深海掘削委員会(第2回) 議事要旨

1.日時

平成15年12月15日(月曜日) 15時~17時10分

2.場所

文部科学省 別館(9階) 特別会議室

3.議題

  1. 統合国際深海掘削計画(IODP)の2004年度年間計画の概要について
  2. IODPに関する研究推進体制について
  3. IODPに関する広報活動について
  4. その他

4.出席者

委員

 田中主査、兼原、近藤、佐藤、平、松田、岡田、末廣、徳山、長沼、宮崎、安田 各委員

文部科学省

 文部科学省、内閣府、海上保安庁、他

5.議事要旨

第1回深海掘削委員会議事録について

 平成15年6月19日に開催された第1回深海掘削委員会の議事録について、12月19日までに寄せられた意見を反映させて、確定することとした。

統合国際深海掘削計画(IODP)の2004年度年間計画の概要について

 第1回深海掘削委員会以降のIODPに関する活動について、文部科学省より関連組織毎に活動内容の報告を行った。また、統合国際深海掘削計画(IODP)の2004年度年間計画の概要について説明を行い、ご審議いただいた。主な質疑は以下のとおり。

  • 中国は1/4の参加であり、IMIメンバーを得る権利はなく、欧州からは覚書が結ばれればIMIメンバー加入の申し入れができるということでよいか。(岡田委員)
  • そのとおりである。(文部科学省)
  • IMIに関する追加情報として、中央管理組織受託の公募にIMIだけが応募し、今後、NSFと契約手続きを進めることとなったことと、ワシントン事務所の副所長について公募を行ったところ、現時点で16人の応募があったことを提供する。(岡田委員)
  • 総合科学技術会議の評価がBからAになったのはなぜか。科学技術的な理解も得られたと考えて良いか。(宮崎委員)
  • 明確にはわからないが、昨年に比べて、後年度負担を押さえたため、また、有識者に対する説明機会が与えられたためと考えている。(文部科学省)
  • IODPの2004年度年間計画に盛り込まれているミレニアム・スケールの気候変動に関する研究は北大西洋で行われることとなっているが、将来的には、太平洋域でも実施される可能性はあるか。(田中主査)
  • 大西洋は石灰質の微化石が多く保存されており、現在は、その中に含まれる酸素や炭素の同位体を用いて環境変動を解明する手法をとっている。太平洋では、石灰質の殻が溶けてしまっており、同じ手法は使えないが、エス アイ オー ツーの化石が残っているため、エス アイ オー ツーで酸素の同位体を測定する技術開発が進められている。(岡田委員)
  • 西太平洋の堆積速度が遅い海域では、堆積物と陸から運ばれた物が一緒にたまっている。これらは非常に厚く堆積しているが、「ちきゅう」であれば堀抜くことができ、これまではミレニアム・スケールであったものが、デカダル・スケールで研究を行うことが可能になる。(平委員)
  • 東アジアの気候変動はモンスーンの変遷もオーバープリントした変動が見られ、IODPにおける我が国の科学計画においても位置付けられている。(徳山委員)

IODPに関する研究推進体制について

 IODPに関する研究推進体制について、文部科学省より我が国の現行制度の説明を行った。また、米国における深海掘削研究支援体制について、徳山委員及び日本地球掘削科学コンソーシアムの巽好幸博士よりご説明いただき、ご審議いただいた。結果、日本地球掘削科学コンソーシアムにおいて研究支援体制をご検討いただき、次回委員会においてご報告いただく旨、徳山委員に依頼することとなった。主な質疑は以下のとおり。

  • 日米で研究費や支援体制が違うとのことであったが、研究者数は同程度か。(佐藤委員)
  • 日本の現状としては、J-DESCの会員機関の所属が約6,000名であり、その中でIODPに関連しているのは400名程度である。米国では1,000名以上の研究者がODPに関連してきた。日本もポテンシャルはあるので、6,000名のうち3,000名ぐらいが関連してくれば層が厚くなってくる。(巽博士)
  • 紹介された我が国の問題点を改善していく方法について、準備、方針などはあるか。(兼原委員)
  • J-DESCでは、腹案は持っているが、この場で議論した中で形作るべきと考える。議論の後に宿題をいただければ、J-DESCとして原案を用意したいと考えている。(徳山委員)
  • 予算に絡む事項も含まれるため、財政状況が厳しい中どこまでできるかわからないが、IODPを含む掘削科学の支援体制について本委員会でご議論いただき、来年度の予算要求に向けてご提案いただきたいと考えている。(文部科学省)
  • 行政側で努力する事項もあるが、研究者の側にも問題がある。競争的資金は、審査されて良い研究に研究費が配分される仕組みである。科学研究費補助金では、IODPで良い提案が多くなされれば配分も多くなる。また、時限付き分科細目は研究者の申し出により設定される。従って、研究者サイドから積極的に働きかける必要がある。(田中主査)
  • プロジェクト型の研究はもう少し増やしても良いと思われる。米国に太刀打ちするためには競争的資金とプロジェクト型のバランスをとることが重要である。(田中主査)
  • 昨年、岡田委員らと共に、科研費の時限付き分科細目に申請したが、残念ながら採用されなかった。これからは毎回申請することとしたい。(徳山委員)
  • 昨年の申請で、IODPは3位にランクされた。1位の科学高等教育と2位の計算科学が採用されたが、これらは巨大なコミュニティを背負っている。背景に存在するコミュニティの大きさでIODPは漏れたと伺っている。(岡田委員)
  • 研究だけでなく運営においても日本のコミュニティは弱点を抱えている。IMIはIODP参加国の大学や研究所で構成される。現在、日本7機関、米国15機関で構成されているが、これらの機関は必要に応じて会費を支払うこととなる。来年度より国立大学が法人化し、予算の使途が評価されることとなるが、大学にとってIMIの会員として具体的なメリットが見えない場合、会費が評価されず、退会を迫られる機関が出てくる可能性がある。(岡田委員)
  • 米国では、乗船研究者の旅費や成果公開の費用などにUSSSPを用いているが、我が国でそれに該当するものはMEXTからJAMSTECに措置され、AESTOに業務委託しているものと科研費で東大海洋研に配分されている特定領域研究と考えられる。また、プロポーザルを書くためには事前調査が必要だが、地震波探査などの高額なものが多く、個人の科研費では限界がある。一方、米国では事前調査費についてもプロジェクト型で措置されている。これらの経費は研究機関が本気でサポートする必要があり、現在、我が国でこのようなサポートができるのはJAMSTECと東大海洋研だけである。JAMSTECも努力するが、東大海洋研を中心にこのようなサポート機関を作っていく必要がある。(平委員)
  • 制度設計については、J-DESCの中で引き続き検討をしていくが、当面直面する問題として、来年から始まる掘削航海に乗船研究者を派遣するために必要な資金の問題がある。(徳山委員)
  • 研究支援体制についてはじっくり議論していきたいと考えている。ここでは、研究者コミュニティがどういうことを考えているかが重要であるため、徳山委員にJ-DESCの意見をまとめていただきたい。その際、競争的資金をどのようにして獲得するかについてもあわせて検討していただきたい。(田中主査)

IODPに関する広報活動について

 IODPに関する広報活動について、文部科学省より2003年度の主な活動内容及び広報戦略策定に向けて検討すべき事項の説明を行い、ご審議いただいた。結果、海洋科学技術センターにおいて広報戦略についてご検討いただき、次回委員会においてご報告いただく旨、平委員に依頼することとなった。主な質疑は以下のとおり。

  • CDEXでも広報を行っているが、徐々に広まってきていると実感している。また、単に説明責任を果たすだけではなく、IODPを通じて、国民の科学への興味を引き出すような広報活動を展開すべきである。(平委員)
  • 広報活動を通じて、IODPの認知度を上げていき、底力をつけていくことが重要である。(佐藤委員)
  • 小・中・高の教師に対してもIODPの広報を行っていくべき。次代を担う学生に伝えていくためにも必要である。(長沼委員)
  • 効率的な広報活動を行うためにも、コーディネーションが必要である。(徳山委員)
  • J-DESCは研究成果を中心に、JAMSTECは「ちきゅう」を中心に広報をするといったような役割分担が重要となってくる。(平委員)
  • この委員会でコーディネーションができれば良いのではないか。(徳山委員)
  • 広報活動の達成度を把握することは重要である。情報の受け手の満足度も含めて十分に確認していく必要がある。(宮崎委員)
  • IODPの重要な点として科学的な知見の蓄積があるが、科学者の夢・興味をわかるように説明すると国民は応援してくれると思う。テレビ番組などで科学者が本当に知りたいと思っていることを紹介し、それが国民に理解されれば支援される。科学者の説明は正確かもしれないが、国民にはわかりにくいものが多い。IODPが科学広報の前例となれば良いと思う。(田中主査)
  • 研究者が普及させたい事項も明確にしていく必要がある。(佐藤委員)
  • このような大きなプロジェクトの広報活動には多額の費用が必要である。マスコミの協力等を得ながら行っていくこととなるだろうが、それらを戦略的に演出するグループが必要ではないか。(近藤委員)
  • JAMSTECはIODPの総合推進機関であり、「ちきゅう」の運航機関として情報発信の1つの重要な役割を担ってもらわなければならないため、平委員に、J-DESCなどと連携しながら広報活動に関する構想を練っていただいて、次回の委員会で提案していただきたい。(田中主査)

‐了‐

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