深海掘削委員会(第4回) 議事要旨

1.日時

平成16年8月9日(月曜日) 14時~16時

2.場所

経済産業省 別館1107号 会議室

3.議題

  1. 統合国際深海掘削計画(IODP)の2005年度年間計画の概要について
  2. IODPに関する研究推進体制について
  3. IODPに関する広報活動について
  4. その他

4.出席者

委員

 田中主査、森田主査代理
 石田、兼原、近藤、佐藤、平(朝)、松田、岡田、末廣、徳山、長沼、宮崎、安田 各委員
 平(啓)海洋開発分科会長

文部科学省

 文部科学省、内閣府、国土交通省、他

5.議事要旨

第3回深海掘削委員会議事録について

 平成16年3月12日に開催された第3回深海掘削委員会の議事録について、8月16日までに寄せられた意見を反映させて、確定することとした。

統合国際深海掘削計画(IODP)の2005年度年間計画の概要について

 第3回深海掘削委員会以降のIODPに関する活動について、文部科学省より関連組織毎に活動内容の報告を行った。また、統合国際深海掘削計画(IODP)の2005年度年間計画の概要について説明を行い、ご審議いただいた。主な質疑は以下のとおり。

  • IODP-MIの会員の参加条件はプログラムに参加している国の教育研究機関であることとなっているが、準メンバーの中国はプログラムに参加していると見なせるのか。(岡田委員)
  • 中国は、準メンバーとして正式にIODPに参加している。(文部科学省)
  • IODP-MIを設立した頃には、IODP参加についての準メンバーは想定していなかった。IODP-MIでも準メンバーを規定しているものの、概念が全く異なる。今後、中国の教育研究機関がIODP-MIに参加したいと言ってきたときにどのように扱うべきか、文部科学省でも検討して欲しい。(岡田委員)
  • 資料4-4の北極航海の資料で、three icebreakersと書かれてあるが、そのうちの1隻が掘削船なのか。(平(啓)分科会長)
  • 北極航海は、3隻の砕氷船を用いるが、そのうちの1隻、Vidar Vikingという船が掘削船である。(文部科学省)
  • Vidar Vikingも基本的には砕氷船であり、改造して急遽掘削船に仕立て上げたもの。数百メートルの堆積物はとれる。(平(朝)委員)
  • 資料4-3-1フレームワークの箇所に「韓国・ロシアの代表者も出席し」と書かれているが、なぜ、ODPに参加していた台湾を呼ばなかったのか、他の参加者がこの2国であった理由を教えて欲しい。また、ロシアの現状も教えて欲しい。(徳山委員)
  • いろいろな国を呼ぼうとしたが、都合がつかない国もあった。台湾については、中国から今回は止めて欲しいという意見があった。ロシアについては、興味はあるが、予算事情が厳しく、参加はなかなか難しいとのことであった。(文部科学省)
  • ECORDにカナダが加わるという情報があったが、それはどうなったのか。(平(朝)委員)
  • 1年間の時限付きメンバーとしてカナダがECORDに入ったという情報は聞いているが、正式な情報は入っていない。(文部科学省)

IODPに関する研究推進体制について

 IODPに関する研究推進体制について、徳山委員より日本地球掘削科学コンソーシアムにおける活動状況をご報告いただいき、各委員にご審議いただいた。主な質疑は以下のとおり。

  • 資料に書かれているもの以外に三次元探査が必要とのことであったが、具体的に教えていただきたい。(平(啓)分科会長)
  • 通常の探査では、探査船の移動する方向と深さ方向の二次元探査であるが、特殊な探査船を使用して幅を持った探査を行うことで、海底下の構造を三次元で把握することができる。この三次元探査はライザー掘削の事前調査として必要なものであるが、日本にはこれを実施できる探査船はなく、外国の船を使う必要がある。そのためには、まとまった研究費が必要であるが、現在、そのようなまとまった研究費を獲得できる制度がない。(徳山委員)
  • 日本ではソフト開発などは実施しているが、実際の探査まで業務にしている機関はない。(森田委員)
  • 三次元探査のような研究費と、掘削船に乗船するための旅費のような費用と必要な経費は二種類あると思われるが、その上で、参考資料4をJ-DESCではどのように見ておられるのかお聞きしたい。(平(朝)委員)
  • 乗船旅費については、基本的にはこのリストに載っている研究費を使うことはできないと考えている。これまで何度も申し上げているが、非常に困っている状況である。(徳山委員)
  • 国の事業に直結した科学研究費補助金はないと思うが、実際にはそのようなポテンシャルやニーズがコアとなって特定領域研究になるものもある。ここではそう言ったものはないのか。(田中主査)
  • ここにいくつかある特定領域研究はODPのためのもので、それを研究は継続していくと言うことでIODPに使っているものである。IODPとして立ち上がった特定領域研究は無い。(徳山委員)
  • 参考資料4に書かれている約3億という額はどの程度のシェアとなるのか。また、採択率はどのくらいか。(佐藤委員)
  • 科学研究費補助金では、地球科学や環境科学という枠が約55億円となっており、その中で、少しでも関連する研究をあわせて約3億円となる。採択率はだいたい40%程度である。(徳山委員)
  • 新規の場合は2割程度であろう。ところで、参考資料4はどのようにしてまとめられたのか。(平(啓)分科会長)
  • J-DESCの会員機関に今年度の採択状況をリストアップしてもらった。(巽博士(J-DESC))
  • 学術振興会では平等に実施しているので、特定のものだけの採択率を上げると言うことは難しい。(平(啓)分科会長)
  • 申請件数に対して採択率が平等になってくるので、どんどん応募することが重要である。一方、多額のお金をかけて「ちきゅう」を造って推進する事業が研究費が無くて成果が上がらないというのは問題なので、競争的ではない事業費的なシステムも必要だと思う。文部科学省でも検討する余地はあるのではないか。(田中主査)
  • 科研費の中で乗船費を含んで申請することはできないのか。(石田委員)
  • 不可能ではないが、乗船が決まるタイミングと科研費が取れるタイミングにタイムラグがあるため難しい。日本全体として乗船者数は決まっているので、乗船費の枠があってその中で公募する形が必要である。(巽博士(J-DESC))
  • このタイムラグはJAMSTEC等の他の船でも同じ問題があり、乗る審査と研究費の審査をリンクさせる仕組みをつくるという方法もある。(末廣委員)
  • 石油の場合は、非常に小口だが、経済産業省からJOGMECに資金が流れて、JOGMECが公募する形をとっている。私立の大学では、講座制を採用していない学校が多く、科研費に対応しにくい。石油のようなシステムとなれば、参加しやすい。(森田委員)
  • 昨今、研究支援に対する我が国の考え方が競争的資金にシフトしている。文部科学省としても問題意識を持ちいろいろと取り組んでいるが、厳しい状況である。(文部科学省)
  • 他の機関と相談するのも良いのではないか。スプリングエイトでは課金する話があがっており、科研費で対応できるよう要望を出すことを考えていると聞いた。そのようなものと相談するのも良いのではないか。(石田委員)
  • 先日、科学諮問組織の科学計画委員会が開催された後、ある科学誌に、日本のやり方は、インフラストラクチャーは作れど魂入れずといった書かれ方をされて、国際的に注目を集めていた。この委員会の議論はそういったものにも影響を与える。(平(朝)委員)
  • 地球科学や環境に55億ぐらいある中で、この関係がこれだけしか取れないと言うことは、旧来のやり方では限界があるということだと思う。きちんと新しい枠組みをつくることが大事ではないか。(安田委員)
  • 国際宇宙ステーションの場合、宇宙フォーラムがファンディング機能の一部を持っている。J-DESCがそのような役割を果たすことも一考に値するのではないか。(長沼委員)
  • 今後とも研究体制を追求していくこととしたい。(田中主査)

IODPに関する広報活動について

 IODPに関する広報活動について、事務局より文部科学省における取り組みを報告した。その後、平(朝)委員より海洋研究開発機構を中心とした国内関係機関における検討状況をご報告いただき、各委員にご審議いただいた。主な質疑は以下のとおり。

  • 前回から継続されている国益という件ですが、文部科学省でもこういう国益があるということを我が国の主導性と組み合わせて、プレスリリース資料を作るべきである。(末廣委員)
  • IODPは、初めて我が国が主導的な立場に立って、リーダシップをとって進めるプロジェクトであり、日本の社会の将来を担うようないろんな課題も含まれている。そのようなスタンスを強く出すキャンペーンや広報を展開していく。(平(朝)委員)
  • それも1つの国益ではあるが、もっと国民の生活に絡んでいることを主張していって良いのではないか。(田中主査)
  • 国益という言葉は非常に難しい。資源開発などはわかりやすいが、科学技術と国益を直接結びつけるというのは、よくわからないところがある。(佐藤委員)
  • 今の国民が求めているのは直接的な国益だけではない。将来の社会のために重要なことというものも求めていると思う。(田中主査)
  • 広報活動は、訴求対象を想定して戦略的に実施すると効果があると思うが、大学&科学館キャンペーンの対象大学などはどのようにして決まったのか。(松田委員)
  • 現在は、掘削に参加したいという研究者が多いところから実施している。今後は、すそ野を広げていきたいと考えている。(巽博士(J-DESC))
  • 国立極地研究所が実施している氷床掘削なども関わりがある。そのようなものと合同でシンポジウムを開くことも考えて良いのではないか。(田中主査)
  • 文部科学省でスーパーサイエンスハイスクールという施策があり、その対象校からも講演の依頼が来ており、様々な枠組みで活動を展開している。(徳山委員)
  • IODP科学館キャンペーンにニックネームはあるのか。小学生、中学生であれば、そういったものが要るのではないか。(平(啓)分科会長)
  • 「地球ってなに」というキーワードで、「地球」と「ちきゅう」の両方を説明するということを行っている。(巽博士(J-DESC))
  • 「ちきゅう」ということを強調すると、日本というのがはっきりするため、非常に良いと思う。(平(啓)分科会長)
  • 現在のインターネットのアクセス件数はどれぐらいか。(宮崎委員)
  • 正確な数字は把握できていないが、キャンペーンに来ていただいた方に伺うと、多くても20%程度の方しかホームページをご覧になっておらず、まだまだ認知度が低い。JAMSTECのホームページに埋没しているのも問題であり、もっと表に出していきたいと考えている。(平(朝)委員)
  • 是非、表出しをしていくべきである。検索のページを活用することも一つの方法ではないか。(宮崎委員)
  • 国益にも関連するが、なぜ日本だけで実施せず国際共同で実施するのかということも広報の一環として説明していく必要がある。(末廣委員)
  • 国民に理解していただくためのキーワードは、国際協調、科学的な夢、深海の管理という3つだと思う。このような、国益に結びつくキーワードを用いて国民に説明していく必要がある。(徳山委員)
  • 国益ということについて言えば、米国では、特に生物資源などに関して明確な国家戦略を持って取り組んでいる。広報活動にどう反映すべきかは別かもしれないが、他国がそのような考えを持っていることも知っておく必要がある。(長沼委員)
  • 日本では国益というと誤解されやすいので、国益という言葉を慎重に扱う。しかし、諸外国は露骨に国益を追求しており、我が国も全く触れないわけにはいかない。少なくとも公費を使って行っている以上、関連する者は国益を意識して仕事をすべきだと思う。日本がイニシアティブを発揮して仕事をしていくということは大きな国益だと思うので、それを説明して理解を得る努力をするというのが広報の大事な仕事の1つとなるだろう。(田中主査)
  • 深海底はどの国も権利を主張できないものであり、言葉を使い間違えてしまうと逆効果にもなりうるため、十分に注意して実施すべきである。(兼原委員)

‐了‐

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研究開発局海洋地球課