深海掘削委員会(第9回) 議事要旨

1.日時

平成18年12月19日(火曜日) 14時~16時

2.場所

三菱ビル地下1階 M9会議室

3.議題

  1. 第8回深海掘削委員会以降のIODPに関する活動について
  2. 地球深部探査船「ちきゅう」の平成18年度運用状況報告
  3. IODPに関する広報活動について
  4. IODPに関する研究推進体制について
  5. その他

4.出席者

委員

 田中主査、森田主査代理
 石田、佐藤、平(朝)、寺島、長谷川、堀、岡田、斎藤、末廣、鈴木、徳山、宮崎 各委員
 平(啓)海洋開発分科会長

5.議事要旨

第8回深海掘削委員会の議事録及び議事概要について

 平成18年3月13日に開催された第8回深海掘削委員会の議事録及び議事概要について、12月26日までに寄せられた意見を反映させて確定することとした。

前回深海掘削委員会以降のIODPに関する活動について

 第8回深海掘削委員会以降のIODPに関する活動について、事務局より関連組織ごとの活動内容等を説明し、ご検討いただいた。

地球深部探査船「ちきゅう」の平成18年度運用状況報告

下北半島東方沖掘削試験の結果について

 平成18年10月に下北半島東方沖において実施された「ちきゅう」の初めての本格的な掘削試験の内容、結果、採取した試料などについて、平(朝)委員より説明され、ご検討いただいた。主な質疑は以下のとおり。

  • 重大なトラブルなく、「ちきゅう」の複雑なシステムの試験を実施できたことは意義があるが、機器の損傷に関しては、2つの低気圧が合体して発達した典型例であり、予測できたという指摘がある。今後の対策を教えて欲しい。(徳山委員)
  • 民間予想会社のデータ及び地球シミュレータによる予測により万全を期していた。発達した低気圧の発生場所が予想以上に掘削船に近かった。BOPの緊急時切離しについて、台風と掘削船の距離に応じたマニュアルを組んでいるが、今後再検証したい。厳しい条件での掘削を試験段階で経験できたことは、非常に有意義であった。(CDEX)
  • 船の上では、海況が今後どう変化するか独自に判断できる能力はあるか。(田中主査)
  • 天候に対する船の安全責任は船長が負う。この判断のため、民間気象予測会社に「ちきゅう」専属の予報官が24時間待機している。船長はこの予報官及び地球シミュレータセンターの担当者と情報交換を行っている。(CDEX)
  • 「ちきゅう」が海外で運用される際、現地の気象状況を正確に予想する能力があるのか。(田中主査)
  • ケニアでは、当地で最も国際的な予想会社からのデータ、JAMSTECの海流予測モデル等により、最大限に得られるデータを得て運用している。(平(朝)委員)
  • 下北沖試験では、J‐DESCから「ちきゅう」の研究環境に係る意見を提出している。研究者がよりアカデミックな活動ができる環境を取り組んで欲しい。(鈴木委員)
  • ロータリーコアバレルでのコア採取試験は今回未実施なのか。(徳山委員)
  • そのとおり。南海掘削のため日本近海に戻ってくるまでに試験したい。(平(朝)委員)
  • カッティングス移送システムで、インプットが多過ぎて処理できなかったという説明があったが、対策を考えているのか。(徳山委員)
  • 比較的単純な方法である一旦タンクに入れるというようなバックアップシステムを含め、抜本的な対策を検討中である。(平(朝)委員)

海外掘削試験の実施について

 下北半島東方沖の掘削試験の後、次の南海トラフの掘削まで可能な限りの技術蓄積等を目的として行っている海外掘削試験について、平(朝)委員より説明され、ご検討いただいた。主な質疑は以下のとおり。

  • アフリカ沖、特にソマリア沖は政情が不安定で、海賊の危険性が高い海域である。天候だけでなく、海賊の情報も適切に集めて運用すべきである。(寺島委員)
  • ケニア沖では、ウッドサイド社が作業の安全、保安に係る責務を負う。ケニア海軍の艦艇が2隻「ちきゅう」周辺に常時待機してテロ対策、海賊対策を実施している。また、「ちきゅう」はケニアの港に1度も接岸しないので危険は少ない。(平(朝)委員)
  • 今回の掘削試験は、国内事業者にも打診したと記載されているが、国内事業者からは何か反応があったのか。(鈴木委員)
  • JOGMECの基礎調査の部門も含め、全ての国内の石油会社に聞いた。残念ながらこの期間で、試験として水深2,000メートルでのライザー掘削を行うという条件を満たすような提案はなく、唯一ウッドサイド社から提案があった。(CDEX)
  • ケニアでの掘削地点の海底のデータはJAMSTECに提供されているのか。(徳山委員)
  • 事前調査はウッドサイド社が実施しており、JAMSTECは「ちきゅう」の性能テストとクルーの習熟という観点だけで掘削を実施している。(平(朝)委員)
  • JAMSTECは専ら運用のみで、石油が出てきた際は、全て契約元のウ社のものとなるということか。(宮崎委員)
  • そのとおり。(平(朝)委員)
  • 今回は掘削試験が目的だが、今後も委託業務を受けるつもりか。(長谷川委員)
  • あり得るが、JAMSTECの自主性が保たれること、IODPの掘削計画に影響を与えないこと等、関係者とその条件を検討する必要がある。(平(朝)委員)
  • 外部資金により「ちきゅう」のクルー等の教育ができているということか。(石田委員)
  • そのとおり。(平(朝)委員)
  • 今回一定期間、外部資金で運用したことが、来年度以降、本来の科学掘削の予算獲得に不利な前例にならないか。中核である科学掘削を大切にして欲しい。(宮崎委員)
  • 独立行政法人の施設を十分に活用するために外部資金を導入することは奨励されるべき。外部資金の獲得により予算が削減されれば独立行政法人のインセンティブとならないこと、税金で造った施設を十分に活用すべきと指摘されている。(平(朝)委員)
  • 独立行政法人にはある程度の裁量がある中、外部資金を導入して非常に効果的に試験を実施している点は評価に値すると考える。今回は試験期間中だったが、今後は、建造目的、海洋機構の設置目的等に配慮しつつ慎重な検討を要する。(宿利企画官)

南海トラフ地震発生帯掘削計画について

 平成19年9月から紀伊半島沖で実施予定の「ちきゅう」によるIODP初の研究航海となる南海トラフ地震発生帯掘削計画について、平(朝)委員より説明され、ご検討いただいた。主な質疑は以下のとおり。

  • 最近、当該海域で既知のものよりも海底下浅部で超低周波地震が見つかっており、これは連続的に発生している。掘削及びセンサー設置により、この浅部で生じている事象を捕捉することが期待される。具体的計画を教えて欲しい。(長谷川委員)
  • 観測装置の根幹になる部分を開発中で、設置する際にどのようなセンサーを設置し、何を観測するかということは、完全な設計ができておらず、研究者と検討中である。DONETとのタイアップも視野に入れて検討したい。(平(朝)委員)
  • 孔内での観測には高温で長期的に観測するという点に技術的に挑戦的な要素があり、その開発が急務である。基本的には広帯域強震計、ひずみ計等を深さ方向に連続的に設置して観測することを検討している。DONET、大学で開発中のGPSの補強等とのタイアップを含め、技術開発上の課題に取り組んでいる。(末廣委員)
  • 地震発生機構を理解する上で、海溝に近い側の海底下で何が起こっているかを解明することが決定的に重要である。ぜひこの計画を推進していただきたい。(長谷川委員)
  • NT2‐03とNT3‐01では検証項目は何か違うのか。(平分科会長)
  • 違いはない。地震発生時にこの分岐断層が動いて津波を起こしていると予想されていることから、この断層の箇所に力学的に解放しやすい性質があると想像され、その性質を掘削により解明するということがNT2‐03の目的である。(平(朝)委員)
  • LWDの実施項目の計画はどのようなものか。(宮崎委員)
  • 科学者から提案を踏まえ、放射能検層、ニュートロン、密度、孔内地震探査等の現状のLWDで測定できるほぼ全ての項目である。(CDEX)
  • IODPのデータは科学的に大変興味深いが、社会貢献の観点からは、地震発生機構解明が期待されている。社会に成果を実感させる発見を目指すべきである。(田中主査)
  • 孔内の検層はどの程度の頻度で行うのか。(石田委員)
  • 測定間隔は検層の種目により違うが、0.5ミリメートル間隔くらいから取れる。細部は検討中で、作業効率と科学者の要望を組み合わせ検討している。(CDEX)
  • 南海掘削中に当初計画より作業に時間を要した場合、どのような対応がされるのか。(佐藤委員)
  • 研究航海の日数には予算及び研究者の乗船可能日数の制限があるため、予備日を含む研究航海計画を当初立案し、完了が難しくなった時点で、最低限の成果を挙げるための研究者の要請も考慮して計画を再考する。通常は当初計画の期間が終了すれば次の航海に移行し、途中で終えた研究航海は、次年度以降検討し直す。(平(朝)委員)
  • 日米欧等の研究者が乗船するIODPでの「ちきゅう」の運航経費は日本が負担するのか。(堀委員)
  • IODPでは、「ちきゅう」運用経費は日本、米国科学掘削船の運用経費は米国、特定任務掘削船の運用経費は欧州が担当する。出版物、採取した試料の管理、そのための電気代及び人件費等は各国分担金による国際的な共通経費を充てる。日本もこのための国際資金の提供を受けている。原則は、10年間のIODP計画期間で日米が均等負担することになっており、「ちきゅう」の運航費は米国の科学掘削船の運航費より高いため、米国は分担金として多くの共通経費を負担する。(平(朝)委員)
  • 来年9月から「ちきゅう」の運用が開始した後、米国の掘削船も活動を再開し、熊野灘で研究航海を行う予定である。(宿利企画官)
  • 乗船研究者の費用は、国際的な共通経費から払われるのか。(石田委員)
  • 研究者の乗船旅費、研究経費等は各国がそれぞれ負担する。IODPで得られたデータは国際的に利用されるため、この管理は共通経費で行われる。(平(朝)委員)

IODPに関する広報活動について

 IODPに関する広報活動について、事務局より文部科学省における取組みを報告した。その後、CDEXよりJAMSTEC、J‐DESCの広報活動について説明され、ご検討いただいた。

IODPに関する研究推進体制について

 IODPに関する研究推進体制について、鈴木委員よりJ‐DESCにおける活動状況が説明され、ご検討いただいた。主な質疑は以下のとおり。

  • IODP‐MIの理事会等で日本からの参加者が日本の利益を考えた行動が取るためには科学以外のJAMSTEC、文科省等関係機関の取組み等に係る情報が必要であり、専門的にIODP全体に関する情報を把握している個人もしくは少数のシンクタンクのようなものが必要であり、無理のない範囲で対応を検討していただきたい。(岡田委員)
  • 今の体制では不十分という指摘について、関係各位と相談しながら、どういう工夫ができるか検討してまいりたい。(宿利企画官)
  • 最も重要なことは科学的成果を日本が上げることなので、JAMSTECにも文科省にも頑張っていただきたい。多くの研究者を巻き込み、成果が上がりやすい体制を考えて欲しい。(田中主査)
  • 関係機関の中で情報を最も集約できるのは間違いなくJAMSTECであることから、今後、理事会メンバーがしかるべき情報を持って会合に出席できるようさらに努力したい。(末廣委員)
  • JAMSTEC、J‐DESC、文科省が連携してうまく機能するためにも、シンクタンクのような組織があるといい。(斎藤委員)
  • 現在行われているIODP‐MIの評価が今後を検討するために有効である。(末廣委員)

その他

  • 国家基幹技術について、大水深ライザー掘削技術、水深4,000メートルからのライザー掘削技術についてしっかり考えて欲しい。「ちきゅう」の運用を始めると運用そのものに目が向いてしまうが、世界に冠たる深海掘削技術を日本が手に入れるためには4,000メートルライザーを開発することを忘れないようにお願いしたい。(徳山委員)
  • 国家基幹技術は、第3期科学技術基本計画の柱の1つである。適切に実施すべきである。(田中主査)

‐了‐

お問合せ先

研究開発局海洋地球課