深海掘削委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成16年3月12日(金曜日) 13時~15時10分

2.場所

経済産業省 別館821号 会議室

3.議題

  1. IODPに関する研究推進体制について
  2. IODPに関する広報活動について
  3. その他

4.出席者

委員

 田中主査、石田、兼原、佐藤、平(朝)、長谷川、掘、松田、末廣、徳山、宮崎 各委員
 平(啓)海洋開発分科会長

文部科学省

 文部科学省、内閣府、国土交通省、他

5.議事録

【田中主査】
 それでは、時間がまいりましたので、ただいまより第3回科学技術・学術審議会海洋開発分科会の深海掘削委員会を開催いたします。
 本日は、ご多忙にもかかわらずご出席いただきまして、大変ありがとうございました。
 議事に入ります前に、事務局の文部科学省海洋地球課の須田課長よりごあいさつをお願いします。

【須田海洋地球課長】
 2月から海洋地球課長になりました須田です。どうぞよろしくお願いいたします。
 IODPにつきましては、ぜひ私どもとしても「ちきゅう」の完成、その運航、それに伴う研究推進について、私ども課を挙げて頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 以前、地震課長もしておりましたので、プレートテクトニクスなどの関係については、個人的にも興味を持っております。勉強させていただきながら頑張りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
 連絡事項といたしまして、委員の肩書の変更がございまして、佐藤委員におかれましては金属鉱業事業団から独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構と変わっておりますので、ご紹介させていただきます。
 また、本日の議題でございますが、前回の会議でも議論がございましたIODPの国内推進体制とIODPの普及施策ということで、ご議論いただきたいと思います。関係のところからも、資料をご用意いただいておりますので、それに基づいてご議論いただきたいと思います。よろしくお願いします。

【田中主査】
 ありがとうございました。
 それでは、議事に入りたいと思います。
 まず、事務局から資料の確認をお願いします。

【田中企画官】
 海洋地球課の田中でございます。私のほうから資料の確認をさせていただきます。
 深海掘削委員会の座席表の後に議事次第(案)がございます。
 資料3-1は委員会の名簿でございます。
 資料3-2-1は第2回、前回の議事録(案)でございます。
 資料3-2-2は前回第2回の議事概要(案)となっています。
 資料3-3では、第2回深海掘削委員会以降のIODPに関する活動についてという2枚紙がございます。
 資料3-4は、参考資料1に関する欠席委員からのご意見等ということでございます。
 資料3-5は、参考資料2に関する欠席委員からのご意見等でございます。
 参考資料1は日本地球掘削科学コンソーシアム(J-DESC)からの科学支援体制に関する提言案でございます。
 参考資料2、これは海洋科学技術センター深海地球ドリリング計画推進室からの広報活動への提言でございます。以下、広報活動関係で、これまでの掲載・出演実績、ロードマップ案という横長のものがございます。
 参考資料3は、IODPに関する研究推進体制について。これは前回の資料と同じものです。
 参考資料4、米国における深海掘削研究支援体制について。これも前回と同じものです。
 参考資料5、IODPに関する広報活動について。これも前回と同じものです。
 参考資料6、深海掘削委員会における審議事項。これも前回と同じものでございます。
 そのほか、新聞の切り抜きがございますが、海洋科学技術センターから広報の関係資料としていただいております。
 以上でございます。もし不足などございましたら、お申し付け下さい。

【田中主査】
 よろしゅうございますでしょうか。
 本日の議題に入ります前に、前回平成15年12月15日に行った第2回深海掘削委員会の議事録及び議事概要の確認を行いたいと思います。
 事務局のほうからお願いします。

【田中企画官】
 資料3-2-1が議事録(案)でございまして、資料3-2-2がその議事概要(案)となっておりますが、本委員会の議事録と議事概要は文部科学省のホームページにおいて公開されることとなっております。各委員におかれましては、事前にご確認をお願いしておりまして、本日までに田中主査のほうから若干修正をいただいております。それも反映させた議事録となっております。

【田中主査】
 ありがとうございました。議事録、議事概要につきまして、ご意見ございますでしょうか。
 今日はあまり時間がございませんので、これは既にメールで皆さんにお配りして、ご意見を伺っているんですが、特にご自身のご発言のところに目を通していただいて、ご意見などがありましたら1週間以内、3月19日までに事務局のほうにご連絡をお願いしたいと思います。その後で事務局のほうで皆様からいただいたご意見を取りまとめて、公開の手続を進めるようにお願いしたいと思います。
 引き続き事務局側より、前回以降のIODPの活動について簡単なご報告をお願いしたいと思います。

【田中企画官】
 資料3-3に基づきまして、ご報告させていただきます。前回12月以降の主な活動でございます。
 本年1月に今年のIODPの初年度の事業計画を承認いたしました。これにつきましては、前回の委員会でお諮りしたものでございます。
 また、現在、中央管理組織というIODP全体を運営する機能を担う者を決めているところでございまして、それにつきましてはIMIという米国の法人が、NSFのほうに業務の企画案を提出しておりまして、現在、文部科学省とNSFで審査しています。その審査にはNSFにおりますMEXTリエゾンが中心的な役割を果たしており、今月中の契約を予定しております。
 また、ヨーロッパのIODP参加につきまして、文部科学省とNSFとヨーロッパの代表の間で覚書に署名することとなりました。現在、既に文部科学大臣及びNSFの長官は署名を済ましておりまして、ヨーロッパも来週には署名を行います。前回もご紹介しましたが、ヨーロッパは12カ国でECORDというコンソーシアムをつくりまして参加します。署名は、来週3月16日にドイツのブレーメンで行われるECORDの会合の場で行われ、その場に文部科学省やNSFも参加することとなっており、文部科学省から私が出席することになっております。
 また、中国につきましても、現在、参加に向けて協議中でございます。
 そのほか、予定でございますが、科学諮問組織のところで、3月23日から26日までワシントンで科学計画委員会(SPC)が予定されております。また、7月には科学計画・方針監理委員会という科学諮問組織の最上位機関の第2回会合がフランスのパリで開催される予定で、この場で2005年度の年間事業計画案が承認される見込みでございます。
 次に、3月29、30日と、北大におきまして、IMIの総会及び理事会が行われる予定になっています。
 また、海洋科学技術センター、地球深部探査センターでもいろいろと活動しており、J-DESCのほうでも今後シンポジウムを予定するなど、それぞれの機関で活発な活動が行われる予定でございます。以上でございます。

【田中主査】
 ただいまのご報告に対しまして、ご質問等ございますでしょうか。よろしいですか。
 それでは、本日の議題1に移らせていただきたいと思います。
 研究推進体制についてということでございます。前回の委員会において、日本地球掘削科学コンソーシアムのIODP部会長を務めておられます徳山委員に、研究者コミュニティの意見を取りまとめていただくようにお願いしてありましたので、徳山委員よりご報告をいただきたいと思います。

【徳山委員】
 参考資料1に基づいて説明をいたします。
 この宿題を日本地球掘削科学コンソーシアム内に持ち帰りまして、議論いたしました。チームをつくって、この宿題に回答をしようということで、お手元にあるわが国におけるIODP科学支援体制に関する提言の原案ということで作成いたしたものが参考資料1でございます。
 目次が一番最初にありますけれども、「はじめに」、それから「深海研究の成果-特にその社会的効果について」、3番目として「IODP研究の実施体制と現状」、4番目に「「わが国におけるIODP科学支援に対する基本理念」、5番目に「提言」として3項目、それと「緊急性について」という最後の6番目ということで、報告いたします。
 我々は、タスクチームをつくりまして、本日は、その責任者である巽さんが参加しておりますので、巽さんのほうからご説明をさせていただきたいと思います。

【巽】
 海洋科学技術センターの巽でございます。よろしくお願いします。
 今、徳山部会長からお話がありましたが、この宿題を受けまして我々コンソーシアムの中で議論して、それからWebでこの提案書を公開して、その中でいろんな科学コミュニティからの意見を集約したものが、今日お手元にお配りした資料です。
 資料に基づきまして概略をご説明したいと思います。
 この報告は、前回、私たちが報告しました日米におけるIODPに関連する研究支援体制の比較に基づいて、こうあれば我が国のIODP関連研究が飛躍的に進展するだろうということを述べたものです。逆に言いますと、この支援体制がなければ、我が国は日米のイコールパートナーとして研究遂行をしていくことが非常に難しくなってくるということになります。
 それで、まず2番目の深海掘削研究の成果-特にその社会的効果についてですが、これは、これまでのDSDP、ODPの成果、これからIODPで期待される成果の中で、特に社会的効果が著しいと考えられるものを幾つか列挙してあります。
 その1つは、将来の有望なエネルギー資源の1つと考えられるガスハイドレートの問題、その安定性に関する問題などがIODPの中で解明されていくことが期待されます。それから、地下の中に地表以外のもう1つの大きな生命圏があるということを見出したのもODPの大きな成果ですが、ここからの有用酵素等を含めて社会的に大きなインパクトを持つような発見及びその応用について期待できると考えます。
 3番目、これは特に我が国にとっては非常に重大な問題ですが、海溝地域で頻発する大型の地震によって我々は大きな被害を受けますが、どうしてそういう地震が起こって、いかにしてそれを予知することが可能になるかということに対する基礎的なデータを得るためには、IODPによって直接地震域を掘削するということが必要条件になってくると思います。
 それから、地球環境変動に関しましても、過去のODP研究で非常に急激な気候変動等が地球システムの中で起こってきたこと、それから地球システムの変化に対して、例えば隕石の衝突であるとか、地球内部の大きな変動が役割を果たしてきたことが明らかになってきましたが、これからはこういうふうな現象も踏まえて、地球システム変動の基本原理がIODP掘削によって理解されることを期待して、その成果に基づいて将来の変動予測が比較的可能になるということを目指していくということが、IODPの1つの重要なテーマかと思います。
 そのようなこれまでの成果、これから期待される社会的にも大きなインパクト、もちろん基礎サイエンスとしての重要性はありますが、そういう成果が挙げられるのがIODPです。その研究の実施体制、特にどういう流れでIODPの研究が進んでいくかというのを少しまとめてみました。その流れの中で、どのような経費が必要であるかということもまとめてあります。それがお手元の資料の最後のほうにあります図1という資料です。
 国際共同研究であるIODPは、大きく分けて2つのコンポーネントからなります。1つは計画自体の運行、掘削船の運用を含むような運用部門、もう1つはサイエンスを実施していく、それからサイエンスの計画を立てていく科学の部門の2つに分かれています。
 運用部門に関しては、我が国はイコールパートナーとして、例えばCDEXで掘削船「ちきゅう」を運用し、そのコアの回収、保管などを行っていくことを決定していますし、管理部門としても中央管理組織の一部分が日本に設置されることになっています。
 それに対して科学計画に関してですが、これはScience Advisory Structureと呼ばれる科学諮問組織の活動が中心となってきますが、それに対応する国内の機関として、我々J-DESCが存在しているわけです。
 その右側の国内活動と書いてある中に、掘削の最初の研究の立案から、掘削を実際に行って、成果公開を行うまでの流れが書いてあります。もちろん非常に長期にわたる周到な準備とその後の研究が必要なわけですが、その中で幾つかの必要な経費が角をとった四角で幾つか書いてあります。このような経費があって初めてこういう活動が成り立つわけですが、その中で太字の斜体で書いてあるものに関しては、まだ我々が手にすることができていない旅費とか研究費を並べてあります。これを見ていただくとおわかりのように、ほとんどの部門に対してまだ整理されているとは言いがたい状況です。
 これが現在のIODP研究を進めていく上の流れと現状のまとめですが、こういうふうな現状を解決して、我が国が国際社会の中でイコールパートナーとして、リーダーシップをとっていくためにはどのようにしたらいいかということについてお話ししたいと思います。資料の4番目、わが国におけるIODP科学支援に対する基本理念を簡単に申し上げたいと思います。
 これは今まで幾度となく強調してきたことですが、我々はこのIODPの掘削研究において、運用のみならず科学の部門においてもイコールパートナーとしての責務を果たす必要がある。これは国際的な責務であると思います。そういうふうな責務を遂行するために、我々が考えたキーワード、基本理念を述べていきたいと思います。
 1から6にまとめてありますが、まず、1番目として、このような研究支援というのはコミュニティの意見が十分に反映されるようなものでないといけませんし、科学支援を受ける機会が均等である必要もあると思います。
 2番目としては、国際的な科学活動であるSAS活動において、我が国がリーダーシップを発揮できるような体制をとるべく、支援を行うことが必要だと思います。
 それから、もちろん、前回もご指摘いただきましたように、こういうふうなサイエンスの活動というのは基本的には競争力があるサイエンス、おもしろいサイエンスを出す必要があります。ですから、そのような掘削提案を我が国から継続的に出せるような活動を支援する、そういった体制である必要があると思います。
 乗船研究者としてIODPに参加した研究者には、研究を遂行する、そして成果を公表する義務が課せられます。ですから、そのような研究遂行・成果公表の義務を遂行できるような国内科学支援体制が必要かと思います。
 これから我が国が地球深部探査船「ちきゅう」を運用していって、アメリカの掘削船、ヨーロッパの掘削船とあわせて3船体制でIODPが運行されますが、そのような場合には年間100名以上の我が国の研究者が乗船する機会を得ます。ですから、このような現状を考えますと、これからの研究者の育成が非常に重要な問題になってきます。ですから、そのようなことが十分行えるような体制が必要かと思います。
 それにも関連しますが、広く国民に対してアウトリーチ活動を行う。そういうふうな支援体制も必要かと思います。
 このような基本理念に基づいて、我々が具体的に提言の案としてまとめたのが図2です。わが国におけるIODP科学支援体制という図にまとめてあります。この図に基づいてご説明いたします。
 今回の案では、大きく分けて2つの研究支援体制を考えています。1つは競争的経費を用いたもの、もう1つは経常的経費を用いたものです。
 まず、1番目の研究育成支援プログラム。これは競争的経費を想定していますが、これは基本的には我が国における新規プロポーザル、IODPに対する新規プロポーザルを開拓するために、そのシーズ的な研究を支援するための競争的経費というふうに考えています。これはもちろん、研究というものは基本的には研究者のアイデアによってなされていくものであり、そのようなシーズ的な研究は競争的経費にアプライされることが望ましいというふうに我々も考えます。
 その内容は2つに分かれていまして、これまでの通常の掘削に相当するような比較的小規模のシーズ研究に関しては、おそらく科学研究費の分科細目を設定することが必要であると考えます。これは米国でも行われていることです。
 IODPの1つの特徴は、前回申し上げましたが、Complex Drilling Programと呼ばれる幾つかの掘削船を使って、幾つかの航海にまたがるような包括的な研究が1つの重要なターゲットになります。そのような包括的な研究を推進するためには、シーズ研究といえども少し大型の例えば特定領域研究であるとか、振興調整費・学術創成研究費などを組織的、戦略的に獲得していく必要があると考えます。
 一方、我が国が世界をリードする国際的な責任・義務を遂行するためには、このような競争的経費だけでは不可能で、以下に述べますような経常的経費が必要と考えます。それがAからGまで7項目挙げてあります。
 1番目は、国際的な科学計画活動(SAS活動)において、我が国が主導的な役割を果たすためのもの。
 2番目は、掘削提案がシーズ研究として出てきた後、それを実際に掘削提案書としてまとめて、採択されるまでの支援を行う。具体的には一番大きなものは地震波探査を含む事前調査で、これは非常に大がかりな調査が必要です。精密な調査が必要です。そのような事前調査を含む掘削提案育成支援プログラムが必要と考えます。
 3番目としては、実際に乗船研究義務を遂行するために研究支援プログラム、特に個々の大学では対応しがたいような比較的な大型な装置を使った高精度・高分解能の分析を行うような共同研究拠点の整備運営が必要かと考えます。
 4番目としては、これは世界をリードする、特に孔内計測技術、実際の掘削を使った孔内計測というのはIODPの1つの重要なターゲットですが、個々の孔内計測に対応するような技術開発を行っていく必要があります。それをサポートするプログラムです。
 EとFは教育普及広報に関するものですが、先ほど申し上げましたように、年間100名以上の乗船研究者を育成していくためには、具体的にはそこに挙げてありますが、そのような活動が必要かと思います。
 それから、このような研究成果を国民一般の方々に広く知っていただいて、それから1人でも多くのIODP研究に対するサポーターをその中につくっていくためにも普及広報活動が必要で、それに対する支援プログラムも必要かと考えます。
 それから、このような国内における科学活動の1つの受け皿として、我々J-DESCがあるわけですが、そのJ-DESCの活動を支援するようなプログラムも必要と考えます。
 以上、述べましたような研究推進体制を、我々J-DESCとしては考えてみました。
 このような研究推進体制を実行するためには、特に経常的な経費の部分に関しては、それを受け取って、実際に運用していくような管理機構が必要というふうに我々は考えます。アメリカではJOI(Joint Oceanographic Institution)がその機能を担っています。日本でもこのような機構がつくられることが望ましいというふうに考えます。
 以上、申し上げてきましたこの支援体制ですが、これはもう1度強調いたしますが、我が国においてIODPの研究部門においても世界をリードしていくためには、このような支援組織が非常に緊急に必要であるというふうに我々は考えています。
 以上です。ありがとうございました。

【田中主査】
 ありがとうございました。ただいま日本の研究者サイドの意見を集約してご報告いただきました。本日、ご出席いただいた委員の皆様からご意見、ご質問等を伺います前に、まず事務局より本日ご欠席の委員の方からご意見がございましたら、紹介していただきます。

【田中企画官】
 資料3-4でございますが、ただいま巽先生からご紹介があった資料に対して、長沼委員のほうからご意見がございました。それを資料3-4に転載させていただいております。
 長沼委員のご意見は、参考資料1の3ページにかかわる部分ですけれども、「地下圏微生物:有用酵素の発見と利用」のように、遺伝子技術での必要な酵素というのは、その多くのものが高温下で生息する好熱菌から見つけ出されたものであるという興味深い事実があるという文章に対して、実際に採取された好熱菌のほとんどは、浅いところや陸上の温泉から採取したものなので、地下の好熱菌を見つけるのが重要であるという論理には必ずしもならない。提言によって、「地下生物圏の研究」イコール「好熱菌の研究」というように視野が狭められ、それが研究費や研究体制の幅を狭めることにつながることを危惧するということです。研究の焦点を絞ることは大切で、その焦点が地下の好熱菌でも結構ですが、その絞り方は気を付ける必要があるとのご意見をいただいております。

【田中主査】
 ありがとうございます。
 引き続き、ご出席いただいた委員の皆様よりご意見がございましたら、ご発言願いたいと思います。

【兼原委員】
 今の参考資料1の2ページの2.深海掘削研究の成果-特にその社会的効果についてというところで、4ページの最後の項目に地球環境変動というのがあるんですけれども、それぞれの学問分野で環境という言葉というのはそれぞれ意味があるので、私の理解だけが一義的なものではないんですけれども、ただ環境という言葉はかなり一時期は流行ったんですけれども、今はかなり熱が冷めてきているし、これからも冷めていく傾向はあると思います。
 多分、ここに書かれているようなことは、非常にアピールしやすい、わかりやすい形であり、日本全国の皆さんに訴えかけていくときにも使われるんだろうと思うんですけれども、地球環境というのは一番わかりやすいようでありながら、さりとて中身が何も特定されなくて、逆に言えば何もわからなくなってしまう可能性が高くて、拝見するとこれは気候変動だけなんですよね、具体的にここに書かれているのは。
 あるいは地球システムという言葉と地球環境という言葉もインターチェンジャブルなのかどうかわからないし、もしほんとうに環境という言葉を使ったほうがアピールになるのであれば、そういうふうに効果的にお使いになる方法もあるでしょう。もしそうではないのであれば、むしろ環境という言葉を使うと、ひょっとしたら内容がわからなくなってしまうこともあり得るかと思いますので、気候変動なら気候変動、あるいは地球システムなら地球システムで、括弧例えば何々、何々というふうにしたほうが、将来的に多分これって私のような素人でもわかりやすくて、アピールにも使いやすい項目だと思いますので、そんなふうにされたほうがいいのかなと思いました。

【徳山委員】
 おっしゃることは非常によくわかります。現在、一般的に使われている環境問題ということと、気候変動とおっしゃいましたけれども、それとどういうふうにリンクしているかということを明確にしないといけないという点ではおっしゃるとおりだと思います。我々といたしましては、気候変動というのは地球システムが変わるということから、空気の流れだけ変わるというんじゃなくて、地球内部とのインターラクションも含めてダイナミクスを理解しようということでありますので、それを全部含めた環境という、学際的なアプローチをやろうとしております。
 それともう1つ、地球環境の変動というのは、恐竜の絶滅というイベントとか、1億年スケールの長い変動とか、今、問題になっているミレニアムサイズ、100年間地球の温度が数度上がってしまう。そういうときに空気、気候だけじゃなくて、そのときに海洋はどうなったの、そのときに堆積物はどうなっているのという、そういうパッケージで理解しようという内容を具体的に書いていくべきという気がいたしますので、その点は配慮いたします。

【田中主査】
 IODPは地球環境問題にも非常に関係があるんですけれども、我々が地球環境問題という場合には、一般に人間活動によって何かしでかして、それが環境を変えていくことをいいます。ところが、ここで問題にしている地球は自然に非常に激しい変動をしてきた。なぜそういうふうに変動したか。そのメカニズムを理解することが、結局、人間の影響によって引き起こされる地球環境問題の理解にも非常に大事だという認識で、これは環境問題そのものではない。地球変動に非常に関係している問題。ここはなかなか書き方が難しいところだと思います。

【松田委員】
 8ページの研究遂行支援プログラムについてお伺いしたいんですが、IODP試料データ分配指針として、サンプルとデータを分配するということだと思いますが、こういうものは1回掘削してくると膨大なデータが集まるわけですね。そういうデータはどこが窓口になって、例えば世界中の研究者に提供するのか。それは集中したデータベースでなくても、例えば広島とか高知とか、日本でもあちこちでやっているわけですから、そういうところの窓口となってデータを提供し、場合によってはそのデータの分析手法に絡めた分析結果も提供できるということをどこかにきちっと書いていただく。そうすると、世界中の研究者に日本から発信した成果が届くのかなというイメージになるんじゃないかと思うんです。

【徳山委員】
 サンプルのコアの保存のことを指摘されているんでしょうか。

【松田委員】
 データがたくさん出ますよね。収集してきたデータもそうですし、深海のどの程度のところでどういうふうな現象があったとか、データは船の中に集める部屋がありましたね。ですから、そこに膨大なデータが来るわけです。それを世界中の人に提供するということがあると思うんです。ですから、その場合に責任を持って、そのデータを提供する窓口として機能し得るということを、はっきり明記できるのかということです。

【徳山委員】
 これは私の個人的な見解かもしれませんけれども、IODPの全体のフレームワークの中で、人類の財産というのは大げさかもしれませんが、それをどうやって保存しておこうかというのは、IODP全体で議論して、今後の研究にも役立つし、人類の財産として保存しておきましょうとなっています。そういうサンプルの保存に関するものと、あと、後段でおっしゃっていた成果については、パブリッシュということで、どこがIODPの成果を全世界というか、その成果を皆さんのもとに届けるかというパブリッシングについても、全体の枠内で議論するということになっています。
 そこの中に日本の我が国におけるIODP科学支援体制がどれだけ突っ込んで寄与していくかというのは、今後の問題になると思いますし、ぜひ積極的に日本がやるべきだということであれば、後押ししていただければ、参考資料1のIODP研究の実施体制というところの国際的なScience Advisory Structureの中でもこういう提案ができるというふうに理解しておりますので、非常に賛同していただければ我々も、まさにおっしゃるとおり、日本の中でまず案をつくって、それを国際的な枠組みに持ち上げて、日本の提案に沿った形で、そのようなことが行われればというふうに考えております。答えになっていないかもしれませんが。

【平(朝)委員】
 松田委員の質問は、今、徳山委員が答えたとおりです。図1のところで、左側に国際活動、運用、科学とありますけれども、基本的にデータベースやコアの管理等々は、掘削実施機関とそれをまとめている運用のところで、国際的にオープンな形で行われるということです。
 ただし、それをどこがやるかというのはわりと国益にも関連するところで、国際的なデータベースは1つの窓口になるというふうに我々は思っていますし、国際的にもそのような話がされているわけで、その窓口は我が国に置きたい。それによって「ちきゅう」のみならず、ほかの掘削船のとったデータも一元的に窓口になって、そこが研究者やいろんなところの見える場所、そこにアクセスすればさまざまな中に入っていけるという、その窓口のところ、玄関のところはぜひ日本に置きたいと思っております。それは国益の上でも重要だろうと思っています。

【石田委員】
 2つ教えていただきたいことがあるんですが、5ページ目のわが国におけるIODP科学支援に対する基本理念で、その最初の1に「IODPに関連する地球生命科学コミュニティの意見が十分反映され」と書いてあって、地球科学のコミュニティは当然のことだから、それ以外のコミュニティとして地球生命科学を特別挙げたんですか。これを最初に挙げていく理由がよくわからないので、教えていただきたいのがまず1つ。それからお願いします。

【巽】
 特に、地球生命科学を特別な地球科学以外のものとして取り上げたわけではございません。もちろん地球科学はその1つの中心ではありますが、生命科学とか地球科学、その境界分野が非常にこれから重要になってきますので、これはむしろ広い科学コミュニティというふうにとっていただけるとありがたいと思います。

【石田委員】
 わかりました。ちょっと不思議に感じて。
 それからもう1つは、いろんな研究を進める上での幾つかのプログラムというか、こういう体制の重要なのを幾つかここに挙げられたんですが、支援プログラムA、B、Cというんですか、その実施体制、これはこの体制としては委員会を設けるというんですか、実際にどこかの場所に専門の事務局を置いて、そして予算もちゃんと確保して、ソフトだけじゃなくて、ハード的な面も含めた支援体制をつくりたいということでしょうか。

【巽】
 図2の上のほうに組織図的なものをつけてあります。この図で、今、石田先生のほうからご指摘いただいたことをお答えしますと、運営管理機構というところに対して、MEXTからIODP支援プログラムというのが流れてくるようになっています。ですから、こういうふうな比較的大がかりなプログラムを迅速に、かつ公平に運営するためには、こういう専門の管理機構が必要かと思います。これは先ほど申しましたアメリカではJOIに相当するもので、現在、日本にはこういうものはございませんが、こういうものが必ずできて、それに対してコミュニティの意見が反映される必要があります。その任は、J-DESCの中、そのほかの委員も加えた諮問委員会が担うというふうに我々は想定しております。

【石田委員】
 そういうのがないときっとできないだろうと思って、ソフトだけでは無理だと思ってお聞きしました。どうもありがとうございます。

【堀委員】
 生物圏の問題で、これは3ページの「地下圏微生物:有用酵素の発見と利用」というので、どっちかというと地球生命科学的のものを中心とした生物というふうに考えるのか、あるいは深海の生物というのは多様で、まだ、全然未解決で、どのぐらい量的なものがあるかわからない。それの応用も、先ほど長沼委員のご意見にもあるように、可能性という意味ではすべて深海においての環境下なのか。深海生物の非常に未知な分野高圧高熱環境下を併用するのか、分けて考えるのかについて教えていただけますでしょうか。

【徳山委員】
 これはドリリングですから、海底というか、深海というよりも、海底下ということで、だんだん穴を掘っていくと温度が上がっていきますから、そこに微生物がいれば、それは好高温菌が期待されるわけで、そういうのを前面に出して研究しようと言っていたわけです。また、好高圧、圧力が高くても住めるし、温度が高くても住めるというのが深部掘削では期待されるわけで、それと今現在、浅いところに高温を好んで住んでいる細菌との兼ね合いというのは、耳学問ですけれども、まだ、だれもわかってないです。どういうふうに進化して、今、浅いところ、暖かいところで生活しているかわからないので、そういうのを研究するということも含めれば、長沼委員の言っている決して深いところじゃなくて、浅いところのやつもちゃんと理解しながらやってくださいというのは、研究の対象としては矛盾はないような気がします。平(朝)委員、どうですか。

【平(朝)委員】
 深海底になると、例えば1万メートルの深海底といったら超高圧なんですよね。ですから、好熱、好圧菌というのは1つの環境の指標として重要だし、それは海底の表面に住んでいるものも、地殻の中に住んでいるものもおそらくかなり密接な関連を持ちながら、あるいは別々に進化した部分もあるでしょうし、別々に発展し、またお互いに住んでいるところを分け合ったり、入りまじったりしているんだろうと思いますけれども、表面、海底での研究も必要だし、掘削の試料もこういう部分は多面的に調べていかないとわからないと思っておりますし、多くの研究者もそう思っていると考えます。

【徳山委員】
 それらは、矛盾しないんじゃないかと思うんです。ただ、包括的に、両方をというふうに私は理解します。

【堀委員】
 全体的にはそうではないかと感じるんですけれども、かなり絞られた見方であるので、掘削の場合は絞って、その辺の表現がちょっと足りないのではないかなと感じております。
 教育広報においても、ものすごくご熱心な取り組みをなされて、また私ども社会教育施設も恩恵を受ける要素としては期待感を持っておりますが、基本的に今一番問題になっているのは、大学院とか教職員ということが書いてございますけれども、学校教育が基本的にそれに取り組んでおりません。社会教育では非常に熱心にそれをしようとしているんですけれども、小学校、中学校の義務教育の取り組みが、文科省の中でも学校教育の方面はまだ見えてこない。海洋国家としての海洋という意味、あるいはすべての体系的に学ぶ海というものに対しての学校教育と社会教育にもっと積極的にアプローチしていただきたい。

【徳山委員】
 これは次の項目と関わってくるんですけれども、J-DESCとしても積極的に広報活動をしようと考えております。実際問題、我々も小中学生を対象にしたような普及活動、広報活動を現在やっておりますので、それを戦略的に体系的にやっていこうと考えています。

【巽】
 参考資料の一番最後に補足資料として、これまでJ-DESCが行ってきた、それからこれから近々に行おうとしている計画をまとめてあります。その中で、今ご指摘がありました教育活動というのは我々も非常に重要だと認識しておりまして、特に教員の方々に対してまず我々の考えを知っていただく。それで、おもしろいと思っていただく。それを通じて児童・生徒に普及していく。それから、我々も直接語りかけるという形で広報活動をこれまでも行ってきましたが、ご指摘のように、広報活動は大事だと強く認識しておりますので、これからますます行っていくつもりです。ありがとうございます。

【須田海洋地球課長】
 海洋国家ということで海洋関係、特に最近、環境教育が重要だということで、学校のほうで総合学習という時間もできまして、そういう中で、特にIODPではないんですけれども、環境教育という形で今比較的重視されつつあるということです。IODPに関して言えば、我々の広報活動の一環で、いろんな社会教育や学校の場で宣伝していくということが重要かなと思います。

【堀委員】
 もう1回、申しわけございませんが、最初の計画に対して、図1の研究の実施体制と現状というところで、一番下に必要研究支援費のうち、太字斜体は未定といって、次の3行目に(初年度37億円、以降増加)というのは米国の予算でございますよね。

【巽】
 そうでございます。

【堀委員】
 日本は今、まだ見えてないという実態でございますか。

【巽】
 はい。

【徳山委員】
 皆無にほぼ等しいんですけど。

【石田委員】
 さっきと同じことでお聞きしようと思って、図1のシーズ研究のところの研究費で、予算が一応あるという通常掘削提案研究がありますが、これはどこまで入るんですか。もう既に前回、説明されたかもしれませんが。

【巽】
 これは例えば現状の科研費の枠の中で、シーズ研究といってもいろんなレベルがありますけれども、例えばCとか、Bとか、Aで対応できるようなものです。ですから、これは今、太字で書いてないのは、もちろん我々のJ-DESCの会員、それぞれの研究者が応募しているという意味です。

【石田委員】
 そういうための特別な枠があってというんじゃなくて。

【巽】
 いえ、違います。

【石田委員】
 わかりました。

【徳山委員】
 掘削関連のプロポーザルを出して、それが認められたのをこれに組み込んでいる。

【石田委員】
 それは科研費に関してこれからという意味ですね。

【巽】
 そうです。

【石田委員】
 わかりました。その下の研究遂行の研究費(一次研究)というのは、どこまで入るんですか。

【巽】
 一次研究というのは、実際にサンプルをとってきて、それの比較的プライマリーなディスクリプションのようなものまでです。そういう比較的基礎的もしくは初期的な記載、分析でしたら、各大学の研究者の個人の研究費で賄えるという意味です。それ以上の高次のものについては、それぞれでは対応できないという意味で書いてあります。

【石田委員】
 そうすると、約束されているのは何にもまだないということですね。

【巽】
 ございません。

【石田委員】
 わかりました。

【平(啓)分科会長】
 今、科学研究費の話が出たんですけれども、この中でNSFは戦略的に枠がつくられたということですが、日本の制度だとものすごく時間がかかる制度だと思うんです、この競争的資金の中にそれを入れても。一番大きなNSFとの違いでいきますと、NSFは採択率が大体50%前後になるのに対して、現在、日本では20%以下なんです。ですから、枠をつくるのも大変な上に、その中でもそれを活用するというのは非常に難しいので、もちろんやる努力も必要なんですけれども、ほかにも当然書いてあると思うんですが、関連したこういう研究をサポートするような別途の早急な対策が必要だと思います。
 そういう面でいきますと、もう1つのこととしましては、この計画自体は例えばライザー型、非ライザー型とあるように、ある程度年次的に進むものだと思うんですけれども、計画の重みというか、そういう重点化みたいなのがもう少し見えるとインパクトがあるのかなと思いました。

【巽】
 今、後者のほうでご指摘いただいた点なんですが、例えばライザーの掘削というのは2006年、7年におそらく日本のプロポーザルを中心にして始まります。そうしますと、2006年に掘削が始まるということになりますと、今から事前研究は始まってなければいけない、事前調査は当然行っていかなければいけないという状態なわけです。そういうことから考えますと、我々は今からスタートとして重点的に取り組まないといけないというのが現状で、そういう意味では我々は非常にあせっているというか、早くそういうのを手当てしないと、せっかく我々がいいプロポーザルを持っていてもそれが実現できないことになると考えています。

【徳山委員】
 重点というのは、2ページ目にガスハイドレートとか、地下圏生物とか、あと海溝型地震の発生、地球環境変動、これは国際的なIODPを始める前にイニシャルサイエンスプランをつくりましたけれども、日本でも日本版のやつを焼き直して、それでプロポーザルを書こうということをしておりますので、先生の指摘した重点といえば、この中で日本のプロポーザルはこの枠内に出ております。それらが、まだプロポーザルの段階で、スケジュールにのっていませんから、その意味で何年にどこというまでにはまだいってないという段階です。だけど、重点は決まっていると私どもは思っています。

【平(啓)分科会長】
 これはよくわかるんですけれども、例えば今おっしゃったように、ライザーが始まったらどこがどう違うとかというのはサイエンスプランなんでしょうけれども、もう少しそういうインイパクトがあったほうがいいのかなという感想を持っております。

【田中主査】
 競争的資金を否定しているわけじゃないんでしょ。

【平(啓)分科会長】
 じゃないんですけれども、ものすごく時間がかかる上に採択率が20%ということで、自分の例えば科研費が通らないとき、否定されたなんて怒る先生がいらっしゃるんですけれども、実際はとれるのは2割にも満たないということが今の状況ですね。

【須田海洋地球課長】
 現状は、特定の研究費を特別の目的に確保するというのは、競争的資金でアプライするよりも、現実はさらに難しいというふうにむしろ思っていただいたほうがいいんです。

【平(啓)分科会長】
 そちらのほうが難しいですか。

【須田海洋地球課長】
 競争的資金よりさらに難しいという現状認識に立っていただいたほうがいいんです。

【田中主査】
 我々の経験では分科細目というのはそんなに難しくない。2割と言ったけれども、採択率は3割、額面は。だから、これはぜひチャレンジすべきもので、見込みもない問題ではないから、そういうものはフルに活用していかなきゃならない。この提案自体が競争的経費を獲得すべきだと言っているから、これは大事なことです。

【平(啓)分科会長】
 それはそのとおりなんです。主査がおっしゃるようにすべきと思います。ただ、今、かえって別のものを確保するほうが難しいんですか。

【須田海洋地球課長】
 競争的資金の額は一応伸びているんです、どんどん。特別の特定目的というのはほとんど予算がついてないという現状がありまして、これは一般論ですけど。

【徳山委員】
 おっしゃるとおりなんですけれども、問題は、科研費はボトムアップの研究費ですから、我々仲間を増やすというか、自分でモチベーションのある人がプロポーザルして、よければ認められる。
 ところが、とるのが難しいと言ったもう1つの方法ですけれども、ここでいうと経常的経費というやつ、これはまた競争的資金である科研費になじまない面もあるんです。どうプロポーザルを書いてもやっぱりなじまないんです。経常的経費としてここに7つリストアップされていますけれども、それは競争的経費とは違ったポケットから出さなければ。これは動かす血液みたいなものが入っていますから。だから、難しいのは重々承知しているんですけれども、その2つ、両輪がないとIODPを続けていくことは、続けますけれども、非常に困難を伴うということで、その辺をよくご理解いただきたいということです。

【平(朝)委員】
 私は昔、海洋研時代に平啓介分科会長とODPをやった仲なんですけれども、当時、業務費というのでああいうODPがやれる時代があって、それが競争的資金にかわったわけですけれども、今、この資料を見て、IODP支援プログラム(経常的経費)というふうに、A、B、C、D、E、F、Gとたくさんのプログラムが書いてありますけれども、基本的にこれを分けると調査、探査のための事前調査に必要な探査費ですね、大きいカテゴリーでは。それから、技術開発のための費用と。それから、乗船旅費も入れればさまざまな旅費や会議費とか、そういうような活動費といっていいと思うんですけれども、それがこの場合には全体的にタイムシリーズで書かれているんだろうと思いますけれども、大きく言えばその3つに分けることができる。
 その支援のうちで非常に重要なのは、まずともかく乗船の旅費等々の、必ず船に人を乗せなきゃならない、あるいは乗ってこそなんぼのものだということで、これを草の根にオープンにするには、科研費を持っている人だけが乗れるという状態では、これはほんとうのナショナルプログラムにならないということがあると思います。特にわりと研究費がとりにくい小さな大学にいるような研究者等々に門戸を開くためには、乗船旅費を必ず確保することが必要になると思います。
 それから、ロングタームの技術開発ですが、ODPのときに末廣委員がやられたような穴に入れる地震計の開発というものは、かなり長い時間をかけて開発していかなきゃならない。今まで10年以上の歴史があるわけですけれども、これも単発の科研費だけではなかなか難しくて、それをうまく組み合わせてやっていくことが必要だと。
 今度、調査費になると、これはかなり大変なことになるわけですけれども、これは今、海洋研の船もJAMSTECにきましたし、それも含めてこれらの調査船をどのように動かしていくかというレベルで、大きく論じていかなきゃならないだろうと思いますけれども、少なくとも経常費の中でどうしてもというコアになる部分が必ずあって、それをぜひ確保しないとプログラムはナショナルプログラムにならないという面があると思います。
 ぜひと言って、お金がばかっと降ってくるわけじゃないと思いますが、関係各位、我々も含めて努力をしたいと思います。これは海洋地球課にもよろしくお願いをしていきたいと思います。

【須田海洋地球課長】
 しかし、現実的に考えていかなければならないということなんです。
 例えば、非常に端的な例を申し上げますと、私が学術関係をやっていた頃も、科学研究費の細目を設置してほしいという話がありました。この、細目をつくってほしいというのは、どの分野でも思っているわけです。IODPは国として推進するということでやっていますけれども、ほかの分野にとってこういうプログラムが仮に、地震の研究費や、ほかの環境関係などでも議論をすれば、どこでもこれを作るべきという話になるものですから、我々としては現実的にどうするかということが非常に重要でして、例えば今の競争的資金はどんどん伸びているんです。
 そういう中で、ここにも書いてあるように、科学研究費とか振興調整費もあり、それからCOEの、これは特に教育なんかも力を入れているので、そういうところで現実的に、まずは努力をしないといけないんじゃないかというふうに思っていまして、そういう努力というのはできればお聞きしたいとも考えております。もちろん海洋研もODPでかなりの役割を果たしてこられましたが、今後、IODPではどういう役割を果たしていくか、私はむしろそういうことをお聞きしたいんです。
 それと同時に、今、平(朝)委員が言われたように、どうしてもというのは何かということで、優先順位といいますか、そういうこともお聞かせいただければと思います。

【徳山委員】
 要求だけして、というのはちょっと不公平ですね。
 海洋研は所としてIODPを担っていこうというので、17年度の概算要求にもIODP、深海掘削の推進のためということで特別な要求をしております。
 それと、所としてScience Advisory Structureの支援ということで、海洋研の中にScience Advisory Officeを提供したりというようなこと。それと、マンパワーも提供するということは、一応しております。予算面では所として東京大学のほうに申請はするし、実質的なマンパワーとスペースみたいなファシリティの提供ということは、それをお金に換算するのはできないでしょうけれども、そういう支援をしているということが現状であります。

【田中主査】
 まだいろいろご意見はあると思いますけれども、この研究推進体制についてはIODPを成功に導くためには非常に重要なことで、成功するかしないかを左右するような重要事項である。今日は研究者コミュニティの要望といいますか、そちらから出されてきたものをお伺いしたんですが、これまた行政的にどういう形ならアクセプタブルなのかという、ものすごい難しい問題がいろいろあるわけですから、引き続き検討していくということでよろしいでしょうか。

【須田海洋地球課長】
 ぜひこれはIODP推進体制の一環ということで、引き続き議論いただくというのと、研究者コミュニティの要望は、理想論としてぜひこうしたいというのはわかりますので、これは要望書できちっと出していただきまして、推進体制全般については引き続きまた議論をさせていただく。
 それで、我々としては、先ほど申し上げたように、競争的資金もあるので、COEプログラム、振興調整費、科学研究費はどんどん増えているので、そういったところでの対応を考えていただきたい。

【徳山委員】
 東京大学の中で、研究所単位ではCOEのユニットにならないんです。

【須田海洋地球課長】
 とにかくそういうことで、いろんな努力もしていただいて、私どももこういう科研費の細目の設定とか、振興調整費を取り上げる努力もさせていただきたいと思いますし、特定のもので、例えば乗船研究費、旅費、平(朝)委員が言われた事前掘削についてはどこまでできるかわかりませんけれども、それはどういう方法があるかということは海洋機構とも相談していきながら、とにかくとれるところでとれるということをしないと、今、包括的なプログラムは簡単には認められないという状況がありまして、あらゆるチャンスをコミュニティで努力していただくということでお願いします。

【徳山委員】
 1つだけいいですか。お願いしたいというか、いろいろお知恵を出していただければ、我々J-DESCとしてはそれに沿っていろんなアクションをとろうということです。それが1つ。
 それと、平(朝)委員は先ほど3つのカテゴリーに分けて話されましたけれども、IODP支援プログラムの経常的経費の中で、待っていられない1つがあるんです。それはもう掘削が始まるんです、来年度すぐ。それの乗船旅費がまだギャランティされてないというか、我々は手持ちがないということで、そこは全国の研究者が乗船旅費がないから乗れないというのは、これは最初から水をぶっかけるみたいな非常によくないことなので、そこら辺は緊急でもいいですから、何とかお金を出す方法、お知恵をおかりしたいということです。

【須田海洋地球課長】
 そうですね。そういうのはどっちかというと、行政的な形で考えていかなきゃいけないので。

【田中主査】
 それは行政としてなかなか言いにくい話なんです。研究者が非常に主体的に研究費をとるシステムがとことんいっちゃって、あまりトップダウンでできないシステムなんです、日本は。科学研究補助金といったら、審査会に完全に任されているわけです。それはよしとされているし、そういうものの中でこういう緊急の特別のものをどういうふうにうまく成功させていくか、お互いに研究する余地が非常に多いわけです。だから、これは引き続き検討していく。この委員会としてはIODPが成功する、成功裏にするということが我々の使命ですから、これは非常に重要な問題なので、今後も検討していただいていくということでよろしいですか、今日のところは。

【末廣委員】
 そこはよろしいんですけれども、この内容で社会的効果というのは社会に訴えるところだと思いますので、高精度地震予知の実現という言葉と、後ろのほうで高精度の海溝型地震発生予測を実現可能にするであろうというのは、ちょっと言い方を工夫したほうがいいだろうと思います。長谷川委員、石田委員が賛成されると思いますけど。

【須田海洋地球課長】
 予知と予測とは現在、明確に区別して使っています。

【長谷川委員】
 高精度地震予知の実現、タイトルのところに地震予知という言葉を使っていますけれども、予知の実現という言葉になると、なかなか難しいことになると思うんです。ですから、予知ということじゃなくて、予測というふうに置きかえていただけば、少しはいいかなという気がします。

【末廣委員】
 一般の人が読んだら、高精度とは何だとか、いろいろ聞いてくると思うので、少し崩したほうがいいと思います。

【長谷川委員】
 予測の高度化なんです。高精度というと、すごい感じがするんです。多分、予測の高度化なんだろうと思うんです、言葉としては。

【田中主査】
 一方では地震予知の研究も進んでいると思いますので、普通の言葉になっているかと思っていたんですけれども、予知はちょっとぐあいが悪いということですから、予測ぐらいにして検討していただきたいと思います。

【徳山委員】
 予測の高度化というのに相当するような文言にかえると。

【宮崎委員】
 それに貢献するということだと思うんです。それに貢献できると。
 表現の細かいところで1点、9ページのところでちょっと気になるのがありますので、それだけ。9ページのGのところで、「地球生命科学コミュニティの代表者であり」ということで、J-DESCがあたかも1つの科学コミュニティの代表者でイコールしてはちょっとこれは言い過ぎかなと。もう少しやわらかい表現のほうがよろしいんじゃないかと。表現だけですので。

【長谷川委員】
 細かいことなんですけれども、先ほどの石田委員の質問に対する巽さんの答えを確認させていただきたいんですが、図2で研究者コミュニティが地球生命科学コミュニティということになっていると思うんですが、先ほどの巽さんの答えというのは、地球科学一般も含めてこういう言葉を使っているという意味だったんですか。

【巽】
 そうです。

【長谷川委員】
 地球生命科学コミュニティという言葉はそういうふうにとれますか。

【巽】
 地球科学、生命科学を含むという意味で。

【長谷川委員】
 まず、検討いただければありがたいなと。

【巽】
 はい、わかりました。

【徳山委員】
 そうですね。差し障りのない、違和感がない。

【佐藤委員】
 これは中ポツですか。

【巽】
 はい、中ポツ。

【佐藤委員】
 5ページの4.で、わが国におけるIODP科学支援に対する基本理念というタイトルなんですけれども、意味がよくわからない。私自身の受け取り方かもしれませんけれども、要するに我が国が持つべき基本理念という意味なんですか。科学支援に対するというのはちょっとかたい、精巧な感じがしないでもないですので、ちょっと気になっただけです。表現の問題ですけど。

【徳山委員】
 わかりました。それも。

【佐藤委員】
 それと、MEXTがせっかく生んだIODPですから、自分の子みたいなものですから、きっと多分、育ててくださると思うんです。だから、この委員会でいいことを言ってやれば、多分、実現するということですよね、基本としては。だから、どんどんコミュニティに対してというふうに私は感じましたので。

【田中主査】
 これはコンソーシアムの文章なので、あまりこの委員会でああしろ、こうしろというのは。意見を述べただけで、それを参考にして、なおご意見があったらお教えいただくと。それでいいんじゃないでしょうか。

【堀委員】
 これは日本のいわゆる地球科学支援体制というので、国の方向と科学的な支援体制ということと、広く国民という形の中で教育というのが書いてあるんですが、支援ということなので、産官学共同という言葉の中に産業界の占める要素が全然入ってないんですが、そういう言葉はわざと置かれたのでしょうか。
 結局、支援体制というのは、今度は応用に関して産業界にいち早くそれを導入して、いろいろな産業効果や経済効果、大いなる技術開発ができるという意味において、その人たちを抜かす手はないんじゃないかなと思うんです。学術振興ということにおいては、むしろそれを置いて、それから次の課題なのか。例えば支援体制となると、国民という中に産官学連携と盛んに言われている産の部分の文言が1つも入ってないような気がするんですが、それはどうお考えなんでしょうか。

【徳山委員】
 2ページの2.の社会的効果ということの中には、IODPが生み出した成果をもとに産業界への貢献が期待されるわけで、それを積極的に我々は発信して、こういうことがわかっていますよ、じゃ、これはどういうふうに利用して社会貢献というか、産業界が利用していただくかというのを、こういうのがありますよということを発信するということで、今回の提案というのは学際的な制度設計をどういうふうにしようかということに中心を置いたので、その次の段階はまだこの中には、残念ですけれども、発信して知っていただく。どうぞ興味があったら使ってくださいと。そこまでなんですけれども、今後は確かに産学官連携は非常に必要だと思います。

【堀委員】
 日本はそういうのを発明したり、発見したり、すばらしいものを持っているんですけれども、今度、応用において規制の問題とか何とかで、すべて日本が発信したのにアメリカが先行してやってしまって、技術大国のいろんなものが進んでしまうんです。非常に損な立場で、すばらしいこういう学術理論が持っていかれちゃうという要素が強いので、そこら辺はちょっと夢のある方向性を示唆していただかないと、結局、応用編がうまくいってないのが現状で、すべてそういうことじゃないかなと思うので、どうか産業界に期待できるような方向性というのは、日本がこれから行くべき21世紀の大事な課題じゃないかなと非常に感じておりますので、生意気でございますが、その辺をご理解いただきたいと思います。

【田中主査】
 ありがとうございました。
 時間が大分経過しておりますので、次の議題に移ってよろしゅうございますか。
 それでは、本日の議題の2といたしまして、IODPに関する広報活動についてということですが、前回の委員会のときに平(朝)委員にJ-DESCとも連携しながらまとめていただくと。そして、今回の委員会でご報告いただくということでお願いしてありますので、平(朝)委員のほうからご報告をお願いしたいと思います。

【平(朝)委員】
 報告させていただきます。参考資料2に、IODPに関する広報活動への提言-国民と一体型ナショナルサイエンスプロジェクトの推進方策-という結構分厚い資料がございます。それから、別添1に「ちきゅう」関連の新聞、テレビ等々マスコミへの取り上げ実績みたいなものがございます。それから、別添2にIODP&“ちきゅう”広報、普及展開計画案-短期、中長期ロードマップ案-というかなり分厚いものがございます。最後に参考資料として、最近取り上げられた幾つかの記事のコピーがございます。これを使ってお話ししますが、時間も押していますし、長々とこの説明をするのはやめて、別添2を開いていただきます。
 別添2の6ページにポンチ絵といいますか、こういう絵がございます。「ちきゅう」及びIODP広報戦略基本構想をまとめているというふうに考えてください。OD21推進室、CDEX、J-DESC等々我々関係者で何回か会合を持ちまして、これからの広報戦略はどうしたらいいんだということを話し合いました。
 キーワードは3つあろうかと思いますけれども、受動から能動へ、2番目はインタラクティブ、相互のコミュニケーション情報のやり取り、3番目が、これは私個人の思いが強いんですけれども、金より知恵と汗を出せということでございます。何のことだと思われるかもしれないので、後でお話をします。
 この基本構想ですが、上にプロジェクト推進主体というのがあって、文科省・JAMSTEC・J-DESC・大学等々、これらが一体となってIODP及び掘削船「ちきゅう」の運航を展開していく。これらの広報について、今まではわりと個別、ばらばらになりがちであったということで、これに関するさまざまな情報や知らせるべき広報のコンテンツ等々はできるだけ1カ所に集めて、広報・教育の中心窓口をつくる。これはインターネットサイトしかあり得ないでしょうというのが我々の考え方です。
 それで、その下のほうに起爆剤とやや過激な名前が書いてありますけれども、マスメディア・広報誌・イベント・学校・教室・博物館、さまざまな講習会を開いたり、あるいは博物館で展示を行ったり、マスメディアで取り上げてもらったり、今まで広報の基本にはわりとマスメディア、あるいはいろんなところから取材されるという、いわゆる受け身の立場が多かったわけですけれども、インターネットというのは主体者みずからが情報を発信することができます。ご存じのように、最近いろんな記事を見ますと、APや共同通信が取材してやったということはほとんどなくなってきて、直接インターネットからプレスがダウンロードしたり何だりする記事や情報が圧倒的に多くなってきたということがあります。
 その下に、ほんとうは知らせるべき我々のお客様というか、主体になるところが一般国民、子供――子供たちというのは非常に重要ですが、教育界、研究者・学生、産業界、さまざまな社会を構成している人たちがいます。起爆剤というのはこの人たちをつなげるイベントであって、1つのトリガーにはなるけれども、それを通じて一般の社会を構成している人たちがインターネットサイトに直接アクセスして、そこで相互のコミュニケーション、インタラクティブなコミュニケーションをしていきましょうと。それがこれからの情報のあり方だと。これはだれが考えてもこのような形になるんだろうと思います。
 図の左側には、インターネット、エデュケーション・アンド・アウトリーチ、学会、IT業界やさまざま専門学校等々を置いています、こういう技術的な開発を盛んにやっている場所が今は雨後のたけのこのように増えておりますので、そこの技術をできればある意味では安く、ある意味では先端的なものをうまく導入し、逆にさまざまな学会等々には「ちきゅう」の広報という課題自体が非常におもしろい、要するにIT業界等々にとっても、あるいは学会等々にとってもおもしろい課題だと思ってもらうようにする。こういう巨大な船を使って、国際プロジェクトをどのように広報していくのかということ自体が、場合によってはどこかの大学の修士論文等々に取り上げられてもいいんだろうと思っております。
 右側にあるのは、これは日本国内で行われるだけじゃなくて、先ほど言ったIODP・マネジメント・インターナショナルというのとIO(インプリメンテーション・オーガニゼーション)、各国でそれぞれ行うということです。アメリカ等は英語を使うでしょうし、ヨーロッパも共通語は英語でしょうから、そういうものを使ったさまざまな、あるいはそれを各国のレベルではフランス語で行ったり何だりするでしょう。言語も重要ですので、それらの各国の主体的な広報戦略等ともインタラクティブに、あるいは相互にいい知恵があったら、インプットしつつやっていくというのが基本的な考え方だということになります。
 それから、3ページぐらい開くと、図2、インターネット及び起爆剤の活用計画という線図があります。2005年には、「ちきゅう」の建造が終わって一般公開になり、おそらく何回か大きなイベントもあるでしょうし、最初の訓練航海と「ちきゅう」が稼働している姿が見られるということで、1つの重要なフェーズというふうに考えます。
 それまでにWebの改造期間があって、インターネットの新しいサイトをどんどん立ち上げていきましょうと。それは各構成メンバー等が協力してやっていきましょうと。それから、2006年以降はWebが本格稼働して、「“ちきゅう”と国民をつなぐ唯一」と書いてありますけれども、非常に重要な媒体としてインターネットのサイトを活用していきましょうと。
 その間に、先ほど起爆剤といったさまざまなイベントですね。そのイベントは大きく見ると3つぐらいありまして、ちょっと名前は仮ですけれども、認知系というのはメディア、雑誌、広報誌とか、そういうところです。今まではこれがほとんどでした。
 それが今度はさまざまな子供たちを巻き込んだ教育系の起爆剤を使って、漫画やアニメのようなものもうまく使い込んで入れていきましょうと。そういうイベントも使い込みましょうと。
 だんだんそれが今度はエンターテインメントのレベルまでいって、普通、あまり科学に関心のない子供もそういうところから引き込むようなことが必要になってくるんじゃないか。
 そのフェーズで起爆剤の対象になった当初は、研究者の拡大というのが大事ですから、先生、教育者、学生が主体的な対象になるでしょうし、一般公開のときにはコアのサポーターと書きましたけれども、研究って、科学に関心のある一般社会の人たちを大々的に巻き込みましょうということで、3番目に一般国民、2006年ぐらいには大々的なキャンペーン、そしてインターネットのサイトを充実したいと考えております。
 金より知恵と、最初の言葉ですけれども、基本的にこれが我々の考え方なんですけれども、色刷りの資料があります。『Newton』とか『nature』にも取り上げてもらって、一番最後に「Schoolhouse Rocks」というのがあって、これは何かというと、いろんな科学技術のインターネットサイトで最も充実していると思われるNASA(ナサ)のサイトです。
 我々もAGUのミーティング等々に行くと、NASA(ナサ)のブースは格段にすばらしい。かけている金が違う。もちろん今度のMarsのローバーミッションのサイトに行けば、さまざまなアニメーションが出てきて、この間NHKでやっていた番組もほとんどそのサイトからダウンロードしたプレス用のダウンロードのサイトがあって、それにただ某先生が出てきて解説しているというだけの、要するに番組が簡単にできます。それは金がかかるんですが、ここに1つのサイトがあって、世界の子供に学校の近くの石を送ってくれよというサイトです。
 今、火星で何をしているかというと、石の赤外線のスペクトルをとって、それで火星の表面を全部サーベイしているわけです。じゃ、地球の全部のサイト、いろんな石の出ているところの赤外線スペクトルのほんとうの標準的なものがあるかというと、実はなかなかそれはないのであって、世界の各地から石をとってこなきゃならない。それを本格的に研究者がやったら大変なので、まだそれほどのことも必要ないというレベルの話ですから、火星の石と子供が送ってきた石のスペクトルを比較しますよ。認定書をあげますよ。ぜひ送ってくださいと。金はかからない、基本的にこれは。でも、多分、子供たちが興味を持てば莫大な効果がある。
 例えば「ちきゅう」だってすぐ似たような二番煎じみたいな形になるんですけれども、君たちの周りの砂を送ってこいと言えば、川に行って砂や泥をとってきて送れば、これは堆積物になって降り積もるわけですから、世界の川の砂や泥を集めると、実は地球の中における物質循環の大変なことがわかる。そういうプロジェクトもすぐできて、例えばヒマラヤ山脈の近くを掘ったときには、特にインドの付近の子供たち、バングラディシュの人たちからもらいましょうというキャンペーンを張ることができる。
 金より知恵を出せ。NASA(ナサ)と同じレベルにはできませんが、知恵を出すことによってさまざまなインタラクティブなことができるでありましょうというのが我々の戦略でありまして、そのためにはぜひJ-DESC、JAMSTECだけじゃなくて、またそういう知恵を子供たちや学校の先生から出してもらう。そういうことが必要なんだろうと思います。
 以上で説明を終わります。

【田中主査】
 ありがとうございました。皆さんのご意見を伺う前に、本日ご欠席の委員から意見が来ているようですので、これをご紹介していただきます。

【田中企画官】
 資料3-5ですが、参考資料2に関する欠席委員からのご意見等ということで、長沼委員からご意見をいただいております。
 大学教員の立場として、広島大学では「瀬戸内海」を強く前面に押し出しており、IODPへの取り組みがやや遅れており、J-DESCには未参加です。しかし、研究者レベルでは大いに興味を持っており、個人参加している人もおり、長沼委員もそうだとのことで、このような大学や研究者は広島大学以外にも多いだろうと察せられています。
 今回の「広報活動への提言」では、そのような「個人参加者」をどう取り込んでいくかの視点が弱いように感じました。J-DESCに未参加の大学や機関があるとして、そこに参加を呼びかけるとき、その大学や機関の「個人参加者」をどう有効に生かしていくのか、そういう視線があれば、「草の根」という言葉も生きてくると思いました。
ということでございます。

【田中主査】
 引き続き、皆様方のご意見、ご質問等をお伺いしたいと思います。どうぞご自由に発言してください。

【松田委員】
 平(朝)委員が先ほどNASA(ナサ)のことをおっしゃいましたが、NASA(ナサ)の映像というのはものすごく印象に残りますね。ものすごい空間のところに、大画面で、リアルタイムで研究者が非常に興奮しているというのは、ああいうところに該当するのは日本ではどこになるんでしょうかというのが1つ。
 それから、別添1の新聞、雑誌、テレビへの掲載というのを拝見して、テレビ出演というところで、私はこれを全部見てなくて、こんなにあったのかと思ったんですが、毛利さんが帰ってこられて活躍しておられますよね。それはかなりテレビの力が大きいと思うんです。ですから、『NHKスペシャル』のような感じで、平(朝)委員がコンピューターグラフィックスの海底にでも立って、PRされる。そして、NASA(ナサ)のようなところを常に見せるとか、受動的なところではそういうところがちょっと足りないと思うんです。税金をたくさん納めてくれるサラリーマンのような人たちというのは、ちょっとインテリジェントな番組は必ず見ると思うんです。ですから、そういう特集をぜひやっていただいて、喚起していただく。
 それで今度、能動的なほうでインターネットでどんどんPRするということですが、このあいだ、シンガポールのパブリックスクールでインターネットがどんなふうに使われて、どんな教育をしているかちょっと見せてもらったんですが、パブリックスクールは完全に1年生から徹底的に英語教育ですのでインターネットの英語は何でもないんです。それを使って理科とか歴史の教材をつくって、3、4人ぐらいのグループでインターネットの画面を見て、みんなで相談しながら問題をどんどん解決していくような教育をしておりました。
 非常に印象が強かったんですが、先ほど平(朝)委員の最後のほうの火星の中でちょっとそれがピーンときたんですが、IODPの収穫を1つ1つこうやって小学校で取り上げていただくような、教材に結びついていくような文部科学省の働きかけも必要だと思います。ぜひスペシャル番組をやっていただきたいと思います。

【佐藤委員】
 私も松田委員と同じで、大賛成でございまして、平(朝)委員なら地球の上と下で、毛利さんとほぼ一対になるんじゃないかと思うんですけど。
 それと、広報はどうしてもアカウンタビリティといいますか、税金を使っていますから、説明責任がその底流にあると思うんです、本当は。だから、NASA(ナサ)なんかもその辺を考えて、最初そこですよね。そうでないと予算もとれないということになりますから。それがあれば、予算をとってもあんまり文句を言われないということもありますから、そういう思想だろうと。私は広報はそういうものだと思っています。
 そこで、6ページにきれいな絵の色のついた図がありますけれども、平(朝)委員はさっき漫画って言われましたけれども、例えばSFとか、これは非常に難しいかもしれませんけれども、私は個人的に囲碁を打つものですから、囲碁の世界で今『ヒカルの碁』という漫画がありまして、これが今出たらおもしろくて、小学生、中学生に爆発的な人気で、それこそ今度は学校の教材、授業とか、課外活動にほとんどの小学校、中学校で取り入れるようになったとか、そういう起爆剤になり得ることもありますから、例えば有名な漫画の大家にちょっと知恵を出してもらってやるとか、そこは具体的なイメージがわかないんですけれども、十分起爆剤になり得るのではないかなと思います。
 それから、一番下に一般国民、子供、教育界、研究者・学生、産業界ってありますが、これはこの右側にMEXTを除く役所とか、そういうものの理解もないと。それがあったほうがいいんじゃないか。これは正しいのかどうかわかりませんけれども、そんな感じがいたしました。

【兼原委員】
 今日いただいた参考資料2の提言という文章も拝見した上での、質問というほどのものでもないんですけれども、諸先生方からもご指摘がありましたように、IODP計画の内容そのものについての広報をいかに効果的にやっていくかということについて、今日の平(朝)委員のご説明、横長の別添資料2でも非常に興味深く拝聴したところです。そこで、1つこういう点はなくてもいいのかなというのが、ご質問申し上げる趣旨です。IODPには莫大な税金が使われるわけで、今日頂戴した参考資料の2ページ目の2パラからでも、この表現は何回も出てくるんですけれども、「我が国が主導国であり、我が国は本プロジェクトを長期的にリードしていく」ということについて、例えばこれから議題になるのかどうかわかりませんが、参考資料6の3つの丸の中でも、そのうちの2つにおいて主導国としての我が国の、あるいは国家プロジェクトとしてのIODPということがうたわれているわけです。もちろん非常にインテリジェンスを持っていらっしゃる方々、IODPの計画の内容自体にも興味・関心を持って、そういう番組もごらんになるかもしれないけれども、身近な問題意識としては次のようなことがあります。つまり、どうして国がやるんだ、どうして税金がそれに使われるのか。国際的に協力していくこと、あるいは日本が国際的に主導国たることが日本の国にとってどういう意義を持つのか。
 例えば国民に広く成果を還元していくという表現も何カ所かに見られるわけですけれども、おそらくは今日、明日、あるいは我々の世代に特定して還元されるような成果ではないかもしれないし、地震による影響の多い我が国にとってという言葉なんかが1つのキーワードかなとか思いつつこの文章を拝見していたんですけれども、IODP計画自体の内容がどんなにすばらしい発展性を持ったものかということはもちろん発信しなくてはいけないだろうと思います。
 それについては非常にすばらしいお考えがいろいろ考案されているのもわかったんですけれども、もう少し単純に考えると、なぜ日本が主導国になって、国際的に国家プロジェクトとしてリードしていくことが、なぜそんなに今アピールできるのかという視点もあっていいのかなというふうに考えたんですけれども、そのあたりはいかがでしょうか。

【平(朝)委員】
 兼原委員が言われたのは非常に根源的な問いで、お答えになるかどうかわかりませんけれども、このプロジェクトの基本的な思想は人類の知的財産をつくっていくんだということです。これは、明日、明後日の我々の国民生活に急に役に立って、病気が治ったり、あるいは皆さんの寿命が延びたりという話ではない。あるいは急に産業が爆発的に興り、何千億もの売り上げの産業ができるということでもないでしょう。人類の知的財産をつくる。そして、なおかつ長期的に我が国の国民の福祉、利益に役立つからこそ国がやるということだと思います。それは産業界もやれないし、1つ1つの大学や研究機関などでもできない。研究者等々ともかく英知を集めて、そういうような人類の長期的な知識、文化遺産のためにこれをやるから、国家プロジェクトであると理解しています。
 問題は、それをどのように理解してもらうのかということですけれども、1つのメッセージや何かを詔のように、何千回唱えてもよくわからないんだろうと思います。具体的な事例、具体的なエキサイトメント、こんな石が出ましたよとか、こんな発見がありましたよとかいう1つ1つの具体的な科学成果、世界の人たちの熱狂、あるいはおもしろいという発見のメッセージが何回も何回も伝わることによってそれは可能だというふうに考えていますので、我々としてはともかくこのプロジェクトを成功に導き、科学成果をちゃんと出すということがまず基本と考えています。その先にさまざまな今言われたようなことを国民の方々に知ってもらうイベントやインターネットも、単にそのための手段だというふうに考えています。答えになってなかったかもしれませんけれども、私はそのように考えています。

【田中主査】
 科学者がどういうインタレストを持って取り組んでいるか、火星のプロジェクトは生命があるかないか、非常に象徴的に出ているんだけれども、これも真実だし、中身なんだけれども、IODPでも、子供から大人までみんなにわかるようにやれるものなんですか。

【平(朝)委員】
 幾つかのプロジェクトは、例えば地下何キロメートルに生物がいるのかということだって、非常にわかりやすいメッセージで伝えることは可能だと思います。

【佐藤委員】
 これは火星よりも、深海掘削のほうが優先的に落ちるという意味ではありませんよね。科学全体に共通する問題の1つですよね。

【宮崎委員】
 別添2の6ページの基本構想と、図2にありますのは大変すばらしいことだと思います。
 あともう1点、ここでこの数年間、「ちきゅう」を中心にしてぐっと押し出そうとされているところがあるかと思うんですけれども、そういったところに地球と海を常にリンクさせながらやっていただけると、おそらく国民はそこに夢を持つのではないかと思います。つくりものだけですと1回や2回は訪れても、その後は飽きられてしまう可能性があるんじゃないかなと思います。その辺のところがありますので、本物の地球と海を常に見せていっていただけるといいのではないかなと思っております。

【末廣委員】
 まさにそこが大事だとおもいます。私は地震が専門ですから、「ちきゅう」による世界初の地震発生帯の掘削を、ほかの外国にとられていいのかという思いがあります。要するに地球相手の学問はこれを軸に飛躍的に発展するんだというふうに考えてもらえば、我々が生活している地球空間を一体どういうふうに把握して我々の未来の生活に役立てていくかということに、かなり密接に関係してくると思います。「ちきゅう」だけに特化して考えちゃうと、穴を掘ってものをとってくるんですか、それでわかることなんていつ役に立つかよくわかりませんねととらえられてしまうかもしれません。そうじゃなくて、実際の掘削自体の周辺についても全部底上げしなきゃいけないということを、J-DESCもずっと言っているわけですし、それが実現すると、社会に対して言えることも、ただの夢物語じゃない世界に入っていくんだろうと思います。

【徳山委員】
 昔、私が一番最初にヨーロッパを旅行したときに、例えばアルプスに行きますとパンフレットがあるんです。そのとき一番最初はジオロジーから始まるんです。アルプスってどうしてできたのというところから始まるわけです。結局、ルーツですよね、我々が住んでいる。今、理科離れとか言いますけれども、一体我々の地球ってどうなっているのというのを知ってもらうことが、広報の一番の柱だと思うんです。
 一方、先ほどの質問にあったように、産業界とどう結びつくのという話もあるわけです。例えばメタンハイドレートは日本で経済産業省がやっています。メタンハイドレートの形成プロセスというのはいろいろありまして、日本は特徴的なことをやっていますけれども、実はメタンハイドレートというのはインドネシアでもあるし、フィリピンでもあるし、台湾の沖でもあるし、世界どこでもあるんです。
 このような一般的なメタンハイドレートが、資源となるかどうかの学際的な研究をするという意味では、10年、20年ぐらいのスパンでは、産業界というか、人間の生活に貢献できると思います。経済産業省のように資源そのものの研究じゃなくて、学際的にメタンハイドレートをやることによって、それが人類のどんな役に立つかというのをほんとうに知ることができるという面はありますが、それをどういうふうに進めていくかというのは、個人的には、やはり夢を前面に押し出したほうがいいんじゃないかなという感じがしますけれども、いかがでしょうか。

【兼原委員】
 さきほど、申し上げ方を間違えてしまったかもしれません。私は素人でございますが、どんな意義があるかということについては、先生方にご教示いただいて何度か伺っていますので、その点についてご質問申し上げたのではありません。IODPが国家プロジェクトであり、日本が主導国であり、国際的に我が国は主導国になるというふうに国というものが出てくるのであれば、それは国の政策であり、先ほど今日の議論の前半でも国益という言葉が出てきましたけれども、それはこういった場面でも、前面に積極的に出したほうがもっとわかりやすくなるという趣旨で発言いたしました。先ほどの平(朝)委員の、まさに国でなければできないプロジェクトなんだというのはおっしゃるとおりだと思います。
 もっと積極的な言葉にかえて、例えば徳山委員が今おっしゃったように、国民が夢を持って、かつ今までだったら知り得なかったことを知り得るような機会がまさに我々の時代に到来したんだと。だからこそ国家プロジェクトとしてもやっていくことに意義があるんだとか、そういうふうにつけ加えていったほうがよろしいのではと思います。納税者や、広く国民に還元していくというのも、今すぐでなければいけないというふうには思ってなくて、我々の世代ではすぐに具体的な還元されるようなものがなくてもそれは仕方がない。それでもなおやっていくから夢という言葉があたるわけですから、積極的に日本の国がそういうものを目指す国としてやっていくんだというふうに、表現していったほうがいいのではないか。それがまさに主導国として、国家プロジェクトとして、かつ国際的にも日本というのはこういう考えとアイデアを持った国なのであるというふうに訴えていくことであり、日本の国の考えていることなんだという意味でご質問申し上げたのが先ほどの趣旨でございます。

【末廣委員】
 JAMSTECなものですから、一言申し上げますけれども、今おっしゃったことにはきちっとその答えになったような言い方をしなきゃいけないと思っていまして、今、話すと長いから言いませんけれども、先ほど地震の例を挙げましたけれども、地震の例に限らず、例えば、気候変動のようにIPCCの喫緊の問題として課題が突きつけられているわけです。そういったものにどういう役立つ知識を提供できるのかということまで含めて、IODPの意義というのは訴えていくつもりです。

【田中主査】
 ほかにございますか。よろしいですか。
 ありがとうございました。IODPに関する広報につきましては、「ちきゅう」も建造が最終段階に入っております。これからは実際の「ちきゅう」の運航とその意義について、国民に対する説明責任を十分に果たしていく必要があります。広報戦略は、実施機関であるJAMSTECにとって、本計画を実施する上で非常に重要な要素だと思いますので、引き続きJ-DESC等と連携しながら、本日ご審議いただきましたような広報戦略を適切に実施していただきたいと考えます。
 また、来年の委員会で成果報告をしていただきたいと思いますし、今後とも必要に応じてこの委員会で広報戦略についてご審議をお願いしたいと考えております。
 まだご意見がおありかと思いますが、予定の時間に近づいておりますので、ここまでとしたいと思います。
 次回の委員会は、2005年度のIODPの年間事業計画などの審議を中心にして、7月のIODP評議会のころをめどに開催したいと考えております。詳細につきましては、追って事務局のほうより連絡させていただきたいと思っております。
 以上をもちまして、本日の会議を終了ということにさせていただきます。どうもありがとうございました。

─了─

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