海洋資源の有効活用に向けた検討委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成21年1月8日(木曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省16階 16F1会議室

3.議題

  1. 海底鉱物資源開発に資する技術開発の検討について
  2. その他

4.出席者

委員

(分科会)
今脇、阿部、浦、浦辺、沖野、鈴木、平、瀧澤、寺島、増田、宮崎 各委員
(発表者)
浅田 昭  東京大学生産研究所海中工学研究センター教授
岡村 慶  高知大学海洋コア総合研究センター准教授
佐柳 敬造 東海大学海洋研究所准教授
浦 環   委員

文部科学省

生川海洋地球課長、嶋崎海洋地球課長補佐

5.議事録

【今脇主査】  それでは皆さん、あけましておめでとうございます。ことしもよろしくお願いします。

 ただいまより、第3回の科学技術・学術審議会 海洋開発分科会の海洋資源の有効活用に向けた検討委員会を開催いたします。本日は正月早々、ご多忙にもかかわらず、皆さん、ご出席いただきまして、ありがとうございました。

 前回、去年の1219日の委員会から、専門家の方々からのヒアリングを実施しております。きょうは文部科学省において平成20年度ですけれども、今年度から実施しております競争的研究資金海洋資源の利用促進に向けた基盤ツール開発プログラム、これの4つの研究課題の研究代表者の方にお越しいただきましたので、このプログラムで実施しています研究の概要や現在の進捗などについて発表していただきたいと考えています。

 前回議論があったようですけれども、本来ならば、この海底熱水鉱床の探査、それと、それにかかわる技術開発動向の全体像について、もう少し具体的なヒアリングをする前に、全体的なことを議論してはということがあったんですけれども、ヒアリング対象者の方のご都合なんかもありまして、今回はとりあえず、予定どおり基盤ツールの研究代表者からヒアリングをすることとなりました。

 次回以降の委員会において、引き続き民間での海底熱水鉱床の開発に関する取り組みや、国内外の技術開発の動向などについてヒアリングを実施していく予定ですので、そのことを踏まえて、きょうはご議論いただければと思っております。

 それでは、まず事務局から資料の確認をお願いいたします。

【嶋崎海洋地球課長補佐】  お手元の資料をごらんください。議事次第とありまして、その中に資料11から資料15、あと参考資料として委員名簿というリストがございます。資料11から14までが今回発表をいただく関連の資料ということになってございます。資料15が、後ほどまたご説明させていただきますけれども、本検討委員会で取りまとめいただく中間取りまとめの項目立てイメージ素案というものをつけさせていただいております。

 このほか、浦辺教授のほうから提供がありまして、お手元にこういう青い冊子がございますけれども、東京大学海洋アライアンスのほうで中間報告として取りまとめていただいた勉強会の中間報告書を参考資料として机上配付させていただいておりますので、資料の欠落等ありましたら、お申しつけいただければと思います。以上でございます。

【今脇主査】  ありがとうございました。

 浦辺委員は今、まだいらっしゃいませんけれども、浦先生、何かこのアライアンスの報告についてご意見、コメントはありますか。

【浦委員】  東京大学には230名ぐらい、海に関する研究者、文化も理科も含めて、教授、准教授がいるわけですけれども、そこが2年前から正式に東京大学の機構、横型のシステムとして海洋アライアンスをつくって、そこはお金も人も実はプロパーがいないんですが、日本財団から助成をいただいて、特認教授、特認准教授などを雇用いたしまして、いろいろな横断的なプログラムを進めている。その1つとして、海洋に関するイニシアティブということを企画しておりまして、その1つで浦辺先生、玉木先生が中心になって、要するに熱水の幅広い人たち、法律家も含めて、法律をやっている方々も含めて、そういう人たちからいろいろご意見を聞いて、勉強するというようなことをことし始めております。それの成果として取りまとめたもので、ぜひご参考にしていただきたいと思います。

【今脇主査】  どうもありがとうございました。今後の議論の参考にしていただければと思います。

 

(1)海底鉱物資源開発に資する技術開発の検討について

【今脇主査】  それでは、最初に東京大学生産技術研究所海中工学研究センターの浅田教授から、先ほど言いました今年度から実施しています基盤ツールに関連した研究課題、進捗状況などを紹介していただきたいと思います。資料は先ほど紹介があった11です。

【浅田教授】  今ご紹介にあずかりました東大生産技術研究所の浅田です。10分間で私の研究課題、「海底の位置・地形の高精度計測技術の開発」の研究の状況についてお話させていただきたいと思います。資料としてはこの研究運営委員会と言いましたけれども、実施体制の構成、それと全体計画、今年度の計画、それと研究の進捗状況について資料が入っております。

 研究参加者はこのようで、私、浦先生、望月、吉田、山中、トーマス、河邉、それからフランスの以前のフィリップさんにも時々お越しいただいて協力しています。下に6名が研究の運営委員会で、海上保安庁、同志社大学の音響の専門家、それから産総研、それから深海資源開発株式会社、それから天然ガス、JOGMECですね。それとJAMSTEC、こういったところと連携しながら、お知恵を拝借しながら業務を進めております。それから事務担当です。

 この研究なんですが、業務の全体計画ですけれども、今までですと1,000m2,000m3,000m、そこら辺に海底の熱水鉱床とかがあるんですけれども、海面からの音響のリモートセンシングですと、せいぜい30mから100mぐらいの分解能でないと、海底の地形がわかりませんということで、実際に海底近くまで潜っていって、精度よくマッピングする、地形をとらえることが海底の熱水鉱床とか資源開発にとって不可欠だと思います。

 ということで、これまでの我々が培ってきたAUVを使った海底地形調査を発展させて、AUVを数センチの精度、それから数センチの精度で地形を計測する、そういった技術開発をして、これから膨大な海底資源を我が国は持っているわけなんですが、そういう開発の探査技術に大きく貢献するセンサー技術を開発しようということになっております。

 それで、一応プロポーザルのときより予算がちょっと絞られて、そのヒアリングのときにもちょっと話をしたんですが、一応3周波ではなくて2周波を使って、これを達成しようと思います。それで、フルスワスの地形探査システムをAUVに搭載して、海底20mから50m直上ではかると。

 直下付近を精度よく計測できるのがマルチビームの促進技術であって、そのテクニックと、広範囲を高分解能で計測できるインターフェロメトリのソーナー技術、それと合成開口技術を組み合わせて分解能を高める。このような主に3つの地形計測技術、それと位置計測をcmの精度に引き上げる。こういったものを確立して、AUVに乗せて、数cmの精度で地形を広範囲に計測できる、世界に先駆けた技術開発を行いたいと思っています。

 従来は、我々バックグラウンドとして、海底の位置を音響とGPSを用いて、数cmの精度ではかる技術を研究してきています。それでAUVに実際に乗せて、そういう調査を達成しています。つまりAUVも数cmの精度で、水面上であればはかれると。

 それから合成開口なんですが、今の「r2D4」なんですけれども、これにインターフェロメトリのソーナーをつけて、合成開口を使って、イメージマッピング及び地形、これも今までですと数十cmの精度ではかることができています。これは合成開口を「r2D4」のソーナー、インターフェロメトリのソーナーに適用した例です。

 ということで、海底の左側にありますけれども、これはインド洋の中央海底で発見した数cmのチムニーの形状群なんですけれども、AUVの「r2D4」で探査しています。これをもっと効果的に確実にどこでもはかれるようにしていく。これをさらに進めるものを考えております。右側がソーナーの概念なんですが、直下付近はマルチビーム、それからインターフェロメトリで広範囲、それと合成開口のテクニックで高分解能、精度を上げるという3段構えの技術を考えております。

 システムの制御部、それと水中の音響精密測位、AUVで数cmの測位技術を開発すると。3,000mで実際にAUVに積んではかれるものをつくると。それと海底音響基準局のシステムを我々は開発運用しておりますので、それを発展させて、AUVのリアルタイムのナビゲーションを実現すると。それからインターフェロメトリの地形計測部というのを、もう七、八年やっていますけれども、今までは3素子でやっていたんですが、5素子にして、それで4番目、そこに合成開口のテクニックを組み合わせて、広範囲、高精度、それと直下はマルチビームの技術を使ってフルスワスを実現するという、画期的なシステムを開発したいと思っております。

 それから文部科学省から留意事項、注意点をいろいろいただいているんですが、実際に使えるようなものをつくるために、JAMSTECとかJOGMECとかと情報を密にして、研究実施体制も整えて、実際に熱水鉱床域、コバルトリッチ鉱床域で、地形と音響映像がはかれるように、この3年間で達成してくださいということを言われております。

 これまでの成果の進捗状況ですけれども、システムの制御部の開発研究、それと水中の音響精密測位技術、これは3月に試験を行う予定です。インターフェロメトリの地形計測部については、12月に試験を実施して、5素子のインターフェロメトリの地形計測部のアルゴリズムを開発するためのデータ、それと合成開口手法をそこに適用するためのデータをとっております。これから、このデータを使ってアルゴリズムを開発する予定です。

 それで、今実験を終わったのが合成開口とインターフェロメトリの送受波機の開発試験、装置を試作してアルゴリズムを開発するためのシミュレーション的な予備試験を行って、データをとって、これをもとにアルゴリズムを開発する予定なんですが、文章ですと、ちょっと時間があまりないので、絵で説明します。

 沼津にOKIシーテックのバージがあって、水深30mです。それで横幅が30mありますので、30mのところに2列のレールを引いて、そこを毎秒10cmでソーナーを左右に引っ張っていくと。それで前方40m60m80mにドラム缶2つを連結したものを3つ置いて、それをターゲットにして、例えばこれが熱水鉱床ですと思っていただいていいと思うんですが、こういうドラム缶2個ぐらい、高さ2.4m、直径が60から80ぐらいなんですが、そういったものが地形がちゃんとはかれれば、目的に達成できるでしょうということで、アルゴリズム開発のためにこのようなデータをとりました。

 これはレールをスライドさせるための仕掛けです。それとレールを30m取りつけているところ。それとこれがDVL、音響Doppler Velocity Logですね。それと一番右側のところに5個ハイドロホンを取りつけてあります。それと真ん中が送波器。これで110kの音波を出して、5個のハイドロホンで受信しながら、1秒間に10cm30mをずっと動かすと。それで、およそ2cm1回ずつピングして、30m掛ける横が112.5mの海底の波形データを収録しました。

 これはその試験風景です。このような課題をつけて、これをレールで引っ張っていくということを行っています。今、取りつけているところです。これがDVLとハイドロホンとプロジェクター。ここの中にPhins、光フォトジャイロの慣性航法装置が入っています。それからこれがターゲットとなるドラム缶を海底に40m60m80mのところに、3組沈めているところです。これが毎秒10cmずつ引っ張るためのモーターとロープです。

 実験風景です。ソーナーは海底に沈めています。それとGPSも使って、RTKGPScmの精度ではかっております。12月には5チャンネルのハイドロホンを5個のハイドロホンで受信信号、ローデータをとっているわけなんですが、CW、連続波形でコンマ332msのパルス幅で、ここが25mです。これ、左から5チャンネル分あります。それで一番左から右に横25m、縦がバージから離れる方向ですが、112.5mの海底の信号が出ています。これが多分フローティングの部位だと思います。

 この下におそらくドラム缶ターゲットが入っていると思います。こういったものが合成開口処理をすれば、きれいに求められると思いますが、我々が使っているのが110kHzの音波です。100kとすると、1波長が1.5cmです。合成開口するためには、それの精度を移動速度、移動距離の精度が大体1.5cm8分の11波長の8分の1の分解能精度がないとだめと言われています。およそ2mmぐらいです。

 それでPhinsDVL、こういったものを組み合わせて、例えばこれはPhinsの推定位置なんですけれども、縦方向が0から25m移動しています。それで横が0からプラスマイナス5cmの間に全部入っています。横はかなり拡大しております。縦方向が0から25m、横がプラスマイナス5cmぐらいです。それをDVLの位置のところまで持っていったのが送受波器、ハイドロホンの移動の変化です。およそ10cm以内に入っています。

 ただし、我々が求めたいのは、大体1mmから2mmぐらいの分解能の相対精度が必要ですので、これはかなりいいようですが、例えばこのデータをそのまま使ってやると、これが左側がローデータ、12345チャンネルですが、これがそれを20ピングずつ、20掛けるプラスマイナス20ですから、80ピング掛ける2cm、およそ80cmの開口長で、合成開口するとこんな形なんですが、まださっとやったばっかりです。

 このように大きく長く、10mぐらい横幅に伸びている、間延びした信号がフォーカスされています。ただ、これをそのまま100ピング、プラスマイナス200ですけれども200個、4mの開口長に相当しますけれども、フローティングの部位というのは海面上でふらふら漂っていますので、ただそのままやってはうまくいきません。多分、ここら辺のところにドラム缶らしきものが見えますけれども、もっとはっきり、まだちょっとソフトをつくって試したばっかりなんですけれども、これから5つの素子を合成開口できちっと精度のいい波形データを得て、5個から位相を計測して、海底の詳細な地形データをはかることができると思っています。3月までにはできる予定で開発を進めております。

 これはフランスのフィリップさんが信号を改善する、SNを改善するためにマチドフィルターというテクニックを使って、SNを改善しているところです。ローデータですので、ちょっとまだ効果がよくわからないんですが、これは合成開口をやった後に行えば、実際のターゲットをSNよく浮き出すことができると期待されております。

 以上、ちょっとまだ研究を始めたばかりですので、よくわからないかと思いますけれども、私の研究の進捗状況です。

【今脇主査】  どうもありがとうございました。

 時間の枠が非常に厳しい中で、要点を手際よく紹介していただけたと思います。この後、皆さん、ご質問をいただきたいと思うんですが、最初にこの位置なんですけれども、海で数cmというと、私たちにはとてもできそうにないような気がするんですけれども、最近の技術だと、それができると。絶対的な位置というよりは、何かその場所で、あるポイントを決めて、それに相対的に数cmの精度で地形が出るということですね。

【浅田教授】  そうですね。

【今脇主査】  AUVの位置がかなり正確に出ないと、またわからないんですけれども、それも数cmで出るというのは、もう技術があるんですか。

【浅田教授】  海底基準局という音響のトランスポンダー、普通ですと10m20mぐらいの精度なんですけれども、我々は津波、地震観測のために、海底の動きを1cmぐらいの精度でとらえるというような固定点ですけれども、そういう技術開発をやっていて、それをAUVに適用すると。それでAUVの場合には、我々熱水鉱床をはかるためには、ここに熱水鉱床があるというのは、10m20mぐらいの極端なことを言えばそのぐらいの精度でもいいと思うんですけれども、合成開口をやったりするテクニックのためには、数cmぐらいのある程度相対的な精度が必要と。それとDVLですと、数mmsecぐらいの速度で移動速度がはかれますし、従来の技術ですと、cmぐらいの相対精度がはかれます。我々としては、それをさらに合成開口しなければいけないので、相対的にmmパーぐらいの精度を達成したいと思っております。

【今脇主査】  その地形の像を見て、ここには何かがありそうだというのがもっとはっきりわかるということですよね。

【浅田教授】  分解能的には数cmですから、先ほどのドラム缶であれば、ちゃんとドラム缶、チムニーであればチムニーの形状がとらえられるということを目的にしております。

【今脇主査】  ありがとうございます。

 皆さん、ご質問がありましたら、どうぞご自由にお願いします。

【平委員】  今の非常に着々といいますか、着実に進んでいるなという感じで、感想を持ちましたけれども、コメントですけれども、数cm精度の地形やそういうものの取得というのは、熱水鉱床のみならず、これは世界で画期的な、一段レベルが上がると、海底のさまざまな動きというようなものを、要するにプレート運動とほぼ匹敵するような精度になってくるので、非常に幅広いアプリケーションを持つということで、今までだれもやったことのないことですけれども、大変大きな広がりを持っていると思いますので、頑張っていただきたいと思います。よろしくお願いします。

【浅田教授】  以前、平先生とスーパーマッピングという形の研究をやろうというような話をしていたかと思うんですが、そういったものが実現できてきたんじゃないかなと思います。数cmの精度が、測位精度及び地形精度が必要というのは、やっぱりプリュームを、地形を正確に歪みなくはかるためには、やっぱりそのぐらいの精度がないとはかれないんじゃないかなと。場所の特定には10mぐらいの精度で十分ですが、形状をはかるためには位置及び地形形状を数cmではかる技術がないと、形状からこれがプリューム、熱水鉱床であるとかそういったことがわからないんじゃないかなと。

 それから、こういう技術は今、平先生が言われたように、地震とか、ほかの地球物理関係にも応用ができるような技術ではないかと思って、努力していきたいと思います。

【今脇主査】  ほかにはよろしいでしょうか。

【生川海洋地球課長】  すみません、基本的な質問で恐縮なんですが、ここで目指されているのが、分解能が大体数cmレベルということなんですが、大体どのくらいのレベルが現行の技術で達成できているのかということと、それから今、ちょっとご説明があったんですが、熱水鉱床、チムニーを見つけるのはもうちょっと高くない分解能でもできるんだけれども、それを判別するのは数cmレベルでの分解能が必要だというようなことをおっしゃったような気がするんですが、その辺をもうちょっと詳しくご説明いただけますか。

【浅田教授】  今まではこの浦先生が開発しました「r2D4」の横にサイドスキャンソーナーと、3個のハイドロホンを取りつけて、海底3,000mぐらいまで潜っていって、それで精密な地形をはかろうということで、これに合成開口も適合しているんですが、インド洋の中央海嶺、これは水深2,500mぐらいのところですけれども、高さ10mぐらい、数mぐらいのチムニー状のこの「r2D4」で今まで発見しております。このときの分解能がおよそ空間的、水平方向では大体30cmぐらいの分解能です。高さ方向が10cmか同じぐらい、数十cmですね。縦横数十cmぐらいの精度でははかれています。これを数cmに持っていきたいと。

 それで1回に潜るのは、潜ってすぐ横にあったのに、また真下にこういうチムニーがあったのにわからなかったというと、非常に残念なので、我々としては真下もはかれる、左右も広範囲をすべてスワス、音波が届く範囲をきれいに確実にマッピングできるためには、マルチビームとインターフェロメトリと合成開口の技術を組み合わせることがどうしても必要なんじゃないかなと思います。

 今までこういったチムニー状の地形もはかれているんですが、すべてにおいて、こういういい精度でチャンピオンデータが得られるかというと、そうでもなくて、たまたま品質がいいところを選んで見たら、ここにチムニー状の地形があったという形で、常に先行して行ったら、精度よくはかれるような技術開発が必要だと思います。そういう意味でプロトタイプが今まで「r2D4」にとりつけたインターフェロメトリで、今度は実践型の精度を10倍ぐらいに上げた装置を開発するということが、今回の目的だと思います。

【生川海洋地球課長】  もう一つよろしいですか。それから、この技術を実用化させるためには、例えばAUVの位置精度とかいろいろ数字をおっしゃっていたと思うんですけれども、ちょっと我々よくわからないんですけれども、その要件というのは、十分達成可能なレベルのものなのかどうかというあたりをちょっと教えていただけますか。

【浅田教授】  レベルとしては、十分測位は相対精度ですけれども、数cmぐらいは出せると思います。音響の基準点の位置は絶対精度で出せると思います。

 それから地形のほうも数cmというのは、やっぱり合成開口ができれば、これは今までできる話なので、ただ合成開口といっても、今まではイメージ、画像として数cmぐらいはできたという例も諸外国にあります。ただ、これを地形にまで発展させた三次元の海底地形として数cmを達成するという部分が、まだあまり諸外国でも研究段階で、達成できていないと思いますが、我々としては十分過去の技術から発展させて、届く範囲だと思っております。

【今脇主査】  どうもありがとうございました。じゃ、最後。

【沖野委員】  2つ。1つは合成開口のほうだと、位置、8分の1λぐらいの精度で、それはやっぱりすごくかなり難しそうに思えてしまうんですが、その辺について、ちょっと説明していただきたいのが1つ。

 あともう一つは、これは浦先生にお聞きしたほうがいいのかもしれませんが、実際に使うとすると、運行性能とすごくかかわりますよね。カルデラの中をはかりたいとか、断層外のテラスをはかりたいとか。そういうプラットフォームのほうの性能と、こういうすごく超精密マッピングの技術との兼ね合いというか、どのぐらい安定して動いていれば、すごく安定していないと、こういう、ものすごいいい精度が出ないということだと、実際の熱水地帯の調査に行ったときに困りますよね。その辺についてお聞きしたい。

【浅田教授】  やっぱり真っすぐ走って、安定して走ってほしいというのがソーナーのほうからの希望です。というのはDVLGPS、それからPhinsやなんかでも、実効的には例えば10m動いて、数cmぐらいの測位精度というのは十分達成できます。それを1mm2mmに持っていくためには、我々としてはとった画像データ、音響の信号データを解析して、移動ベクトルを推定するという技術を今、ほかのほうでは達成しているので、それをこういったところに持ってくると、測位精度としては1cmぐらいなんですけれども、信号を重ね合わせる、画像を重ね合わせるときに、その信号をマッチングさせながら、相対的に合わせていくという手法で、1mm2mmの相対マッチング精度がとれると思います。

 後ろの部分については、我々今回のプラットフォームではなくて、センサー技術を開発してくださいということが、今回の目的だったんですが、浦先生、いかがでしょうか。

【今脇主査】  浦さん、かわりに。

【浦委員】  プラットフォーム技術は、今、我々が使った「r2」だと、とにかく浅田先生が言われているのはピッチもしないでちょうだいねと。ヨーもしないでちょうだいねと、ロールもしないで走ってくださいと頼まれているわけですが、この間行ってきた、例えばスミスのカルデラだとか、それから伊是名のカルデラのような平なところだと、ほとんど一定深度で行きますので、それはほとんど運動しないというか、そういう周期運動をしないような行動ができます。

 ただし、ベヨネーズ海丘のようなところで、斜めの斜面にあるところというのは、斜めにロールもピッチもヨーもしないですーっと行くのは、今まであまりそういうことを考えたことがないんですね。それで、そこをうまくやるのはいろいろな工夫があって、今、それはそういうことができるように鋭意努力中です。そうすると、なるべく余計な運動をしない航行ができるようなロボットになるということですから、ちょっと面倒くさいところです。

【今脇主査】  ありがとうございました。盛り上がってきたところなんですけれども、ちょっときょう、まだ3人の方がいらっしゃいますので、今の最初のテーマについては、この辺で終わりたいと思います。

 浅田先生、どうもありがとうございました。

【浅田教授】  ありがとうございました。

【今脇主査】  続きまして、高知大学の海洋コア総合研究センターの岡村准教授から次のご発表をお願いしたいと思います。資料12ですね。「海底熱水鉱床探査の為の化学・生物モニタリングツールの開発」というのが課題名です。岡村先生、よろしくお願いします。

【岡村准教授】  高知大学の岡村と申します。よろしくお願いいたします。

 我々のグループは化学のほうのセンサーの開発を行っております。とりあえず熱水鉱床ということなんですが、まず熱水活動を伴っているタイプのほうですと、鉄やマンガンだとか、硫化水素などが放出されておりますので、これらの組成をまずは目指したセンサーを開発しようということで、開発を始めております。

 まず我々の持っておりますシーズですけれども、それにつきましてご説明いたします。我々のグループは化学モニタリングといいましても、主に2種類のタイプのものに分かれておりまして、フロー系の分析装置と電気化学のデバイスというものになります。まずフロー系の分析装置からご紹介させていただきますと、これ、従来、私が開発して使っておりましたマンガン系の計測装置になっています。要は試薬と海水をまぜ合わせまして、流れ分析を行うというものになっております。サイズ的に大体みかん箱2つ分ぐらいというサイズの大きさのものになっております。

 あと、このフロー系のものとしまして、もう一つサブグループをつくっております東大生産研の藤井先生のグループで開発しております、マイクロ流体デバイスというものがございます。こちら、微生物系の現場でPCRを行うもの、またマンガン、アデノシン三リン酸といったものや、またpHの計測をできる装置がございます。これはこのように流路をシリコンゴムの流体デバイスの上に全部つくり込んで反応させてはかるというものになっております。以上のものが、まずフロー系の流体デバイスです。実物としてはこのようなものがございますというご紹介になっております。

 次にもう一つの観測を行うために、電気化学的なデバイスというのもございます。こちらは今までのフロー系のデバイスですと、試薬を使うんですけれども、その試薬なしにして、電気化学によってのみ分析をするデバイスになります。このようなものの1つとして、私が開発しております硫化水素センサーとか、こちらのほうですと、銀や白金などの電極を使うのみで、試薬不要で反応を行うことができるというものになっております。

 こちらもまた1つサブグループをつくっておりまして、電力中央研究所のほうはダイヤモンドの薄膜電極を用いた現場型のセンサーや、またこのようにワンチップ状にいろいろPHPCO2ORP、電気伝導、温度だといったセンサを乗せたものや、あとプラスチックシンチレータを用いた現場型のラドンセンサーなどをつくってきております。これが今までの既存の機械なんですけれども、ごらんのように、ちょっと手づくり感が出て、かなり大き目な装置になっておりますので、これらの装置を小型化していこうということで、今回の予算で研究開発を行っております。

 今までご紹介したものが、それぞれフロー系の分析装置のほうがちょっと若干大きさや重さとかが大き目になっておりまして、みかん箱2つ分ぐらいのサイズとなっています。電気化学デバイスのほうはみかん箱1つ分ぐらいのサイズなんですけれども、これを全部一番下の10cm掛ける5cm掛ける5cm、大体缶コーヒー1本分ぐらいのサイズで、すべてつくり込もうということで、順番に開発を行っております。

 ターゲットにしております化学成分ですけれども、これらの成分になっております。それぞれ目標精度を掲げておりまして、青色の欄に書いてありますのが、熱水活動を伴っている場合の熱水活動からの距離に応じて、どのレベルまで検出できるかといったレンジを書いております。例えば鉄、マンガンですと、10kぐらい離れても検出できますし、一番小さい硫化水素とかですと、数mオーダーのところの検出が可能ということになりますので、これらのセンサを合わせれば、幅広いスケールに対応可能ですので、遠いところから徐々に近いエリアまで攻めていって、活動を見つけようという目的に使うことができると考えております。

 研究体制ですけれども、このように3グループに分かれておりまして、私、高知大と、あと岡山大、千葉先生のグループで、フロー系と電気化学デバイスの両方のタイプのデバイスの高精度化と多成分化を実施しておりまして、フロー系分析装置の超小型化を東大生産研の藤井先生と、JAMSTECの許さんのグループでやっております。また電気化学デバイスのマルチセンサー化は電力中央研究所の下島さんのグループで行っております。外部運営委員としましては、産総研の飯笹さん、東大海洋研の蒲生先生、あと産総研の丸山さんの3名の方に加わっていただいております。

 最終目標としては、このようにAUV、泳ぐときの鼻となるセンサーをつくろうということでつくり始めております。ちょっとここから配付資料はございませんけれども、現在の進捗状況を説明させていただきます。

 まず我々のグループですけれども、運営委員会は1112日にサブグループ間の打ち合わせを行っております。まずこれらのツールを評価するための耐圧試験水槽や、加圧式の分光光度計といったもののツールは高知大のほうに設置済みとなっております。ことしつくっておりますツール本体は、それぞれ各グループごとに鉄、マンガン、硫化水素、マイクロデバイス、マルチセンサーといったものをつくっておりますが、現在のところ3月末納品予定ですので、ちょっとまだデータは出ておりません。

 その中で、一応高知大学のこちらの装置をつくり直して今やっておりますのが、このようなものになってございます。上が鉄、マンガン用のポンプユニットで、新しくつくったものです。全長が大体60cmのものになっております。下のほうは硫化水素用のセンサーで全長が20cm程度のものになっております。

 これらのツールなんですけれども、一回つくりますと、また新しい技術要素ができてきまして、一応本年度はこれで走りますが、今ざっとつくったところですと、来年度以降は、今全体6ユニットプラス1ユニット、制御棒が入っているんですけれども、この中の1ユニットだけでどうも送液が全部完了しそうなものができそうですので、来年度はこのユニット1つで、この1つのユニットに該当するようなものをつくろうと考えております。

 あと、今までのご説明は、熱水活動を伴っているケースだったんですけれども、熱水活動が停止したケースで、化学センサーが何ができるかというのは、ちょっと我々の運営委員会でも考えたんですけれども、少し前に出ました元素一覧のほうは、生きている場合ですと、あのように元素一覧と距離が出るんですけれども、活動停止している場合は、多分何が出ているのか、実はよくわからないというのが現状だと思いますので、おそらく生きた鉱床の近傍で、既存センサー群で化学分析でターゲットを探索する必要があるだろうと思います。

 また、それにただセンサー群では、実はそれ以外のセンサーではかれないものが出ている可能性がありますので、採水も多分必要になってくるのかなと考えております。もし採水するのでしたら、先ほど出てきました、このユニットなんですけれども、これのユニットのここ、実は送液ポンプユニットをちょっとつくり変えることで、ざっと試算したところ、これで1つで20サンプル再生可能というような試算が出ていますので、例えばこれ、同じぐらいのサイズのものでつくり込んでいくと、大体6ユニットで120サンプルぐらいの海水が、AUVで泳ぎながら採ることができる技術もどうもできそうなところになってきています。これですと、例えば1サンプルですと240分ですので、4時間分の走っているエリアの採水をして観測することも可能じゃないかということもわかってまいりました。

 以上が我々のグループのご紹介です。

【今脇主査】  どうもありがとうございました。

 装置の大きさについて非常にわかりやすい説明をしていただいたんですけれども、みかん箱2つと、みかん箱1つ合わせたもので、最終的に缶コーヒー1本というと、何か質的にあれを変えないとおさまらないような気がするんですけど、それはやられたわけですね。

【岡村准教授】  実はその第1段がこちらでして、今までの装置は水系、試薬送液系の部分と、電送部の油部分がちょっとまざり込んでいて、これ以上つくり込みできなかったんですが、こちらのほうで、その水の部分と電送部をちょっと分けた設計をしてみたんですね。白い部分がテフロンになっていまして、そこをちょっと立体的に掘削するという技術を東大阪の町工場のほうとやっていて、うまくできたんですね。これでできましたので、全く概念が違う装置をつくり出すことができるようになったわけです。ですので、これができるのがわかったので、来年度つくれば、この丸1つ分で、これができます。ここまで来たら、缶コーヒー1本はあと近いところなので、大丈夫です。

【今脇主査】  そうですか。その缶コーヒー1本、この最後の図にAUVの先に出ている赤いところ、それが缶コーヒーの大きさということですか。内側にも何か……。

【岡村准教授】  ただ、その1つのセンサーが缶コーヒー1本で、それをたくさん並べますよというイメージなんですね。ですので、もしAUVから出す場合ですと、その採水のチューブだけ先に出していくとかという形になりますし……。

【今脇主査】  本体の中にもうちょっと……。

【岡村准教授】  本体の中に入ります。

【今脇主査】  はい。それと、その最後から3枚目かな。熱水噴出孔からの距離で、10k先からでも、鉄とかマンガンだったら検出可能という、この表ですね。これ、熱水鉱床から出ているのは検出できるかもしれないけど、そのほかのいろいろな変動がありますよね、実際の海では。それの中に隠れて、なかなか見つけられないということはないですか。

【岡村准教授】  実はマンガン、鉄はナノモルというオーダーなんですが、熱水鉱床ですと、10万倍の濃度で出ているんですね。

【今脇主査】  ほかよりもはるかに強い。

【岡村准教授】  はるかに多いですね。ほかの自然要因ですと、せいぜい1,000倍程度しか出てこないわけです。ですので、この距離で出てしまったら……。

【今脇主査】  10キロ離れても十分検出、自然のほかの変動に比べてはるかに高い信号であると。

【岡村准教授】  そうです。

【今脇主査】  10キロ先からだと、相当有望ですよね。

【岡村准教授】  例えばサウザンEPRとかでやりますと、60マイル離れたところでも検出できるものです。

【今脇主査】  じゃ、活動しているものはかなり見つけやすいというように聞きましたけど。ありがとうございました。

 ほかに何かご質問がありますか。どうぞ。

【浦辺委員】  わかりやすく距離と書いてあると思うんですが、実際にはこの1m10mになると、濃度的には何倍になるとして、距離を計算しておられるんですか。

【岡村准教授】  実はざくっと100倍ずつ薄めていって計算しています。

【浦辺委員】  10mになると100倍。

【岡村准教授】  100倍。100倍、100倍で。

【浦辺委員】  そうすると、10kだと108乗分の1ということで。

【岡村准教授】  そうです。ですから、10万倍ですので、どうだったかな。間違えたかな。

【浦辺委員】  ちょっと難しいような気がするけど。

【岡村准教授】  ちょっと計算式のものを自分のパソコンに入れているんですけれども、実際の熱水プール部の探査のときで、風下側におりたときにどれぐらいはかれるかという範囲が大体60kぐらいというのはわかっていますので、それで鉄、マンガンに関しては低目に見積もってあるんですけれども。

【浦辺委員】  結局、1つの問題としては非常にばらつきが大きくなる。まざり方がほんとうにきれいにまざるわけではないので、高いところもあれば、低いところもあるというように、非常にまだらにまざりますよね。その中で、高いところが残っていればわかるし、常に均質になっていくんだといいんだけど、なかなかそういう意味で100m先で必ずわかるかというと、そうでもないと思うんだけれども、その点はいかがですか。

【岡村准教授】  必ずという意味ですか。

【浦辺委員】  実際に当てはまるときね。

【岡村准教授】  例えば100mのエリアの水温とかですよね。水温とかで銅、亜鉛、硫化水素とかいったものですけれども、この精度では引っかかることは引っかかるんですね。その振れ幅がありますので、検出はできるけれども、その場所がどこから来ているかは特定できないという距離だと思います、こちら。ですが、あることがわかったら、もう少し周りを攻めていけば、100mの中でもこちらの方向というのがわかってまいりますので、まずとりあえず引っかけるというのがポイントだとは思うんですね。

 ですので、100m離れたところでも、温度とかこの辺はかれば、引っかけはできるんじゃないかと。ただ方向はわからないです。方向はわからないし、要するに定量はできないけど、検出できるというか。

【浦辺委員】  もう一つ、例えば機械的にこの表をつくっておられると思うんだけれども、例えばATPというものが100m離れたところに丸がついていますけれども、これは、ATPは別に熱水から出てくる、熱水の微生物に関連なく、海の中であればどこでもというのがあるので、その丸はどういう……。細かい点で申しわけないんですが。

【岡村准教授】  これもちょっともう一つ持ってくればよかったんですけれども、とりあえず熱水活動があった場合に、上昇するであろう距離は出しているわけですね。ただ、その引っかけたところで、このATPの場合ですと、確かにほかの要因があるかもしれません。ただ、熱水活動があれば、この距離だと上がるであろうという、あくまで推測のところになっています。ですから、定量するのとは違うんですね。鉄、マンガンですと、この距離で引っかけるとは思うんですけれども、大丈夫だと思うんですけど、ATPとかですと、ひっかけたところで、まだ熱水活動かどうかはわからないということになっています。ですので、ほかのセンサーとあわせて、総合的に見ていく必要があります。

【今脇主査】  ありがとうございました。センサーそのものについて、何か質問がありますか。検出できる範囲というのにちょっと問題があるとして。

【宮崎委員】  ちょっとフロー系と電気化学デバイスの分け方なんですが、フローでも最終的には電気系でのデータを出すわけなので、その辺の何か分けるやり方というのはどこが接点になるんでしょうか。

【岡村准教授】  フロー系は基本的に試薬をまぜ合わせるという概念です。電気化学系はこのセンサーをじかに突き出しているだけという、試薬をまぜないというものになっています。ですので、フロー系の装置の先に電気化学デバイスを置くということはあり得ることになってまいります。

【宮崎委員】  そうすると、委員長が心配なさった、小型化したときの溶液を入れておくところも、その缶コーヒーの中で済むということなんでしょうか。

【岡村准教授】  そうですね。ですので、今はちょっと直径1mm程度の大きな径路を使っていますけれども、このチップ状に全部径路をおさめてしまえば、それに必然的に試薬の量も減ってまいりますので、このサイズでつくり込んでいけば、缶コーヒー1本で全部試薬もおさまるであろうと読んでおります。

【宮崎委員】  逆にフロー系だと、測定時間とかそれが制約になってきますか。

【岡村准教授】  流している流路を通っている時間が必要になってまいりますので、例えば1分程度おくれてデータが出てくるということがございます。

【宮崎委員】  それから、例えばたくさんAUVが走ったりするときの制限が逆にそちらから出てきてしまうとか。

【岡村准教授】  それは、ただずっと連続的に吸っておりますので、時間おくれになるだけですので……。

【宮崎委員】  溶液があるということは、どうしてもそこを使っていると、それが減ってきてしまって何日間もできないとか、そういう制限が、それはほかに溶液を持って供給すればいいということでしょうかね。

【岡村准教授】  例えばこれですと、缶コーヒーだと1日程度の運用だと思いますので、時間が長くなるんでしたら、逆に均質、応答性を落として、試薬流量を少なくするという手もございますし、たくさん缶コーヒー、二、三本にするという手もございます。

【今脇主査】  ほかにどうでしょうか。

【浦辺委員】  大変素人なんですが、お手元の資料のダイヤモンド薄膜電極を求めた現場型ASVセンサーというのがありますが、このASVというのは、私よくわからなかった。これはポテンショスタットみたいなものなんでしょうか。

【岡村准教授】  そうですね。アノーディック・ストリーキング・ボルタメトリーの略になっておりまして、要はアノード側ですので、陰極側の電位を掃引するという技術なんですね。ここにございますように、とある電位から引っ張りますと、何かあると、このようにピークが出てくるという。このピークの面積と高さで定量しようというような技術になっております。

【浦辺委員】  これではかれるものは何を目指しているんでしょうか。

【岡村准教授】  こちらは例えば砒素精錬などといった、いわゆる新硫黄系の元素がはかれます。ですから、度合いも可能です。

【今脇主査】  ほかにはどうでしょうか。よろしいですか。

 それでは、どうもいろいろありがとうございました。

 それでは次に東海大学の海洋研究所の佐柳准教授からご発表をいただきたいと思います。今度は資料13にありますように、課題名は「電磁気学的手法を用いた高精度海底地質構造探査ツールの開発」というテーマです。では先生、よろしくお願いいたします。

【佐柳准教授】  東海大学の佐柳です。よろしくお願いいたします。

 今まで表面のところ、海底より上の話でしたけれども、我々の研究課題は、その下の構造を見ようという、そのためのセンサーの開発に当たります。その海底下の構造というのは、賦存量の推定に非常に重要なわけですが、私たちのグループでは、それを電磁気学的な手法でとらえる、探査をしようという試みをしています。グループには、東海大学のほかに京都大学、JAMSTEC、それから静岡大学の研究者の方々に参加して頂いております。

 さて、開発目標ですが、お手元の資料にありますように、海底下の構造を正確に求める、三次元的に求めるツールを開発するということです。要件としましては、例えば、深いところ、つまり100m程度までについては、二、三十m程度、そしてより浅いところ、20m程度までについては、四、五m程度の分解能が挙げられています。そのような高精度な計測ができ、水深3,000m以上でも使用できる実用的な装置を開発するというのが目標です。

 実際、金属資源探査に物理探査が非常に重要だということはよく認識されていることですが、陸上ではどのような調査が行われているかといいますと、ここに挙げました空中磁気探査、重力探査、空中電磁探査、陸上での電気探査や電磁探査などがよく使われています。つまり、電磁気学的な探査手法は、海底においても非常に有効であろうと考えられます。これをAUVROVなどを使って深海で実現させたいというのが、我々の基本的な考えです。

 ここで、現状をみてみますと、少なくとも日本には海底資源探査を目的としたそのような装置はまだありません。世界の動向としては、2000年あたりから、特に石油やガスの分野で、電磁気的な手法が注目されてきているようです。海底金属資源では、我々が調べた範囲では民間の会社で2つ、ノーチラス社とネプチューン社が海底熱水鉱床の物理探査にも積極的なようですが、特にノーチラス社においては、電磁探査も実際に行っているという情報を得ております。

 それでは次に、私たちが目指す海底熱水鉱床の電磁気探査がどのようなものか、その探査イメージをお示しいたします。左の図は、ROVを使った電気探査です。ROVの後ろにケーブルが出ていますが、これに送信電極と受信電極をつけて、送信電極から流した電流信号に対する海底のレスポンスを受信電極でとらえます。

 一方、右の図は、AUVを使った磁気探査と電気探査を示しています。磁気探査のほうは、AUVに三成分磁力計などを取り付けて海底熱水鉱床域の様々な高度を航走し、三次元的な測定を行います。電気探査のほうは、まずROVのほうから開発を進めまして、将来的には、その先のステップとして、この図にあるようなAUVにも取りつけるシステムを考えております。

 以上がハード的な部分ですが、探査フローとしては、これらの装置で得られたデータに音波探査や熱流量などの既存のデータを加えて、それらを総合的に解析することによって、海底下の構造をより正確にイメージングし、賦存量の推定につなげるということになります。

 さて、研究開発の構成ですが、まず全体を3つのサブ課題に分けました。1つ目は磁気探査装置の開発。そして2つ目が電気探査装置の開発。3つ目がソフト的な意味で、各種の物理探査データをうまく統合するための要素技術についての研究です。

 それぞれのポイントは、磁気探査については三成分、全磁力、磁場勾配という3種類のデータを取得できること、電気探査装置については、人工送信源を用いた電気探査ということです。また、各種のデータを総合的に処理するためのソフト開発も重要であると位置づけております。

 次に示しますのは、すでに少し触れた部分もありますが、もう少し詳しい各装置の特徴です。磁気探査装置は、磁場三成分を測定するということが重要です。これは海底熱水域で先駆的なものはありますが、まだ十分ではなく、ノイズ等の問題を解決しさらに高度化して、海底下の構造をより正確に求めるべく、開発を進めております。また、高速サンプリングでデータをとり、スタッキング等の手法を使ってSN比の向上も図る予定です。

 一方、電気探査装置のほうですが、これは送信信号に直流だけではなく、交流も使用し、その特徴をうまく生かそうと考えております。重要な点は強信号によって高いSN比を得るということです。

 また、ソフト的な開発においては、実用化というのを特に意識して、船上で実際に探査中にそのデータを船上に上げて、すぐに処理し、可視化し、そしてまた次のダイブの調査にすぐ生かせるようなものを考えたいと思っております。

 開発ツールにはこうした特徴があるわけですが、具体的にはこの図のようなシステムを考えています。まず磁気探査装置ですが、一番上にあるのが全磁力計です。地磁気の大きさをはかる装置です。そして2番目にあるのが三成分磁力計、これは地磁気の三成分、つまりベクトルを測る装置です。それぞれ2つありますので、磁場の勾配も測ることができます。

 図の下のところには、それぞれの主な仕様を書いておきました。全磁力計の測定原理は、オーバーハウザー効果を利用したもので、非常に精度よく測ることができます。三成分磁力計に関してはフラックスゲート型のセンサーを使う予定です。

 そして、図の中で赤色がついている箇所が、今年度開発を予定しているところです。残りの部分は来年度開発しますが、この点線で囲った部分はプラットフォームに搭載された他の機器で、これらの外部データも取り込めるように、そしてまたこちらのデータをプラットフォーム側に送り出せるようにしたいと考えています。

 次に電気探査装置ですが、こちらのほうは電流を送信する側と、それから受信する側に分かれています。それぞれに電極がついておりまして、仕様に関しては図の下にあるとおりです。送信電流の出力ワット数としては2kWのものを考えています。

 電位電極は1から11までありますが、1つをコモン電極にして、残りの10個の電極で、10チャンネル分のデータをとることを考えています。

 探査中のデータ処理については、これは電気探査の例ですが、図の右側にあるようなフローが想定されます。送信信号を設計、送信して、それを受信し、そのデータを処理・解析して表示・記録します。また、その結果を信号設計にフィードバックさせます。これはまだイメージですが、そういったソフトの開発も考えております。

 進捗状況としましては、現在、この20年度にありますが、今までこのような装置はまだ完成されたものがありませんので、基本的な設計をよく議論いたしました。今、その仕様が固まり、メーカーにつくらせているところです。来年度、星印をつけましたが、「よこすか」航海をとりまして、磁気探査装置のテストを計画しております。

 どのような計画かといいますと、これは最後の図になりますが、左側にあるのが、深海曳航体「よこすかディープ・トゥ」を使った試験、右側にあるのがAUV「うらしま」を使った試験です。海底に金属製のターゲットを置き、その上を走って、どれぐらいの分解能でとらえることができるかということをテストする予定です。

 簡単ですが、以上が私たちの研究の概要です。

【今脇主査】  どうもありがとうございました。

 今は設計が終わって、つくり始めているというところですね。

【佐柳准教授】  はい。

【今脇主査】  全体の構想を話していただきましたが、何かご質問がありましたら、ご自由にお願いします。

【阿部委員】  非常に興味深く聞かせてもらったんですけれども、これがほんとうにうまくいったら、がらっと変わってしまうなという印象を持ちました。

 それで、今度、この「よこすか」の航海で実験されるときのターゲットの大きさというのはどのように考えておられるのでしょうか。

【佐柳准教授】  今のところ、鉄道のレールのようなもので、長さが1mぐらいから2mぐらいのものを考えています。ただ、実は運航チームとの話し合いはこれからで、実際にそれを使えるかどうか、その辺も検討していきたいと思っています。

【阿部委員】  難破船なんかを利用したらいいのかななんて、ちらっと思ったんですけど。

【佐柳准教授】  もし船の方でここの海域に行けば、沈船があるというような情報があれば、そういう方法もいいと思います。

【今脇主査】  どうぞ。

【浦辺委員】  磁気探査のほうと電気探査、両方お聞きしたいんですが、磁気探査のほうは表面に出ているものはいいんですが、地下にあるものはやはり何となくインテグレートされて、全部の細かい情報を得るには、なかなか不適切な方法ではないかなと思うんですね。それがまず1つ。

 それからもう一つは、磁気というんだけれども、実際に熱水鉱床とかほかのもので、その中のどういう磁気をねらってやるのかという、レールのようなものが鉱床であればいいんだけど、一体何をねらっているのかがちょっとよくわからなかった。その2つを教えてください。

【佐柳准教授】  陸上のほうでは、やはり金属鉱床ということで、磁化の強いものが測られているという例もあるようです。したがって、ターゲットとする部分が、磁性が強いものという可能性もあるように思います。

 もう一つは、熱水鉱床の場合、やはり熱と大きく関係してくるので、非常に高温であるところは磁化が消磁されていると考えられます。玄武岩は元々磁化強度が大きいですから、熱水の影響を受けていないところとのコントラストを視点にして調べる方法もあるのではないかと思います。これは磁気だけでは全部は解決しませんけれども、ほかの先見的な情報も加えると、ある程度絞られるのではないかと思っています。

【浦辺委員】  その磁気の面については、前回のときに議論があったんですが、鉱床そのものは磁気を持たない。特に遠くのものは持たない。それよりさらに大きな熱によるというような、水と岩石の反応によるマグネタイトの分解といいますか、磁性鉱物が分解することによる大きな磁気が地磁気の帯磁率の低くなった大きなゾーンがあるかもしれないという意味では、あると思うので、そのレールを使ってやるというのが一体何の現実的なシミュレーションになっているのかが不思議だなと。

【佐柳准教授】  この試験は、磁気探査装置の性能、つまり磁気センサーの分解能を見ようというものです。つまり、磁化が分かっているものをターゲットとして、それが作る磁気異常を測定し、その測定値からインバージョンしたときに、磁化をどれぐらい再現できるかをテストします。これはシンプルで、かつ装置の性能を見るには適切な方法ではないかと考えているのですが。

 それから、磁気というのは細かい構造を調べるのはちょっと不得手じゃないかというご指摘もありましたが、それについては三成分のほうで、インバージョン精度を上げる新しい解析手法の提案もなされつつあります。

 こちらにお見せしているのは、千葉大学の伊勢崎先生が提唱されている方法です。従来は、磁気探査というと、全磁力測定が基本でした。その理由はここでは割愛しますが、それが三成分になると非常にいいことが出てきます。そもそも磁場というのはベクトル量なので、それをベクトル(三成分)で測るということは、物理量としての磁気異常をちゃんと測っているということです。したがって、測定値から磁気ポテンシャルを正確に求めることができるということなります。そのポテンシャルに戻した状態でインバージョンしてやると、従来よりも非常に精度よく解析できるというシミュレーションもされています。

 例えばこの図にありますのは、こちらが海底下で、ちょっと見にくいですが、これらの色が磁化のコントラストを表しています。このような磁化分布があったときに、磁気異常からポテンシャルを一旦求めてから、インバージョンしてやると、その下にありますように、元の磁化分布と非常に近い結果が得られます。左側の2番と書いてあるのは、ポテンシャルに直した分布図です。このような解析も本研究のソフト的な開発の中に取り入れていきたいと考えています。そのためにも、三次元的な測定ができるように、AUVやディープ・トゥを利用した磁場三成分測定が必要であると思っております。

【今脇主査】  ありがとうございます。

【浦辺委員】  後で。

【今脇主査】  沖野さん。

【沖野委員】  2点あるんですけれども、1つは我々も佐柳さんからの歴史をずっと引き継いで、潜水船に三成分磁力計を積んだ観測をして、熱水系もやっているんですけれども、実際には分解能を上げるという以前に、やっぱりデータ取得の安定性がまだないというのがすごく問題。我々もずっとやりたいと思っているのは、三成分を測定して、三成分として使いたいけれども、その成分によってシフトが乗ってしまったりして、結局、その3つの成分をちゃんと使えない。ベクトル量ではかっているんだけど、結局は全磁力量にして何とか大まかなイメージをつくっているというところから、どうしても進めないですね。そこを何とかほんとうにベクトル量ではかりたい。

 それをやっていると、今、うちの学生も大分長いこと解析をしているんですが、1つは結構プラットフォームのノイズがどうしても取り切れない。かつ、それがプラットフォームによっても違うし、クルーズによっても変わってしまうので、その定番のパターンの解析が非常に難しいんですね。その辺をどういうようにしたいと思っているかというのが1つ目。

 もう一つは、試験のとき、高度を変えてやられますよね。

【佐柳准教授】  はい、やります。

【沖野委員】  それはいいと思いますね。一番単純に構造の形状以上に進路がわかればよいので、高度変化を出すのがいいと。

【佐柳准教授】  後の簡単なほうのご質問からお答えします。来年度の「よこすか」の試験では高度を変えた試験も行います。

 それから、最初のほうのご質問ですが、大変重要なポイントをご指摘していただきました。私たちもプラットフォームのノイズが非常に大きな問題になると考えています。ノイズのない場所にセンサーを置いて測かるのが理想的ですが難しいかもしれません。まず大前提として、できるだけノイズの小さなところ、例えばAUVの中にのせるにしても、ノイズ源からできるだけ離れたところにセンサーを置かなければなりません。そのために、陸上と「よこすか」の試験のときに、どの場所にセンサーを置けばいいのかなどのノイズ試験も行う予定です。

【沖野委員】  オーバーハウザーは外に出すんですか。

【佐柳准教授】  はい、オーバーハウザーは外に出す予定です。

【沖野委員】  何か突き出すような。

【佐柳准教授】  ええ、その辺のどのように取りつけたらいいかというのは、実は運航チームとの話し合いをこれから進めていかなければならないところです。オーバーハウザーもフラックスゲートも、理想的にはノイズのないプラットフォームがあれば一番いいのですけれども。現状としては、1つの試みとして、センサーを複数台置いて、ノイズを評価できないかと考えています。それからもう一つ、高サンプリングにすることによって、人工的なノイズの部分を分けることができないか、フィルタリングできないかというようなことを試みる予定です。

【今脇主査】  ありがとうございます。増田さん、何か。

【増田委員】  ちょっと確認なんですけれども、磁気探査と電気探査、この手法、「ノーチラス」がやっているのは電磁探査……。

【佐柳准教授】  電磁探査のようです。

【増田委員】  ですね。今、お話しされている磁気探査というのは、いわゆる磁気探査……。

【佐柳准教授】  はい、磁気探査です。

【増田委員】  磁気探査ですね。そうすると、電磁探査というのはここでは電気探査のほうに含めてお考えになっているということなんでしょうか。

【佐柳准教授】  はい、そうです。

【増田委員】  手法としては電気探査というのは、電磁探査もあるし、IPもあるし、比抵抗もある、いろいろあると思うんですけれども、どういった方法を中心に考えられているのか、ちょっと教えていただきたいんですけど。

【佐柳准教授】  本当はどれもやりたいところですが、それは難しいので、まずは、こちらの絵にありますような通常の電気探査をやろうと思っています。さらに、この第2ステップとして、交流信号を使った電気探査で、周波数をいろいろ変えることによって探査深度を浅いところから深いところまで変えて見てみたいということも考えています。

 実は陸上のほうでは今、アクロスという技術が開発されておりまして、正確に言うとアクロスそのものをやるということではありませんが、その技術をうまく取り入れるようなことも念頭に置いてやっております。簡単ですけれども、よろしいでしょうか。

【今脇主査】  ありがとうございました。浦辺先生。

【浦辺委員】  電気探査は、今まで海水の伝導度が高いとかいろいろなことで、なかなかうまくいっていないと思うんですが、その外国のいろいろなトライをやって、うまくいかなかったその理由とか、それに対してどうやれば解決ができるかとか、そういうような調査をやっておられるでしょうか。

【佐柳准教授】  いえ、実は電気探査というのがうまくいっていなかったというのも、少し違う認識をそろそろ持ったほうがいいのかなと思っています。特に最近では石油業界のほうでは、電気探査は非常によく使われ出しています。ターゲットが我々の金属とは違いますが、海底の制御信号を使った電気探査というのはポピュラーになってきているというのが、まず我々は認識しなければいけないところだと思います。

 ただ、金属鉱床に応用してというのは、知る限りでは、先ほどご紹介した会社のところしかないようです。ただし、詳しい結果は出ていませんので、我々がまさに開発して、チャレンジしていかなければいけないと思います。

【浦辺委員】  それは海底ケーブルを使った方法ですよね。石油のものは。

【佐柳准教授】  いえ、海底ケーブルではなくて、曳航したものもありますし、それから海底にOBEMを設置するというものもあります。

【今脇主査】  ほかに何かご質問がありますでしょうか。よろしいですね。それでは佐柳先生、どうもありがとうございました。

 次の最後のテーマに移りたいと思います。きょうの最後は浦委員からご発表いただきたいと思います。浦委員はこの基盤ツールの研究代表者にもなっていらっしゃいます。資料は1412ですね。課題は「コバルトリッチクラストの厚さの高精度計測技術の開発」というのがテーマです。では浦先生、お願いします。

【浦委員】  浦でございます。今までのお話は熱水性鉱床だったんですけれども、私どもはコバルトリッチクラストの厚さを非接触で、高精度ではかれるツール、センサーを開発するということが目的でございます。

 きょうはそれの中間報告でございまして、当初予定していたものは全体的な観測のイメージとセンサーですが、なぜ全体的な観測イメージができてくるかというと、広域観測をして、コバルトリッチクラストが広がっているわけですけれども、その厚さの分布はどうなっているかということをはかれるような道具、センサーをつくりたい、つくらなければいけない。そのときにそのセンサーはどういうところに乗せるんだろうかと。その乗せたものが例えば大きな有人潜水船であれば、それこそドラム缶ぐらいのものは乗せられるけれども、小さいものだったら、先ほどの話じゃないけれども、コーヒーのペットボトル程度にならなければいけないという成約条件もいろいろあるわけです。

 そこのところを見きわめないで、センサーを開発するわけにはいかないので、我々としてはここに書いてあるようなボットムスキマーという小型のものを海底から50cmぐらいのところを走らせて、そこに非接触で音響的に厚さをはかる道具を乗せてはかりましょうということを目指していたわけです。

 そのとき、いろいろ知らなくちゃならないことは、果たしてコバルトリッチクラストの音響特性が一体どうなんだろうか。それから、コバルトリッチクラストだけではなくて、母岩が関係しますので、その母岩が一体どうなっているんだろうか。あるいは表面のでこぼこはどうなっているんだろうか。そういったいろいろな自然環境の状況を考えないでセンサーを開発するわけにはいかない。

 そういったところをきちんと詰めていって、どういうものが可能性があるんだということを当初考えていて、このような1つのやり方で、なぜならば、この小さなボットムスキマーを海底のそばに走らせるのは、非常に危険です。なぜならば、すぐぶつかってしまうというわけですが、その50cmぐらいですね。

 私どもの理解では、コバルトリッチクラストと熱水性鉱床とは違っていて、チムニーはコバルトリッチクラストにはありませんから、わりあいに平だと。このわりあいというのが危険なんですが、全然工学的ではなくて、わりあいに平であるという理解ですね。そうすると50cmぐらいのところをすっと、何かmsecのオーダーで走ってもいけるんじゃないかと考えているわけです。ただし、それだと苦しいので、潜行の大型AUVがいて、おまえの前はこうなっているんだというスカウトがいないと、これは到底無理と。ただただぶつかるだけで、すぐ壊れてしまうというようなので。

 このような全体的なシステムを考えていて、大型のAUV5mぐらいのところを走って、そことどうコネクションするかというと、曳航して、ケーブルでつなげていくのがいいのかなというように考えていたわけです。

 いろいろそれで研究を進めていくうちに、なかなかこのイメージが実は苦しいということがわかってきます。もちろん、最初から苦しいと思っていたんですけれども、現在考えているところは、この50cmをさらに低くして、20cmにしないと、つまりセンサーの表面、音響的なセンサーの表面をコバルトリッチクラストの表面から20cmぐらいのところに位置をしないと、ちょっと音響的には二、三年のうちにはかれないのではないかと。5年後はちょっと別ですが。

 それからAUVとこのケーブルつきで引っ張っていくのは、私はケーブルがもともとは嫌いなんですが、ケーブルなしでも考えていたんですけれども、当面はケーブルつきでやったほうがやりやすいのかなと思っていたんですが、やはりケーブルで曳航させると、全体的なシステムの設計で非常に苦しいなと。これはもうアコースティックスで、音響的なコネクションを持って仮想的な曳航。つまりケーブルはないんだけれども、音響的につながっているというようなことで、AUVに大型AUVのほうとコネクションを持たせるということを考えています。

 なぜ大型AUVとコネクションを持たせるかというと、小型のボットムスキマーというものはどうしても小さくつくらなければいけない。近くを走って運動性能をよくして、かつ機動性をよくするために小さくしなければいけないので、あまりいろいろなものを乗せられないので、そういう意味では親がついていないと苦しいというトータルセンスでございます。

 それで、こうなると仮想曳航をしていくと、5mのところじゃなくてもうちょっと離れていて、50mぐらいのところを離れていてもいいかなと。そうすると、大型AUVのほうは非常に現実性が増してきまして、ボットムスキマーも行けているかなと思います。

 そういうような全体的な観測システムですが、重要なのは、今、コバルトリッチクラストの表面から20cmのところで、果たしてコバルトリッチクラストの厚さが10cm20cmと言われているものがはかれるんだろうかというのが一番のキーなわけです。それができなければ、運んでいくボットムスキマーにはないわけです。今まで金属事業団が20年ぐらい前にやっているんですが、我々が要求するようなデータはなかなか出てきていません。

 これは今の概念図を少し変えて、20cmに近づけるにはこうすればいいというんですが、きょうの主たるテーマはこれではございませんで、センサーがどうなっているかということの今までのデータと、こういうものでやればいけるのではないかというようなことが出てきましたので、それをご紹介するということです。全体的な研究体制は私、それから浅田先生のところを中心にやっていって、それから工学系の玉木先生もメンバーに入っています。

 研究の全体的な計画、3年後にAUVとボットムスキマーが出かけていって、コバルトリッチクラストの広域観測をするということなんですが、まず最初にはセンサー開発、それからそれを乗せるボットムスキマーというものが一体どういうものであるかということを概念設計をするというわけです。

 実際にはいろいろの丸の1番目の項目は、音響特性をはかって、要するにコバルトリッチクラストを開発するためには、どういうようなものをはかればいいのか。そのための音響特性をいろいろ検討しているわけです。

 それから、そのためのトランスデューサーの開発。それからそれのアレイの設計をするということです。特性がわかれば、それに対してどういうものをつくればいいかということがわかります。それを乗せるボットムスキマーですね。

 それから具体的には今言った、かなりなだらかだというので、かなりなだらかの「かなり」というのは何かというのをちゃんと調べなければいけないので、これはことしの2月のきょうの委員の浦辺先生の航海がございますので、そこに一緒に出かけていって、そういったいいかげんなことではなくて、きちんとでこぼこはこうなっているとか、いろいろな場合があるんですが、そういったことを調べようということを装置を用意して準備しています。

 まずその音響特性の計測なんですが、重要なのは周波数をどうするかとか、いろいろな議論があります。減衰特性がどうだとか、音響インピーダンスもどうなっているかとかということが必要です。我々は当初は、大体頭の中でいろいろ考えられることがございまして、10cmとか15cmぐらいのものをはかるときには、例えば1MHzぐらいの発信をしないと苦しいのではないかということがあります。

 それはわかっているわけなんですが、ただし、また別な問題で、後で申しますが、コバルトリッチクラストの中の減衰が非常に大きい。そうすると、そんなに高い周波数のものが反射して返ってこないんですね、その境界層から。そうすると、1MHzのことを出しても、それは何も返ってこないよと。その表面からは反射しますが、裏側から反射してこないわけです。それが一体どの程度のものかというのを見きわめをつけないとだめなので、ここでは100kから1MHzまでの専用のプローブをまずつくりまして、それぞれの周波数において、クラストの音響特性というものを調べました。

 ただし、ここもまた問題なんですが、そのサンプルとなる材料、クラストですけれども、これはJOGMECさんからいただいているんですが、昔とってきたものをいただいているので、それが海の中にin situであったそのままであるというわけではないんですね。そこがちょっと問題なんです。でも、とりあえずは手に入るものはそれしかないので、来年、再来年に装置ができたら、in situでテストをしてということは考えられますが、今のところはやれることはそこまでです。

 これは音速を書いたものなんですが、周波数ごとのクラストと母岩との、母岩というものはそのクラストにくっついていただいているサンプルの母岩を切り出してはかっているものですが、大体200kHzから1MHzまでの周波数で、この上のほうの3つの線が母岩です。下のほうの5つの線がコバルトリッチクラストのクラストそのものなんですが、ここで見ていただくと、音速的にはかなり差があるという、この違いがある。つまり音響インピーダンスとして差が明確ではないんですが、若干の差はあるなと。そうすると、この差を利用して、いろいろできるというめどが立つ。これは差がないとだめなんですが、そういうことがわかりました。

 一番重要なのは左の下の図なんですが、斜めに音波を当てて、下から反射して返ってきて、表面反射と、それから底面の反射を調べて、その厚さをはかるというのがもちろん骨子なんですけれども、このときに表面反射はわかりやすいんですが、反射して返ってくるのが今度減衰しますから、どの程度減衰するんだろうと。これを理解しなければいけません。それはまた後で説明します。

 それをはかるために、いろいろテストをしていて、上の図は1.4MHzのチャープ信号を出して、上は発信したものですが、それから下は透過してきたものの信号です。これを見るとよくわかるように、要するに1MHzぐらいのものはほとんど透過してこない。減衰してしまってですね。ということで、周波数が低い場合、例えば100kHzぐらいのものは、その中でその周波数成分だけが残って透過してきます。そうすると、1MHzを受信していたのでは厚さははかれないということがわかります。

 これをその上に書いたものがこれなんですが、これは得られた特性を計算にまた乗せて、どのくらい減衰するかということで、この色が書いてある各線はコバルトリッチクラストの厚さが、上から10mm20mm50mmの厚さがあったときに、表面反射と裏面の反射の強度差がどれだけあるかということです。1MHzだと1MHz50mmのものがあれば、140dB差がある。つまり、140dBのものを表面反射は140dB高いわけですから、その反射しているものは140dB下なんですね。それをわからなくちゃいけないということはできるわけがない。

 そうすると、それで左側を見ると、200kHzだと、そこが何とか60dBぐらいになります。この60dBのものならば、何とか行けるのではないかということを考えるわけですね。実際に海で、これはもう理想的な実験、研究室の中の理想的な状況でやっているんですが、実際の場合はなかなかこれはそのように思ったようにはならない。母岩もいろいろありますでしょうから、反射も違ってくるだろうというようになるので、1発ボーンとやってすぐわかるわけにはいかない。そうすると、後でこれをつくったときに、1カ所やったときに、そこのところを横方向にセンサーを、トランスデューサーをスキャン、移動させて、同じところを場所を変えて攻めていかないと、なかなか厚さがほんのりと見てこないなというようなことがわかってくるわけです。

 ここで申し上げたいのは1MHzを聞いていてもだめなので、200kHzを聞かなくちゃいけないということになります。そこでどういうことをするかということですが、これはもともと大体そういうアイデアがあったわけなんですけれども、左から順番に行くんですが、900kHz1MHz2周波を同時に出します。それでその出したものをビームフォーカッシングをして、コバルトリッチクラストの表面をたたきます。そうすると、そこからもちろん900kHz1MHzが返ってくるわけですが、その中にこの音が入っていって、反射して返ってきますが、これはもうその周波数のものはなくなっている。表面でできた今の9001MHzを出しますと、100kHzのものが出てくるわけなんですけれども、それを今度聞いてやると。そうすると、そこの時間差からわかるんじゃないか。

 ただし、先ほど申しました50mmぐらいの厚さのものでも60dBぐらい違ってくるというようなことがあります。それからまた、その60dBというのは非常に大きくて、サイドローブやなんかが、トランスデューサーがあると、そっち側も聞こえてきますから、それもどうするんだろうかというノイズの問題もあります。ですから、簡単にそういったものはできないんですけれども、できないからこそチャレンジングでおもしろいところなんですが、そういうトランスデューサーをつくっていかなければいけない。観測システムですね。

 今、考えているのは、このような二層構造のパラメトリックのフォーカスプローブというものをデザインしました。現在、これは発注していて、まだこれで計測しているわけじゃないんですが、年度末にはできて、これでとりあえずは実験室内の観測をするんですけれども、900kHz1MHzのリング状のものの発信機を交互に、そこに書いてあるように直径100φのもののトランスデューサーのアレイをつくって、これで20cm先のところの表面にビームをビュンと当てて、そこから100kHzが出て、それが反射しているのを聞くと。聞くのは今のところ、ここでは裏側にこの1つのトランスデューサーになっているんですが、実際は最初はそうはしないので、離れたところに置くわけですけれども、100kHzの素子を置いて、それを観測するというものをやるというので、これを今のところデザインしました。

 今年度中は、これは十分実験ができないので、来年度、これを使ってどのくらいのことができるか。それから、サイドローブやなんかをいかに減らしていくかとかいう研究をしなければいけないんですが、この方式でやれば、海底の10cmなり何なりの厚さのものが非接触でおぼろげに見えてくるのではないかと。

 そのときいろいろ、ただ1個のトランスデューサーじゃなくて、ボットムスキマーにそれを乗せていくんですけれども、ボットムスキマーのところで、ピンピンピンと、このようにピングを打ってやるのでは、どうも多分、データの数が1ピングに1個しかとれませんから、そうじゃなくて、少しずつ位置をずらしてピングを打っていって、狭い範囲のところの板厚というんですか、コバルトリッチクラスト厚をはかることによって、この底のところがおぼろげに見えてくるということを期待しているわけです。

 そのためには、ピューッと走っていくのは今のところ苦しいので、とりあえずはボットムスキマーは一たん海底に着底して、シュッと言い方が変なんですが、そのトランスデューサーを動かして、ピングをピピピッと出して、終わったら、また次のところへピョンコピョンコとはねていくと。そういうようなやり方でやらないと、まずは苦しいかなというわけです。

 実際にこれも現場ではからなきゃいけないというか、母岩の問題とか、それからほんとうにそれではかったものが正しい厚さだろうかというのも実験室レベルではだめですから、ROVを使ってちゃんとそこを掘ってみて、この装置はこうだと言ったらば、こうなっていますねというグラントゥルースが必要なわけですね。これはJAMSTECの、実際来年の7月の深海研究に応募すれば、再来年にできるから、3年目にそれができるかなというところですが、それはまたトランスデューサーももちろん実験室の中で発展させてやっていこうというように考えているところでございます。具体的にはトランスデューサーのイメージも出てきて、ボットムスキマーのイメージも出てきたかなということです。

 そのための今後の準備としまして、先ほどちょっと申しました、浦辺先生の航海が28日から224日まで、サイパン発で横須賀に入る「なつしま」で拓洋第五海山に行くことになっておりまして、そこにおいて、今みたいなこと、ビークのオペレーション、それから計測が現実的なものであろうかということを考えるために、ハイパードルフィンが行きますから、そこで海底面の平坦度を具体的にはかる。これはmmオーダーで海底面のでこぼこをかなり広いところをはかりたいと。

 それから着底したときに、流れがあるとボットムスキマーはぐらぐらします。これはあまりよくないので、どの程度流れがあるんだろうか。それを調べておかないと、スタビライズするための設計ができませんから、そういったことを調べようと。それから平頂海山の上ならばほとんど水平面なんでしょうけれども、斜面も調べなくちゃいけない。そうすると、その斜面が一体どういうような形になっているのか。テラスみたいなところがあったりするというようには聞いているんですけれども、そういったところの全体的な細かい構造を調べるような観測をしてこようと思っています。

 以上でございます。

【今脇主査】  どうもありがとうございました。つられて聞いている間に時間がどんどんたっているのを気がつきませんでした。

 最初のほうにボットムスキマー、数msecでダーッと走るという話があって、何かそんなに急ぐ必要があるのかと思ったんですけれども、このコバルトリッチクラスト、ここら辺にあるというのはわかっていて、あとその厚さを正確にはかるというのが目的ですよね。

【浦委員】  はい。

【今脇主査】  何かそんなに広い範囲をしゃかりきで走り回るというほど急いでやらなくてもよい。

【浦委員】  いや、しゃかりきに走り回りたいと思っているんです。なぜならば、例えば熱水鉱床だったら1kmぐらいのところの範囲ですけれども、コバルトリッチクラストはきっと何十kmというオーダーで広がっているわけですね。そこの全体像を見ていくためには、広いところをいろいろどのくらいのポイントで観測するかなんですけれども、ある程度広いエリアをカバーしなければいけない。

【今脇主査】  広く分布しているところがあるわけですね。

【浦委員】  そうですね。ですから、そのために狭いところだったら、ROVでやればいいという考え方もあるんですけれども、そうじゃなくてAUVを使ってやっていくというのは、広いところをターゲットとしているということです。

【今脇主査】  最後に着底してというのは、あれはあまりおもしろくないなと思ったんですけれども、20cmをだーっと行くのがもっとおもしろいと思ったんですけれども、着底してはかるときは浮き上がるわけ。着底したままではかるんですか。

【浦委員】  着底したままではかります。

【今脇主査】  じゃ、もう表面に乗っているわけですね。クラストは露出しているんですね。

【浦委員】  そうです。

【今脇主査】  じゃ、クラストの底のほうの反射音だけをはかると。

【浦委員】  そうです。若干残念なんですけれども、でも最初の段階ではこれしかしようがないから、最初から1m20cmをビューッと行くのはちょっと工学的なバリアが高いので、まずはこれでトランスデューサーとして行けると。

 もう一つ、次のステップとして、ダイナミックフォーカッシングだとか、いろいろテクノロジーを使ってビュッと行けるようにするんですが、まずはきちんとこれのトランスデューサーではかれるということを目指したいと思います。

【今脇主査】  カエルみたいなものですね。

【浦委員】  カエルみたいです。ハンミョウでもいいですけど。

【今脇主査】  ご質問ありましたら、お願いします。どうぞ。

【平委員】  JOGMECのとった実際のサンプルで、反射は見られたんですか。そうじゃなくて、ただ今、音響インピーダンスがこのぐらいありますねというのがやれただけで、実際の反射はまだ見えていないんですよね。

【浦委員】  まだ見えていません。計算と、それからピースの減衰からやっているんですが。

【平委員】  こうなるであろうというわけですね。

【浦委員】  はい。現在使っているトランスデューサーのサイドローブもわりと強いので、そこから直接、要するに薄いものですから、パルスが来たときに、その次に反射が来るのはとても時間が短いですね。ですから、残響があったり、サイドローブがあると、そこの中に隠れてしまうわけです。それを今とるためにいろいろ努力をしています。

【平委員】  ちょっとでっかいサンプルってないんですね、このぐらい。50cm四方みたいな。

【浦委員】  私どもがいただいているのは30cm角ぐらいのものをいただいているんですけどね。

【平委員】  そうですか。それのサイドローブは出ますね。

【浦委員】  ええ、トランスデューサーからのサイドローブはきついんですよ。何せ60dBカバーしなければいけない。なかなか大きいんですが。

【今脇主査】  どうぞ。

【増田委員】  コバルトリッチクラストも海底面に露出している場合もあるんですけど、堆積物が厚い場合もありますよね。

【浦委員】  はい、そうですね。

【増田委員】  その場合も対応できるというように考えていいんでしょうか。

【浦委員】  その泥の厚さが、泥の音響インピーダンスの問題なんですけれども、今、20cmぐらいの厚さがあった泥のところを超えて進む今のシステムが、ビームフォーカシングしていてやれるかどうかというものにかかってくるわけですね。ですから、それも泥の音響インピーダンスが、密度が薄い泥ならば行けるのではないかなとは思っています。ちょっとやってみないとわからないと思います。

【今脇主査】  ほかにご質問はありますでしょうか。どうですか。どうぞ、浦辺先生。

【浦辺委員】  私が何かいろいろと言うのはまずいんですけれども、なかなか非常に難しいことかなと。やっぱり平先生の話があったような反射面というのは、一応前の発表もこの発表もそうなんですが、金属鉱業事業団のほうで一応やったことがある技術で、なかなか両方ともうまくいかなかった。それで設置型で測定したわけですが、なかなか反射面が出ないという難しさがあるので、ただ音波だけではなくて、何かもう少しいろいろな別の情報をとるという可能性もあるかなと思っています。

【浦委員】  そうですね。それもそうです。そのとおりだと思います。いろいろなセンサーを用意して、センサーフュージョン的な考え方にすると。でも今までのJGMECさんというか、金属事業団がやっていたのと違ったのは、要するにビームフォーカッシングして、小さいところに当てているんですね。小さいところに当てるので、この広い、太いビームをボーンとやるのではなくて、絞って点で当てていく。だから、そこが今までやられていたことと全然違うわけです。それで、出しているものは1Mだけれども、聞くものは100kというところも、そういう物の考え方も今まで彼らがやっていたこととは全然違います。ですから、それがうまくできるかどうかにかかっているわけですね。ですから、絞り込み、ビームを小さくポイントに当てて絞り込むということは非常に重要なんです。

【今脇主査】  ありがとうございました。

 ほかになければ、終わりたいと思いますが、よろしいですか。どうも浦先生、ありがとうございました。最後に注文。概念図、一番大事な図がこの資料になかったので、残念でした。

【浦委員】  そうですか。

【今脇主査】  あれが一番大事な図でした。次回からお願いします。

【浦委員】  はい。

【今脇主査】  それでは、この議題1の最後のほうですけれども、12月に開催しました第1回の委員会では本年度末をめどに取りまとめる中間取りまとめに関する審議も並行して進めていただくこととしました。本日は事務局において、この中間取りまとめの目次案を作成していただきましたので、事務局から説明をお願いします。

【嶋崎海洋地球課長補佐】  それでは資料15をごらんいただければと思います。中間取りまとめということで、まだヒアリング等も始まったばかりの感も否めないわけではありますけれども、年度末までにはおまとめいただくということで、これまでの議論を踏まえまして、今までの情報で、大体こういうイメージをもとにたたき台としてご議論いただければということで、素案ということでまとめさせていただきました。

 簡単に中身を紹介させていただきますと、1ポツ、2ポツで、検討の背景と海底熱水鉱床の探査に係る現状と課題ということで、海洋基本法、海洋基本計画ですとか、それに基づく海洋鉱物資源の開発計画との関係、また国内外の探査の現状、技術的な課題というのをレビューした後、まさに今、この検討委員会で議論をしていただいている、この3ポツの部分、海底熱水鉱床の探査に今後必要となる条件ということで、アからオということで項目出しをしてございます。1つは賦存地域を絞り込む技術。また海底熱水鉱床を特定する技術、前回の議論の中で、生きているアクティブな部分の探査、またその活動がもう終了したものの探査というのも重要ではないか等、こういったものもありましたので、こういった分類に従って、技術的な課題を抽出していってはどうか。

 あるいはその広がりと厚さを測定する技術という項目。またきょうもるるご議論がありましたけれども、こういったセンサー等を積んで、実際に探査を行う探査機の技術、こちらに求められる要件というのも幾つかあるとございますので、こういったものを取りまとめていくというような形があろうかと思います。

 またこの親分科会のほうで、こういった技術課題に加えて、今後いろいろな分野への応用ですとか、人材育成、また今後の研究開発において留意すべき点等、こういったことについても盛り込むべきというご議論がありましたので、できれば中間報告、ちょっと欲張っている感じもございますけれども、できる限りで、こういった内容も取り入れていけばいいのではないかということで、まとめた素案でございます。お時間の許す限りご議論いただければと思います。

【今脇主査】  どうもありがとうございました。

 それでは、この目次案、項目立てですね。こんな項目もつけ加えたほうがいいんじゃないかとか、ここはこう書いてあるとか、ご自由にご意見、ご質問をお願いしたいと思います。

 これ、最初にサマリーをつくるんですよね。このエグゼクティブサマリーというんですか、英語で書く場合は言いますけれども、これ全部読まないと、中に何が書いてあるかわからないというのは、ちょっと忙しい昨今無理ですね。

【嶋崎海洋地球課長補佐】  やれると思います。

【今脇主査】  サマリーをぜひ最初につけていただきたい。

【平委員】  この委員会が始まったときに、海洋エネルギー鉱物資源計画で、インプットというようなことが少し背景にあって、それに対して少し学術的な分野からもインプットしていきましょうというのが大筋としてあったと思うんですが、この報告書の中、それも入れつつ、基盤ツールで代表されるような、文科省がやっている3ですね。そこのところを重点的に取り上げて、そこの位置づけ、あまり技術的に細かい話をここでガチャガチャと言うことではないだろうとは思うんですけれども、それの位置づけを非常にはっきりさせて、その後につなげるような分野、領域というのも4個でフォローするということなので、もちろん周辺エネルギー基本計画ということを見ながらですけれども、そのバックグラウンドを持ちつつ、中心はあくまでも3というところの位置づけ、あるいはそれでいいというものを明瞭にしようという考え方でよろしいということですね。

【嶋崎海洋地球課長補佐】  はい、おっしゃるとおりだと思います。

【今脇主査】  それの関連で、ちょっと忘れてしまったんですけど、この議題は海底鉱物資源という議題でやっていて、この書いてあるのは23で、海底熱水鉱床に結構限定されていますけれども、先ほどの浦さんの話のコバルトリッチクラストとか、それなんかはどこかに出るものですか。

【嶋崎海洋地球課長補佐】  そういう意味で、海洋鉱物資源という表記のほうが適切かもしれません。そういったコメントもちょっとこれは熱水鉱床をスペシフィックに書き過ぎているかなというのは、ご指摘のとおりだと思います。

【今脇主査】  タイトル自身がちょっと狭いような気がしますね。

【嶋崎海洋地球課長補佐】  おっしゃるとおりですね。ちょっと狭く書き過ぎたものになってございます。

【今脇主査】  ほかにいかがでございましょうか。どうぞ。

【寺島委員】  今のお話のやっぱり鉱物資源というところからスタートして、それで熱水鉱床というところに入っていかないと、ちょっと何か少し違和感があるなというのは、先ほどの議論に同感であります。

 それから、もう一点は、多分この4のところに入ってくるのかなと思いますが、特に熱水鉱床ということになると、いわゆる鉱物資源の話だけでなくて、熱水鉱床のいろいろな持っているメカニズムというのか、あるいは環境というのか、生態系というのか、そういったところに対しての何かいろいろ未知の分野があるというように聞いていますので、その辺のところも、主体が鉱物資源の問題であるということは十分承知の上ですが、多少何かそういうところに対してのつながりというか、総合的に見るという意味でのつながりをつけておいていただいたらどうだろうかと。特にここでいろいろなことを調べたそのデータというのは、それ以外のことにも非常に有益なデータではないかなと思います。

【今脇主査】  反映していただきたいと思います。浦辺先生。

【浦辺委員】  この熱水鉱床も、先週少し話させていただいたように、20年間のいろいろな可能性の検討の中から、ある程度実像が見えてきたものかなと思うんですね。ただ、まだコバルトリッチクラストとか、わかっていないこともあるし、まだ未知の資源というのはこういうものがあるはずだという鉱床のタイプで見つかっていないものも幾つかあります。

 それで、やはりある程度海洋全体の調査みたいなものの中で、こういうものが将来的なもう少し先を見ると、こういうものを見つけるためにもう少しいろいろなことも知って、それでその中で、コバルトリッチクラストとか、熱水鉱床だとかいろいろなものが位置づけられて、そして今までのいろいろなツールも含めた形で、この3番のツールが出てくると、何か少し将来に向けて、あまり今すぐそこというのではないようなイメージが出てくるかなと思いました。

【今脇主査】  そうですね。もっと広がりを持った中で、この海底熱水鉱床を取り扱うということだと思います。

 ほかに。増田委員。

【増田委員】  私も今、浦辺先生のご意見に賛成なんですけれども、それともう一つ探査というと、どこまでの探査を考えているのかというのが、いわゆる鉱山開発になると、ボーリングした品位までを考えてやるのか、あるいはもうちょっと前半というんですか、科学技術全般の広い目で見たところを中心にするのか、大分書きぶりというか、違ってくるんじゃないかと思うんですけど。

【今脇主査】  今までの流れだと、賦存量の調査を何か効率的にやるというのが一番のターゲットだったので、何かそれ以上には踏み込まないほうが、我々の委員会としては普通、適当じゃないかと私は思いますけどね。

 はい、課長、どうですか。

【生川海洋地球課長】  おっしゃるとおりだと思います。最終的にはいずれにしてもボーリングをやられるということだと思うんですが、その前の段階までの探査ということが主にターゲットになるのかなと理解しています。

【今脇主査】  どうぞ、鈴木さん。

【鈴木委員】  そこら辺のことは、この1ポツの(ア)の鉱物資源計画の策定からの流れの中で、この委員会は何をやろうというのは決まっていますよね。通産と文科省との仕分けの問題、そういうことをここできちっと多分書き込まれるでしょうから、それで絞り込みは足りるんじゃないかと思いますけどね。

 それともう一点は1ポツの(ウ)、民間における検討状況という中に、「開発に向けた国としての体制の整備」という項目が入っているんだけれども、これはちょっとおかしいんじゃないかと。

【今脇主査】  民間というのと、国というのとちょっと……。

【鈴木委員】  これは多分(ア)の中に入ってくるようなことをイメージされているのかなと思うんですけれども。

【嶋崎海洋地球課長補佐】  そうですね。ちょっとそごがあるかなという……。

【今脇主査】  ちょっと場所が悪いんですね。

【嶋崎海洋地球課長補佐】  形でございます。すみません。

【今脇主査】  わかりました。

【浦委員】  今のところはこういうセンスじゃないかと、私は思うんですけれども、開発というのは民間が開発するのであって、民間が開発する場合において、国としてどういうバックデータを用意しておかなければならないかというような意味じゃないんでしょうか。

【鈴木委員】  そういう意味合いならですね。

【浦委員】  だから、民間がやらないこともたくさん、やれないことというか、リスクが高過ぎてやれないこともあるのを国がきちんと整備しますよというニュアンスだと理解していますけど、どうでしょうかね。

【鈴木委員】  民のできないことは国がやるという精神がここに入ってくるというのは、それは民間の開発をバックアップする、浦さんがおっしゃるようなことなら、当然そういう意味合いで書いていただければいいと思いますね。

【嶋崎海洋地球課長補佐】  おそらく1ポツ、もちろん初めに鈴木委員ご指摘のように、委員会の検討の目的とか、そういったことも当然入ってきた上で、これまでの検討の、開発の背景ということですので、国の体制でどういうレギュレーションがあったり、どういう方針があったりした中で、具体的に民間でこういう活動があったとか、オーバービューができればいいと思っておりましたので、ちょっとそこは今、こういうことを検討しなければならない背景として、国及び民間でどういう活動があったかということが端的にわかるような形で、まとめていきたいと思います。ちょっと項目はまた整理をして、後日諮りたいと思います。

【今脇主査】  ありがとうございます。

【寺島委員】  ちょっと関連して。

【今脇主査】  ちょっとどちらが……。寺島委員。

【寺島委員】  大した話じゃないのかなと思いますけど。

【今脇主査】  関連ですか、それとも別……。

【寺島委員】  はい、関連で。この民間における検討状況と言いながら、そこに国の話が出てくるのはちょっと唐突だなと、私も思いました。ただ、多分というか、推測が間違っているかもしれませんが、民間において国の体制をこうしてほしいなというような……。

【今脇主査】  要望みたいなものですね。

【寺島委員】  検討がされているのであれば、それは触れておいてもいいのかなという、ちょっとそんな感想を持ちました。

【今脇主査】  浦辺先生。

【浦辺委員】  すみません、今お手元に勉強会の青い表紙のものがあるかと思うんですが、検討の中でやはりちょっと熱水鉱床のことはここにもよく書いてあります。コバルトリッチクラストの場合も、海山における生態系の調査というのは、今、国連の中でも非常に強くトピックとして挙がっているところで、どういうことをやるにしても、そのあれが重要なんですが、そのやり方というのはまるでわかっていない。しかもここの勉強会の結論としては、何か開発をする人が行司もやり、力士もやりというのは不適切ではないかというようなことも指摘してあります。そういうようなこともあって、この報告書の中に、やはり海洋環境、それから生態系、そういうようなものに対するあり方というか、そういうものも少し入れておかないと、バランスを欠くかなというような気がしました。

【今脇主査】  ありがとうございました。宮崎さん。

【宮崎委員】  民間における検討状況で、一言加えさせていただきます。私たち海洋工学センターでは、やはり熱水なり海底の深海の鉱物資源に対して着目しているところで、実は海産研のほうに委託調査を出して、特に民間のほうがどのようなセンサーの開発、あるいは深海の熱水鉱床、あるいは鉱物資源に対してどのようなセンサーがあるかと。それは国内及び国外のセンサーとか、手法とかなるべく調べるようにお願いしております。それをなるべく早く、少しでもまとめて、こういう機会にこういうところに少しでも出せるように努力していきたいと思いますので、それは項目はどこに入れるかは別として、そういう提供が可能かと思いますが、完全なものではないですけれども、できるかと思っております。

【今脇主査】  ぜひ入力をよろしくお願いいたします。

 ほかにはどうでしょうか。それではよろしければ、ちょっと時間も超えかかっていますので、この目次案については、この辺にしたいと思います。

 

(2)その他

【今脇主査】  それでは、今後の予定について事務局から説明をお願いします。

【嶋崎海洋地球課長補佐】  ありがとうございました。次回の委員会は129日木曜日を予定してございます。次回は民間を中心ということもありまして、メタル経済研究所の西川さん、フグロジャパンの山野さん、あと産総研の飯笹さん等から話をお伺いする予定にしてございますので、またよろしくお願いいたします。

【今脇主査】  ありがとうございました。

 それでは、きょうの委員会はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。

 

―― 了 ――

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