたのが、色んな研究を今まで日本も長いことやってきたと思うのですけれども、私どもも色々と調べると、情報が手に入りにくいということが非常に多いのですね。どこそこ湾のなんとかっていう所はどこそこ湾でなになにをやっていると。というと、それが情報として皆にあんまり手広く簡単には入らないと。もちろん論文になっていれば論文から見ればいいのですけれども、意外に細かいデータは研究者の人が手に持っていて、その人がお辞めになったときには消えて無くなるということが非常に多いのですね。ですので、たぶん国からではないとできないことというのは、そういう全体的な、日本で情報を管理する大きなシステムを作って、かつこれからその環境の評価とか、色んなことが出てくると思うのですけれども、その方法論というのは皆さん自分の好きなやり方でやっているので、多少標準化というのを今後していくと。そしてそれの上にデータベースを作っていって。それは日本の中の色んな人がアクセスできるような。こういうのはもう公共として国のレベルでやらないと。とても個人のレベルではできないですね。だから生物資源を、と言った時に、それは考え方が同じで、一つのターゲット、その生物だけを見ていることはたぶん皆さん考えてらっしゃらないと思うのですけれども、色んな総合関係とか色んなことがあったときそういうのもやはり一つのデータベースの形の中に落としていくと。やはり上手く情報科学、あと日本はデータベースを管理運営できるくらいのコンピュータのキャパシティを競っているわけですから、十分それはできる能力も施設もあると思うのですね。ですので是非そういうところを考えながらやっていただければと。あと先程出たように、有効研究というのがどこの分野でも当然のことと言われておりますので、農学系だけでなく、化学系、工学系、すべてのところが一つのプロジェクトに入ると。で、逆に例えば、水産、今回魚となっていますけれども、そうすると皆さんやはり水産の方しかこういうものに対して興味を持ってこなかったりとかいうことになってしまいますので、もう少し多様なところから人が入ってこられるような研究環境を是非つくっていただきたいなというように思っております。あと、競争的資金の事業ということでは、皆さんおっしゃる通りで、その内容でどのくらい長さがかかるかというのが色々とあると思いますけれども、5年1スパン、でもう1スパンで10年。で、5年、もう3年くらいの時に評価を入れる、ということは徹底した方が良いので。どうしても内内になってしまいますとお互いに、まあまあこんなもんだよね、というようなことになりますので、そこは厳しくやらないと説明責任がいけないかな、というのはありますので。で、ちょっとやはり一番始めに話が出ましたけれども、この今回既に予算がついているプログラムというのは非常にフォーカスされた内容だと思いますので、少しそのようなものではなくもっと拡大するための生物多様性っていうことでの話をどういうようにしてマージしながらやっていくのかな、というのをもう少し勉強させていただきたいと思います。なので研究体制もあととにかく気になるのが、既に日本はサイエンスに相当お金を使っておりますので、日本でも何ができて何ができていないのかと。プロジェクトがたくさん上がっているのはなんとなく見ているのですけれども、また10年くらいすると浮上してくるようなプロジェクトいっぱいありますので、それを10年前に浮上したときに何が成果があったのかということを是非今回掘り下げて、見て、で何が今の新しい技術があるからこれができるようになったっていうのを、是非認識した上で中身を見るように、資料を是非用意していただきたいなと思いますので、よろしくお願いします。

 

【田中主査】

ありがとうございました。それでは瀧澤委員さん、あ、竹内さん。すみません失礼しました。

 

【竹内委員】

はい、では竹内です。海洋基本法ができたあとにどの程度研究教育が進んだかということを考えると、まだかなり高いと思うのですね。そういう意味で民主党が言っている縦と横串ですね、それを横を上手く機能させる。その中の海洋研究というのは、やはりこの場で進めていただきたいなというような思いがあります。まあ最近ちょっと中国に行っていたのですけれども、国家海洋局の方と話して、もう非常に海洋についてものすごい力を入れているのですね。日本がやはり一致団結しないと、とてもではないけれども追いつかれちゃうというか追い抜かれちゃうというか、非常にそういう面が強く感じました。そういうことから、まず第一に国際性も加味したものが必要ではないかと。特に韓国に昨年私も行ってきたのですけれども、やはり色んな問題点があると。で海はまあ黄海なり日本海なり、一つなもんですから、そこらへんを纏め上げた中での三大地域、海域をEEZが含んでいる中国、韓国、日本、の中での取り組み、いわゆる国際機構みたいな形での研究開発というのが、私は非常に重要ではないかなと思います。そういう視点を一つこの中に入れていただきたい。ちょっと具体的になりますけれども、例えば韓国で今赤潮が問題になっていて、日本でも赤潮が問題になっている訳ですが、そういうものを共通でやるとか、そういう研究などの進め方が一つあるのではないかというような感じがいたします。あとちょっと具体的になると、先程寺島委員のほうから有用生物は水産庁でという話がありました。確かにウナギにしろクロマグロにしろやってます。でもそれは技術開発で、実際の産業化に結びつけるようなところで、やはり基盤的な研究というのは無いのですね。しかも3年、5年で切られたら次は無いというような、非常に危なっかしいというか、途中で切れてしまうようなものがありますので、こういうところで本当の基盤を進めていただくというのが私は非常に重要ではないかと思います。そういう意味で、生産していく、食糧生産的な研究というのはやっぱり基盤的に重要ではないかなというように思っています。で、水産庁の方で昔やった研究で、健苗育成技術というのがありました。これは実は田中先生が主査で最後10年くらいやっていただいたのですけれども、あの研究はその健苗育成というタイトルの元に25年間続きました。これは水産庁ではすばらしい長い研究だと思うのですけれども、ただし同じ事をやったかというとそうではなくて、3年あるいは5年で切りながら、中身を変えていったということが既に行われて、非常に成果が上がっていたと私は思っています。その中に幾つか事例もございますけれども、そういうような形をここでやっていければ非常に良いかなと思っています。また、基盤研究というとすぐ科研費を思い出すわけですけれども、実は科研費の大型研究、特別研究とかですね、それは海洋水産ほとんど入らないですね。入ったのを見たことが無いです。それだけ私どもが弱いと言われればそれまでなのですけれども、やはりある程度の規模のものを纏めてグループ化してやっていくというのをここの中で行うというのも、私は非常に重要なことではないかと思います。そういう意味で、まあ今のところ金額がということですけれども、やはり5年10年の長期で、しかもグループ化してあるテーマについてやりながら評価してゆく、というような形での進め方というのは、やはり非常に重要で有効ではないかというように感じております。あと具体的には、先程、種苗生産と言いましたけれども、やはり日中韓も含めて、あるいはアメリカなどの環太平洋も含めて、やはり資源の維持、管理、増大というのも必要ですので、そういう中での基盤的な研究はやっていく必要があるということで。まあ魚介類の色んな細胞とか遺伝子の育成・保存技術というようなことがやはり重要ではなかろうかと思っています。で、やはり文科省なので、やはり教科書を書き換えるとか、新たなものを付け加えるとか、そういう研究に結びつくものをやはり視野に置いて、あるいは念頭に置いて研究すべきではないかなと思っています。それと、先程最初に申し上げましたように、日中韓を中心とした国際的な海洋研究ですね。あるいはネットワークと言うものを作りながら研究の方にシフトし、またその成果を各国も含めてお知らせしていくということをしていくことが今後の世界的な、特に近隣諸国との関係を強化していく上でも非常に重要な点ではないかと思います。そういう意味では、単に横串という話をしましたので、文科省が中心になって外務省までも含めてやれるような研究テーマというのも是非お願いしたいなと思っております。以上です。

 

【田中主査】

ありがとうございました。それでは次、瀧澤委員さんよろしくお願いいたします。

 

【瀧澤委員】

瀧澤でございます。並み居る先生方の中で、私は特に海洋に対して専門家ではございませんので、まあ国民目線と言うか、そういう言葉はどうかと思いますけれども、私、元々深海、JAMSTECさんがやられているような深い海に興味があったのですけれども、いざ自分の身の回りを見まわしてみますと、東京には東京湾がありまして、実際ああいう海はどうなっているのかなというように思います。ちょっと一昨年になるのですけど、汽水域、スコップ10というように研究者の方おっしゃっていましたけども、汽水域の生態系を調査する市民グループというか、大学の先生が指導して、指導しながらそこに住んでいる生物というものを、本当に皆さん腰まで泥につかりながらその生物というのをザルで掬い採って調査するイベントに参加したことがあるのですけれども、ああいったことをやってみますと、皆さん本当に熱心で、身近な海というのももっと見直そうという気運が少したってきているように感じるのですね。そうした中でその事業そのものは環境省さんのところでやられていたのですが、やはりそういった特に都会の海なんかですと、公安関係ですとか、あとまあ細々ではあるのですが漁業をされている方がいたり、この人々との関わり合いというのが非常に複雑で。その中でひとつの学術というのが皆さんの拠って立つところのひとつの基礎になるのではないかと思うのですけれども、またそういった関係者の方達をうまく巻き込みながら。で何が問題なのかというのをできるだけ色んな方々にわかるように、可視化しながら情報を集積して、それを発信していけるような機能というのが。まあ海と言うのが……水があればそこには必ず生物が沸いて出てくるわけですから、非常に難しい、広くてなかなかそれを把握すると言うのは難しいとは思うのですが、まずはそこが結構大事なのではないかなというのを実感しました。そうした中でもしかしたら一つの提案なのですけれども、いきなり日本全国の沿岸域をターゲットにして研究というのは難しいかもしれない。とすれば、例えばどこかの海域を一つ特区のような形にして、そこで横断的に、本当に汽水域から少し沿岸の離れたところまで、網羅的に調査し、何が重要なのかというのをピックアップして皆さんに見て色んなグループの方々を巻き込みながら研究をするというような、今までにあったことが……私が不勉強かもしれませんけれども、そういった方向性というのも面白いのではないかなというように思っております。以上です。

 

【田中主査】

ありがとうございました。それでは鈴木委員さん、よろしくお願いいたします。

 

【鈴木委員】

はい。もう色々皆さんお話があったのでだんだん新しいことが無くなってくるのだけども。生物多様性の問題と、海洋の生物資源の確保と言うのは、やはりこの場でやるという、なんだかすごく共通性があると思うのですね。ちょっと触れられていますけれども、海の酸性化の問題。これは当然プランクトンの生成にいろんな影響を及ぼしてくるわけですし、それから海水温の上昇というのも、種に大きな影響を与えてきているはずだと思うのですね。では多様性と言っているのは、どの時点のものをベースにして減ったか増えたかと考えるのか、これは大変難しい問題になってきているのではないかなと。で、日本にも結構南方系の魚がどんどん入ってきていると言われておりますし、よく話題になるタンカーのバラストスクリューの排出で今まで無かったものが入ってくる。で、これが日本が多様性を秘めていると言っているものについてどういう影響を与えているのか、どう評価したらいいのか、というようなことは、文部科学省が取り上げるテーマとしては良いのではないかなと。まあ海洋科学、海洋学全般の問題ということになっていくでしょうから。というようなことが一つあります。それからもう一つは、海洋の生物資源という中で、海洋の魚類の餌、たぶん養殖もそうなのですけれども、大体動物性のものをベースに、特に脂肪酸の系統はそういうものからできてきておると。これはプランクトンその他の生物由来のものなのかどうか。そう言われていますけれども私ははっきりわかりませんけれども。一方陸上の魚、魚類、これは植物性のたんぱくだけであれだけ巨大なものが出来上がっていく。そうすると、海産魚類のなかで、脂肪酸がそういうように蓄積してゆくための軌条といいますか、こういうものは一体どうなっているのだろうか。そういうものが解明されますと、日本の養殖業のこれからの問題としては、そういう餌として与える魚が減ってくるということだと思うのですね。今のたぶん漁業は大きいものは通常の市場に出すけれども小さいものはまあ餌にすればいいではないかというようなことで、たぶん非常に効率が悪い。10キロの魚で1キロの魚しかできないというような状態が続いている。すると養殖もできなくなっていく可能性があるのですね。だからそういう植物性の餌でもって魚肉たんぱく、あるいは特に脂肪酸の系統だと思うのですが、DHA(ドコサヘキサエン酸)であるとかEPA(エイコサペンタエン酸)であるとか、そういうようなものがちゃんと出来るようになれば、これはまさに先程話が出たような、出口を明示した研究になってくるのではないかなと思うのです。それから、同じくこれもその生物多様性と養殖技術と両方に関わる問題なのですけれども、魚類の卵の凍結保存。精子は保存できるけれども、卵は保存できない。そうすると、そういう原種を保存しておくということが今は出来ないのではないかなと思うのですね。だからこういう観点の研究も必要ではないかなというように思います。それから、もっと海洋科学技術という観点できますと、この委員会のテーマになるかどうかやや疑問ではありますけれども、現在の養殖技術、比較的近いところで、沿岸でやっておる訳で。赤潮の発生の元凶ではないかと言われたり、あるいは赤潮によって大きな影響を受けるというような産業でありますけれども、これが一部で行われている沖合の沈下式の生けすを用いた養殖技術、これもまだ完全にやっていく、大がかりにやるとすると非常にお金が掛かるわけで、たぶん水産庁の方と業界とでジョイントしてやっていることであるとか色々ありますけれども、これはJAMSTECなんかが蓄積している海中ロボットというようなものを使って、海中の、今のところたぶん水面下20メートルかそのぐらいしか実用的にはやってないと思うのですけれども、これをもっと深いところで大掛かりにやるというようなことになると、養殖による海洋汚染という問題もかなり緩和されるはずでありますし、沿岸の漁業との競合という問題もある程度解消されるのではないかと。まあこれはやや科学的というよりはやや行政的な観点の問題も含んでの話でありますが、まあこんなことを考えられるのではないかなと思います。それから競争的資金の問題についてはもう今皆さんおっしゃったように、産学が連携したような、色んなその分野の人が集まって研究をしていくと。そのためにやはりどこか拠点が無いといけませんから。まあ大学もそうでしょうし、水研センター、昔で言う地区の水産試験場、こういうような所の色んな設備をお持ちのはずですから、そういう所との連携をした研究拠点が必要なのではないかなと。すると新しい投資をしなくても少ないお金を有効に使えるというようなことができるのではないかなと思います。それと中間評価の問題は、もう皆さんおっしゃった通りで。たぶんむしろ研究者に何らかの飴という予算があって、ムチというと大変に表現が良くありませんけれども、やっぱりいついつまでにどれだけの目標を達成していくという意欲を強くしていくためにも、中間の評価は非常に重要だなと思っております。ちょっと長くなりましたが以上です。

 

【田中主査】

ありがとうございました。若干時間も押し迫ってきましたので4分厳守で。

 

【鈴木委員】

すみません。

 

【田中主査】

それでは和田委員さんの方から。

 

【和田委員】

はい。では私のほうは、今度新しく通りましたプロジェクトの話に関連してのコメントを中心とさせていただきます。まずどんな課題を取り組んだらということですけれども、最初に小池先生のお話もありましたけれども、たしかに私ども水産庁で有用生物中心に色んなことを取り組んでいまして。例えば今、海洋生物大発生という略称で、いわゆる日本周辺で起こっている小型魚類の魚種交代、これのメカニズムの解明のプロジェクトを進めております。かなり良い成果が出ていまして、あと来年度もう1年あるのですけれども。ただここの中で小池先生からご指摘があったような、例えば海洋との関係などはどうしてもいわゆるマージナルな問題になって、なかなかいい成果が出てここから先突っ込めばいいのだけれどもこのプロジェクトの中ではやっぱり限界があると、そういう問題がありますので、やはりこの文科省の新しいプロジェクトの中でその日本周辺のやはり海洋生態系の機能をより一層明らかにすると。で、これは後で出てきます生物多様性、日本周辺で生物多様性が高いのはなぜか。これはおそらく熱帯域の、いわゆる珊瑚礁なんかの生物多様性の高さとは全く意味が違っている。おそらく環境が安定しているというよりは、むしろ環境が大きく変化をするということによって多様性が維持されている、そういったような。そしてまた生物生産性の高さもあると。そういったところがありますので、是非そういったような研究展開をやったらどうかと。それからもうひとつは、これは竹山先生からもご指摘があったのですけれども、いわゆるゲノム研究の重要性。これについては簡単に二つだけ申しますと、ひとつはやはり個々の生物種のゲノムの研究を進展させなくちゃいけない。よく俗に言う寿司ネタ、これはこれから日本自身にとっても、輸出していくものにとっても非常に重要なネタになると思います、養殖という意味におきまして。だからそういったものについてはこれは日本だけではなくて、東アジア含めて各国が競って研究開発やっていますので、日本としても負けているわけにはいかない。で、いわゆる将来の育種と言って、水産生物の場合、ほとんど陸上の動植物と比べて育種という点では全く手がついておりませんので、そういう意味においては非常に将来のポテンシャルが。それからもう一つはやはりメタゲノムというか環境ゲノムと申しますか、これはやはり日本の環境という、日本の周辺の海の環境をやっぱりモニタリングしていくという上で非常に重要なツールになるだろうと。で、こういう点での基礎的な研究開発が必要だろうというように思っております。それから、競争的資金を行う際の注意事項という中で、私があえてちょっと話したいのは、ここの中で「実証フェーズ」という話がございます。で、この実証というもの、文科省さんの予算ではあるのですけれども、どのように考えるのか。従来のように、リサーチ&ディベロップメント、だけで良いのか。最近やっぱり、これは新しい言葉だと思うのですけれど、RDD&D。要するに、ディベロップメントの後にデモンストレーション、そして更にデプロイメント。要は、やって見せて、それを実際どこでどう使うのか、展開まで持っていかないとなかなか生きたものにはならない。せっかくやった研究開発の成果が実際に利用されるところには至らない、とあります。もちろんこれをこの文科省さんのプロジェクトだけでやるのではなくて、これなんかはむしろその他の農水省含めてそういったところと、いわゆる従来はどうしても仕分けをする、デマケーションするという議論が中心でしたけれども、むしろ連携をしてやる、あるいは繋いでやる、そういったような視点がこれから要るのではないかなというように思います。それからもうひとつ、研究体制の整備とかというような話ですけれども、これはこれまでの先生方がご指摘のように、やはり既存のインフラを上手く使っていくと。特に海洋の研究というのでは、大型の機械ですとか、あるいは調査船とか、そういったものが必要になりますのでやはりそういったものを省庁の枠組みを超えてうまく有効活用できるようなそういった仕組みを考えていくことが必要かと思います。それから同時に、他の研究分野ですね。いわゆる生物、あるいは水産だけでは当然具合が悪い。やはり海洋の色々なモニタリングとか観測手段というのは、むしろ他の工学的な分野での成果というのが大いに活用できる部分があるわけですから、やはりそういった分野との連携というものを考えていくべきではないかと、そういうように思っております。それからもう一つは、やはりこういったものを、海の研究というのは息が長いわけで、プロジェクトは5年なり10年の中でしっかり目的をもって完結させたらよろしいわけですけれども、やはりその後のフォローアップをどうするか。たとえばモニタリングみたいなものを、これは生物多様性の研究開発とも絡んできますけれども、データベースの構築も含めてどうするか、そういったようなところが非常に重要な課題になろうかと思います。それから最後に、これはむしろ生物多様性のところでまた議論させていただければと思うのですけれども、多様性というような話が入ってきますと、これはどうしてもいわゆる純粋に科学的な議論だけではなくて、やはりそこにいわゆる我々人間の価値観というものが入ってくると思います。従いまして、こういった研究をしていく、たとえば先程出ましたように日本型MPAの話なんかをしていくときに、これをやはり科学的な裏づけをすると同時にそれをやはり国際的な議論の中でこういった問題を国際的に相対化すると言いますか、特殊なものにしないでやはりまた外国での議論というのもまた色々在る議論の中の一つなのだという中で、やはりそういう考え方といいますか、理念の相対化というのを図っていくということが、これは日本自身の研究開発の戦略としても重要ではないかなと。それからこういった議論の時には、先程瀧澤先生の方からのお話もありましたようにやはり一般の市民の方とかそれから漁業者を含めて色んな関連産業の人も入ってくるので、やはり研究成果についての適切なアウトリーチというのがまた非常にこういうプロジェクトを進める上で大事になってくるのではないかなというように思っております。以上でございます。

 

【田中主査】

はい、ありがとうございました。引き続きまして、婁委員さんよろしくお願いします。

 

【婁委員】

はい。婁でございます。さっき生物資源とは何かというようなお話もありましたけれども、食い意地が張っていますので食料資源としてとりあえず考えてコメントをしたいと思います。食料資源として捉える場合、当然養殖ということがたぶん一番大きな一つのフィールドになるのだろうと思うのですけれども、この養殖について幾つか基本的な事実を申し上げますと、一つはこの数字、年間増え続けている世界の水産的需要に対して、実際に答えているのはほとんど養殖なのですね。ただ世界の養殖業の発展というのは非常にすさまじいものがあります。その中で、実は日本発の養殖技術というのはいっぱいあります。細かいチェックをすると、たくさんの技術というのが日本から出ているわけですけれども、実際日本でもその養殖技術に関しましてはたくさんの蓄積があるというようにきいております。ところが、そうした中で、日本の養殖業というものはこの数十年間非常に停滞していると。この30年間ぐらいですかね、生産量180万トン~200万トン程度でずっと横ばいというような状況が続いております。ではそれが一体なぜこういった状況、ギャップが生まれてきたのかというと、私はやはり日本というのは産業化技術というようなところに、あるいは養殖のシステムの研究開発が非常に立ち遅れているというように感じております。先程水産庁がこうした技術開発に非常に力を入れているというような話もありますけれども、意外とこういった産業化、あるいは経営システム確立、というものについての研究はあまり無いのではないかと思います。一つ例を申し上げますと、例えば養殖業を制約している要因の一つがコストが高いということなのですが、そのコストの大半が実は餌なのですね。では日本はその餌が無いのかというと、たくさんあります。一つ例を申し上げますと、例えばサンマという魚種があると思うのですけれども、サンマを生物学的には獲っていい量というのは一時期120万トンとかだったりするのですけれども、実際は何万トン撮っているのかというと、30万~35万トン。それを管理する制度があって、TAC(漁獲可能量)という設定があるのですけれども、TACも45万トンくらい設定されておりますが、利用上は実際35万トン、というようなことで、ある種過少利用なのですね。それをきちっと利用すれば、実は非常に餌が安くなって養殖業のコスト競争力も上がっていくと、もっと伸びてくるのではないだろうかと思いますが、残念ながらそういったような仕組みが出来ていないというようなことで、養殖の現状があるのだろうと思います。従いまして、こういった海洋生物使用の確保というような視点から考えると、もう少し技術的な開発も大事だろうと思いますけれども、産業化、あるいはその経営システムの確立も含めた包括的な研究という視点が必要かなというのが、私の思うところでございます。まあそうなれば、従来非常にたくさん蓄積してきた事実も技術も活用されるのかなというように思います。それでもう一つ、養殖ということについて、先の鈴木委員も少し触れましたけれども、沖合養殖というようなことがあります。実は日本は世界6番目の200海里を持っているわけですけれども、いざ養殖適地ということから考えると、意外と少ない。それは一つは、適地に既に先住民が沢山居るというようなことで入りきれない、という部分もあるでしょう。もう一つはやはり従来、いわゆる沿岸域に依存した養殖場というような形での養殖技術体系だと非常に少ないということで、漁場の沖出しとか沖合漁場とかというような開発がありますけれども、今年はそれだけではなくて、もっと例えば海底とか、もうちょっと深海の部分とか、あるいは今色々報道がされていますけれども山奥で養殖するとか。本木先生は宇宙で養殖技術を開発するとかですね。養殖に関しては色々、何々フリーというような技術があると思うのですけど、私はそれこそ沿岸域フリーの養殖技術みたいなものがひとつ重要ではないかなというように考えています。それから最後に、生物多様性ということについてですが、昔ある方が、海の問題というのは人間社会の問題なのだというようなことをおっしゃられた方がいます。私はこの海の生物多様性の保存・生成問題に関しましては、半分くらいは人間社会の問題ではないかなというように思っておりますので、そういった研究をするにあたっていかに人間社会を含めたガバナンスの仕組みを構築するか、といった視点も非常に重要かなというように思っております。

 

【田中主査】

はい、ありがとうございました。それでは西田委員さん、よろしくお願いします。

 

【西田委員】

はい。最後の方になると、重なりを避けて話さなければいけなくなって。できるだけ避けてお話をしたいと思います。大きく三点問われている訳ですが、一つは海洋生物資源について、国として取り組むべき課題ということですけれども、国としてと言った場合も、ここでの議論は文部科学省の枠組みの中で、というように。基礎はまあそうだと思いますね。それで、そのポイントはやはり文部科学省らしく、重要な研究基盤の構築というものが一つのキーコンセプトになるだろうなと思っています。それでその中身をどういうものにするかというのも色々あると思いますし、これはこれから議論を色々していけばいいのかなと思いますけれども、例えばという例で言えば、何度も出てきているように、海の生物多様性、あるいはそれが作り上げる生態系の構成をしっかり理解するというのは、後でちょっと申しますけどこれは非常に重要なことで、海ならではということがあると思います。それから、ゲノム研究なんかとも絡むのですけれども、これも重要性色々言われていますけれど、今までやられているのは主としてモデル生物なのですね。モデル生物の条件色々あると思いますけれど、ちゃんと飼育が出来て色んなストレインがあってそのゲノムの中身までしっかりと分析できるというような条件がある。魚類で言いますとメダカだとか、ゼブラフィッシュというこんな小さなインド産の淡水魚だとか、それからトゲウオだとか、こう小さな魚ですね、がメインで。あとフグがありますけれども、トラフグは中々実はモデル生物とは言い難くて、まだゲノム情報が役に立ちにくいという状況です。その中で、ゲノムデータを得る技術は飛躍的に進展しているので、おそらく海の生物はこれを睨んでセミモデル化していくような、そういうアプローチがどうしても必要になってくるというように思います。で、例えばそんなようなところに非常に重要な共通の研究基盤創出を狙っていくようなことが非常に大事なことではないかなというように思っております。

 それから二つ目の、この競争的資金事業を行う際の注意事項ということですけれども、ここもやはり文部科学省として、ということが一つ重要な軸で、その視点から幾つか申し上げます。一つは、先程から何度も出ているように、例えば科学研究費にしてもあるいは水産庁の研究にしても、どうしても時間、期間が短いですね。3年、4年くらいで大体終わってしまう。先生方もご承知のように海はやはりそういう短期では太刀打ちできない訳ですね。ですからやはりこれは既に事務局から出していただいた資料にもありますように、大体5年を2期程度想定すると。これは非常にリーズナブルで重要だというように思います。これをどう実現するかということは、色々努力が要るのでしょうけど、ここは非常に重要な点だと思います。当然何度も指摘されているように、惰性でやるのではなくて、しっかりと3年程度の中間評価、そして5年でのきちんとした見直しをやって厳しく経過をチェックしながら、一方この中期的な視野で取り組むことが出来るプロジェクトになればいいなというように思います。それから、これは金額で制約されているので難しいですけどやはりある程度の規模というのも大事だと思うのですね。科学研究費なんかは大型もあるのですけれども、例えば昔の総合研究のようなものがなくなっています。多くのいろんな機関の研究者が一緒にやるというのはなかなか難しい。幾つかあっても、海洋、あるいは海洋生物というのはなかなか難しいですね。私どもが少し前、もう10年くらい前にやったものが、おそらく大きなものはそれくらいが最後かなというように思います。是非そういうある程度の規模感を持って、オールジャパンとまではなかなか難しいでしょうけれども、やはり日本全体の力をできるだけ結集できるようなものになればいいなというように思います。それから後は、これは水産庁のプロジェクトも幅広くやっておられる面があると思いますけども、どうしても先程もお話あったように、出口を見せないといけない。で、文科省である場合、当然出口はしっかりあるだけれども、ここも例えば海洋における生産の場、場ということを意識するような形でしっかり特徴を持たせるというようなことが大事だと思うのですね。ここの支援、生物はもちろんターゲットにするのですけど、そこにだけ焦点が絞りきられてしまうのではなくて、海の生産というのは非常に複雑な生態系の中で行われますので、場というのを重視するような枠組み、これが大事かと思います。それからもう一つは、これは水産庁のプロジェクト、これは最近どうか分かりませんけれども、どうしても研究所は海区水産研究所、海区というようになっております。日本全体の海域を一気にやるというのは中々、必ずしも容易くない。だからそういう点でいうと文科省の方は、別に海区に縛られることはないので、例えば先程も先生方お話がありましたけれども、海域間の比較というようなことをしっかり想定した枠組みを最初から考えておく、というようなことも大事かなと。寺島先生が最初言われたように、日本周辺は、種の多様性の高い海域ですよね。ただそれでも北と南とでは随分特徴が違う。そこをしっかり視野に入れてやるようなことも大事かなというように思います。

 最後に研究体制の整備など、その他政府が取り組むべき事項ということなのですけれど。このプロジェクトというかこの委員会のターゲットそのものではないと思うのですけれども、一つ申し上げたいのが、今申し上げたような研究をやろうとした時に、どうしてもプラットフォームが必要になるということです。つまり海というのは我々の、人類の生息域ではないので、どうしても乗り出して行って色んな測器を使って観測をしないと、あるいは採集しないとどうにもならないということがあります。で、一番大事な海の研究のプラットフォームは、研究船です。基礎的な研究をする船として、ご承知のように、沿岸研究は淡青丸という船が、第二代の船がありまして、JAMSTECが運航をし、私どもの東京大学の大気海洋研究所が運営をしているということがあります。これが実は、大体25年でリニューアルということになっていたのですけどもう28年になっていて、非常に老朽化しているというようなことがあります。是非こういうものは、政府としてということで言えば、重視して考えていただくというようなことが必要です。また、こういう委員会でも研究を進める上でのプラットフォームの整備ということに関して、目配りをしていきたいと思います。以上です。

 

【田中主査】

ありがとうございました。それでは中田委員さんから。

 

【中田委員】

本当に最後でなかなか言うことが難しいなと思うのですけれども。私自身は水産の研究の現場で、しかも魚の現場における餌というさらにマージナルな場所でずっと研究をしてきました。そういったところから見えることから、こういう研究をしたらいいのではないかというところをちょっとお話させていただきます。マイワシにしろサバにしろ、多獲性の魚類というのは、全て東シナ海、あるいは黒潮域といった亜熱帯水域で産卵します。それからまたマグロ類カツオ類イカ類あるいはウナギ、イセエビなどの産卵場所も亜熱帯。ではどうしてこういった低い生産力で複雑な食物網があるような海域、生産効率から考えると非常に悪いという海域でそういったものが支えられているのか。実はわかっているようでわかっていないのではと思っています。これまでは例えば私達も、プランクトンの生産量を見積もったりする時にはざぼっと200mからネットを引いてそこに入ったもの全てで見積もる、そういうざっくりした見方をしていたのですね。そうすると非常に平均化されたものしか見えないので、そこから見えてくるものではそれが支えられているというようには中々繋がっていかないと。一方、最近ずっと、もう20年くらいになりますか、モックネスという多段的、環境と共に各層で開閉できるようなネットっていうのが、海洋現場では盛んに使われるようになってきましたけれども、そうしたものでプランクトンを採っていくと、たとえば同じグループにあるプランクトンが30種以上、その200mの中にいるのですね。200mにぼんと居ると、それは非常に多様性が高いと言われるのだけれども、しかもそれらが平均の分布深度というのを微妙にずらしながら生きているという現状です。しかもそれは、夏、精巣が発達している時にそういうことが起こっているということだけなら理解しやすいのですけれども、冬、鉛直混合が盛んなときにもある程度保たれている。これは環境とたぶん生物同士が何か感知しながら上手く住み分けている、みたいなことがないとたぶんできないようなことなのではないかと思っています。そういうようにどう切り取ってどう見ていくかというのは、これから海の中を理解していくうえで非常に重要なので、是非そういうことに繋がる技術開発というのも同時に進めていただきたいなと思います。それからもう一つ、特定の生物同士の繋がりということで言いますと、イセエビに近縁な種類で、フィロゾーマみたいな、幼生を作るエビなのですけれども、海洋大さんの方で最近研究されているやつですけれども、クラゲに乗っかるという生態がわかっていたので、そういう特徴を利用して大量生産すると。その大量生産するクラゲというのは、ミズクラゲでいいのではないかということでやられている。それは水研の方でミズクラゲの大量培養技術を伝授したみたいな経緯がありますけれども、それはちゃんと生物同士がどう繋がっているかということが見えて初めてできてくるような技術開発だと思います。そういうことをやっぱりきっちりやる、海の中をきっちりあるがままに見ていくというような研究を、始め小池先生の方でもおっしゃっていましたけれども、そういうことが非常に重要かなと思っております。そうですね、もういっぱい皆さん言っておられるのであんまり言ってもしょうがないですけれども、あと私どもの研究上だんだん高齢化して中々若い人が入ってこないですね。で、この研究課題の中では、若い人をどう位置づけていくかということが非常に大きなキーになっているのだと思います。そういうことがやはり新しいことを取り入れていく非常に大きな力になるので、是非そこは力を入れてやっていただきたいと思いました。以上でございます。

 

【田中主査】

はい、ありがとうございました。ちょっと司会がまずくてですね、実は議事進行のメモでいきますとこの11時25分の時点で既に15分の討論の時間も含めてそこまでが、それもはるかにオーバーしております。私は意見を述べる必要が無いと思っていたのですが、事前に先生はやっぱり意見を述べてくださいということだったのですが、もう時間をオーバーしておりますので、お手元に、綴じた方は昨日お送りしたやつで、それはちょっと不完全ですけれども、今日は新幹線の中で少し追加したやつを5,6枚にまとめさせていただきます。これはもう皆さんが読んでください。皆さんが今おっしゃられたこととまあかなりオーバーラップするところがあります。で、私はちょっと我田引水的ですが、これからの海の資源生物の研究にとっても、これはおそらく日本から発信できるメッセージであり、将来展望であると。陸域と海域というのは密接に繋がっていると。これまでの生物多様性、地球温暖化も、陸域を基本にして色んなことを考えてきました。でこれからは海洋が大事であるということで生物多様性も目が向いてきたのですが、さらにもう一歩先を進んで、その海の生物多様性は陸域の生物多様性と密接に関連していると。ですから資源生物の動態も、そういうことも含めて、沿岸だけではなくて最近の研究ではかなり外洋まで陸域原物質が影響して生産をエンハンスするとか、そういった知見もありますので。これはおそらく世界はまだそんなに注目していない。日本が国際的に先見的なリーダーになりうる、そういう将来の研究展開の一側面だと思いますので、そのことだけを申し上げたいというように思います。で、どうしても皆さん、少し時間が迫っているのですが、それぞれのご経験と将来展望も含めて委員の先生方に貴重なコメントを頂いたのですが、そのことを勘案して、こういうことが大事ではないかということを先生方の方でもしコメントがあればお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。

 

【竹内委員】

はい、ちょっと。竹内ですけれども、ちょっと補足も含めて一つだけ言いたいのですけれども、先程瀧澤委員の方から浅海域、あるいはその中での色々な情報を含めて出していくということが大事だ、というような話の中で、私一つ忘れたのが、やはり海洋教育に役立つための研究、そういうものもやはり必要ではないかと思うのですね。その中に今のようなプラットフォームをつくって、陸域あるいは漁村も含めてですけれども、そういった中で研究していきながら、それを海洋教育に活かしていくというような枠組みもあろうかと思いますので、その辺も一つ、あまりこちらはお金は掛からないと思うのですが、そういうことも必要ではないかなと思います。ちょっと忘れていました。

 

【田中主査】

国の研究の波及効果とか、次世代へ我々がどういうメッセージを繋いでいくか。海の生き物から学びなおして、そういうことが重要だということですね。ありがとうございました。それで少し、若干私なりの、これはとてももう少し皆さんの意見を整理してからまとめをしたいと思いますが、色んなご意見の中で、現状がどうであるかということから将来展望するためには過去のことを十分に勘案したそれで現状を捉えなおして、そして将来展望を見せると、そういうご指摘がいくつかあったように思います。そして全体的には、おそらくは3つくらいの視点があるのではないかと。これからの海洋資源生物研究だけではおそらくないと思いますが、それは一つはもう既に繰り返し言っておられるように長期的視点ですね。これは人の育成も含めて非常に大事な側面で、基盤になると思います。それから日本は極めて亜寒帯から亜熱帯まで多様であり、海岸線も実は世界で第5番目くらいですか、地球をほとんど一周するぐらいの海岸線長がある、それは極めて多様な構造を持っているからということですので。そして先進国では稀な森林大国ですから、森林と海との関係も非常に多様性を促進していることになります。ですから、そういう広域的な視点ですね、これはもう生物多様性を考える場合、それからこういう生物資源の研究を考える場合の重要な視点だということになります。そしてもう一つは、色んなことをうまく連携しながら、統合しながら、融合させながら、というそういう面は総合的な視点という。ですから、長期的広域的総合的な視点をうまく考えながらこれからやるべきことを、それから少し先に展開させる、そういうことを整理して考えていく必要があるのではないかと思います。で、繰り返し言われていますが、これはまあでも文科省としての研究ということになりますので、省庁との連携を上手く図りながら、文科省としての特色を出していくと。それは最後に竹内先生の方からご指摘していただいているような、人づくりも含めて、これは次世代の人づくりということではなくて、次のこういう分野を担う意欲的な人材をこういったプロジェクトの中でアウトプットとしてどれだけそれが進むかというのが非常に大事な側面だというような気がしますので。そんなことを少し今日皆さんから出していただいた意見を、事務局の方と協議しながらまとめさせていただいて、そしてもう一度先生方にフィードバックして、ご意見いただくというようなプロセスで深めていきたいというように思います。

 

(1)海洋生物多様性研究の必要性について

【田中主査】

それでは、10分程スケジュール遅れておりますが、議題1の方に戻りたいと思います。既に生物多様性の色んな側面をその重要性も含めて今委員の先生方からご指摘をいただいているのですが、少しここの部分に集中して若干の意見交換、議論を深めることをしたいとおもいますので、事務局より最初に説明を岩村係長さんの方からお願いしたいと思います。

 

【岩村係長】

事務局の岩村です、よろしくお願いします。使う資料が資料1と、参考資料4という今日まだ使っていないカラーの資料1枚と、机上配布資料というのが封筒の真上にあると思いますが、この3つを使って説明をさせていただきます。事前にメールにてこちらの趣旨は、お知らせさせていただいたところですが、もう一度簡単に説明をさせていただきたいと思います。先程事務局の鈴木の方から説明ありましたように、当課では食に繋がるような観点から新しい政策を23年度始めようとしているところですが、これとは別の観点から、海洋生物についての研究でやることがあるのではないか、生物多様性についての研究というのも大事ではないかというように考えているところです。そこで今、当課から提案をしようと思っている事業がありますので、まずそれを簡単に説明させていただきます。参考資料4「戦略的創造研究推進事業について」です。これはJSTの事業になっておりまして、その下に本旨が書かれていますが、文部科学省で戦略目標という、こういう研究をすべしという目標を立てることによって、それを受けてJSTの方で実際に事業を行っていくという事業です。具体的にはそのJSTの中で、JSTが研究総括という、代表となる研究者を選びまして、その人をヘッドにしてCREST、さきがけというような各種の手法での研究を推進していくというものになります。例えば真ん中にあるCRESTというものですと、研究チームというのが大体10~15くらい立ち上がりまして、その中に更に研究グループがいくつもある、というようなものであり、こういった体制で研究を推進することになります。さきがけに関しては、左側にありますが、これは若い人を中心に個人の研究者に研究を色々やってもらうというような形になっていまして、各種の研究全部を合わせて、一個の戦略目標というものに向かっていくと、そういう事業になっております。この戦略目標で海洋生物多様性についての研究をするべきではないかと当課では検討をしているということになります。確かにこの研究は大事だというようなことが認められましたら、今申し上げたようなプロセスで、JSTの方でこの研究を推進してもらえることになります。具体的にどういった提案をしているかというのがその机上配布資料になります。この委員会において生物多様性研究についてどういうことが重要かという点と、実際にどういったような課題というのが想定しうるか、ということについてご意見いただきたい次第でございます。既にご意見いただいた先生が西田先生と北里先生、小池先生です。資料1に入らせていただきますが、ここに書きましたように、まず最近COP10というような会合が開かれて、生物多様性について国際的にも重要だということが議論されている。その他にも、日本国内で新成長戦略や、第四期科学技術基本計画の中にも、生物多様性の重要性というものが書かれているという状況にあります。さらに日本においてこの多様性の研究をしなければいけないということについては、先程委員の皆様からもご意見いただきましたが、日本の周辺というのは非常に多様性が高いということで、そういった国である日本が率先してこういった研究を推進していくべきであろうということで、当課としてはその重要性をまとめさせていただいた次第です。その他に、ここの資料1には書いておりませんが、例えばUNEPの報告書で、生物多様性の経済的な価値というのが何兆ドルもあるというようなことも指摘されていまして、今すぐにでもそういう多様性の研究をしないといけないのだろう、ということで提案をしているところです。取り組むべき課題として、資料1の2ページ目の方に書かせていただきましたが、実際に生物多様性がどういうメカニズムで形成されているかというような、多様性に関するベーシックな部分の研究というのをすべきだろう、というのが1番になります。そういったものを踏まえながら、人間とか、温暖化の影響によって生物多様性というのがどのような影響を受けるのかというような研究が必要だろう、というのが2番になります。その1や2を踏まえて、生物多様性を保全、できれば更に再生というようなことをするための基盤的技術の開発が必要だ、というのが3番になります。それで実際にどういう研究をしたらいいのかというのがちょっと我々では考えきれなかったので、どういったことをやればいいのかという具体的な研究課題例を是非教えていただければなと思っていた次第です。なので、今日はこの委員会でこの紙についてここに書いてあるのはちょっとおかしいとか、こういったことも書いたほうがいいといった点と、別紙、2ページ目にある課題例としてどんなものを挙げたらいいかというご意見をいただければと思っております。申し訳ありませんが、この資料1については、できれば今日の委員会においてなんらかの形を決定いただければと思っております。その後多様性についてもっと議論が必要ということになりましたら、先程主査のほうから広域というような話が出ておりましたが、今後この委員会で改めて議論を続けるということもできると思います。以上です、よろしくお願いします。

 

【田中主査】

はい。それではかなり、特に資料1については緊急性を要するということで、今日皆さん方からご意見をいただいて、この提案書の中身を強化してできるだけ採択に向かうようにということがこの委員会の役割だと思いますが、この点について今日の机上配布資料1というのは、これは初めてですかね。委員の先生方には事前にお配りして

 

【岩村係長】

はい。委員会でお配りしたのは今日が初めてになります。

 

【田中主査】

そうですね、はい。そういうことで、どこからでも結構ですので、2番目の、まあ戦略目標はあれですが、将来に実現しうる重要課題の達成、ビジョンですね、その具体的な研究開発課題例等、提示しながらコメントいただいても結構ですし、総合的にご意見いただいても結構だと思いますが。委員の先生方の方で

 

【小池委員】

はい。

 

【田中主査】

小池先生よろしくお願いします。

 

【小池委員】

この資料1とそれから配布資料2で多少表題のニュアンスが違っていて、資料1の方は生物多様性研究の重要性で、非常に多様性というのが何で大事かということ、多様性がどういう機構でできているのか、そういう議論になって、その二つ目の戦略目標に「持続的な海洋利用に向けた」というのが頭についていて、それで多様性の維持に必要な基盤、技術の創出、となっていますけれども達成目標の方を見ますと資料1に書かれている達成目標に近い内容になっていて、ちょっとちぐはぐな印象を受けるのですけれども。これは持続的な海洋利用に向けた、という目標と、達成目標のところとの関係ですね、というのは少しずれているような気もしないでも……

 

【岩村係長】

よろしいですか。最終的に海をどのように持続的に利用する、というのが大事だというのがまずベースにはありますが、そのためにまず何から文科省として手をつけられるかというように考えた場合に、具体的にやるべきものとして記載しました達成目標3つを考えているということです。こういった成果を活かして、最終的には例えば国交省さんが船舶のバラスト水の問題に取り組んだり、水産庁さんが何か養殖の話や漁業の話に繋げていくというようなことを考えておりまして、文科省ではそういったものに繋がっていくようなベースとなる研究をここに書いてあるような達成目標で実現したいと考えております。

 

【堀内海洋地球課長】

こちらの重要性というように書いている紙は専門家の意見も聞いた上で皆さん重要だと思っていることを、この戦略目標を決める人たちにアピールするための紙なので、単語が簡単になって、海洋生物、多様性、研究、有用、こういうことを出さなきゃいけないということでありまして。戦略目標の方はもうちょっとちゃんと書かなきゃいけないということなので、こういったことになっていることと思います。そういう意味でこの紙のほうの位置づけというのは明確になっているなというように思います。

 

【田中主査】

先程も既に若干コメントいただいているのですが、資料としても準備いただいた西田先生、少しコメントございましたら。

 

【西田委員】

はい。是非これは幾つかの関門を突破していただければありがたいなと思います。それで、どういうように議論を進めるかということ、これは皆さんの知恵をどう導き出すかという工夫が要りそうな気がするのですが、おそらく先生方色んなアイディアが頭の中にはおありなのでしょうが、どう出していただくかという。これは限られた時間で可能かどうかよくわからないので、最後に、時間限られているようですけれどもどう集約するかということもお考えいただければいいかなと思います。背景のところ、些細なのですけれども、順番を変えたらどうかと思いました。海洋にはどのような生物種がどこにどれだけ存在しているのか、ということからまだよくわかっていないということなのですけれど、それが2番目にあったのですけれども、まずはそういう基本的なことを知るということが最初にあり、そして何故、どのようにして多様性が維持されているのかという、そういうメカニズムの理解に深めていくというようになっていた方がわかりやすいのかなと思って、その背景のところ、どうかというコメントをしました。

 2枚目には課題例、皆さんお出しになるので遠慮して一つずつ書いてみました。まあ私自身これは自分の専門に近いところでこんなものがあるのかなというように書きました。一つ目。多様性を、形成メカニズムの解明ということで、非常に良いと思うのですけれども、多様性を形成する一番の根っこのプロセスというのは種形成、ですね。これはかなり長い進化的な時間の中での話ですけれども、しかし今も刻々と何か新しい種が形成されている可能性もあるし、こういうしっかりベースになる視点を持っておく必要があるという意味で種形成というように言いました。それからもう一つは、また刻々絶滅も進んでいます。これも進化的な話なのですけれども、今絶滅の時代と言われているように、かなり加速されていてですね、我々気が付いてないけれども、色んな絶滅に至るプロセスを見ているかもしれないですね。そういう種形成とか絶滅のメカニズムの解明に向けた遺伝子解析技術の開発というようなことを考えたらどうかというように思いました。種形成や絶滅メカニズムそのものは生物学の非常に重要な課題で、5年や10年ですぐに結論をということにはならないのですが、この理解を深めるための遺伝子、あるいはゲノムの解析というのは今急速に可能性が非常に拓けているので、これを海のそういうメカニズム理解に向けての技術開発につなげていくといようなことは非常に重要だと思います。これは小さなボトムアップの課題ではなかなか取り組めないというような研究でしょう。

 それから二つ目は、これは先程ちょっと申したのですけれども、これもやはりゲノム解析技術が非常に進展しているのですが、遺伝子多様性に対して外的要因、環境変動、あるいは漁獲なんていうのも、大きな生物に対するプレッシャーなのですけれども、これが生物の遺伝子にどういう影響を与えているのかというようなことは、まだ全く取り組まれていない。だからこういう新しい視点を持ち込めれば非常に良いのではないかというのが二つ目に書いたことです。

 三つ目のものは、これは寺島先生が言われたこととも関連すると思いますが、生物多様性の保全再生をするための基盤的技術の開発の中に、海洋保護区設計のための基盤技術の開発のようなことも非常に重要であろうと。今申し上げたように、遺伝子の多様性はある程度の個体数が維持されることによって維持されるので、それはどのくらいの数をキープすればいいのか。たくさんの小さな保護区をあちこちに設けるのが良いのか、少数の大きなものを設けるのがいいのか、これは理論的にも重要な課題なのですね。特に海の生き物は小さなプランクトン幼生を出しますので、これがどのようなネットワークで繋がっているのか繋がっていないのかというような情報も含めて、理論と観察から議論するというようなことも大事になってくるのではないかと思います。思いつくものを言いました。皆さんのアイディアが触発されて色々出てくれば幸いに思います。

 

【田中主査】

他にご意見ございますか。和田先生。

 

【和田委員】

まず全体的なところで。これ最近のCOP10の話とか色々と、それからセンサス・オブ・マリンライフとか引用されているのですけれども、一方で日本の海洋基本計画その中でもやはりこういう生物多様性の問題、それから海洋保護区の問題、基本的な課題として取り上げられているので、このビジョンのところといいますか、その辺で少し日本の海洋基本法なんかも引用されておくのがいいのではないかというのが一点。それからもう一つ、これは先程竹山先生のほうからもご指摘があったように、このゲノムの話をするときに、やはりこれは生物屋だけでは駄目で、それはもう統計学と言っているような甘い話ではなくて、相当強力なデータ解析のツールとそれから人間がいないと、次世代型高速シーケンサでとんでもない量のデータがぼんぼん出てきちゃいますから。だから研究事業のその分野の中にやはりちょっと統計学というよりはもっとそういう情報工学というか、何かそういうところを入れておかれたらいいのではないかと。それからもう一つ、やはり多様性を実際調べていくうえで、モニタリングをしたりそれから生物種をサンプリングしたりということで、そちらのテクニックといいますか、例えばAUV(自律型無人探査機)なんかが発達したことによって随分深海とか色んなところでの生物の分布についてわかったし、またサンプリングができるので、そういった部分についても意識をしておく必要があるのではないかと。それから具体的な研究開発課題例の中で、やっぱり今我々も色んな仕事をしていて、最近ちょっと温暖化の影響かどうかよくわかりませんけれども、結構新しい外来の生物が入ってきて、種の同定というので非常に苦労するのですね。そういう意味ではここにも今日お配りいただいたやつの中に書いていますけど、生物種データベースを作成するためのDNAバーコーディング技術の開発。これは技術の開発はもちろんなのですけれども、やはり使えるデータベースを作っていく、そのためにはやっぱり日本の国内の色んな関係の研究者がやはりしっかり協力してというか、ひとつのネットワークの中で参加をしていくということが必要になると思いますので、何かそういったものに繋がるような視点が入らないかどうかと。それから細かい話で恐縮なのですけど、その遺伝的な多様性を維持するといったときに、よくなんでかといった時にいわゆるその均衡時悪性の話があるのですが、では均衡時悪性ということが本当に一体ではどのくらいの多様性が本当にあれば問題無いのかどうかですね。あるいは個体数があれば問題無いのか。これは先程の西田先生からのいわゆるMPAをどんな考え方で設定するかということにも繋がってくるのだと思うのですが、この辺も意外にちょっと理論的にもあるいは実際的にもわかってないのではないかと。具体例を申しますと、例えば日本で今蔓延っているブラックバスとか。あれは入ってきたときの個体数はそんなに多くないはずなのですよね。ところがむしろ問題なくというか、非常に反映していると。それからまあこれは極端な例ですけれども、フナなんかのように、いわゆるクローンでもって繁栄している個体もあるわけで。ちょっとこの多様性の問題を考えるときに、このでは遺伝で、多様性というのはどういうものなのだというのをこの均衡時悪性の問題を含めてちょっとしっかり検討していく必要があるのではないかなと思いました。それから他のところでも書いてあるのですけれども、やっぱりこの多様性と、いわゆる日本の場合ですとやはりこの生産性の関係ですね。私は特に日本の周辺の場合は生物学的な多様性というものと、それから生産性の高さ、もちろんその裏には変動というものがあって、これは利用する側からすればやっかいなのですけれども、ここに日本周辺ならではのひとつの面白いテーマがあるのではないかと。そのへんのところも視点に入れていただければありがたいなというように思っております。

 

【田中主査】

はい、ありがとうございました。だいぶ時間が迫ってまいりましたが、いかがでしょうか。

 

【竹山委員】

一点だけ。先程のコメントともちょっと似ているのですけれども、生物多様性の対象は一体何かということが人によって全然違うのですね。対象が魚の場合もあるし、もうちょっとそのプランクトンレベルもあるし、もっといけば微生物もあるということがあって、これはまあ良く言えばどれにも当てはまるとは思うのですけれども、場合によって種の同定の仕方とか、特にその遺伝子資源となった時ですね。何をマーカーにした考え方か。あと、大量に遺伝子を取るという、微生物だったら逆にできてしまうけれどももっと大型になったらそれはもう個のゲノム情報になってしまうので、そういうわけにはいかないし。そこらへんがあるので、今本当にこのレベルでは良いのですけれども、次のステップに行った時に少しそこらへんを、いわゆる生物種の階層ということを考えたうえでの、技術もやっぱり変わってしまうのですね、当然。出てきたデータを情報科学でやるっていうのは良いのですけど、その前にどういうデータを取るかっていうのは、その対象の生物種によってすごく変わってきてしまうということで、サイエンスのやり方も技術も違ってしまうので、私はそこらへんはちょっと意識していただきたいなということを思います。生物多様性の、遺伝子多様性って、簡単に言うのですけど、それぞれによって皆さん考え方が違うだろうと思うので、そこだけはちょっとお願いしたいと思います。

 

【田中主査】

はい、ありがとうございます。先程最初に西田委員の方からご指摘いただいたのですが、一つはこれ次のここの2の議題のプロジェクトとも関わってきて生物多様性というのは非常に関わりの深い側面なので、それに向かってどのようにこの生物多様性を捉えるかというような議論を進めながら、これ当面、今月末というタイムリミットがありますので、この資料1をできるだけ強化する、まあ色んなご意見あろうかと思うのですが、これはあくまでも予算を獲得しなければ話が進まないということですので、そのためにこういう側面、こういう視点が必要だ、ということから委員の先生方に是非ご意見を賜りたいと。もうこれはこの場では無理ですので、色々先生方から数日ぐらいに、一両日中に

 

【鈴木課長補佐】

委員の先生方にメール等で締め切りを含め送らせていただきますので、ご意見あれば是非いただければと思います。

 

【田中主査】

はい、是非積極的にいただいて、それを事務局とまあ私も少し関わりながら整理をして、この提案書ができるだけ採択になる方向に努力をしたいというように思っております。

 

【寺島委員】

一言よろしいですか、その辺。そういう意味で先程和田委員の方から出ましたけれども、予算獲得ということであれば、是非海洋基本法とか基本計画を匂わせていただきたいと思います。

 

【田中主査】

ありがとうございます。

 

(3)その他

【田中主査】

それでは最後になりますが、議題3の、今後の予定などについて事務局より説明をお願いしたいと思います。

 

【鈴木課長補佐】

当面の予定について簡単に説明させていただきます。1月31日で第5期の科学技術・学術審議会の全委員の任期が満了いたしまして、2月1日から新たな第6期が始まります。先生方には再度さまざまな書類への記入等の手続きをお願いするかと思いますけれども、よろしくお願いします。第2回につきましては、2月下旬を予定しておりまして、その際に今回いただきましたご意見を踏まえまして、関係省庁の担当者からのヒアリングなどを予定してございます。先程も説明しましたように、外部評価委員会につきましても第2回の海洋生物委員会が終わった後くらいに設置することを考えております。生物多様性に関してはメール等で、事務局までご意見を早めにいただければと思います。

 

【田中主査】

それでは一応予定の議事はこれで終了いたしましたが、今日全体を通して委員の先生方のご意見、ご質問等がまだおありでしたらお願いしたいと思いますが。いかがでしょうか。それでは無いようでしたら最後に堀内課長の方から締めのご挨拶をお願いしたいと思います。

 

【堀内海洋地球課長】

本日はたくさんの有用な意見を賜りどうもありがとうございました。いくつかその、例えばいろいろな分野でデータベースを沢山作っておるのですけれども、なかなかそれぞれの機関の連携とか標準化が進むなんていうのは難しいという問題があり、分野融合や機関の連携も上手くいっている例もあれば、なかなか難しいところもあります。人材問題であればどうやってその若手にこの分野が魅力的だということを伝えていくのかとか、研究機関の問題であれば、人を雇用する場合にどこまでの契約をしていいのか。要するに評価というのは良いのですけど解雇することを前提にするのか、継続を前提にするのか、という契約の問題に関わってくるのですね。この分野以外のところで色々出ている基本計画に、この分野も関連するものがあるようなので、考えていかなきゃいけないことが沢山あるという印象でございました。こういった課題も解決して、ちょっとでも前に進んでいきたいと思いますので、是非今後ともよろしくお願いしたいと思います。本当に今日はどうもありがとうございました。

 

【田中主査】

これ非常に海のことを国民も含めて理解を進めていくうえで非常に大事な集まりだと思いますので、この委員会がうまく機能して、願わくは、命の源は海なのですから、そういうことを私達はほとんど忘れかけてどんどんどんどんそういうとこから離れていっていると。海に対して、もう一度畏敬の念を国民が取り戻せるような、そういうメッセージも含めてこのプロジェクトがうまく機能していけばいいかなと。それからちょっと堀内課長からのご挨拶の中で、鈴木委員をちょっとご紹介をいただければと思いますが。

 

【堀内海洋地球課長】

そうですね。海洋開発分科会分科会長代理をお勤めいただきまして、丁度任期になりまして、おそらく今日が最後の委員としてのご参加かなと思いましてですね、この場でちょっと皆さんの前でお礼を申し上げたいと。どうもありがとうございました。

 

【田中主査】

それでは以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。宿題がすぐに届きますので、どうぞよろしくお願いいたします。

―― 了 ――

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-- 登録:平成23年04月 --