深海掘削委員会(第5回) 議事録

1.日時

平成17年1月24日(月曜日) 15時~16時30分

2.場所

文部科学省 10階 第1会議室

3.議題

  1. 統合国際深海掘削計画(IODP)の2005年度追加計画の概要について
  2. IODPに関する研究推進体制について
  3. IODPに関する広報活動について
  4. その他

4.出席者

委員

 田中主査、森田主査代理
 佐藤、平(朝)、堀、松田、松永、岡田、末廣、徳山、長沼、宮崎、安田 各委員
 平(啓)海洋開発分科会長

文部科学省

 文部科学省、国土交通省、他

5.議事録

【田中主査】
 ただいまより第5回科学技術・学術審議会海洋開発分科会深海掘削委員会を開催いたします。
 本日は、ご多忙にもかかわらずご出席いただきまして、ありがとうございます。議題に入ります前に、事務局の文部科学省海洋地球課の佐藤課長よりごあいさつをお願いします。

【佐藤海洋地球課長】
 海洋地球課長の佐藤です。
 委員の皆様方には、日ごろから、統合国際深海掘削計画の推進につきまして何かとご支援いただいているところでございまして、この場をかりて、厚く御礼を申し上げたいと思います。
 IODPをめぐる動きにつきましては、この後、議事にも出てきますので、昨年8月以降の予算、IODP関連の予算の話を少ししてあいさつにしたいと思いますけれども、IODP関係の予算は、分担金等の一部を除きまして、ほとんどが、いわゆる海洋研究開発機構の運営交付金の中にございます。
 平成17年4月に「ちきゅう」が完成するということで、その慣熟訓練のための経費を確保するというのが、今年の17年度予算要求に向けた大きな課題であったかと思っております。
 財務省との最終調整に入る前に、まず、総合科学技術会議から予算の優先順位ということでヒアリングも受けましたけれども、一応、A評価ということで評価を受けました。
 その後、最終的に、運営交付金の中ですので仕切りが明確ということでもないのですが、一応、平成16年度の77億円という予算に対して、建造費と運用費込みで106億円という形の予算要求となった次第でございまして、概算要求時点から20億円弱ぐらい切り詰めているということですが、厳しい財政事情の中で、BOP設置訓練等の経費を何とか確保できたのではないかと思いますので、この後の平成19年度の国際運航に向けまして、各種訓練を行いまして、本格的な運航に備えたいと考えているところでございます。
 今後、いよいよ本格的な運航を目指して、何かといろいろお世話になるかと思いますので、よろしくお願いしたいと思っております。

【田中主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは、議事に入ります前に、まず事務局から資料の確認をお願いします。

【田中企画官】
 海洋地球課の田中でございます。資料を確認させていただきます。
 議事次第の(案)のほうに資料のリストは出ております。資料の5‐1が深海掘削委員会の名簿でございます。5‐2‐1、5‐2‐2といたしまして、前回の議事録の(案)と議事概要の(案)がついております。資料5‐3といたしまして、第4回深海掘削委員会以降のIODPに関する活動についてです。資料5‐4が文部科学省プレスリリース資料という資料になっております。
 それから、以下参考資料ですが、参考資料の1として、英語の資料ですけれども、2005年度のAnnual Program Plan Addendumというものです。それから、参考資料2がIODP研究推進に対するJ‐DESCの取り組みです。それから、参考資料の3が統合国際深海掘削計画に係る広報活動についてでございます。最後に、参考資料4としまして、当委員会における審議事項であり、以上が資料の構成になっております。
 何か抜けている資料がございましたら、お知らせいただきたいと思います。

【田中主査】
 それでは、まず、前回、平成16年8月9日に行いました第4回の深海掘削委員会での議事録及び議事概要の確認をお願いしたいと思います。事務局のほうからお願いします。

【田中企画官】
 それでは、前回、第4回の深海掘削委員会の議事録の(案)の確認でございますが、資料5‐2‐1です。それから、議事概要の(案)、それが5‐2‐2、議事録を少し要約したものでございます。これらにつきましては、文部科学省のホームページにおいて公開されることになっております。
 各委員の皆様には、事前にご確認をお願いしておりますが、現在のところ、ご意見はいただいておりません。

【田中主査】
 この議事録、議事概要について、何かお気づきの点ございますでしょうか。
 急に言われてもコメントは難しいでしょうし、今、これを読んでいただいている時間もありませんが、ご説明ありましたように、これはホームページで公開するということになっておりますので、委員の皆様、一通りこれに目を通していただいて、何かありましたら、1週間以内、1月31日までに、訂正事項等ございましたら、事務局のほうに連絡をお願いしたいと思います。その後、事務局のほうで、皆様からいただいた意見を取りまとめて、公開の手続を進めていただくようにいたしたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
 では、お手数でも、一度これに目を通していただいて、何かある場合には、事務局のほうへご連絡をいただきたいと思います。
 それでは、本日の議題1でありますが、統合国際深海掘削計画の2005年度追加計画の概要について、前回委員会以降のIODP関連活動の報告とあわせて、事務局よりご説明をお願いします。

【田中企画官】
 それでは、資料5‐3に基づきましてご報告させていただきます。
 まず、前回8月9日以降のIODP関連の活動でございます。
 IODPの全体のフレームワークということで、米国のノンライザー掘削船、ジョイデスレゾリューション号ですが、前回のご説明では、2004年の10月から2005年の4月までの年間計画をまず承認ということだったのですが、その後、米国の予算事情で、それ以降の2005年の9月という、米国財政年度2005年いっぱいまでもジョイデスレゾリューション号は延長して航海を実施するということになりまして、昨年9月に、日米から、IODP国際計画管理法人(IODP‐MI)に追加の事業計画の指針を提示しまして、作成を指示したところです。それについて、また後ほど、ご紹介させていただきます。
 それから、昨年10月に、ワシントンでNSF‐MEXTの会合を行いました。
 また、昨年11月には、台北で会合があったのを利用しまして、私がオブザーバー参加して、台湾のほうにIODPの参加を呼びかけました。結果として、ぜひ、今年から参加したいという前向きな回答をいただきました。これには、JAMSTEC末廣理事も参加していただきました。
 それから、昨年の12月にアメリカ、サンフランシスコでNSF‐MEXT会合を開催しました。予算指針とか参加国拡大方策等について検討しまして、NSFのほうは、ジョイデスレゾリューション号の後継船として新規あるいは既存船の改造ということで検討しているわけですけれども、それについて一定の予算を確保して、今、整備スケジュールを検討しているということでございます。
 それから、IODPの掘削航海ですが、昨年の6月から東太平洋ファン・デ・フーカ海域で、IODPの最初の航海が行われました。この航海には、東大の浦辺先生初め日本からも研究者が参加しております。これに続きまして、北極海のロモノソフ海嶺で、ヨーロッパが出す船が世界で初めて掘削いたしております。これにも、我が国から研究者が参加しております。また、9月に、北大西洋海域で、ジョイデスレゾリューション号が掘削航海を行い、今年の3月にも航海を同じ海域で掘削を行うということになっております。それから、昨年11月、大西洋中央海嶺でマントル物質の採取を目指した研究航海をJR号が実施しまして、これについては、今年の1月から引き続き、同海域で掘削航海をやっております。これらの航海に、共同首席研究者初め我が国の研究者も参加しております。
 科学諮問組織の活動ですが、昨年10月にアメリカ、コーバリスで科学計画委員会(SPC)が行われまして、2005年度の追加期間分と2006年度分の科学計画の策定を行いました。また、12月にサンフランシスコで、科学計画・方針監理委員会(SPPOC)の第3回会合を開催しまして、そこでSASの組織改編の検討、あるいは2005年度の追加計画案について議論されまして、一部掘削計画の順序を変更するということで承認されました。
 中央管理組織(IODP国際計画管理法人)の活動についてですが、IODPの運営に着々と取り組んでおります。これに関しましては、サンフランシスコで昨年12月に、岡田先生が議長もされておりますIODP‐MIの理事会を開催しまして、SPPOCで承認された追加計画案を承認しております。IODP‐MIのほうでは、現在、追加計画案の具体的な修正作業を実施しているところでございます。それから、参加国拡大にも取り組んでいただいておりまして、IODP‐MIにおります大塚上級顧問がJAMSTEC、J‐DESCとともに台湾を訪問し、その後続いて韓国も訪問ということで、台湾、韓国への参加に向けた努力をしていただいております。
 JAMSTECの活動としましては、昨年10月より、国内の研究者に対しまして、IODPの掘削航海の乗船旅費の暫定的な支援を始めていただいております。
 その他にも、11月より高知大学の海洋コア総合研究センターが全国共同利用施設として運用を開始しました。
 加えて、11月には、IODP‐MIのTalwani代表が来日され、JAMSTECとIODP‐MI間の覚書を署名し、実施に関してのJAMSTECとIODP‐MIの体制を整えました。
 それから、「ちきゅう」につきましては、昨年12月に、三菱重工が海上公試を行っております。これに加えて、今後の「ちきゅう」を使った掘削航海のための事前調査も実施しております。
 それから、J‐DESC(日本地球掘削科学コンソーシアム)ですが、IODPの各航海に対し我が国の乗船研究者を募集し、それぞれの実施機関へ推薦いただいております。 また、ハワイやサンフランシスコで、研究者に対する普及のためのIODPの関連ブースの展示を支援しております。その他にも、国内での研究者に対する支援、普及啓発活動も活発に行っていただいておりまして、千葉でのタウンミーティングの実施、あるいは山形や大阪、岡山で大学、科学館でのキャンペーンというものを行っておりまして、研究者や学生、あるいは一般の方々に対する普及啓発の活動を行っていただいております。こういった活動については、文部科学省も非常に重要と考えておりまして、また総合科学技術会議からも、評価の際に、一般への普及啓発を積極的に行うべきと指摘されていることもございまして、こうした活動に対して後援をしていますとともに、文部科学省からも出席して、一緒に普及啓発に参加しております。今度の2月には、沖縄で開催するキャンペーンに、私も行く予定にしております。また、総合科学技術会議の大山議員が、昨年夏に、上野の科学博物館でキャンペーンをやったものにご自身も参加され、非常にいいことをやっていたとコメントしていただいておりまして、こういった活動を着々と進めていただくことが、長期にわたっても、非常に有意義なことじゃないかと思っております。
 以上で、活動についてのご紹介を終わらせていただきます。

【田中主査】
 どうもありがとうございました。ただいまの事務局からの報告に対しましてご意見、ご質問等はございますでしょうか。それでは、続いて2005年度追加計画の説明をお願いいたします。

【田中企画官】
 参考資料1として添付しましたものが、2005年度追加計画(英文)となります。この中で、表紙から2枚めくったところにES‐2というページが下に書いてございますが、ここの表に掘削の予定されている航海の一覧が出ております。表の内、網かけされている部分、Porcupine Carbonate Mounds、Gulf of Mexico、それからSuperfast Spreading(1および2)、以上の4件が今回、追加で提案として出てきたものでございます。その上の網かけされていない3つの航海は、既に前回承認されているものでございます。
 このような形で、IODP‐MIが提示してきたものですが、12月のサンフランシスコのSPPOC会合で、若干、委員の先生から異議が出まして、修正されました。具体的には、ページを2つめくっていただいたところに、Proposalリストがございますが、このリストの中の上から2つ目の553‐Full2、Cascadiaと書いてあるもの、それから一番下の621‐Full、Monterey Bay Observatoryとなっているもの、この2つが、先ほどES‐2のページの中に出てくる網かけの部分の下から2つ目のSuperfast Spreading 1、それとSuperfast Spreading 2の間に入れてはどうかということで、その修正をもってサンフランシスコでは承認されました。現在、このスケジュールに沿ってIODP‐MIが予算について検討しており、その後、リードエージェンシーに修正版が提出されることになっております。修正版がIODP‐MIより提出され次第、またご紹介させていただきます。なお、SPPOCにおいて承認されたスケジュールは、2005年度追加計画のみならず、2006年の当初までも若干含んでいるものになっております。
 以上でございます。

【田中主査】
 ご質問、ご意見ございますでしょうか。

【平(啓)分科会長】
 資料の5‐3の2ページ目にございます、2004年11月17日から1月8日にかけて行われた大西洋中央海嶺でのマントル物質採取を目的とした航海についてですが、これはどういった内容でしょうか。海底に露出したマントルを採取したのでしょうか。

【田中企画官】
 これは、中央海嶺付近において、海底の拡大に伴ってマントル物質が海底面近くまで盛り上がっているようなところがあって、これをオーシャンコアコンプレックス(OCC)と呼んでいるのですが、このOCCでの掘削でございます。

【徳山委員】
 普通だと6,000メートルぐらいの海底面から5キロ程掘らないとマントルには到達しないんですけれども、テクトニクスの関係でマントルが持ち上がっているようなところもありますので、ここを掘れば比較的浅いところでもマントル物質がとれると考えられております。

【平(啓)分科会長】
 そういったマントルは固まっているんでしょうか。

【徳山委員】
 はい。固まって、ブロック状になっております。陸上でもありますけれども、こういった状態のものをOCCといった名前をつけて呼んでおります。

【平(朝)委員】
 そういったマントルは、本来の位置から構造運動で表面近くに上がってきています。

【平(啓)分科会長】
 そうすると、物性は変化しているわけですね。

【平(朝)委員】
 相当変化していると思います。もうマントルの「死体」になっていると考えられます。

【平(啓)分科会長】
 ありがとうございます。

【徳山委員】
 やはり、真のマントルは、「ちきゅう」で掘るまで誰もわからないということだと思います。

【平(啓)分科会長】
 真のマントルでなかったとしても、マントル物質の採取を目的としたというのは、今回が初めてなんでしょうか。

【徳山委員】
 初めてではないと思います。

【平(朝)委員】
 過去にもマントル物質の採取という試みは何回かされたんですが、海底面にドーム状に盛り上がってきている場所を掘るのは初めてです。

【平(啓)分科会長】
 ありがとうございました。

【田中主査】
 よろしいですか。ほかにございませんか。
 では、もし他に質問等ございましたら、また後ほどしていただくとして、先へ進ませていただきたいと思います。
 本日の議題の2、IODPに関する研究推進体制についてということで、前回委員会以降、どのような取り組みがなされているのか、徳山先生からご報告をいただきたいと思います。

【徳山委員】
 参考資料2をもってご説明いたします。1)、2)、3)に分かれておりまして、1)が会員提案型活動経費の説明となっております。2)、3)は研究費の確保が重要な課題になっておりますので、これに関する説明となっております。
 1)については、J‐DESCの年会費の一部をIODPの活動として使用しております。それも、会員からの提案型で使用しておりまして、研究を対象としたもののみならず、ニューイヤースクールといったような研究の方法、或いは教育というような側面を持った提案も含めております。平成16年度の実績として、尾田さん、廣野さん、宮下さん、木下さん、坂本さん、伴さん、松枝さん、山崎さん、各々が提案された活動が承認されて、セミナーや研究集会を開いて、IODPの活動を下支えしております。
 また、現在までのところ日本からの掘削提案が非常に少ないということがありまして、日本海を海域とした総合的な掘削提案をしようという目的で、新潟大の宮下先生から提案していただいたものが1)の中にございまして、こういう集会を何回か重ねることによって、その成果をまとめていって、国際的に強い掘削計画をつくっていこうという活動でございます。
 2)、3)は巽さんがJ‐DESCの中で中心となって活動しているので、巽さんから説明していただいきたいと思います。

【巽博士(J‐DESC)】
 では、簡単に説明します。
 2)に関しては、以前からこの委員会でも話題になっていました競争的資金を獲得するために、時限つきの新規分科細目の公募に対しJ‐DESCが中心となってIODP関連研究の推進、もしくは、IODPのすそ野拡大を目的として応募し、推薦をしていただけるようにいろいろ活動してきました。現在応募している内容は地球システム変動に関するものであり、これは、もちろん、IODPだけではなくて、地球をシステムとしてとらえて、様々な環境変動なり、地球の進化を理解するための細目として応募しております。現在、この時限付き分科細目を審査する委員会より推薦していただいており、まだこれからいろんな検討作業があるとは思いますが、とりあえずノミネーションはされているという状況です。科学研究費等の中では比較的小枠のCというものについて限られてはおりますが、それでも、たくさんの方が一番基礎(シーズ)になるような研究を進めていくには非常に有効な手段かと考えていますので、もし機会があれば、いろいろなところでご支援いただければと思います。
 それから、3)に関しては、日本におけるIODPの主目的研究テーマのひとつである島弧地殻進化と大陸地殻形成過程に関するものとなっております。これは、ターゲットとしては、恐らく伊豆、ボニン(小笠原)、マリアナの海域を目指すライザー掘削になるかと思いますが、そういうものを事前研究、事前調査も含めて遂行するために、学術創成研究費として、これも推薦いただいております。まだ、これからいろんな審理が始まると思いますが、ノミネーションはしていただいております。
 このほかにも、できるだけ活動を続けていきたいと思いますが、現時点でアクティブなノミネーションが行われているのは、この2件です。以上です。

【徳山委員】
 ここでは、全体枠ということで、2)と3)のような研究費資金の獲得について述べておりますけれども、そもそも、科研費というのは個人ベースの研究ですから、特にIODPの航海は既に行われているのもあるし、これから予定されているのもございますので、それに参加する研究者にIODPの成果である掘削で得た試料を有効に使う研究の科研費申請を何人かの方に積極的にお願いしております。もし、審査員がいましたら、よろしくお願いします。以上です。

【田中主査】
 はい、ありがとうございました。何かご質問、ご意見、ございますでしょうか。

【平(啓)分科会長】
 1)というのは、これは終わったものですか。16年度実績ということで、会員提案型というのが7つほど出ておりますね。

【徳山委員】
 ほとんどのものが終わっております。まだ16年度なもので、幾つかのものは継続されていると思いますが、少なくとも坂本さんのは終わってCD‐ROM作成を現在やっているんじゃないかと思います。

【平(啓)分科会長】
 そういうことであれば、できたら、期間とか、何人ぐらい参加したとかの情報もあればいいのではないでしょうか。

【徳山委員】
 わかりました。それを入れたほうがいいですね。

【平(啓)分科会長】
 これは、17年度も同じように行われるわけでしょうか。

【徳山委員】
 はい。今年度は前期と後期と分けておりましたので、来年度も前期と後期を予定していますが、まだ詳細は決まっておりません。

【平(啓)分科会長】
 それと、この会員とはどういう資格ですか。J‐DESCに入っている人のことでしょうか。

【徳山委員】
 そうです。組織会員ということでございまして、組織が年会費をJ‐DESCに納めて、それを運営費として、提案型活動経費に充てているということでございます。

【平(啓)分科会長】
 ありがとうございました。

【田中主査】
 平成18年度からの科研費の時限付き分科細目が決まるのは、17年度の早い時期ですね。これを扱うのは学術会議だと思うのですが、学術会議の分科会のときに第1として推薦されたのでしょうか。

【平(朝)委員】
 そうですね。

【平(朝)委員】
 これは、地質研連も推薦したんですか。

【巽博士(J‐DESC)】
 第4部会のほうからは、1位で推薦いただいています。それで、学術会議のほうから推薦いただいたものと、それから科学研究費検討委員会の両方からも推薦をいただいております。

【田中主査】
 それは有力ですね。

【巽博士(J‐DESC)】
 両方で、また審査をされると聞いています。

【田中主査】
 ほかにございませんでしょうか。

【末廣委員】
 J‐DESCそのものとも言えるんですけれども、JAMSTECの研究体制がどうなっているのかというご質問もあろうかと思いますので、ごく簡単に現状を報告させていただきます。
 ご承知のように、昨年4月の独法化以降、7月に体制を整えまして、組織を少し変えたわけですけれども、研究体制については7つのセンターをもってやっていくということで、1つは、CDEXで平さんがセンター長。まさに地球のオペレーションを担うところですが、他にもIFREEが地球内部変動研究センターとして深尾良夫さんがセンター長になりまして、今、体制整備を進めているところであります。
 それから、もう一つIODPに深く関係するのが、極限環境生物研究センターで、堀越先生をセンター長としています。従来と大きく変わってはおりませんけれども、深尾センターのほうは、やはり、八十数名だったと思いますけれども、研究者を抱えておりまして、IODPを使い倒す、「ちきゅう」を使い倒すということを一種公約にしております。ですから、新しい体制になって、一体どういうふうにやっていくかが問われているわけですけれども、何といっても、プロポーザルがいかに出てくるかというところから、我々は、ある意味、努力していかなきゃいけないんですけれども、その道具を持っているのもJAMSTECでありまして、事前調査に関しましては、今や、学術研究船含めて、船は全部、うちがオペレートしているわけですから、いかに有効利用させるかというのは大事なことだと考えております。船のオペレーションをしているのは海洋工学センターと言うんですが、そこと連携して、IODP以外にも、大陸棚の調査であるとか、地震調査研究といったところと上手にタイムシェアして、IODPのためにも大いに貢献できるように、体制を今整えているところです。
 それから、もう一つ、掘削して採取されたコアを保管する高知コアセンターにつきまして、IFREEが高知大学と共同して、IFREEの研究拠点としての位置づけを持たせたいという意思を示しております。
 それから、最後に、肝心の提案なんですけれども、結局、ODP時代と違いまして、IODPになりますと、掘削提案というのは、かなりの決心と覚悟がないと、なかなか出せないという状況になっています。これは、何といっても、掘削のファシリティーというか、プラットホームが3つもあって、これをできるだけ有効に使って、しかも科学の最先端をやって、使われる予算に見合った以上の成果を頑張って出しなさいと言われるわけですから、研究者としても、いささか躊躇するところもあるようです。日本だけではなくて世界的にも、なかなか掘削提案が出にくい、表現は難しいですが、意欲はあるんですけれども、なかなかそれが実際の提案になってきていないという状況があるんだと思います。
 やっぱり、これを打破するには、IFREEのようなしっかりした体制が築けるところで、長期的ビジョンを持ってやっていくということが多分大事で、これについても、深尾センター長以下、幾つかの掘削提案を長期的に育てていこうと言って、今チームを編成しているところです。
 そういうわけで、提案をつくる素地になる調査、提案そのもの、それから掘削して出てきたコアを分析しペーパーにしていくというところに力を注げる体制を現在構築中であります。現在ではまだ、はっきり言えないんですけれども、次回のこの委員会の時にはもう少し具体的な形をお示しできると思います。

【田中主査】
 ありがとうございました。何かほかにございますか。

【平(朝)委員】
 コメントというか、サジェスチョンですけれども、高知コアセンターは、非常に大事なファシリティーなんですけれども、安田委員が来られていますので、安田さんのほうから、ぜひ、現況について紹介されていただいたらよろしいんじゃないかと思います。

【安田委員】
 昨年11月から全国共同利用体制をとりまして、20件ほどの公募がありまして、今年度中に実施を行っておるところです。ただ、全ての共同利用が、プログラムに直ぐに結びつくようなものではない、個別の研究課題が多いのは現状です。
 それから、コアセンターでは、今年度末に、コアの基礎物性の計測のためのスクールを開こうとしておりまして、これは、ニューイヤースクールのときにそういう公募をしまして、今応募している最中です。
 それから、来年度に向けて、マイクロリファレンスセンターという、微化石のセンターが科博に現在ございまして、これが、これまでの国際深海掘削計画の資料のうちの微化石の標準資料センターになっているんですけれども、これをもっと大きく伸ばそうということで、微化石のスクール。これは、コアを掘りますと、必ず年代を早急に決めないといけないということで、非常に重要なパートを占めるんですけれども、このようなスクールを来年度中には実施をしていくという計画を持っております。
 大学側としては、こういうことを進めておりますが、共同で、JAMSTECのほうが非常に多くの人員を派遣していただきまして、機械の標準化であるとか、そういうほうが先行して進んでおります。その辺は、また平先生のほうからご説明をお願いします。

【平(朝)委員】
 JAMSTEC側としてのサポート体制ということに関しては、CDEX中心に、技術補佐員等々、機械のキャリブレーション等々について協力しておりますけれども、1つのトピックとしては、ODP時代のコアがあります。これについて今、国際的に、再配分という話が出ていて、これは決まった話ではないんですけれども、JAMSTECあるいは高知コアセンターとしては、ODP時代の西大西洋とインド洋のコア、全部で83キロメートルあるんですけれども、それを高知大に移管すれば、IODPの基礎研究資料として役立つという方針のもとに、今、文部科学省とも相談しつつ、どうするか検討いたしております。

【田中主査】
 IODP研究体制については、この前に比べれば、大分明るい見通しがございます。まだこれは、とらぬタヌキの皮算用というところがありますが、少し見通しは改善されているし、とは言えまだ色々問題もある。これは、この問題は引き続き審議をしていくということなんですが、深海掘削の先にあるものというのは、少なくとも、地球科学という観点から言えば、最大の課題がある。そこから何かが取り出せる、取り出したいと思っているわけですが、そこから取り出されてくる新しい知見というのは、人類にとって、少なくとも、科学的には、ものすごい価値のあるもので、地球科学の最大の問題が、その中に含まれているということは確かだと思います。
 そういうわけで、いろいろ難しい問題もあるかもしれませんが、文部科学省及びJAMSTEC、それから研究者の皆さんが協力して、これはぜひ、成果が上がるものにしていっていただきたい。いずれ、この問題は、さらに継続審議という形で進めたいと思います。
 議題の3に移らせていただきたいと思います。IODPに関する広報活動についてということであります。前回の委員会以降、どのような取り組みがなされているのか。まず、最初に文部科学省の取り組みについてご説明をお願いしたいと思います。

【田中企画官】
 それでは、資料の5‐4でございますが、文部科学省プレスリリース資料ということで、私どものほうでは、IODPの掘削航海が行われるというために、特に日本の研究者も参加しますので、こういったことが関連する研究者の皆さん、あるいは大学や研究機関のほうにも知らしめることを非常に重要だと思っておりまして、このような資料を作成し、プレスリリースを行っております。このプレスリリースで、いつからいつまでどういう航海をやって、我が国からはどこの誰が参加するということを広報しております。特に、北極海の航海については、なかなかユニークな航海というか、北極海をああいった形で掘ったのも初めてだということもあり、幾つか新聞にも取り上げられ、また、文部科学省の中でも、この航海について記者の皆さんに対して説明も行っております。新聞にも掲載され、できるだけ世間の関心を高めるように、私どもも努力しております。他にも、あるいは研究者を送り出す大学の皆さん、あるいは各地域のコミュニティーのほうからも、理解あるいは注目を浴びるのが非常に大事じゃないかなと思っておりまして、こういった活動をしておるということでご紹介させていただきます。

【田中主査】
 よろしいですか。

【徳山委員】
 つけ加えるというか、今、田中さんのコメントにあったんですけれども、北極海の航海に乗船した須藤さんという筑波大学の地球科学研究科の博士特別研究員の方が、北の丸にある科学技術館のホームページに、毎日、きょうはどういうものがコアリングされて上がってきたとか、オーロラがきれいだったとか、そういうデイリーレポートを掲載されていて、大変反響があったとも聞いておりますので、こういう臨場感のあるデイリーレポートというのは、非常に広報ではいいのではないかと感じております。

【田中主査】
 では、平先生、お願いします。

【平(朝)委員】
 参考資料3でご説明申し上げます。
 初めに、後ろのほうの2枚目の図を見ていただきます。前回に、この図を出したんですけれども、「ちきゅう」とWebと「起爆剤」、年度が書いてあります。来年についてですが、2005年に赤線が引いてありますけれども、これは「ちきゅう」が引き渡しを受けるという意味でございます。4月の後半に、三菱重工業からJAMSTECのほうに引き渡しされて、それで本格運用を開始するということになります。なおかつ、6月の中旬には、今の予定ですと、一般公開を含めて、かなり大々的なオープンハウスをやりたいと考えています。
 これが全体の仕組みですけれども、これを参考にしながら、広報活動についてご報告申し上げます。
 前回までは、広報活動の資料に、いろいろ新聞の切り抜きとか、雑誌とか、そういうものを添付しておったのでございますが、今回は、かなり多数にもわたりますし、その添付は行いませんでした。他にも、委員の方々はご存じかもしれませんが、『ビッグコミック』の「ゴルゴ13」にも載りまして、日本全国に「ちきゅう」の名前が知れ渡ったということがございます。ついでに、今週の土曜日7時から、「サイエンスZERO」というNHKの番組がございますけれども、ここで「ちきゅう」の特集が放送されます。安田先生と長沼先生も出演されます。ぜひ、ごらんになっていただきたいと思います。
 活動報告ですけれども、我々、インターネットを活動の中心に置こうということで、今まで、それの再構築等々を重ねてまいりました。1月には、全面再構築したものが公開される予定でございます。同時に、インターナショナルなパートナーとのコンテンツの調整、公開等についての情報交換を行っているということです。インターネットへのアクセスですけれども、おおよそ月に2,000ヒットぐらいがあるんですが、横ばい状態でそんなに爆発的なピークとか、そういうのがなかなか見られないということで、起爆剤というのは爆発的にそういうものを誘発する材料であったはずなんですが、あまり起爆していないなというので、この点について、今、どういうふうにしたらアクセスが増えるのかについて検討しております。また、今後のホームページの活動として、やっぱり、JAMSTECの全体の組織の中にかなり埋もれていて、ずっとたどってたどって、奥の奥の院に行かないと、なかなかたどり着かないということがあって、IODPあるいは「ちきゅう」というのをもう少し前面に出して、非常に更新頻度を高める、そういうシステムにしていかないといけないなと考えておりまして、それをJAMSTECの組織等々と今、相談しているところでございます。
 2番目の起爆剤につきましては、名前がちょっとおどろおどろしいのでございますけれども、要するに、イベントです。爆発的にいろんなことを誘発するようなイベントとして、学会の活動、キャンペーンというものを二大柱に置いておるわけですけれども、ハイライトは、科学博物館で去年の夏行ったイベントだと思います。1万名近くの人が訪れて、「ちきゅう」のバルーンが相当山手線の電車の中も飛んでおったということを目撃しておりますが、同時に、J‐DESCとのキャンペーンで、これは、研究者あるいは大学生等々についてのアピールについては、かなり好感があるものだと認識しております。
 それから、プレスへの公開、普及等々でございますけれども、これについては、少しシステマティックにやろうというので、記者クラブ等々から始めて、きょうも、実はこの後すぐ、科学論説委員の方々への説明会、それから1月27日には大阪記者クラブ等々、2月4日には外国特派員協会ということで、プレスにもっと能動的に働きかけて、「ちきゅう」及びIODPの宣伝をしていきましょうということを、今、それを視野に入れつつ検討を進めているところでございます。
 今後の活動として、今年何をやるのかということですけれども、先ほど言ったように、何としても、今年は「ちきゅう」が引き渡されるわけであります。「ちきゅう」というのは、ホームページ以上に、要するに、実物ですので、「ちきゅう」という船を、メディアといいますか、最大のツールにして、これを中心に活動しようと考えております。これは当たり前と言えば当たり前のことで、「ちきゅう」を広告塔にして活動していきたいと。そのためには、「ちきゅう」の一般公開及びさまざまな「ちきゅう」の映像等々を使って、最大限の活動をやっていこうと思っております。起爆剤になるような様々なイベントも、「ちきゅう」の一般公開等とタイアップしてやっていこうと考えています。
 どのようにしてホームページにアクセスしてもらうのかにつきましては、我々は、ホームページの威力というのは、いろんな人に聞いてみると、大学生がホームページを見て大学へ進学したり、あるいは自分の進路をそれで決めたという話をたくさん聞くので、非常に重要なんだろうと思うんですけれども、ぜひ見ていただくような、そういう誘導路といいますか、そういうふうに引きつけていく活動をしていかないと、なかなか見てもらえないと考えております。起爆剤を活用しつつ、ホームページに導くまでの導入路をもう少し考えていきたいと思っていますけれども、「ちきゅう」が一般公開されて、口コミでどんどん広がることも期待していますし、何か一発ホームラン、「ゴルゴ13」じゃないですけれども、そのうち、メディアを通じての逆転さよならホームランみたいなのも必要だなと。これは、なかなかつくり出すことができなくて、必ずしも、我々がプランニングしてできるという側面でないこともあるんですけれども、できるだけ、そういう機会を多数提供することが基本的には大事だと思っていますので、これからも活発にJ‐DESC等々、タイアップしながら活動していきたいと思っています。
 添付資料の2は、新しく更新されたホームページの表紙です。今、制作中で、これは2週間ぐらいで一般に公開されますけれども、我々としては、これをできるだけ見やすくしようと工夫をしているんですが、また、いろいろご意見をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。以上でございます。

【平(啓)分科会長】
 1つ、先ほど、既に田中企画官から紹介があったんですけれども、2月10日、11日に沖縄、そのうちの1つは琉球大学で、IODPキャンペーンが開かれるということですが、それは非常に結構なんですが、いまだに「IODP大学&科学館キャンペーン」と書かれていて、これでは学内に出しても何のことかわからなくて困るんじゃないかなと思っております。例えば、科学博物館ではどういったテーマでやられたんですか。もう少し工夫して分かりやすいタイトルにしてほしいなと思ったんですけれども。
 それが1点と、もう一つは、このインターネットでの検索なんですけれども、今どき、アドレスを覚えるということはなくて検索から行くので、その検索が、例えば「地球」というのだと広過ぎるような気がしますが平仮名の「ちきゅう」なら、すぐ行けるように検索エンジンをお願いすることはできないでしょうか。

【巽博士(J‐DESC)】
 前者につきましては、平仮名の「ちきゅう」、その一文字だったと思いますが、ポスターがちょっと遅れていますが作成中です。

【平(啓)分科会長】
 知らない人が見ても内容がわかって、「ああ、おもしろそうだ」というところまでいけるようなものが必要ではないでしょうか。深海掘削というだけで、果たしてどれぐらいの人が認識してくれるか。

【平(朝)委員】
 IODPというのは、ちょっと難しいですね。

【平(啓)分科会長】
 パッと見て分かるよう、IODPあるいは関連の語が片仮名やローマ字であればいいと思うんですが。

【田中主査】
 IODPと書いてしまったら難しいかもしれないですね。

【平(啓)分科会長】
 何だろうと思っちゃいますね。

【平(朝)委員】
 国立科学博物館でやったときの表題、題名を覚えていますか。

【川村氏(CDEX)】
 「ちきゅう」で地球を掘るとか、そういったものだったと思います。

【巽博士(J‐DESC)】
 「地球の記憶を掘り起こせ」でした。

【平(朝)委員】
 それはもう少し工夫がなされていると思います。

【平(啓)分科会長】
 琉球大学の場合でも、学生さんが見て分かりやすいテーマが必要だと思います。「ちきゅう」で地球を掘り起こせもいいと思うんですけれども、ともかく見てわかるポスターをお願いしたいと思います。

【平(朝)委員】
 先ほどのサーチエンジンに関してですが、IODP関係者であれば地球とか、国際深海掘削とか、該当しやすい名前で検索すると出てくるんですけれども、一般の人は全く何か別な考えで、例えば「地球を知る」とかという形で検索することがあるかもしれないと考えています。その辺も検討する必要があるのではないかと。

【川村氏(CDEX)】
 やはり、サーチエンジンというのは、ヒット数でどんどん優先順位が上がってきますので、我々はそのヒット数をまず何とか上げることをどうしても考えておかなきゃいけないことだろうなと思います。あとは、特殊な、これしかないという巧い単語が1つあればいいんですが、逆にそういう単語を知らないと検索できませんので、できれば、一般的な名称である地球とか、深海掘削というものの中でも順位性が高くなるように、ヒット数をどんどん伸ばしていきたいなと考えています。

【堀委員】
 広報とかインターネットに限らず、内部の専門家等の熱い思いと一般の方々の認識に、すごいずれがあると私は思うんです。今、先生方がおっしゃったのはまさにそれで、例えば、科博の場合は何かある時必ず新聞社とタイアップして、新聞社のやわらかい頭の発想と専門家とのミックスでいろいろ言葉を選ぶということがありますので、いわゆるその道のプロ的な方を見つけられて、ジャーナリズムに強いとか、或いは子どもの興味を引くことが巧いとか、そういう多角的、多様な応援団を作るべきではないでしょうか。
 内部の方たちが分かっていることは、逆に分かり過ぎていて一般の方には難しいということもあるので、一般の方が感じる響き、波及効果を起こすメソッドはまた違うんだと割り切らないといけないと私は思うんです。

【安田委員】
 何よりも、本物を見せるというのはとても意義のあることで、一般公開が最も有効な手段だと思うんですけれども、これは全国回るとか、入る港は限られるでしょうが、そういう予定はあるんでしょうか。

【平(朝)委員】
 かなり我々も考えておりますけれども、今のところ考えられるのが、東京周辺、それから下北の沖合で訓練を行うので八戸、それから地球博をやっている名古屋周辺、高知も一応候補に考えておりますけれども、今のところ、来年度はそのぐらいを予定しております。

【安田委員】
 やっぱり、本物を見たいといいますか、コアセンターでも非常に多くの方が来訪なさるんですが、正面にポスターがあった上で実物を見ると、かなりのインパクトがあります。多分、非常に大きな船で、限られた港にしか入らないとは思うんですけれども、そういう努力をお願いしたい。

【平(朝)委員】
 コア試料に関して言えば、訓練中にできればAPC(アドバンストピストンコア)を使って「ちきゅう」で取って、火山灰がいっぱい入っているような縞模様のものとか、タービライトがいっぱい見れるようなもの、そういうものを多数展示用にも採って、閲覧に供したいと思います。また、場合によっては、そういうものを各大学あるいは博物館等にもできるだけ配付できるようにしたいなと思っています。どれだけ採れるかちょっとわかりませんけれども、できるだけ、そういう努力をしたいと思います。

【長沼委員】
 インターネットサイトを通じて、得られた科学的なデータやあるいは重要な成果の意義、そういったものを普及広報することが重要なミッションであると同時に、堀先生がおっしゃられたように、やはり、広く夢の部分、あるいはロマンの部分を伝えるというところも大事かなと思います。メタフィジックというか、形而上学的な部分も含んでの話なんでしょうが、ふと思いましたのは、例えば、先日、JAMSTECでブルーアースシンポジウムがあったその翌日、ホイヘンスが土星の衛星タイタンに着陸した映像を送ってきていました。あれで何人の若者が胸をわくわくさせたか。これは、とても刺激的な出来事でした。あるいは、今年の5月か6月に、恐らくスペースシャトルの再飛行があるのではと思います。リターン・トゥー・フライトがあって、国際宇宙ステーションの活動が本格的に活性化してくるという中で、そういったものは、とても子どもたちの夢を喚起するような部分がありますね。
 あるいは、田中主査も大変に関わっておられる南極での氷床掘削も、ドームふじでの掘削が開始して、近いうちに三千数百メートル掘り抜いて、南極大陸の基盤岩に達する。これも、NHK等を通して、非常に宣伝されている。
 さらに、今日JAMSTECからオブザーバーでお見えになっている山川さんがかつておられたサイクル機構では、近いうち、2010年ぐらいでしょうか、1,000メートルの地底にラボをつくると。これはこれでまた非常に夢を喚起する。
 こういった総合的な全体の夢の中で、IODPもどんどん乗っかっていけば、IODPの船が運用を開始される、マントルの物質が手に入る、地下生物圏が発見されると、そういったタイミングと、他の分野でいろんなものがどんどん発見され、報道されるタイミング、これを見はかるのは難しいんでしょうが、ともに、協調的にというか、相乗効果的に、我々は、宇宙からも、地底からも、海底からも、どこからでも地球を知りたいんだということを、強いメッセージとしてアピールできるんじゃないかと思うんです。
 全体の夢の部分の中で、このIODPの位置づけを検討していただければよろしいかと思っています。

【松田委員】
 「ちきゅう」を公開するということですから、せっかくのチャンスですから、小学校とか中学校に、ぜひ、文部科学省のほうからも働きかけて、Webであらかじめ学習をして、その知識をもって見学に行くことをお勧めしますといったような、そういう働きかけをやってみたらどうかと思うんです。学校は、たくさんあるわけですから。
 それから、今度、スマトラ沖地震でインド洋の警報システムをみんなでつくり上げよう、地球規模で協力しようという動きになっていますが、その際には、やはり住民に警報について教育するということが大事だと思うんです。そういうところにも、どんどん、日本ではこういう研究をして、こういうことがインターネットで勉強できるというふうな、覗いてみてよというのじゃなくて、もうちょっと能動的に働きかける、そういうチャンスをどんどん探ってみたらどうかと思うんです。

【松永委員】
 私たちも、「ちきゅう」は今までの掘削船では無理であったところをさらに掘ることができるということで、そこは非常に納得しやすいし、説明もしやすいんだけれども、やっぱり、その後で何がわかるかということで、今、長沼先生がいろいろ挙げられたんですけれども、「これが分かる」ということを絞られて、皆さんと一致したものを持つと説明しやすいんじゃないでしょうか。宇宙や原子力とかと比べて、将来、お金をとっていかなきゃいけないんじゃないかなと思うので、何が最もインパクトあるかということをコンセンサスとして持っておくことは大事だと思います。それから、非常にプロフェッショナルな『ネイチャー』とか『サイエンス』とか、科学アカデミーにも訴えつつも一般の方にもきちんと理解してもらわないといけないんだと思います。両方できないと、一般受けだけしても長く続かないし、科学アカデミーの中だけでも続かないということで、その辺、両方進めるようなところで、大きく訴えていただけたらなと思います。

【田中主査】
 そうですね。できるかできないかは別として、科学者がどういう夢を持っているか、それを打ち出すのはいいんじゃないですかね。そうすると、何となく親しみやすくて分かった気になって、これは大事なんだということになる。

【佐藤委員】
 宇宙も深海も難しさは同じだと思うんです。だけど、宇宙のほうは非常に一般受けしますし、月に行くだけで、あるいは土星のタイタンに行くことがすごいロマンがあるように見えます。海も、本当は、例えばマントルまで掘るというのはロマンがあると思うんですけれども、どうも、一般的には、10対1か100対1ぐらいで全然関心度が低い。だから、マントルまで行ったら何がわかるかという説明は大事なんじゃないでしょうか。その辺の説明がうまくいけばいいなと。先ずはこういったかたちから一般受けすることが重要で、総合的なヒット数も大事だと思うんですけれども、それは非常に難しいと思います。

【田中主査】
 宇宙は行って写真を撮れば分かる。ところが、海は、後が大変ですよね。ボーリングをやった後の資料の解析が大変。その解釈をどうするか。

【宮崎委員】
 私もお話したいことが2点ありまして、1つめは、恐らくご検討されているかと思うんですけれども、いわゆる広報活動について若干具体的な提案をさせて頂きたいと思います。先程アドレスがJAMSTECの一番深いところにあってというお話があったかと思うんですけれども、JPドメインで簡単なもの、例えば、wwwのchikyuのjpとかいう形で、1つ独立したドメインをおとりになるのはどうなんでしょうか。
 それから、もう一点は、これから実際に「ちきゅう」が動き出して幾つかのところで一般公開されるというわけですけれども、例えば、現時点では造船会社の所有物かもしれないんでしょうけれども、建造されているあるいは試験運転されている時から、船にWeb公開するようなテレビかモニターカメラをつけて、常時それをインターネットで公開していくというのはどうでしょうか。一般公開の折にも、参加見学者の模様を、参加が難しい、例えば長野県には寄港することは不可能なので、そういうところにも公開していくという形で、リアルタイムで動きを見せていくのは如何でしょうか。
 それから、最初のほうに田中氏から報告がございました、台湾や韓国等にいろいろ働きかけをされているという点なんですけれども、今後さらに、ほかの国にも働きかけ、例えばアジア、オセアニア、そのほかのところにされるご予定はあるのでしょうか。

【川村氏(CDEX)】
 独自のドメインでサイトを持つということについては、今まさに検討中でして、前回の時にもそういう要望があったと覚えておりますけれども、今年度はそれができませんでしたので、来年度は、表現が難しいのですがJAMSTECの中にではなく、別なところという言い方をするのが正しいかと思いますけれども、サーバーなりを持って独自のドメイン、ホームページを持とうということは検討しているところです。4月以降、なるべく早い時期に、セキュリティーの関係上全部のデータということまでいかないかもしれませんが、一般的な面でのドメインということでは、早期に立ち上げたいと考えています。
 それから、カメラの件なんですけれども、先ほどセンター長が表をお見せしたかと思うんですが、何年からできるという程具体的ではなかったんですが、表の一番下のほうに、ちょっと小さくてわかりづらかったんですが、船からのリアルタイムの通信というのを記載させて頂いております。これをうまく使って教育現場的なものも考えておりますし、公開とかも含めた24時間テレビモニターもなるべく早いうちに導入したいなということは、当初より考えています。ただ、来年すぐにというところまでいけるかどうかは、まだ検討中です。

【堀田氏(CDEX)】
 建造中のテレビモニターでの公開については、業者との問題がありまして、ちょっと困難かと思います。

【平(朝)委員】
 工場からの中継というのはちょっとできないんですけれども、現在調整中なものとしましては、「ちきゅう」の中を実際にどういう通路へ行くとどのように見えるかというものは、ビデオ撮りして公開しましょうと、リアルタイムでなくても、内部情報を、人がちょうど通ったような目で見るとどういうふうに見えるかとかといったものの撮影も行っております。特に、ドリルフロアなどは近づいてなかなか見ることはできないわけで、いろんな角度から、ドリル等を実際に撮影して公開しようということをやっています。

【川村氏(CDEX)】
 補足しますと、来年度早々にCGによる「ちきゅう」の掘削の仕方やライザーシステム等を説明した動画を作って、Webサイト等に載せてどんな技術を使っているのかということは説明したいと思っていますし、センター長の申し上げたような、ビデオで撮ったものを、リアルではないですけれども、「ちきゅう」の中を歩くとこんな感じになるよというところも、なるべく早いうちに公開できればと考えています。

【佐藤委員】
 参考資料3の最終の、このホームページの絵がありますね。上の写真は、これは写真ですか、絵ですか。

【平(朝)委員】
 これは絵です。

【佐藤委員】
 これは、例えば、周りの大きさが相対的にわかるようにするのはどうでしょうか。例えば、月の衛星に打ち上げるロケットは非常に大きいですね。数十メートルあって、直径が10メートルだ、それで圧倒される。多分、みんな、経験あると思うんですが、これも、何かあるといいかなという感じがします。パッと見たときに印象に残るような。

【平(朝)委員】
 大きさのレファレンスになるようなものですね。

【佐藤委員】
 背景に何かあれば、このページに運よくたどり着いた人は、やってみようかという気持ちになるかもしれないなとちょっと思いました。

【堀委員】
 4月に公開というのは、船を一般公開されるということですか。

【平(朝)委員】
 4月に引き渡しを受けて、6月に一般公開の予定です。

【堀委員】
 先ほど、愛知万博と連動なさると仰いましたが。

【平(朝)委員】
 その可能性は非常に高いと思います。

【堀委員】
 地球博ですから、名前からしてすばらしいので、まさしくチャンスだと思います。ぜひ、何か連動をお考えいただければと思います。

【平(朝)委員】
 時期や港など、色々検討する必要があるとは考えております。

【堀田】
 7月の海の記念日を挟んで、名古屋港に寄港することは現在考えております。

【佐藤海洋地球課長】
 日程的なものもありますので、その辺も確実というわけにはいかないんですけれども、色々なところで公開していきたいなという気持ちはあります。ただ、訓練も行わなくてはいけないものですから、タイミングは非常に難しいものはあります。例えば地球博とタイミングが合うかどうかとか、この辺のところは、色々な事情があるとご承知おき願いたいと思います。

【田中企画官】
 すみません、宮崎先生の最後のご質問の、いろんな国に働きかけるという件ですが、今、台湾と韓国について、わりと力を入れて働きかけています。といいますのは、ODPのときに、台湾、韓国は、コンソーシアムを組んで参加しておりまして、そういうところが、今回、IODPで、まだ参加されていませんので、どうだねということで、JAMSTECあるいはJ‐DESCのほうからの働きかけをきっかけにして、次に政府レベルの働きかけということで今取り組んでおりまして、実際、2005年のうちには、何とか具体的に参加をしたいというところまで、向こうの意向を引き出すまではいっております。何とかそれを具体化したいなということで、今取り組んでいるところでございます。
 そのほかの国についても、ODP時代に、台湾、韓国と一緒にコンソーシアムを組んで参加していたのが、カナダとオーストラリアなんですが、オーストラリアなんかには、この前、日豪の科学技術協力の委員会を利用して働きかけております。なかなか、まだ具体的にはなっておりませんが、ほかの国も含めて、二国間のそういった会議の場を利用する、あるいは、例えば文部科学省から幹部がそういった国に行ったときなどを利用して、参加について発言していただくとか、できるだけの我々レベルでできることを取り組んでおります。
 また、J‐DESCあるいはJAMSTECの研究者のほうでも、参加をまだしていない国への取り組みということもやっていただいておりまして、ここにいらっしゃる皆様も、ぜひ、そういった機会がありましたら、働きかけもしていただければと存じます。まず研究者レベル、次に政府レベルというふうに、段階を踏んで話を進めて、IODPへの参加国をできるだけ増やしていきたいと考えております。

【岡田委員】
 2つ発言したいんですが、今、田中さんのおっしゃったオーストラリアの件なんですが、個人的に知っているオーストラリア国立大学の研究者が、1月に国立大学の中でも声が起こって、IODPという大事なプロジェクトに入るべきだという何人もの話があって、たしか1月後半に、できればIODPの誰かに来てもらって、オーストラリア政府の誰かに働きかけてもらいたいと考えているというのを、今年はじめの手紙で書いてありました。今のところはアクションはないですが今後何かあるかもしれません。

【田中企画官】
 私どもが聞いている限りは、具体的なお話はまだということでした。

【岡田委員】
 ひょっとすると、IODP‐MIワシントンオフィスのほうへ話が行っているのかもしれません。ともあれ、オーストラリアの国の中からも声が起こってきつつあるみたいです。実際、北極海の航海が始まったのを見て、いよいよ認識が変わってきたんだろうと思うんですけれども。
 2つ目は、先ほどからお話が出ている広報というか、いわゆるアウトリーチの問題なんですが、我々大学の人間も全く同じでして、対象はちょっと違いますが、大学は今、受験生がどんどん減ってきて何とかして高校生に興味を持ってもらいたいということで、いろいろ対策を立てています。私のところも、どこの大学でも、皆、広報紙というものは出しているんですが、これは内容が硬い。我々のところでも、ホームページで広報をしたり、オープンユニバーシティーや博物館に色んな人が来るんですが、そこで聞いてみても、広報紙読んだことはないという反応がほとんどです。どこの大学でも印刷物として立派なものを出していますが、その内容は大抵、所属長のあいさつから始まって、どこでどういう会議を開いたというもので、これでは誰も読まないんです。それで、10大学の理学部長会議の際に、東北大から新しい企画をやったということで、あおばニュースという、8ページのカラー刷りの結構くだけた内容のニュースレターを出されたとの事でした。うちも、これを出そうと思って色々話をしたら先生方は皆忙しくて、「それはいいアイデアだけど、自分はやりたくない。」ということになってしまう。幸い、最近は、文科省のほうからも間接経費をいただいていますので、研究科長でも、数千万円とか1億円とか自由に使える経費がありますので、それで何とかニュースレターを出そうと思って、業者に当たりましたら、業者に「こんなものだれが読むものですか。こんな硬いもの駄目ですよ。」と言われました。彼らは非常に実績があって、例えば、JRに雇われていろいろな広報誌をつくっているとのことで、例えば、座席の後ろの広告とか色々なものを作っているそうなんですが、それから見ると、大学で出している広報紙の内容をさらに柔らかくしたものですら、とても堅くてだめだというお話でした。そこで今、業者に任せて、漫画があってもいいしイラストレートがあってもいいからちょっと提案して頂いています。大学の中には色んな成果や素材であって、こういったものはインターネットで公開はしているんですが、階層をたどっていかないと見えませんので、その中からおもしろそうなものを素人さんの目で見て、ピックアップして、8ページ、カラー刷りのものを先ずは1万部作って、数カ月ごとに置きかえたりあらゆる機会でばらまくということを今考えています。それで、これまで拝見したJAMSTECから出されたものはものすごく立派なカラーで私たちが学部の教育に使うのにもものすごく参考になるんですが、高校生や中学校のレベルでは、ちょっと難し過ぎるかなと。やっぱり、もっと漫画が入って、イラストが入って、非常にくだけたものも必要なのではないでしょうか。インターネットも大事なんですけれども、聞いてみると、やっぱり、出版物の魅力というのも捨てがたいんですね。今、1万部作るといったって、たかだか50万円しかかからないんです。JAMSTECだったら、10万部とか作ってあらゆるイベントで中高生向けにお配りになったらいいんじゃないかなという気がしています。
 全く同じ問題で今、悩んでいるところなものですから、ちょっと発言させていただきました。

【森田委員】
 大学の広報とも関連すると思いますが、キャリアパスの色々なエグザンプルを示してくれるといいと思います。例えば、JAMSTECのどこかに、こんな例があるよということでキャリアパスの典型的なのを取り出してみるのはどうでしょうか。そうすると、職業と結びついて、学生は非常に関心を持つので引きつけるのにはとてもいいんですけれども。IODPの色々なパンフレットがあると思いますが、そういうような、キャリアパスの例とかが全然載っていないですね。だから、学生に配るわけにいかなくて、サイエンティストとして読むだけになってしまう。キャリアパスの例も是非入れて下さい。

【田中主査】
 ほかにございますでしょうか。

【安田委員】
 広報という点では、そういう色んな広報紙をつくることも大変重要だと思うんですけれども、体験する場もかなり重要だと思うんです。文科省の施策の中にスーパーサイエンスハイスクールとかサイエンスキャンプとかいうのがありまして、コアセンターでも両方ともお引き受けをして、サイエンスキャンプはスプリングとウインターと2回やっております。これは全国公募で、旅費は全部文科省が出してくれて、高知で3泊4日ぐらい集中的にやります。これは人数が限られていまして、20名程度なんですけれども、こういう機会をやはり集中的にやるのはどうでしょうか。JAMSTECも、夏のオープンハウスみたいのをやっておられますから、そういういろんな場で多く取り入れるような方法が非常に効果的だと私は思っています。恐らく、スーパーサイエンスハイスクールは各地にありますから、できるだけ、大学とかそういう研究施設で、IODPの課題を用いたものを展開していくのは、これは我々の責任だと思うんですけれども、如何でしょうか。

【田中主査】
 ほかにございませんか。
 青少年に対する広報によって、科学に対する興味を喚起する、あるいは大学院生に積極的に関心を持たせて引き入れていくと、それは非常に大事なことだと思うんですが、そのためには、分かりやすくテーマを焦点を絞って、先ずは海の解明を目指すというように、歯切れのよさというか、そういうものが少し必要じゃないかなという気がします。地球の歴史は46億年ですから、その中で、第4紀といったってほんの一部でしかない。関心はもっとずっと長い歴史にある。先ほど、企画官が示してくれた資料5‐4の途中に、IODPの研究航海のテーマの1つとして、第3紀末から第4紀における千年スケールの気候変動を解明するとありましたが、最初は「ああ、それはそうだな。」と思っていましたけれども、例えばこの航海で、本当に何がわかるのか。そもそも、第3紀末というと、200万年以上前ということになってきますが、それから今までに本当に千年スケールの変動があるのか。地質学者はいい環境のところで掘れさえすればあると思っておられるのかもしれませんが、はっきり明確には分かっていないのではと思います。もちろん、昔からのそういうことが分かればこれにこしたことはないんですが、せいぜい最近の数十万年で、氷期・間氷期サイクルが非常にはっきりしてきて、そして、氷期のD‐Oサイクルと言われるような早い振動が、大振幅でひっきりなしに起こるようになってきた。その原因の1つには、海洋が、現在のようなモダンモードから氷期モード、あるいはハインリッヒモードという間を非常に気まぐれに、早く交代したことと、大陸斜面上部のメタンハイドレードの分解ということを組み合わせたモデルが今、提唱されています。我々の一番の関心は、とにかく海洋がかなり気まぐれに、大きな海洋の熱塩循環といいますか、ベルトコンベアがひっきりなしに変化していたり、あるいは場合によっては止まってしまう、そういうことを、なぜそんなに起こるのか。そのメカニズムは何なのかということです。これは、地球科学のものすごく大きな関心事だと思います。ですので、200万年をやってくれるのもいいんですが、その中に、1つの焦点としてこういうものを打ち出してくると、皆が非常に興味を持って、大学院生なども「よし、自分がひとつやってやろうか。」と思うのではないかと思います。
 せっかく「ちきゅう」という大きなファシリティーをつくってやるんですから、いろいろなことをやらなきゃならないことはわかるんだけれども、やはり、少なくとも広報の立場から言えば、当面の目的はこういうところにあるんだよ、こんなことがわかるよという風に持っていかれたほうが分かりやすいし、効果があるんじゃないかと思います。

【末廣委員】
 私も、仰るとおりだと思います。プレスの発表資料はある種の翻訳が必要で、我々の子孫の代ぐらいまでに通ずるような言い方ぶりにすると、大分受け取り方も違ってくるんじゃないかと思っています。ですから、今仰られたその一歩手前の書き方をしてしまうと、それが一体、海洋の大循環とどう関係があるのかという話になってしまう。そうじゃなくて、この大命題が解決されないと、我々の子孫の代にどうなっちゃうかわからないよという言い方へ持っていくと、少しは皆様の関心を喚起するのかなと思います。 それは、気候変動の大問題の他にも固体地球でもありますし、いろいろあるのではないかと考えます。

【田中主査】
 今言った話は、気候変動そのものが地球科学の最大の問題なんだけれども、これが環境問題にもつながってくるんですね。そういう意味で、非常に焦点がはっきりしてくるので、何かそういう切り口でやってもらえば、ものすごく国民の理解が得られて、プロジェクトが成功に行くのではないでしょうか。国民の税金で何かをやる以上、我々は常に、こういったことを考えていかなきゃいけない。

【平(朝)委員】
 社会貢献で、国民に還元するという視点は、やっぱり大事だと思いますので、工夫させていただきます。

【田中主査】
 いかにして社会に貢献できるかということを、本気になって考えなきゃいけないと思います。少なくとも、その気持ちがあるのとないのとでは大違いだと思います。

【安田委員】
 これは言うべきかどうかと迷っていたんですけれども、コアセンターで、「ちきゅう」の役割をお話しする中で、「ちきゅう」は海洋研究とか地球研究の最先端であるというふうに色々ご説明をするんです。その時に、東シナ海のガス田といった問題であるとか、メタンハイドレードの資源の採掘であるとか、一般的な見方でいくと、そういうものにどう寄与するのかということを問われることが多々あります。これは省庁が違いますからとか何とかという話をしてもわかる話ではないと感じています。一般の方が興味を持っているような対象というのは、エネルギーや地球環境、地震だと思います。それぞれの科学的な説明はできるわけですが、これはやりませんとか、これは他省庁の事項ですからという事は言えないわけです。その辺をうまく説明をしながら「ちきゅう」はこれだけの効果があるんだということを言っていかないと、皆、納得はしてくれないし、あるいは、別の船をつくりますと言っても、そうはいかないと思うんです。この辺はかなり難しいと感じています。

【末廣委員】
 それは全くそのとおりで、例えば、JAMSTECで持っています地球シミュレーターに関しては、JAMSTECならこういうことをやるんだろうねという範囲で使っていればいいという話では全然なくて、オールジャパンの宝物としていかに最大限利用するかということになっているわけです。それと同じことで、「ちきゅう」に関しても、大変な宝物でこれは国民の税金でつくったものですから、当然、社会貢献に一番使われなければいけないので、エネルギーだろうが、資源だろうが、何だろうが、一番いいところに使ってもらうのが、一番、国民の声にこたえる道だと思っております。

【田中主査】
 よろしいですか。まだ、いろいろあると思いますが、そろそろ予定の時間が過ぎましたので、この問題、引き続き、今後も検討していくということにさせていただきたいと思います。
 この辺で終わりたいと思いますが、事務局のほう、何かございますか。

【佐藤海洋地球課長】
 今後の委員会の話を少しさせて頂きます。科学技術・学術審議会及び海洋開発分科会のほうの任期が1月末になっていますので、この委員会もそれらの下にありますので、同じく任期は1月末になりますが、今日もいろいろご意見頂いたとおり、やはり、「ちきゅう」の本格的な運航、あるいはIODPの研究推進のために、こういう場が必要だと考えておりますので、引き続き、この委員会を続けて行わせて頂きたいと思います。恐らく、委員構成はここにいらっしゃる皆様方とほぼ同じと考えておりますので、また、引き続き、いろいろご支援なり、ご協力いただければありがたいかと思っております。
 今後の議題としましては、審議事項というのが参考資料にありますけれども、ここに記載された事柄や、「ちきゅう」の本格的運航が始まることを受けて1つ節目に来ているということで、この委員会で中間評価もしていく必要があると思っていますので、今後ともどうぞよろしくお願いしたいと存じます。

【田中主査】
 科学技術・学術審議会は、先だっての総会をもって第2期を終わり、もう3期に入ったということでしょうか。

【佐藤海洋地球課長】
 1月末日までの任期になっていますので、2月からとなります。

【田中主査】
 今日頂いた色々なお話は、この場で今後も審議を続けることになるかと存じます。
 では、以上をもちまして、本日の会合を終了したいと思います。大変ありがとうございました。

‐了‐

お問合せ先

研究開発局海洋地球課