深海掘削委員会(第10回) 議事録

1.日時

平成19年9月13日(木曜日) 14時~17時

2.場所

丸の内仲通ビル K2会議室

3.議題

  1. 深海掘削委員会について
  2. 第9回深海掘削委員会以降のIODPに関する活動について
  3. 地球深部探査船「ちきゅう」の平成19年度運用状況報告
  4. IODPに関する広報活動について
  5. IODPに関する研究推進体制について
  6. その他

4.出席者

委員

 長谷川主査、石田、伊藤、兼原、佐藤、平(朝)、竹山、松田、岡田、川幡、末廣、鈴木、長沼、松本、宮崎、渡邊 各委員
 今脇海洋開発分科会長

5.議事録

【長谷川主査】
 ただ今から、第10回科学技術・学術審議会海洋開発分科会深海掘削委員会を開催致します。
 本日は大変ご多忙中にもかかわらずご出席いただきまして、ありがとうございます。
 私、本年3月の海洋開発分科会においてこの委員会の主査の指名を受けました、東北大学の長谷川と申します。どうぞよろしくお願い致します。
 この委員会のミッション、配付されている資料にありますけれども、深海掘削委員会は統合国際深海掘削計画(IODP)の推進に関する基本的な方針の調査検討を行う。1つは計画の推進方針、もう1つは計画の評価等となっておりますが、平成15年から活動して今日で第10回になります。この時期、ご承知のとおり、「ちきゅう」が初めての国際運用となる南海トラフの地震帯の掘削がちょうど始まる時期に当たりまして、この委員会、これまで活動してきたわけですが、今後もさらに主導国にふさわしい方針の調査検討、あるいは助言等を皆様のご協力を得て行っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。
 議事に入ります前に、事務局の海洋地球課の近藤課長からご挨拶をお願いいたします。

【近藤海洋地球課長】
 文部科学省の海洋地球課長をしている近藤です。いつもお世話になっております。この委員会には、残念ながら私、去年の会合には出席できなく、今回初めてということになりますので、よろしくお願い致したいと思います。
 当委員会につきましては、平成15年から科学技術・学術審議会の海洋開発分科会の中に統合国際深海掘削の推進に関する基本的な方針について調査審議いただくために設置していただきまして、10回を迎えたということでございます。平成18年2月には、深海地球ドリリング計画についての事前評価等も実施していただいているのがこれまでの経緯だと思っております。前回は12月19日に行われまして、今回の委員会につきましては、委員の任期更新後の初会合になるということで、先生方には初めての方もいらっしゃるということで、内容も詳しく説明したいと思っております。
 「ちきゅう」につきましては、7月末に海外での試験運用が終わったということで、来週9月21日からIODPに基づく本格的な国際運用が始まるという時期に来ております。本日は、今年10月からのIODP2008年度の事業計画案等、最近のIODP関係の動向をご報告するとともに、「ちきゅう」の平成 19年度の運用状況報告、またIODPにおける推進活動等を主な議題として審議いただくということになっております。
 今年、「ちきゅう」がIODPでの活動を開始するわけでございますけれども、今後、主導国として日本がますますリーダーシップを求められると思っておりまして、そういう観点からも深海地球ドリリング計画の進捗に問題がないのか、あるいは今後、主導国としてどうあるべきかということを念頭に置いた議論がこの場で忌憚なくされることを期待しておりますし、また我々としても真摯に受けとめて取り組んでいきたいと思います。本日は忌憚のないご意見をよろしくお願い致したいと思います。
 以上です。

【長谷川主査】
 どうもありがとうございました。
 本日は委員の改選後、初めての会合ですので、新しく委員になられた方もおいでです。最初に、順次簡単にお名前、ご所属等、自己紹介していただきたいと思います。

【今脇委員】
 九州大学応用力学研究所長の今脇です。今年の2月に海洋開発分科会の会長を仰せつかりまして、この深海掘削委員会にも出席させていただいています。「ちきゅう」は、私、横目でずっと注目しながら眺めていたんですけれども、これからはこの委員会で直接その話を聞かせていただけるというので楽しみにしています。よろしくお願いします。

【兼原委員】
 立教大学の兼原敦子と申します。国際法が専門でございますけれども、国際法の中の海洋法の分野を勉強させていただいていることもありまして、こちらの海洋開発分科会へ随分長く出席させていただいてご指導いただいております。よろしくお願い致します。

【佐藤委員】
 東京大学工学系研究科の佐藤でございます。初めて参加させていただいています。深海掘削に関していろいろと勉強させていただきながら、何か貢献できることがあればと思っています。専門は石油天然ガス開発と、最近は二酸化炭素の地中隔離関係をやっています。よろしくお願いいたします。

【竹山委員】
 早稲田大学の生命医科学科の竹山と申します。海洋開発分科会のメンバーをさせていただいて、こちらのほうにも今回から参画させていただくことになりました。専門は環境微生物、あと分子生物学的なアプローチ、工学的なアプローチをやっております。ぜひ勉強させていただければと思います。よろしくお願いします。

【松田委員】
 中央大学の松田でございます。私は経済学部におりますけれど、情報科学を教えておりまして、コンピューターサイエンスの観点から非常におもしろいプロジェクトであると興味を持って参加させていただいております。よろしくお願いいたします。

【宮崎委員】
 産業技術総合研究所参与、地質調査情報センターに現在籍を置いております宮崎と申します。専門はもう大分忘れてしまったんですけれども、物理探査とか、海洋の重磁力、ポテンシャル等の研究を昔やっておりました。よろしくお願い致します。

【末廣委員】
 海洋研究開発機構の研究担当理事をしております末廣と申します。深海掘削については、私はIODPの部分を担当しております。

【平(朝)委員】
 同じく海洋研究開発機構の理事をしています平と申します。担当は社会貢献ということになっておりますが、実際の担当は「ちきゅう」の運用でございます。専門は元地質学者でございます。よろしくお願いいたします。

【田中CDEX企画調整室長】
 海洋機構CDEXの企画調整室長の田中でございます。

【渡邊委員】
 高知大学海洋コア総合研究センターのセンター長をやっております渡邊と申します。よろしくお願いいたします。

【川幡委員】
 東京大学新領域科学研究科の川幡と申します。オフィシャルには新領域でありますが、私、実際には海洋研究所にお勤めしておりますので、海洋研究所の川幡と認識していただけるとありがたいと思います。現在、掘削のコンソーシアム、J‐DESCの方のIODPの部会長として皆さんのために働こうと思って頑張っています。よろしくお願い致します。

【鈴木委員】
 北海道大学の鈴木といいます。川幡さんが今のIODP部会の部会長をしていますが、その前の部会長をしていました。私、専門は堆積物の、堆積物というのは有機物に関する研究をしております。あるいは石油天然ガス等の研究しております。どうぞよろしくお願い致します。

【松本委員】
 東京大学理学部の松本と申します。私の専門は堆積学、地質学ですが、最近は海洋のガスハイドレートの研究を主にしております。IODPに関して言いますと、昨年からIODP-MI(IODP中央管理組織)のBoard of Governors(理事会)をさせていただいておりまして、今年からその議長をしています。よろしくお願いいたします。

【岡田委員】
 北海道大学の岡田と申します。資料は3月までのタイトルになっておりますが、現在は研究戦略担当の理事副学長をやらせていただいています。それで、今、松本さんがおっしゃいましたけれども、松本さんが議長で、僕は今年の6月まではIODP-MIの副議長をやっておりまして、今は普通のガバナント(役員)という位置付けです。よろしくお願いいたします。

【長沼委員】
 広島大学の長沼と申します。専門は極限環境ですね、南極、北極、深海底、地底の微生物の生態学をやっております。どうぞよろしくお願いします。

【伊藤委員】
 石油天然ガス・金属鉱物資源機構の伊藤と申します。前任者に代わりまして今年からこの委員会、それから分科会に出席させていただいております。元地質屋なんですけれども、強いて言えば、今どっちかというと、私は深海底の金属鉱物資源の方の担当をさせていただいております。よろしくお願いします。

【石田委員】
 海洋研究開発機構の地球内部変動研究センターの石田です。この委員会には「ちきゅう」建設当時からかかわっているんですが、なかなかお役に立てていない、立つのは難しいなと思っています。沈み込み帯のテクトニクスに関連したことをしています。よろしくお願い致します。

【長谷川主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは、これから議事に入りたいと思います。最初に、事務局のほうから資料の確認をお願い致します。

【宿利企画官】
 お手元の議事次第の中に資料の一覧をつけてございます。資料10‐1‐1、委員名簿。1‐2は、3月の分科会で決定しました科学技術・学術審議会海洋開発分科会の委員会の設置について、1‐3は深海掘削委員会のこれまでの審議状況、いずれも1枚ものでございます。その下にホチキス止めをしてございます資料10‐2‐1、2‐2が、前回第9回の委員会の議事概要と議事録でございます。その下にはカラーの1枚紙で資料10‐3‐1、IODP全体構造をつけてございます。その下にホチキス止めの2枚紙で資料10‐3‐2、第9回深海掘削委員会以降のIODPに関する活動について。それから、2枚紙で、資料 10‐3‐3、IODP2008年度年間事業計画(案)の概要。その下に資料10‐4、プレス発表資料でございます。参考資料は1から5までございます。参考資料2がやや厚い英文のIODPの年間計画案でございます。
 以上でございます。

【長谷川主査】
 ありがとうございました。もし無いものがありましたら事務局の方にお願いします。
 それでは議題に入ります前に、前回平成18年12月19日に行われました第9回委員会の議事録と議事概要の取り扱いについて、事務局の方からご説明をお願い致します。

【宿利企画官】
 資料10‐2‐1、2‐2が前回委員会の議事概要、議事録で、(案)とつけてございますが、この議事録、議事概要は文部科学省ホームページにおいて公開されることになってございます。前回出席の各委員には、内容を既にご確認をいただいております。前回までと手続が若干変わり、今までは議事録を次の委員会にお諮りし、確定するという手続をとってございましたが、これからは迅速な公表が望ましいということ、また委員会の開催頻度があくようなことも想定されるということでございますので、一番上の科学技術・学術審議会においてこの議事録の手続が変わっております。ですので、委員会が終わりますと、委員の皆様方に内容を確認させていただきましたら、主査と分科会長にご相談をした上で内容を確定、公表という手順をとらせていただくことになります。そういう意味では(案)とついておりますが、これが確定版ということでご了解をいただければと思います。

【長谷川主査】
 どうもありがとうございました。ただ今のご説明はご理解いただけたでしょうか。今後は次の委員会を待たずに公表するということになりますので、どうぞご承知おきください。事務局の方では各委員に適切に内容を確認いただいて、公開の手続を進めるようにお願いいたします。
 それでは最初の議題1、深海掘削委員会について、事務局の方からご説明をお願い致します。

【宿利企画官】
 冒頭、長谷川主査からも、また近藤課長からも申し上げましたけれども、当委員会は平成15年に設置されまして、その後2年ごとに、委員任期更新ごとに設置が継続されてございまして、統合国際深海掘削計画の推進に関する事項を調査ご審議いただくということでございます。
 資料10‐1‐3にこれまでの審議状況について載せてございます。平成15年、16年にかけまして、IODPの覚書の調印、立ち上げの時期にも重なってございますが、統合国際深海掘削計画の推進につきましてご議論をいただきました。それから平成17年の後半からでございますが、第6回のところに深海地球ドリリング計画中間評価として評価小委員会を設けていただき、中間評価に取り組んでいただきました。
 簡単に深海地球ドリリング計画を申し上げますと、3つの内容がございます。まず掘削船「ちきゅう」を建造する、それからその掘削船「ちきゅう」を用いて新たな国際枠組みを創設した中で科学掘削を行っていく。そして、掘削したコア、あるいは掘削孔を活用して地球科学、生命科学を推進していく。そういった内容で、平成2年から当時の海洋科学技術センターで着手されております。国におきましても、当時総理府にございました海洋開発審議会、あるいは科学技術審議会の答申の中に深海掘削システムということが出てまいりまして、平成10年に当時の航空・電子等技術審議会で事前評価が行われました後、平成13年から「ちきゅう」の建造が始まりました。その後、所要の年数が経ったということで平成17年に中間評価をお願いしたところでございます。その後、平成18年3 月、12月と、その時々、IODPの活動に関します国内、国際の状況について活動をご報告させていただきますとともに、特に国内の推進体制、あるいは普及・広報活動に重点を置いてご審議をいただいてまいりました。
 事務局と致しましては、今後も引き続きIODP全体の活動状況についてご検討、ご助言をいただくとともに、これまでの会議で明らかになった問題点等について、今後の方向についてもご議論、ご検討いただければと考えてございます。
 以上でございます。

【長谷川主査】
 どうもありがとうございました。ただ今のご説明について、何か質問、あるいはご意見ございますでしょうか。よろしいですか。
 それでは、引き続き、深海掘削に関する基本的な方針や計画の評価等について調査・審議していきたいと思います。
 続きまして議題2、第9回深海掘削委員会以降のIODP関連活動について、事務局の方からご説明をお願いします。

【宿利企画官】
 統合国際深海掘削計画は、平成15年から日米を中心にヨーロッパ、中国、韓国も参加致しまして、日本の建造した「ちきゅう」、それからアメリカの掘削船、またヨーロッパが出します掘削船を組み合わせて深海底を掘削し、その活動により地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏の解明といった科学目的に取り組む国際共同プロジェクトでございます。スケジュールのところにこれまでの歴史等がございますが、平成15年以降、順次参加国が拡大しまして、現在、全部で21カ国が参加している状況でございます。並行して、「ちきゅう」の建造も進んでいるということでございます。
 次に、IODP全体構造ですが、これは全体がいくつかの主体に分かれています。まず文部科学省、米国国立科学財団、この2つが全体をリードする主導国という位置付けです。この他に中国、韓国、それからECORD、これは17カ国が参加しているヨーロッパのコンソーシアム、の合計21カ国で構成されてございます。この参加国は覚書をそれぞれ調印してございまして、主に、日本のように行政機関、あるいは研究機関が覚書を調印している国もございますけれども、それぞれ覚書のもとで、参加分担金を出して、このプログラムに加わっているということでございます。
 一番上のIODP評議会とは、参加国の代表機関が年に一度集まり計画全体の進捗なり全体的な意見交換をする場でございます。参加国は21カ国ございます。それから、JAMSTEC、JOI Alliance、ECORD運用機関とございますが、これらはそれぞれ掘削船を持って掘削活動の船を実際に動かす機関でございます。それから下のほうに緑色で科学諮問組織SAS(サイエンス・アドバイザリー・ストラクチャー)と書いてございます。これは参加国から選出された科学者の代表で組織される国際会議でございます。年に2回、場合によっては3回、定期的に開かれて、掘削提案に関する科学プロポーザルをこの諮問組織で受付けます。その後内容を審査し、科学掘削を実行する優先順位を勧告します。真ん中に赤く塗っておりますのが中央管理組織、実際の名前はIODPマネジメント・インターナショナル、 MIと私どもは言っておりますが、この計画全体を管理運営するための法人を置いております。これはワシントンに本部がございまして、それから札幌に科学支援部門、SAS会議の支援サポートをする機関が日本に事務所を置いてございます。
 矢印がたくさんひいてございますが、実線で書かれておりますのは分担金、お金の流れでございます。参加国は分担金を払いますけれども、これがアメリカの NSFにいったん集約され、科学運用経費として中央管理組織に一元的に流しております。それをそれぞれの実施機関に中央管理組織が流しています。また、掘削船の運用経費につきましてはそれぞれの掘削船を持っている国が責任を持って予算措置をするということでございまして、文部科学省からはJAMSTECに矢印が出てございます。
 破線の矢印でございますが、中央管理組織は年間の国際活動について事業計画を毎年立てることになっておりますので、その計画案につきましては各実施機関と調整した上でIODP‐MIが取りまとめをします。最終的にリードエージェンシーの方にその計画案が提出されまして、主導国で中身をチェックし、承認手続をとるということで活動をしてございます。
 それから、この図の中に表記がございませんが、日本国内の科学者の皆様方、大学、研究機関が会員組織となっております日本地球掘削科学コンソーシアムというものがございまして、科学提案あるいは研究航海への支援活動等、活発に活動いただいているところでございます。
 続きまして資料10‐3‐2、前回以降のIODPに関する活動について、簡単にご説明いたします。実施主体あるいは実施された活動の種類によって、大きく6項目に分けて書いております。最初のIODPフレームワークというところは、先ほどのIODP評議会、あるいはリードエージェンシー、ファンディングエージェンシーの活動について書いております。
 1.(1)19年1月、アメリカのテキサス州で、NSFと文科省の会合を開催し、今年10月から始まる2008年度の予算指針、産業界との連携等についての検討を行いました。また、IODP‐MIを交えた今後の計画運営についての検討を行っております。(3)5月にはワシントンで今年2回目のNSF‐ MEXT打ち合わせ会議をしてございます。「ちきゅう」、それからアメリカの掘削船「SODV」でございます。現在「SODV」は改造工事中で運行しておりませんが、これの運行計画の見通し等について調整、意見交換をしております。「SODV」は来年5月から運行を再開する見通しということでございます。米国資金の契約手続の変更、これはアメリカ国内での掘削船改造工事に伴いまして、掘削船の運用経費、維持経費を今後アメリカ議会からの要請でずっと追跡するような仕組みをとる必要があるということでして、ややテクニカルなことでございますけれども、アメリカの船に渡します資金の流れ、手続について、若干変更を要するという話でございます。また5月にはECORDとの意見交換も致しております。(4)6月にはドイツにおきまして参加国全体の年1回のIODP 評議会を開いており、今年10月からの2008年度年間事業計画案の見通し、あるいは参加国拡大に向けた活動等の意見交換をしております。合わせてNSF との間で全体の計画運営、また中央管理組織の運営についても効率化をしていくという意見交換を行っております。
 2.については、アメリカの船は改造工事中で、「ちきゅう」はまさに今月から就航しますので、この間研究航海は行われておりません。ヨーロッパが提供する特定任務掘削船、これは、浅い海を掘ったり、あるいは北極海を掘ったりするときにヨーロッパも傭船をいたします。その実施計画航海も今延期になっている状況でございます。
 3.科学諮問組織でございますが、(1)今年3月大阪におきまして第9回の科学計画委員会(SPC)が開かれております。これは年2回開催されており、掘削提案のランキングを致します。(2)今年3月には、初めての試みですが、ワシントン、東京、ケンブリッジの3カ所をビデオ会議で結びまして、科学諮問組織の最上位の計画でございますエグゼクティブ・コミッティが開催されております。ここではSAS活動のレビューや効率化、または陸上掘削計画との連携、またIODPの初期科学計画、これは科学目的を書いているものでございますが、これの見直しの進め方等の意見交換がされております。(3)6月にドイツで開催された科学諮問組織の会合でも、引き続きICDPとの関係強化、SASの効率化等の意見交換が行われております。(4)8月にアメリカのカリフォルニアで第10回SPC会合、それから掘削船の運用委員会が開かれまして、今後の科学提案の優先順位づけ、日米掘削船の今後の予定変更等について議論されております。
 4.中央管理組織の活動についてでございます。(1)5月ワシントンにおいて参加国をさらに拡大しようというフォーラムが開かれ、現在参加していないオーストラリア、台湾、ほか関心を持っている国からの科学者、あるいは在米大使館員が集まってIODPについてのプロモーション活動が行われました。(2)また、研究航海スケジュールの検討と(3)IODP‐MI理事会も6月に開かれ、今後の運営についての意見交換がなされました。なお、(4)IODP‐MIには、文部科学省から上級顧問という形で職員の派遣がございますけれども、大塚顧問が6月末で任期を終え、7月下旬から後任の加藤孝男さんという方が派遣要請に基づき日本から着任をしております。
 5.JAMSTECの活動についての記載でございます。(1)JAMSTECは、2007会計年度のIODP事業計画について、「ちきゅう」の国際運用、高知でのコア試料を保管する事業、掘削孔に計測機器を埋め込み長期にいろんな海底の状況を検知する計測機械システムの技術開発関係の事業についてMI と契約を結び、今年9月からの南海掘削開始に向けての準備をしています。(2)JAMSTECは国内研究者に対する乗船旅費の支援をしています。(3)JAMSTECは、先程の長期孔内計測につきまして、技術開発の手順を進めています。(4)南海掘削の準備については、乗船者を決定後、掘削されたコアサンプルの提供についての受付をされているということでございます。(5)IODPが2003年に始まる前の深海掘削プロジェクトはアメリカが主導で行っておりましたが、その当時のコア試料を日本とアメリカとヨーロッパの世界3カ所に配分し直すという計画が動き始めており、高知コア研究所に順次コアが入るということでございます。
 6.地球掘削科学コンソーシアム(J-DESC)についてですが、J-DESCでは、今後の掘削航海に乗船する我が国の研究者の募集・推薦という活動をしていただいております。また、掘削航海後のポストクルーズミーティングへの参加支援や、定期的な活動として国内の若手研究者、あるいは一般の方に向けた PR活動、研究者のすそ野を広げるための「IODP大学&科学館キャンペーン」という活動に取り組んでいただいております。今年3月には名古屋大学、7月には千葉大学でキャンペーンが行われています。また、地球惑星科学連合といった学会でブースを設けていただいたり、セッションを開いていただいたりしております。このほか各種の会合に支援、コア分析についてのレクチャーやスクール、若手研究者に対する手引としてのマニュアル化といった活動、あるいはワークショップ、シンポジウムの開催、国内だけでなくて韓国との共同シンポジウムの計画、陸上掘削との懇談会の予定があると伺っております。
 資料は以上でございますけれども、このほかに前回昨年12月に開かれた当委員会で、岡田委員からIODPに関する国際的、国内的な活動の情報がなかなか集約、一元化ができていないのではないかというご指摘、ご提言がございました。文科省としましてもその辺をJAMSTECさんとも相談をさせていただきまして、できることからの一歩前進という形で、国内の研究支援活動等を担っていただいております財団法人地球科学技術総合推進機構(AESTO)さんにもご協力をいただきまして、平成19年度から国内のIODP関係者、特にIODP-MIの理事の方、キーパーソンの方に集まっていただくような会合を開催できるように措置させていただきました。
 また、国際会議科学諮問組織は日米が交代で議長を務めるということになってございます。主導国はそれぞれ掘削船を運行・提供しているということで、その負担に見合った権利を確保しております。例えば、乗船研究者の人数も日米があわせて3分の2以上を占めるということですとか、各種委員会の委員の人数も日米が多数を占めております。今年の6月、科学諮問組織の会合につきましては、アメリが側から日本側に議長が交代になり、向こう2年間、ちょうど「ちきゅう」の国際運用も始まる時期とも重なりますが、国際的な会合につきまして日本側が副議長から今度議長で運営を担っていただくことになりました。
 長くなりましたけれども、以上でございます。

【長谷川主査】
 どうもありがとうございました。JAMSTEC、あるいはJ-DESC、何か補足ありますか。よろしいですか。
 ただ今のご説明に、質問、あるいはご意見ございますでしょうか。

【宿利企画官】
 第9回委員会以降の活動についてという議題の中で、IODP2008年度年間事業計画案についても検討が進んでおりますので、あわせてご説明をさせていただければと思いますが、よろしゅうございますか。

【長谷川主査】
 どうぞ。

【宿利企画官】
 資料10‐3‐3をごらんください。本体につきましては参考資料2の中に、まだドラフト段階でございますがIODPのフィスカルイヤー2008のアニュアルプログラムプランの本文を用意してございます。
 資料10‐3‐3ですが、アメリカの会計年度に従ってIODPの掘削計画、予算について年間計画として取りまとめられてございます。これは、 IODP-MIが案を作り、科学諮問組織、IODP-MIの理事会の承認を経て、最終的にリードエージェンシーが承認をするという手続になってございます。スケジュールは、1月、2月に予算枠の提示以降、インプリメンティング・オーガニゼーションで検討した案をIODP-MIが調整をして、現在、案が最終段階なってございますが、実は諸般の事情で掘削船の計画に変更が生じてございます。先程のアメリカの船の改造工事の遅れや、「ちきゅう」の運用計画等も見直しがかかってございまして、今お手元に配っている資料につきましても、さらにこれを若干変更する必要があるということでございます。そのようにご承知いただきながら概要を説明いたします。
 年間計画の案の構成につきましては、目次項目で(1)から(11)まで、年間計画の概要、予算の概要、 IODP組織構造等々、計画事項として盛り込まれているという中身でございますが、2008年度に予定されている研究航海につきまして2ページに表の形でつけてございます。2008年度の研究航海予定は、「ちきゅう」は2~3カ月単位の航海が来年の2月まで、南海トラフ、熊野灘沖で掘削計画が予定されてございます。また米国船の予定につきましては、5月中旬以降、赤道帯の東太平洋の掘削航海、ベーリング海における掘削航海、若干順番が前後するようでございます。下から2番目のShatsky Rise Expeditionという北西太平洋の掘削計画につきましては、次年度以降に延期という最新の情報を聞いてございます。それから、ヨーロッパの船によるニュージャージー沖での掘削航海も、計画書には入っておりますが、さらに延期になるという見通しを聞いてございます。先程のアメリカの船の運行計画変更を含めたご説明をさせていただきました。

【長谷川主査】
 どうもありがとうございました。ご意見、ご質問ございますか。

【今脇委員】
 欧州船というのは、どのぐらいの規模、能力というか、掘削船としてはどんなものなんでしょうか。同じぐらい大きいことはないんですよね。

【宿利企画官】
 日米の主力掘削船に比べますと小型で、しかも浅い海域を掘るリグですとか、固定的な船が決まっているわけでございませんで、掘削航海の場所や目的に応じて、その期間だけを傭船する形をとってございます。
 例えば、後ほど説明する資料10‐4が、ヨーロッパの船が3年前に行った掘削航海でございますが、これは北極海を掘削する砕氷能力のある掘削船と、あと砕氷艦を従いまして掘削が行われました。このときには、資料10‐4の中ほどに、丸い地図のあるページの反対側に使われた船が紹介されてございます。ノルウェーのVidar Vikingという掘削リグとスウェーデン、ロシアの砕氷船で船団を組んで掘削が行われました。

【長谷川主査】
 後のほうで説明していただいた事業計画の一番最後のところで、研究航海の状況についてご説明いただいたんですが、欧州船のニュージャージー沖の掘削についても、当初の計画から延期されているような、そういうご説明だったと思うんですけれども、米国船は今ドックにいるんですか、理由はわかったんですけど、ヨーロッパの船で延期になった理由とかは、なぜそういう状況になったのかというのは、何か情報をお持ちですか。米国船とはかからないような気がしたんですが。

【宿利企画官】
 ちょっと私も詳細を承知してない部分もございますけれども、予定しているリグが故障してしまったというアクシデントがあったのと、世界的に原油が上がったりいろんな資材価格、人件費も高騰したりして、財政的な理由が延期の大きなものと聞いております。

【長谷川主査】
 わかりました。どうもありがとうございました。
 IODPの活動、あるいはIODPの全体構造、それから事業計画を詳しくご説明いただいたんですが、質問、ご意見等どうぞ。

【兼原委員】
 単純なことなんですけれども、私は聞き落としてしまって、今、同じページで、一覧表があるページの3.2008年度に実施される研究航海の文章の3行目で「国際運用」という言葉が、ほかの資料でも出てきたと思うんですけれども、これは何が国際化するんですか。

【宿利企画官】
 国際運用と書いておりますのは、掘削航海をするに当たりましてIODPの参加国からの乗船者、乗船研究者を乗せて、またIODPの枠組みで科学的に最上位にランキングされた掘削目的の航海を行うということを国際運用というふうに書かせていただいております。したがって、多国間の共同プロジェクト、科学目的のための掘削航海ということでご理解をいただければと思います。

【長谷川主査】
 他にどうぞ。

【石田委員】
 多分前回でも説明いただいたのかもしれませんが、今と同じページで、「ちきゅう」の運用に関してです。2007年11月から12月のところに、概要が、「ステージ2で実施予定の巨大分岐断層へのライザー掘削に一部着手し」とあります。この部分はステージ1ですね。そうするとステージ1はどこまでで、ステージ2のこれは、ステージ1とは全然別にさらにということですか。ちょっとこのステージ1とステージ2というのをご説明いただけませんか。

【平(朝)委員】
 それは「ちきゅう」の運用のところで実際に説明させていただきたいと思います。

【長谷川主査】
 それは後でご説明いただくということで。他にどうぞ。

【宮崎委員】
 先程少し出たんですが、年間プログラムプランですか、それが遅れるというようなことを言われましたけれども、最終的には10月の初めぐらいにオープンというんでしょうか、上げられるのかという点と、その時には欧米の掘削船の遅れというものが反映されたプランになるんでしょうかという、その2点をお聞きしたいんですが。

【宿利企画官】
 米国会計年度でいきますと年度末が迫ってきておりまして、新しい計画の計画書がなかなかできてこないというところで、私も今断定はできないんですけれども、掘削航海の変更の最新のもので計画書を作って、それが上がってきて、オープンになるという理解でおりますが、さらにその後変更が生じた場合には、年間計画がスタートした後で年間計画の途中変更という形が発生すると思われます。発生する確率が高いと今考えております。

【長谷川主査】
 他にございますか。よろしいですか。それでは、今後の国際的あるいは国内的対応について、また最後に説明していただいた2008年度の事業計画について、主導国として適切に対応し、進めていただきたいと思います。
 続きまして議題3、地球深部探査船「ちきゅう」の平成19年度運用状況報告ということで、まず初めに平成19年度の運用状況と先日終了しました「ちきゅう」海外試験掘削の内容、結果などについて、この運用に当たっておられます地球深部探査センターの平委員のほうからご報告をいただきたいと思います。

【平(朝)委員】
 参考資料3をメインに使いながらお話をしたいと思います。
 最初に「ちきゅう」の今までの試験運用の成果、あるいはその内容についてお話をして、その後に熊野灘の、最初のIODPの科学掘削、科学運用についてお話をしたいと思います。
 平成17年7月に「ちきゅう」は引き渡しを受けて、その後約1年強、下北半島を中心に平成18年10月まで国内周辺で試験掘削を行いました。操船訓練、あるいは下北半島の沖合でのライザー掘削の試験を行ってまいりました。この間、下北半島の、特に去年の8月、9月、10月は本格的なライザーの掘削試験を行って、ライザー及びBOP、噴出防止装置ですね、それの性能のテストを行ってきたということでございます。
 その結果、私自身は60点という評点をつけましたけれども、当初、目標としていた海底から2,000メートルの掘削というところまではいかなったんですけれども、600メートル以上の掘削を行い、基本的な「ちきゅう」の性能、ライザーのハンドリング、BOPの作動テスト、BOPの緊急切り離しテスト、それからダイナミックポジショニングシステムですね。船が一定の位置にとどまるというダイナミックポジショニングシステムの性能、それから操船、それから掘削機器のハンドリング等々について総合的な試験を行ってまいりました。その結果、十分「ちきゅう」が科学目標のライザー掘削船としての性能及びそれを操船する、あるいは操作する上での基本的なノウハウ、一番ベーシックなところはクリアできたということが我々としては結論ができた。それが去年の10月でございます。
 その後、11月から10カ月、海外試験掘削を行ってまいりました。2ページに海外試験掘削がございます。これは海洋研究開発機構がオーストラリアのウッドサイドという会社からシードリルという「ちきゅう」の掘削を委託している会社を通じて受託した受託事業でございます。すなわち外部資金を導入して海外で資源に関する掘削を行い、同時に「ちきゅう」のさらなる性能テスト、習熟を行っていく。交付金を使わないで、ある意味では自立した形で試験を行っていく、そういう仕組みで10カ月の武者修行に行ってきました。ケニア沖では水深2,200メートルから海底下2,700メートルの掘削を行いました。ここはかなり潮の流れが強いところでございまして、それが180度といいますか、全く変わってしまうという非常に異常な環境にあるところで、そういうところでやらせていただきました。
 それから豪州北西大陸棚、ここは日本へかなりガス・石油を供給している、特にガスに関しては日本の最大の供給地の1つでさまざまな会社がここでオペレーションしていると。その中でもウッドサイドというのはオーストラリアの公的資金も導入されている石油会社ですので、一番大きな鉱区を持ってここで盛んな開発をしているというところであります。そこで水深500メートルから海底下3,700メートルの掘削を行いました。このライザー掘削で行いました。それから水深1,000メートルから海底下2,000メートルのライザー掘削を行いました。したがって、この海外試験掘削の間に、水深500メートルから 2,000メートル以上という、地球のオペレーションレンジのほぼ全てをカバーするところで、2,000メートルより深い海底下2,000メートル以上の掘削を3本行ったということがございます。
 後からお話しします5月中旬ごろに「ちきゅう」のライザーテンショナーという、ライザー装置に一定のテンションをかけて船の動揺からライザーパイプを守っているといいますか、動揺吸収装置に不具合が生じ、ライザー掘削ができない状態になりました。その間、契約が8月まで残っていたものですから、日本まで帰ってくる期間1カ月を考えると、2カ月ほどの契約の時間が残っていたということで、その間ライザーを使わないで以下の6本の孔を掘りました。これを孔井上部掘削作業と呼んでいますけれども、将来ライザー掘削を行うような孔井を準備しておくというのをウッドサイドのほうの要請でありました。これは水深 400メートル、それから一番深いところは1,400メートル、掘削深度は500メートルから実に3,200メートル。ライザーレスで、ライザーを使わないで3,000メートル以上掘ったというのはめったにないことだと思いますが、「ちきゅう」のポンプの能力とか、そういうほかの部分での「ちきゅう」の掘削能力がこれでも証明されたと思っています。しかしこれは地質との兼ね合いで、石灰岩の非常に安定した地層であったためにこういうことができたと思いますが、ほかの地層で簡単にできるわけではないということはここで念を押しておきたいと思います。
 海外試験掘削について以下のような基本的ないろんな作業をすることができたということで、我々としては非常に成果があって腕も磨いたし、「ちきゅう」の性能についていろんなことができたと考えております。
 どこでやったか、それからケニアの潮流が4ページに書いてあり、5ページにはサイドトラックという、横方向に孔を曲げて掘る掘削試験もオーストラリアで行いました。
 6ページに、先ほど言ったライザーテンショナーの一部損傷ということでございます。右側の7ページの図を見ていただきたいと思うんですが、「ちきゅう」の真ん中にムーンプールがあって、ムーンプールのところに普通はライザーパイプがドリルフロアからつり下げられて、これが海底までずっといっているわけですけれども、その周りに6本の黄色いシリンダーとロッドからなる装置が見えます。これがライザーテンショナーでございます。船が上下に動揺すると、このテンショナーが作動して動揺を吸収して一定のテンションをライザーに与え続ける。そういう装置で非常にライザー掘削にとっては要になる重要な部分である。
 7ページの右下の図、これはシリンダーの中にあるロッドの部分ですけれども、何かギザギザした模様が見えます。上のコーティングがはげて、中のロッドの形状の部分、実はここは少しねじ切りのような形になって、そこに金属を焼き付けてある構造をしています。その焼き付けた金属の部分がはがれてきた。次のページも同じでございます。はがれてくると、油圧の油が漏れ出してきて、テンショナーがきかないという状況が起きましたので、結果的には「ちきゅう」が帰ってくるまでライザーレスの掘削を6本行った後、7月にシンガポールに入って、それでこのテンショナーを外して、メーカーに送り返して、今「ちきゅう」が帰ってきたという状況でございます。これに関しては今、原因等々を調べているところですし、メーカーに我々のほうの技術のグループが行って調査し、打ち合わせをしているところですが、これから始まる9月からのステージ1の南海掘削ではライザー掘削を行いませんので、幸いにしてライザーテンショナーがなくても掘削が可能である。この装置自体は来年4月には修理されて帰ってくる予定である。
 というわけでありまして海外試験掘削に関しては、下北半島から続く一連の試験掘削の間、我々としてはかなりたくさんの孔を掘ることができ、クルーも習熟し、「ちきゅう」の性能についてもかなり確かめることができた。限界についてもいろいろ知ったと思いますし、こういう一種の不具合も出てきて、この不具合に関しては、「ちきゅう」の問題だけじゃなくて、このメーカーのつくったロッドには、これは一応最新型のロッドなんですけれども、ほかの掘削プラットフォームでも同様な問題が生じているということを我々は情報としてつかんでいますので、これはメーカー側とかなり厳しい話をしなきゃならないなと思っています。そういう状況で、今月からの南海掘削に対しての試験掘削における準備はできたというのが我々の結論でございます。
 ここで切りますので、もし質問があれば。

【長谷川主査】
 どうもありがとうございました。ご質問は。

【今脇委員】
 今、動揺を吸収するというのでライザーテンショナーですか。船の主な動揺の周期というのはどれぐらいの長さなんですか。

【川幡委員】
 10秒とかそのぐらいでしょう。

【平(朝)委員】
 10秒ぐらいですかね。動揺の周期は、これは波の波長にもよりますので、上下運動が一番の問題ですよね。でも、そんなものかと思います。

【今脇委員】
 たまたま聞いて、どれぐらい周期のものを吸収するのかなと。その周期で動いても下があまり動かないようにということですね。

【平(朝)委員】
 そういうことですね。一番大事なのはストローク、どれだけのストロークが吸収できるか。10メーターが最大の、8メーターがほぼ作動限界で、10メーター以上は動かないと。

【今脇委員】
 船が10メーター上がり下がり……。

【平(朝)委員】
 上がったらシリンダー自体のもうその動き幅がない。ですからそれ以上、上下すると、シリンダーがもう動けないので、ダイレクトにテンショナーに船の重さがかかります。なので壊れてしまうので、10メーター上下の前に切り離さないといけない。

【長谷川主査】
 他に。

【鈴木委員】
 今、テンショナーが来年の1月までかかるというお話……。

【平(朝)委員】
 いや、4月ですね。

【鈴木委員】
 そうすると、ステージ2では、ライザー掘削に一部着手するという予定だったかと思いますが、これには間に合わなくなると。

【平(朝)委員】
 今回のステージ1では、ライザー掘削のための基本的な、上の孔の上部の仕上げを行うところで、ライザー掘削の一連の作業ですけれども、ライザー掘削そのもの、ライザーを海底におろして掘削をするということは行いません。その準備作業を行うということですので、それはいわゆるライザーレスモードの掘削になりますので、ステージ1では大丈夫です。ステージ2になったら本格的な掘削が、それは来年の後半ということになると考えています。
 石田さん、すみません、ステージ1、ステージ2は後から説明しますけど。

【長谷川主査】
 他にございますでしょうか。

【兼原委員】
 違う角度から教えていただきたいんですけれども、ケニア沖とオーストラリアの大陸棚で試験掘削を実施されたというご案内だったんですけれども、ケニア沖は、ケニアの管轄水域の海底……。

【平(朝)委員】
 そうです。

【兼原委員】
 そうであると、以前にはご苦労されたこともあるということもお教えいただいたかと思うんですけれども、相手国の合意を得ておそらくなさったんだろうと思うんですけれども、先ほどの計画ですと、しばらくは日本の管轄水域ですからあれなんですけれども、もちろんこのプロジェクトに入ってくる国が増えれば触れるほどその国の管轄水域を掘削するということは海域が広がっていくんだろうと思うんですけれども、今後の見通しとして、ぜひとも掘削はする、それもいずれかの国の管轄水域であって、その合意を取りつけるという意味での見通しというのはこのケニア沖、オーストラリア大陸棚での経験でどんなふうにご感触をお持ちになられたんでしょうか。

【平(朝)委員】
 今回の海外試験掘削は、全部上流側にウッドサイドというオーストラリアの石油会社が、我々はその事業の一部受託を受けて参画したという形なので、ケニア政府とのクリアランスとか事業許可は全部ウッドサイドという会社がやって、我々は全くその部分はタッチしていません。実際に「ちきゅう」がケニア沖で掘ったときは、ケニア海軍の軍艦が2隻張りついて、常時「ちきゅう」の周りを、ソマリアの海域と近いものですから、海賊、テロから「ちきゅう」を守るという意味でケニア海軍が派遣されていましたけれども、それはウッドサイドという会社との間の話し合いで派遣されたわけで、我々がそれを要請したということではない。オーストラリア海域でも全く事情が同じで、いろんなクリアランスや操業許可のようなものは全部上流側の契約主体であるウッドサイドの会社が行ったと。
 IODPになったときには今度は我々が事業主体ですので、まさに兼原先生が言われたように、いろんな許可等々についてはIODPとJAMSTECで共同で取っていかなきゃならないと。そのときに例えばいろんな候補地、今もいくつかの非常に難しい海域が候補地になっていることも現実です。例えばパキスタン沖とか、そういうところが候補になっていますけれども、それのいろいろイージーの中の作業許可を得たり、それからある意味での安全対策等々をやっていくのはIODP-MIと我々が共同でやるということになると思いますが、最終的には事業主であるJAMSTECが責任を負わなきゃならないので、確かに当事国であればありがたいんですけれども、他のIODP参加国以外だとすごい大変な作業、何年もかかる作業になると思いますので、そういう意味ではできるだけ早くから準備して、4、5年かけて準備しないとこういう掘削はできないなと。今回に関してはウッドサイドが全部やってくれた、ウッドサイドも多分ケニアでも長い時間をかけて投資してきた話ですので、なかなかそういう実績がないと一朝一夕にはできないということは我々も身をもってわかりました。

【長谷川主査】
 他に。

【長沼委員】
 少し教えてほしいんですが、ケニアの例、オーストラリアの例、今後のこともあるんでしょうけれども、例えばサンプルから微生物をとるということがあると思うんですけれども、生物多様性条約(CBD)によると、その微生物の特許にしろ何にしろ所有権のようなものは原産国にあるということなんですね。こういったものの取り扱いに関して、その辺をどう取り組まれているのかちょっと教えていただければと思います。

【平(朝)委員】
 海外試験掘削に関してはサンプルや科学成果というのは、契約上、我々は事業を委託された側で作業だけ行っている、ある意味では作業の請負人の立場で入っていますので、サンプルとか何かは契約上一切我々は手をつけませんでしたし、それをやると今言ったようないろんなことに入ってくるので、それは完全にウッドサイドにお任せで、今回はデータ等については一切の、海外試験掘削という我々の位置付けでもあったので、科学的な部分に関しては、サンプルをとったことは知っていますけれども、一切我々は関知していないということです。
 将来IODPでしっかりやる場合には、まさに長沼さんが言ったようにイージーの中であれば、その国とサンプルの所有権をどうするのか、あるいは微生物のようなものに関してはどのような取り決めで行うのかということに関しては、共通のルールでやっていくのか、個々個別にやっていくのかまだはっきり決まってないところはありますけれども、当然そういう問題が生じてくるだろうと思います。それは今IODP等々とポリシーを作って、そのポリシー作りから始まっているところですので、ポリシーができてそれから作業の実際の手順を踏んでいくということになると思います。「ちきゅう」を将来IODP以外のやや似たような海外試験掘削とか似たような受託研究あるいは受託事業として行って、外部資金を導入して、なおかつその一部を科学的な目的にも使うということになると、今度はIODPとは違ってJAMSTECの事業の一部になってきますので、今度はJAMSTECのサンプルの取り扱いポリシー、あるいはほかの国との JAMSTECの契約の仕方、取り決めということになりますが、我々は今IODP以外のことで、もし「ちきゅう」を将来、外部資金を導入してやる場合のスキームはどうあるべきかということは、海洋地球課とも相談して検討中である。その中にそういういろんな所有権の問題があるということは知っていますけれども、個別にまだ具体的なことで取り決めをしているわけではありません。あまり答えになっていなくて申しわけありません。

【長谷川主査】
 他にございますでしょうか。

【宮崎委員】
 海外での試験掘削、一応成果として掘削技術等々ということだったんですけれども、ひょっとしたらこれ自身も契約によって言えないのかもしれませんけれども、感触だけでも、実際にそれで岩石等が十分希望どおりにとれたかどうかということとか、それからケーシング等を行って作業を行っているわけですけれども、それの仕上がり具合等についてはいかがだったんでしょうか。

【平(朝)委員】
 いくつかは既にインターネットで発表されたこともありますので言えるところはありますけれども、コアは豪州沖で相当の深さといいますか、インターバルをとりました。ODPに近いIODPのコアリングテクノロジーと同じようなものもありましたし、あるいはさらにそれを違う方法といいますか、コアバレルの長さ、100メートル近いコアバレルを使って連続で100メートルとるというようなこともやりました。そういう方法もできるんだなということで、我々9.5 メートルコアというのが何も金科玉条のごとくこれから守っていかなくてもよいのではないかというふうにも思っていますし、それからケーシングに関しては、特にこの6つの孔に関しては大口径のケーシングをいろんな深さで6回も入れる作業を行って、全部成功しまたので、ケーシングを入れることに関しては自信がついたというか、すごい勉強になったということで、それに対してだめだったという話はウッドサイド、要するに施行側のほうから文句が来ているわけじゃないし、ちゃんと金も払ってもらったので、多分評価としては、お金が評価でしょうから、いいんだろうというふうに思います。

【長谷川主査】
 他にございますか。

【石田委員】
 これまでの試験掘削のときに機器設置の訓練、練習もなさったんですか。これは掘削、ケーシング入れた後コアをとるだけで、次には実際に計器を設置するわけですよね。その練習はここではしなかったんですか。

【平(朝)委員】
 それはやっていません。ドリリングはもちろん大量にしましたけれども、ドリリング以外は、孔内観測に役立つような機器の設置に関してはまだやっていません。

【長谷川主査】
 他にございますか。

【田中CDEX企画調整室長】
 ちょっと付け加えさせていただきます。テンショナーの損傷のところで枠に書きましたテンショナーの説明部分が1行切れております。「重量は1本で約31トン、シリンダーロッドのみ7トン」と書いてございます。失礼しました。
 それに関連して、今現在、原因の究明をしておりまして、確かに先ほどセンター長が説明したようなことも考えられておりますけれども、左側の第1回技術アドバイザー会議における審議というところで、前例とか含めて現在いくつかの要因を、可能性を探っております。探った中でそれらを検証しようということで、ちょうど今週からノルウェーに送ると書いてございますが、ノルウェーの関連会社ということでドイツに送りました。ドイツのフランクフルトの近くにございます関連会社の工場に到着いたしまして、今週からメーカーの技術者及び当方の担当者、担当責任者及びロッドの製作者を含めて、また保険会社のサーベイヤーも行って調査しているという状況でございまして、原因その他につきましては、それを見てからと我々は考えております。
 以上です。

【長谷川主査】
 どうもありがとうございました。ご質問、ご意見ございますか。
 先ほど平委員は60点と言っておられましたが、60点というのは海外のやつを入れないで……。

【平(朝)委員】
 下北半島で60点、試験掘削を入れると80点。

【長谷川主査】
 参考のために聞かせていただきました。
 他にございますでしょうか。それでは、どうもありがとうございました。
 続きまして、先ほど来出ています、「ちきゅう」による初めての科学掘削となる南海トラフ地震発生帯掘削計画、これについてよろしくお願いします。

【平(朝)委員】
 いよいよ9月から南海トラフ地震発生帯掘削計画といって、「ちきゅう」の最初のサイエンティフックなエクスペディション、国際運用が始まります。私のほうからオペレーションの概要を説明した後に、せっかく作ったパンフレットがございますので、これで科学的に何をしてどういう成果が期待できるのかということに関して、研究担当理事の末廣さんからお話していただきたいと思います。
 では、最初に私のほうから簡単にオペレーションの概要をお話ししたいと思います。先程の続きでございます。資料3の運用状況報告の9ページでございます。この計画ですが、南海トラフ地震発生帯の掘削に関しては、最初に「ちきゅう」を作ったときに、あるいは作るという計画が出されたときに国際の舞台でどこをやるんだということが、実は当初からかなり国際会議でディスカッションが行われていて、ともかく地震発生帯の掘削をやるべきであるというのが国際的に合意されたところです。その後に、プロボーザルが出されて南海トラフに関してはSPC科学委員会を通じて長い間ライザー掘削の最大にして最初の候補という形でランキングがされてきました。そのうちの一部、ステージ1、ステージ2、ステージ3、ステージ4まであるんですけれども、それについては末廣さんにお話しいただきたいと思いますけれども、今回、ステージ1ということで、3つのエクスペディション、エクスペディション314、315、316を行います。 314はロギング・ホワイル・ドリリング、掘削同時検層というものを行います。315は将来深い孔を掘る予定である2‐03というサイトですけれども、そこを掘って上部1,000メートルほどのコアリングをした後、先ほど鈴木委員から質問のあった将来のライザー掘削のための上部の孔井仕上げ、ケーシングを入れておくという仕事を行います。その後に316というので、少し海側のサイトになりますけれども、その部分のコアリングを主体とした掘削を行います。実際には乗員は4週間交代で、先ほど表にあったようにエクスペディションはそれぞれ60日近くの航海と30日近くの航海が2回あるということです。
 12ページをお開きいただきたいんですが、地点は3‐01のところから6地点あって、その6地点に対して全部で15ホール掘る。いろんな順序で掘っていきます。初めにパイロットホールという少し孔の安定性を示す、そういうのを1,000メートルと950メートル掘って、4番目でLWD(ロギング・ホワイル・ドリリング)を(4)(5)(6)(7)(8)行います。黄色のところがエクスペディション314、その後エクスペディション315で2‐03を集中して行うと。それから2‐01と1‐03に関してはエクスペディション316を行う。そういうやや複雑な工程ですけれども、場所は新宮、熊野の沖合に集中しているということです。
 13ページですが、補給基地を新宮に置きます。「かいゆう」というサプライボートを使って、これも1,600とンほどの小さくはないしっかりした船ですけれども、これを使ってさまざまな資材の運送を行う。一方、人員に関しては、南伊勢、三重県ですけれども、ここの港、比較的小さい漁港ですけれども、そこにヘリポートを新たに新設してその一部を借りて人員輸送基地をつくりました。これは民間のヘリコプター会社と契約して、ベルの412型がほぼ毎日近く「ちきゅう」と往復するということを行います。定員は「ちきゅう」は150人ですけれども、もうほとんどいっぱいで、実はぎりぎり足らないという状態で、要するに乗れる150人というのは救命艇のサイズで決まっていますので、昼間に10人余計にビジターが来るから、昼間10人はうまらないのでいいやということは一切できないんです。10人乗ったら10人降ろさないといけない。泊まろうが泊まるまいが、床で寝ようが寝まいが、おろさなきゃならないので、150人ぎりぎりでございまして、人員の組み方を非常に苦心しているという状況がございますが、研究者とそれをサポートする技術者、特に研究者は、末廣さんの言葉をかりれば、お客様は神様でございますので、しっかりそれをサポートするように運用していきたいというふうに思っています。
 以上が大体予定で、これは2月5日まで行います。ここの場所は3月、4月、5月の3カ月間は残念ながら掘削ができない。それは漁業との関係で、特にマグロ延縄漁が行われるピークの時期には我々と漁業関係者の間で合意がありまして、掘削はしてくれるなというので残念ながら掘削はできないということです。その間は南海エクスペディションが終わればドックに入って定期検査を受けるということになります。
 今回、全部で66名、日本から21名、アメリカ21名、豪州も21名、韓国1名、中国2名という数字になっております。314のチーフサイエンティストがJAMSTECの木下正高さんとハロルド・トビンさん、315が東大海洋研の芦さんとシーグフリード・ラルマンさん、この人はフランスの人です。316 が東大の地球惑星科学の木村学さん、それからフロリダ大学のエリザベス・スクリートンさんというわけで、日米それから欧州、それからコチーフサイエンティストが出ている、そういう状況でございます。
 少し科学の中身に関して、末廣さんのほうからお願いします。

【末廣委員】
 このパンフレットは私も今日初めて見ました。最初に6ページを見ていただきたいんですけれども、先ほど最初のエクスペディションのコチーフをやると名前のあがった木下正高とハロルド・トビンですが、この2人が実は全体を通しての、ここに名前がチーフプロジェクトサイエンティストと書いてありますけれども、そういう位置付けで、いくつものエクスペディションに分かれているんですけれども、全体のプロジェクト統括を担うことにもなっております。したがって、この人たちは何年にもわたってプロジェクトマネジンメントをきちんとやらなければいけない非常に重要な任務を負っているということであり、まさに統合国際深海掘削計画にふさわしいインテグレーションを担うわけであります。この人たちはまだ若いといったってそんなに若くはないですけれども、私よりは随分若いということであります。
 それではごく簡単に4ページ、5ページの見開きのところを使ってご説明いたします。昨日もスマトラで地震が起きまして、あれは2004年のスマトラの大地震津波が起きて、その後、南のほうで地震活動が起きていまして、まだ大きいのが来るのではないかと心配されているところがあるんですけれども、昨日のはまだそこをうめてないので、また心配なところが残っているという状況であります。そういった箇所が世界中、特に太平洋の周りにあるわけですけれども、それはとりもなおさず海洋プレートが陸の下にもぐり込んでいるために、そのもぐり込みに際してちょうどある深さですね、ここでは浅いほうしか示してないんですけれども、深さ約5キロないし10キロから数十キロの深さの間というところがちょうどプレートの、海側のプレートと陸側のプレート同士が地震を起こすような相互作用を起こすところということで、サイスモジェニックゾーンと英語で呼んでおります。サイスモジェニックゾーンというのは今申したようにそういった深さにあるものですから、これまで全てリモートセンシングで研究されてきたわけです。この「ちきゅう」の登場によって、ついにその深さにメスが入れられる時代が来たということで、これはまさにかつてないことが可能になってきたということであります。
 それでIODPというのは世界中の研究者が一体どこでこういったサイスモジェニックゾーンを研究するのに一番いいんだろうかということをさんざん国際ワークショップを何度も開いて議論したのであります。最終的に日本海溝、南海トラフ、あるいは中米のコスタリカ、あるいは北米のカスカディアに絞られてきまして、さらにその中でも確実に巨大地震断層、つまりマグニチュード8クラスの地震断層に今現在くっついているところですね、海側のプレートが陸側のプレートの下に沈み込みたいんだけれども、陸側とひっかかって地震の準備過程にあるようなところというと、何といっても南海トラフであるということでありまして、そこがターゲットになってその後数年間の周到なる準備期間、それから当然掘削するに当たりましてはこの海域の調査を何度も何度もやらなければいけないわけですけれども、そういったことを経て今日を迎えており、さらに21日から、まさに来週ですが、「ちきゅう」がここについにその最初のIODP航海に行くという状況になっているわけであります。
 ですから、今キーワードをいくつか申しましたけれども、サイスモジェニックゾーンに直接到達するということと、そこがマグニチュード8クラスの巨大地震を起こすということであり、また日本にとりましては東南海・南海地震が連動して起きれば50兆円の被害が試算されているようなところでありまして、そういったところの地震というのは、おそらく短い数十年の間に起きるのではないかと思われているわけですけれども、その際においてはぜひ減災に役立つ情報を出したいとも思っているわけです。
 したがいまして、一筋縄ではいかない計画でありまして、それでステージ1、2、3、4と分かれております。これだけコミットするというのはこれまでの学術掘削計画の中ではない初めてのことでもあります。ステージ1については先ほど平さんから説明がありました。そこに漫画がありますけれども、海側の NT1‐01という呼び方していますけれども、そこからずっと左のほうへ陸に向かって6本書いてありますけれども、これが現在計画されている、サイトと呼んでいますけれども、場所でありまして、そこの孔の状況を子細に調べると。実際に掘削してみて調べるということで、まず全貌をつかみましょうということです。それを踏まえて次のステージにいきまして、そこで先ほど来、質問がありましたけれども、ここでライザー掘削をやるということであります。ステージ2で学ぶことがきっといろいろ出てくると思いますけれども、それを踏まえてステージ3では、NT3‐01をごらんください。プレート境界、年間約4センチの速さで海洋地殻が沈み込んでいるという矢印の先ですが、そこにライザー掘削をして、ずばり地震断層の物質をとってこようということで、これに成功しますればまさに世界で初めて生きた断層の固着しているところをとることになるという仕掛けであります。それだけでももちろん大変な情報を地震の研究者にもたらすんですけれども、そもそも全体の場が時々刻々どういうふうに変化しているかということも極めて関心事でありまして、皆さんご承知のように陸上ではもう日本では世界有数の地震のネットワーク、GPS地殻変動ネットワークがしかれていまして、時々刻々何が起きているかわかるわけですけれども、残念ながら海の下は全くそれがないわけでありまして、我々はそういったネットワーク展開にもぜひこの「ちきゅう」の活躍を期待しているわけでありまして、ステージ4では非常に深い孔の中に計測器を挿入いたしまして、これを何年にもわたって継続観測することによって、このプレートが時々刻々動いているのを、それに従ってひずみが蓄積していくわけですけれども、その蓄積の実態をつかみたいということで、これは簡単ではありません。現在いろいろ早期開発に着手しているところでありますけれども、非常に高温・高圧の中での計測をしなければいけませんし、また何キロにもわたってデータを海底に持ってこなければいけない。でき得るならば、それをリアルタイムで陸上にも届けたいということでありますので、大変チャレンジングでありますけれども、ステージ4に至るときにはそういったことまで実現したいと考えております。これによってマグニチュード8の地震が、ふだん地震が起きてないときにどうやってひずみをためていて、そのメカニズムが何であるか、そういったことが現在地震学で作られている物理モデルにのるのかのらないのか、のらないとしたらのるようにどういうふうに変えたらいいのかということと、それが時々刻々変化していくのがファイナルブレーキングポイント(地震発生)にどうやって至るのかというところまで追いかけていきたいという計画であります。
 5ページの右下に明らかになったゆっくり地震というのが書いてあるんですけれども、南海トラフというのはマグニチュード8クラスと申しましたけれども、基本的にマグニチュード8クラスの地震が百数十年の間隔で起きて、その起きてない間は何も起きてないというのが通常の常識だったんですけれども、最近、先程申し上げました陸上の観測網の発達によりまして、多少は海側で起きているようなことも見えるようになってきまして、それによりますと、陸の真下のほうでも、深いほうでもそうなんですけれども、非常に浅い、プレート境界が、地震発生帯というのが赤い線で、浅いほうが点線になっていますけれども、どうもこの点線のあたりで通常の地震とは異なる非常にゆっくりした動きがあると、それを「ゆっくり地震」と書いてあるんですけれども、らしいということがわかってきまして、これは現在起きている現象ですので、まずはとにかくこの「ゆっくり地震」に関しての成果が期待されると思っています。この「ゆっくり地震」がいったいひずみ蓄積解放にどんな役割をしているのか、地震を起こすどういう引き金になるのかならないのかという知見を得るためにも、そういったことの実態を詳しく調べることが重要であり、それにはまさに現場に行くのがよろしいということで、そのためにも役立つと思っております。
 以上です。

【長谷川主査】
 どうもありがとうございました。ご質問、あるいはご意見どうぞ。

【今脇委員】
 ちょっと素人の質問なんですけれども、この深い3,000メートルとか6,000メートルというのは、NT2‐03とかNT3‐01のこの2つぐらいが中心なんですか。

【末廣委員】
 そうです。

【今脇委員】
 この1回掘った孔というのは確保しておいて、だんだん深くしていくものですか。それともこの場所の近くで新たに掘り直すんですか。

【平(朝)委員】
 いろんなやり方があると思うんですが、ケーシングを無限の量使うわけにもいきませんので、たくさん掘ればそれだけケーシングが必要だということになるので、あるところまで掘って、多分それを3,000メートルで半年以上、6,000メートルだったら1年半ぐらいかると思うんです、1つの孔を掘るのに。そのままずっとい続けるということは、先ほどの漁業もあるし、それから台風の問題とかいろいろあって、海域を離れることは必ずしなきゃならないので、いったん掘ってふたをして、下にセメントを置いて孔内を安定させておいて、また帰ってきて、それで何カ月か後にまた掘り出すということをやっていくと。それをただ1つの孔でやるのか、途中で調子が悪くなってもう1回掘り直すのか、それはいろんな状況があると思いますけれども、やり方として連続操業はしたいができませんので、できるだけ少ない孔を使いながら、ある期間おきながらずっと掘っていく。そういう操業になると思います。

【今脇委員】
 それからもう1つ、2‐03、3‐01が中心というのは分かるんですけれども、他に沖のほう短いのがいくつかありますね。これの目的というのはどういう目的なんでしょうか。

【末廣委員】
 これは要するに物質的にはプレートが沈み込んでいくわけですから、もともとはNT1‐01とかNT1‐07にあった物質が、だんだんプレートが沈み込むとともにNT3‐01のところにやってきて、なぜか地震を起こす能力を持つわけですね。ですからだんだんこの物質が圧力条件で、あるいは脱水とかいろいろ物理的な反応で変えていくわけですけれども、それの急所のところをつかまえて、どうやって地震発生能力を獲得していくかというのを見ましょうと。これは実際に検証するには実験室での実験とか、そういったことを使わないといけないんですけれども、まずそのものがないものですから、それを得ましょうと。

【今脇委員】
 簡単にいうと、じゃあ昔ここら辺を通ったやつがNT3‐01とかの下にもぐっていると。昔のやつと今あるのもあんまり変わらないだろうと。だから今あるやつを調べたら、昔このあたりのものが、そのようなものが来たんだという前提でいくわけですね。

【末廣委員】
 はい。

【長谷川主査】
 他に。

【石田委員】
 参考資料3の12ページの19年度掘削地点で黄色と緑色と紫色ですか。例えばNT2‐03というので、最初にパイロットとして1,000メートル、それからAとして1,000メートル、この色が変わっているのはどんどん足して、これだけの深さに掘るという意味ですか。この表の見方を教えていただきたいんです。

【平(朝)委員】
 NT2‐03で、パイロットホールで、(1)1,000メートルとありますけれども、これは1,000メートル掘るということです。パイロット的にいくつかのLWDのシンプルな機械をつけて密度などを当然測りながら掘っていって、1,000メートル掘るということです。同じサイトのLWD(4)でまた 1,000メートルと書いてありますけれども、今度は100メートルか150メートル隣の地点、我々はサイトとしては100メートルぐらいの範囲では同じだというふうに大体考えますので、それは選び方は下の音波探査を見ながらちゃんと決めますけれども、そこでまた1,000メートル掘ると。だからこれは同じ孔ではありません。周辺の100メートルぐらいの円の中で掘っていると考えていただければ。

【石田委員】
 じゃあ、その右の(9)(10)(11)もそういう……。

【平(朝)委員】
 全部そういうことです。

【石田委員】
 そうしますと例えば、NT2‐03とかNT3‐01、この一番下までいくのはここのステージじゃなくてもっと後の時点でという意味ですね。

【平(朝)委員】
 そういうことですね。

【長谷川主査】
 どうぞ。

【松本委員】
 ステージ1、2、3、4とありますのは、これは大体年度のくくりということでしょうか。今年度ステージ1でレグ1、2、3……。

【平(朝)委員】
 ステージ3はそう簡単にいかないのではないかな。何せ6,000メートルですので、単年度でカバーできないなというのが僕の感触です。やってみなきゃわかりませんけど。

【松本委員】
 それと掘削地点ですが、以前の議論で黒潮の流路によってはこのサイトを変えなきゃいけなくなる可能性もあるという話があったと思うんですが、今年の見込みはどうなんですか。

【平(朝)委員】
 今3カ月予報というのをやってもらっていますけれども、ぎりぎり、ちょうど流軸とそうでないところのバウンダリーぐらいにちょうどこれがあって、ちょっと南に今、流軸があるんですけど、それは動きますのでどうにも言いがたいところがあるんですが、ライザーレスでやってみて、それから今、強潮流対策をいろいろやっていまして、ライザーにフェアリングという鳥の翼の断面になるような流線形の羽をつけて渦抵抗、渦振動をなくそうというような強潮流対策もいろいろしていますので、どれだけ効果があるかということはこれから試していかなきゃならいないんですが、できるだけ頑張りたいと。あまり頑張りすぎるとライザーをボキっと折ったりしますので、そこもうまく兼ね合い、そこら辺の強潮流下での本当の「ちきゅう」の操業の仕方というのはこれからのノウハウだと思いますので、今のところ黒潮があるからここは掘れないというふうには思っていません。ただ厳しいというふうには思っていますけれども。

【渡邊委員】
 前のケニア沖の結果を拝見すると、潮流の中でかなり掘られていますが、3ノットというのは今想定されている……。

【平(朝)委員】
 3ノットというのは大体この付近では黒潮の端ぐらいになればもう常時流れているので、ケニア沖ではいったん設置すると結構ライザーは頑張れるんですよ。設置するまで500メートルぐらい潮があって、その中を15メートルぐらいの高さで幅5メートルもあり300トンもあるようなBOPが降りていくわけですよね。そのときに潮流で非常に曲がるので、ケニア沖ではどういうことをやったかというと、上流に位置して、それでゆっくりドリフトしながらその地点まで持っていって最終的に設置したというので、そういうこともできますねと。ですが、そのドリフトの仕方もあまり流軸の真っただ中はやりたくないのでうまくやって、まあ、サーカスみたいな。そういうことも今いろいろ考えています。

【長谷川主査】
 どうぞ。

【岡田委員】
 細かいことなんですが、今のヘリポート新宮、これは海の中にあるから多分ずれているんでしょうが、それでこの位置、サイトの位置は大丈夫ですよね。

【田中CDEX企画調整室長】
 サイトの位置は大丈夫です。

【岡田委員】
 それをちょっと確認したかったので、これしかデータがないので。じゃあサイトの位置はこれで間違いないと。

【平(朝)委員】
 はい。

【長谷川主査】
 ほかにございますか。

【佐藤委員】
 計測システムについて教えていただきたいんですけれども、イメージとしてはケーシングをずっと決めていって、最後の一番下を裸孔にしておいて何かを設置する、そういうことでよろしいんでしょうか。

【末廣委員】
 いえ、せっかく長大な長さがありますので、この中のキーポイントで計測ができるようにしたいと思っていまして、例えば傾斜計を複数つなげて何層のレベルでもはかれるようにするとか、そういったことを今計画中です。

【佐藤委員】
 浅いところもいろいろ見れて、それには圧力とか流体、メカニカルなものだけではなくて、浅い部分にたまっている流体の圧力ですかと温度ですとか……。

【末廣委員】
 温度、圧力は最も基本的に計測しないといけないと思っていますので。

【佐藤委員】
 それも含めているということですか。

【末廣委員】
 はい。

【平(朝)委員】
 それを1つの孔で全部やれればいいんですが、裸孔あるいはケーシングに孔を開けておいてその部分をパッカーでとめて測ったりという、いろんなやり方があるので、場合によってはマルチプルな孔になるかもしれないし、ちょっとその辺のところは研究者の要請と、浅いところでやるのは比較的簡単にできるんだったら、ほかにもう1本孔を掘ったほうが、深い孔に全部押しつけるよりも、いいかもしれないです。いろんなやり方があると思うんですけど。

【佐藤委員】
 データのサンプル密度みたいなのは、もう検討を始められているんでしょうか。

【末廣委員】
 ちょっと私は子細にかかわっていないんですけれども、非常に計測間隔を密にサンプリングしたほうがいいと思っております。というのはこれまでに温度、圧力計測を別の孔でやっていまして、それは結構ダイナミックな現象をつかまえていますので、非常に早いサンプリングでないとそれを逃しますので、特に先ほど申したゆっくり地震というのは圧力計測でもひっかかると思いますので、早いサンプリング……。

【佐藤委員】
 具体的にいうと、5秒とか……。

【末廣委員】
 いえ、秒以下で。

【長谷川主査】
 どうぞ。

【松田委員】
 海底ケーブルネットワークシステムを敷設するということですけれども、これは大体どのような構想でネットワークを張っていくことになるんでしょうか。

【末廣委員】
 これは現在、文部科学省からの委託事業で、昨年度から海洋研究開発機構他大学で受託しておりまして、これは紀伊半島沖のまさに掘削サイト、熊野灘のあたりを広域にカバーするように20点の地震計、津波計を展開して、100キロ掛ける100キロぐらいのエリアをカバーするという構想です。2010年から運用開始という計画でおります。

【松田委員】
 そうするとこの地域に張っていくということで、掘ったところが必ずしもノードとは限らない。

【末廣委員】
 ただ掘ったところがノードにかかるようには計画しております。

【長谷川主査】
 このパンフレットの説明なんですけれども、ステージ3のところで掘削後に長期にわたって孔内で観測を行えるシステム‐それが多分、長期孔内計測システムですか‐が技術開発されるまで、数年間設置することを計画していると書いている。ステージ4で、将来的には今のネットワーク云々と書いてあるんですが、このまま字のごとく読むと必ずしもよくわからないですよね。ご説明いただけるとありがたいんですが。

【末廣委員】
 ちょっと日本語がおかしいですね。

【長谷川主査】
 これにこだわらずにどういうふうにお考えになっているのか。

【末廣委員】
 要するに掘削孔内ステージ3がいわゆるDONET(海底地震・津波観測ネットワークシステム)ですね、あれの完成とどうタイミングが合うか合わないかという話で、どっちが先ほどになってもいいように、もちろんこっちのステージ3のほうが先になれば当面オフラインで観測せざるを得ませんから電池で電源供給しなきゃいけなくて、それを終わった後、海底ネットワークのほうができればそのつなぎをやるし、こちらが先に敷設されていればいきなりつなぐことを、もちろん計測システムがちゃんと働くということをチェックしてからですけれども、つなぐという、そういった意味だと私は……。

【長谷川主査】
 それ、(調整が多そうで)結果として難しいと思いますね。

【平(朝)委員】
 日本語がおかしくてすみません、私が全部チェックしていなかったんですけど、ステージ3で掘った孔に関して、今いろんなテレメトリーシステムとかそういうものを開発しているので、初期の段階で開発したもの、プロトタイプのようなものをまず入れておいて、ステージ4で本格的なシステムが開発された段階にはその2つの孔に入れていくということなので、2段階ぐらいで初めのプロトタイプと本格タイプと分けてやりましょうと。ステージ4は本格タイプですよというような意味で書いていると思いますが、必ずしもその計画自体、完全に決まったわけではなくて、今どのように準備しているかということをやっていますので、末廣理事を中心にチームをつくって、大学研究者を含めて。今、我々のほうではIODP-MIから技術開発費をいただいて、先程言ったデータ通信の部分を開発している。それにどのようなセンサーをくっつけて、どこの深さで何を測るのかというのをデザインすると。それにはある程度、地質情報がわからないとできないと思うんですよ。2‐03とか3‐01というのはそもそもどういう岩石でできていてということがまだわからない。ちょっと話題がずれるかもしれませんけれども、3‐01と2‐03というのはいわゆる古い付加体があって、こちら側に新しい付加体が全面に発達して、その地質境界にもなっているというふうにも思っています。要するにそのような地質学的なバックグラウンドになる情報をやっぱりしっかりつかまないと、どの深さでどういう計測をするということに関してもほんとうのデザインはできないので、そういう情報をとりながらフレキシブルに対応できるような孔内システムをつくっていくということかなと。

【長谷川主査】
 どうもありがとうございました。他にございますでしょうか。

【伊藤委員】
 「ちきゅう」の運行のイメージを教えてほしいんですけど、3カ月は漁業の関係でできないというお話。

【平(朝)委員】
 少なくとも南海トラフのこの場所では3、4、5の3カ月間はできません。

【伊藤委員】
 南海トラフでやられるのは5年間という。

【平(朝)委員】
 延べですね、延べ5年間で……。

【伊藤委員】
 予算との関連なんでしょうか。それともある程度の計画はお持ちなんでしょうか。

【平(朝)委員】
 今年度はもちろん決まって、来年度に関してはまだ、財務と今やり合っている最中でございますので、それを見ながらやっていくということだと思います。

【長谷川主査】
 どうぞ。

【石田委員】
 パンフレットの5ページですが、NT3‐01とNT2‐03だけケーブルが出ています。そのほかに関しては観測計器設置のみでケーブルでデータをとる予定はないということですか。それともこれは海底ネットワークとの関係で決めるのであり、もっと沖合のほうのNT1‐01とかNT1‐07とかこういうところはケーブルでデータをとるようなことは考えてないということですか?

【末廣委員】
 図がないんですけれども、たしかNT1‐03ぐらいまでは届いていたと思いますけど。

【石田委員】
 そのくらいまではケーブルで、リアルタイムでデータをとる。

【末廣委員】
 はい。

【長谷川主査】
 どうぞ。

【鈴木委員】
 ステージ1の段階でもたくさんのコアリングをしてたくさんサンプルをとるわけですが、末廣理事のほうから地震発生メカニズムということをテーマでずっとお話しされたんですけれども、もちろん地震発生のメカニズムを解明することは大きなテーマですからもちろんなんですが、今度実際にとられたこういったコアをほかの研究に用いるとか、そういうことも計画されているということなんですか。

【平(朝)委員】
 はい、ご存じのようにこれはIODPのサンプルリクエスト、プロポーザルベースと全く同じあれでやりますので、乗船研究者がプライオリティーを持っていると。それから乗船研究者プラス私の記憶では70ぐらいの陸上で研究のプロポーザルが出ていて、ですから乗船研究者60名ですから77とか、全部で140 とか150近い全体のプロポーザルサンプルリクエストが出ていて、その中には地震研究だけじゃなくて微生物研究とか多岐にわたった研究内容が含まれているということです。

【鈴木委員】
 そうするともちろん中心は地震だけれども、サンプリングについてはいろんな方向で活用するということですね。わかりました。

【長谷川主査】
 よろしいですか。他にございますか。それでは、どうもありがとうございました。
 次の議題に進めさせていただきます。4番目、IODPに関する広報活動について。前回の第9回の委員会以降、どのような取り組みがなされているか、まず最初に文科省の取り組みについて事務局のほうからご説明をお願いいたします。

【宿利企画官】
 資料10‐4でございます。文部科学省のクレジットでプレスリリースをやっているサンプルということでございまして、これは今年の6月に行った例を事例としてつけてございます。中身は先ほど申しました北極海の掘削航海を3年前に行った、北極点を横断するロモノソフ海嶺上を海底を掘削したという研究成果を踏まえまして、ヨーロッパの研究者が今年の6月に科学誌「ネイチャー」にその研究成果を公表するという情報が入りましたので、IODPプロジェクトで出てきた科学成果を日本国内にもお知らせするために、文部科学省のほうで発表の原文を翻訳して情報提供致しております。
 3枚めくったところに発表文の訳をつけてございまして、その後ろの地図のところに書いてございますけれども、昔、北極海はいわば閉鎖された陸封された湖沼状態だったのが、フラム海峡というところが約1,750万年前に開いて、酸素を豊富に含む海へと環境が変わったということが「ネイチャー」に掲載された。北極海自体の掘削事例が今までなかったということで、ここでわかる成果というのが非常に革新的な内容であるということで発表したものでございます。後ろのほうには掘削航海をする平成16年当時の航海の公表資料で、一番後には北極海の研究にかかわった日本の研究者の方から成果、意義等を記述いただいて、わかりやすく公表するように努めているところでございます。
 この他文部科学省では、この研究航海が行われる前に日本からはどのような乗船研究者の方が乗船される予定か、あるいは先程ございましたJ-DESCの活動の一環で既に終わった研究航海の成果を報告する機会がありますので、そうした成果、報告の機会をプレス、メディアのほうに文科省から情報提供するのが、私どもからの広報普及活動の中心でございます。
 簡単でございますが以上です。

【長谷川主査】
 どうもありがとうございました。続いて、JAMSTECの取り組みについて、CDEXのほうから田中室長、お願いします。

【田中CDEX企画調整室長】
 参考資料4をもとにご説明させていただきます。
 IODPに関する広報活動につきましては、昨年度まではCDEXの中に主体的な広報チームを設けましてやってまいりましたけれども、今年度からは CDEXは本格運用ということで、運用により集中するということで、広報活動、報道活動はJ-DESC及び本部の広報、本部の報道というところで、機構全体としてIODP広報活動をやりましょうという体制になったということを1つ申し添えさせていただきます。
 なお、1番の普及・広報イベントに関しましては、J-DESCと連携しましてやったことでございます。要点といたしましては、大学と博物館、科学館が連携し、とりわけ若手の学生さんの勧誘・啓蒙を連携してやったという実績でございます。あとは博物館、科学博物館等々は連携して、今そちらの博物館も非常に地下、あるいは南海トラフに興味を持っていただいておりますので、企画展をやらせていただいています。学会等でのものは国内では地球惑星科学連合を中心としたのを1つ重視しておりますし、外国ではAGU及びアジアとしてAOG、この3つにつきましてとりわけ重視してIODPの広報をやっております。
 報道につきましては、一番後の表が今年度の実績、8月末までの実績でございます。この後、「ちきゅう」が8月28日に戻ってきまして、関連の南海トラフ関連の状況をご説明しておりますが、「ちきゅう」というものが目の前にきますと、いろんなプレスの問い合わせが急に多くなっておりまして、あるいはウェブのアクセスなども「ちきゅう」が日本から離れていると少ないんですけれども、いよいよ7月、8月になりまして、だんだんとウェブのアクセスが多くなって、国民の皆さんの南海トラフに関する関心が非常に高まっていると考えております。あと、もう1回、来週でございますが、「ちきゅう」の出港式が、入港式と IODP開始式というのが来週日曜日に新宮で予定されております。そこにもまたたくさんのプレスの方々が来られますので、やはりいろんな特集号等々を書いていただけるものと考えております。
 以上でございます。

【長谷川主査】
 どうもありがとうございました。ただいまのご説明に、質問あるいはご意見ございますでしょうか。

【今脇委員】
 今、出港とおっしゃったが、新宮から出るんですか。

【田中CDEX企画調整室長】
 そうです。今まで本牧にいまして、本日の朝に本牧岸壁を離れまして、最後の洋上の積み込みをしました。そして10時半ぐらいに抜錨をいたしまして、航路で新宮に向かいました。一応、金曜日の朝に新宮に着くということを予定しております。新宮の出港は一応9月21日を目途としております。また、その間には、今申しました9月16日の出港式、IODP開始式のほかに出港日の前日9月20日になりますと各国からの研究者が「ちきゅう」にいよいよ乗り込んできます。その研究者たちを激励するためにJ-DESCが主催となり研究者激励会を……。

【今脇委員】
 それは新宮でやるわけですね。

【田中CDEX企画調整室長】
 そういうことです。ささやかではありますが、心のこもったものをさせていただくということでございます。

【長谷川主査】
 ほかにございますか。

【川幡委員】
 先ほどの文科省のプレス発表がありましたが、私、8月にIMI主催の評価会議のほうに行きまして、IODPになってから環境関係のレビューコミッティというのがありましたので、そのときに出た話題を少しお話しいたしたいと思います。
 北極海のリグに関しましては、非常に画期的であるという評価が皆様のところから発言がありました。「ネイチャー」は今のところ5本発表されておりまして、最大の成果は今から8,000万年から1億2,000万年前の白亜紀という時代は非常に暖かくて、極域でも17度とか18度‐今の北極とか南極ですね ‐あったが、新生代6,500万年くらいにどんどん冷えていって現在みたいな海になってしまったと言われています。そのプロセスの中で南極がまず冷えて、 4,000万年とかそのあたり。それで、北極は暖かかったんじゃないかと。それは諸説ありますが、例えば1,000万年までは暖かかったと。この航海によりまして、大体4,000万年くらい前からもう北極も寒くなってきたということが明らかになりまして、基本的に地球は南極と北極とほぼ同時に冷えていったというのが最大の成果だという認識で皆さん一致したと思います。IODPになってから非常に画期的な成果の1つとして非常にいいんじゃないかということを指摘したいと思います。
 以上です。

【長谷川主査】
 どうもありがとうございました。
 広報活動の中で大学キャンペーン、博物館キャンペーン、博物館IODP関連展示見学者と書いてありますが、キャンペーンというのは具体的にどんなもので、関連展示見学者というのはすごい人数で……。

【AESTO】
 キャンペーンというのは主にJ-DESCの会員機関、IODPを中心に推進していただいている大学、機関のほうに、IODPで活躍している研究者を招きまして、学内で地球科学を専攻している学生、もしくは他の関係学科の学生を対象にIODPの研究の内容と仕組み、そして若い方がいかにIODPに参加できるかというのをわかりやすくレクチャーするという内容となっております。大学のほか一般の方を対象に大学もしくは付近の科学館にて小さなブース展示を行いまして、一般向けのわかりやすいレクチャー会などを通して「ちきゅう」の活躍、今後予定している活躍等をわかりやすくレクチャーしたものです。

【長谷川主査】
 どうもありがとうございました。今後、南海トラフの掘削が始まるとそれだけで非常に注目度が高くなると思うんですが、そういったものと別に、今までこうやられてきたような活動というのは今後どうされるんですか。今の「地球の記憶を掘り起こせ 大学&科学館キャンペーン」とかやられてきましたけれども、例えばこういう活動というのはこの先はどういうふうにお考えになっていますかという質問なんですけど。

【平(朝)委員】
 まだJ-DESC等と十分その点は話してはいないんですけれども、今までやってきたのは一種のプレイベントといいますか、残念ながら「ちきゅう」の研究成果はまだ出ていない段階での、ある意味ではこういういいことがありますよという話が中心だったので、成果が出てくれば、もちろんIODP全体、ほかの船にもありますけれども、「ちきゅう」の実際の乗船体験とか自分が乗った研究がいかに進んだかという話も含めて、より具体的な話ができると思いますので、そういうことをもう1回、次のシリーズでぜひ普及をやっていきたいなと思っております。
 IODP広報活動に関してちょっと追加なんですけれども、実はアメリカのスミソニアン博物館のほうで、スミソニアンのほうの展示を一部大改造して海のフロアといいますか、オーシャンに関する展示スペースをつくるという構想があって、それに関してスミソニアン博物館のほうからコンタクトを受けていまして、「ちきゅう」の模型をつくって引き渡すべく、調整している段階で、ただ向こうの展示の進行が少し遅れているようなんですが、スミソニアンのほうではオーシャンサイエンスのスペースの一部、できるだけ目立つところに「ちきゅう」の模型をちゃんと飾って、IODPの展示等々もすると言っていますので、世界の人が訪れる場所ですので極めていいことではないかと思って我々も協力するということで進めております。情報です。

【長谷川主査】
 どうもありがとうございました。

【宿利企画官】
 文科省としましても、「ちきゅう」がようやく長年をかけて国際運用をこれから始めるということが非常に注目を浴びるいい機会でもございます。掘削をして本当の科学成果が出てくるにはやはり期間を必要とするんだとは思うんですけれども、その前に動き始めたということ、それからコアを掘った、そういうことを節々でタイムリーに情報発信をしていくというのは非常に大事なことだと考えておりまして、関係の方とも相談しながらその辺を取り組んでいきたいなと思っております。
 関連しまして、先程予算との絡みの話がございました。南海掘削につきましては、もちろん自然、天候なりいろんな要素もありますし、財務省との予算折衝によってくる部分はございますけれども、できるだけ、私どもとしてはおおむね4年ですとか、可能な限りは集中的に成果を出していけるようなことを目指していきたいなというふうに考えているところでございます。

【長谷川主査】
 どうもありがとうございました。他にございますでしょうか。広報活動は非常に重要ですので、引き続いて積極的に取り組んでいただけたらと思います。
 それでは、よろしければ次の議題に進めさせていただきます。議題5、IODPに関する研究推進体制について、どのような取り組みがなされているのか、日本地球掘削科学コンソーシアムJ-DESCのIODP部会長である川幡委員のほうからご報告いただきたいと思います。

【川幡委員】
 J-DESCは国内の46機関、大体1口10万円ですけれども、それを毎年払いまして会員機関の掘削科学を推進するために活動しています。また、資金は別途、JAMSTECさんのほうからAESTOさんへの委託、それを通じてもお金をいただいています。
 活動といたしましては、掘削科学全般でありますが、もうちょっと具体的に申し上げますと、例えば先ほど来の「ちきゅう」への乗船者の推薦をしたりとか、事務処理はAESTOさんなどがしていただいていますけれども、あと国際的なワークショップをしたりとか、国際委員会に派遣する人を決めたりとか、毎年乗船者も100名とか数十名派遣しておりますし、これまで国際委員会にも100名以上派遣しています。J-DESC、この4月から仰せつかりましたが、第3 期目となっています。国際線の飛行機でいいますと、今まで上昇してきてこれから巡航状態、「ちきゅう」も今年から稼働になりますし、そういう状態に適した体制をつくるというのが非常に大きいかと考えています。
 まずはその仕組みを確立することと、皆さんからご指摘があります戦略をどう進めていくかというところに焦点を絞ってこの2年間活動していきたいと考えてきました。キャッチフレーズといたしましては、「皆様のためのJ-DESC」、それからあともう1つは、先程巡航状態と申し上げましたが、日々の生活すなわち乗船者を派遣したりとか、そういうところにあまり力を注がないように、というか省力化するように、「誰でもできるJ-DESC」、この2つをキーワードに活動を始めています。
 まず4月に行ったことは、皆様から希望、要望などを集めました。それで文字数にいたしまして大体2万3,000字の資料をもとにすべての活動をやっています。ということで、基本的にボトムアップを全面に押し出して皆さんの要望をなるべく聞くということから出発してきました。
 まずは皆さんからの希望で、例えば航海に行くのに事務処理どうしたらいいかとかわからないときにどこに聞いたらいいかわからないというのがございました。そこで今J-DESCのホームページを開きますと第一面にヘルプデスクというボタンをつくりまして、最近デパートでもコンシェルジュでいかような問題にでも対処しますと、そのヘルプデスクを押しますと、まずAESTOさんにつながります。AESTOさんのほうが、例えば出張関係であったら自分のところ、プロポーザルをどう書きますかということだったらサイエンティストというふうに仕分けまして、すべてに対応できるように現在なっています。
 2番目として省力化ということで、すべて事務処理を、ある程度マニュアル化できるものはすべてマニュアル化すると。Eメールに関しましても会議の何日前にどういうものを出すというのは全部今マニュアル化してあります。
 あともう1つ皆様からの要望で、乗船者及びコチーフのマニュアルをつくってくださいということで、これは今月末までに「ちきゅう」、あと米国船、ヨーロッパ船、それぞれに対して乗船者とコチーフ用の原形のマニュアルをホームページ上に公開したいと考えています。
 3番目といたしましては、これも皆様からの要望で、10万円1口で基金を出しておられますが、還元があまりないと皆さんからのご指摘にありました。まずコアスクールということで、今までコアスクール、高知大さんとかいろいろやっていたんですけれども、それを系統的に基礎のコアスクール、同位体とか微化石、あと地球物理関係、電磁気、学生さんとか若いポスドクさんあたりが勉強できるようなコアスクールをJ-DESCのコアスクールと称して系統的にやっていく仕組みを整えました。それでそこに参加される学生さんに関しましては、今のところ加盟機関の方に関しましては1人あたり8,000円、それを援助するということでお金をバックして、若い人たちがこういう勉強の会に来ていただく手助けをしたいと考えて、実際に7月に支払いました。
 あと皆様から要望がありましたクルーズ関係でございますが、今までクルーズに参加したり、またポスドクの資料をもらいにいったり、またミーティングに行ったりというのはカバーされておりましたが、あと国際委員ですね、今まで強い要望がありました航海の前に事前に皆様が集まってトレーニングを受けたり戦略会議をやると、日本として、航海ごとに。そのための旅費がない、これはぜひともということで、JAMSTECさんの国際課のほうと協議いたしまして認めていただきまして、「ちきゅう」のクルーズから高知のコアセンターにおきまして事前の例えば装置の練習、戦略、あと1日巡検で実際にこういうことを掘るんだというのが陸上に出ておりますので、そういうのを見ていただくと。そういうのをJAMSTECさんからAESTOへの委託経費でカバーできることになりました。
 また、「ちきゅう」に乗るためにはヘリに乗りますが、そのための安全の訓練を受ける必要があります。訓練はCDEXさんの経費で賄われていますが、それに行くため旅費もここから支出できると。また、クルーズから帰ってきた後、1人の個人のデータではなくて皆様のデータを、例えば物性のデータとか、そういうのをとるための分析するための旅費がないということなので、これも国際課のほうで認めていただきまして、一応現在のところ国際委員会とクルーズ関係、すべて最初から最後までカバーできるようになりましたので、「ちきゅう」においてはこういう旅費関係が最終的に成果となって結びつくものと、そのように期待しております。
 次に、J-DESCに関しましては現在口数1口となっておりますが、2口か3口もしたいと希望される方もおりますので、来年の総会に向けて5口でもいいですよというようにしていきたいと思っております。収入が増えた分は、先ほどのコアスクールで学生さんのバイトを雇ったりとかして皆様の権限を削減する方向でコアスクールを盛大にしていきたいと考えています。
 あと海外関係では韓国とのシンポジウム、またJAMSTECさんとも協力して、AESTOさんとも協力しながら博物館とかシンポジウムを開催しています。
 最後になりますが、今半年たちましが、これから1年に関しましては毎月戦略化、皆さん言われている戦略化ということについて、毎月1人講師を招いてそのことについてもっと具体的に議論してもっと発展させていきたいと考えています。
 最後になりますが、皆様への情報発信ということで、毎月A4、1ページぐらいですけれども、Eメールで送って、最初に言いました皆様のためのJ-DESCというのを進歩していきたいと思っています。
 以上です。

【長谷川主査】
 どうもありがとうございました。質問、あるいはご意見ございますでしょうか。
 研究推進の取り組み、いろいろ工夫をされているようですけれども、これまでの当委員会で経費、今の旅費等、そういったことについて何とかならないかとかいろいろな意見が出ていましたけれども、きょうのご説明はその辺のところはご努力の結果ほとんど解決できた……。

【川幡委員】
 ほとんど解決できたと思っています。問題は、あと皆様からのリクエストにある研究費の問題が残っていますが、それは担当も国際課ではありませんので、一応国際課関係では末廣理事のご助言もありまして、うまく今のところいったと思っています。

【長谷川主査】
 それでは、どうもありがとうございました。これで1から5までの議題が全部済みましたが、最後にその他で何かございますでしょうか。

【近藤海洋地球課長】
 本日は長時間にわたりご審議いただきましてどうもありがとうございます。IODP、特に「ちきゅう」のこれからの動きに関しましては、財政の巨費を投じたということもありますし、また非常に夢のあることであるということで、国民の関心も高く大きな期待をしょっておると我々は認識しております。そういう観点からも本日いただいた意見等も踏まえながら、IODPで早期に科学的な成果が上げられるようにJAMSTECと連携しながら取り組んでいきたいと思っております。
 なお、次回のこの深海掘削委員会につきましては、19年度における「ちきゅう」の南海掘削がある程度めどがたつ3月ごろを目途に開催できないかということで今から調整したいと思っておりますので、その際にはよろしくお願いしたいと思います。
 以上でございます。

【長谷川主査】
 どうもありがとうございました。次回まで非常に楽しみなところですけれども、関係の皆様、ぜひ成功をお願いしたいと思います。
 それでは、以上をもちまして本日の委員会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

‐了‐

お問合せ先

研究開発局海洋地球課