深海掘削委員会(第10回) 議事要旨

1.日時

平成19年9月13日(木曜日) 14時~17時

2.場所

丸の内仲通ビル K2会議室

3.議題

  1. 深海掘削委員会について
  2. 第9回深海掘削委員会以降のIODPに関する活動について
  3. 地球深部探査船「ちきゅう」の平成19年度運用状況報告
  4. IODPに関する広報活動について
  5. IODPに関する研究推進体制について
  6. その他

4.出席者

委員

 長谷川主査、石田、伊藤、兼原、佐藤、平(朝)、竹山、松田、岡田、川幡、末廣、鈴木、長沼、松本、宮崎、渡邊 各委員
 今脇海洋開発分科会長

5.議事要旨

第9回深海掘削委員会の議事録及び議事概要について

 平成18年12月19日に開催された第9回深海掘削委員会の議事録及び議事概要について、出席した委員による内容確認を経て確定することとした。
 議事録は迅速な公表を目指し、委員に内容の確認をした上で、事務局が主査及び分科会長と相談して内容を確定し、公表するという手順をとることとした。

深海掘削委員会について

 事務局より深海掘削委員の設置経緯、これまでの審議状況について説明した。

第9回深海掘削委員会以降のIODPに関する活動について

 第9回深海掘削委員会以降のIODPに関する活動について、文部科学省から関連組織ごとに活動内容の報告を行い、ご審議いただいた。主な審議は以下のとおり

  • 欧州船の規模、能力はどの程度か。(今脇委員)
  • 日米の主力掘削船に比べ小型である。掘削航海の場所や目的に応じて、その期間だけを傭船する形をとっている。3年前には、砕氷能力のある掘削船及び砕氷艦を従えて北極海で掘削が実施された。(文部科学省)
  • 欧州船のニュージャージー沖の掘削は、当初計画から延期されているという説明だったが、欧州船が延期になった理由や状況について情報はあるか。(長谷川委員)
  • 予定しているリグの故障や、世界的な原油の高騰による財政的な理由が大きいと承知している。(文部科学省)
  • 「国際運用」という言葉が出てきたが、これは何が国際化するのか。(兼原委員)
  • 国際運用とは、掘削航海するに当たり、IODP参加国からの乗船研究者を乗せ、IODPの枠組みで科学的に最上位にランキングされた掘削目的の航海を行うことを指している。(文部科学省)
  • 年間プログラムプランの公表時期は、10月初めになるのか。また今回公表されるものは欧米掘削船の遅れが反映されたプログラムになっているのか。(宮崎委員)
  • 年間プログラムプランについては、10月時点で公表可能な再審情報に基づく掘削航海についての計画書が公表され、その後変更が生じた場合は途中で変更される。(文部科学省)

地球深部探査船「ちきゅう」の平成19年度運用状況報告

 今年終了した「ちきゅう」海外試験掘削の内容、結果等について、海洋研究開発機構平委員より報告を行い、ご審議いただいた。主な審議は以下のとおり。

海外試験掘削及びライザーテンショナー損傷について

  • ライザーテンショナーの動揺の周期について(今脇委員)
  • 動揺の周期は、波の波長にもよるが、10秒程度である。どれだけのストロークが吸収できるかによるが、8メートルがほぼ作動限界で、10メートル以上は動かない。従って、10メートルで上下する前に切り離さないといけない。(平委員)
  • テンショナー修復時期(4月予定)について、平成19年度に実施予定のライザー掘削一部着手に間に合うか。(鈴木委員)
  • 本年度は、ライザー掘削のための基本的な上の孔の上部の仕上げを行うところまでで、ライザーを海底におろして掘削するということは実施しない。本格的なライザー掘削は、来年の後半と考えている。(平委員)
  • 当プロジェクトに参加する国が増えれば増えるほど、掘削できる海外管轄水域が広がるだろう。今後の見通しとして、海外管轄水域での掘削合意取り付けについて、ケニア沖、オーストラリア大陸棚の経験で得た感触はどうか。(兼原委員)
  • 今回の海外試験掘削は、JAMSTECがオーストラリアの石油会社(ウッドサイド)の事業の一部を受託して参画したという形であり、ケニア政府とのクリアランスや事業許可は全てウッドサイドが実施した。実際に「ちきゅう」がケニア沖で掘削した時には、ウッドサイドの要請で、海賊やテロから「ちきゅう」を守るためケニア海軍が派遣されていた。IODPでの科学掘削はJAMSTECが事業主体となるため、様々な作業許可や安全対策等についてはIODPとJAMSTECが共同で取る必要がある。作業は長期間に及ぶため、できるだけ早くから準備しなければならない。(平委員)
  • サンプルから微生物をとる際、生物多様性条約(CBD)では、微生物の特許等所有権は原産国にある。これらの取扱についての取組みはどうなっているか。(長沼委員)
  • 海外試験掘削に関しては、JAMSTECは事業を委託された側で、作業の請負人の立場であるため、契約上サンプル等には一切関知していない。IODPでの科学掘削については、IODPにおいてサンプルの所有権や微生物の取扱等についてのポリシー作りが始まっているところであり、そのポリシーに基づき作業の手順を踏むことになる。「ちきゅう」を将来IODP以外の外部資金による受託研究あるいは受託事業として活用する場合等については、今後文部科学省とも相談して検討する。(平委員)
  • 海外試験掘削での成果や仕上がり具合等について。(宮崎委員)
  • コア採取については、100メートル近いコアバレルを使い、連続で100メートルのコアを採取できた。ケーシングについても、様々な水深において大口径のケーシングを入れる作業に成功した。(平委員)
  • 試験掘削時に、機器設置の訓練、練習もしたのか。(石田委員)
  • 掘削は大量に実施したが、孔内観測機器の設置は実施していない(平委員)

南海トラフ地震発生帯掘削計画について

  • 1回掘った孔は確保してだんだん深くしていくものか。それとも新たに掘り直すのか。(今脇委員)
  • 沢山掘ればそれだけケーシングが必要である他、漁業や台風等の影響もある。従って、あるところまで掘ってふたをし、下にセメントを置いて孔内を安定させ、何カ月か後にまた掘り出すということを実施する。(平委員)
  • NT2-03、NT3-01の他に、沖の方で実施する短い掘削の目的は。(今脇委員)
  • もともとNT1-01やNT1-07にあった物質が、プレートが沈み込むとともにNT3-01のところに来て地震を起こす能力を持つ。この物質が圧力条件や脱水等いろいろ物理的な反応で(地質を)変えていくため、その急所をつかまえて、どのように地震発生能力を獲得していくかを検証するためである。(末廣委員)
  • 参考資料3の表の見方について。(石田委員)
  • NT2-03のパイロットホール(1)については、パイロット的にいくつかのシンプルなLWD機械をつけ1,000メートル掘る。同じサイトのLWD(4)では、100メートルか150メートル隣の地点で1,000メートル掘る。100メートルぐらいの円の中で掘っている。(平委員)
  • 黒潮の流路によっては掘削サイトを変えなければならない可能性もあるという話だったが、今年の見込みはどうか。(松本委員)
  • 3カ月予報を実施している。今ライザーレスを実施しているが、ライザーにフェアリングという鳥の翼の断面になるような流線形の羽をつけて渦抵抗、渦振動をなくす強潮流対策も色々実施したい。強潮流下での「ちきゅう」の操業の仕方はこれからのノウハウである。(平委員)
  • ケニア沖で経験した3ノットについて(渡邊委員)
  • 3ノットの潮流は、黒潮の端では常時流れている。ケニア沖では、ライザー管を設置するまで500メートルぐらい潮があり、その中を高さ15メートル幅5メートル重さ300トンもあるBOPをおろすには潮流で非常に曲がるため、ケニアではゆっくりドリフトしながらその地点まで持っていって最終的に設置した。(平委員)
  • 計測システムは、一番下を裸孔にして何かを設置するというイメージか。(佐藤委員)
  • キーポイントで計測ができるようにするため、例えば傾斜計を複数つなげて何層のレベルでも測れるように今計画中である。(末廣委員)
  • 1つの孔で全部実施するかマルチプルな孔にするかは研究者等の要請も含め色々なやり方がある。(平委員)
  • データのサンプルの密度は計測間隔を非常に密にサンプリングしたほうがいい。別の孔で実施した温度、圧力計測はダイナミックな現象であるため、非常に早いサンプリングでないとそれを逃す。特に「ゆっくり地震」は圧力計測でもひっかかると思うので、秒以下の早いサンプリングを実施したい。(末廣委員)
  • 海底ケーブルネットワークシステムの構想について。(松田委員)
  • 文部科学省からの委託事業で、昨年度から海洋研究開発機構他大学で受託している。これは、紀伊半島沖のまさに掘削サイト、熊野灘のあたりを広域にカバーするように20点の地震計、津波計を展開し、100キロ×(かける)100キロぐらいのエリアをカバーするという構想。2010年から運用を開始する計画である。南海掘削で掘ったところがノードにかかるように計画している。(末廣委員)
  • 長期孔内計測システムの技術開発から設置されるまでの計画について。(長谷川委員)
  • ステージ3で掘った孔に関して、初期の段階で開発したプロトタイプのようなものを設置し、ステージ4で本格的なシステムが開発された段階で本格タイプを2つの孔に設置するという2段階構想である。しかし必ずしもその計画が完全に決まったわけではなく、末廣理事を中心に大学研究者を含めてチームを作り、どのように準備するかということを検討しているところである。JAMSTECは現在、IODP-MIから技術開発費をいただき、データ通信の部分を開発している。それにどのようなセンサーをつけ、どこの深さで何を測るのかをデザインするには、ある程度地質情報が必要である。従って、地質学的なバックグラウンドになる情報をしっかり情報をとりながらフレキシブルに対応できるような孔内システムを作る予定。(平委員)
  • 「ちきゅう」の運行イメージについて。(伊藤委員)
  • 南海トラフのこの場所は、漁業期間として3、4、5月の3カ月間は実施できない。今年度の実施計画は決まっているが、来年度に関してはまだ財務省と調整している最中であり、それを見ながら実施することになる。(平委員)
  • ステージ1の段階でもたくさんのコアリングをしてたくさんサンプルをとる。地震発生のメカニズムを解明することは大きなテーマですが、実際に取ったコアをほかの研究に用いる計画はされているか。(鈴木委員)
  • これはIODPのサンプルリクエスト、プロポーザルベースと全く同じで、乗船研究者がプライオリティーを持っている。また、現在のところ全部で140とか150近い全体のプロポーザルサンプルリクエストが出ており、その中には地震研究だけでなく微生物研究等多岐にわたる研究内容が含まれている。(平委員)

IODPに関する広報活動について

 IODPに関する広報活動について、事務局から文部科学省における取組みを報告した。その後、CDEXより海洋研究開発機構を中心とした国内関係機関における検討状況をご報告いただき、各委員にご審議いただいた。主な質疑は以下のとおり。

  • 文科省のプレス発表に関連し、8月にIMI主催で開催された評価会議において、北極海のリグに関しては、非常に画期的であるという評価がなされたことを指摘したい。(川幡委員)
  • 今まで実施された活動(IODPキャンペーン等)はこの先はどのように実施するか。(長谷川委員)
  • 今まで実施してきたのは、「ちきゅう」の研究成果がまだ出ていない段階でのプレイベントだった。今後成果が出てくれば、「ちきゅう」での乗船体験や自分が乗った研究がいかに進んだかという話等、より具体的な話ができる。次のシリーズでぜひそのような普及を実施したい。(平委員)
  • アメリカのスミソニアン博物館で、スミソニアンの展示を一部大改造し、海に関する展示スペースをつくるという構想があり、スミソニアン博物館の方から連絡を受け、「ちきゅう」の模型を引き渡すべく調整している。(平委員)
  • 「ちきゅう」の国際運用はこれからであり、注目を浴びる非常に良い機会である。科学成果が出るには期間を要するが、タイムリーに情報発信をしていきたい。また、自然、天候等の他、財務省との予算折衝による部分もあるが、概ね4年程度で可能な限り集中的に成果を出していきたい。(文部科学省)

IODPに関する研究推進体制について

 IODPに関する研究推進体制について、川幡委員より日本掘削科学コンソーシアムにおける活動状況をご報告いただき、各委員にご審議いただいた。主な質疑は以下のとおり。

  • これまで当委員会では、経費、旅費等について意見が出ていたが、その辺りはご努力の結果ほとんど解決できたということか。(長谷川委員)
  • ほとんど解決できたと思っている。(川幡委員)

‐了‐

お問合せ先

研究開発局海洋地球課