深海掘削委員会(第3回) 議事要旨

1.日時

平成16年3月12日(金曜日) 13時~15時10分

2.場所

経済産業省 別館821号 会議室

3.議題

  1. IODPに関する研究推進体制について
  2. IODPに関する広報活動について
  3. その他

4.出席者

委員

 田中主査、石田、兼原、佐藤、平(朝)、長谷川、掘、松田、末廣、徳山、宮崎 各委員
 平(啓)海洋開発分科会長

文部科学省

 文部科学省、内閣府、国土交通省、他

5.議事要旨

第2回深海掘削委員会議事録について

 平成15年12月15日に開催された第2回深海掘削委員会の議事録について、3月19日までに寄せられた意見を反映させて、確定することとした。

第2回深海掘削委員会以降のIODPに関する活動について

 第2回深海掘削委員会以降のIODPに関する活動について、文部科学省より関連組織毎に活動内容の報告を行い、ご審議いただいた。

IODPに関する研究推進体制について

 IODPに関する研究推進体制について、徳山委員及び日本地球掘削科学コンソーシアムの巽 好幸博士より日本地球掘削科学コンソーシアムにおける検討状況をご報告いただいた。その後、事務局より欠席委員の意見を紹介し、各委員にご審議いただいた。主な質疑は以下のとおり。

  • 参考資料1の社会的効果というところで、地球環境変動という言葉が使われているが、環境という言葉はそれぞれの学問分野で微妙に意味が異なるので、明確に伝わらない場合がある。ここに書かれているのは気候変動が主なので気候変動という言葉を使った方がわかりやすいのではないか。(兼原委員)
  • 環境問題と気候変動がどのようにリンクしているかを明確にしていくことが重要である。気候変動を地球システムの変化と捉え、地球内部との相互作用も含めて理解していきたいと考えている。(徳山委員)
  • 一般に我々が地球環境問題という場合には、人間活動が環境を変えていくことをいうことが多い。ところが、IODPでは、地球自身がこれまで行ってきた非常に激しい変動を理解することが、人間活動による地球環境問題の理解にも重要だという認識であり、これは環境問題そのものではないため、書き方に工夫が必要。(田中主査)
  • 研究遂行支援プログラムについて、世界中の研究者に日本から発信した成果が届くイメージを持たせるために、試料やデータの分配の窓口的な機能を明確に位置付けた方がよいのではないか。(松田委員)
  • 試料やデータの分配についてはIODP全体で議論しており、我が国としてもその中で積極的な役割を果たしていきたいと考えている。(徳山委員)
  • データベースやコアの管理は国際的な部分となるが、国益の観点からも、その窓口機能は我が国に置きたいと考えている。(平(朝)委員)
  • IODP科学支援に対する基本理念で、地球生命科学コミュニティの意見を十分に反映すると書かれているが、地球生命科学だけが挙げられているのはなぜか。地球科学コミュニティは当然のこととして書かれていないのか。(石田委員)
  • 地球生命科学は地球科学以外のものとして挙げたわけではない。今後、地球科学、生命科学などいろいろな分野の境界分野が重要と考えられるため、広い科学コミュニティを示す言葉として使用した。(巽博士)
  • これらのプログラムを実施するために、専門の事務局を設置するのか。ソフトだけでなくてハード的な面も含めた支援体制を作りたいということか。(石田委員)
  • 理想的には、米国のJOIに相当する専門の管理機構が必要となってくると思われる。(巽博士)
  • 生物圏について、遺伝子レベルの生物に絞り、深海底の生物などは対象としないのか。また、その中でさらに、高熱環境下に絞るのか。(堀委員)
  • ドリリングでは海底下を対象とするので、遺伝子レベルの研究が期待される。また、深度が上がっていくと高熱環境が期待されるが、研究対象を絞るということではない。(徳山委員)
  • 高温、高圧など様々な環境が期待され、また、地殻内生命圏と海底下の生物との関連も重要な研究テーマとなりうる。(平(朝)委員)
  • 教育広報についても熱心な取り組みがなされているが、その中で学校教育との関連、海洋国家として体系的に海を学ぶという観点からどのような取り組みがなされているのか。(堀委員)
  • 次の議題とも関連してくるが、J-DESCでも積極的に普及広報活動に取り組んでおり、戦略的かつ体系的に進めようと考えている。(徳山委員)
  • まず、小中学校の教員の方々に興味を持っていただき、それを児童・生徒に広げていくことが重要と考えている。(巽博士)
  • これらについて、米国では相当な額が措置されているのに、我が国では目処が立っていないということか。(堀委員)
  • そういうことである(巽博士)
  • 図1のシーズ研究のうち、通常掘削提案研究については予算が一応あるとなっているが、具体的にはどのようなものか。掘削のための特別枠があるのか。(石田委員)
  • 例えば、科研費の基盤研究等である。特別枠があるわけではない。(巽博士)
  • 図1の研究遂行の研究費(一次研究)は、具体的にはどのようなことをするのか。(石田委員)
  • ここでいう一次研究は実際に試料を持って帰り、その比較的基礎的な記載、分析のようなものまでを想定している。このような初期的な研究であれば、各大学の研究者個人の研究費で対応可能と考えている。しかし、高次解析のようなものは個人では対応できない。(巽博士)
  • 約束されているのは何もないということか。(石田委員)
  • そのとおりである。(巽博士)
  • 科学研究費において、米国では戦略的に枠が作られたということだが、日本の制度だと相当な時間が必要である。また、枠を作った後でも、NSFでは採択率が50%になるのに対して日本は20%程である。そのため、関連した研究を総合的に支援するような対策が必要だと考える。また、IODPは段階的に進むと思われるが、それに応じた重点化が見えるとインパクトがあると思われる。(平(啓)分科会長)
  • 段階的という点について、「ちきゅう」を用いたライザー掘削は2006、7年頃に開始されるが、それに向けて現時点では事前調査を行う必要がある。(巽博士)
  • 重点という意味では、IODP開始前に国際的な初期科学計画が作成されたが、我が国ではそれを受けて日本版の科学計画を作成している。(徳山委員)
  • 競争的資金を否定しているわけではないが、多大な時間が必要な割に採択率が低いため、科学的なインパクトを見せて特定目的の研究費を検討していく必要がある。(平(啓)分科会長)
  • 現状としては、特定の研究費を特別の目的に確保する方が、競争的資金を獲得するよりも難しい状況である。一般論として、競争的資金の額は伸びているが、特定目的の研究費はほとんど予算が付いていない状況である。(文部科学省)
  • 我々の経験では分科細目を作るのは不可能ではないと思う。採択率は、額面では3割であり、是非チャレンジしていくべきである。この提案にも競争的経費を獲得すべきと書かれており、これは大事なことである。(田中主査)
  • ご指摘のとおり、競争的資金を獲得していく必要がある。しかし、資料に書かれた研究費のうちには、競争的資金になじまない、IODPを運営していくために必要な資金がある。(徳山委員)
  • 資料にかかれたIODP支援プログラム(経常的経費)は、事前調査費用、技術開発費用、乗船費用や会議費用などの活動費用の3つに分けることができる。その中でまず重要なのは乗船費用などの活動費である。お金を持っている人だけが乗れるということになると、本当のナショナルプロジェクトにならない。また、技術開発については開発期間がかなり長期にわたる場合があり、単発の科研費だけでは難しいと思う。そして、調査費については、今、海洋研究開発機構が所有している船も含めて、どのように動かしていくかを検討する必要がある。少なくとも、経常的な費用については、措置していく必要がある。(平(朝)委員)
  • 現実的に考えていく必要があり、現在伸びている競争的資金の中で、科学研究費や振興調整費などがあり、また、21世紀COEプログラムなどもある。資料に書かれている研究費を獲得するために、それぞれの研究所や大学はどのような活動をしておられるのかを教えて欲しい。また、資料に書かれている研究費の優先順位も教えて欲しい。(文部科学省)
  • 東京大学海洋研究所では、東大本部にIODPの推進のためという特別な要求をしている。また、SASの支援ということで海洋研内に事務所を提供したりしている。(徳山委員)
  • この資料は、研究者コミュニティの理想型として、要望書として各方面に出していただきたい。それと同時に、競争的資金を獲得するようお願いしたい。取れるところから取っていく姿勢が重要と考える。(文部科学省)
  • 資料中、高精度地震予知の実現、高精度の海溝型地震発生予測を実現可能にする、といった言い方は修正した方がよい。(末廣委員)
  • 予測の高度化という言い方にすべき。(長谷川委員)
  • 予測の高度化に貢献できると言うことだと思う。また、9ページに地球生命科学コミュニティの代表者でありと書かれているが、もう少し軟らかい表現にすべき。(宮崎委員)
  • 地球生命科学と書かれているのは、地球科学一般も含めているのであれば、表現を改めた方がよい。(長谷川委員)
  • 地球・生命科学とすれば良いのではないか。また、5ページの4で、わが国におけるIODP科学支援に対する基本理念というタイトルを我が国が持つべき基本理念というような表現に変えた方がよい。(佐藤委員)
  • 産官学連携の必要性が書かれているが、支援体制における産の役割は全く書かれていない。学術を応用研究から産業効果、経済効果につなげていく上で産の果たす役割は大きい。(堀委員)
  • このたびの資料は学際的な制度設計のあり方を中心に作成したため、産の書かれ方は弱い。しかし、今後、産学官連携は必要であると認識している。(徳山委員)
  • 日本は発明や発見については素晴らしいものを持っているが、応用では米国に先行されてしまう。応用についての産業界に対する期待も含めて盛り込んでいくべきと考える。(堀委員)

IODPに関する広報活動について

 IODPに関する広報活動について、平(朝)委員より海洋科学技術センターを中心に国内関係機関における検討状況をご報告いただいた。その後、事務局より欠席委員の意見を紹介し、各委員にご審議いただいた。主な質疑は以下のとおり。

  • テレビの影響は大きく、サラリーマンなどは、結構、インテリジェントな番組を見ている。是非、特集を行うべきと考える。シンガポールのパブリックスクールではインターネットを使って理科や歴史の教材を作っている。今後、IODPの成果も教材に結びついていくような文部科学省の働きかけも重要ではないか。(松田委員)
  • 税金を使っている以上、アカウンタビリティが発生すると考えられ、NASA(ナサ)などもそのような考えの下で積極的な広報を展開していると思われる。小中学生に対しては、SFや漫画を利用するのも有効だと考える。また、文部科学省以外の省庁の理解も重要と考える。(佐藤委員)
  • 「我が国が主導国であり、我が国は本プロジェクトを長期的にリードしていく」ということに関して、なぜ国がやるのか、なぜ税金を使って行うのか、国際協力やプロジェクトを主導することが我が国にとってどのような意味を持つのか、について十分に説明していく必要がある。(兼原委員)
  • このプロジェクトの基本的な思想は人類共通の知的財産をつくっていくということであり、そのため国家プロジェクトとして位置付けられていると理解している。重要なことはそれをどのように国民に理解してもらうのかということだが、我々としては科学的成果や発見を発信していくことが基本であると考えている。(平(朝)委員)
  • 火星のプロジェクトは生命があるかないかということで、科学者がどのような興味を持っているかが非常にわかりやすい。IODPにおいて、子供から大人まで理解してもらえるようなものはあるか。(田中主査)
  • 例えば、地下何キロメートルに生物がいるのかということは非常にわかりやすいメッセージとなりうる。(平(朝)委員)
  • この点は科学全体に共通する問題である。(佐藤委員)
  • この数年間、「ちきゅう」を中心とした広報活動が予定されているが、そこに地球と海をリンクさせながら行うと、国民は夢を持つのではないか。「ちきゅう」と同時に本物の地球を見せていくべきである。(宮崎委員)
  • 地球相手の学問はIODPを軸に飛躍的に発展すると考えることで、我々が生活している地球空間と我々の未来の生活の密接な関係が理解できる。「ちきゅう」だけに特化するとリアリティが欠如する恐れがある。J-DESCも発信しているとおり、掘削の周辺分野も底上げしていく必要があり、それらが実現すると、社会に発信する情報も現実味を帯びてくる。(末廣委員)
  • 我々の地球ってどうなっているのだろうということを知ってもらうことが広報の一番の柱だと考える。学際的な成果を発信することはもちろんであるが、やはり、夢を前面に押し出して広報活動を行うべき。(徳山委員)
  • 我が国が主導国として推進するのは、国益があるからであろう。広報活動においても国益を積極的に出した方がわかりやすいのではないか。また、夢ということであれば、今まで知り得なかったことを知れる機会が到来した、だからこそIODPを国家プロジェクトとして行い、我が国はそのような考えを持った国であるということを積極的に発信していくべきではないか。(兼原委員)
  • それについては、海洋研究開発機構としても的確に答えていく必要があると認識している。今後ともIODPの意義を訴えていくつもりである。(末廣委員)

‐了‐

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研究開発局海洋地球課