深海掘削委員会(第7回) 議事録

1.日時

平成17年11月14日(月曜日) 14時~17時

2.場所

経済産業省 別館10階 1031会議室

3.議題

  1. 深海地球ドリリング計画中間評価報告書について
  2. 第6回深海掘削委員会以降のIODPに関する活動について
  3. IODPに関する研究推進体制について
  4. IODPに関する広報活動について
  5. その他

4.出席者

委員

 田中主査、森田主査代理
 兼原、佐藤、平(朝)、堀、松田、岡田、末廣、鈴木、徳山、長沼、安田 各委員
 平(啓)海洋開発分科会長

5.議事録

【田中主査】
 ただいまから、第7回科学技術・学術審議会海洋開発分科会深海掘削委員会を開催いたします。
 本日は、ご多忙中にも関わらずご出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 では、審議に入ります前に、事務局の文部科学省海洋地球課の佐藤課長よりご挨拶をお願いします。

【佐藤海洋地球課長】
 平成18年度予算の話ですが、財務省と協議している最中でございます。今回の要求では、科学技術振興費も、他の経費と同じく前年度比3パーセント減を基準とするという状況下で、協議しているのですが、昨年度よりも厳しいということを実感しております。深海地球ドリリング計画関係予算が適切に確保されるよう頑張っていきたいと思っております。
 深海地球ドリリング計画の中間評価については、この委員会の下に小委員会を置き、3回にわたる会議を開催して、整理してまいりました。本日の会議では、これについて、いろいろご審議いただきましてとりまとめをしていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

【田中主査】
 それでは、議事に入ります。
 まず、事務局から資料のご確認をお願いします。

【田中企画官】
 それでは、最初に配付資料の確認をします。
 議事次第と資料1として委員会委員名簿がございます。それから、資料7‐2‐1、7‐2‐2が6月に行われました第6回深海掘削委員会の議事録と議事概要で、7‐3‐1、7‐3‐2は10月に行われました第3回深海掘削委員会評価小委員会の議事録、議事概要でございます。資料7‐4が評価小委員会で作っていただいた深海地球ドリリング計画中間評価報告書(案)となっております。資料7‐5‐1が第6回深海掘削委員会以降のIODPに関する活動について、7‐5‐2は2006年度のIODPの年間事業計画の概要で、7‐6が文部科学省のプレスリリースの資料でございます。
 次からは参考資料で、参考資料1は、深海地球ドリリング計画中間評価の際の報告書添付資料であるIODPに関する我が国の取組みについてという資料。参考資料2は、2006年度のIODP‐MIの年間事業計画です。参考資料3は、IODPに関する研究推進体制に関するJ‐DESCの取組み。参考資料4はIODPに関する広報活動についてという資料でございます。

【田中主査】
 よろしいでしょうか。
 それでは、本日の議題に入ります前に、前回、平成17年6月9日に行いました第6回の深海掘削委員会の議事録及び議事概要並びに第3回評価小委員会の議事録及び議事概要の確認を行いたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。

【田中企画官】
 資料7‐2‐1と資料7‐2‐2、6月9日の第6回深海掘削委員会の議事録と議事概要については、先日委員の皆様にご確認をお願いしておりますが、現在のところご意見はいただいておりません。資料7‐3‐1と7‐3‐2が、10月17日の第3回評価小委員会の議事録と議事概要でございます。これにつきましても、事前に各委員にご確認をお願いしておりますが、現在のところご意見をいただいておりません。これらの議事録及び議事概要は、文部科学省のホームページにおいて公開されることとなっております。

【田中主査】
 ありがとうございました。何かこの議事録についてご意見はございますでしょうか。何か気づいた点がございましたら、1週間以内、11月21日までに事務局までご連絡をお願いいたします。その後、事務局で皆様からいただいたご意見を取りまとめて、公開の手続きを進めたいと思います。
 それでは、本日の議題1に入ります。深海地球ドリリング計画中間評価報告書についてということで、第6回の深海掘削委員会の決定に基づき評価小委員会を3回にわたって開催し、本委員会の委員の皆様にも多数ご参加をいただきまして、中間評価報告書の評価小委員会案を作成いたしました。それが資料7‐4でございます。これについて、本委員会においてもご議論いただいて、深海掘削委員会として決定をしていただきたいと思っております。
 まず、事務局からご報告をお願いしたいと思います。

【田中企画官】
 それでは、資料7‐4深海地球ドリリング計画中間評価報告書(案)についてご説明させていただきます。では、適宜区切りつつ説明していきたいと思います。
 まず、1枚捲っていただくと目次がございます。序文はこれから主査に書いていただくことになっていますが、1が評価の対象、2が評価の実施体制と方針。3が深海掘削の経緯、4が航空・電子等技術審議会による事前評価について、5が事前評価後の深海地球ドリリング計画に対する評価という構成になっております。
 続きまして、内容についてご説明させていただきます。
 まず、1.評価の対象。深海地球ドリリング計画を対象とする。その計画とは次の3要素から構成される。ライザー掘削船とその関連技術を開発するということ。ODPの後継計画として、日本と米国の掘削船等が相互補完するIODPを推進するということ。3つ目は、IODPによって得られたコア試料及び掘削孔を用いた研究を総合的に推進するということ。この評価においては、平成10年12月の航空・電子等技術審議会による評価を踏まえた、それ以降の本計画関係者の取組みについて、中間的な評価を行うとなっております。
 続きまして、2.1評価の実施体制と方針。これは、第6回深海掘削委員会で決定していただいたことでございますが、科学技術・学術審議会海洋開発分科会深海掘削委員会が評価を行う。まず、評価小委員会が報告書(案)を作成し、深海掘削委員会が報告書を取りまとめることとしております。
 2.2評価の観点。平成17年9月に文部科学大臣決定されました「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」に基づく中間評価として、研究開発プロジェクトの計画の進捗状況について第三者評価を実施した。特に留意した観点は以下のとおりということで、前回の深海掘削委員会の際に決めていただきました7つの観点を入れております。「ちきゅう」が十分な性能を備えた船であるか。運用環境が築けているのか。IODPは意義ある計画となっているか。我が国がIODPを主導できているか。国内におけるIODP関連活動の推進体制が築けているか。人材育成に努めているか。普及広報活動を積極的に実施しているか、という7点でございます。
 評価結果の扱いにつきましては、プロジェクトの目標・計画の見直し等に適切に反映することを目的とし、評価結果等は国民にわかりやすい形で公表するなど、積極的に情報提供を行うこととしています。

【田中主査】
 今、ご説明いただいた1.評価の対象、2.評価の実施体制と方針について、ご意見ございますでしょうか。

【森田委員】
 1.評価の対象についてですが、ODPの後継計画として、日本の地球深部探査船とアメリカの従来型掘削船等と記載されていますが、欧州の特定任務掘削船については対象外なのですか。IODPというのは三種類の掘削船の運用によって成っています。対象は二船なのでしょうか、三船なのでしょうか。

【田中企画官】
 それは、二船とか三船という言葉ではなく、日本の船と米国の船等ということで、特定任務掘削船は「等」で表しており、本計画は三船体制のIODPの推進を要素としております。

【平(朝)委員】
 IODPがODPの後継計画というのは違和感がある。「後継計画」というよりも、ODP後の新しい計画として作ったというのが我々の認識だと思います。細かい言葉ですが、ニュアンスは相当違うと思いますので、「ODP後の新しい計画」としてと修正していただきたい。

【田中主査】
 それは正しく直す必要があるね。

【田中企画官】
 ここは、航電審の事前評価報告書抜粋なのですが。

【平(朝)委員】
 事前評価の後に文部科学省と米国国立科学財団の間で、IODPの位置づけというのがさらに明確に位置づけられたと思っています。

【岡田委員】
 平(朝)委員がおっしゃっているのは大事なポイントで、米国の多くの関係者はこういうふうに認識しているから、いろいろと問題が起こっています。組織の運営及び管理の方法等、IODPについて全てがODPの後継計画であり、米国には経験がたくさん蓄積されているのだから、それに従うようにという姿勢があり、非常に困っている。少なくとも日本の報告書なのだから、平(朝)委員のおっしゃった文章が正しいと思います。

【田中企画官】
 そうすると、1つの案としては、「ODPの後継計画として」という句を外すということにするのか、それとも、ODP後の新しい計画という言い方にするのか、どちらかということでしょうか。

【平(朝)委員】
 後者だと私は思います。

【森田委員】
 ODPを元にはしているということでしょうか。

【平(朝)委員】
 そのような動きも実質的にはありました。前段で、「ODPで用いられていた科学掘削船の技術的限界を越える能力を持つ」とあるので、これと対比して、ODP後の新しい計画であるということで記載してはいかがでしょうか。

【佐藤委員】
 ODPがあって、そこから新しく出てきたということであれば、IODPとODPは繋がっているとは言えますよね。

【平(朝)委員】
 大きな科学史的な流れとして、計画の枠組みとしてはそうです。

【佐藤委員】
 私どもが聞いていると、「後継計画」という記載でもあまり違和感はないのですが、IODPを作ってこられた人がそういう意識を持っているのであれば、その方がいいと思います。

【平(朝)委員】
 P4の(2)にも、ODPを引継ぎという言葉がありまして、ここもどうするか問題です。「引継ぎ」ぐらいの書振りなら、単に時間の流れを言っているということであれば、それはそれで構わないと思うのですけど、枠組み等を引き継いだわけではなく、全く新しく作り直したのですから、ここも修正すべきだと思います。

【平分科会長】
 1.評価の対象のところからは、「ODPの後継計画として」という記述を、P4のところも「引継ぎ」という記述を削除すればいい。

【長沼委員】
 1つお尋ねしたいのですが、この評価報告書がもし公開されて、アメリカ側の人が読んだ際に「ODP後の新しい計画である」と書いてあった場合、アメリカ側から、岡田委員がおっしゃったように、ODPの後継であると認識しているとクレームがついた場合に、我々が新しい計画であると主張する根拠となるような文章があれば、よろしいかと思います。政府間の話合いの際に、そういった文章は作られているのでしょうか。

【末廣委員】
 「後継計画」というのは、精神としてはODPで培った知見などを継承していくという意味で後継かもしれないが、ODPは米国が明確に終了させた。日本がIODPについて提案していなければ、確実に米国はODP終了時点で深海掘削を終えていたところを、日本が本計画の第1の要素を提案したが故にIODPが作られた。それは誤解されないようにしておくのがよろしいかと思います。

【岡田委員】
 米国の関係者全員がそういう誤解をしているわけではないのです。しかしながら、ODPの歴史があまりにも古いため、IODPの立上げに関係しなかった人が、特にそういうふうな誤解をしてしまっている。IODPとODPで一番大きく違うのは、IODPはIODP‐MIという国際的な中央管理組織を作りました。ODPの際には、単にODPに参加している米国の研究所がこの役割をしていたので完全に米国主導であった。

【長沼委員】
 私も「IODPは新しい計画」と書くことをサポートしたいという気持ちが強いのですが、アメリカ側から反論があった場合には、根拠のようなものが必要だと思いました。もし根拠となるような文書があるのなら、それは非常に強いサポートになると思ったのですが、今おっしゃられたような事実について主張していけばよろしいかと思います。

【佐藤海洋地球課長】
 3ページについては、箇条書きで3要素を短く書いていますから、「ODPの後継」としてというのは削除してもよいと思います。ただし、「ODPを引継ぎ」とある4ページについては、議論があったように、「ODP後の新しい計画として」などの言葉にしたらいいのではないでしょうか。こちらは3ページに比べ、もう少し詳しく述べているわけですから。

【田中主査】
 それでどうですか、平分科会長。

【平分科会長】
 はい。結構だと思います。

【田中主査】
 では、先へ進んでよろしいですか。3をお願いします。

【田中企画官】
 3.深海掘削の経緯。(1)深海掘削の歩み。ここでは、1959年にモホール計画が提唱されたというところから始まりまして、グローマーチャレンジャーを用いたDSDP、それから75年からの、NSF主導で始まった国際プロジェクトとしてのIPOD、それから1985年から2003年に行われたODPと深海掘削は行われてきた。これらの中で深海掘削はプレートテクトニクスの証明と地球科学の発展において重要な役割を果たしてきたと書いております。
 (2)のIODPでは、これはODPを引継ぎ、2003年10月より我が国と米国によって開始されたプロジェクトである。その後、欧州、中国も参加している。我が国が提供するライザー方式の掘削船と、米国が提供するノンライザー方式の掘削船を主力掘削船とし、欧州が提供する掘削船を加えた複数の掘削船を用いて地球上の各地の海底を掘削し、いろいろな研究を行うとしております。
 ここまでとします。

【田中主査】
 先ほどのお話のとおり「ODPを引継ぎ」を、「ODP後の新しい計画として」と修正いたします。では、ここについて他にご意見をお願いします。

【兼原委員】
 3.(1)の上から6行目に国際共同深海掘削計画とありますが、もしこの訳が昔から一貫して使われているのであれば、そのままでよろしいかと思うのですが、どう読んでも英文の中に「計画」という言葉は入っていないので違和感があります。前ページの評価の対象のところの国際深海掘削計画は、オーシャン・ドリリング・プログラムですから、「計画」と入っていても違和感はないのですが。

【田中企画官】
 これは、日本語にすると区別がつきがたいところを、それぞれの計画毎に区別するためにこのような訳を使っています。

【平(朝)委員】
 IPODというのはDSDPが発展して国際化したものですから、訳は違うかもしれない。

【田中主査】
 国際プロジェクトは英文をそっくり忠実に訳せばいいというわけでもないのでこのままでいいのではないでしょうか。こういうことはよくあることですから。
 他にございませんか。
 それでは、4をお願いいたします。

【田中企画官】
 それでは、4.航空・電子等技術審議会による事前評価について。平成10年の事前評価の結果について確認を行ったということです。4.1と4.2をまずご説明したいと思います。
 4.1航空・電子等技術審議会による評価の内容。(1)地球深部探査船の開発の意義。石油・ガス等を越えての掘削及び掘削孔の安定化の能力がなかった従来型科学掘削船の問題点を記述して、それを解決する技術として、5ページからライザー掘削技術を高度化して、海底下7,000メートルを掘削する能力を持つ地球深部探査船の開発が提案されたことが記述されております。将来的に、水深4,000メートル級でのライザー掘削を目標とする。これについてはライザー技術国際ワークショップにおいても検討され、その技術評価の結果、妥当であると結論づけられ、海洋研究開発機構により開発されることとなった。
 (2)科学技術上の意義。IODPでの研究開発の主要なものは次のとおりということで、海洋底堆積物の分析による古環境の研究、地震発生機構の研究、巨大火成岩岩石区の掘削によるプリューム・テクトニクスの検証、地殻内生命の探索、ガスハイドレートの生成と崩壊の機構の研究、こうしたものが挙げられております。これらは、「ちきゅう」の優れた掘削能力により達成されるものであり、他に適当な代替手段がないと認められるとされております。
 その技術的意義として、この技術は海底油田の探査のために開発され、我が国の技術は欧米に比べて大きく遅れていることは事実である。こうした船を我が国が建造することで、外国技術の導入により世界の英知を集める、そうしたことで自前の技術体系を構築するということは大きな意義がある。また、その技術的波及効果についても、価値を持つものと考えられるとしております。
 (3)技術的妥当性及び開発の進め方では、まず、水深2,500メートル以深でのライザー掘削というのは実現可能と判断され、水深4,000メートル級での運用を目指すには、2,500メートル級掘削において成果を得つつ、運用技術を習得し、そうしたデータから4,000メートル級を目指していくことが妥当と考えられる。ただ、常に革新的な技術開発に関心を持っていくことに留意すべきである。
 (4)社会的・経済的意義及び緊急性ですが、これについては、この計画は人類が共有し得る知的資産である科学に、我が国が率先して貢献する意義が大きいと考える。しかし、それのみにとどまらず、災害や地球温暖化等の社会が直面する課題についても、解決に結びつくものと考えられる。こうした諸課題への取組みの重要性、緊急性を踏まえれば、本計画に緊急に取り組むべきと考えるとしております。
 (5)運用及び研究の進め方。深海掘削というものは世界各海域で掘削を行うことから、本質的に国際協力を必要とする。本計画が長期にわたって成果を挙げてきたODPの体制を引き継いで発展させたIODPの一環として行われることは、適切かつ有効である。また、二船体制は科学目標を最大限に実現する上で、効率的な運用体制であると認められる。国際的な費用分担については、我が国が受ける科学上の便益が大きいこと、また、我が国がアジア・太平洋諸国の中心となって、地球内部の研究を先導すべきことから見て、我が国が船を建造することが適切である。また、運用段階において運用費を利用の割合に応じて国際分担する考えは合理的であると考えられ、実現に向けて各国に対して一層積極的に働きかけていくことが重要である。
 研究体制としまして、研究体制の整備については最大限の努力を払うべきである。また、掘削船の運用とプロジェクト推進の中核となる研究拠点、それから多数の分散した小規模な研究グループとが連携して、相互に牽引し合う研究体制を整備するなどの取組みが必要である。若手研究者への支援、関連陸上施設の設置など十分な措置を、地球深部探査船の完成までに講じるべきである。
 費用対効果としましては、社会的・経済的効果について確度の高い数字を導くことは、現時点では困難なため、費用対効果を論じることは、あまり意義のあることではないと思われる。それを前提として、気候変動等に関する本計画の効果を考えると、その投入する費用に比べ、十分に効果が大きいと推定される。また、若い研究者や次世代の人々が、研究や開発に対する夢をはぐくむことのできる新たな活躍の場が作られる効果が大きい。我が国の活動に対しての国際的評価が一段と高まることが認められるとしております。
 (7)総合評価として、これらから見て、本計画の推進は、21世紀の我が国の科学技術の発展に必要なものと認識されるとしております。
 4.2航空・電子等技術審議会評価についての確認。本計画は、現在の科学的、技術的及び社会的意義が大きいものであることから、事前評価の結果が妥当であることが確認され、我が国が地球深部探査船「ちきゅう」を建造し、IODPを推進することとなった経緯及びその妥当性について確認されたとしております。
 この部分は基本的には、平成10年の航空・電子等技術審議会の報告書を引用しております。

【田中主査】
 ありがとうございます。4について、何かご意見ございますでしょうか。

【平分科会長】
 科学技術上の意義について、巨大火成岩岩石区の掘削とかガスハイドレートというのも、航電審に既に取り上げられていたのですか。5ページのcとd。

【田中企画官】
 はい。そうです。航電審では、例えば巨大火成岩岩石区の掘削によるプリューム・テクトニクスの検証、あるいはガスハイドレートの生成と崩壊の機構の研究というふうに取り上げられております。

【平分科会長】
 わかりました。では、今回新しく記載されたわけではないですね。

【田中企画官】
 はい。

【田中主査】
 ここまでで航電審の事前評価をおさらいして、それを位置づける。その上に立ってさらにこの中間評価を行うという形式にしております。

【平分科会長】
 わかりました。7ページの費用対効果について、こういう書き方は積極的ではないのではないでしょうか。難し過ぎて意義がないというのは。
 本計画には、地震のメカニズムがわかる、気候変動がわかる、ガスハイドレートもわかると、積極的な意義は多くあるわけですからこのようなことを書くべきではないのではないですか。積極的な意義は5章の方には今も書いてあるのですけれどね。

【森田委員】
 「論じる」の前に、「定量的」などの言葉を付ければいいのではないでしょうか。確度が高い数値を導くことは難しいので、費用対効果を「定量的に」論じることはあまり意義があることではない。しかし、定性的には意義があるのでしょう。

【田中主査】
 航電審の事前評価ではこのように非常に控えめに書いてある。これが悪いかどうか。効果があるのだから積極的に書けというのはそのとおりなのですが、これは非常に難しいところです。

【堀委員】
 おっしゃるように、今、予算が年々削減される状況の中で、マイナスな印象を与える表現だと思います。実際、地震発生メカニズム、メタンハイドレート等を対象とした科学目標とそれを利用した産業振興の社会的な貢献度はかなり高い。これだけ意義があるものに、費用対効果を論ずる意義がないなんてとんでもないことだと私は思います。

【平(朝)委員】
 私も、意義のないことと書くことは必要ないと思いますが、これは航電審に書いてあることの要約ですので、この文章を取っていただくのがいいと思います。「現時点では困難なことである」と。困難なことは確かですから。「したがって」から「思われる」までを、削除していただければありがたいと思います。

【田中主査】
 そうですね。

【兼原委員】
 前回の評価小委員会の際にも質問させていただいたと思いますけれども、4ページから8ページにかけて、航空・電子等技術審議会による事前評価を紹介することだけが目的ということでいいのでしょうか。
 つまり、この報告書全体の中で、なぜこれだけのページ数を割いて航電審の事前評価を書くかといえば、例えばそこで現れた評価の視点を、今回中間評価を行う我々、深海掘削委員会も引き継いで、観点として継続性を保ちながら評価したとか、そういう意味があるからのはずです。もし、紹介しているだけとするのであれば、いかに文言、表現がおかしくても、それは変えることはできないわけです。ですから、そこを明確にする必要があると思います。
 より実質的には、4ページの4.の最初の2行「事前評価の結果について、以下のとおり確認を行った」というのは、これは私たち深海掘削委員会が行ったという意味ですか。
 それから、4.2の「本計画は、現在も科学的、技術的…結果が妥当であることが確認され」というのは、誰が確認したのでしょうか。
 申し上げたいことは、前回も申し上げたとおり、航電審の評価をなぜ紹介するのかといえば、これを踏まえて、そこから評価の観点を引き継いで、それを新たに今回評価するためだと思うのですけれども。

【田中主査】
 勿論そうです。

【兼原委員】
 そうなら、その点をはっきりと、4.の最初の2行もしくは8ページの4.2の3行で明確にしないといけない。4.2は受動態で主語がないから、誰が言っているのかわらない。そこを明確にされれば、あと中身は修正せず、再紹介しただけと割り切ればいいのではないかと思います。

【田中企画官】
 この部分は、評価する主体となる深海掘削委員会が前回の航電審の事前評価を振り返って、今の時点ではどうかということを確認する部分です。それを踏まえて、それ以降、どのようなことが行われたかということについて評価する。
 したがって、まず4の最初の2行にあるように、「事前評価の結果について、以下のとおり確認を行った」というのは、この委員会が確認を行ったということでございますし、4.1で航電審の各報告事項についておさらいをして、その結果として4.2で現在でも事前評価の結果は妥当であることがこの委員会により確認されたということです。

【兼原委員】
 だったら明記されたらいかがですか。

【田中主査】
 書いてある。そのことは、4の最初と最後に書いてあります。

【兼原委員】
 ですから、この委員会が事前評価の結果を妥当であると確認したという意味だったら、主語を書いてもいいのではないですか。

【田中企画官】
 そうです。3ページの2.1にありますように、まず、誰が評価するかということについては、「深海掘削委員会が評価を行い」と書いております。だから、4.2では、「評価の結果について、以下のとおり確認を行った」の確認を行った者は、この評価を行う主体が確認を行ったということになります。

【岡田委員】
 別に主語を入れてもいいではないですか。何の抵抗もないのではないですか。誰がどうしたと責任を明確にした文章を作った方がよい。

【田中主査】
 主語は自ら明らかになると思いますが。

【岡田委員】
 自ら明らかになるかもしれませんが、書いても悪くないではないですか。

【鈴木委員】
 表紙に評価小委員会案とあるのですが、これは完成した際には無くなるということでよろしいですか。

【田中企画官】
 はい。今は評価小委員会案ですけど、最終的には科学技術・学術審議会海洋開発分科会とすることとなります。

【平分科会長】
 ですから、今、兼原先生も問題にしたのは、航電審の事前評価についてそのとおり書いているというから、ではなぜ我々が時間をその事前評価に使うのかという疑問であって。

【田中主査】
 航電審の事前評価に従ってこのプロジェクトは始まったわけです。そして、今回は中間評価なのだから、事前評価で指摘された問題を踏まえて、きちんと進められているかということを評価する。そのために、まず、航電審ではどういう評価であったのかということを書いてあれば、非常に読みやすくなるので、この4章が記載されている。航電審の事前評価のことが何も書いてなかったら読み難いではないですか。

【平分科会長】
 わかります。実際に今の案の4章は事前評価のとおりに書いてあるのですか。

【田中企画官】
 そのままコピーしているわけではありません。主要なところを抜き書きしています。

【兼原委員】
 そうすると、私は科学的に専門的なことはわからないのですけれども、最初の4ページの4の始まりでは、航電審の「事前評価の結果について、以下のとおり確認を行った」とあり、事前評価で重要なところを中間評価報告書に抜き出して、文字どおり確認している。だけど、8ページになって4.2の2行目のところでは、「事前評価の結果が妥当であることが確認され」とあり、航電審の事前評価について、その評価が妥当であったと我々が改めて評価するわけです。この二つは全く意味が違う。

【田中企画官】
 はい。この部分については、第1回評価小委員会で資料として検討していただきました。その際、これらの項目につきまして、事前評価ではこう書かれているが、現在はどうかということについて検討いただき、現在においても妥当であると確認していただきました。

【兼原委員】
 そうであれば、読んだ人が混乱しないように、改めて今回の中間評価の手続として、航電審の事前評価の結果について検討した上で、それが妥当であるという認識あるいは見解が示されとか、表現を変えてわかり易くすればいいのではないでしょうか。

【田中主査】
 文章は任せていただけますか。少し加筆してみます。

【佐藤海洋地球課長】
 7ページの「したがって」の2行は抜かせていただいて、今の8ページの4.2は、この委員会ではこういうふうに確認したということがわかる表現になるように再度整理したいと思います。

【長沼委員】
 1つご提案してもよろしいでしょうか。
 4章については、単純に7年前の事前評価の再確認ということでいいと思います。ですが、7年という時間が経ったわけですね。例えば6ページの(4)のところに「社会が直面する課題」、「緊急性」などという記述がありますが、これらはこの7年で増しているのではないでしょうか。私は事前評価から今に至るまでの間に、これらの重要性や緊急性がより増しているのであるというような観点を入れていただければ、これがこの中間評価の一つの目的といいましょうか、推進という目的につながるのではないかと考えます。

【佐藤海洋地球課長】
 検討したいと思います。

【田中主査】
 それでは、いよいよ5章に移っていただきたい。

【田中企画官】
 5.1.1(1)の1、2をまず説明させていただきます。
 5.事前評価後の深海地球ドリリング計画に対する評価。5.1深海地球ドリリング計画に対する評価。事前評価に従って取り組まれてきた計画について、それを推進してきた関係者より説明を受け、以下の結論を得たとしております。では、まず5.1.1地球深部探査船に関する取組みについて、「ちきゅう」の性能、それから関連施設の運用環境について評価を行った。
 (1)「ちきゅう」の建造について、1「ちきゅう」の性能と研究者の提案の反映状況。「ちきゅう」は平成17年7月に完成し、その仕様については、学識者等からなる委員会を機構に設置して検討され、その結果、「ちきゅう」は科学掘削船として初めてとなるライザー掘削方式、自動船位保持システム等の採用によって、航空・電子等技術審議会で適当と評価された、水深2,500メートル、最終的には4,000メートルにおいて、海底下7,000メートルまで掘削するという性能を満足する船となっているものと考えられる。また、その建造にあたっては、機構に有識者からなる委員会を設けること等によって、研究者、運航者等の立場からの意見を聴取し、また必要な措置が講じられた。この結果、「ちきゅう」は研究者、運航者等の提案が十分に反映されたものとなっていると評価できる。
 今後、その性能を試験運用において確認するとともに、国際運用に向けて着実に準備を進めることが必要である。さらに、科学者のニーズにこたえ、地殻とマントルの境界を貫くため、「ちきゅう」の試験運用及び国際運用を通じて、機器開発及び運用技術の検討を行っていくことで、水深4,000メートル級でのライザー掘削の早期実現に向けて取り組むべきである。
2「ちきゅう」の建造体制とコスト。「ちきゅう」の建造会社については、十分な実績・経験に裏づけられた高度な技術力と、国内外の企業等を取りまとめる管理能力を有して、確実に事業を遂行できる建造所を選定し、その一元管理のもとで船体、掘削関連機器等について、それぞれ詳しい企業が担当して、効率的な体制で建造を行った。このように、外国の技術を日本に集め、世界最先端の科学掘削船を造るという自前の技術体系の構築にも、十分に配慮を行った。建造中には、公的統一単価等に基づく検討をもとに各種費用を算定の上、建造会社と契約を行うことで、適切な費用で建造されるよう絶えず確認を行ってきた。これらのことから総合的に考えると、「ちきゅう」は我が国に技術力が蓄積するような建造形態を確保しつつ、科学的目的を達成する上で必要な性能を満たすため、適切な体制で建造され、その建造費用約600億円は適切であったと評価できるとしております。

【田中主査】
 ここまでで何かご意見ございますか。

【平分科会長】 2の「ちきゅう」の建造体制とコストですけど、果たして我々はこの委員会で600億円というのまで妥当という判断ができたのでしょうか。

【田中企画官】
 これについては、まず、「ちきゅう」に求められた性能が何だったか、それを満たすためにどういう船として設計され、造られてきたかという性能が確認されて、それを造る過程が適切に行われてきた、つまり、例えばいろいろな費用について確認しながら建造してきたということを主とした視点として、適切な体制で造られたなら適切な費用であるとこれまでの委員会で評価されてきたと考えています。

【田中主査】
 これは具体性があってよろしいのではないですか。

【佐藤委員】
 ただ、その根拠が、適切な体制だからコストも適切であろうということですよね。体制がいいのだから、恐らく費用もいいと考えますが、もう少し安くできなかったのかというようなことが本当に判断できるのかはわかりません。

【田中主査】
 これは評価小委員会でも既に議論されたことですよね。

【堀委員】
 確か本当はもっと費用が必要だったところを、かなり削減してこの金額に収まったということだったと思います。ですから、むしろ非常に努力した結果がこの額であるというような書き方もよろしいのではないでしょうか。

【平分科会長】
 議論されたなら、了承いたしました。
 もう1点、非常に細かいことですが、三井造船は株式会社にして、どうして三菱重工は2回も株式会社というのでしょうか。

【佐藤委員】
 正式には株式会社という言い方はないですね。前に株を付けるのであれば、正確には株式会社三井造船という言い方になります。正しく修正しておいてください。

【田中企画官】
 はい。

【田中主査】
 総合科学技術会議の厳しい評価を受けて、そのお金が適切かどうかというのは毎年議論される。適切であるのなら、この記述があった方がいいのではないでしょうか。

【平分科会長】
 これは検討してきたのだから、600億円と書いていいと思います。

【末廣委員】
 違うところについてよろしいでしょうか。9ページの上の「ちきゅう」の性能と研究者の提案の反映状況の最後、「水深4,000メートル級でのライザー掘削の早期実現に向けて取り組むべきである」という記述ですが、水深4,000メートル級でモホロヴィチッチ不連続面を貫いてほしいということだと思いますが、6ページの技術的妥当性及び開発の進め方で、常に最新の技術に目を配ってやっていくべきであると謳っているわけですから、4,000メートル級での深部安定掘削がライザーで実現されるかどうかは、必ずしもこの時点ではわからないので、もう少し広く読める書き方でお願いしたいのですがいかがでしょうか。
 また、「早期実現」の「早期」というのは、どのくらいだと委員の皆様はお考えでしょうか。

【田中主査】
 「早期」という言葉を削除しろということでしょうか。

【末廣委員】
 いや。2つ違うことを言いました。まずは、ライザー掘削のライザーという言葉を、厳密に取っていただきたくないということです。求められていることは、水深4,000メートルの海域で6~7キロメートル掘削すること。今後、それを達成する方法は、ライザー掘削以外のものが選択されるかもしれない。だから、もう少し広く解釈できるようにしていただけるとありがたいと考えます。

【平(朝)委員】
 末廣委員の言うとおりだと思います。ライザー掘削と限定してしまうのではなく、大深度掘削くらいの記述が適切だと思います。

【田中企画官】
 しかし、5ページの上にあるように事前評価では、最終目標は「水深4,000メートル級でのライザー掘削」としております。

【平(朝)委員】
 これも変えないといけない。
 当時は、ライザーというものが非常に一般的な大深度掘削の一つの技術で、そう書かれただけだと考えます。ライザー掘削は、ライザーパイプというパイプを使うからライザー掘削と呼ばれるのですが、この4,000メートル級の海域での大深度掘削について、ライザーパイプを本当に使うかどうかは、1つ候補ではあるが、今はまだ決まったわけではない。

【森田委員】
 そうですね。あなたの言うことは正しい。そうであれば、ライザーという言葉を取らなくてはいけない。

【佐藤委員】
 そうすると、これから「ちきゅう」を運用して、水深2,500メートル級でデータ等を蓄積して水深4,000メートルでのライザー掘削を目指すということが今までの方針だったのですが、水深4,000メートル級の海域での大深度掘削はライザー掘削ではないとすると、水深2,500メートルまでの海域でのライザー掘削は、水深4,000メートルを目指す際にはあまり参考にならないということですか。

【平委員】
 いや、ものすごく参考になると思います。
 新技術で行うことになったとしても、結局、どこにBOPを置くか、どこにポンプを置くか、パイプを使うのかチューブを使うのかという違いで基本的には同じ仕組みですから。

【平分科会長】
 石油・ガスの噴出を防止するなどの性能は変わらないのですか。

【平(朝)委員】
 それは変わらないです。それはしなければならない。

【平分科会長】
 掘削を安定させる能力なども変わらないのですね。

【平(朝)委員】
 それは同じです。

【平分科会長】
 そうすると、名前が違うだけで基本的には同じなのですね。
 しかし、一方で航電審の評価のように今までライザー掘削と言ってきたわけですね。

【平(朝)委員】
 だけど、ライザーというのは大深度掘削を指す一般的な呼び名として使ってきただけと認識しております。

【森田委員】
 泥水循環システムには変わりないのですけれども、違うシステムかもしれない。

【佐藤委員】
 いろいろ勉強して、新しい技術を取り入れなさいと書いてあるのですね。
 そこは矛盾してないと思います。

【平(朝)委員】
 まさにそのとおりです、精神は。

【佐藤委員】
 ただ、航電審で水深4,000メートル級の海域でライザー掘削に取り組むと書いてあり、今は恐らくそういうふうに言っていませんか。

【末廣委員】
 それはまさにこの委員会で見直していただけると。

【森田委員】
 5章の「ライザー」という言葉を削除して、大深部掘削の早期実現に向けて取り組む、それでいいではないでしょうか。航電審の部分は当時の評価として残しておいて。

【平分科会長】
 でも、もう少し説明をしてほしいと思います。

【堀委員】
 そうしますと、ここでは「ちきゅう」の建造の話をしていて、ライザーパイプが搭載されている。文章から「ライザー」という言葉を削除すればいいというような簡単な問題ではない。

【平(朝)委員】
 それは広い意味では、泥水を循環して船まで上げて掘削する、あるいは海中に泥水を放出しないで掘削するというシステムとして同じですから。

【森田委員】
 同じです。

【平(朝)委員】
 目的が水深の大きい海域で深く掘るということであって、ライザー掘削というものを用いるのが目的ではない。

【末廣委員】
 「ちきゅう」がそれへの道であるということには揺るぎはない。だけど、今後はいかに効率的に研究開発をやっていくかも考えていく必要がある。まさに世界の注目を集める中で最先端の技術に取り組まなければならないわけで、どう取り組んでいくかというときに、ライザー以外は使ってはいけないということでは笑いものである。

【平(朝)委員】
 勿論、水深3,000メートルくらいの海域まではライザー方式でいいと考えられている。今のシステムは確かに最も強力ですから。それより先は未知の技術ですので、いろいろなオプションがあるということ。

【佐藤海洋地球課長】
 将来の掘削システムがどうあるべきかというのはそのときの議論で、確かにそのときの最新の技術でいいと思う。しかし、今議論しているような専門的な事柄は、今までのライザー掘削という選択は本当に正しかったのかという議論を呼ぶような気がします。だから、将来の仕組みはそのときに最適なものを考えなくてはいけないということだけ、委員の皆様の共通認識にしておいていただければ、文言は大深度掘削でもライザー掘削でも、私はどっちでも問題ないと思います。ただし、今の段階で水深2,500メートルの海域での掘削であれば、ライザー掘削が最適ということは変わりない。

【平(朝)委員】
 それはもう確固たるものです。本当に、2,500メートルから3,000メートルの水深では、今のライザー掘削技術以外はあり得ない。

【佐藤海洋地球課長】
 それでは基本的に、事前評価に関する記述は修正しないことにして、この中間評価の部分だけは「大深度掘削」ということにしましょうか。

【平(朝)委員】
 そうですね。

【末廣委員】
 もう一点なのですが、「早期」というのは、委員の皆様にはどのように受けとめられるのか。

【平分科会長】
 早期は早期です。何か問題があるのでしょうか。

【末廣委員】
 つまり、国民の期待を裏切るわけにはいきませんので、早期と言ったときに国民が5年先だと思われたら、それは我々にとっての早期ではない。理解に齟齬がないようにするため確認させていただきたい。

【平分科会長】
 もっと時間がかかるということですか。

【末廣委員】
 はい。

【田中主査】
 まず、水深2,500メートルの海域で掘削して、得るべきことがどうしようもないくらいあるから。それで成果を十分上げてもらうことが、一番大事なのですが、将来的に水深4,000メートルを目指すのであれば、この中間評価に書いておかなくては予算化できない。

【末廣委員】
 それはわかっています。だから、早期というのが世界に先駆けてということであれば問題ないと思います。誰かが実現した後に、追いかけるようなつもりは全くありませんから。

【田中主査】
 「世界先駆けての」という記載でもいいと私は思う。

【末廣委員】
 そうすると張り切りがいある。積極的に取り組みたい。

【田中主査】
 先へ進んでいいですか。それじゃ、次をお願いします。

【田中企画官】
 それでは、(2)のところ、1、2にいきます。
 「ちきゅう」及び関連施設の運用環境。1効率的な運用体制の整備。「ちきゅう」はこの運用について、円滑な運用体制を確保するために十分な検討が必要で、運航部門、掘削部門ともに「ちきゅう」の艤装に携わり、それぞれの分野において十分な実績を有する国内外の会社の人材が配置されることとされており、円滑な運用に必要な体制が備えられていることは評価できる。
 試験運用当初においては、機構が自ら運用しながら必要な知見等を蓄積し、以降、運用者を含む運用体制を適切に定めるという段階的取組みも、より効率的な運用体制を求めるという姿勢として妥当である。将来的には、ノウハウの蓄積等により、さらに効率的な体制を検討することが重要である。
2安全な運用体制の整備。「ちきゅう」の運用における安全管理については、石油業界で採用されている労働安全衛生及び環境保全管理システムを導入して、統合的なマネジメントを行っている。また、緊急時の対応についても取り組んでいる。さらに環境保全についても、環境管理計画、海洋汚染防止計画等に即して取り組んでいる。これらのことから、「ちきゅう」の安全な運用のための総合的な体制が適切に構築されているものと評価できる。今後も、安全に十分配慮した体制のもとで航海が実施されるよう、絶えず注意することが必要である。
 なお、航海中の故障等不測の事態により、その安全性が脅かされることがないように、定期的及び日常的に保守整備を行うことが重要であり、これにより「ちきゅう」の継続的な運用を可能とし、効率的運用にもつながるものと考える。

【田中主査】
 ここまで、何かご意見ございますか。よろしいですか。
 それでは先へ進んで3。

【田中企画官】 3研究支援体制の整備。「ちきゅう」の船上研究支援体制の整備については、機構が我が国の科学コミュニティー、IODPの科学諮問組織、外部有識者による委員会等の意見を検討・反映しつつ取り組んでいる。これにより、機構に研究支援を担当する部署を設けること並びに研究及び危機運用に精通したすぐれた人材を「ちきゅう」に配置することで、体制の構築が進められている。このように、「ちきゅう」がコアを適切に処理し、「海の上の研究所」として機能するために取り組んでいることは評価できる。今後、機構は国際運用までにその体制を確立し、人材の育成等、長期的な体制の維持・発展にも必要な措置を講じていくべきと考える。
4海洋コア総合研究センターの整備。高知大学海洋コア総合研究センターは、米国及びドイツのコア保管施設とともに、コアの保管・分析・解析のための陸上研究施設である。海洋コア総合研究センターでは、コア120キロメートル分を適切な温度下で冷蔵・凍結保存するための保管庫に加えて、採取されたコア等の試料の基礎解析はもとより高度な解析を要する研究まで、世界最先端の研究を一貫して実施することを可能とする研究機器が設置されており、必要な整備が行われていると評価できる。また、機構の関連研究部門が海洋コア総合研究センター内に移設され、研究実施体制の構築にも取り組んでいる。今後、コアの分析・解析の中核的な施設として機能するための体制の充実に取り組むことが重要であるということです。

【田中主査】
 はい。ありがとうございました。3、4についてご意見ございますか。

【平分科会長】
 高知大学海洋コア総合研究センターは、「ちきゅう」が1回で6キロメートルのコアを取るとすればどれくらいの期間の「ちきゅう」のコアを保管する能力があるのか。

【安田委員】
 「ちきゅう」が1年で採取する平均的な長さのコアの10年分を担保しております。

【堀田氏(CDEX)】
 そうですね。「ちきゅう」は1年間に6キロメートル掘削するというのは、なかなか技術的に難しいかもしれないと考えております。恐らく、年間5キロメートルくらいになると思います。

【田中主査】
 年間5キロメートル。

【堀田氏(CDEX)】
 はい。

【平分科会長】
 1つしか穴は掘らないのですか。

【平(朝)委員】
 時間の問題なのです。例えば、海底下6キロメートル掘削するために1年半かかります。

【平分科会長】
 そんなにかかるんですか。わかりました。120キロメートル保管できるのであれば、そんなに慌てることはない。

【田中主査】
 それよりも、貯蔵してからそれをいかに活用して、研究成果を出してくるかということ、それが大事だと思います。
 では、5.1.2をお願いします。

【田中企画官】
 5.1.2IODPの構造と我が国の取組みについて。ここではIODPの意義、主導国としての我が国の取組み、国内における関連研究推進体制について評価を行ったということです。
 (1)IODPの意義。IODPの目的は、地球システム変動について科学的調査を行うことである。その科学目標は「IODP初期科学計画(ISP)」で確認されている。その科学目標として、地球環境変動解明、地球内部構造解明及び地殻内生命探求、これを三大テーマとして、その詳細としては、下にありますように、地球環境変動解明として極限機構環境及び急速な環境変動。それから、地球内部構造解明として地震発生帯、大陸分裂と堆積盆地の形成、巨大火成岩岩石区及びマントルへの掘削。「地殻内生命探求」として、深部生物圏及びガスハイドレートとされています。
 次の12ページですが、これらは航空・電子等技術審議会で評価された科学的目的ともその方向性は一致しており、IODPは、我が国の国民の関心も高いと思われるこうした広範囲な科学分野に大幅な前進をもたらすと考えられる。また、ISPの作成にあたっては、我が国研究者も積極的に参加しているということで、我が国にとってIODPは利益のあるものとなっていると認められ、今後は、IODP参加国がISPの達成のために必要な方策を常に意識しながらIODPを推進するよう、我が国が主導していくべきである。
 また、「ちきゅう」を運用することによって我が国の経済・社会に対する波及的効果も大きいものと考えられるということで、地震発生予測、緊急通報による地震防災、気候変動モデルの検証による将来予測の精密化等科学的成果を用いた実用分野の発展が期待される。また、世界を舞台として最先端の掘削技術を駆使して活動を行うことによる技術開発は、人材育成の貢献というものも考えられる。また、大深度掘削での物質採取による知見の蓄積は、引いてはバイオテクノロジー、メタンハイドレート等のエネルギー資源ポテンシャルに関する開発等へ貢献することも期待される。
 そして、我が国を含むIODP参加国の研究者は、科学目標を効率的に達成するために適切な体制となっていると考えられる。
 これらのことから、IODPは我が国にとって十分に意義のあるものであると評価できるとしております。

【田中主査】
 何かご意見ございますか。ここは積極的によく書けていると思います。

【平分科会長】
 そうですね。

【安田委員】
 12ページで、「大深度掘削での物質採取による科学的知見の蓄積は」とあるのですが、メタンハイドレートは非常に浅い海底に近い場所で基本的には生成される。大深度掘削の物質採取がなぜメタンハイドレートの知見の蓄積に繋がるのでしょうか。無機ガスなどもそんなに大深度掘削をする必要がないと思います。

【末廣委員】
 メタンハイドレートの集積には、深部の状況もかかわる。

【鈴木委員】
 メタンハイドレートに関しては、確かに存在している場所は海底下数百メートルのところが多いわけですけれども、システムとしてみた場合には、その深部も含めて考えないとわからない。例えば集まる場所とできる場所など検討すべきことはいろいろあるので、今の記述でよろしいのではないでしょうか。

【平(朝)委員】
 細かい章立ての話ですが、先ほど長沼委員も、社会的意義とか経済的意義みたいなものを強調しなさいという話があったので、IODPの意義という中に書いてあるのは、1番目は科学目標とその意義ですね。12ページで、「また、IODPにおいて『ちきゅう』を運用することによる我が国の経済・社会に対する波及的効果も大きい」とある。2で経済・社会への波及効果みたいな小さい章立てを入れておくと、(1)の中に科学物質とその意義の1、それから2として経済・社会への波及効果という構成が読者にとってわかりやすくなる。前の航電審の中でも社会効果というのを取り上げられていましたから、それを受けて、先ほど新しい発展というようなことを含めて書いてはいかがでしょうか。

【平分科会長】
 どういうふうな書き方をするのですか。事前評価の際は、人材育成まで含めて書いてあった。今の中間評価の案でこれに相当するのは、最後の方になるのではないですか。例えば、国民への説明についての前に書くかどうかですね。

【平(朝)委員】
 ケーブルネットワーク、技術開発、人材育成にも貢献するなどというのは、経済・社会への波及効果ですよね。ですから、そこのところ2にとして、経済・社会への波及効果とする。1として科学目標とその意義と書いておけば、IODPの意義には科学目標の達成と社会への波及効果と2つありますというのでどうでしょうか。

【田中企画官】
 それで分けますと、最後の部分の「複数の掘削船を用いる…適切な体制になっていると考えられる。」という部分は1の最後にするということでしょうか。

【田中主査】
 その方がわかりやすいのかもしれない。

【平(朝)委員】
 小見出しを入れて、社会効果とかそういうものを強調してほしいという話です。

【佐藤海洋地球課長】
 では、2つの項目立てにして、再度整理させていただきたいと思います。

【田中主査】
 それは任せてもらえますか。

【平(朝)委員】
 はい。

【長沼委員】
 いいですか。安田先生がご発言になりました大深度掘削の物質採取とメタンハイドレートの関係がわかりにくいというような内容ですけど、11ページの下から3行目にガスハイドレートとありますけど、これをよく読むと、「海底下には大量のメタンガスがガスハイドレートとして濃縮されている。この分布状態」と記載されている。その前に、成因という言葉を入れていただきたいです。それを書いておけば、何でメタンハイドレートの研究に大深度が必要なのかということがもう少し明らかになると思います。メタンガスの由来は必ずしも微生物だけではなく、無機的なものなどもあるだろうということですので、ガスハイドレートはISPの微生物の中に分類されているのですが、幅広に取り入れていただいて、成因という言葉をつけていただければ、平先生のおっしゃる1、2の章立ての中でも整合性が保たれるかなと思う次第です。

【田中企画官】
 今おっしゃっている部分は、11ページの最後の行で、「地殻内微生物の活動との関連を含む生成」という言葉で読めるのではないですか。

【長沼委員】
 私には微生物による生成というふうに読める。そうすると、例えば4キロメートルを超えるような大深度には生物系はいないと書いてあるような印象を与えます。地下4キロメートルまで地下生物圏が広がっているとどこかに書いてあったので。

【田中企画官】
 それは5ページの「ライダー掘削は、地下4,000メートルまで広がる可能性がある地下生命圏の」という部分ですね。

【長沼委員】
 モホ面を越えてマントルまで掘削するということが、「大深度」という言葉からイメージされてきます。まだ人類が到達していないマントルには、解明されていないことが多くありますよね。さすがにマントルまで行ったときに、そこに生命体がいるかというと、これは多くの人が首を傾けると私は推察するのですけれど、そういうところであっても、メタンが発生している可能性はある。メタンというのは、一応、生物に関係する物質であるから、地殻内生命圏の中で扱って結構だと思うのですけど、それは生命に関連する物質の成因そのものまでが生命の活動の結果であるというわけにはいかないと思うのです。そういった意味で、成因というものを幅広に捉えてメタンハイドレートについて検討するのであれば、大深度掘削が必要だということが、先ほどの安田先生のご意見へのお答えになるかと思います。

【鈴木委員】
 今のお話と関係して、長沼委員のおっしゃるように「この」の後に「成因」を入れて、この「成因・分布状態」として、最後の「生成」という言葉は非常に曖昧なので、ここを「形成」にするとかなりよくなると思います。メタンがどこでできるかという問題と、どこでハイドレートが形成されるかという物理化学的な問題を分けて書けば、納得してもらえるのではないかと思います。

【平(朝)委員】
 今の話をまとめますと、安田委員の発言のありました12ページについて、「さらに、大深度」と書いてありますが、これを「大水深・大深度掘削」として、深い海における掘削と海底下深くまでの掘削と両方含むようにするのはいかがでしょうか。一般にガスハイドレート、メタンハイドレートを対象とした掘削は、一般的に大水深での掘削ですので。

【佐藤海洋地球課長】
 11ページのところは、このまま読むと、「この」というのはガスハイドレートを指すような気がする。したがって、メタンガスまで受けた方がいいのであれば、これらのとかいうように修正をするのがいいのでしょうか。

【平(朝)委員】
 大見出しが地殻内生命の探求の中でのメタンハイドレートという縛りがあるので、これはこのままの方がよろしいと思います。

【佐藤海洋地球課長】
 ガスハイドレートのことだけ受ければいいのですか。それであれば、「この」というのは、ここの章はガスハイドレートの章ですので、ガスハイドレートのことを受けていると普通の人は読みます。それであれば、この分布状態云々のところは、「生成」より「形成」の方が、物理的な要因も含む印象を受けますので、「形成」に修正したいと思います。

【長沼委員】
 ここはイニシャルサイエンスプランの精神があるでしょうから、私はあまり詳しく存じませんので、平先生がおっしゃるように私は従っていいと思います。

【佐藤海洋地球課長】
 それであれば、事前評価のときからガスハイドレートについて、ある程度整理してきていますので、ここもガスハイドレートについて記載しているということでここはこのままにさせていただいて、「成因」の方は追加しないで、「生成」は「形成」という言葉にするということでどうでしょう。

【田中主査】 1、2を社会的な効果を強調しながらもっと読みやすくする。今のハイドレートのところも修正するということでよろしいですか。
 では、次をお願いします。

【田中企画官】
 (2)IODP主導国としての我が国の取組み。
1国際的なIODP推進体制の構築。IODPの枠組みは日米の覚書が締結され、日米が対等なリーダシップを発揮する仕組みが決定されたということです。IODPでは、科学者及び技術者により構成されるSASが、計画について長期的な指針を提示して、その提案に基づいて年間の計画を、中央管理組織である、13ページですが、国際管理法人IODP‐MIに勧告する。IODP‐MIはそれを実施機関に作成するよう要請して、事業計画案を作成するということで、日米両国が計画案の承認の権利、あるいは中央管理組織やSASの運営等においても日米同等に主導して、表明する意見が反映される枠組みとなっている。また、IODP‐MIは札幌の北海道大学内に科学支援部門、ワシントンに計画管理部門を担当する事務所を置いている。
 総じて、我が国が主導する初めての大型国際研究プロジェクトとしてIODPの枠組みを構築してきており、その取組みは評価できるとしております。
2アジアを中心とした諸外国のIODPへの参加促進及び連携。諸外国の参加促進及び外国人研究者との連携によって、IODPをより国際的なプロジェクトとして発展させることは、我が国が取り組むべき重要な課題。国際貢献の観点からも、また科学先進国である我が国の責務である。このことは、地球規模での掘削調査を必要とする科学の発展に不可欠。プロジェクトの運営においては、参加国の拡大は、研究航海の実施の円滑化、我が国のIODPに関する費用負担の減少につながる。特に、アジアを中心とした外国人研究者との連携については、アジア地域における研究の促進及び基盤強化につながるため、我が国が発展に貢献し、主導していくという観点から重要である。我が国は、IODP発足前から研究者が諸外国でキャンペーンを実施し、働きかけを行ってきて、開始後も継続的にそうした取組みに努めており、これらの取組みは評価できる。今後も、諸外国への参加促進、連携について積極的に取り組むべきである。ただし、IODPにより得られる利益は参加国の共有財産であることは認めつつも、我が国に科学的・技術的成果が十分に還元されるよう、戦略的に取り組むことが必要であるとしています。
3世界的研究拠点の提供。「ちきゅう」と海洋コア総合研究センターというIODPの遂行において、大きな役割を担う施設を提供するということで、ハード面において強くその存在をアピールできていることは評価できる。今後はそのハードの活用を含むソフト面で参加各国をリードしていくことが重要である。
4IODPへの参加に関する取組み。我が国は、関連会合で米国と同数の委員数を確保する。また、議長・副議長・共同議長の責務を米国と同等に負う。また、現在までも多くの我が国研究者が関連の会合に参加していることは評価でき、その研究者の活動は業績として高く評価されるべきである。しかしながら、現状では、我が国の研究者のコミュニケーション上の問題、経験不足等から、まだ会合における議論を十分に主導しているとは言いがたい状況であると考えられる。今後、我が国の委員の意見が適切に反映されるような方策、会合に参加する委員のモチベーションを高めるための方策等、我が国の委員がより積極的に参加することが可能な体制を確立する必要がある。また、理事会やSAS等の活動の重要性について、これまで以上にIODP関連研究者の所属機関に理解を求め、これらの関連会合への委員等の派遣を継続し、IODPをリードする人材の育成を行うべきである。
 乗船研究者の派遣に関しては、我が国は米国と同等の権利を有しており、我が国研究者が航海に参加して、共同首席研究者としても活動していることは評価できる。しかしながら、乗船研究は長期間に及ぶこと、乗船地までは自らの責任で行かなければならないこと等から、研究者にとって負担を伴うものである。乗船研究は、IODP関連研究の推進、将来のIODPを主導する人材の育成等の観点から、IODPへの参加において最も重要な活動の一つであり、乗船研究者の継続的派遣に配慮すべきであるということです。

【田中主査】
 ありがとうございます。今のところについて、ご意見ございますか。

【堀委員】
 IODPの精神はよくわかるのですが、2のところの下から3行目、「ただし、IODPにより得られる利益は参加国の共有財産であることは認めつつも、我が国に科学的・技術的成果が十分に還元されるように、戦略的に取り組むことが必要である」ということについて、ライザー掘削船という立派なものを造って、IODPという枠組みがあって、米国との同等の権利ということが記載されているのですけれど、そればかりではなくて、いろいろな意味での国益を考えた場合、共有財産という言葉が少し引っかかります。共有財産というのは科学的な知見のようなものを指すのか、経済的な利益に直接つながるようなものを指すのか。これを含めて全部共有財産だとしてしまうのは非常に危険だと思います。

【末廣委員】
 「利益」という言葉を直していただければいいのではないでしょうか。

【堀委員】
 そうですね。

【末廣委員】
 採取した試料が共有財産というだけで、そこから価値を引き出して経済的な利益に結びつけるところは、共有財産ではないでしょう。

【堀委員】
 そうであるなら修正いただきたいです。何でも全て平等というふうな印象を持たれてしまうと困ると思ったので。「試料」としていただければいいですけど。

【佐藤委員】
 だけど船から得られるのはコアだけではなく、場所などの情報が入りますから、そういう意味でデータとする方がいいのではないでしょうか。

【長沼委員】
 データにも観測による直接的なデータと大変な努力をして得るデータは仕分けが必要になるので、「データ」とするのは難しいかもしれない。

【平(朝)委員】
 「IODPにより得られる」と追記し、IODPのプログラムとして採取したものは共有という書き方ではいかがでしょうか。

【長沼委員】
 IODPにより得られるというのは直接的なデータになりますね。

【安田委員】
 少し別な観点ですけど、IODPで得られる成果について、特許は取れるのですか。共有財産というもう一つ先は個人財産というか、個人の成果ですから特許のような観点が出てくる。ここでは科学的財産が対象であることを明らかにすべきです。

【平(朝)委員】
 やはりこれはデータではないでしょうか。試料とするとややこしい。「ちきゅう」で取った試料はJAMSTECのものというように、コアなどの試料には帰属権がありますから。

【田中主査】
 データあるいは科学的成果か。

【平(朝)委員】
 そこは難しい。

【鈴木委員】
 IODPとして、やはり私は共有だという概念は必要だと思います。

【平(朝)委員】
 私もそれはIODPの一つの心だと思って理解しています。

【岡田委員】
 特許は段階の違う話なのでしょう。最後の成果は特許に繋がってもいい。

【長沼委員】
 平委員のおっしゃったことをもう1回確認させていただきたいのですが、物としての試料はJAMSTECに帰属するのですね。

【平(朝)委員】
 はい。試料は、研究者から正式な使用の手続きによる要請を受けた場合に、お渡しするわけですね。それを用いて得られた成果については個人に属する。

【長沼委員】
 例えば、「しんかい6500」で取ったサンプルから特許を得た場合には、例えばJAMSTECが半分権利を得るというような決まりがあったと思いますが、それはこの場合は適用されないのですか。

【平(朝)委員】
 IODPという枠組みで取り組んでいるので、そこはこれからの課題です。

【堀田氏(CDEX)】
 長沼委員のご懸念については、試料を分析して得られたものについては、研究者が自らのノウハウを用いて得られたものであれば、完全にその研究者の成果になります。

【長沼委員】
 それは明文化されていますか。

【堀田氏(CDEX)】
 特許の基本的な考え方です。

【長沼委員】
 もし明文化されたものがあれば、別途教えてください。

【鈴木委員】
 試料についても共有という概念があるべきだと思います。日本の研究者は、「ちきゅう」に限らず、米国のJR号により採取された試料も利用するのですから。

【平(朝)委員】
 JR号の試料はNSFに帰属しています、明確に。同様に、特定任務掘削船で採取された試料はESOに帰属している。共有財産というのはややこしい。

【堀田氏(CDEX)】
 同等に活用できるという言葉はいいのですが、「共有財産」という単語になってしまうと法的には間違いですね。

【鈴木委員】
 アクセシブルであるということですよね。

【兼原委員】
 詳細はわからないのですが、恐らく一文だけで細かく既に規定されていることを全て表現することは不可能ですから、「IODPより得られるデータは参加国の共有財産であることは認めつつも」という記述を入れなくてもいいのであれば、例えば、「IODPにより得られるデータを元に、我が国が主導的に果たしている役割に見合って、科学的・技術的成果も十分に我が国に還元されるように、戦略的に取り組むことが必要である」くらいの書き振りではいかがでしょうか。

【田中主査】
 素晴らしいと思います。

【平(朝)委員】
 いいですね。要するに、後半に書かれている戦略的に取り組むことが重要なのであるので。

【佐藤委員】
 もう少し教えていただきたいのですけれども、公海上で「ちきゅう」がコアを取ったとします。それは、JAMSTECが権利を持つというのは何か根拠があるのですか。

【平(朝)委員】
 公海上で得られたサンプルは決まっていないが、そのように扱っている。

【佐藤委員】
 鉱区の設定されたところは難しいでしょうね。

【平(朝)委員】
 そう思います。

【平分科会長】
 違う箇所についてよろしいですか。14ページの(3)上の「乗船研究者の派遣に関し」というところで、大学等の所属機関の理解を得て高く評価されるように、IODPの参加を評価してもらいたい、現状では乗船研究者は乗船地まで自費で行かなくてはいけないという記述があるのですが、この辺はぜひJAMSTECにもっと考えていただく必要があると思います。
 1つの例として、日本学術振興会は2年前に学術システム研究センターを作りました。これは100人以上の研究員を集めるわけですが、その中で主任研究員は1年半くらい前は16人でした。今は30人を超えているかもしれませんが、原則として週のうち2日間は日本学術振興会に来ていただくと。研究員は北大から九大まで所属していて、週に2日間、毎週東京に来てもらうというのは、主任研究員が個人で負担するには大きな負担になるわけです。これは、学術システム研究センターに教授を派遣してもらうかわりに、日本学術振興会から大学には人件費をお渡しする。それで非常勤講師を雇うなり、研究員本人に科学研究費をあげるというようなことをしておりました。何かこれに似たようなシステムで支援していただけないものかと思っています。
 というのは、私個人も実は琉球大学で授業を持っていまして、16週しか講義がないうち、15週以上必ず授業をしなさいと言われると全然休講が許されない。勿論、補講しろというのでしょうけど。
 IODPのような長い航海に出ることを考えると、例えばIFREEには優秀な研究者もたくさんいるわけですから、大学の先生が船に乗っている間は、IFREEから派遣するということなどはできないでしょうか。
 ですから、新しい制度になりますけど、ぜひもっと多くの人が参加できるよう工夫していただきたいと思います。

【岡田委員】
 今、まさに平分科会長に言っていただいたのは、大学人の本当の声だと思います。IODPに関する最近の動向を見ているとすごい危機感があって、このままだと大学がIODPから離れていくのではないかと我々は危機感を持っています。分科会長がおっしゃったような体制がそのとおりできるかはわかりません。しかし、一番の不満は、日米対等であると言いながら、アメリカは乗船中の手当てをもらえるのに、日本では1円ももらえない。それでアメリカの研究者と一緒にやりなさいと言ったって、若い人は離れていってしまう。

【平分科会長】
 大学を休講にして来るというのは大変なわけでしょう。私は以前、東京大学海洋研究所にいましたから船に乗るのが主要な仕事だったわけですが。

【田中主査】
 よくわかる。わかるのですが、そういうことの改善にも取り組んで、継続的に派遣できるように配慮するべきであると、中間評価ではこう書いてある。

【平分科会長】
 それでいいと思います。岡田委員もそうおっしゃっているのだから、もっといい文章があれば考えたい。

【岡田委員】
 文章としてはこれでいいのではないでしょうか。だから、書いてあることを推進して、1、2年の間に何とかしてもらいたい。
 実際に乗船研究者の半分は、定職についてない大学院生などです。彼らに対する保障も全くない。だから、最近の航海に関して、船上では最低限のコアの記載のみを行って、分析はブレーメンで行うというときに、乗船はしたけど、分析には参加できるかわからないということでは、乗船する意義が危うくなってしまう。

【佐藤海洋地球課長】
 今の話に関して、研究者側の気持ちはわかりますし、行政側としても何か方法があるのかどうか勉強はしたいと思いますけれども、予算措置を伴う制度とできるかどうかというのはまた別問題です。まず、この中間評価報告書上の書き振りをどうするかということについては、「乗船研究者の継続的派遣に配慮すべきである」という文章が適切なのか、よりよい言葉が何かあるのであれば、考えたいと思います。

【徳山委員】
 これは「配慮」するのは誰になるのですか。

【田中企画官】
 これは委員会がこの取組みについて言っているのですから、関係者全てということではないでしょうか。

【徳山委員】
 しかし、これは予算的な問題ですよね。予算的なことを約束できないというのは、今までの委員会を通して理解しているつもりですけど、表現として、配慮すべきであるというのはインパクトに欠ける。強かったからいいわけではないのでしょうが。

【田中主査】
 「より一層の配慮が求められる」ではどうでしょうか。

【松田委員】
 経済的支援ということは明確に言えるのですか。

【平分科会長】
 乗船期間中の業務補完を含む派遣制度とかではいかがでしょうか。

【田中主査】
 業務補完と明確に書くのは大変ですよ。業務補完は自発的にやってもらう方がいいと私は思います。そういうものを含めて、今の言い方にまとまっているのですがいかがでしょうか。

【岡田委員】
 ただ、お金が出ればOBの先生を非常勤で雇って授業を持ってもらうことは可能です。そのOBが適切な能力が現時点でもあるかどうかは、大学で査定すればいいだけのことですから。

【佐藤海洋地球課長】
 この締めの文章だけは、委員の皆様の気持ちはもう少し積極的に書いてほしいということだと思いますので、それを考慮して整理したいと思います。

【平分科会長】
 そうですね。

【岡田委員】
 今の案の「派遣」という言葉は適切なのでしょうか。現実には、派遣になっていなくて、勝手に大学の人が乗船しているだけで、何か起こったら大学の責任というのが今の形式ではないでしょうか。普通、プロジェクトを動かしている機関が責任を持って派遣するわけですが、IODPではそうはなっていない。

【田中企画官】
 というよりも、IODPに関しては研究者個々の資質で乗船するはずです。

【岡田委員】
 ですから、乗船中に何かが起こった場合、研究者に対する保障は大学がしなくてはいけない。私はそこを含めて検討して欲しい。事故は滅多に起こらないと思います。起こらないと思うけど、何かあったら大学の責任だという態度では、危ないから人は出しませんという話になる恐れがある。これはJAMSTECが業務をある程度請け負っているのだから、JAMSTECが大学等に依頼して研究者を派遣する。私は基本的には事故が起こったらJAMSTECが対応すべきだと思います。

【堀田氏(CDEX)】
 派遣の依頼については、労務管理はそれぞれ所属されている法人にということに依然なったものですから。日本の法律でそういう仕分けになっている。

【岡田委員】
 今のシステムでは、例えば乗船研究者が怪我をしたり、亡くなられたというときは、大学が対応するのでしょう。

【堀田氏(CDEX)】
 そうなります。

【岡田委員】
 法律上そうなのですが、本当にそういうことでいいのか疑問です。

【田中主査】
 大学院生はどうなるのでしょうか。

【岡田委員】
 保険だけです。

【田中主査】
 南極の場合は大学院生を含め、国家公務員として行っている。隊員は国家公務員の資格に、出発する日から帰ってくる日まではなっていて、だから何かあれば国家公務員として国が保障している。

【佐藤海洋地球課長】
 南極については少し変わりまして、国立極地研究所が大学利用共同機関法人となり、独立行政法人並みとなりました。その場合には、必ずしも前の国家公務員と同じということではありません。

【鈴木委員】
 南極の場合は、説明する場をセットして、参加者には十分どういう立場で参加するかというようなことを説明している。だから、基本的には参加者の責任で参加するという形になっています。ある程度は本人が責任を取るという形になっているのです。

【岡田委員】
 IODPに関して、ヨーロッパではドイツだけは乗船中は国家公務員にするそうです。ドイツは乗船者数も少ないですから、そういう形になっている。イギリスは個人の責任で行けというふうになっている。ヨーロッパでも国によって全然違うのです。

【末廣委員】
 これは、ここでは当然片づかない問題で、乗船研究者が全てJAMSTEC職員になって派遣されればいいかといったら、これは拒否する方もいると思うし、文章はこうしておいて、今後、J‐DESC、JAMSTECが一番いい派遣の仕方というか、実際に乗って経験を積んでいただく仕組みを考える。JAMSTECとしてそれに対応したいと思いますので、ぜひ別の場所で深く議論したいと思います。

【平分科会長】
 よろしくお願いします。私の発言もそういう趣旨です。

【田中主査】
 文章はこれでいいですか。

【平分科会長】
 いいです。

【徳山委員】
 今の末廣委員の発言と、継続的な派遣と、少し意味合いが違うと私は感じます。

【佐藤海洋地球課長】
 中身の議論は、末廣委員がおっしゃったように、また別な場で深く議論した方がいいと思いますが、この文章に限って言えば、配慮すべきであるという言葉のところについてもう少し積極的なニュアンスを持たせた方がいいのではないかという委員がいらっしゃったのということに留意して検討すること、継続的派遣というその言葉自体が何を指しているのかということをもう少し明確にすることが必要だと感じました。最終的に大幅な変更にはならないと思いますが、再度主査と検討させていただけたらと思います。

【田中主査】
 はい。そうしましょう。
 それでは、先へ進ませていただきます。

【田中企画官】
 (3)国内におけるIODP関連研究の推進体制。
1国内研究者組織の構築。機構は研究者による委員会を設置して、IODPの我が国における科学計画を作成した。それから、日本地球掘削科学コンソーシアムが平成15年に設立され、このJ‐DESCは平成16年にIODPにおける我が国の科学戦略を新たな国内の統一目標として策定し、セミナー、シンポジウム等、国内のIODP関連活動の推進に組織的に取り組んでいる。また、J‐DESCはIODP関連活動の委員及び乗船研究者の推薦等、研究活動における国際的な調整というIODPへの参加に不可欠な役割を担っている。このように、IODPを主導するための研究体制の構築が進められ、継続的な検討が行われていること及びこれらの活動にJ‐DESCを代表する研究者が主体的に取り組んでいることは評価できる。今後もJ‐DESCを中心に、国内研究者のネットワークによる新しい科学計画策定等に取り組むとともに、関係者は連携して、研究者の活動の円滑化及び活性化に努めるべきである。
2IODP関連研究の推進。航空・電子等技術審議会の評価において、研究体制の整備に特に最大限の努力を払うことが適当とされた。これについて、全国の研究者を集め、IODP関連研究を我が国の中心として推進する組織が機構に設置され、その中期目標においてIODPの研究を総合的に推進することが定められたほか、1でも述べられたとおり、機構と国内のさまざまな大学・機関に所属する研究者を結ぶ組織としてJ‐DESCが設立されたことは評価できる。
 しかし、現在、我が国の掘削計画提案数は減少傾向にあり、掘削計画の提案というIODPの根幹となる活動において、我が国がリードできていないのは重大な問題である。その要因として、掘削計画提案に必要な事前調査等の確保に関する問題が挙げられる。我が国の研究者が事前調査の成果をもとに提案した掘削計画が採択され、掘削実施を経て事後研究へと展開するという一連の活動が十分に行われることによって、初めてIODPを真に主導していると言える。このため、他国の制度等も参考にしつつ、IODP推進が国家的プロジェクトであることを強く認識し、J‐DESCの提言に見られるような新規プロポーザル開拓のための研究を担う競争的資金及び我が国がIODP主導国としての責務を果たすための活動を担う経常的な予算措置による研究支援体制について、早急に検討する必要がある。

【田中主査】
 ありがとうございました。何かございますか。よろしいですか。
 では、5.1.3人材育成についてお願いします。

【田中企画官】
 5.1.3人材育成について。
 (1)研究者の育成。研究者の育成について、機構は、乗船研究支援、「プロポーザル作成の手引き」の作成等の関連研究者への実践的支援を行っている。また、機構とJ‐DESCは関連研究者もしくは理解者となる可能性を有する者を対象に、アウトリーチ活動に取り組んでいる。こうした取組みは評価できる。今後は次代のIODPの活動をリードする研究者の育成が急務である。そのため、IODPに興味を持った若手研究者が乗船研究に積極的に参加することができるような支援体制の確立及び若手研究者等の興味を喚起するアウトリーチ活動に一層取り組んでいくことが重要である。
 (2)技術者の育成。これまで機構は、ジョイデスレゾリューション号への乗船を支援すること等により技術者、科学支援員を育成し、支援体制を進めてきたことは評価できる。科学支援員については、今後も継続的にこうした支援を行い、育成に努めることが重要である。
 ライザー掘削技術については、我が国の技術が欧米各国に比べて遅れているのは事実である。「ちきゅう」運用初期においては、内外の企業の人材派遣を受けて運用されることで円滑性及び効率性を追求することは適切であるが、我が国への技術移転は他分野にも効果が波及し、我が国の大きな利益となる可能性があるため、これについても早急に取り組むことが必要である。また、関連する研究部門、技術部門の活動の拡大につながることを期待したい。
 (3)計画推進実務者の育成。我が国のIODPにおけるプレゼンスの向上、このために関連機関において、科学的知識を持ちながらマネジメントに従事する者が重要な役割を持つ。しかしながら、現在、IODP‐MIの職員の多くは欧米人である等現状は不十分であり、科学的知識を持ちながら国内外の機関でマネジメントに従事する人材を育成することは我が国の課題である。また、今後の人材育成の成否に関わる点として、その役割の重要性に対して正当な評価を確立するべきである。

【田中主査】
 ここまで、どうでしょうか。

【平分科会長】
 1点だけ。技術者の育成で「ライザー掘削技術については」とあるのですけど、先ほど話のあったように別の方法も含めるなら、「ライザー掘削を含む深海掘削技術については」というふうに書いておいた方がいいように思うのですけど。

【平(朝)委員】
 これに関しては、当初の「ちきゅう」の初期運用のライザー掘削技術というふうに取れるので、今の「ちきゅう」の技術での運用ということだと思いますので、よろしいのではないかと思います。

【平分科会長】
 そうですか。わかりました。

【田中主査】
 油田開発でしているということが書いてあるから、これはライザー掘削技術の方がいいと思います。
 他にありますか。

【安田委員】
 IODPには、研究者が参加するわけで、特に研究者のところが問題になって、資金がないとか言っていることに対して、これには誰が資金をつけて、どこがそれを受けて、どういうふうに実施するのかということは、措置をするべきだとだけ言われてもよく見えない。人材育成は大学が行うのか、機構なのか、J‐DESCなのか、政府なのか。これまで、「ちきゅう」については機構が動かしていることはよくわかるのだけど、研究に関しては、機構の役割がどこまでなのかあいまいになってきている。

【平分科会長】
 これは先ほど事務局からコメントがあったとおり、関係者全てがそれぞれできることに取り組むというように考えるのではないですか。例えば、大学がすべきことについては、大学で取り組むようにという要請ですし。

【安田委員】
 それであれば、予算が大学にも付くと考えていいわけですか。例えば機構の予算から、機構がその人材育成プログラムを大学に委託する。そういうことですね。

【末廣委員】
 ですから、その問題も含め、別の場で話さなくてはいけないと思います。

【安田委員】
 わかりました。

【末廣委員】
 別な点についてですが、16ページ(3)「しかしながら、現在、IODP‐MIの職員の多くは欧米人である等現状は不十分であり」というのは、少し恣意的な気がするのですが。

【田中企画官】
 定量的にここは言っておりまして、IODP‐MIの職員は確か17名ですが、日本人が4名、その他は欧米人となっております。

【堀委員】
 もう少し前向きな表現に改めた方がいいのではないでしょうか。マネジメントの重要性はわかりますので、全て欧米が優れているというような書き方に見えます。

【兼原委員】
 多分、現状は不十分であるというのが恣意的かどうかというのが先生方のご関心だと思います。その前に、「我が国のIODPにおける存在感を高めることとなる」とありますので、「IODP‐MIの職員の構成において日本人の数は少ない。科学的知識を持ちながら…」と繋げればどうでしょうか。事実を述べることにおいては一向に構わないわけですから。

【田中企画官】
 ここでIODP‐MIの職員の事例を出したのは、他のところと並びをとって、この部分ではこの文以外に現状把握を記述しているところはないので記載しているのですが。

【佐藤委員】
 そういうことであれば、現実的にはここに書いてあるとおりですから、これをカットすると隠すことになります。むしろ、少ないとか柔らかい言葉にするのはいいのですが、全て削除することはどうなのですかね。

【堀委員】
 欧米人の職員が多いという定量的な事実ではそうかもしれませんが、何かもう少し応援するような文言に変えられた方が好ましいのではないでしょうか。「不十分」という言葉が印象悪く思えますし、そういう意欲をわかせるような書き方の方がよろしいのではないかと思います。

【田中企画官】
 わかりました。今、先生のおっしゃったことをまとめますと、「しかしながら、例えばIODP‐MIの職員に日本人は少ないというのが現状であり、科学的知識を持ちながら」という言葉がいいでしょうか。

【堀委員】
 そうですね。

【田中主査】
 いいと思います。
 よろしいですか。では、先へ進んでください。

【長沼委員】
 すみません。1つお伺いします。15ページ(1)研究者の育成の3行目ですが、「J‐DESCはIODP関連研究者もしくは理解者となる可能性を有する者を対象に」とありますが、ここが少しわかりにくい。「関連研究者等」でまとめてはいけないのでしょうか。

【田中企画官】
 これは別分野の研究者、大学のマネジメントの方もしくはもっと一般の方などの応援団になる可能性のある方という意味で小委員会の時に話されたと思います。

【長沼委員】
 今、敢えて申し上げたのは、逆のケースで明らかに反対を表明する方がいらっしゃる分野もある中で、この表現というのは私にはわかり難かったためお尋ねした次第です。

【森田委員】
 博物館関係などを意識して「理解者」と書いたのではないですか。研究者以外にも博物館などがJ‐DESCには参加していますから。

【平分科会長】
 これは具体的には、大学でのキャンペーンのことを言っているのですか。

【長沼委員】
 多分、先生方はあからさまな反対に出会ったことがないのかもしれませんけど私はあります。そういうとき、反対する方々は理解者となる可能性を有するかどうかという問題が出てくる。今の案だと理解者になる可能性がないから、その方々を排除するという逆の捉え方をされるのは困ると思った次第ですから、こういう書き方をしない方がいいのかなと。どういう方が対象であれ、J‐DESCあるいはJAMSTECは広報活動をしていくのであるということであれば、いいのではないかと思うのですけど。

【平分科会長】
 ですから、大学院生とか大学生、一般の方々ということでしょう。

【長沼委員】
 でしたら、そういうふうに書けばいいと思います。

【鈴木委員】
 J‐DESCが実際に活動しているのは大学や博物館などです。主に青少年をターゲットとして取り組んでいます。ここでいっているのは、そういったこれからのIODP関連研究を支えていく可能性のある若い子どもたち、あるいは、市民。

【田中主査】
 将来、関連研究者になる可能性を持っている人ですね。

【平分科会長】
 そうであれば、あまり間接的に言わないで、今おっしゃったように書けばいいのではないですか。

【安田委員】
 もしくは、「市民・青少年」としたらいかがですか。研究者は勿論ですけれども。

【田中主査】
 いや。市民という言い方をしますと、研究者の育成という項目ですから、少し違うかと。

【田中企画官】
 あるいは「関連研究者、学生等」ですか。

【長沼委員】
 そうですね。それがいいと思います。

【兼原委員】
 あと「対象に」の前に、「主たる」と入れておけばいいのではないですか。柔軟性が出るから。関連研究者・学生を主たる対象にとかにしておけば。

【田中企画官】
 わかりました。

【田中主査】
 よろしいですか。それでは次お願いします。

【田中企画官】
 5.1.4国民への説明について。
 「ちきゅう」の必要性、IODPの科学研究の成果に関する理解はもとより、関連の科学への国民の知的好奇心を喚起し、科学技術の理解増進及び活性化を目的として、IODP大学&科学館キャンペーン、ウェブサイト等を通じた国民各層に情報を届ける活動が実施されており、こうした取組みは高く評価できる。機構が行った「ちきゅう」の一般公開では多くの研究者が訪れ、その関心の大きさを確認できた。今後は、完成した「ちきゅう」を最大限に活用しながら、その科学的目的及び波及効果を中心により一層の説明を行い、国民の関心の高いプロジェクトとして認知されるようさらなる努力が求められる。特に、中高生を対象とした教育的な観点からの広報等に継続的に取り組んでいくことが必要である。
 さらに、産業界にも広くIODP推進の重要性について認識を求め、IODP活動の支援、IODP推進を通じて育成された人材の産業界での活用の場の提供等が実現するよう努力すべきである。今後、「ちきゅう」の国際運用により、IODPが本格的に実施され成果が上がれば、そこから産業に応用できる技術が生み出される可能性は大きい。この可能性をさらに広げるためにも、普及・広報・教育活動による成果の公開、人材育成等が重要な役割を果たすと考えられる。

【田中主査】
 ここはいかがでしょうか。ここは特にありませんか。
 それでは、最後の5.2をお願いします。

【田中企画官】
 5.2総合評価。
 今回の中間評価では、事前評価の際に大きな価値を有すると評価された深海地球ドリリング計画は、現在も我が国にとって科学的及び社会的に意義が高いものであることを確認した。また、「ちきゅう」の建造及び関連施設の運用環境の整備、国際的なIODPの推進体制の構築を中心とした我が国の主導国としての取組み、人材の育成並びに国民への説明といった我が国の取組みは、科学的・社会的ニーズ等を踏まえ、関係各機関により適切に行われてきていると認められる。よって、「ちきゅう」の運用等を通じて我が国が深海地球ドリリング計画を推進することは妥当であると評価できる。今後は、その成果が最大限に得られ、社会に大きく貢献していくために、関係者がさらに協力し、計画推進により一層取り組むべきである。
 ただし、深海地球ドリリング計画の推進に際しては、本評価において指摘された留意点に対処することが必要である。特に、事前評価でも指摘された研究体制の整備については、必要な研究推進組織が構築されたと評価できるものの、掘削計画の提案というIODPの根幹となる活動において我が国がリードできていない等、関連研究活動については依然として十分ではない面も見られることから、引き続き改善に向けて努力することが必要である。

【田中主査】
 いかがでしょうか。

【平(朝)委員】
 わがままを言って申し訳ないのですが、推進当事者から見ると、17ページの一番上の「推進していくことは妥当である」というのは、少し弱いと感じます。

【平分科会長】
 いかがでしょう。「すべきであると評価できる」でいいのではないですか。

【田中主査】
 極めて有意義である。実際、IODPは、この背後にある科学的な成果のことを考えるとものすごく有意義です。それは確かなこと。だから、もう少し強く書いてもいいですね。

【佐藤委員】
 推進することは極めて有意義であると評価できる。

【田中主査】
 いいですか。

【平分科会長】
 「よって、『ちきゅう』の運用等を通して」というのは削除してもいいのではないですか。

【徳山委員】
 17ページ、後ろから2行目ですが、「我が国がリードできていない等」とそれは確かなのですが、これほど消極的に捉えなくてもいいのではないでしょうか。ある分野ではアメリカと同等に渡り合っている。

【平(朝)委員】
 南海トラフの掘削計画を考えれば、我が国は主導していると言ってもいいです。

【徳山委員】
 委員会では、私はまだまだ不十分だとは言っておりますが、この表現は極端であると思うので、例えば主導力がいまだ不十分とか、もう少し柔らかくしていただければと思うのですけど。

【田中企画官】
 例えば、「我が国がリードできていない」に置きかえて、「活動において課題はある」と。

【佐藤委員】
 事実はどうなんですか。

【徳山委員】
 事実は課題がある。

【佐藤委員】
 リードできてないのですか実際は。

【徳山委員】
 リードできてないという表現もおかしくはないですが、そこまで極端でもないと思います。

【末廣委員】
 まさに課題があるということだと私は認識していて、要するに、アメリカと全く同じやり方をしてアメリカの先へ行けるかといったら、これは、アメリカと日本とそのまま比べたら絶対的な国力の差があると思うので、少し違うと思います。日本には別の勝ち方があって、そこの工夫が必要であると思うので、「課題」なのかなと思います。

【兼原委員】
 簡単にしてしまって、「掘削計画の提案というIODPの根幹となる活動や関連研究活動などにおいて依然として課題があり」くらいではどうですか。課題があって、引き続き努力と書けば、趣旨はいいわけですよね。

【田中主査】
 いいですね。

【平分科会長】
 いいです。

【徳山委員】
 課題はいろいろあるでしょうが。

【田中主査】
 何か他にございますでしょうか。

【佐藤海洋地球課長】
 ここのところは一番重要なところですので、何かご意見があれば出しておいていただければ。

【田中主査】
 では、これで一通り終わりましたね。

【田中企画官】
 それでは、今日いただいたご議論をまとめて、主査とご相談させていただきます。

【田中主査】
 深海掘削委員会の中間評価報告書は主査一任ということでよろしいですか。
 では、そのようにさせていただきたたいと思います。そういう形でまとまりましたら、海洋開発分科会へ報告させていただきます。
 それでは、本日の議題の2に移らせていただきます。前回の委員会以降、IODP関連活動について事務局よりご報告をいただきます。

【田中企画官】
 では、資料7‐5‐1と7‐5‐2について、説明させていただきます。
 7‐5‐1ですが、前回、6月以降のIODPに関する活動についてです。まず、IODPフレームワークといたしましては、6月に長崎で関連の会合が開催されまして、10月には東京でNSFとの会合を行いました。
 掘削航海につきましては、1番目、2番目、4番目がJR号の航海、3番目がヨーロッパの特定任務掘削船の航海でございます。
 次のページですが、科学諮問組織につきましては、6月に長崎で会合が行われ、京都でも10月にSPC(科学計画委員会)が行われまして、京都の会合では、「ちきゅう」を用いた最初の研究航海が、熊野灘沖の南海トラフで行われるべきとされました。
 中央管理組織の活動につきまして、6月に長崎で理事会が行われ、また、京都での運用委員会というもので、SPCで検討される「ちきゅう」の計画について検討されました。
 JAMSTECでは、1番目の「・」にありますように、研究者に対する旅費の支援を今年度上半期までやっていただいております。また、ワークショップなども開催しております。最後から2つ目の「・」で、「ちきゅう」が7月29日に三菱重工からJAMSTECに引き渡されまして、約2年間の試験運用期間を経て、2007年9月より国際運用を開始する予定とされております。
 最後に、日本地球掘削科学コンソーシアム(J‐DESC)では乗船研究の募集や推薦、ポストクルーズ会議等への支援、IODP大学・科学館キャンペーン、国立科学博物館等でのイベントなど、いろいろ取り組んでおります。
 資料7‐5‐2で2006年度の年間事業計画の概要。これは、今年の9月にNSFと我々との間で承認したものでございまして、1番目と3番目の航海がJR号によるもので、これ以降、JR号は改造される見込みでございます。そして、2番目の「Tahiti Sea Level」というのは、先ほど申しましたヨーロッパの特定任務掘削船によるものです。最後の「New Jersey」というものも特定任務掘削船による航海です。これが、今年の10月から来年9月までの、2006年度の計画となっております。
 あと参考資料2で英文の資料がございます。これは2006年度の事業計画の原文でございますので、ご参考までに付けさせていただきました。
 以上でございます。

【田中主査】
 ありがとうございました。ご意見、ご質問ございますでしょうか。よろしいですか。
 議題3.IODPに関する研究推進体制についてということで、前回の委員会以降、どのような取組がなされているか、鈴木委員からご説明をお願いします。

【鈴木委員】
 今、J‐DESCの説明もいろいろしていただきましたが、J‐DESCとしては、参考資料3がありますけれども、これについて補足しながら説明させていただきます。
 この間、いろいろな国際パネルにも委員を推薦しました。特に、SPCとSPPOCの副議長を今年は推薦しました。
 それから、継続して乗船研究者の選出をずっと行っております。
 それから、京都でPMOというナショナルオフィスの会議がございました。その場で、評価小委員会でも議論のあった国際パネルの日本からの委員がよりよく活躍できるような形を実現するための議長に対するある種の指導書のようなものの叩き台をJ‐DESCが作って提出し、アメリカ及びヨーロッパのナショナルオフィスと議論しました。今後、IODP‐MIにPMOとして提出し、いろいろ検討していただくということを提案しています。
 それから、特にこれからのIODP関連研究を担っていただくため、青少年への普及を目的として、先ほども少し触れましたが、JAMSTECと一緒にIODP及び「ちきゅう」を普及するキャンペーンを大学、博物館で行っています。
 それから、研究者へある種の刺激を与えるという意味で、いろいろ既に取り組んでいるのですが、今後は、特にアジアを中心に国際シンポジウムなどを開催して、研究者の輪を広げていくことにももっと取り組んでいきたいと考えております。そういう活動を通してIODPをさらに盛り上げていくというか、活用していくというようなことを考えています。
 あと資料にございますが、これはこの間、具体的に経費を伴っていろいろな活動に支援した例が1)のところに幾つか記載しておりますので、どうぞごらんください。
 それから2)は、昨年度も実施しましたけれども、時限付きの分科細目ということで「地球システム変動」というものを今後も提案していくということであります。
 最後の3)は、誤解を与えるとまずいので補足します。これは、特にJ‐DESCがこの科研費を申請しているというわけではなくて、会員機関はそれぞれいろいろな形で競争的な資金を獲得する努力をしていますので、これはその一例ということでここに書いてあるということです。特に特定の申請をJ‐DESCの立場で応援するとか、そういった計画はございません。
 以上、最近の活動ということでございます。

【田中主査】
 ありがとうございました。ご質問、ご意見ございますでしょうか。研究推進体制につきましては、今後ともこの委員会の常設的な議題として取り上げてまいりたいと思っております。
 次の議題4といたしまして、IODPに関する広報活動についてということで、前回以降、どのような取組みがなされているのか。最初に文部科学省の取組みについてご説明をお願いします。

【田中企画官】
 資料7‐6は、文部科学省が関連の会合あるいは研究航海の度に記者クラブに投込みを行った資料です。1枚目は、6月に長崎で行われた会合についてでございまして、裏面に報道関係者への公開時間とありますように、長崎ではテレビ局、新聞社から相当取材が来ました。それ以降は研究航海について、何をやるのか、どういう日程でやるのか、我が国からどういう方が参加しているのかということを投げ込んでいる資料でございます。今後ともこのようにIODPに関しての活動を周知していきたいと思っております。
 以上です。

【田中主査】
 ありがとうございました。

【田中主査】
 何かご質問等ございますでしょうか。よろしいですか。
 それでは、引き続き海洋研究開発機構の取組みを中心に、平委員からご報告をお願いします。

【平(朝)委員】
 参考資料4と、それから『SCIENTIFIC AMERICAN』と『Newsweek』の記事のコピーをお配りいたしました。これをご覧ください。
 広報活動については、我々は機構のホームページの中に2つウェブサイトを持っています。CDEXのウェブサイトとCHIKYU HAKKENというウェブサイトで、CHIKYU HAKKENはニュースレター等と連携して、一般用に作っているもので、CDEXのHPは比較的専門的で、その他に職員の登用とか公募とか採用情報とか、そういう組織説明があります。このように2つのHPを今、使い分けているのですけど、基本は、一体化してその中にいろんな情報を盛り込もうということで、今、これを合体する作業も行っております。CHIKYU HAKKENはなかなか評判がいいと感じております。この資料の一番後ろ側にアクセス数が書いてありますけれども、8月、9月は7万件以上のアクセス数がありました。そういうことで、CHIKYU HAKKENのコンテンツを重要視して、今、その拡充を図っているということです。ぜひ見ていただきたいと思います。
 それから、我々の学会の活動、キャンペーン、プレスへの公開等人と人の触合いを通じた起爆剤と位置づけた直接的な広報も行っております。「ちきゅう」の一般公開においては25,000人の方が今まで訪れました。それから、来年の夏公開の『日本沈没』という映画がありますけれども、これには「ちきゅう」が登場し、この撮影も順調に行われており、既にほぼ終わったと聞いております。
 そのほか、さまざまなシンポジウムなどをやっておりますけれども、我々としては「ちきゅう」という船が最大のメディアだと思っていますので、これを用いて試験運用の間に10万人の見学者を目標に、10万人が1人10人に「ちきゅう」を見たよと宣伝すると100万人になって、100万人は日本の人口の1パーセントですから、1パーセントの人が「ちきゅう」のことがわかるということを目標にしたいと思って取り組んでいます。
 以上です。

【田中主査】
 ありがとうございました。何かご質問、ご意見ございますか。それでは、本件も引き続きこの委員会で審議をさせていただきたいと考えております。
 これで今日の予定は終わりました。何か事務局から連絡事項がございましたら、お願いします。

【佐藤海洋地球課長】
 それでは、中間評価報告書ですけれども、いろいろご議論いただきまして、幾つかの指摘事項が残りました。これにつきましては、先ほどお話のありましたように、田中主査にご一任いただきましたので、整理して最終案を作っていただくことになります。それを海洋開発分科会に提出したいと思いますので、報告書がまとまり次第、海洋開発分科会を開催したいと思います。
 それから、この委員会自身は第8回を年度内に開催したいと思いますので、またその時点が近づいてきたら日程調整させていただきたいと思います。
 以上です。

【田中主査】
 以上をもちまして、本日の会合を終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

‐了‐

お問合せ先

研究開発局海洋地球課