深海掘削委員会(第5回) 議事要旨

1.日時

平成17年1月24日(月曜日) 15時~16時30分

2.場所

文部科学省 10階 第1会議室

3.議題

  1. 統合国際深海掘削計画(IODP)の2005年度追加計画の概要について
  2. IODPに関する研究推進体制について
  3. IODPに関する広報活動について
  4. その他

4.出席者

委員

 田中主査、森田主査代理
 佐藤、平(朝)、堀、松田、松永、岡田、末廣、徳山、長沼、宮崎、安田 各委員
 平(啓)海洋開発分科会長

文部科学省

 文部科学省、国土交通省、他

5.議事要旨

第4回深海掘削委員会理事録について

 平成16年8月9日に開催された第4回深海掘削委員会の議事録について、1月31日までに寄せられた意見を反映させて、確定することとした。

統合国際深海掘削計画(IODP)の2005年度追加計画の概要について

 第4回深海掘削委員会以降のIODPに関する活動について、文部科学省より関連組織毎に活動内容の報告を行った。また、統合国際深海掘削計画(IODP)の2005年度追加計画の概要について説明を行い、ご審議いただいた。主な質疑は以下のとおり。

  • 2004年11月17日から1月8日にかけて行われた大西洋中央海嶺での航海はどういった内容であったのか。海底に露出したマントルを採取したのか。(平(啓)分科会長)
  • 中央海嶺付近において、海底の拡大に伴ってマントル物質が海底面近くまで盛り上がったオーシャンコアコンプレックス(OCC)での掘削である。(文部科学省)
  • 通常は6,000メートル程の海底面から5,000メートル程掘らないとマントルには到達しないが、OCCではテクトニクスの関係でマントルが持ち上がっており、比較的浅いところでもマントル物質が採取できると考えられている。(徳山委員)
  • マントルが本来の位置から構造運動で表面近くに上がってきているため、物性は相当変化していると思われる。(平(朝)委員)

IODPに関する研究推進体制について

 IODPに関する研究推進体制について、徳山委員より日本地球掘削コンソーシアムにおける活動状況をご報告頂き、各委員にご審議頂いた。主な質疑は以下のとおり。

  • 参考資料2の1)に列記された各活動に関して、期間や参加人数といった情報も記載されていると分かりやすい。(平(啓)分科会長)
  • 1)は平成17年度も同様に行われるのか。(平(啓)分科会長)
  • 詳細は未定だが、来年度も行いたいと考えている。(徳山委員)
  • 科研費の時限付き分科細目を扱うのは学術会議だと思うが、学術会議の分科会で第1位として推薦されたのか。(田中主査)
  • 現在のところ第1位で推薦をいただいている。その他にも、科学研究費検討委員会からも推薦をいただいている。(巽博士(J-DESC))
  • JAMSTECのIODPに対する研究体制について、ここで現状を報告させていただきたい。JAMSTECは昨年4月に独法化し、7月に体制を整え7つのセンターを設立したが、この内、IODPに関連するものとしては、「ちきゅう」を運用するCDEXの他に、地球内部変動研究センター(IFREE)及び極限環境生物圏研究センター(XBR)がある。特にIFREEに関しては、JAMSTEC所有船舶の運用を担当する海洋工学センターと協力し事前調査への有効活用を行う、あるいは高知コアセンターと共同研究を行うなど、IODPに対し積極的に関わることを視野に入れている。また、IODPの掘削提案に関しては、相応の準備が無いと立案が難しいことから世界的にも提案が出にくい状況となっているが、これを打破するためIFREEが中心となり長期的ビジョンを持ちつつ掘削提案を作成したいと考えている。掘削提案の素地となる事前調査、掘削提案そのもの、及び掘削後のコアの分析の全てに力を注げる体制を現在構築中である。(末廣委員)
  • 高知コアセンターに関しては、先ず、昨年11月から全国共同利用体制をとり20件ほどの公募があった。但しその多くはIODPに直接結びつくようなものではなく、個別の研究課題であった。また、今年度末にはコアの基礎物性計測のためのスクール開催を予定しており、来年度には微化石のスクールを行いたいと考えている。(安田委員)
  • JAMSTECの高知コアセンターへのサポートに関しては、CDEXを中心に技術補佐員派遣による機器のキャリブレーション等についての協力を行っている。また、DSDP、ODP時代のコアについても国際的に再配分し高知コアセンターにも保管すべく文部科学省と検討しているところである。(平(朝)委員)
  • IODPの研究体制については、前回に比べれば明るい見通しとなっているがまだ問題もある。深海掘削によって得られる新しい知見には地球科学の最大の問題も含まれており、非常に重要であることから、今後も継続的に審議していきたい。(田中主査)

IODPに関する広報活動について

 IODPに関する広報活動について、事務局より文部科学省における取り組みを報告した。その後、平(朝)委員より海洋研究開発機構を中心とした国内関係機関における検討状況をご報告頂き、各委員にご審議頂いた。主な質疑は以下の通り。

  • 北極海の航海の際には、乗船した筑波大学の研究員が科学技術館のホームページにデイリーレポートを掲載していたが、臨場感があり、大変反響があったとのことである。このような方法も広報には有効ではないか。(徳山委員)
  • IODPキャンペーンについて、「IODP大学&科学館キャンペーン」というタイトルでは何のことか分からない。もう少し工夫して分かりやすいタイトルにしてほしい。また、インターネットの検索に関しては、例えば「ちきゅう」という語句から検索することによって平易にCDEXのホームページに行くように検索エンジンにお願いするのか可能か。(平(啓)分科会長)
  • IODPキャンペーンのタイトルについては、現在、「ちきゅう」一文字のポスターを作成しているところである。また、国立科学博物館にて昨夏キャンペーンを行った際には、タイトルとして「地球の記憶を掘り起こせ」を使用している。(巽博士(J-DESC))
  • CDEXのホームページに関しては、一般の方は「地球を知る」といったようなIODP関係者とは違った語句を用いて検索する可能性も考えられるため、この点も併せて現在検討している。(平(朝)委員)
  • 検索エンジンにおいてはヒット数により優先順位が上がるため、先ずはヒット数を上げることが重要と考えている。また、特定の単語ひとつを以て検索することは、逆にその単語を知らない場合は検索が不可能になってしまうため、一般的な「地球」、「深海掘削」といった単語で検索をした場合でも上位にヒットすることが重要と考えている。(川村氏(CDEX))
  • 広報やインターネットに限らず、内部の専門家と一般の方々の認識には、大きなずれがあると考える。他のイベントの際には新聞社とタイアップし新聞社の柔軟な発想と専門家の意見を交えて言葉を選ぶことがあることから、広報のプロフェッショナルと多角的、多様な観点から協力することが必要ではないか。(堀委員)
  • 「ちきゅう」の一般公開を行い、実物を一般の方々に見て頂くことが最も有効な手段だと考えるが、一般公開を全国規模で行う予定はあるか。(安田委員)
  • 現在のところ、東京周辺、下北沖合での訓練から八戸、地球博を開催している名古屋、及び高知での一般公開を考えている。(平(朝)委員)
  • コア試料に関しては、訓練中にできればAPC(アドバンストピストンコア)を使用して可能な限り採取し、展示、閲覧に供したいと考えている。また、場合によっては、各大学あるいは博物館等にもできるだけ配付できるようにしたいと考えている。(平(朝)委員)
  • インターネットサイトを通じての普及広報が重要なミッションであると同時に、広く夢の部分、あるいはロマンの部分を伝えるというところも大事であると考える。土星の衛星タイタンからの映像、スペースシャトルの再飛行、国際宇宙ステーション、南極での氷床掘削、或いは地下1,000メートルでのラボ設立といった様々な科学的な事柄の総合的な夢の中にIODPも取り込まれていけば、相乗効果的に強いメッセージとしてアピールできるではないか。(長沼委員)
  • 「ちきゅう」の公開に合わせて、小学校や中学校に文部科学省から働きかけを行い、Web等での予習を経ての見学等を行って頂くのはどうか。また、スマトラ沖地震を受けたインド洋津波警報システムに関連し、現地住民に対して我が国の「ちきゅう」の取り組みを紹介すること等も有効ではないか。(松田委員)
  • 一般の方に対して、「ちきゅう」の能力について説明を行い理解して頂くことは可能だが、掘削によって何が分かるかということを理解して頂くことは難しい。そこで、「これが分かる」ということに関して、何が最もインパクトあるかということを検討し、関係者間において共通認識を持っておけば説明する際にも有効ではないか。科学アカデミーのみならず一般の方にもきちんと理解して頂くことが重要と考える。(松永委員)
  • 宇宙も深海も広報の難しさは同じだと考えるが、宇宙は非常に一般受けするのに対し深海は関心度が低いことから、マントルまで行ったら何がわかるかという説明をうまく行うことが大事ではないか。(佐藤委員)
  • 宇宙は行って写真を撮れば分かるが、深海掘削は掘削後の資料の解析に時間がかかる。このギャップをどうするかが難しい。(田中主査)
  • CDEXのホームページに関して、JAMSTECとは独立した、簡易なドメインを取得するのはどうか。また、建造時あるいは試験運転時から、「ちきゅう」にモニターカメラ等を取り付けて常時インターネットで公開するのはどうか。モニターカメラは、一般公開の際に遠隔地に伝えることにも使用できると考える。台湾や韓国等に対するIODP参加への働きかけに関しては、アジア、オセアニア等の他国へ同様の働きかけは行っているのか。(宮崎委員)
  • 独自のドメインでサイトを持つことについては、来年度にJAMSTECサーバーとは別のサーバーを所持して独自のドメインを所持することを検討している。セキュリティーの関係上全てのデータは難しいが4月以降なるべく早期に立ち上げたいと考えている。モニターカメラについては、船からのリアルタイム通信とを考えており、教育現場での活用や24時間モニタリングも検討している。(川村氏(CDEX))
  • 建造中のテレビモニターでの公開については、業者との関係から困難である。(堀田氏(CDEX))
  • 他に現在調整中のものとしては、「ちきゅう」の通路を実際に歩くとどのように見えるかということを、ビデオ撮りして公開したいと考えている。これは、特に、ドリルフロア等実際に近づくことが難しい箇所については有効であると考える。(平(朝)委員)
  • その他にも、来年度早々にCGによる「ちきゅう」の掘削の仕方やライザーシステム等を説明した動画を作成し、Webサイト等に掲載して技術面の説明をしたいと考えている。(川村氏(CDEX))
  • CDEXホームページのトップ画面について、印象に残るよう「ちきゅう」の大きさが相対的に参考できるような表現にするのはどうか。(佐藤委員)
  • 「ちきゅう」に関して地球博と連動することは、名前からしてもチャンスであると思われるので、是非取り組むべきではないか。(堀委員)
  • 7月の海の日を挟んで、名古屋港に寄港することを現在考えている。(堀田氏(CDEX))
  • 可能な限り公開したいが、訓練を行う必要があり、また、日程的な調整もあることからタイミングは難しい部分もあると考えている。他国への参加呼びかけについては、台湾と韓国の参加については、ODP時代にコンソーシアムを形成し参加していた経緯からIODPに対しても積極的に参加を働きかけており、JAMSTEC及びJ-DESCからの働きかけをきっかけにして、政府レベルの働きかけを行うことを考えている。現在までのところ2005年の参加という意向を確認しているところである。その他の国についても、ODP時代に台湾、韓国とコンソーシアムを形成していたオーストラリアに対し、先日行われた日豪科学技術合同委員会を利用し働きかけを行っている。文部科学省としてはこのような二国間会議の場を利用する、あるいは文部科学省幹部の他国訪問の際に参加について発言する等の取り組みを行っている。また、JAMSTEC及びJ-DESCの研究者からも参加の呼びかけをお願いしている。(文部科学省)
  • オーストラリアについては、オーストラリア国立大学内で参加の機運が高まり1月後半にもIODP関係者を招待してオーストラリア政府に対し働きかけをお願いする予定であると聞いたことがある。今後何かアクションがあるのではないかと想像される。(岡田委員)
  • 広報に関しては、大学も同じ状況であり、受験生拡大のため対策を講じている。例えば広報紙を活用することも検討しているが、認知度が低い、内容が学生の興味を引くようなものではない等の課題があるために広告代理店と協力しより親しみやすい紙面づくりを検討している。JAMSTECが作成しているパンフレット等は学術的な内容は充実しているが中学生、高校生では難しすぎるものも多いので、漫画やイラスト等を活用し分かりやすくすることが重要ではないか。(岡田委員)
  • 大学の広報とも関連すると思うが、パンフレット等については科学者向けのものだけでは無くキャリアパスの色々な例を示すことも有効であると考える。学生によっては職業と結び付けて関心を持つことも考えられるため、是非検討して頂きたい。(森田委員)
  • 広報については、広報紙のみならず実際に体験する場もかなり重要であると考える。文部科学省が行うスーパーサイエンスハイスクールやサイエンスキャンプ、JAMSTECの夏季オープンハウス等を、大学や研究施設においてIODPの課題を用い展開することは非常に効果的であると思う。(安田委員)
  • 青少年に対する広報は非常に大事であるが、そのためには、分かりやすくテーマの焦点を絞って、先ずは海の解明を目指すというような「歯切れのよさ」を以て示すことが必要ではないか。あるIODPの研究航海のテーマの1つとして第3紀末から第4紀における千年スケールの気候変動を解明するとあるが、地球の歴史は46億年あり、その中で第3紀末の200万年以上前から現在までで千年スケールの気候変動があったか確認することは明確には言えないと思う。現在のところは、最近の数十万年間の氷期・間氷期サイクルについて明確になりつつあり、この原因の1つには、海洋の不定期あるいは早急なモード交代や大陸斜面上部のメタンハイドレードの分解を組み合わせたモデルが提唱されている。こういった海洋の熱塩循環の変化、停止メカニズムの解明は地球科学の大きな関心事であるため、200万年といったもののみならず、大きな焦点として打ち出すことが可能であれば、皆が非常に興味を持つのではないか。(田中主査)
  • プレスの発表資料などはある種の翻訳が必要であるため、より若年層にも対応した表現にすると受け取り方も変わるのではないか。より明確に、「この大命題が解決されないと我々の子孫の代にどうなるか分からない」といった表現にすれば、もっと多くの方の関心を喚起するのではないかと考える。これは気候変動以外にも固体地球等でも言えると考える。(末廣委員)
  • 気候変動そのものが地球科学の最大の問題であるが、これは環境問題にもつながる。非常に焦点がはっきりしてくる方法を取れば、国民の理解も得られプロジェクトが成功に行くのではないか。国民の税金で何かをやる以上、我々は常にこういったことを考えていかなくてはならない。(田中主査)
  • 社会貢献として国民に還元するという視点は大事であり、工夫させて頂きたい。(平(朝)委員)
  • コアセンターにおいて「ちきゅう」の役割を一般の方に説明する際、東シナ海のガス田問題やメタンハイドレート資源の採掘に対しどう寄与するのか問われることが多々ある。その時に「これは省庁が違いますから」という説明は通用しない。一般の方が興味を持っている対象はエネルギーや地球環境、地震であると思うが、こういった事項に関し「ちきゅう」の役割等をどのように説明するかは非常に難しい。(安田委員)
  • 例えばJAMSTECが所持する地球シミュレーターに関しては、JAMSTECの範囲で使っていればいいという話では無く、オールジャパンの宝物としていかに最大限利用するかということが重要であると考える。同様に、「ちきゅう」に関しても、国民の税金を用いたものであり、当然、社会貢献に一番使われなければならない。よってエネルギー、資源等問わず最大限活用することが一番国民の声に答えることであると考える。(末廣委員)

‐了‐

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