深海掘削委員会(第9回) 議事録

1.日時

平成18年12月19日(火曜日) 14時~16時

2.場所

三菱ビル 地下1階 M9会議室

3.議題

  1. 第8回深海掘削委員会以降のIODPに関する活動について
  2. 地球深部探査船「ちきゅう」の平成18年度運用状況報告
  3. IODPに関する広報活動について
  4. IODPに関する研究推進体制について
  5. その他

4.出席者

委員

 田中主査、森田主査代理、石田、佐藤、平(朝)、寺島、長谷川、堀、岡田、斎藤、末廣、鈴木、徳山、宮崎 各委員、平(啓)海洋開発分科会長

5.議事録

【田中主査】
 ただいまから、第9回の科学技術・学術審議会海洋開発分科会深海掘削委員会を開催させていただきます。本日は大変ご多忙中にもかかわらずご出席いただきまして、ありがとうございます。
 議事に入ります前に、事務局の文部科学省海洋地球課の宿利企画官よりご挨拶をいただきます。

【宿利企画官】
 皆様、お忙しいところ、本日は誠にありがとうございます。ただいまご紹介いただきました文部科学省海洋地球課の深海地球探査企画官をこの8月から担当しております宿利と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日、所用で出席できない近藤海洋地球課長に代わってご挨拶を申し上げます。深海掘削委員会は、平成15年に科学技術・学術審議会海洋開発分科会の下に設置されており、統合国際深海掘削計画(IODP)の推進に関する基本的な方針等について調査、審議をいただいております。昨年度には、深海地球ドリリング計画に関する中間評価のための小委員会を設置いただきまして、主査であります田中先生を中心に中間評価報告書をまとめていただきました。この報告書につきましては本年9月に科学技術・学術審議会の総会において、海洋開発分科会長の平先生から総会に報告していただきまして、ホームページ上で公表という手続きになってございます。
 この委員会は、前回から約8カ月ぶりに開催ということでございます。今回は、この間の動きについて、ご説明させていただきますが、IODP関連以外も含め大きな点だけ先に申し述べますと、まず、今年の3月に第3期科学技術基本計画が策定されてございます。この中の分野別推進戦略において、海洋地球観測探査システムが国家基幹技術として位置付けられております。この海洋地球観測探査システムは、衛星観測監視システム、次世代海洋探査技術、そしてデータ統合・解析システムという3つの要素から構成されており、これらを一体的に進めるということになっております。次世代海洋探査技術は、「ちきゅう」による世界最高の深海底ライザー掘削技術の開発も含んでおります。また、この「ちきゅう」のライザー掘削技術の開発については、今年の秋、総合科学技術会議によるS、A、B、Cの4段階の評価において、主たる部分である大深度ライザー掘削技術、孔内計測技術についてS評価をいただいております。
 それから、平成19年度の予算案の編成作業が大詰めを迎えております。引き続き、来年9月から予定しておりますIODPにおける「ちきゅう」の国際運用に必要な経費を確保できるよう努力をしているところでございます。
 IODP関係の活動については、詳細は後ほどご説明をいたしますが、参加国が拡大をしたり、「ちきゅう」が掘削試験を実施したりということがございます。
 今回の委員会では、今年の10月から来年9月までのIODP2007年度事業計画と「ちきゅう」の平成18年度運用状況報告を主な議題として皆様方からご意見を賜りたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

【田中主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは、事務局より資料の確認をお願いしたいと思います。

【宿利企画官】
 お手元に資料を重ねて置かせていただいております。一番上に議事次第がございまして、この中に資料一覧を記載しておりますが、その下から資料9-1が委員名簿です。9-2-1、9-2-2が前回の深海掘削委員会の議事概要と議事録の案です。その下に9-3-1第8回委員会以降のIODPに関する活動についてという2枚紙がございまして、次に9-3-2IODP2007年度年間事業計画の概要となっております。9-4と書いてあるのが文部科学省のプレスリリース発表資料で、プレスリリースが全部で4種類重ねております。あとは参考資料と書いておりまして、参考資料1がIODP年間事業計画の原文でございます。参考資料2は地球深部探査船「ちきゅう」の平成18年度運用状況報告でございます。それから、IODPに関する広報活動の資料が参考資料3で、参考資料4はJ-DESCの取組みについてです。以上でございます。

【田中主査】
 資料はよろしいでしょうか。
 それでは、まず、平成18年3月13日に行いました第8回深海掘削委員会の議事録及び議事概要の確認を行いたいと思います。これも事務局からお願いします。

【宿利企画官】
 本委員会の議事録、議事概要は、文部科学省ホームページで公開されることになっております。各委員の先生方には事前にご確認をお願いしており、今時点、ご意見はいただいてございません。

【田中主査】
 ありがとうございました。何かご意見等はございますか。
 できれば自分の発言に一度は目を通していただき、この会議後にお気づきの点がございましたら1週間以内、12月26日までに事務局へお寄せくださるようにお願いします。
 それでは本日の議題1ということになります。前回以降のIODP関連活動について、これは事務局よりご報告をお願いしたいと思います。

【宿利企画官】
 第8回の委員会以降の活動について、実施主体、事業の性格等の観点から大きく6項目に分類をして記載しております。
 最初にIODPフレームワークと書いておりますが、これは主導機関である文科省と米国国立科学財団(NSF)の動き、IODP参加国関係の動き等を記載しております。
 (1)18年3月に米国ソルトレークシティーでNSFと文科省との会合を開いております。前回委員会以降、本日までの間にNSFとの会合は全部で3回開いてございますが、それぞれの時点で、次年度計画の見通し、IODP参加国の拡大方策等について意見交換をしております。(2)4月にNSFで人事異動があり、米国の主席監理官が海洋科学課長ジュリー・D・モリス博士に交代をしております。(3)6月20日に、韓国が暫定アジアコンソーシアムの代表という形でIODPに参画をする覚書の調印がございました。韓国の担当機関は韓国地質資源研究院でございます。(4)7月には、IODP年間事業計画案等を議題として、IODPに参加している国や地域の代表者で意見交換をするIODP評議会が開催されました。この機会に併せ、ワシントンでNSF-MEXT会合を開催しております。この場では、2007年度の事業計画案等についての意見交換、インドの政府関係者との意見交換等を行っております。(5)9月22日に、本年10月からの2007年度事業計画を日米で承認しております。(6)10月から11月にかけまして、神奈川県小田原市でNSF-MEXT会合を開催しております。それから資料に記載されておりませんが、参加国の拡大については、11月に日豪科学技術協力合同委員会がオーストラリアのキャンベラで開催され、海洋地球課からも出席いたしましてIODPの紹介をしております。
 2.については、昨年12月の研究航海を最後に米国の科学掘削船ジョイデス・レゾリューションが改造のため航海を中断しており、研究航海は実施されておりません。この活動再開は来年秋以降の見込みとの情報が入っております。
 3.が科学諮問組織の動きです。(1)7月にワシントンで従来の科学計画・方針監理委員会を再編した科学諮問組織執行委員会の第1回会合が開かれました。2007年度の事業計画、初期科学計画の見直し、掘削計画育成の新たな仕組み等について議論が行われました。(2)8月下旬には、ノルウェーで科学計画委員会が開かれました。(3)11月には、小田原において、科学諮問組織執行委員会の第2回会合が開かれ、1回目に続いて初期科学計画の改訂等の議論が行われ、来年の12月までの改定を目指して準備を進めようという議論がありました。
 4.が中央管理組織、IODP国際計画管理法人(IODP-MI)の関係について記載しております。(1)4月にIODP-MIの理事会が開催され、先ほどの科学諮問組織の再編等の検討が行われてございます。(2)6月に運用委員会が開かれ、IODPの研究航海のスケジュールについて検討が行われております。(3)7月には、SEDISという掘削で得られた地質試料に関するデータをウェブ上でダウンロードできるようなポータルサイトを構築しようという計画の第1期開発について、IODP-MIから入札案内が提示され、手続きが行われているところです。(4)については初期科学計画の見直しを念頭にワークショップが4回開かれており、日本でも宮崎県で断層帯掘削に関するワークショップが開催されました。
 5.は海洋研究開発機構の関係についての記載で、(1)JAMSTECは四半期ごとに活動報告をIODP-MIに提出しております。また、IODPの年間事業計画についてIODP-MIと検討を行いました。(2)JAMSTECは研究航海、関連会議に日本の研究者が出席するための旅費の支援も行っております。(3)前回の委員会でもご報告いたしました長期孔内計測システムの開発については、3月にフィージビリティースタディーを受託して、9月にその成果をIODP-MIに提出しております。10月以降、引き続き、その実施に向けてIODP-MIからの受託の準備が進められているということでございます。
 それから、南海トラフ地震発生帯掘削計画の事前調査として、ハワイ大学と共同で高精度三次元地震探査が実施され、現在、解析中であるということでございます。
 (5)は、IODP以前の米国主導で行われていた深海掘削の地質試料について、再配分をするという計画で、高知コアセンターには、来年5月から西太平洋からインド洋までの海域で採取された過去のコアが搬入、管理されることになるということでございます。
 最後に日本地球掘削科学コンソーシアム(J-DESC)の動きです。現在計画されております「ちきゅう」と米国科学掘削船を用いた今後の掘削航海の乗船研究者の募集をしております。それから既に行われましたタヒチ沖における掘削など、4航海のポストクルーズ会議に出席する日本の研究者の参加支援をしております。また、6月、10月、11月に国内でJ-DESC、JAMSTEC共催、文科省後援で「IODP大学・科学館キャンペーン」を実施しており、平成18年度中では3月に名古屋大学で実施する計画があるということでございます。これ以外に、パネル展示、講演会といったことも実施しております。
 (4)は、東大海洋研とJAMSTEC東京事務所で、2回のIODP成果報告会として、既に実施された研究航海の概要について発表会が開催されております。また、J-DESCの取組みを紹介するJ-DESCニュースレター第1号を10月に発行しております。
 その他に、オーストラリアと韓国で開催されたIODPに関するシンポジウムに参加し、講演を行っております。
 以上が前回委員会以降の活動でございます。
 併せまして、資料3-2の2007年度年間事業計画について説明させていただきます。2007年度が始まる前にご説明した方がよりよかったかと思いますが、今年の10月から来年9月までの米国会計年度におけるIODPの計画、予定等が記載されております。この作成は、日米欧の掘削船運用機関(IO)からそれぞれの計画の提出を受けて、IODP-MIが作ります。毎年9月に翌年度(10月以降)の計画をNSF-MEXTに提出をしていただき、承認をするという手続となっております。
 資料3-2の1ページ目の下半分の構成というのは、参考資料1に年間事業計画の原文がございますが、これの目次構成と対応しております。(3)の2007年度研究航海については裏面に紹介させていただいておりますが、1つは特定任務掘削船を用いた西大西洋のニュージャージー沖における掘削航海、もう1つは「ちきゅう」がいよいよ来年9月から開始する南海トラフでの掘削航海の2つが実施予定とされてございます。
 以上でございます。

【田中主査】
 どうもありがとうございました。ただいまのご報告にご意見あるいはご質問がございましたら、お願いいたします。よろしいでしょうか。
 それでは、議題2に移らせていただきたいと思います。地球深部探査船「ちきゅう」の平成18年度運用状況報告ということで、先日、下北半島東方沖において実施されました「ちきゅう」の初めての本格的な掘削試験の内容、結果、採取した試料などについて、平委員よりお願いしたいと思います。

【平(朝)委員】
 それでは参考資料2を見ていただきたいと思います。私から概要をお話ししまして、個々のことについては田中企画調整室長及び佐賀運用管理室長に報告をしてもらいたいと思います。
 参考資料2の図2がわかりやすいと思うのですが、前回の委員会は3月で「ちきゅう」については保証工事、検査工事を行っておりました。その後、7月に自主運用というJAMSTECが主体となって船員を雇用して運航するという運用形態から、GODI社に運用を委託してからシードリル社に掘削関連の部分をさらに委託するという形態に変更し、本格的な運用委託体制ができました。これは2008年3月31日まで約2年間の契約ということとしております。その後、8月から10月末までの間、下北半島沖でライザー掘削試験を行い、併せてシステム総合試験を行いました。それから、契約上は来年7月31日までの間、海外掘削試験としてJAMSTECがシードリル社を通じてウッドサイドという会社から掘削事業を受託し、海外で掘削試験を行っております。今、「ちきゅう」はケニア沖におりまして、ライザーパイプを吊り下げて、BOP設置を行っている段階でございます。
 これまで、さまざまな試験をしてきたわけですが、ハイライトは下北半島東方沖と海外掘削試験だと思います。それらについて、田中から説明をします。

【田中CDEX企画調整室長】
 参考資料2-1でご説明させていただきます。下北半島東方沖掘削試験は8月から3カ月の間、実施しました。今回の試験の目的は5項目のシステム総合試験(SIT)を実施することでございました。その項目は表1に書いておりますが、BOP/ライザー降下・海底面設置、BOP緊急離脱試験、ケーシングパイプ設置とセメンティング、コア採取システムの検証、それにワイヤーラインシステム検証という5項目でございます。
 次ページを開きますと、カラーでこれからご説明いたします装置の写真を付けております。さらに次のページには、BOP、噴出防止装置と呼ばれるものが出てきます。これは海底面に設置し、その上にライザーパイプが繋がって「ちきゅう」と結ばれるもので、長さが約15メートル、幅が7メートルくらいの非常に大きなものです。重量は370t(トン)くらいになります。これを「ちきゅう」から降ろし、海底に設置して掘削をするものです。
 簡単にSITで行ったBOP/ライザー降下・海底面設置についてご説明いたしますと、掘削時にはこのBOPとライザーパイプを降下して海底面に設置するため、この実施試験を行いました。今回の掘削試験では多少機器の準備に時間がかかりましたが、特に大きな問題もなく設置作業を完了しました。この作業は、期せずして今回の試験中に2回実施することになりました。
 BOPの写真を見ていただきますと上下2段に分かれておりますが、荒天等の緊急事態が生じた場合には、上部BOPと下部BOPを切り離して、「ちきゅう」は避難することになっています。今回行いましたこの切離しに係る試験を緊急離脱試験と呼んでおります。これもスムーズに行うことができました。ただ、ここで技術的対応として記載しておりますのは、切り離す際に油圧系統のバルブ部品の一部に損傷が発見されました。この損傷状況については、部品の1つのばねが恐らく疲労破壊を起こしたのではないかと考えており、現在調査中でございます。損傷部品の交換後には問題なく作動しております。この緊急離脱試験についても2度実施することとなりまして、1回は試験として十分準備のうえ実施したのですが、2回目は低気圧が接近し、気象状況が限界に達したため切離しを行いました。
 ケーシングパイプ設置とセメンティングの試験については、36インチの鉄の管を海底に設置します。これは約60メートルあります。その上にBOPを設置する土台を作り、BOPを設置して、セメントで固定します。さらに、約500メートルの長さの20インチのケーシングパイプを設置し、それもセメントで固定します。こういった一連のケーシングとセメンティング技術の試験も2回検証いたしました。
 コア採取システム試験については、当初は3種類のコア採取を行なう予定でした。1つ目のHPCS、水圧式ピストンコアリングシステムは、非常に軟弱な地層のコアを採取するシステム、2つ目のESCSは軟弱からやや固い中間的な地層のコアを採取するシステムで、この2つについては完全に実施しました。RCBというもう少し硬い岩石も掘るコア採取システムについては、未実施となっております。これにつきましては、IODPの国際運用開始までに実施の予定ということになっております。
 ワイヤーラインシステム検証は、掘削した穴の中にさまざまなセンサーを入れて行う計測、ロギングと呼ぶのですが、これの実施に関する試験でございます。計測装置を繋げるワイヤーを掘削孔中に降ろして計測を実施できるか検証を行いました。
 SIT全体としては、RCBによるコア採取試験が残っているものの、他のコア採取システムの試験を含めて実施し、概ね所期の試験目的を達成いたしました。ただ、当初は、海底下2,200メートルくらいまで掘りつつSITを実施したいと考えていたのですが、実際は640メートルくらいまでの掘削となってしまいました。しかし、水深1,000メートルを越える海域において、日本が建造した掘削船がライザー掘削に必要な一連の作業を実施できたことは重要な成果と言えます。
 なお、試験行動中には、皆様の記憶にも新しいかと思いますけれども、10月6日に急速に発達した低気圧、いわゆる爆弾低気圧というものが、東北・北海道を襲いました。まさにあの真っただ中で「ちきゅう」は試験を行っておりました。平均風速で約30メートルを超えるなか、ずっとライザーパイプを接続したまま、定点保持をしていたのですが、風があまりに強くなり、制御できなくなったため、その時点でBOPの切離しを行いました。そのときにBOPが一部損傷してしまいまして、もう既に復旧しているのですが、復旧のための部品調達に約1カ月以上かかるということもあり、その状態でできる試験を実施した後、下北半島東方沖の掘削試験を終了いたしました。
 次のページに掘削試験中に発生した主な不具合及び損傷を取りまとめております。今回の行動はあくまで試験ですので、ある程度いろいろな不具合が生じるのは予期していたのですが、主なものとしては、1から6までのものがあります。1のパワースイベルは、次のページに写真が載っております。これはドリルパイプを回転させる心臓部で、若干の不具合が生じたのですが、これは部品交換後、良好な作動を確認してございます。
2のコアラインウィンチ、マットポンプ、パワースイベルの不具合は、全体を作動させた際に制御システムからノイズ信号が生じたというもので、その発生源をシステムから切り離し、良好な作動を確認しております。
 一番頭を痛めた不具合の1つはDPSと呼ばれる船位保持装置で、「ちきゅう」を6機のスラスターにより、風、波のなか一定位置に制御します。「ちきゅう」が掘削するときには直径約30メートルの範囲に船を保たなければいけないのですが、今回の試験においてDPSそのものは非常にいい性能を発揮し、基本的には5メートル以内で荒天の際も留まっていたということです。ただし、生じた不具合というのは、GPSなどの位置センサーの入力方法を変えたところ、ソフトウェアにバグが判明しました。これについては対策済みのソフトウェアに組みかえながら試験を実施しており、これも多少我々も予期していた部分でございます。
4のBOP及びライザーパイプについては先ほどご説明した緊急離脱時の故障でございます。5のカッティングス移送システムについてですが、通常の石油掘削では掘り屑を船の外に捨てるもしくは船の上に積んで陸に運ぶということをするのですが、このシステムは「ちきゅう」の掘削時には可能な限り掘り屑を船上で処理するというものです。今回の試験で掘削された地層が予想外に水分を多く含んでおり、掘り屑を処理システムに運ぶカッティングス移送システムがうまく掘り屑を運ぶことができないという不具合が生じました。通常「ちきゅう」はコアを採取しながらゆっくり掘るのですが、コアを採取せずに急いで掘り進んだ際、通常より多くの掘り屑が発生し、水分の問題に加えて処理能力が間に合わなくなってしまいました。この不具合については、現在、対応方針を決め、今年度中に対処することにしております。
 あと(3)の研究区画における運用準備状況ですが、今回の試験の中では、掘削と同様に重要な研究区画について、研究機器などの設置や採取したコアを実際に処理しながら、基本動作訓練を実施するとともに、JAMSTEC内外の研究者に「ちきゅう」に乗船して、アドバイスをいただきました。その結果として、いただいたコメントを今後マニュアルなどに反映させるほか、一部必要に応じて機器の組替えも実施することを検討しております。採取されたコアについては、現在、高知コア研究所に保管してございます。
 次に採取されたコアについてご説明いたしますが、資料の中で、現在のコアの保管状況という写真で、高知コアセンターに冷蔵保管されておりますコアの状況をお示ししてございます。全体で今回約378メートルのコアがとれました。これらは、ピストンコアリングと一部ESCSによるコアリングで採取されたものでございます。
 このコアについては、プレス発表も一部させていただきましたが、今回の掘削試験でメタンハイドレートが採取されました。メタンハイドレートの存在は、事前の地震波探査でもある程度予想されておりました。採取されたメタンハイドレートは、あまり固結していなかったのですが、図2のサーモグラフィーを見ていただきますと、非常に冷たいということがわかると思います。この部分につきましては、メタンと連動した微生物がいるかもしれないということで、特殊な微生物の調査も実施しているところです。
 コアの地質に関しては、東北日本前孤の非常に特徴的な堆積物であるということで、図3がその年代モデルでございます。これは縦軸に深さ、横軸に年代というものです。年代は微化石と火山灰と両方を用いた分析で決めたものでございますが、海底下約360メートルの試料で60万年ぐらい前の地層ということがわかります。この海域は1,000年で75センチメートルという非常に堆積速度の速い場所でございました。途中、一部不連続面が見られるということも成果としてわかっております。
 また、岩相にも特徴があるということで、過去65万年の東北日本前孤海域の気候変動と記載しておりますが、物性についても解析を行っており、地磁気、密度、電気的抵抗など、幾つもの項目の解析を船上で行っています。この科学支援能力も「ちきゅう」の大きな特徴です。これによって、環境変動、氷期、間氷期の様子が非常によくわかってきます。
 以上でございます。

【田中主査】
 ありがとうございます。何かご質問、ご意見がございましたら、どうぞよろしくお願いします。

【徳山委員】
 このような複雑なシステムを重大なトラブルもなく、掘削試験できたというのは大変なことだと思います。
 1点だけ、天候の急変について、BOPを簡単に切り離せるということがわかっただけでも大変な成果なのでしょうが、海洋気象の専門家によると、先日の低気圧は典型的な2つの低気圧が合体する例であり、予測できたのではないかという指摘があるのですが、今後こういう事態が起こることもあると思うので、何らかの対応策をお考えでしょうか。

【佐賀CDEX運用管理室長】
 まず気象予測に関しましては、民間の予想会社から3時間ごとのデータをもらって予測するとともに、JAMSTEC地球シミュレータを掘削試験の期間中、地球シミュレータの稼働時間の3分の1を割いて、独自に開発した台風や低気圧の進路予測の情報を予測するプログラムを用いて天候の予測を行なっておりました。台風などが発生しました際には24時間体制で予測を行うという体制をとって対応しており、万全を期したつもりでした。台風が2つ合体して非常に強力な低気圧になることは予想していたのですが、場所があれほどまでに掘削船の近くで発生し、964ミリバールぐらいまで下北沖で発達するとは想定しておりませんでした。これは今後の運用のために、いい経験になったと考えております。
 それからBOPの緊急時切離しについては、一応台風に関しては予測を行って、3日前に半径100キロメートル以内に入ったとき、あるいは200キロメートルのときというように手順を決めて、対応をマニュアルとして組んでありましたが、それについて再度見直しを行い、検証していくつもりです。今回の場合、1つの低気圧の塊になりましたのが「ちきゅう」が掘削している地点に到達する1日半前でした。通常、離脱を安全に実施するためには、まずライザーパイプ中にある泥水を海水に入れかえた後、ライザーパイプの中を通しているドリルパイプ等を全部引き上げ、その後、切離しをするのが一番適切な手順となるのですが、今回は泥水の入れかえとドリルパイプの回収を行った時点で、低気圧がもう直近におりましたので、切離しを行わないまま、可能な限り我慢をして、限界に達した際に離脱できるような状態で待機しておりました。離脱に際しては、ヒーブと呼ばれる船が上下する現象が片側5メートル、往復10メートルくらい生じ、最大では18メートルほどにもなりました。船とBOPを繋いでいるライザーパイプにかかる力を制御するため、「ちきゅう」にはライザーテンショナーという装置があるのですが、テンショナーは船の上下動の振幅が大きすぎて、その制御能力を超える場合、ライザーパイプの上下動が自動的にロックされる設定となっております。今回の掘削試験でヒーブが生じた際、意図しない段階でテンショナーがロックされ、その状態で船は上下動が10メートルを超えるようになったことから離脱を行いました。ライザーパイプが押さえられた状態で離脱したため、船が水深の深い方に動く前に、切り離した船側と海底側の機器が衝突してしまいました。そのほかにも、実際のオペレーション手順など、検証する材料を非常にたくさん得ることができました。結果的にはBOPを少し損傷しましたが、1ヶ月以内に全部回復できましたし、ダメージとしては非常に少ないものでしたが、特に望んでも経験できないような厳しい条件を最初の試験段階で経験できたことは、我々にとって得るべきものが非常に多かったと考えております。

【田中主査】
 離脱をしなくてはならなかった主な理由は悪天候ですか。

【佐賀CDEX運用管理室長】
 はい。位置保持能力については、設計上の条件がございまして、船自身は50メートルの横風でも大丈夫です。さらに10メートルのヒーブでも船の安全は保てます。しかし、ライザーとつないだ状態での作業限界は別にありますので、これを超えると予測されたときには離脱を行うことになっております。

【田中主査】
 船の上では、海況が例えば今後1週間どうなるかなどを独自に判断できる能力はあるのですか。

【佐賀CDEX運用管理室長】
 実際は、船の気象上の天候に対する安全の責任は船長が持っております。判断のための情報は、1つには民間の気象予測会社から3時間ごとに情報を受け取り、その会社に「ちきゅう」専属の予報官が24時間待機しておりまして、いつでも電話で船長がその予報官と直接話ができ、そのときの気象、海象をどのように考えたらいいのかを船長が判断するという仕組みになっております。もう1つは地球シミュレータセンターの担当者が船上と情報交換を行っております。

【田中主査】
 日本近海については今回のように日本の会社などと連携して対応できるということですね。今後、この「ちきゅう」は外洋にも行くのでしょうけど、その際に現地の気象状況などについて、日本にそこまで細かい正確な予報をする能力があるのでしょうか。現地と日本のこういう点における協力が重要だと思うのです。

【平(朝)委員】
 ケニアで我々が今掘削を実施している際は、その場所での最も国際的なウェザーサービスを受けていますし、海流などの予測についてはJAMSTECの持っている海流予測モデル等を使っておりますので、その場所で最大限に得られるデータを得てオペレーションするということは考えています。

【田中主査】
 もう1つ質問したいのですが、メタンハイドレートが採取されたとの話がありましたが、海底疑似反射面(BSR)が明確に見えていない箇所にメタンハイドレートがあったということでしょうか。

【平(朝)委員】
 いえ、既に地震探査でBSRが見つかっておりますので、予想はされておりました。

【田中主査】
 わかりました。ありがとうございます。どうぞ。

【鈴木委員】
 この下北沖の航海にはJ-DESCからもたくさんの研究者を乗船させていただきまして、ありがとうございました。

【平(朝)委員】
 こちらこそありがとうございました。

【鈴木委員】
 当日もしくはその後にいろいろな評価があって、J-DESCから前向きに、建設的にコメントを差し上げておりますので、ぜひご考慮いただいて、よりアカデミックな活動ができる環境を作っていただきたいことを改めてここでお願いいたします。

【平(朝)委員】
 おかげさまで非常に厚い報告書がまとまりまして、今、それについて1つ1つ項目ごとにチェックをしております。外国からもコメントをいただきましたので、話し合いを続けてしていくということになっております。ありがとうございました。

【鈴木委員】
 この件については本当によい機会で、私たちも実際「ちきゅう」がどうなっているのか、どんな問題があるか、知ることができました。ありがとうございました。

【田中主査】
 どうぞ。

【岡田委員】
 今実施している海外掘削試験の掘削の目的深度はどのくらいでしょうか。

【平(朝)委員】
 最初の地点が水深2,200メートルで、海底下3,900メートル。

【岡田委員】
 わかりました。

【田中主査】
 よろしいですか。どうぞ。

【徳山委員】
 ハイドロリックピストンコアリングシステムの回収率は100パーセントというのは大変素晴らしいのですが、IODPでの研究航海ではロータリーコアバレルが主力になると思うのですが、それはここでは試験できなかったということでしょうか。

【平(朝)委員】
 今回、下北ではロータリーコアバレルを試験することはできませんでした。穴の拡幅をしたのは普通の石油掘削で使うようなコア回収をしないでの掘削方法で行いました。海外掘削中に機会があれば試すということとしており、南海トラフの掘削のために日本近海に戻ってくるまでに試したいと思います。

【徳山委員】
 もう1ついいですか。カッティングス移送システムで、インプットがあまりにも多過ぎたためにうまく処理できなかったという説明でしたが、カッティングスが多く出るということは結構よくあるので、ぜひ対策をお考えいただければと思います。

【平(朝)委員】
 今回は相当の量のカッティングスが出たということは確かですが、さらにそれが固形物ではなく泥水のようなものでした。通常、写真のようなチェーンキャタピラで泥を移送するのですが、泥水だったためにうまく移送することができませんでした。そのような海底下500メートルくらいで現れるペントライトがたくさん出てくるような地層は非常に難しいということがわかってきましたので、比較的単純な方法である一旦タンクに入れるというようなバックアップシステムを含め、抜本的な対策をしているところです。

【田中主査】
 それはぜひ進めてもらわないと。
 では、引き続き、海外で行われている掘削試験について、平委員から。

【平(朝)委員】
 参考資料の2-2で説明をさせていただきます。以前説明させていただきましたが、当初、下北半島沖の掘削に関しては水深1,000メートルクラスと水深2,000メートルクラスの2つの海域で掘削試験をするという予定でした。その後、下北半島沖の今年度の掘削の後に、次の南海トラフの掘削までフル稼働で試験をして、船の性能の確認とクルーの習熟訓練を行いたいということから、我々が国内外の業者に対して「ちきゅう」を使った掘削の可能性はないのかということで打診をしましたところ、オーストラリアのウッドサイド社がシードリル社に提案をして、それを機構が受託契約をして「ちきゅう」を動かすということになりました。
 期間は11月1日から来年の7月31日までとなっており、両者協議の上で多少の延長はあり得ることとしております。目的は、水深2,000メートル級での「ちきゅう」の性能テスト、クルーの習熟、例えば炭酸塩岩もしくは蒸発岩のようなさまざまな地質環境での掘削経験の蓄積などですが、「ちきゅう」で一番大事なのは常時運用して、間断なく「ちきゅう」の性能のテストを行っていくということでございます。
 今、「ちきゅう」がいるのはケニア沖です。図3及び図4をご覧下さい。図3に実施海域、比較的ソマリアに近い海域でポンブーと呼ばれている地点、それからその南でソクウと呼ばれている地点がございます。ポンブーという地点が最初の掘削海域ですが、これが水深2,200メートルで、海底下3,900メートルまで掘ることになっております。今はこの海域でのケーシングのセットアップが終わってBOPを降下中ということであります。この海域はかなり潮流が強く、常時、2kt(ノット)から3kt(ノット)となっており、「ちきゅう」は潮上からドリフトしてBOPもしくはケーシングを降ろすという作業を行っております。これは南海掘削にも想定されており、その練習としてもいい経験となっております。2月後半からはオーストラリア北西岸での試験になると思います。資料の図ではオーストラリア南岸も書いてありますが、北西岸の4箇所程度で掘削するというのが今時点での案となっておりまして、これについてはまだ詳しい計画がウッドサイドから来ておりませんので調整が必要なのですが、これらの海域において、7月31日まで「ちきゅう」は掘削を行うこととなります。
 その後、日本に向けて回航し、8月中には日本の周辺海域に到達して、9月の南海掘削に備えるということができると考えております。

【田中主査】
 ご質問、ご意見はございますか。

【寺島委員】
 アフリカ沖、特にソマリア沖というのは政情が不安定ということもあり、今、海賊が非常に盛んなところですので、天候の情報だけでなく、海賊の情報を適切に集めて運用していただきたいと思います。

【平(朝)委員】
 ケニア沖での掘削については、ウッドサイドがこの鉱区の開発を請けているため、作業の安全、保安に係る責務はウッドサイドにございます。実際の体制としては、ケニア海軍の艦艇が2隻「ちきゅう」の周りに常時待機してテロ対策、海賊対策を行っていまして、ケニア政府は総力を挙げて保安対策に協力してくれております。また、「ちきゅう」は試験中、1回もケニアの港には接岸しません。日本からシンガポール経由でケニア沖合に行き、ケニア沖合から今度は豪州に移動ということになっております。

【佐藤委員】
 ドックにはいつ入るのでしょうか。しばらくは新船だから大丈夫だということですか。

【平(朝)委員】
 定期検査は洋上で行います。このため、来年、再来年の検査が少し重くなると思います。

【鈴木委員】
 今回の掘削試験は国内事業者にも打診したと資料に記載されておりますが、国内事業者からは何か反応はあったのでしょうか。

【佐賀CDEX運用管理室長】
 JOGMECの基礎調査の部門も含め、全ての国内の石油会社に聞きました。「ちきゅう」をぜひ使いたいということはどこの石油会社も言ってくれたのですが、残念ながらこの期間で、試験としての水深2,000メートルでのライザー掘削を行うという条件を満たすような提案はなく、唯一あった提案がウッドサイドからのものでした。

【鈴木委員】
 今のお話ですと、CDEXとして絶対実施しないといけない試験的な条件を強く主張されたということですね。

【佐賀CDEX運用管理室長】
 はい。

【平(朝)委員】
 今後はまたいろいろな条件を検討しなくてはいけないと思います。今回の掘削試験では今言ったように水深2,000メートルというのが条件でした。

【徳山委員】
 1つご質問なのですが、この掘削の地点を決める前に、CDEXが南海掘削のために実施していたような海底の精査を行っていて、そのデータもJAMSTECは提供されているのでしょうか。

【平(朝)委員】
 これはウッドサイド社が全部実施しており、我々として「ちきゅう」の性能テストとクルーの習熟という観点だけで実施していますので、地質情報などのこの海域に関する知見というのは、我々は得ておりません。

【宮崎委員】
 そうすると、全く機器の運用のみを行っているということですか。実際に、何か石油などが出てきた際は、全て契約元のウ社の範囲となると。

【平(朝)委員】
 そういうことです。

【長谷川委員】
 こういう委託業務というのは、今回は掘削試験が目的だと思うのですが、今後もこういう委託業務みたいなのをお考えなのですか。

【平(朝)委員】
 我々としてはあり得ると思っております。ただし、いろいろな条件が必要にはなると思います。JAMSTECの自主性がある程度保たれること、IODPの掘削計画に影響を与えないことなども含めて、文部科学省、研究者などの関係者と話し合って、検討する必要があります。

【長谷川委員】
 その場合の条件というのは何か決められたものがあるのですか。

【平(朝)委員】
 まだ検討中でございます。

【長谷川委員】
 わかりました。

【石田委員】
 今回の海外試験運用は受託で、この費用は誰が負担するのでしょうか。

【平(朝)委員】
 受託ですから全額ウッドサイド社が負担しています。

【石田委員】
 費用負担をウッドサイド社がして、しかも、その費用で「ちきゅう」のクルーなどの関係する人たちの教育もできているということでしょうか。

【平(朝)委員】
 はい。

【宮崎委員】
 心配なことが一点あるのですが、今回ある程度の期間、外部資金で運用したことが、来年度以降、本来の科学掘削の予算が当てられず、外部資金で運用しなさいという議論が生じるような前例になることはないのでしょうか。

【平(朝)委員】
 そのような議論を生じる恐れがあることは承知しておりますが、私達の基本的な考えとしては、独立行政法人の所有物である施設を用いて、それを十分に動かすために外部資金を導入してくるということは奨励されるべきことと思っております。いろいろな場面で、外部資金の獲得によって予算が削られることとなれば、独立行政法人のインセンティブとならないのでその取扱いは検討すべき、税金で造った施設を止めておくような事態がないように十分に活用すべきということを言われています。

【宮崎委員】
 活用は十分していただくのは結構ですが、やはり中核である科学掘削を大切にしていただければと思います。

【平(朝)委員】
 そうですね。

【宿利企画官】
 今、平委員からもお話がありましたが、独立行政法人にはある程度の裁量がある中で、本来であれば「ちきゅう」を止めておかなくてはいけなかったところ、外部資金を導入して非常に効果的に試験することができているという点はぜひ評価して欲しいと考えております。今回はあくまで試験期間中でしたが、今後については、いろいろな条件があると思います。税金を投入して建造したということから考えますと、建造目的、海洋機構の設置目的などに配慮しつつ検討していくものと考えてございます。

【田中主査】
 よろしいでしょうか。
 では、引き続き、平成19年度に「ちきゅう」のIODPにおける初めての研究航海が予定されております。これについてまた平委員から説明してください。

【平(朝)委員】
 それでは参考資料の2-3でございます。IODPにおける南海トラフ地震発生帯掘削計画について説明させていただきます。勿論、この研究航海は日本の研究者が主体となって、J-DESCなどが総力を挙げてプロポーザルを作ってきました。そういう経緯のある「ちきゅう」の最も重要な、IODPで最も注目されているプロジェクトの1つでございます。
 来年9月から紀伊半島沖において掘削を行うため、この海域の3次元物理探査を今年実施したほか、研究者が最終的に掘削地点を決める作業を行っております。この研究航海では、地震の発生する領域、そこから地表に延びる断層帯、そこに供給される堆積物、それがだんだん固まって地震を起こすような領域を掘削し、地震発生の一連の過程を掘削によって確かめるとともに、掘削孔内に長期孔内計測装置を設置して、地震の準備過程から破壊、それからまた元に戻るという地震サイクルを観測していこうという計画でございます。
 次のページは、この海域で調査した2次元の地震波探査の断面でございますが、右側が南海トラフで、左側に向かってプレートが沈み込んでいきます。海底下の深いところから分岐断層というものが派生して、それが海底面にまで届いております。その筋が赤い矢印で書いてあるところです。この研究航海では、約7箇所での掘削がプロポーザルされていますが、そのうち、6箇所について「ちきゅう」はロギングホワイルドリリング(LWD)という手法で掘削しながらの検層を行います。それからライザーレスでコアリングをして、その後に最初のライザー掘削海域であるNT2-03Aに着手いたします。この地点では、約3.5キロメートルのライザー掘削を行いますが、まず泥水循環を始める直前までを来年度中に行いまして、再来年の3月から5月にドックに入りまして、6月にNT2-03Aの本格的なライザー掘削から掘削を再開します。これを掘れる限り掘り続け、2008年秋から冬にかけて、願わくは3.5キロメートルの分岐断層の掘削を達成したいと思っております。
 来年9月からのLWDに関しては既にIODPとしての共同首席研究者も決まっております。それから、乗船研究者に関しては日本から70名、アメリカから70名、それからヨーロッパから80名、その他10名の230名から240名の乗船希望者がありまして、現在、その中から約半数である120名から130名を選ぶという段階で、その準備に入ったところです。

【田中主査】
 ありがとうございました。ご質問、ご意見はございますか。

【長谷川委員】
 最近、この海域に超低周波地震が見つかっております。この超低周波地震は現在でも連続的に発生しており、この発生源がこれまで知られていたのと比べ、浅いところにありそうであるという観測事実が出てきたのですが、そういう現状を考えると、この海域において掘削を行い、センサーを設置するというは非常にスリリングであり、私たちは大変期待しているところです。この断層で生じる滑りというか、いわゆる普通の地震ではなくこのようなプレート境界より上側で起こっている事象は、どのように起こっているのかということが、掘削後にこの穴を利用したセンサーによる観測で補足されることを期待しているのですが、こういった取組みの予定というのは、何かございますか。

【平(朝)委員】
 南海では低周波地震が深いところで生じているということまでは、これまで知られていたのですが、最近は非常に浅いところでも起こっているということが判明しました。また、我々は基本的に非地震域に近いと思っていた海域で低周波地震が起こったり、それが場所を移したりという奇妙な現象も生じていたり、我々が今回掘削を行い海域で、そういう活動的な滑りのような現象が起こっているということに、私も非常に興奮しています。実際にこの海域に設置する観測装置によって、遠くの現象だけではなく、インサイクルの現象が補足できる可能性が出てきたということで非常に興味深いのですが、実際にその観測をどのように実施していくのかということに関しては、今、我々はその計測装置の根幹になる部分を開発中で、観測装置を設置する際にどういうセンサーを入れ、どのような観測を行うかということについては、まだ完全な設計ができておりません。それで今、研究者と一緒に検討しているところです。それからDONETのネットワークを今構築しているところですので、これとどのようなタイアップができるのかということも視野に入れて、検討中でございます。

【末廣委員】
 今の話にあったとおりで、観測には技術的に挑戦となる要素がありまして、それは非常に海底下深く、しかも高温になる中で長期的に継続して安定して測れることができるセンサーがまだ十分開発されていないということで、時間との競争になっておりますが、基本的には広帯域強震計、ひずみ計などをいろいろな深さに設置して、1点だけではなく、深さ方向を連続的に観測することを考えております。一方、DONETを利用して海底が二次元的にどう変化しているかを水圧計で追うことも考えております。同時に大学でGPSの補強も開発中ですから、それらとタイアップして、掘削計画の進行に間に合わせたいと考えており、今、技術開発上の課題をどうクリアしていくか明らかにしつつあるところです。今すぐできることがわかっているわけではないので、歯切れよく説明できないのですが、実現しなければいけないと思っています。海底下の温度は200度を超えないと思っていますが、海底下で継続的に動く地震計というのは簡単ではないですから。

【長谷川委員】
 これは地震発生帯の掘削を目的としておりますが、南海地震とか東南海地震が本当に生じるところまで掘るというのはなかなか大変かもしれないですね。そこに観測装置を設置できたとして、東南海地震そのものを捉えるのは、発生頻度から考えても難しいでしょう。だけど、その上側で起こっていると思われる超低周波地震であれば、現在起こっているのだから、そのものを観測できるので、非常に多くの情報が期待できると思っております。ぜひご健闘をお願いします。

【末廣委員】
 我々は昔から海溝軸沿いに低い周波数の地震が起きるというのは知っております。最近はさらに低周波で地震が発生しているということが話題に上がっているわけですが、我々は海底で観測していて一切そのようなものを見てないので、一体どういうことかと思っているのですけれども、まさにそれを明らかにできたらと思っています。

【長谷川委員】
 地震発生帯のもっと深いところ、つまりもっと陸側の海岸の直下のところで深部低周波微動が起こっていますよね。あの場所で同じように超低周波地震が起きているのです。だから本震が生じる断層面を挟んで、浅い側と深い側でそれぞれ非常に繰返し間隔の短い事象が起きていると考えられています。私たちとしては、地震発生機構を理解する上で、海溝に近い側で何が起こっているかということが決定的に重要となるので、ぜひこの計画の推進をお願いしたいと思います。

【平(啓)委員】
 よろしいですか。この絵で津波を生じる原因という地点と、地震発生帯という地点がありますね。この2地点では検証項目は何か違うのでしょうか。

【平(朝)委員】
 これも1つのまだ解釈の段階でありますが、このスプレー断層という断層が海底からNT2-01A、Bというところで海底に向かって上がってきていますが、地震発生時にこの断層が動いて津波を起こしているのではないかと予想されています。したがって、なぜ地震が起きたときにこの断層が動くのか、一番大きい滑りがこの断層に逃げるのかということが重要な点で、この断層の箇所に何か弱いというか、力学的に解放しやすい性質があるに違いないと考えており、ここを掘ってその性質を解明しようということが提案されています。同時に、その性質は先ほど言われたような海溝側で起こる低周波にも関係しているかもしれないと思っています。

【平(啓)委員】
 どうもありがとうございました。

【田中主査】
 どうぞ。

【徳山委員】
 今年3Dの地震探査を実施したとお聞きしましたが、NT3-01の深部、地震発生帯までイメージングできるようなデータは得られたのでしょうか。

【平(朝)委員】
 はい。しかし、NT2-03Aの地質構造が見えていないのです。これは地形的な影響ではなくて、何か断層のようなものがあるためかもしれないと思っています。

【田中主査】
 どうぞ。

【宮崎委員】
 最初にLWDを実施ということですが、どういうタイプの掘削時検査を考えられているのでしょうか。

【佐賀CDEX運用管理室長】
 科学者から提案を受け、放射能検層、ニュートロン、密度なども含む現状のLWDで測定できるほぼ全ての項目です。あと、LWDによる孔内地震探査、VSPも計画しております。恐らく、通常の石油掘削でもしないくらいの充実した計画になっております。

【田中主査】
 IODPのデータというのは、科学的には全てのものにすごく興味があるのですが、社会貢献の観点で考えると、世の中の関心がどこにあるかというとやはり地震の発生機構解明というのが非常に期待されているので、この研究航海で何か新しい発見があって、金をかけた価値があったぞと世の中が感じることができる成果が欲しいですね。

【末廣委員】
 そもそも地震断層帯でひずみがどういうメカニズムで蓄積して、どういう変形メカニズムが進行しているかわかっていないわけです。それが測れるだけでも極めて大きな成果だと思います。

【田中主査】
 それがわかるだけでもすごい。だからそういう成果が出てくると、弾みがついて計画が盛り上がる。何かそういう成果が大変重要なのです。

【石田委員】
 今のお話を伺っていると今までよりももっと直接的に重要なデータが測れると思うので期待しているのですが、どのぐらいの頻度で測りながら掘ることができるという計画はあるのでしょうか。

【佐賀CDEX運用管理室長】
 測定間隔はそれぞれ検層の種目によって違いますけれども、大体0.5ミリメートル間隔くらいからとれます。細部に関しては検討中でございますが、作業全体の効率と科学者の皆様に最低限必要な情報量を組み合わせてのオペレーション検討しております。リアルタイムで船上において掘りながらどういうデータが取れているかは勿論見られるのですが、それでも情報伝達の量的な制限がありますので、孔内に降ろすセンサーに全部メモリーが搭載されており、掘り終わった後、観測装置を引き上げて、データを取り出すという方法をとります。

【佐藤委員】
 この熊野灘の掘削は来年の例えば9月から掘り始めるのですか。

【平(朝)委員】
 来年の9月から開始です。

【佐藤委員】
 これは数年かけて掘っていくのでしょうが、途中でもし何か不幸な事態が起きて時間がかかった場合には、他の第2の候補地点が用意されているなどの対応は検討されていると思うのですが、どうなっているのでしょうか。

【平(朝)委員】
 運用に関わる要因もしくは制限としては予算の他に、研究者の乗船できる日数というものがあります。研究者も授業があったり、家族が待っていたりという事情もありまして、無制限にいつまでも乗るわけにはいかないということがありますので、初めにある程度シナリオを作って、それに何日かの予備日を加えておきます。「ちきゅう」の場合はかなり余裕を持ってシナリオを作っていますが、それでも達成できないときには、CDEXは次の研究航海に移ることを提案しますが、研究者と相談をして、次に移るまでにこれだけは絶対実施して欲しいというリクエストがあれば、それを考慮して計画を再構築します。通常は当初計画のとおり実施し、基本的にはその期間に掘り終わらなければ、その乗船者には降りていただき、次の乗船研究者を乗せて次の計画に入る。途中で終えてしまった研究航海は、次年度にまたどう扱うか検討し直すことになると思います。

【佐藤委員】
 運行計画を決める際は、日本だけで決める場合もあるのでしょうか。

【平(朝)委員】
 基本的にはオペレーションは我々が責任を持ってやりますけれども、アドバイスは世界の研究者から常時受けながら実施していくということになります。

【佐藤委員】
 低気圧や台風に恐れず掘るという気概がないとだめかもしれませんね。

【末廣委員】
 今話題となった点が今までと最も違うところです。今までのODPでは時間が来たら、絶対にそこで研究航海を終了しておりました。

【堀委員】
 アメリカ、日本とヨーロッパからの研究者が乗られての研究ということなのですけれども、IODPで運航という際、これは日本側の予算で執行するわけですか。

【平(朝)委員】
 「ちきゅう」の運用に関しての予算は日本側が担当します。アメリカの科学掘削船の運用に関する予算はアメリカ側が担当、ヨーロッパの特定任務掘削船はヨーロッパが担当するということになっております。しかし、共通の科学推進経費、例えば出版物、採取したサンプルの管理、そのための電気代や人件費などに関しては各国の分担金による国際的な共通経費で賄うということになっており、日本もそのような用途の経費はIODP-MIからいただいて運用しております。原則は、当初の10年間のIODP計画期間で日米が当分の負担をするということになっておりますので、日本の「ちきゅう」の運航費はアメリカの科学掘削船の運航費より高いですから、アメリカは分担金として日本に比べて足りない貢献額を負担することになります。勿論、アメリカは既にIODPで掘削船を出しておりますから、先に負担をしている部分があるのですけれども。

【宿利企画官】
 今、平委員からお話のあったとおりでございまして、それぞれの船の所属国が船の運航経費を担当し、科学面については共通経費というような考え方になっております。来年9月から「ちきゅう」の運用が開始します。その後、アメリカのジョイデス・レゾリューションも若干遅れるかもしれませんが活動を再開し、熊野灘に来るというようなことを計画しております。

【石田委員】
 そうすると、乗船している研究者の費用は、その共通経費から払われるということですか。

【平(朝)委員】
 研究者の費用のうち、研究者の乗船の旅費や研究経費は各国がそれぞれ負担することになっております。一方、IODPで得られたデータは国際的に利用することになりますが、これは共通経費で負担されていくということになっており、コアの管理もこれに含まれます。ですから、研究者個人の研究については、基本的にはそれは各国が独自に行うことになります。

【末廣委員】
 簡単なことではないのですが、自由な競争というのは必要です。

【田中主査】
 よろしいですか。
 それでは、議題3の広報活動について、最初に文科省関係の取組みについてご説明をお願いします。

【宿利企画官】
 資料9-4に文部科学省から前回委員会から今回までの間のIODP関連のプレス発表資料を添付させていただいております。こうしたIODPの活動は、日本が主導国として参画いたします国際協力プロジェクトの初めての例であり、また国費を投入して建造した「ちきゅう」を国際運用に供するというもので、最先端の科学技術に関する情報も生み出すことが期待されていますから、文部科学省としましても、タイムリーに最新の状況について正しく広く知っていただきたいと切望しているところでございます。
 最初の10枚ほどのものが、今年の6月に以前の研究航海の成果が科学誌「ネイチャー」に公表されるということで、IODP-MIからの情報を受け、急遽、日本語訳をして日本国内のプレスに発表しました。実際の研究航海は平成16年8月から9月に北極海で掘削したもので、砕氷船を従えて掘削船と合わせて3隻体制で掘削した結果、北極地方の非常に古い環境変化についての知見が得られたということについてのプレス発表です。
 次の1枚紙は、この6月1日付の発表中で、約5,500万年前に一度北極の「温度」が摂氏23度になったというところの温度を「気温」と翻訳したのが、正しくは「海面水温」の間違いだったということがございまして、訂正の発表をすぐにさせていただいております。
 その後ろの2枚紙が6月20日付で、IODPの参加国拡大、韓国が暫定アジアコンソーシアムという形で参加するという覚書を調印したというプレス発表でございます。こういった国際的な枠組みに関することも関係国で同時に発表ができるようにということで、いろいろ調整を図りながら今後も必要な対応をとらせていただきたいと考えてございます。
 その次の10月25日付の発表ですが、これは先ほども話が出ました国内のIODP成果報告会を開催するという予告のプレス発表です。実施の直前という形にはなりましたが、J-DESC、JAMSTECによって開催された成果報告会について、文部科学省の記者クラブに発表いたしました。これ以外にも文部科学省の記者クラブには、JAMSTECからいろいろな発表をしていただいております。
 簡単ですが、以上でございます。

【田中主査】
 ありがとうございました。
 引き続きまして、J-DESC、JAMSTECの取組みについて、平委員からお願いします。

【平(朝)委員】
 田中からご報告させますので、よろしくお願いします。

【田中CDEX企画調整室長】
 参考資料3で簡単にご紹介させていただきます。ここに書いておりますのはJAMSTEC、J-DESCの広報に関する活動でございます。
 主なものをご紹介いたしますと、「ちきゅう」の一般見学をドック工事後に関西で行い、大変な好評をいただきました。昨年からの見学者の合計は5万人を超えております。
 次に、市民、若手研究者、学生などを対象にしたIODPキャンペーンを3大学で開催し、合計200名ほどの方にご参加いただきました。あとは博物館でのものですが、こちらはもう少し一般的な方を対象としたイベントです。
 また、国際学会等で展示ブースを用いて、IODPの広報を行っています。国内においては地球惑星科学連合、アジアではアジア・オセアニアのAOGS、アメリカではAGUに重点を置いて実施しております。一方、研究者の方々からの要請に従って、我が国で開催される国際学会のときにIODPを紹介させていただいております。
 次のページをご覧下さい。「CHIKYU HAKKEN」というウェブサイトを運営させていただいておりますが、大体一月当たり10万弱のアクセスがあります。6月は先ほど申しました「ちきゅう」の一般公開があったため増えたと思いますし、10月は「ちきゅう」の下北沖での掘削試験についてプレス発表を度々しておりましたので、非常に関心を持っていただいたものと思っております。今年の特徴としてはその他に記載しております映画の「日本沈没」とのコラボレーションが挙げられます。
 以上でございます。

【田中主査】
 ありがとうございました。何かご質問、ご意見はございますか。
 次へ進ませていただいて、議題4、IODPに関する研究推進体制についてということで、前回委員会以降どのような取組みがなされているのか、鈴木委員よりお願いいたします。

【鈴木委員】
 J-DESCはIODPの科学推進に取り組んでいます。IODPが始まって3年以上が過ぎ、この間、J-DESCから100名以上の乗船研究者を推薦いたしました。そうした乗船研究を通じて、これまでにない実際的な国際共同研究、日本の貢献が行われています。
 改めて確認のために申し上げたいのですが、J-DESCはIODPの研究航海に乗船研究者の推薦を行っています。それからSASと呼ばれるIODPのサイエンスを推進する国際的な委員会に日本からの委員をこれまで100名以上派遣しております。そのほか国際的なワークショップ、シンポジウムなどに参加される日本の科学者の支援を実施しています。これが常に毎年のように行われている私たちの活動になります。
 それ以外に、ここに幾つか例を示したのですが、研究者向けのいろいろな活動の支援ということで、J-DESCに参加している45の研究機関あるいは組織の方々から申請された計画について私たちの委員会が審査して、幾つかの活動を支援しております。これらについては資料をご覧いただいて、こういった活動が行われていることをどうぞご理解ください。
 裏に行きます。日本地質学会と共同でIODPを機会に海、地質の研究についての各種用語がございますが、そういった用語の統一を図るということになり、海の地質基準というものを作成する計画を立て、現在進行中です。ここで、国際的に英語の表現に関してもしばしば統一が図られていないものもあるのですが、これもこの活動を通して今後整理していこうということに取り組んでいます。
 また、先ほどIODPでは国際的なワークショップが幾つか開催されているというご紹介がございましたが、そうしたワークショップに参加する研究者の支援をしております。特に若手研究者、ポスドクとか博士課程の学生に参加のための旅費の支援をしております。
 次に、これもJ-DESCの長い間の宿題だったのですが、本年度、「地球システム変動」というタイトルで科研費の時限つき分科細目が採択されました。これもJ-DESCがぜひたくさん応募するようにといろいろなところに声をかける活動をしているところです。
 また、いろいろな研究機関に勤めている方々はそれぞれ独自に研究について、科学研究費補助金の申請しているわけですが、その一部をここにご紹介いたしました。
 それから、ここに記載していないのですが、先日、J-DESCのホームページを大幅に改訂いたしました。これは業者に頼んで相当見栄えのいいものにしています。これもまだ日本語のページだけなので、近い将来、英語版にしようという活動をしています。
 先日、IODPの研究成果報告会を2度開催しました。今後は来年、地球惑星科学連合で「地球掘削科学」という新しいセッションを立ち上げようと申請しています。これは可能であれば毎年これを継続して、関係する分野の方々にアピールしていきたいと考えています。
 そのほか、ニュースレターも出ました。現在、第2号が計画されていて、来年3月にはこれが出版されます。このニュースレターも現在は日本語版しかないのですが、英語版を発行しようと考えています。IODPは国際プログラムですから、日本のプログラムメンバーオフィスとして、英語の出版物を持ちたいというのが私たちの願いです。これはもう見積もりをとって、近い将来、英語で情報を発信するということを実現したいと考えています。
 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

【田中主査】
 何かご質問、ご意見はございますか。

【岡田委員】
 1つよろしいですか。今のお話でJ-DESCがきちんとした仕事をしているので、科学の面に関してあまり懸念はないのです。私自身はIODP-MI理事という立場でここに出ているのですが、実は先週金曜日もその会議がありました。IODP-MIは先ほどから名前が出ており、皆さんご存じだと思います。世界32の大学あるいは研究所が、出資金というか参加費を年間5、60万円ずつ払って運営しているNPOです。IODP-MIはお金を稼ぐわけでなく、NSFと10年契約をして、IODP参加国の分担金を受け取り、それで共通経費のマネジメントをしている組織で、先ほど言った32の機関から1人ずつ代表を出して、この総会で何でも決めるということになっているのですが、その中から日米5人ずつ、ヨーロッパ3人の13人の理事を選んで、ここで基本的にはいろいろなことを決めています。
 ご存じのとおりIODP-MIにはオフィスが2つありまして、1つはワシントンに本部的なもの、あと札幌に科学を担当するオフィスがあります。基本的には我々理事は無給で、IODP-MIでは、大体20人くらい雇って、10人ずつ札幌とワシントンに張りつけています。IODPが始まって3年経ちますが、最近見えてきた問題がいろいろとあります。そろそろ建設的な新しいことを始めなくてはいけないという議論がありまして、最後に意見を求められるのは理事会なのですが、理事会はみんな大学の先生なので、他に勿論仕事がありますから結構忙しいのです。
 それでいろいろ複雑な問題が起きた際、どれが日本としてメリットが大きいアクションなのかということをその場で判断しなくてはならないことが結構あります。私は理事会のことはわかっていても、例えば実施機関であるCDEXが、あるいは文科省やNSFがどういうふうにお考えなのかということがわからないことが往々にしてあります。私の希望としてはもっと専門的にIODP全体に関する情報を把握している個人あるいは少数の方が必要ではないかと思うのです。そういう方がおられれば、日本としてIODPをどういうふうに進めていくのがいいという大体の方向を理解して、質問が来たときに答えられると思います。言い換えると、全ての情報を持っているブレーンというか、シンクタンクのようなものが必要ではないかと感じているのです。これは確か2年ほど前にもこの委員会で申し上げたことがあるのですが、今回、IODP-MIの理事の立場として、日本の利益、情報を全て把握しているというメカニズムが必要だと痛切に感じましたので、無理のない範囲で結構ですが、ぜひご検討していただければありがたいと文科省にお願いしたいと思います。

【田中主査】
 どうぞ。

【宿利企画官】
 今、先生からご指摘いただきました点は、以前の深海掘削委員会でも情報を共有するとか、一元的に起こっていることをわかった上でその対応を考えるべきとのご指摘をいただいております。現状でIODPの取組みというのは文部科学省だけでできるものではございませんので、関係各位それぞれご尽力いただいて進んできていると認識しておりますが、今の体制で不十分な点があるということだと考えますと、どういう工夫ができるか、また委員の先生方にもいろいろご相談しながら、よりよくできるように私どもとしても検討を深めてまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【田中主査】
 ぜひお願いします。結局は、最終的にはどれだけ日本の成果が上がってくるのかということですから、JAMSTECにも文科省にも科学的成果が上がるように頑張っていただきたい。それには仲間を増やして、意欲のある人は、特に若者をそこへ投入してという取組みもしなくてはいけない。IODPはものすごく面白いものだと思う。国際協力なので、日本は何人ぐらい乗れるのかなど難しい面はあるというのはわかりますが、できるだけいろいろな形で関心を持っている多くの研究者が参加できて、どんどん成果が上がるというような体制を考えて欲しい。今の話は、もっとよく通じた専門的なスタッフが欲しいという話ですか。

【岡田委員】
 情報を一元的に持っている人が欲しいということです。その人に聞けばここはこうなっているという情報がわかるという。

【末廣委員】
 私はJAMSTECのIODP担当ですので、その点は重々責任を感じます。情報を一番取り揃えているのは間違いなくJAMSTECだと思います。ですからある程度努力しているのですが、不足と言われれば、これを是正して、日本代表である理事会のメンバーがしかるべき情報を持って会合に出席できるようにさらに努力したいと思います。私は、JAMSTEC以外のところで実施しようと思っても、多分難しいだろうと思います。

【斎藤委員】
 IODPのマネジメントには幾つかの階層があって、下の部分ではSASのパネルが専門的なことを検討して、その上に委員会があって、さらに上部委員会があったり、理事会があったりするわけですが、J-DESCの中にはいろいろなパネルに対応する専門部会があって、事前打合せをして、委員の皆さんが国際の場で活躍できるように支援しています。しかし、さらに上部の委員会、理事会になると手が回らなくて、専属でそれを支援する必要があります。それからJAMSTEC、J-DESC、文科省が連携してうまく機能するように、先ほどシンクタンクという言葉を使われましたが、そのような組織があると、非常に力強いと感じています。

【田中主査】
 有機的に機能して、最終的に成果を上げるために少し工夫の余地がありそうですね。

【末廣委員】
 しかし、IODP-MI理事は個人の資格で出席しているので、こう言ってくれというわけにもいかないと思いますが。

【岡田委員】
 国内の情報がわかればいいのです。

【田中主査】
 こういう場でも議論してもらえばいいと思います。いずれにしても、最終的には科学的成果は上がってこないといけない。工夫して取り組んでください。

【岡田委員】
 細かい話は、年に2回のこの委員会では多分議論できないと思います。日常的にプログラムに従事し、中身を知っている人同士が話し合う必要があるのではないでしょうか。

【田中主査】
 それは確かにあると思います。

【岡田委員】
 大局的にはこの委員会、細かいところは知っている人で検討する。

【田中主査】
 そうですね。いろいろあると思いますけれども、研究体制の問題というのはこの委員会の非常に重要な仕事ですから、今後とも引き続き前向きに議論していくということでよろしいでしょうか。

【末廣委員】
 1点だけよろしいでしょうか。岡田委員にご質問ですが、IODP-MIの評価は、来年の3月に終わるのでしょうか

【岡田委員】
 今、末廣委員がおっしゃったのはIODP-MIが始まって3年目になるので、NSFとの契約で求められる評価を行っております。その評価委員会が10月立ち上がって、大体その活動を終えて、最終報告書を準備しつつあります。3月末までにNSFに報告されることになります。ただ、初めてのことなので、どこまでが評価の範囲なのかが混乱しているのですが、少しずつ整理して、本来の目的にかなったものに近づきつつあります。

【末廣委員】
 それが相当参考になると思いますので。公開文書ですよね。

【岡田委員】
 もちろん公開です。

【徳山委員】
 すいません。先ほどの文科省からの総合科学技術会議での評価と国家基幹技術の説明についてですが、これは大変すばらしいことだと思います。それで来年9月から科学掘削が行われれば、恐らく相当いい評価が期待できると思います。
 その次の段階ですが、世界の深海掘削の趨勢からいうと水深2,500メートルはそこまで先進的とも言えないと私自身は受けとめております。真に深海掘削技術というのをこれから立ち上げるというのであれば、少し時期尚早かもしれませんが大水深ライザー掘削技術、水深4,000メートルからのライザー掘削技術について今からしっかり考えていただきたい。運用を始めるとそちらにも技術的な問題があるので、そちらに目が向いてしまうのはわかるのですが、やはり4,000メートルライザーを開発するというメッセージはいつまでも忘れないように、それこそ真の世界に冠たる深海掘削技術を日本が手に入れたということになるので、そこをぜひお忘れないようにお願いしたいと思います。

【平(朝)委員】
 力強い。一瞬たりとて忘れたことはございません。

【田中主査】
 第3期科学技術基本計画の中でそれは1つの大きな柱になっているから、当然、技術的に考えていかなくてはいけないと。
 今日はこれで閉会させていただきます。どうも長い間ありがとうございました。

‐了‐

お問合せ先

研究開発局海洋地球課