深海掘削委員会(第4回) 議事録

1.日時

平成16年8月9日(月曜日) 14時~16時

2.場所

経済産業省 別館1107号 会議室

3.議題

  1. 統合国際深海掘削計画(IODP)の2005年度年間計画の概要について
  2. IODPに関する研究推進体制について
  3. IODPに関する広報活動について
  4. その他

4.出席者

委員

 田中主査、森田主査代理
 石田、兼原、近藤、佐藤、平(朝)、松田、岡田、末廣、徳山、長沼、宮崎、安田 各委員
 平(啓)海洋開発分科会長

文部科学省

 文部科学省、内閣府、国土交通省、他

5.議事録

【田中主査】
 ただいまから第4回の科学技術・学術審議会海洋開発分科会の深海掘削委員会を開会したいと思います。
 本日は、ご多忙の中、また大変暑い中をご出席いただきまして、大変ありがとうございます。議事に入ります前に、事務局の文部科学省海洋地球課の佐藤課長よりごあいさつをお願いします。

【佐藤海洋地球課長】
 文部科学省の海洋地球課長の佐藤です。7月に就任いたしましたが、これからよろしくお願いいたします。
 早速、IODPの関係につきましてですけれども、昨年の10月1日から計画が始まっているということで、初年度も終盤に近づいているところでございまして、活動も活発化してきております。6月にはアメリカの掘削船がIODPとしての初めての航海に出航しておりますし、また昨日からは北極海の掘削航海も始まっております。
 また、7月にはパリでIODP評議会が開催されましたが、この後でまたご説明させていただきたいと思っておりますが、さまざまな活動が実施されております。
 私どもとしましても、地球深部探査船「ちきゅう」の建造、いよいよ来年の4月に完成でございますので、その運行、あるいは関連の研究につきまして、本委員会のご意見も伺いながら、IODPを総合的に推進してまいりたいと考えております。
 本日の会議では2005年度の年間計画の概要なり、あるいは研究の推進体制なり、そして広報活動という3つの議題につきまして、いろいろご報告を説明させていただきます。委員の皆様からもいろいろご意見をいただければありがたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。簡単ではございますが、開会のごあいさつとさせていただきます。

【田中主査】
 ありがとうございました。
 それでは、議事に入ります前に事務局のほうから資料の確認をお願いします。

【田中企画官】
 海洋地球課の田中でございます。それでは、お手元の資料を確認させていただきます。
 まず、第4回深海掘削委員会議事次第(案)というのがございます。それから、資料4-1が名簿でございます。資料4-2-1で議事録(案)がありまして、資料4-2-2として議事概要(案)がございます。いずれも案です。資料4-3-2でIODP2005年度年間事業計画の概要という1枚紙がございます。それから資料4-4の文部科学省プレスリリース資料というものがございます。
 それから、参考資料1としまして欧州深海研究掘削コンソーシアムとの覚書、それから参考資料2が中国との覚書です。それから、参考資料3が英文の表紙がありますが、FY05Program Planというものがございます。それから、参考資料の4は日本地球掘削科学コンソーシアムIODP部会という名前がついていて、平成16年度競争的資金獲得状況調査結果という資料です。それから、参考資料の5、これは横紙ですが、IODPに関する広報活動の現状というもの。それから、最後に1枚紙で参考資料6、深海掘削委員会における審議事項という資料になっております。
 何か資料で不備な点がございましたお知らせいただきたいと思います。

【田中主査】
 よろしゅうございますか。
 それでは、前回、平成16年3月12日に行いました第3回深海掘削委員会の議事録及び議事概要の確認をお願いしたいと思います。事務局のほうから。

【田中企画官】
 それでは、資料4-2-1ですが、これは前回、今年の3月12日の第3回のこの委員会の議事録(案)となっております。それから、資料4-2-2がその概要版となっております。
 各委員には、事前にご確認をお願いしておりまして、本日までに堀委員のほうから若干修正をいただいたところでございます。この議事録及び議事概要は文部科学省のホームページにおいて公開されることとなっております。

【田中主査】
 何かこれにつきまして、委員の皆様のほうから意見はございますでしょうか。
 それでは、他に気づいた点がございましたならば1週間以内、8月16日までに事務局までご連絡をお願いいたしたいと思います。その後、事務局のほうで皆様からいただいたご意見をとりまとめまして公表の手続を進めるようにお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の議題1であります。統合国際深海掘削計画の2005年度年間計画の概要につきまして、前回委員会以降のIODP関連活動の報告とあわせて、事務局から説明をお願いしたいと思います。

【田中企画官】
 それでは、ご説明させていただきます。
 本年3月の前回会合以降のIODPに関する活動につきまして資料4-3-1に基づきましてご説明させていただきます。
 まず、IODPのフレームワークということで、政府レベルでの、主としてIODPの管理運営に関する事項につきましてご説明をさせていただきます。
 これまで、覚書を交わした正式な参加国は日米だけであったわけですけれども、3月以降、欧州と中国が新たに正式メンバーとして加わりました。
 まず、欧州ですが、ECORDというコンソーシアムをつくっておりまして、3月16日にドイツのブレーメンで文部科学大臣とNSF長官との間の覚書に、ECORDの代表のフランスの国立宇宙科学研究所の所長が署名をいたしました。
 ECORDというのは、ここにありますように、フランス、イギリス、ドイツ、スウェーデン、デンマーク、アイスランド、イタリア、ポルトガル、スイス、オランダ、フィンランド、ノルウェーという12カ国で構成して、グループをつくって、それで2004年度から10年間の間、参加することとなっております。
 内容につきましては、3参加単位分の分担金を支払うとともに、特定任務掘削船を提供するContributing Memberとして参加ということになっております。参加単位というのは、日米の覚書におきまして、ある分担金額とそれによって得られる権利の単位を定めておるのですが、1参加単位で各掘削船に年間2名の研究者を乗船させることができ、また、科学諮問組織の委員会やパネルに1名の委員を派遣できることとなります。ヨーロッパは分担金として3参加単位分に相当する金額、それから特定任務掘削船を提供することとなっております。参考資料1に、覚書の概要と英文の覚書本体をつけております。
 それから、中国ですが、4月26日に東京に中国の科学技術部長がお見えになる機会がございまして、この機会を利用しまして、文部科学大臣とアメリカのNSF長官との間で中国の科学技術部長が覚書を署名いたしました。
 中国につきましては、参考資料2に覚書の概要と英文の本体をつけましたが、2004年度から5年間、初年度は150万ドル、1.5ミリオンドルで、その後4年間は、毎年100万ドルの分担金を支払うことになっております。そういう額を支払って参加するわけですが、先ほど申した1参加単位には不足しておりますので、おおむね4分の1参加単位ぐらいに匹敵するので、準メンバーということで参加することとなっています。そのため、それに相応する乗船研究者の数、あるいは科学諮問組織への委員の参加を認めております。
 それから、次に運営する機関のほうですけれども、IODPを運営する機関といたしまして、IODP国際計画管理法人(IODP-MI)というNPOが設立されておりまして、これは米国のNPOですが、ここが中央管理組織という役割を果たすということの契約を、今年の3月31日にアメリカのNSFとの間で結びました。これによって、正式にIODP-MIがIODPを実際に動かす業務を行うことになります。
 IODP-MIというのは、オフィスを日本と米国に持っております。日本のオフィスは札幌の北海道大学の建物の中に入っておりまして、このオフィスの運営につきましては、財団法人地球科学技術総合推進機構(AESTO)が担うことになっており、IODP-MIと契約をしております。
 それから、今年の7月7日にはパリでNSFとMEXTとの会合を開催しまして、本日紹介させていただきます2005年度の年間事業計画(案)や、今後のIODPの長期の計画について検討を行いました。
 7月10日には、同じくパリで第2回のIODP評議会というものを開催しまして、これはIODPに参加する各国がメンバーになる評議会でございまして、日本、アメリカのほか、ヨーロッパ、中国が集まりまして、関係機関の活動状況とか、2005年の計画(案)について報告が行われました。参加国以外にも韓国、ロシアといった今後参加を期待する国もオブザーバーとして招きまして、報告していただきました。
 それから、現在、NSFがノンライザー掘削船を運用しておりますが、当初、現在の掘削船は来年の5月までとしていたのですが、6月以降も延長して航海を実施する方向で予算を何とかしようということを表明しまして、その延長が決まれば2005年度はさらに2つの航海が追加されることになります。
 掘削航海、実際の研究航海ですが、先ほど課長からも申しましたように、今年の6月27日から8月21日までの予定で、東太平洋のファン・デ・フーカ海域でアメリカのジョイデスレゾリューション号を用いまして、研究航海を行っています。我が国からは東京大学の浦辺徹郎教授が共同首席研究者として参加しておりまして、浦辺教授はじめ8名の研究者が参加しております。
 また、昨日から9月17日までの予定で北極海のロモノソフ海嶺というところで、ヨーロッパの提供する掘削船と砕氷船2隻の船団で北極海の掘削を行うこととしております。得られた資料はドイツのブレーメンで基礎的な分析をやることとなっており、我が国からはその北極海の航海に3名、ブレーメンでの分析に8名の研究者が参加するということになっております。
 それから、科学諮問組織ですが、3月にワシントンで第2回の科学計画委員会会合が開催されまして、ここでライザー掘削に関する検討作業の着手を決定しております。その中に、南海トラフも入っております。
 それから、6月にはJAMSTECの横浜研究所で第3回のSPC会合が開催されまして、その掘削のプロポーザルの議論やランクづけが行われまして、我が国近海では南海トラフやオホーツク海の掘削プロポーザルが高い評価を得ております。
 それから、7月にはパリで科学計画・方針管理委員会(SPPOC)という、科学諮問組織の最高機関の第2回会合が開催されまして、ここで2005年度の年次計画(案)が承認されております。承認されたものが、今度、IODP-MIのほうからNSF-MEXTのほうに提出されて、今そこで検討することになっております。
 中央管理組織ですが、まず人事ですが、科学運用担当の副代表ということで、トーマス・ジャナチェックさんという人が就任しておりまして、年間事業計画案の作成業務を担当します。それから、上級顧問としまして、前の文部科学省宇宙開発利用課長の大塚洋一郎氏が就任しており、代表の特別顧問ということで、主にIODP関係機関との調整業務を担当しています。これで、既に決定しておりましたマニック・タルワニさんという代表、それからハンス・クリスチャン・ラーセンさんという科学計画担当の副代表の2人とあわせて全部で4名、これでIODP-MIの役員全員が就任したということになります。
 それから、3月30日に札幌でIODP-MIの会員総会、それから理事会が開催されました。なお、IODP-MIの理事会はここにいらっしゃる岡田委員が理事会の議長をしておられます。
 7月9日には、やはりパリでIODP-MIの理事会の執行委員会が開催されまして、2005年の年次計画(案)が承認されました。
 4月にはワシントンでOPCOMという掘削計画をどうやって実施に移すかということを検討する運用委員会が開催されまして、南海トラフなどについて協議されました。
 次に、JAMSTECのほうですが、6月に高知で海洋コア総合研究センターの利用委員会が開催されました。それから、JAMSTECの東京事務所で、IODPの計画委員会が開催されました。それから、7月にはJAMSTECが内部組織を変更いたしまして、ここにありますように、深海地球ドリリング計画推進室というものと、地球深部探査センターとが統合になりました。
 その地球深部探査センター(CDEX)というものですが、これはこちらにいらっしゃる平朝彦委員がセンター長をなさっておられますが、「ちきゅう」につきましては、今年の4月に噴出防止装置を搭載しまして、現在も順調に艤装作業が継続されております。
 そのほか、毛利宇宙飛行士の「ちきゅう」見学や南海トラフの事前調査実施などの活動がなされております。
 日本地球掘削科学コンソーシアム(J-DESC)のほうですが、5月31日に初代会長の久城育夫先生が退任されまして、石原舜三先生(産業技術総合研究所)が着任されました。
 それから、これまでに計画された掘削航海に関して我が国の乗船研究者を推薦しております。また、J-DESCの会員総会を行って、そのときに陸上掘削の部会を設立しております。
 それから、3月30日にはJAMSTECの横浜研究所でJAMSTECとAESTOの共催、文部科学省後援によりまして国際シンポジウムが開催されまして、国内及びアジア諸国を中心に74名の研究者が集まっております。
 そのほか、ここにございますように、各地で科学館での普及啓発活動、キャンペーンを行っております。それから、シンガポールでもアジア諸国の研究者にいろいろ紹介するような活動をやられているということでございます。
 以上がこれまでの活動の概要でございます。それと、2005年の年間事業計画ですが、資料4-3-2です。この年間事業計画の内容は、その年度に行う予定の掘削航海、また、それに関連して実施する予定の科学活動です。掘削航海につきましては、このように北大西洋で4件、右端の備考のところにNRとなっておりますが、これはノンライザーという意味でして、アメリカのジョイデスレゾリューション号を使った掘削航海をこのように行うことになっております。
 それから、一番下の右側にMSPと書いてありますが、これはヨーロッパの特定任務掘削船を使うということで、タヒチ沖での掘削が予定されております。地図に位置が示されております。
 なお、参考資料3として、2005年の年間事業計画(案)の本体をつけさせていただいております。その31ページをごらんいただきたいのですが、表がございます。表の左側、Entityとなっておりまして、各実施機関が記載されています。上のほうには、科学運用経費(SOC)、掘削船運用経費(POC)と分けられており、各事業主体がそれらの経費をどれだけ使う予定なのかがまとめられています。
 原案ではSOCとして2,100万ドル、POCとして4,200万ドルということになっていまして、SOCの2,100万ドルというのが、各参加国からの分担金で賄うということになっております。POCは掘削船を提供する国が賄うというものです。それから、POCのほうではJOI-Allianceという、ジョイデスレゾリューション号を運用するアメリカの機関と、ESOというヨーロッパの掘削船運用組織がこれだけ使うということになっています。そのほか、CDEX、日本のほうでも「ちきゅう」の掘削予定箇所の安全な掘削のための事前調査費というものを計上しております。トータルの事業規模は6,400万ドルとなっております。
 33ページには、その科学運用経費がどういうふうに使われるかというものが書かれておりまして、左側の下にIODP-MI Core Activitiesで3,035と1,188と計上されております。それぞれ、IODP-MIのワシントンの事務所と札幌の事務所の運営費となっています。
 そのほか、IODP-MI Subcontractsということで、左側に何をやるかということで、教育、出版、科学支援、技術開発、あるいはデータやサンプルの扱いといったものについて、それぞれ予算額が書かれております。
 これは今後、文部科学省とNSFでレビューしまして、承認するということになるのですけれども、現在のところこの内容そのものがまだ、例えば教育とか、出版とか、一体どういう方針のもとで何をやるのかとか、当然書かれているべきものが書かれていないという不備がいろいろあったり、あるいは本来その国の責任で行うべき経費が上げられていたり、そういった状況がございますので、幾つかまだ指摘をしていく予定になっております。ですので、最終的には内容、あるいは金額についても変わったものとして承認することになると考えております。
 以上でご説明を終わらせていただきます。

【田中主査】
 どうもありがとうございました。ただいまのご説明についてご意見、あるいはご質問はございますでしょうか。

【岡田委員】
 1つ、よろしいでしょうか。この場でお聞きするのが正しいのかどうかわからないのですが、先ほどの中国の参加について、IODP-MIの会員としての参加条件はプログラムに参加している国の教育研究機関であること、となっているのですが。今度、ヨーロッパは3参加単位入りましたから問題ないのですが、この4分の1しか入っていない中国はプログラムに参加していると見なせるのでしょうか。

【田中企画官】
 私共としては、準メンバーというのはIODPには参加しているというふうに考えております。

【岡田委員】
 IODP-MIの定款には「参加している国の」と書いてあります。もちろん、こちらもメンバーが2種類あって、正規会員とアソシエートメンバーがあるのですが、アソシエートメンバーについては別の条件がついています。中国がIODP-MIの会員になれるかどうかというのを、IODP-MIのほうで勝手に決めていいのでしたら、理事会のほうで諮ってしまいますけれども、リードエージェンシーのほうで何かお考えをお持ちかなと思いましてお聞きしたのですが。
 当初は、参加している国ということの定義が、何となく1参加単位以上の国という認識を持っていました。最初のうちはこの何分の1を負担する国というものを念頭に置いていなかったのですね、全然。ですから、どう扱っていいのか今わからないでいるし、まだ中国からも入りたいという要求は来ていないのですが。中国からはIODP-MIの会員を、例えばTongji大学が入りたいと言ってきた場合に、どうやって扱っていいのかなと。それを規定しているのが、同じ言葉なものですから、定款ではアソシエートメンバーというのは、コンフリクト・オブ・インタレストがあるようなところがアソシエートメンバーという意味ですので、中国から何か言ってきた場合、「おたくは権利ありませんよ」と言うべきなのか、「理事会で返答します」と言うべきなのかわからないでいるというのが今の状態なのです。今日というわけではありませんが、ご検討をいただけたらと思います。

【田中主査】
 結構大事なことですね、これは。
 ほかにございませんでしょうか。どうぞ。時間は考えていますから、ご遠慮なく。

【平(啓)分科会長】
 それでは、細かいことですけれども、資料4-4の一番後ろのほうに、ECORDの英文の資料があるのですけれども、これはthree icebreakersとあるのですが、そのうちの1隻が掘削船なのでしょうか。

【田中企画官】
 資料4-4の真ん中辺りに、各船の概要が書かれておりまして、Vidar Vikingというのと、Odenというのと、Sovetskiy Soyuzという3隻。いずれも砕氷能力がついておりますが、Vidar Vikingが掘削船です。

【平(朝)委員】
 少し補足しますと、Vidar Vikingは、基本的には砕氷船なのですけれども、それにこの航海のために特別にムーンプールという穴をあけて、急遽掘削船に仕立て上げました。基本的には砕氷作業船です。

【平(啓)分科会長】
 数百メートルの堆積物はとれるわけですね。

【平(朝)委員】
 はい、とれます。

【徳山委員】
 資料4-3-1のフレームワークの下から2つなのですけれども。「韓国・ロシアの代表者も出席し」という表現がありますけれども、質問が2つありまして、ロシアの現状を教えていただきたいというのと、もう1つは今までODPでは台湾が環太平洋コンソーシアムという形で参加していましたが、なぜ台湾が呼ばれなかったか、その2つをお聞きしたいのですが。

【田中企画官】
 そのほかにもいろいろな国を呼ぼうとしたのですが、都合がつかないとか、旅費がつかないとかという事情で来られなかった国も幾つかあります。台湾の場合は、中国から今回はやめてほしいというようなことがございました。
 あと、ロシアのほうの状況ですか。

【徳山委員】
 参加する可能性ありか否か。

【田中企画官】
 興味はあるが、非常に予算事情が厳しいのでなかなか難しいという、率直に言うとそういうことです。

【田中主査】
 よろしゅうございますか。

【平(朝)委員】
 ちょっと質問。パリの会議のときに、ヨーロッパにカナダが加わるという情報がありましたけれども、あれは正式にはどうなったのでしょうか。

【田中企画官】
 ヨーロッパの場合はECORDの参加のための覚書というのをメンバーの中で交わすようですが、1年間の時限つきメンバーということでカナダが署名したということを聞いてはおりますが、正式には伺っておりません。

【平(朝)委員】
 ということは、カナダからECORDに何かお金を、実際のコントリビューションがあるのでしょうか。

【田中企画官】
 そこはわからないのですけれども、あるから認められたのではないかと思います。

【平(朝)委員】
 その中身とかは全然わかっていない。

【田中企画官】
 はい。科学者がどう参加しているのかというのも聞いておりません。

【田中主査】
 よろしいですか。
 それでは、議題の2に移らせていただきたいと思います。IODPに関する研究推進体制についてということで、前回の委員会以降、どうような取り組みがなされているのか、徳山委員よりご報告お願いしたいと思います。

【徳山委員】
 参考資料4をごらんください。この資料は1ページ、2ページ、3ページからなっておりまして、1ページ、2ページ目は競争的資金獲得状況という調査の結果が書いてあります。3ページ目は、前々からIODP掘削のためには事前調査が不可欠だということを発言してまいりましたが、04年度、どのような事前調査が計画されているかという、そのリストでございます。
 それでは、簡単に参考資料4の1ページ、2ページですけれども、これは、北は北見工業大学から、2ページ目の九州大学まで71件の競争的資金、これは科学研究費、基盤研究Aとか、特定領域研究とか、そういうものを全部集めたリストでございます。
 2ページ目の最後に、合計金額が書かれておりますけれども、これは3億9,674万円という、トータルでこの1年、今年度の研究費がこれだけ申請してつけていただいている、獲得しているということであります。
 このリストに載っているのは、必ずしも100%IODPの研究をするというものだけではなくて、一部、IODPを利用するというものも含まれております。そういうことでかなり広がりというか、範囲は広くしてリストをつくってございます。
 一体、地球科学及び環境科学の中でどの程度、我々、IODPに関連する競争資金を獲得しているかと申しますと、我々の調べた結果では、地球科学と環境科学の科学研究費の総枠というのは約55億円あるということでありまして、この三億九千数百万円というのはそのうちの7%程度ということであります。
 この7%というのは、少ないか、多いかというのはまた議論になりますが、できればこういう地球環境科学という中にIODPに特化した細目をつくって、その中で特に若手の研究者にIODPで取得されたデータ、それはコアであったり、またデジタルデータやロギングデータであったりするわけですが、そういうデータを使って研究をするための研究費の細目を来年度以降ぜひ立てたいというようなことを考えている次第であります。
 3ページ目でございますけれども、これは今年度、予定している掘削の事前調査ということであります。なぜ、こういう多くの航海が必要かと申しますと、日本の研究者が中核となってIODPの掘削計画をつくって、その計画を実行するために掘削が行われるというようなことが、我々、J-DESCが担う、研究をする上での大きな役割ということで、まずいい掘削計画を作成して、実現に向かいたいということで、このような航海を現在、予定しているということでございます。
 「よこすか」「かいれい」「なつしま」という3隻の研究船というのは、海洋研究開発機構の所有する船でございます。あと、東京大学海洋研究所の船が今年度4月1日から海洋研究開発機構に移管されましたけれども、それは学術研究船、淡青丸、白鳳丸という2船でございます。そのうち淡青丸に関しては、今リストにのぼっている以外に、もう既に南海トラフで航海が終了しておりますけれども、事前調査航海が組まれております。
 この中に含まれているものには、実は三次元探査というものがリストアップされておりません。これは特に、ライザー掘削におきましては、事前に掘削の計画を綿密に立てなければいけないということで、掘削予定点の周辺で三次元的な地殻の構造を把握した後、目的とする深さまでの掘削計画を立てることとなっています。しかし、この三次元探査は、実は日本の自前の探査船を使っては今のところできません。三次元の探査をするためには別枠で予算化せざるを得ないということがありますので、今後とも日本が中核となる掘削計画を策定していくためには、三次元探査を予算化して、実施に移さなければいけないといふうに考えております。以上です。

【田中主査】
 はい、ありがとうございました。ご意見、ご質問、ございますでしょうか。

【平(啓)分科会長】
 最後の三次元探査がよく理解できなかったのですけれども、これはどこの船でなければできないとか、どういうものなのでしょうか。

【徳山委員】
 これは石油業界では一般的に行われている探査方法で、三次元的に地殻構造を決めるということでありまして、普通の探査では1本の長いチューブの中に音響的なマイクロホンをつけて、船から発信した音が水中を伝わって、その後に海底下の地質構造の変化するところではね返ってくるようなことを使って、地殻構造を調べています。例えば、手術しなくてもおなかの中を超音波で探るように、それと同じような手法を使って、地殻の構造を知ることができます。
 それを三次元的にするためには引っ張る水中のマイクロホンを6本とか8本とか10本とか12本とか、今、皆さんが知っていらっしゃることでは、尖閣のところで大陸棚の調査をしているのですけれども、あれは今、多分、8本程度引っ張っている。しかし、残念なことながらこれは日本の船ではできなくて、急遽、ノルウェーの船をチャーターしてやっているのです。ライザー掘削で安全に掘って、ちゃんと目的のところまで到達して、目的のものを取得するためには、実はそういう船で同じような探査が必要だということです。

【平(啓)分科会長】
 今、日本でやられているのはケーブルが1本だけということですか。

【徳山委員】
 そうです。地震探査ということに限れば。

【平(啓)分科会長】
 それを、8本同時に引っ張らなければいけないということですか。

【徳山委員】
 そうです。1本1本の引っ張る水中マイクロホンをストリーマケーブルと呼んでいますけれども、それを50メートル間隔にざっと広げていって、それを8本同時に引くという大変なシステムなのです。そういう船を用いた探査というのは日本の手持ちのファシリティを使ってはできません。その探査をするためには、チャーターをしなければいけないのですけれども、その予算がないために今年度の事前調査の関連航海のリストの中にはそのようなものは含まれておりませんということであります。

【平(啓)分科会長】
 これは日本の業界ならできるわけですか。でも、大陸棚調査でもできないというのは、日本にはそういう技術がないと。

【徳山委員】
 ないと言われると困るのですが、僕はあると思いますけれども、ファシリティがない。

【田中主査】
 きのうの朝日新聞なんかは、尖閣諸島の資源探査で、三次元的探査が不可欠とか何とかという、中国との問題もいろいろあって、そういう絡みの中でそれが書いてあったように思います。
 私は三次元的探査というのは、一本は試掘をぶち込むことをいうのかなと思っていたら、そうではないのですね。少し横に広げて高感度の……。

【徳山委員】
 水中のマイクロホンを何本も引いて、平面でそのはね返ってきた音をキャッチすることによって、三次元的に海底下の地質構造を明らかにするということです。

【田中主査】
 今までの音波探査では、大体その下の垂直構造がわかると。今度は横に広げると、もうちょっと広い幅でもって出せるということですね。

【徳山委員】
 なぜ三次元探査が必要か。それは平委員がよく知っているのですが、深くまで掘っていくと、穴がちょっと曲がります。そうすると、二次元のイメージでここだと思ったところがちょっと曲がったために、全然関係ないところに行ってしまう可能性が出てきます。特に、構造が複雑な場合は三次元的な構造の把握があって、初めて目標にたどり着くことになると思います。

【森田委員】
 日本ではソフトや何かは全部ちゃんと開発しているのですけれども、掘削船とか、探査船とか、そういうものは世界中、共有みたいなものでいつでも借りられるので、そこまで業務にしている会社はほとんどありません。でも、ソフトは全部いろいろリファインして、石油業界は石油業界なりの解析ソフトをちゃんとつくっていて、データだけ持ってくれば全部解析できるようにしています。

【平(朝)委員】
 ちょっと全般的なことを徳山委員にお聞きしたいというか、この場でディスカッションなりしたいと思うのですが。前々回から日本の統合国際深海掘削計画において、研究費プラス研究推進体制を強化していかなければならないというのは全員一致した意見であったろうというふうに思います。
 その中で、J-DESC等々で、今、6月から始まったノンライザー船に対しての研究者の派遣等はそれなりにスムーズに行き始めた、科学諮問組織の委員の人選等もJ-DESCを中心にうまく行き始めているというふうに理解しています。
 問題は、それをサポートする、1つはベーシックないろんな研究費、あるいは旅費という部分と、それから今、徳山委員が言ったのはその上に乗るような、少し先端、これを先端というかどうかは別として、プラスアルファの部分のところでその話があったわけですけれども、まずそのベーシックなところの旅費とか、それから事前研究費とか、そこら辺の現状を、今3億円何がし、これはすべてIODP、100%ではないという発言がありましたけれども、これも含めて現状というのはどのように見たら……、全然足りていない。私に聞かれればすぐある発言はできますけれども、今、徳山委員からJ-DESCのほうで全体、この現状をどのように見ているかということお聞きしたいのですけれども。

【徳山委員】
 前回の議事録にも載っておりますけれども、乗船者を派遣する等の運営費、IODP計画の血液みたいなものですけれども、そういうような予算獲得は、この科研費の中で一部分は捻出することは、私は不可能ではないとは思いますが、そもそもこの科研費の要求というのは、IODPで取得されたデータをどうやって分析・解析して、それで論文を書くというような目的で申請したものでございます。
 先ほど、平委員から発言があったように、乗船費等は全く今年度に関しては、悪い言葉で言えば拡大解釈をして捻出しているというのが現状でございます。来年度に関しては、今のところ全く当てがありません。それはもう何回か、この場でも前回、前々回で発言したとおりでありまして、そこは今日、お手元にある資料にはそういう意味では特化して、その派遣、乗船費というようなものの内容をお示しするデータは、もう既にお渡ししてあるということで、含まれておりません。非常に困っております。

【田中主査】
 特定領域研究が何本かありますけれども、これは深海掘削事業の建前からいって、国の事業と直接、ストレートに直結した科学研究費補助金というのはないと思うのですよね。ないのだけれども、実際はそういうポテンシャルがあって、ニーズがありますよね。他の分野では、そのようなものがコアになった特定領域研究というのはいっぱいあるわけですよ。でも、ここに幾つかある特定領域研究というのはそういうものではないのでしょうね。

【徳山委員】
 例えば、1ページ目の16番目、私の名前の特定領域研究が2つあって、玉木先生の1つも特定領域研究です。実はこれらはIODPではなくてODPのための特定領域研究です。分析・解析に時間がかかる関係上、ODPも終わったらすぐ成果が出るということではございませんので、終わっても2年間は延長して認めていただいているということです。そういうことで、ここにリストアップされていますが、これはそもそもODPのための特定領域研究を、ODPとIODPはシームレスにつながっていくということで、研究上の継続性も考えて掲載しているわけです。IODPで特定領域研究というものは、まだ残念なことながら、認められているものはございません。それは獲得するように努力する必要があるのです。
 しかし、このODPで特定領域をお認めいただいているのは非常にありがたいことなのですけれども、多くのものが乗船費で使われている。それはODPを動かすための血みたいなものですから、どうしても必要となるわけですけれども、それで研究成果が上がるかというと、ベースにはなりますけれども、その次の研究費という意味では残念なことながら、これはそれほどありません。
 ということで、特定領域の面接のときに、一体、特定領域としてまとまった成果は何ですかというふうに面接を受けたときに、非常に説明に苦慮するという事実がございます。それは明らかに研究そのものにお金を使っているものではないという、研究のベースになるものに使わざるを得ないということで、それで精いっぱいですから、まとまった研究成果という意味では難しいのが実情だと私は思います。

【平(朝)委員】
 以前、海洋研究所でODPをやったのは、これは平啓介分科会長もよくご存じだと思いますけれども、あのときには3億円の分担金を払って、ODPに参加しておりました。
 当初は、海洋研究所に3億円の分担金に対して、乗船旅費も含めて1億円の事業費がついていました。今、そういう研究にかかわる1億円の事業費がだんだん競争的資金に変わっていって、この特定領域研究を獲得した経緯があります。
 その後、残念ながら研究費というレベルでの運営事業費的なものは今も存在していない。どのようにして運営事業費を出したらいいのかというのは旧年来の大問題で、2年間ぐらいやっているけれどもまだやっている。ますますこれから乗船者が増えてくるので、何か方策がないのかなと思います。

【佐藤委員】
 ちょっとよろしいですか。科学研究費、ここに競争的資金という記述がありますよね。この3億幾らというのは科学研究費の中の割り当て分ということですか。最初、科学研究費が55億円ぐらいあると仰いましたが、その中の、この海洋との関係というのはそれとは別枠ということなのでしょうか。

【徳山委員】
 科学研究費は研究の目的というか、分野によっていろいろ枠がございます。地球科学という枠とか、環境科学という枠が、一応、IODPの研究目的になじむということで、その地球科学とか、環境科学、その総枠が55億円ということで、その中で、かなり拡大解釈していますけれどもIODP絡みのものが約4億円ということです。

【佐藤委員】
 申請は大体、全部認められるのですか。

【徳山委員】
 大体、科研費の採択率というのは40%です。

【平(啓)分科会長】
 新規だと2割ぐらいですね。

【徳山委員】
 ということで、申請はこの件数の4倍とか、3.5倍ぐらいの件数があって、認めていただいたのが71件ということです。

【平(啓)分科会長】
 この統計は研究者から申し出があって、取られたのですか。

【巽】
 J-DESC執行部の巽でございますが、この資料はJ-DESCの各会員機関に今年度の採択状況をお聞きして、IODP関係のものと思われるものをリストアップしていただきました。

【平(啓)分科会長】
 もう学審を離れたのであれですけれども、学審でやっていることは公平にやるということで、特定のものだけの採択率を上げるとかというようなことは非常に難しい制度で運用しているわけです。今、平朝彦委員がおっしゃったのは、昔は国際共同研究経費というので、別枠の特別会計の費用があったわけです。それが全部なくなってみんな競争的資金のほうに行って、そうすると競争的資金を運用するほうとしては、特定のものだけを優遇するわけにはいかないから、こういうふうになってしまうわけですね。採択率と、金額もどれだけの申請であるかということをみんな数字の上で統計をとった上で、平等になるように採択率を決めて審査するというのが、もちろんプロポーザルがいいかどうかという審査が基本ですけれども、大枠はそういう方針ですね。

【田中主査】
 やっぱり中身で審査されますけれどもね。結果的に平等的になるというよりは、むしろ申請件数に対して結果的に採択率がかなり平等的になっているという形です。ものすごくたくさんの応募があるが採択はほとんどないという分野はあまりない。たくさんの応募があると、採択率も多くなっていくということだと思うのですけれども。審査に基づいて決まることだから、ここでどうこうしろという問題ではない。ちゃんとシステムができていますから。そういう問題ではないのだけれども、すごいお金をかけて、「ちきゅう」なんかつくってやっていく事業が、例えば研究の、大事なところのお金がなくて成果が上がらないというのでは問題で、そういう問題は、一人一人の先生方というのではなくて、あるまとまった組織に、競争的資金ではない事業費の一部が流れて、それは管理されて一番有効に研究にも使えると。そういうシステムではないかと思うのですけれども。やっぱり、文部科学省でもそういうことを考えていただいて、結果的にそうしないと。成果が一番大事ですよね。金をかけたかいがあったということになってこなければならないから、ちょっと検討してみる余地はあるかなという感じはします。もちろん、競争的資金もうんと頑張ってもらうのですよ。

【石田委員】
 科研費の中には乗船費は含められないのですか。乗船費と、それに基づく研究費と両方合わせて科研費を取るのではないですか。

【徳山委員】
 IODPの掘削そのものを使った研究が主体であれば、そういう申請の仕方も可能だと思いますけれども、それを使っているのは、例えばさっき言った特定領域とか、あとは関連研究ということで、あまりIODPに乗船しますというような旅費をあらかじめリストとして提出して、このように使用します、計画を遂行しますというような書き方は、ほとんど残念ながらないのです。

【石田委員】
 それはどうしてですか。IODPに乗船したかったら、そういうふうに書かないものなのですか。

【徳山委員】
 中には、書いている方もおります。

【巽】
 実は問題はタイムラグの問題なのですね。乗船が決まってから実際に乗船するまで半年とか、それぐらいになりますので、乗船が認められて、それから科研費を申請しようとしても、タイムラグがあってできない。それから、乗りたいと言って出して、乗船できないこともありますので、そうすると今度はその研究費自身が浮いてしまうことになります。このようなタイムラグがあるので、私は、乗船研究費というのは個人のこういう競争的資金にはなじまないと思います。日本全体として大体の計画はわかっているわけですから、これぐらいの乗船研究費は必要であるという枠があって、その中で公募なりして乗船研究者を決めていく形をとらないといけないと思います。

【石田委員】
 わかりました。

【徳山委員】
 乗船した後は競争的資金で、乗船が認められた段階ではやるべきだと思います。

【末廣委員】
 もう1つの考え方は、結局、今まで海洋研でやってきた船にしろ、JAMSTECがやってきた調査船にしろ、船に乗ることということと、科研費に申請して研究を進めるということが並行しているわけですね。
 したがって、この掘削船に限らず、乗る審査と、研究費を取る審査が独立に別々なものですから、研究者の立場からすれば一体どういうふうにやったらいいのだろうという面がありまして、1つは、巽さんが言われたようなタイムラグの問題として挙げられますけれども、この辺をうまくリンクさせる機構がつくれれば、解決の方法もあるのかなと。石田委員が言われたように、乗船することと科研費を取ることが、オートマチックとは言いませんけれども、もう少し有機的につながればという、そういうやり方があるのではないかと思います。

【徳山委員】
 私もそう思っています。しかしというか、IODPで乗る人数というのは日本が拠出している金額で決まっておりますので、どのくらいの人が乗るか、大体わかってくるわけです。やはり、特定の枠をIODPで、これだけものがあるからということになれば、研究者のモチベーションも違うと思いますので、ぜひその辺をIODPの掘削枠というのをつくっていただきたいというのを以前からお願いしているわけです。

【森田委員】
 石油の場合、どうやっているかというと、経産省からJOGMECのほうに資金が行って、そのJOGMECのほうが、例えば大学公募とか、非常に小口ですがいろいろするのですよ。あのシステムは非常にいいと思うのですけれども、大学が全部公募に応じますと、2件に1件ぐらい通るような確率になってやってくれるのですよ。
 そうすると、私立として非常に都合がいいのは、ここに登場しているのは、私立はほとんどありませんよね。ゼロに近い。例えば早稲田大学ではこれに関する研究をしている人が10人くらいいるのだけれども、ここに出てこない。なぜかというと、国立大学と違って講座制ではないので、1人で全部研究をやらなければいけない。そうすると、例えば、200万、300万といった小口でいいのです。また、組織的なことが組めないために、競争をしてもなかなか通らないのです。
 そうすると、我々としては、例えば文部科学省がJAMSTECみたいな機構に小口の研究資金をプールしてもらって、そこから公募研究のような形で何かやってくださると、要するに石油がやっているような形にしてくださると非常に我々としては都合がいい。しかも、JAMSTECのほうは我々の研究活動をみんなよく知っていますから、そうすると、あそこにお金をやれば大丈夫だなとか、このぐらいは必要だなとか、全部わかっているはずなのです。私が知らないだけで、もしかしてあるのかもしれないのですけれども、そういうシステムをお願いしたいのです。

【田中企画官】
 本件につきましては、前回、前々回の委員会でも非常に難しい問題として、ご議論をいただいておりますけれども。一番大きなところは、文部科学省というか、研究に対する支援の我が国の仕組みが、以前は特定目的の研究に対してこういう特別枠をつくろうというような方向だったのが、とにかく競争的資金を増やす、それは完全に競争にします。その枠の中はほんとうに基礎的研究ですから、それで賄います。そのほかには、社会的に見て具体的に、しかもわりかし短期間のうちに明確なアウトプットが期待できるものについては、例えば科学技術振興調整費といったような枠をつくります。それについては、明確にこういう成果というものをアピールすることが要件ですという仕組みになっています。
 IODPに関しましては、ほんとうに基礎的な研究ということで、それでは何を成果として社会に還元するのだというところが大変説明しづらいものになっていて、私どもも昨年度、今年度もそういった機会があるごとにいろいろ挑戦しているところですが、なかなかそういう事業を設定するということが、やはり今言ったような事情でなかなか苦慮しております。要するに、IODPでやられるような研究というのは、基本的には科研費の枠として用意しております。その部分は、予算を増やしておりますので、まさにいい研究の提案を出してください、というようなふうに言われているというのはご承知のところでございます。
 例えば、JAMSTECのようなそういった事業をやるところに何かそういう枠をつくったらどうかというご提案を、私ども、そういうところもいろいろ考えてはおるのですが、独立行政法人の中でなかなかそこも非常に今厳しい状況になっているというところです。私ども、その辺の問題意識というのは大変あるのですけれども、他方、現実的には非常に厳しい状況だということも事実だというふうに言わざるを得ないというところでございます。

【田中主査】
 それは事実だと思います。非常に厳しいということはよくわかりますし、文部科学省としてここらで軽々な発言はできない。今はそういう状況にあると思いますけれども、しかしこれは非常に重要な問題で、特にこの委員会としては非常に重要な問題です。やっぱり、世界をあっと言わせる成果が日本から出てこないと、ということがありますから、この研究推進体制をどうするかというのはものすごく重要な問題で、文部科学省でも大いに研究していただいて、我々も要求をどんどん出して、どこまで実現できるかということは非常に難しいですけれども、とにかく今の状況を打開していく必要があるということで、これは引き続き次回もまたこの問題を議論させていただきたいと思います。

【石田委員】
 1点よろしいですか。もしかしたら、ほかの研究機関とご相談するといいのかもしれないと思いまして。実は、今度、スプリングエイト(SPring-8)に課金しようという話がありまして、そうするとここと同じ問題が出るわけですね。プロポーザルは科研費に出すけれども、スプリングエイトをいつ使っていいというのは、別の組織で決まってしまうわけです。スプリングエイトのプロポーザルが通って、それから科研費を申請すると。科研費の中には、それを別枠としてということを考えているらしいのですが、それをどんなシステムにするかというので、今度、日本学術会議か何かのほうから科研費でそういうことを考えてほしいというのを提言か何か出すということを考えているようです。今お聞きしていて、それとこれとは同じ問題だから、もしかしたら共同で相談して、同じような形で学術会議か何かに出して、そういうものを動かすという手もあるのかなと思ったのですけれども。

【田中主査】
 科研費をひもつきでつけてくれと、これはまたいっぱい競争相手があって、そういうことをやるとどうしようもなくなってくるのでね。なかなかそういうことは難しいかもしれません。

【石田委員】
 科研費にスプリングエイトの使用を、これからただではなくて、お金を取るというのがここの乗船費と同じような意味ですよね、ということでちょっと。

【平(啓)分科会長】
 科学研究費が当たらない人は使えないということですか。

【石田委員】
 ほかにお金があれば使えるのかもしれないのですけれども。

【田中主査】
 科学研究費はこの業界、あるいは個々の先生方に頑張ってもらうという話になってくるのですよね。

【田中企画官】
 今、おっしゃっているのは、スプリングエイトはこれまで無償で使えたものが、必ず利用料金を払わなければ使えなくなるというふうに仕組みが変わるということですか。

【石田委員】
 そうです。そうすると、科研費は通ったけれども、お金がないではないかというときには、科研費を書くときにもうスプリングエイトの使用料というのは研究費と別に外枠としてくれるというふうな、そういうシステムをつくれないかというのを、学術会議のほうから出すという話を理研では考えていましたので、それがほとんどここと同じではないかと。

【平(朝)委員】
 要するに、大学の一般公費を科研費に上乗せしてくれるというのと同じ発想ですね。
 その考えになじむかどうかはわかりませんけれども、ちょっと徳山委員のこの資料にも入っていなかったのですけれども。この間、科学諮問組織の科学計画委員会が行われた後にある科学雑誌に記事が出て、日本の独特のやり方として、インフラストラクチャー作れど魂入れずみたいな書かれ方をして、いろいろ国際的にはものすごく波紋を呼んでいました。
 私は、基本的に、国際でもここの議論と同じ目で見ているということがあろうかと思うのです。逆に、それだけ我々はきちっとやらないと前と同じ轍を永遠に踏むのかという話になるので、抜本的に今……、この委員会で急に結論が出るわけではないのでしょうけれども、さまざまな知恵を出していかないといけないなというふうに考えますので、また各方面から1つの手ではないでしょうけれども、知恵を出し合ってやっていかなければならないというふうに思っています。国際的に見られているということも確かだということです。

【安田委員】
 陸上の施設も多分同じような問題に直面するのだと思うのですが。一方で、地球科学環境に55億ぐらいあって、海洋の分野がこれしか取れないということは、やはり旧来のやり方でいくと、どうしても限界があるのだと思うのです。細目をきちんと準備するとか、これは岡田委員達がおやりになっていると思うのですが、そういう準備作業がないまま今の地球科学環境の枠の中で海洋が予算を分捕るというのは難しいと思います。例えば今まで陸上の調査と違って、海の調査はお金がかかるということはわかっていても、なかなかどうぞというふうにはならないと思うのです。ですから、それをもっと海洋に目を向ける、地質学会の中で平さんが頑張って目を向けるとか、そういうことをやっていらっしゃると思うのですが、きちんと枠組みをつくるということがまず大事ではないかと私は思います。

【長沼委員】
 国際宇宙ステーション(ISS)、あれの場合は宇宙フォーラム、ここでいうと多分J-DESC的な存在なのだろうけれども、宇宙フォーラムがファンディング機能の一部を持っていますよね。もちろん、JAXA(ジャクサ)も持っているのだけれども、宇宙フォーラムも持っている。宇宙ステーションができるずっと前から大学に、先ほど森田委員がおっしゃられたような額のお金をずっと落としているのですね。ああいったものが随分機能してきていることはたしかだと思うのです。だから、海洋地球課のほうでは軽々におっしゃれないということですけれども、そういった仕組みは一考に値するのではないかと思いました。

【田中主査】
 この問題、継続審議で、いろいろ知恵を出し合って、とにかく十分な研究ができる体制を追求するということでよろしいですか。また文部科学省のほうでも大いに研究していただくということで先へ進ませていただきたいと思います。
 議題の3でございます。IODPに関する広報活動について、ということで前回の委員会以降、どのような取り組みがなされているのか。まず、最初に文部科学省の取り組みについてご説明をお願いします。

【田中企画官】
 資料4-4に基づきましてご説明させていただきます。
 文部科学省プレスリリース資料という資料でございますが、これはIODPに関係した活動についてマスコミに取り上げてもらおうということで、文部科学省が発表した資料をつけさせていただいております。
 文部科学省のほうでは、計4件のプレスリリースを行いまして、1件は欧州がIODPに参加した件。2件目は中国がIODPに参加した件です。3件目、4件目は研究航海の開始ごとに、どういう研究航海で日本からどういう人が参加するのだということについて、紹介させていただいております。私のほうからは以上です。

【田中主査】
 それでは、ご質問を受ける前に、引き続いて海洋研究開発機構の取り組みを中心に平委員のほうからご報告をお願いいたします。

【平(朝)委員】
 参考資料5でございます。日本地球掘削科学コンソーシアム(J-DESC)と海洋研究開発機構地球深部探査センター(JAMSTEC/CDEX)の共同で展開しております広報活動の現状についてご報告申し上げます。
 前回、グランドデザインといいますか、広報普及の案についてご審議いただきました。その後、どういう活動が行われているかということについてご報告を申し上げます。
 第1ページに、目次が書いてありまして、第2ページに1.IODP&“ちきゅう”広報、普及展開計画の要旨。スローガン、お題目が並んでおりますが、これはこういうふうにしたいという目的で、前回ご報告いたしました。
 3ページ目ですけれども、それではそれを実施するにはどうしたらいいのだということですが、一方向だけではなくて、双方向、広報する側、あるいは受け取る側、さまざまな双方向のメディアのやりとりをやっていくには、やっぱりインターネットでしょうということで、我々としてインターネットを戦術の核とするということを決めております。
 しかし、インターネットというのはなかなか使われ出すようになるまで、知られるようになるまで、それなりに時間がかかる。要するに、自分のインターネットの中のアドレス帳に登録されるまでには、それなりに時間がかかるわけで、それに対して興味を喚起する上での起爆剤という、ちょっと過激な名前でありますけれども、要するにイベントを催していきましょうということにしております。
 そのイベントには何種類かあるわけですけれども、非常に一般的な広い国民のためのイベント、それから比較的関心の高いであろう学生や教育関係者、研究者のためのそのようなイベント、それからマスメディアを通じて広くやるような、そういうことも考えましょうということで戦術を立てました。
 その次の図に、そのコンセプト、前回認めていただいたコンセプトがかいてあります。下側に、一般の方、国民の方々がいて、その中にはいろんな種類の人がいます。一番トップにプロジェクトの推進主体があって、インターネットのサイトを窓口にし、双方向のインタラクションは起爆剤を使って窓口に呼び込む。あるいは、窓口との連携を強めていく。そのほかに、ITの学会や業界の技術導入や、そういうものもやっていきましょうと。右側には、国際のIODPがあって、この国際のIODPは共通のコンテンツをつくったり、あるいは我々の情報を国際に配信したりというような、そういう役目をします。
 現状ですが、5ページで、この中で最近我々のウェブサイトを見てくれた人は多分あんまりいないのではないかと思いますが、改良しつつあります。前までは複数のページが別々にあって、非常に見にくかったり、業務的な内容と、一般的な、非常に国民の方々みんなに見ていただくような内容がごっちゃになっていたり、いきなりウェブサイトを広げると、職員募集、そういうものを求めている人は喜んで飛びつくでしょうけれども、一般の子供たち、職員募集と言われても、ちょっとそこのところで逃げてしまうということもあって、どのような重層的な構造にしたらいいか。どのようにすれば見やすくなるのかというようなことで、階層的なレイアウト等々、今、再構築の作業をやっているところでございます。その作業が進行中であります。
 6ページ目ですけれども、起爆剤の活用計画案実施状況。これは各学会、各イベントを通じてやっているということで、学会でのブース、それからIODP大学&科学館キャンペーン、これは大学とその周辺の地域の博物館、そういうものを1つのセットとして大学では学生向け、博物館においては一般や子供向けのイベントをやることとしております。今まで九州大学と北九州市立自然史・歴史博物館、それから、宇都宮大学と栃木県立博物館で実施しております。
 また、8月10日より、国立科学博物館において、「IODP科学館キャンペーン」を行う予定で、きょうあたりから打ち合わせに入っていて、8月14日には丸1日、夏休みの子供を相手にお勉強会をすることとしております。
 次の中央管理組織IODP-MIを中心とする国際的な活動の現状ですけれども、広報においては、我々日本では日本語を通じてやるわけでありまして、ヨーロッパもフランスはフランス語を主体としてやるわけですので、国際部分と国内部分のすみ分け、あるいは共通のコンテンツをどのようにつくっていくかということは、IODP-MIとお話を続けております。
 そういうわけで、国内部分は我々が担当し、それから特に「ちきゅう」という掘削船に特化した部分については主に日本が担当していく。国際共通の部分、先ほど言ったような、北極海の掘削というような部分については国際的なキャンペーンを張っていただいて、そのコンテンツをぜひ我々がダウンロードして使う。そういうような仕組みになるだろうと。今のすみ分けの部分、あるいは共通でやる作業部分を国際と話し合っているところであります。
 最後に今後の方針です。基本的に、あまり大きな方針の転換をするつもりはありません。個々のイベント、起爆剤、それからインターネット、そういうものを充実してやっていきましょう。重厚な展開をやっていきましょうということであります。そのまま一、二年やって、その後にもう1回、反省のようなものが出てくるのだろうと思いますが。来年の4月に「ちきゅう」が引き渡しを受け、5月の後半から6月に引き渡し後の一般公開を予定しています。これは、メディアの注目を受ける上でも、あるいは国民の皆様に「ちきゅう」の姿を広く見せる上でも、一大イベントであるというふうに考えますので、それにまずある程度、フォーカシングしながら、さまざまなキャンペーンを張っていって、それを1つのハイライトとしたい。
 それから、その後は掘削コアを初めてとるというようなことが行われる再来年にかけてのこと、それも1つのイベントだろうと。それから、もう1つは2007年度の国際研究への導入ですね。それを3大マイルストーンとしながら、「ちきゅう」を中心としたイベントを展開し、国際に投入するころには国民だれもが知っている「ちきゅう」ということになっておるのではないか、あるいは、そういうふうにしたいというふうに思っております。以上です。

【田中主査】
 ありがとうございました。そうしましたら、ただいまの2つのご説明に対してご質問、ご意見、ありましたら、どうぞよろしくお願いします。

【末廣委員】
 前回から継続されている問題として、IODPがどうして国益なのか、兼原委員がおっしゃられたことですけれども、それがあると思うのですね。これをもうちょっとはっきりと、かくかくしかじかで国益なのだということを言えるように、文部科学省としても言えるように、例えばこのプレスリリースももうちょっと元気のある言葉で書けるようになると、ひとつよろしいのではないかと。
 基本的に、日本がこれをやると言わなければなかった計画をやっているわけでして、ですから日本の主導性は明らかであります。この日本の主導性が明らかなときに国益は何かということをうまく組み合わせて言えればいいのだろうなと思うので、その辺、もう少し工夫が要るのではないかと。

【平(朝)委員】
 末廣委員の言われるとおりだと思います。国益というか、もちろん広い意味の国益なのですけれども、このプロジェクトは、初めて我が国が主導的な立場に立って、単にこの指とまれというプロジェクトではなくて、国際的な枠組みの中で初めてインフラストラクチャーを投入し、我が国がリーダーシップをとっていこうというプロジェクトであると私は考えています。そして、それに国民の、あるいは日本の社会の将来を担うようないろんな課題も含まれている。
 確かに、さまざまな文章に、特に文部科学省のある意味ではひとつの常套の言葉、日米主導のもとに協調でというのは、それは確かなのですけれども、やっぱり我が国がこれをリードしていくという非常に強いスタンスが端々に見られるような。我々としてもそういうキャンペーン、あるいは広報をしていきたいというふうに思っています。末廣委員の言葉はしかと受けとめました。

【田中主査】
 それは1つの国益ですよね。だから、それは正しいと思うのですが、しかし今の世の中、いろんなプロジェクトの審査がありますけれども、みんな非常に自己主張が強いのです。ほとんど関係なくても、こういう効用がある、こういう効果があるとみんな言っています。
 そういう観点から見ると、これはよく言えば非常に良心的で、ほんとうの科学をやるということを言っているわけなのですけれども、日本の国でそういう完全に科学的な、知的好奇心で予算措置ができて成り立つのは天文台しかないとだいぶ前から言われているのですよね。天文台はだれも具体的な日常生活に還元されてくるような、そういうものは期待していない。日本も宇宙のことをやっているということで、国民は満足してくれる。
 こういう地球に関する研究は、実際に中身的にも我々の生活に絡んでいるわけですよね。南海トラフで地震にかかわる掘削をやると。これは地震防災に非常に役に立つ。それから、地球温暖化なんていうことを考えると、過去の環境変動がどうであったか、ものすごく大事になってきたわけでしょう。そういうことがわからないと、もう予測の精度が上がらないと。ただ、でかいコンピューターを使えばいいという問題でもなくなってきたわけですよ。そういうことを整理して、あまり言い過ぎるのもどうかと思うのだけれども、正当性のあることはやはり言ってね、そういう武装をしていかないと文部科学省だって困ってしまうのですよ。そういう国益がありますよ、これは必要ですよ、ということを主張する必要があるのではないかなという気がしますけれども。

【佐藤委員】
 国益というのは私もよくわからない。口では国益、国益と言いますけれども、役所にはいろいろあるのでしょうけれども、文部科学省は国益とは一番遠い存在ではないかなという感じもするのですよね。だから、役に立つということと、国益というのは直接リンクしないのではないかなと思います。例えば、田中主査が言われたように、地震の巣を探って、そういう役に立つとは言うけれども、直接日本の国益とはつながるかどうかというのは、私は非常に難しいと思います。ちょっとすぐにはリンクしないかなと。
 例えば、経済産業省がやっています資源開発とか石油とか、そういうものは日本の国益にすぐにつながりますが、やっぱり科学技術となると、直接、国益と結びつくかどうかというのは、ちょっとその辺がよくわからないところがあります。

【田中主査】
 経済産業省がやっているような直接資源探査とか、そういう狭い国益ではないですよ、今、国民が求めているのは。納得できればいいという、これをやることが将来、我々のこの社会をよくしていくために、やっぱり大事なのだということを求めている。

【佐藤委員】
 それは地球益ですよね。

【松田委員】
 いずれにしても、ある程度、訴求対象を想定して、戦略的にやると効果があると思うのですけれども、その場合に、ここに挙がっている大学だとか、高校だとか、幾つかありますが、そういう戦略性に基づいて出てきたところなのですか。

【巽】
 キャンペーン対象については、これはたまたまではなくて、例えば九州大学でしたらJ-DESCの会員の基幹校として頑張っていただいているところで、実際、掘削にも参加したいという研究者の方が何人もいらっしゃったのです。そういうところで、例えば九州大学の中で、そういう研究者の方々のある種のプレゼンスというものを確立するためには、やはりこういうキャンペーンをやって、地球科学の先生方だけではなくて、ほかの、例えば工学部とか、ほかの先生方にも聞いていただきたいということがあったので行いました。
 同じようなことは、宇都宮大学にも言えて、大学に関しては今、主にやっているのはそういうふうな戦略でして、これからJ-DESC、もしくはIODPに関して非常に熱心に参加していただきたいけれども、いろんな大学の中の事情でしにくいところがあるというところをまず重点的にサポートしていきたいと思っています。
 高校に関しては、これは知り合いの高校からということで始めています。高校の先生方というのは、最近非常に熱心に参加していただくようになりまして、こうして少しでもすそ野を広げていきたいというふうには思っています。

【田中主査】
 極地研がやっているドームふじの氷層深層掘削ね、これとも非常に絡むのですよね。私なんかは、氷層の時系列を見て、また海の時系列を見て、いつもそれを比べていろいろ物を考えているのです。ものすごく絡んでくる、地球史の解明ということになってくるとね。だから、もうちょっと進んだら、そういうのが一緒になって、ちょっと我々にもわかるようなシンポジウムを開くとか、成果の展示をやるとか、そういうこともやっていいですね。そうすると、またそれを契機にして理解ぐっと広がってくるというのがあります。

【徳山委員】
 広報は確かに、今までのつながりでキャンペーンをしているのですけれども、今、文部科学省がスーパーサイエンスハイスクールというのを始めておりまして、その絡みでぜひ講演、それとIODPの話をしてほしいというようなことで、これから相馬高校ですか、それともう既に終わったのは東海大学の高輪高校とか、そういうスーパーサイエンスハイスクールという枠組みでも広報活動をしているという状況です。

【平(啓)分科会長】
 さっき長沼委員がおっしゃったように、ISSだけではなくて、国際宇宙ステーションみたいな日本語があるのですけれども、このIODP科学館キャンペーンはニックネームがあるのですか。小学生、中学生であれば、そういうのが要るような気がいたしました。

【巽】
 ポスターには、もちろんキャンペーンということもありますが、「地球ってなに」という……。

【平(啓)分科会長】
 地球を売り物にするということですね。

【巽】
 そうです。地球は漢字の「地球」と、掘削船の「ちきゅう」、両方併記していて、「ジ・アースはなに」、それから掘削船の「ちきゅうはなに」ということを説明することをテーマにしています。

【平(啓)分科会長】
 それは非常にいいことだと思いますね。そうすると、「ちきゅう」というので出すと、これはもう我が国がというのが非常にはっきりするわけで、IODPの発足に関してはODPの継承があるから、日米協調主導型と言わざるを得ないのですけれども、「ちきゅう」ということになれば我が国のものなので、それは非常にいいと思います。
 それから、もう1つ、ちょっと気になることというか、あまり関係ないかもしれないのですけれども、資料4-3-1の一番最後の紙に、J-DESCのことが一番最後に書いてあるのですが。平成16年4月4日に「陸上掘削部会の設置が承認され」ということがあるのですけれども、これはJ-DESCとしては今の「ちきゅう」による掘削以外に、陸上というのも力を入れていくということになったのでしょうか。

【徳山委員】
 J-DESCという名前は、日本地球掘削科学コンソーシアムですので、地球掘削という枠組みで出発しております。それは、先ほど主査がおっしゃったような氷床掘削も含めまして、そういう掘削科学という枠で地球を研究しましょうという枠組みで出発して、IODPが先行していました。それに陸上掘削部会が加わったという構成になっています。将来的にはIODPの掘削プロポーザルと、陸上掘削のプロポーザルがジョイントするというような、そういう掘削提案を実現したいというふうには思っておりますけれども、残念ながらまだそこまで具体的な段階にはなっておりません。例えば、房総半島なんかは、さっきちょっと話が出ました地震の関係で、房総半島の沖を掘って、それで房総半島の先端で掘るというような、陸上掘削と深海掘削をジョイントした、そういうプロポーザルも実は非常に魅力的なものだというふうに考えております。

【宮崎委員】
 些細なことなのですが。インターネットを戦術の中核にするというのですが、ちょっと参考のために教えていただきたいのですが、現在、どれぐらいのヒット件数なのでしょうか。

【平(朝)委員】
 実際の正確な数は、まだ私どもも把握していないのですが、キャンペーン等々で来た方にどのぐらい見たことがあるのかという話を伺ってみると、キャンペーンに来てくれるような方々でも、多くて20%ぐらいかなというところなので、まだ認知度は非常に低いというふうに思っています。1つの問題は、JAMSTECのホームページの中に完全に埋没しているのですね。それが問題で、JAMSTECの中をずっと探っていかないとこのホームページにたどり着かないという問題があって、もうちょっと工夫が要るのかなと。表に出していく必要があるかなと考えております。

【宮崎委員】
 実は、それをぜひ検討していただければいいかなと。
 あともう1つは、検索のページがございますね。私どものところの一部は、あそこのところに一度取り上げられたらアクセス件数が1けた上がって、それが維持していったというようなことがありますので、何らかの工夫で表出しをぜひともやっていただければと思います。

【平(朝)委員】
 わかりました。

【末廣委員】
 また国益なのですけれども。今度は、なぜ日米でやるのかということもきっといろんなレベルから質問されるわけで、現実に私もそういう質問をされますが。どうして日本だけでやらないのだということを聞かれるわけです。先ほど、平啓介分科会長からODPの継承というご発言がありましたけれども、非常にエッセンスだけを言ってしまうとそういうことになるのかもしれませんけれども、これはやっぱりわかりやすく説明していくべき、なぜ日本だけでやらないのかということも、広報の一環として頭に入れておくべきことだと思います。

【徳山委員】
 私も1つ発言したいことがあります。結局、予算がつくというか、国民に理解をしてもらうためには、やっぱり国際協調というキーワードが、あと前の委員会でも話しましたけれども、科学的な夢があるかなと思いますが、その次に何があるかなと考えて、やっぱり私は地球の管理というまで言うとちょっと言い過ぎなので、深海の管理ということだと思います。1番目から言うと、国際協調。これは米国も含めて、日本が主体的になる国際的なプログラムを走らせて、その中に東アジア、東南アジアも含めて、参加していただいて、枠を広げていって、それがひいてはそういう国々との協力という関係を確固たるものにして、それがゆくゆくは国際的な我が国の利益、国益になるということだと思います。2番目ですけれども、日本は科学立国と言っているわけですから、サイエンスという夢が含まれるプログラムが提案できないような国になっては困るということです。それが国益だと思います。もう1つは、今、大陸棚の議論が盛んですが、やっぱり人類が深海を管理するということはどうしても必要になってくると私は思うので、そういうことを我が国が主導したIODPで、深海の管理を含めてこのプログラムをやっていくということは、まさに国益だと思います。こういうような、その3つを、私の今の理解では強調して、国益ということを説明してはというふうに考えます。

【長沼委員】
 ほかの場所で言うべきかもしれませんが、今、関連したので申し上げます。ちょっと意地の悪い考え方なのですけれども、IODPに対してよその国から見たときの、よその国の国益って何だろうと。例えば、アメリカにおける国益。地球生命科学というキーワードが前回、私が休みましたら出たそうですね。それは地球・生命科学であるとなったそうですね。
 例えば、生命科学というものをとると、アメリカというのは非常に明確な国家戦略を持っているのです。生物資源特許をとりまくる。私たちが飲むであろう薬が全部アメリカの特許に押さえられているというのが、彼らが思い描いている戦略なのです。それの生物資源のもとを、例えば海底下に求めるというのも1つの戦略である。これは非常に明確です。彼らは公の文書で言っていますから。
 日本ももちろんそういう戦略はあるかもしれないけれども、残念ながら日本は生物多様性条約というものに署名していますから、とった先々の国の許可がないと使えない。アメリカはそれに加盟していないので使い放題です。
 こういったことが向こう側から見た国益というものにあるということを、私たちは知っていていいのかなと。これがただちにこの広報活動にどう反映されるかよくわからないのですけれども、そういった裏面があるなということは申し上げておきたいと思いました。

【田中主査】
 日本では、国益という言葉は非常に慎重に使われます。単にエゴイスティックな狭い意味の国益というと誤解されるので、文部科学省などでは、大体、国益という言葉を使っていない。とはいっても国民の税金で1つの事業をやっていくという立場から、やはりもうちょっと広い意味の国益というものを意識して、また説明責任もあるわけで、タックスペイヤーが納得するような成果を出して、それを説明するということが重要ではないかと思うのですけれども。
 しかし、諸外国は中国の尖閣列島を見てもわかるように、ものすごく露骨に国益を追求しているわけですよね。そういう中で、あんまりきれいごとばっかり言っていることがほんとうに正しいことかどうかということはありますよね。やはり、少なくとも公費を使って何か仕事をしている人たちは、その言葉の定義はなかなか難しいところはあるのだけれども、とにかく国益は当然意識して仕事をするべきだと思います。しかし、その国益があまり誤解を招いて変な国益、変なものはほんとうの意味の国益にならないと思いますが、そういうことに気をつける必要があると思いますけれども。
 だから、先ほど平委員が言われた、あれは国益だと思うのです。日本がほんとうにイニシアティブを発揮して、いい仕事をしていくということは、日本の大きな国益だと。それをやはり説明して、理解を得る努力をしていかなければいけない。それは広報の1つの大事な仕事ですね。そうしないと、文部科学省に頑張ってくれ、頑張ってくれと言っても、そういうがちゃんと確立されていないと難しい状況になりますから。

【兼原委員】
 すみません、1つ、確認していいですか。徳山委員がおっしゃった深海管理という、深海ってどこの深海ですか。

【徳山委員】
 今、私の念頭にあるのは350マイルに延伸した際に、そこは所有権を主張できるのですけれども、その管理もまた義務として来るわけですね。それを日本だけではなくて、いろんな諸国が管理するということになりますから、そういうときに基礎的研究を、深海をボーリングで掘って、その基礎データが大きく資するということをある程度の1つの目的にしてもよろしいのではないでしょうかということです。
 深海に対しては、物事の決め事というのは泳いでいるものとか、鉱物資源がありますけれども、先ほど長沼委員がおっしゃったような深海に存在するバクテリアとか、そういうような決め事は実は全くないわけで、そういうところをこのIODPでは国際的な枠組みをつくるための、科学的なデータを提供するということで我々、貢献できるのではないかと、私自身はそう思っておりますけれども。

【兼原委員】
 深海というのは……。

【徳山委員】
 深海底。

【兼原委員】
 深海底というのは、どの国も所有権も、何ら権利を主張できないのですね、深海底と言ってしまえば。むしろ、人類の共同財産という形で、法的レジームができていますので、先生はそれを前提とされた上で、だからこそ地球にとって大事な深海底の研究及び管理を日本がやっていくのだという意味でおっしゃったのだろうと思うのですけれども、言葉を使い間違えると、国際的レジームであり、人類の共同財産だという深海底に、日本が自分勝手に乗り出していくのかと聞こえるのは、むしろ逆効果になってしまいます。ただ確認だけで、先生もそういうつもりでおっしゃっているのだと思います。

【徳山委員】
 すみません、大陸棚の延伸の地域というふうに思っていただければ。

【田中主査】
 いろいろ、まだまだこの議論は尽きないと思うのですが、大体予定の時間がまいりまして、今回はここまでということでよろしゅうございますか。次回の会合につきましては、改めてまた事務局のほうで日程の調整をしまして、ご連絡を申し上げるということでお願いしたいと思います。どうもいろいろ暑い中、ありがとうございました。

‐了‐

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