別紙 |
研究の概要
1.テーマ
ファン・デ・フーカ海嶺東翼部の玄武岩質海洋地殻の水理地質学的構造
2.概要
一般に、中央海嶺においては、割れ目中に進入してきた海水がマグマの熱により熱せられ、地殻中を循環することが知られており、300を越える熱水が噴出するブラック・スモーカーなどの海底熱水活動が見られる。また、中央海嶺の各部を見てみると、中央部よりも幅数百キロメートルに及ぶ翼部の方が、放出される熱の量が3倍程度大きく、さらに物質の流量は10倍程度多いことが知られているが、この海嶺翼部の熱水循環については、実態がほとんど分かっていない。
ファン・デ・フーカ海嶺(Juan de Fuca Ridge)は、太平洋北東部、バンクーバー沖に発達する中央海嶺で、ここで太平洋の海洋地殻が生成され、年間速度4程度で拡大している。この海域では海底の玄武岩地殻の高まりから数十度の熱水が湧出していることが知られており、以前の掘削で40〜70
の熱水が玄武岩地殻の中を通過していることが知られていた。そこで再度、この海域(別添図1参照)において、水深約2,600
の海底下を最大で約860
掘削し、複数の掘削孔内に地下水の流量を観測する装置(コーク;別添図2参照)をとりつけて、海洋地殻内の熱水の大規模な循環と熱水中に生息が予想される地殻内微生物を調べる。
図中のFR(First Ridge)は海嶺の東翼に最初に見られる基盤の高まりで、SR(Second Ridge)は2番目の基盤の高まり、DR(Deep Ridge)はより深い地点にある基盤の高まりを示す。今回の航海ではSR→FRの順で掘削が行われる予定。DRについては、将来の掘削候補地に挙げられている。
コーク(CORK)
コークとは海底下の地下水の流動を調べるため掘削孔に設置する長期観測装置で、オスモサンプラーと呼ばれる、浸透圧の差を利用して毛細管の中に熱水を吸い込む採水器が設置されている。この中に時系列で熱水を取り、熱水の化学組成がどのように変化するかを調べることができる。このオスモサンプラーは、数ヶ月後に無人潜水艇により回収される予定。
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