海洋研究船委員会(第4回) 議事録

1.日時

平成18年3月17日(金曜日) 10時30分~12時30分

2.場所

古河ビル6階 F1会議室

3.議題

  1. 我が国の海洋研究船の利用・役割について
  2. その他

4.出席者

委員

 平(啓)主査、磯辺、大塚、加藤、小池、鈴木、平(朝)、瀧澤、田中、玉木、平井、松山、門馬、山室 各委員

文部科学省

 佐藤 海洋地球課長、大洞 海洋地球課課長補佐

5.議事録

1.我が国の海洋研究船の利用・役割について

【平(啓)主査】
 議題1我が国の海洋研究船の利用・役割についてということで、事務局からまず説明をお願いいたします。

【佐藤海洋地球課長】
 資料4-3というアンケート調査の結果(概要)を見ていただきたいのですが、項目が1から2、3、4、5と分かれております。
 それでは、まず1のところの説明をさせていただきたいと思います。1は海洋分野において、現在不足している、もしくは今後必要と思われる観測・調査・研究、その目的、ユーザーなどということで、いろいろご意見をいただきました。1つの視点はやはり分野別アプローチということで海洋物理からそれぞれ書かれているものがございますけれども、そういう形で分野別のいろいろアプローチのものが必要ではないかという指摘と、それに加えまして複合的な総合的な研究というご指摘もございます。また、少し場所を特定した上での極限環境における観測研究もしていかなければいけないのではないか。あるいはまた定点観測点の維持をきちんとしていかなければいけないのではないか。それから、沿岸域の研究が少し弱いのではないかという、少し場所的なアプローチからのお話もございました。それから、海洋生態系の関係がやはり環境問題などという中で、もう少し進めたらいいのではないかというものが大きな論点ではないかと思いますけれども、これについていろいろご議論いただければありがたいと思います。

【平(啓)主査】
 ありがとうございます。
 まず、これはアンケートということで、このアンケートの中の本文は皆さんにお配りになっていると思いますが、16ページを見ますと、委員会の運営に関しまして目標等がもっと明確にしてほしいということで、報告書のとりまとめを秋ごろにすると考えてよろしいわけですね。

【佐藤海洋地球課長】
 報告のとりまとめが秋ごろというか、年内までにはと思っています。最終的には、海洋研究船の果すべき役割、あるいは機能について整理するというのが目標だと思っておりますけれども、そこに至るまでの検討のプロセスをきちんと手順を踏んでやっていくことが非常に重要だと思いますので、そうしたときに、今の海洋研究船を中心とした船の実態はかなり勉強したわけですけれども、それを踏まえて海洋研究船の機能がどうあるべきか、といったときに、前回の会議でお話がありましたように、やはりそうはいっても、ほんとうにどういう海洋観測研究をするのかというところからひも解かなければ、期待すべき機能といっても始まらないのではないかというご指摘だったと思いますので、そういう手順で順次詰めていって報告のとりまとめをしたい。そう考えますと、とりまとめまで含めて、あと3回ぐらいは何か議論は必要ではないかとざっと考えますけれども、それは今後の進みぐあいかと思っております。

【平(啓)主査】
 ともかく秋、10月、11月に報告書ということになると、今、課長がおっしゃいましたように、あと2回ぐらいで、次回はできたらそういう面で年度明けから6月とか7月ぐらいには開いて、報告書のスケルトンまで持っていきたいと思います。

【平(朝)委員】
 どうも私にはまだ目標のところが見えないのですが、ずっとこれをやってきて、いろいろな広い分野から日本の研究船のあり方というものを見てきたとは思うのですが、一体この委員会は何を目指して、最終的に何を明らかにするものか。どういう提言をするのかという、例えば研究船の広い意味での科学目標とかというものが、きょうもアンケートがありますけれども、もちろんそういうところでコンセンサスは必要ですけれども、それをこの委員会で何か延々と1年やるような必要はないと思います。そういうことは学術会議とか海洋科学の学会とかいろいろアカデミアの場所でやるべきであって、最終的にこの委員会のもともとの私の理解は、やはり海洋科学技術センターと今の海洋研究開発機構と海洋研究所が一緒になってつくった船の全体像が、今、7隻あるわけですけれども、それを中心とした日本の海洋研究船のフリートのあり方、利用のあり方、それだけをとは言っていませんけれども、しかしそれが中心であることは間違いないので、それをやるのではないのですか。報告書の一番中核は何かということが、まだよくわからない。それを明確にしていただきたい。

【平(啓)主査】
 私の理解から最初に言いますと、参考資料2というのがありますけど、これはまだ変わっていないと思います。海洋研究船の活用方針、そして2番の今後の海洋研究船の整備のあり方、私は特にここが海洋地球課というか文部科学省としてどういう施策をとっていただくということの方向だと思います。それから3としては、海洋研究船以外の船舶の活用ということですが、この目標は変わっていないと考えてよろしいわけですね。もちろん、私はそう思っていますけれども。

【佐藤海洋地球課長】
 そうですというか、海洋研究船の整備のあり方という、仮に2に着目すれば、海洋研究船を現実に持っているということになれば、海洋研究開発機構の船と以前の東大海洋研究所の船、それは学術研究船ということで海洋機構のほうに移管されましたので、そういうものをどういうふうに考えるかというのがおっしゃるとおり結論だと思っていますけれども、先日お話ししたときには、その結論をどうするかということで、一足飛びにお話ししようとしたら、もう少し本来海洋研究船が担うべき研究とはどういうものかというような議論をいくらかした上でないと、何かすぐさまこういう機能が必要だとか、ああいう機能が必要だと言ってもちょっとスムーズではないというお話だったと思います。

【平(朝)委員】
 いや、それはイントロのところからもう一度整理し直してそこに行くというのですけれども、その目標は変わっていないということをちょっと確認したいわけです。

【小池委員】
 私はこの海洋研究船という中に、広義の意味では、やはり文部科学省が持っている船はみんな入ると思っていて、その中の議論で、大学の持っている船、それから今、JAMSTECに移管された船、それからもともとJAMSTECが持っている船を全部あわせて日本の海洋の研究、それから教育をどうしていくかということを考えます。そのための整備だと考えたほうがいいのではないか。それでよその省庁のはとりあえず外すとしても、この委員会にも皆さんにそれらの関係の人にも入っていただいて議論するという考え方だと思うのです。だから、あまりそれを狭くしてしまうのは、私は反対。

【平(朝)委員】
 僕も反対です。

【平(啓)主査】
 いやいや、私はあまり狭くはしたくないのですが、あまり広くやっていると、この問題は先ほど平朝彦先生がおっしゃったように、アカデミックな別のところでやるべき議論まで踏み入ってくるものはという気はします。

【小池委員】
 それに関してももう1つあるのですけれども、やはり第3期の総会の議論でもそうですけど、やはりユーザーはだれか。一体その船をつくってどうするのかというところの議論がないままに、こういういろいろな委員会での話が今まで進んできたように思うのです。やはりユーザーがだれで、そのユーザーのために一体どういう船を提示するかという観点でやらないと、やはり話がおかしくなってしまうので、確かにそういうのを出してくるのは大学、アカデミアですけれども、それをきちんと受けてやらないと、こちらだけの勝手な思い込みでの話になってしまう。

【平(啓)主査】
 ありがとうございます。ほかにいかがですか、我々は今何を議論しようかということなのですが、ではもう1回、今の話題になっていますアンケート調査の概要の1の面をもう少し議論したいと思います。

【佐藤海洋地球課長】
 今の話ですが、できる限り小池先生の意向にも沿いたいと思います。出口として今後の海洋研究船が果すべき役割・機能といったときには、今、所有しているJAMSTECの船を念頭に置いておくほかはないかと思いますが、ほかの船との関連、連携ということも考えて、広く取り上げたいと事務局のほうでは思っています

【松山委員】
 大学の持っている船は教育目的だけではなく、研究も相当行っていますけど、JAMSTECの船と一緒に議論するのは非常に混乱して難しい面が出てくるのではないかという気がします。始めに海洋研究船と名づけられたものにもうちょっと焦点を絞っての話のほうがわかりやすいかと思います。

【平(朝)委員】
 私も去年からずっとディスカッションを聞いていて、あるいは船の全体像のレビューを聞いて、個々の大学のいろいろな事情、いろいろな経緯が各船には秘められていて、それを一緒にしてJAMSTECの船と論議するのは無理だと思います。ただし、JAMSTECと海洋研究所の7隻と、ほかの研究所や大学との関係を整理するのはいいですけど、やっぱり中心の議論は海洋研究所の学術研究船とJAMSTECの海洋研究船のあり方というものを中心にしたまとめで進めてほしいと思います。

【小池委員】
 今、松山さんの言われたことはそのとおりですけれども、もともと学術研究船が海洋研に置かれた経緯というのは、基本的に教育と研究を一緒にやるという観点であって、その意味でのJAMSTECの船とは意義がもともと違うはずです。たまたま今それが運行はJAMSTECが担当しているけれども、もともとの目的はやはり違うところにあったはずです。それを一緒にして「研究船」というのはおかしいと思っていまして、やはり機能とか目的が何であるか、そして運行のやり方もまた別物であると考えます。

【松山委員】
 海洋研に「白鳳丸」や「淡青丸」があるときから、やはり「白鳳丸」や「淡青丸」の果す役割と、いわば水産系の各大学の持っていた練習船との役割はやっぱり違っていました。それはきちっと分けなくてはいけないという意味で言っただけです。確かにおっしゃるように、学術研究船とJAMSTECの今までの研究船とは多少違う。運行の仕方やら計画などが違うから、それは事実だと思いますが、それを分けて考えるのでしょうか。

【平(朝)委員】
 議論の中心はその点だと思います。そういう昔の区分をずっと引きずりながら、これからの日本の海洋研究を進めていくのか。もっと正しく、一度リセットして本来のあり方、理想を求めましょうというのが、この研究委員会の本来の姿だと思っています。

【玉木委員】
 私は今学部にいて、学生を連れて船に乗るのですけれども、JAMSTECの「よこすか」、「かいれい」であれ、「白鳳」、「淡青」であれ、基本的には運行としては同じです。調べてみたらわかると思いますが、「かいれい」、「よこすか」には相当学生が乗っていて、実際には「白鳳丸」、「淡青丸」とほとんど変わりない。だから一緒にどういうぐあいに運行するかという議論は大事かと思います。

【平(啓)主査】
 この問題は我々のほうで別に多数決をとるというような問題でもないので、そういう問題は認識した上で、と思います。
 どっちにしろ、我々は議論としては、今せっかく資料4-3というのをまとめていただいていますので、何が必要であり、どういう研究をするのかというのはわかるのですが、ユーザーについての議論はいかがでしょうか。最初のものについては、これは人類一般と考えていいのでしょうか。あまりユーザーというのがここでは、さっきおっしゃった意味では明確になっていないですね。そういうコメントはいかがでしょうか。
  1つはもちろん人類共有の財産としてのという知的財産という意味があると思います。それから、もう1つは例えば特に水産学等に出てくる日本の国民のニーズというか、そういうものも出てくると思うのですが、このユーザーというのはそういう議論でよろしいでしょうか。あまりそういう議論は自明だからしなくてもいいですか。

【小池委員】
 これに関して、ユーザーという立場から見ると、いわゆる水産学のような資源を対象にする応用的なものと、あと海を知るための基礎的なものとに分かれると思います。海底探査とか、海底資源の探査もやはりユーザーがあっての話で、ユーザーというかアプリケーションです。ですから、そういう大きな2つの視点は必要ですが、研究船の場合というのは、やはり基礎的な研究が主体でアプリケーションのほうはどちらかというと従というので多分いいのではないかと思います。でも、その視点はやはり入れておかないといけない。

【平(啓)主査】
 これについていかがでしょう。特に海底資源の場合もやっぱりユーザーを考えますね。これについては最近どうですか。資源開発という面での要求と、海洋の基礎研究というのは。

【玉木委員】
 資源開発については微妙な面があって、「第2白嶺丸」というJOGMECが資源共有で持っている船があって、私自身、海底資源探査研究を行い、実際には昨年度海外で実際に潜水鉱床ほかをやらせていただきましたけれども、一方でJOGMECという機関が「第2白嶺」で同じようなこともやっているので、その辺がどういうことになるのでしょうか。大学機関で行う資源研究ということになるのでしょうか。だから、政府、経産省あるいはJOGMECといったところが行う開発目的のものと、さらに区別されなくてはいけないかと思います。鉱床の研究では、例えばODPで実際に鉱床を掘っているわけですけれども、鉱床のでき方を研究するために掘ったところ、具体的にはパプアニューギニア沖で掘ったものを、今年鉱山会社がまた別に掘削をして、実際の開発研究を進めている感じですけれども、非常に基礎的な鉱床、プロセス、研究は学術的なところに入ってということでしょうか。資源開発に関しては少しユーザーが変わってくると思います。

【平(啓)主査】
 そういう面ではまず最初の鉱床形成過程の研究ということで学術研究として行い、その次にそういうステップが出てきたということですが、そういう面では当然そういう発展があるということですね。いわゆる知りたいということと、それを利用するというのはまたちょっと違ったプロセスでやられるということですから、そういうこともあると思います。
 ほかにいかがですか。

【玉木委員】
 ちょっと1点いいですか。実は「第2白嶺丸」はあと2年で廃船ということになっていて、今そちらのほうでもどうするかという検討会ができて、私も入っていますけど、なかなか難しい船をまた経産省が持つのは難しい状況なわけです。

【小池委員】
 もう1つの、いまつくろうとしている船はどうなっているのですか。

【玉木委員】
 それは石油探査船で、物探船です。物探船はつくると言っていますけれども、海底の普通の調査船がなくなるとすれば、どうなるのかなと思いました。

【平(啓)主査】
 そういう意味では学術研究船の役割が増える可能性もある?

【平(朝)委員】
 小池さんの整理に賛成なのですが、目的、ユーザーというと、今不足しているという前提があって、1に現在不足している、また今後必要と思われる目的、ユーザーというのを一緒にして、非常に広くとらえて大学や教育、研究というベーシックなところは今までもずっとこれを支えていく、あるいは支えてきた経歴があるし、もちろんこれは中心になるのですが、資源、防災、環境という社会貢献と言ったらいいのか、あるいは他省庁と言ってもいいのかもしれませんけれども、そういう部分について、海洋研究船はどうあるべきなのか。どういう関係にあるべきなのかということで見ると、私は、積極的にこの海洋研究船のフリート、何隻になるのかわかりませんけれども、それはオールジャパンで学術研究をベースとしながらも、そういう社会貢献にも役立つようなところに積極的にオープンにすべきだと思っています。ただユーザーとして活用していただけるかどうかはわかりませんけれども、積極的にオープンすべきであり、それがあり方だと思っています。

【鈴木委員】
 今、平先生のおっしゃることもわかるのですけれど、やはり学術研究船のメインはサイエンスの分野において、その成果がどう結びつくかというのは、また次のステップと考えないといけないかと思うのですけれど、例えば、この間ちらっと見たものに、海底資源の石油掘削の日本の200海里内の問題なんかがいろいろ出ているわけです。そのときに、今、平先生のところの「ちきゅう」がそういう機能を持っているから、そういう資源探査に貢献することを大いに期待するという論調になっています。
 そうすると、これはお金をとってくるためにという面もあるでしょうけれども、どうしてもサイエンスからテクノロジーという流れの中で、みんなそういう社会貢献につなげて、何かみんなこれをやってしまう。これはどうなのか。基本的な目的はやはりサイエンスにある。では、その中で社会貢献に必要なものは何か。そのためにも動きますという、そういうオープンな態度で、しかし基本的な使命はサイエンスということではないかと思います。

【平(朝)委員】
 はい、そのとおりでございます。

【門馬委員】
 今、不足しているというわけではないのですが、あるニーズとして、技術があります。今のJAMSTECの在来船でも技術開発の関係のニーズが結構あります。例えば、東大のAUVを使っていろいろな実験を行うなど、そういうニーズはかなりあるので、海洋工学という分野もやっぱりニーズとしてあると思います。それをニーズの中に入れてはいかがでしょうか。海の研究そのものでないとは思うのですが。

【平(啓)主査】
 無人潜水艇というか、そういうものの開発研究も当然、こちらの学術研究として取り上げるべきだということなのか。あるいはそれを利用することも考えるべきだということでしょうか。

【門馬委員】
 そういうユーザーもいるということです。

【平(啓)主査】
 そういう分野からの新しいエンジニアの展開としての海洋研究というものもあるということですね。そう理解してよろしいですか。

【平井委員】
 我々は現業官庁の産業研究所ですけれども、現在、生態系研究なども進めているわけですが、どうしてもなかなかはかりたくともはかれないもの、計測したいけど、なかなか定量的にうまく採取できないなど、そういう技術開発もぜひ研究という部門の中で扱っていただければ、それを応用して我々は使わせていただけますので、そのような位置づけの技術開発などもぜひ加えていただきたいと思います。
 それから、小池先生の分類に賛成で、さらに社会貢献も、これは社会に認知されなかったら意味がなく、そんなものは要らないと言われるだけなので、そこの意識は大事だと思います。それから、研究という中には、大学での今後研究に入っていく人の教育というものももちろん含んでいるという理解でよろしいですね。

【平(啓)主査】
 それは4のほうに入っていますからもう1回やりますが、当然入っております。このページで、特に船という面から見た場合に、真ん中より下にありますけど、水深2メートルから25メートルの部分、干上がるほど浅くなく、そういう中での情報を市民に公開することが必要というニーズがあるわけです。このアンケートの中でも、こういう浅海部分というのは実は海溝までつながるような非常に大きなつながりがあるので研究は沿岸だけやればいいものではない。もちろん海としてはつながっているという強調した意見もあったと思います。ただ、技術的に考えると、この範囲はちょっと船のサイズなどが違うように思います。その辺はいかがでしょうか。

【小池委員】
 喫水の問題ですが、船のサイズによりますけれども、かなり頑張ればやはり5、6メートルのところまでは行けると思います。だから、みんな船が大きくなってしまうと、結局沿岸の研究はほとんどできなくなってしまうので、その意味でやはり大きさ、喫水の問題というのは非常に大事で、今の「淡青」ももともと250トンだったのが600トン近くになったときに、大分入れる範囲が減ってしまったのです。もちろん大きくなることでいろいろなメリットはあったのですけど、やっぱりデメリットも出てきてしまって、ですから、その辺のところはやっぱり今後のニーズがどこにあるかということで大きさとか、喫水は、そういう船も必要だということはやはりみんな認識していただきたいと思います。

【平(啓)主査】
 いわゆる既船では、水深5メートルは怖いですね。でも、そういう面で思い起こしますと、小池先生たちは大型船にゴムボートを積んで観測に出たわけで、浅いところのためにはやっぱりそういう船がベースになる、という考え方もあってもいいわけですね。だから、2メートルのところはやらないというのではなくて、沿岸に拠点を持って研究する立場と、そこには例えば海洋研でいえば、大槌海洋研究センターでは、水深2メートルでもできるし、あるいは湾口でいくと100メートルぐらいまで行きますけど、その辺まで非常に小型、5トンとか10トンぐらいの船でやっている。ただ考え方としては、多分2メートルとか浅いところは、山室先生が強調したように思うのですけど、その辺は今のように考えればいいわけです。どういう意味かというと、沿岸に拠点のないところでも研究船をベースにして行うような考え方でアプローチできる。

【山室委員】
 ちょっと2メートルというと、また今の5メートルとの差が大きいのかもしれないですけど、基本的には沿岸から行くには、この前私が泳いでやっぱり片道1.5キロが泳ぐのがせいぜいで、それ以上は大変なのです。そういうときに、今度は船をステーションにした場合、船もやっぱりゴムボートとか小型のボートで運べるものというのは限られていると思います。先ほど、新しい観測法が必要だということが平井先生から指摘があったと思うのですが、そういう機材を積み込むのも、今のようにゴムボートもしくはボートというと、やっぱり限りがあります。私が想定していたのは、琵琶湖で、琵琶湖もやっぱり水深5メートルぐらいからあそこは100近くまであるのですけど、それが観測できるような双胴船があるのです。その双胴船からはROV、AUVが落とせるように、そういうものを共同で開発しながらやっている。ああいうものが琵琶湖のようなところでできて、沿岸域でないのはちょっとおかしいのではないかというイメージで提案させていただいたもので、そのステーションとする船が1つあればいいという考え方とはちょっと違います。やはり、沿岸に特化した研究船というのはこれから必要ではないかという考え方です。

【小池委員】
 さっき平さんが言ったことですけれども、いわゆる社会的な貢献とすると、今、海の環境に対してやはり期待されているところは大きくて、この真ん中にある定点観測点の保持もやはり船がないとできないのです。なかなか日本の場合は、あるステーションを、例えば月に1回ずついって観測するということは今、非常に難しい状態になっていて、世界的には今、いわゆるそういう地球のいろいろな海洋の変動に対して、場所を決めてモニタリングするステーションが10点以上あるのですけれども、日本の場合はまだ1点もないというか、それを維持できない。これはやはりブイではできない。いわゆる生物地球科学的な観測をやらなければいけませんから、今のところブイではできないので、やはりどうしても船が必要で、かつてもクレストのお金をもらって何年間か続けたことがあるのですけど、このときもいろいろな船が行ったり来たりしてやって、やっと10回ぐらいできた。やはりそちらの要求というのは非常にこれからも大きくなると思うのです、ぜひその点も考えていただきたい。

【平(啓)主査】
 これは定点観測点とだけ書いておくと非常にわかりづらいですけど、イメージとしては、例えばバミューダ沖にアメリカが維持しているのは1950年から始めて、もう五十何年ずっと海洋物理の変化も、海水もストックしています。ですから、その中の大気の組成の変化だとか、50年間にわたってそれができているわけです。同じことを、日本でもJGOFSというプロジェクトの一環として各地でやろうとそんなに続かなくて3年ぐらいで、毎月1回も難しかったでしょう。

【小池委員】
 いや、4カ月に一遍とか。

【平(啓)主査】
 バミューダのステーションの場合は毎月1回で、今はもうそれは何かNSFが出資するような株式会社で運用しているはずです。ドイツも持っていまして、我が国はせっかくやろうと思ってもできなかった。これは最初に出てくるような地球温暖化だとか、地球の長期変動を検出するという面で非常に有力な方法になっております。それを使ってほんとうに海水温が上がっているのかどうかという検証も進められております。
 1に関してはもうよろしいですか。では、これでこの部分が海洋観測の今後のあり方の1つの部分になってくると思います。
 それでは、2の「船」で行うべき観測についてのとりまとめの概要をお願いします。

【佐藤海洋地球課長】
 それでは、2「船」で行うべき観測ということで、先ほどどういう観測研究が重要かというのを、今度は船を使ってという視点で見た場合には、ということでのご意見だと思います。どういう形で出てきているかというと、今もお話にあった定期観測や、測線を決めた場所での観測は、研究船ではないとできないのではないか。研究船でやるとすれば、表層とか深層とかいう区分だとか、あるいは物理的な調査か科学的生物観測なのかというような視点でご意見をいただいているところですけど、その辺をすべてできるかどうかというのがまた研究船のほうで出てくるのかもしれません。いずれにしても船で行う観測というのは何をしなければならないのかということで、またご意見をいただければありがたいと思います。

【平(啓)主査】
 今の2のところについて少しディスカッションをしたいと思いますが、まず1番の測線を決めた観測は研究船ということで、研究船の定義というのが、我々は研究のために船がどこに行ってどういう作業をやるというのを決めるが研究船で、例えば官庁船などはまた別の目的を持っているわけですから、研究者が乗船して、こういうふうに走ってここでこういう作業をしてほしいと言っても必ずしも受け入れられない。全く同様に大学の練習船であっても航海士の訓練という目的があると、必ずしも希望通りにならないという面では、これは私の定義かもしれませんが、研究船の非常に大きなところでございます。
 ここで特に4つ目ぐらいに、生物地球化学的な計測は海洋研究船でなくては不可能ということなのですが、これについて背景を加藤先生、どうですか。いわゆる化学の立場から、何かコメントありますか。

【加藤委員】
 私たちはやっぱり試料があってということで、表層から深層までという枠組みで試料があって、その中身をはかるということは研究船でなくてはできない。もちろん衛星画像で表面のことを利用することは十分あり得ますけど、そういう点では研究船でなくてはできない観測だということで、私自身もそう思って船に乗るわけですけど、同時に、そういう技術は定期観測、定点観測にももちろん使われていくわけですから、基本的には研究船の化学から見ると研究船でなくてはできない仕事ばかりだと考えています。

【平(啓)主査】
 実は化学屋さんには非常に同情していまして、化学の人はサンプルウォーターが上がってくると寝ないのです。50時間ぐらい皆さん徹夜でずっと分析したりするので、そういう面で手法が物理とは全然違う。そういう面で、これはもう確かに船でなければいけない。海水は当然生物が生きているわけですから変質しますので、倉庫に入れておいて陸上でゆっくりというわけにもいかない。そういう観測は当然、生物地球化学というのは化学的には微量の精度を上げるためには人間がやらなければいけないし、生物という面では生きているということなので、そういう面ではほんとうにこれは海洋研究船でなくては不可能であり、この海域の特性を調べるということになれば、これも生物屋さんは産卵期が何月だから何月何日に船を使わせてくれという要求をしょっちゅう出してくるので、非常に厳しい要求もありますが、それをやるためにはやっぱり専用船というか、研究船がなくてはいけないと理解しております。

【小池委員】
 この分野で仕事をずっとやっていて、私たちはとにかくサンプルをとって、その後短時間の間に実験をして、活性をはかって結果を出してやっと寝ることができる。そうするともう次のサンプルが採取され、ほとんど寝られない。ですから、その意味ではやっぱり船に乗って、そこで実際に研究者がいて仕事をしなければいけない。私もいろいろな船に乗り合わせて見ていますけど、一番その意味ではそこにいなければいけない。たくさんの人がいなければいけない分野になってしまった。これを変えていくのは、なかなか現在難しい段階です。

【平(啓)主査】
 そういう意味では、現場に研究者がいなければいけない。そのための船だということだと思います。

【山室委員】
 考え方として、実は船で行うべき研究というのは、機械ではなく人間でなくてはできないもの、もしくは衛星での観測以外、すべてではないかという考え方のほうが逆に今後の技術科学開発の方向も見えてくるのではと思います。例えば、人間ではなくてはできないものというのは、スラスターとかモーターの音が出るようなものがあると逃げてしまう場合、ダイバーがなるべく音を立てないように観察する。それから、例えば水産生物の調査でしたら、水産の漁船に乗ってこの網だとこういうものがとれる。そういうものは研究船がなくても、むしろ研究船を使わないでやるべき研究だと思うのですが、基本的にはそれ以外というのは、それに応じた研究船、もしくは汎用でもいいのですけど、なるべく、例えば沿岸域ですとか特化したものを目指すのが今後の技術開発の方向として考えやすいのではないかと思います。例えば、海草、シーグラスとかの観察は潜ってやればいいという意見もあると思うのですが、それをやっていたがために、ある1つの測線でしか見ていなくて、傾向がわからなかった。これをROVなりAUVで行えば、また全く違う面が見えてきます。だから、船というと深くないとユーザーがいないと思われていたから、これまで浅いところ、もしくは、ここでも指摘があったような生態に関する情報が抜けてきたのではないかと思います。

【平(啓)主査】
 今度は海底あるいは水中測位がJAMSTECの船以外では無いということなのですが、この辺何か背景をちょっと説明していただけますか。

【門馬委員】
 多分、JAMSTEC船以外の観潮船とか、大学の練習船とかには水中測位を持っている船はないと思います。これはなぜかというと、あまり必要性がなかったからではないかと思います。ただ、例えばドレッジするにしても、ピストンを行うにしても、ほんとうは位置を正確に知るべきです。そういうニーズがあまりなかったものだからついていなかっただけであって、技術的にはどの船でもつけることはできるわけです。JAMSTECはもともと潜水船の「しんかい」などを動かすことから始まっていますから、それは当然水中測位がないとどこに行ったかわからなくなりますから、当然ついているわけです。そのうち目的がだんだん変わってきて、通常の調査に関しても最近ではトランスポンダをつけて水中の位置を出して行っているわけです。だんだんにその目的が変わってきて、測位の使い方も変わってきているのではないかと思います。

【平(啓)主査】
 そういう技術で、これは全く同じでシーグラスの場合であれば、多分浅ければマーカーを打って、区画を決めたりして位置を決めるのでしょうね。

【山室委員】
 今、そこが一番難しいところです。

【平(啓)主査】
 でも、どちらにしても船で行うべきということで、船の機能の話まで出てきましたが、あとはどうでしょう。この中では、生物の話は生物調査が漁業では得られないプランクトン等ということです。

【平井委員】
 我々が目的としているのは、国連海洋法に基づいて資源をいかに評価するか。その動向を知って資源管理に役立てるかという観点ですけれども、どうしても魚だけ見ていったら見えない環境があって、餌の変動があって、それは気候変動とかかわっているというところを詰めていかなければいけないので、どんどん新しい分野の情報も加えて、その資源評価なり資源の動向予測の精度を上げていかないといけないという観点から、こういう生物の量もやっぱり表層のものにきいているとかいうのがわかってきたら、どんどん新しい情報もとっていきたいという観点から、漁業だけではとれない生物情報、圧倒的に多いと思います。それがかなり漁業を考える上でも持続的生産を考える上でもきいているという観点からそういう意見を出させていただいております。

【平(啓)主査】
 それでは、その下ですけれども、定点観測というかモニタリングということでは、今、ここに書いてあるような定型の物理観測及び生態系調査ということですが、水産庁の現状はいかがでしょうか。

【平井委員】
 各県の水産試験場と水産研究所が分担して行っているのですけれども、まず各県の方はかなりの部分が県の交付金化されまして、今まで国の補助金で運営されていたものが、国の補助金から交付金になったので、かなり各県が、いかにその重要性を説明できるかというところでの予算確保というのが一番大事になっています。そこが問題で、東北とか、中央とか、北海道とかといういろいろなブロックごとに、水産研究所も協力してそういうモニタリングの必要性というのを訴えられるようなもの、これまでの成果、今後のあり方、これがなくなったらどういうことがわからないのかということを訴えるような、今そういう資料、一種のパンフレットをつくっています。水産研究所はどちらかというと、もう少し水海構造なんかの生態系構造というのですか、例えば親潮が入ってくる北海道厚岸南東のAラインとかで、日本に入ってくる親潮を1つのモニターラインとして物理観測から餌、高次の生産までという観点のモニタリングを行っています。それは御前崎の定点と長崎から西へ延びる観測線。それは気象庁のPの何とかラインという汚染ラインと協働するような形で進めております。こんなところが現状です。
 私の意見として、最初に平先生から定線観測、測線を決めた観測に限るというところについては、ほんとうにそういう認識でいいのですかというのが私の疑問ですけれども、我々が考えている定線観測というのは、WHPのラインというイメージではなくて、毎月気象庁が季節ごとにやるようなPNラインとかPMラインとかという観測、それから都道府県が行っているような定線観測、毎月やっているような観測というのを定線観測というイメージで持っているので、むしろ我々はそういうことを学術研究船には求めてなくて、例えばステーションパパのようなところを学術船、共同でなかなか観潮船とかが行けないようなところの定点を維持するような共同体制をつくってくださいとか、それから大きなプロジェクト、世界プロジェクトで動いた場合に、こういう定線を各国で分担してやりましょうという定線とかというイメージでもって考えているので、私がこの文章を読んだ場合には、学術研究船も毎月の観測をするのですかというイメージになってしまうので、その辺は少し整理しておく必要があるかと思います。

【平(啓)主査】
 この定期観測というのがあるのを忘れていまして、そうとると非常に意味がわかりづらくなって、ただ、強調したかったのは研究のために測線、測点を決めるということを言いたかったのです。

【松山委員】
 物理的な観測についてですが、それなりの精度できちっとしたものを出すということで、温度や塩分をかなり正確に出すとか、あるいは機械を持っていってある箇所で詳細な観測しているということがありまして、だから船は必要だし、あとはアルゴフロートで済むではないかというと、アルゴブイが世界に全部ばらまかれても3,000個しかいかないということと、それなりのきちっとしたキャリブレーションが必要になると思います。

【平(啓)主査】
 アルゴフロートの議論のときに最初にこの提案をした人が、これでもう我々は研究船が要らなくなると言ったので、それだけではカバーできませんよということで、ものすごく反論したことがあります。

【小池委員】
 この中で、ブイとか海底ケーブルネットワークとか、海底地震計等の、そういう設置、回収、補修に船舶が必要なことは当然なのですけれども、多分その目的によってある程度業務としてやっているようなものに対しては、それに対する支援船という形で、別に船が必要だと思います。あくまでもこれは基礎的な段階での設置、回収といのは当然やるべきですけれども、それがある段階に進んだ先はまた別の船を考えるべきで、何かこの辺のところは、そういうステップの話が全部抜けてしまって、ただ対象に対してこういう船が必要だという議論になってしまっているので、ちょっと危ないような気がします。

【平(啓)主査】
 すみません。これはそういうふうになっています。例えば、先ほど平井先生が言われたようにちょっと整理の仕方が悪いと思うのですけど、でも行うべき観測というか、そういう面ではあると思うのですが、ほかに追加するようなこととか、どうですか。ほかから見て、船でもっとこういうことはというイメージは何かございますか。

【磯部委員】
 具体的にこういうことというのはないのですけど、私は海岸ばかりを見ている立場からすると、例えば、厳島神社は台風が来たときに床が抜けたということが起こっていますけれども、これは結局見直してみると黒潮の流路が変わっていたというところに帰着する面が多いし、それから東京湾でも青潮がひどく起こったというのを見ると、黒潮からどれだけ海洋の海水が入り込んできたのか、その密度がどのぐらいであるかということを相当規模とか、強度というものにきいているということが後でわかりますので、そういう意味では非常に、2メートルよりもっと浅い海岸まで含めて、境界条件としての海洋が非常に大事で、そういう観測ができるといいと思っています。
 それは大きくわけると2つあって、定期観測という言葉がありましたけど、いわばルーチンワークとしてデータをとるという側面と、それからもう1つは純粋にオリジナリティーのある学術的な研究として新しい現象を明らかにするという面があって、この後者がすごく大事だと私は思います。定期的に行うというのはある程度見通しがついたところで、これはもう組織的にやりましょうというのはむしろ別途考えてもいいぐらいではないかという気がしますけれども、新しい現象の解明であるとか、科学者の興味に従ってやるという、別の言葉で言えば基礎科学ということになると思いますけど、そういうところをこういう研究船で実施ができるようにしたいし、そのための研究船の装備であるというものを考えなくてはいけないのではないかという気がします。先ほど1の議論をしていたときに、社会貢献ということができましたけれども、それは新しい興味ある現象が出てくると必ず社会貢献になると思いますので、あまりそこを目的にしてというのは、かえって画期的な社会貢献ができるような知見がたまらないのではないかという心配がありますので、できる研究船を考えるときに自由度の高いという考え方をしたほうがいいのではないかという気がします。

【平(啓)主査】
 次に3については、このままで何かよろしいですか。

【佐藤海洋地球課長】 3については、果すべき役割、必要な機能になっているのですが、最初のほうはむしろ装置上の機能が必要ということが書いてあるのですが、3ページの半ば以降はむしろそうした機能の組み合わせがどうあるべきか、今まで出たような必要な観測研究に対して、どういうタイプの船がいいのか、また、その船のタイプの持ち方の話が出てきているのですけど、むしろ前半のほうは事務的にでもいくらでも整理ができてしまいますので、後半のほうの機能の組み合わせとかいったほうの話にもう少しご意見が頂ければありがたいと思います。

【平(啓)主査】
 それでは、フレームとかチタンワイヤーとかいろいろな装置の話が出ていますので、今の話でいきますと、「従来、1つの研究船に多くの機能を持たせるために大型船になる傾向があった」というところから下ぐらいでちょっと議論をしていきたいと思います。
 これは、何でもかんでも詰め込んだ大きな船ではなくて、少数のということですが、何かございますか。

【小池委員】
 これに関しては多分意見が分かれると思うのですけれども、もともと海洋研の共同利用であった場合というのは、ともかくすべてのユーザーを対象として使うということで、分けたのは沿岸域と海洋という2つの分け方しかしていないのです。それはやっぱり船が限られていて、その2隻でとにかく沿岸から外洋まで全部やるということでスタートしたのですけれども、その途中で第3船の話が出て、その場合はある程度特化した船にしましょうという議論もありました。ですから、全体でどれだけの船が持てるかによって多分そこは変わってくると思うのです。確かに、目的別に分けたほうが船の使い方としては効率がいいですけれども、ただ、最近の傾向としてかなりマルチ、いろいろな分野で総合的な研究をする方向に移っていますので、あんまり単機能にしてしまうと非常に使いにくい船になってしまう。ですから、その辺のバランスが必要だと思います。

【平(朝)委員】
 我が国の海洋研究全体を見渡してつくられてきていないので、要するに我が国の研究船のフリートというのはここをいろいろな個別の経緯を経てつくられてきたということがあるので、初めからある大きな枠組みの中で、こうあるべしという理想的な姿を求めてつくられてきたわけではない。これは世界でもそうだと思いますが、今回はそれを考えるいい機会だと思います。バランスが悪く効率のいいシステムになっていない。次の5隻というのは全く個人的な意見なのでいろいろ言っていただければいいと思いますけれども、1~3は総合研究船、「目的とした」と書いてあるのは、多少総合といいながら、ややウエートがあってもいいのかなというぐらいのレベルの話です。それから、あとの4と5はかなり特化した船になるので、4は地学海底探査的な船になりますけれども、もちろん重力、地磁気とか、それからこれにほかの総合研究船的な目的のCTを積んでもいいのですが、このぐらいあれば基本的には能率よく、日本の海洋研究をサポートできていくのではないかと。沿岸の話がありましたが、沿岸のほうは喫水を上げたり、下げたりできるような双胴船というのも1つのチョイスだと思いますし、そういうのは技術開発で可能であろうと思いますので、これは深さに限定したとか何とかということではなくて、このような機能の5隻ぐらいあれば十分ではないか。1つの提案として考えていただければと思います。

【門馬委員】
 これに関連して、JAMSTECの中で今検討会がありまして、船の将来構想を考えております。きょうはまだお出しする資料はできていないのですけれども、その中で、アメリカのUNOLSという制度がありますが、そのクラス分けに従ってJAMSTECの7船を見ますと、圧倒的に多いのがグローバルクラス、世界のどこでも行けるクラスが圧倒的に多い。「白鳳」もそうです。圧倒的に少ないのが小さい船、沿岸域の研究をするための船が、例えば今、UNOLSに従えば5つに分かれているのです。その一番小さいのがローカルクラスで40メートル未満、その次がリージョナルクラスで50メートル未満です。それに当てはめると、「淡青丸」がようやくそのリージョナルクラスに入ります。それ以下が1隻しかないわけです。だから、やっぱりクラス分けという考えに従って、それぞれの船にマルチ機能を持たせるという考えが必要ではないかと個人的には思います。ですから、そういう考えに従えば、5船では到底足りないと思います。

【平(朝)委員】
 これはJAMSTECのフリートを目指したもので、ちょっと言わせていただくと、比較的小型の船こそ各大学とか、アメリカのような非常に何もウッズ・ホール・スクリプスだけが研究所じゃなくて、各州立大学とかにかなり程度の高い沿岸研究を主体とした研究所がたくさんあります。それが人材を育てているので、そのベースをやっぱり大学等々がやっていただくのが一番、その部分は今回は触れていないのですけれども、そこは大学のあり方として最も大切なところだと思っています。

【門馬委員】
 全体としての役割分担ができればいいと思います。

【平(朝)委員】
 ええ、それがいいと思います。

【平(啓)主査】
 それは結局、今回そうはならなかったわけです。大学の船がJAMSTECに移管されたわけで、だからといって役割が違うと言われては、結局最初におっしゃったのがそうでしょう。いつまでも経緯ばかり言っているのはよくないと。

【平(朝)委員】
 いやいや、大学がそれで例えばいろいろな練習船や研究船、各大学が持っている船というものをどのように維持していくかということに関しては、やっぱり各大学がしっかりしたプランのもとにやるべきであって、別にその部分を全部ワイプアウトしたとは全然思っていません。それはまた別な次元の話だと思います。

【小池委員】
 これは研究が目的で、それで教育も多少入ってくるという形です。やっぱり海洋学というのは外洋だけが研究対象ではないのです。沿岸もやはり大事だということは、皆さん言われているわけです。では、その沿岸は大学に任せろというのは、さっきの話と逆行するわけです。さっきの話というのは、やはり今ここで定義されている海洋研究船の中でどうやって、外洋から沿岸まで、基礎研究をやるかということの議論をしているので。

【平(朝)委員】
 アメリカに何十隻という小さい船があります。それが必要なので5隻という議論は全然足らないという話と、今、全体としてオールジャパンとしてどういうフリート、それから小さい船も含めてというのは違う議論ですよと、私が言ったのは一部のJAMSTECの持っている7隻ということを言っただけです。

【平(啓)主査】
 5隻と言われても困るので、やっぱり5種類が考えられる種類でしょうね。これはそれで大きさも考えると何隻も必要だということになると思うのです。

【平(朝)委員】
 いや、単にJAMSTECの持っている7隻を念頭に置いただけで、それが5隻ということです。

【佐藤海洋地球課長】
 この辺のところは多分本命になってくると思います。我々も仮に何か船で代船を、と言ったとしても、予算の事情が非常に以前と比べて厳しいので、何かそういう要求をするということになれば、船というのはどういうものを持つのかという全体構想を示せという話になると思うのです。したがって、どういう機能を持った船をどれだけ必要かみたいな頭の整理はやはり必要ではないかと思っていますので、この辺のところの議論を次回は本格的にしたいという前に、ほんとうにどういうようなニーズがあるかとか、研究があるかみたいな話を今回しておきたかったと考えているところです。

【大洞海洋地球課課長補佐】
 1点、浅い海について、多分JAMSTECの船というのは全国共同利用の船を持つのがJAMSTECの役割だと思うのです。海洋研から移ってですね。浅い海について全国共同利用の船をどの程度そこまでカバーするかというのが1つ論点になってくるのかなと思います。例えば、ほんとうに浅くて数メートルのところをもしJAMSTECの共同利用の船が日本全域をカバーするというのは厳しいのかもしれないですし、やはりJAMSTECの持つべき学術研究船の機能というのはある程度これからまた少し絞る形か、どれくらいの船を持つべきかということをぜひ議論していただきたいと思います。

【小池委員】
 先ほどの水深2メートルとか3メートルというのは非常に極端な話になってしまいます。今の「淡青丸」でも、昔の「淡青丸」でも、ぎりぎりでそこまではいかない。実際には沿岸といっても黒潮から黒潮の外ぐらいまではずっと出ていて、大体航海として1週間から10日くらいの航海。やはりそういうユーザーというのは非常に多いわけです。「淡青」の利用を見ていてもわかります。それを全国共同利用から外すということは全国共同利用の仕事の半分以上を外したということになってしまいます。

【大洞海洋地球課課長補佐】
 それは外すという意味ではなくて、全国共同利用の船としてはそういう機能が必要かどうかという観点で、必要であればやはり入れるべきでしょうし、それは全国共同利用ではなくて、各大学の船でカバーするべき分野だということであれば違うと。そこは決して外すというだけではなくて、全国共同利用の船がこういう機能になるべきだという議論をしていただきたいということです。

【小池委員】
 それは先ほどの最初の前提の話で、大学の船はそれぞれの大学の教育や研究があるので、そこから一応分けるという議論でした。今度、今になってからそれは一緒に考えましょうというのは、ちょっとロジックがおかしいように思います。

【大洞海洋地球課課長補佐】
 最初の議論はJAMSTECの船がどういうふうな範囲でどういう機能を全国に提供しましょうか、というところを中心に議論する。ただし、その際に当然大学の船はいろいろな機能を持った船がありますので、日本全体の枠組みの中でそれらも視野に置いた上で、こっちは役割分担をしっかり視野に入れて、JAMSTECの船がどこまでを行うか、どの範囲まで広げるかというのを議論するという意味で、軸足をJAMSTECの船に置いた上で、当然大学の船がこういう機能があれば、JAMSTECの船はこういう機能になります。大学の船でこういう機能を、今、大学の現状として持てないのであればJAMSTECの船はこういう機能を持ちます。そこは決してそこだけに限定するという意味ではなくて、やはりJAMSTECの船がどういう機能を持つべきかという純粋な形から議論をしていただければという趣旨でございます。

【瀧澤委員】
 学術研究という観点に立てば、大学の船というのは今ないのです。松山さんはよくご存じですけど、練習船という機能ですし、それは確かに一部学術研究に使っていますけれども、非常にか細い話で、それすらどんどん消滅する運命になるわけです。そういう危機感を無視して、無邪気に各大学もローカルな船を持つ、もちろん、そういう措置があって、方向性が見えれば構わないのですけど、我々はここで、あと現実を見れば、やっぱり今学術研究で買っておいた海洋研の2隻、今移ったからJAMSTECの7隻で結構ですが、そこをどうするかという議論をしていかないと非常に浮ついた議論になるような気がします。

【松山委員】
 ちょっと補いますけど、大学の船、水産の練習船というのは数年前までは研究をやることが目的外使用と言われていたのです。だから、何かありましたけど、考え方としてさっきの資料の中にありましたが、余席利用という考え方なのです。実習で使って、あと余席があればどうぞ乗ってくださいという発想があったわけです。ところが最近は積極的に大学が生き残るためにそういうことではいけないということで、教育をしながら研究も続けていくという姿勢を強く出そうというので、全国的にそういう動きをしているということです。
 それから、沿岸をやる小さな船、5トン、10トンぐらいの船というのはおそらくそんなに遠くまで行けないですし、それこそ2メートルから5メートルぐらいの範囲を走り回る程度でおしまいになってしまうと思います。そういう船だってそんなに多く持っていないと思います。

【佐藤海洋地球課長】
 多分、ここのところは非常に重要なところなので、次回本格的に議論したいと思います。皆さま方のそれぞれの立場から考えたら、どんな機能の組み合わせがいいのか、どんなタイプの船をほんとうに持つべきなのかとか、そういうことを今日すぐにという、そういうことを念頭に置いてこなかったでしょうから、その辺のところを次回のときに議論させていただきたいと思います。

【平井委員】
 理解を深めるための質問ですが、平朝彦先生から出されている1から5で、例えば特殊なドリリングなど目的がはっきりとしていますが、1、2、3の物理、化学、生物に特化とした船というのはなかなかイメージがわかなくて、むしろ総合的なデータをとるのが海の研究で重要だと自分自身の分野では理解しているのですけれども、物理と化学、1と2の区別をどのように考えておられるのか教えてください。

【平(朝)委員】
 主な目的としては総合海洋研究船という書き方をしているのですが、例えばある船は1万メートル級のすごく強いワイヤーを持っているとします。しかし、CTDなどは共通でしょうから、全ての船で一斉に持ちます。では、そこのところにバイオの放射を扱えるようなラボラトリーを、すべてのところに置くのか、全部コンテナで持ち込むのかといった場合には、1隻はそういうものを常備しておいたほうがいいとかという議論があると思います。そういう少し色分けを、総合研究はどの船でもできるけれども、各船にちょっとした色づけをしておかないと、あまりにも共通というのでは、いろいろな目的には使えるけれど、ある重要な目的があったときに非常に使いにくい船となっても困るので、総合的といっても多少の色分けはあったほうがよいのではないでしょうか。そのレベルの話です。

【平(啓)主査】
 そういう面でいくと、実は5種にしろというのが最初、私のコメントですが、例えば海洋生物と海洋水産というか、水産学とは装備が違ってくると思います。生物の場合にトロールするとか。

【平井委員】
 我々が常時使っている調査船というのは、特に漁をするわけではないので、魚をとりますけれども、量をとるという観点ではないので、むしろ生物調査とはほぼ共通したものだと考えていただければいいかと思います。

【平(朝)委員】
 機能的に大型のビームトロールできるとか、プランクトンネットなどを全部持つというよりは、そういうものを扱いやすいように、それに特化したものが必要だったら、それを海洋生物船と呼びましょうという、それだけの話です。

【小池委員】
 この分類は総合海洋研究船だと、かなり大きなものを考えているのですね。

【平(朝)委員】
 大きさとか喫水とかはどうにでもなると思います。8,000とか1万トンとかの船はでは効率が悪いですね。「淡青丸」は大好きですけど、もうちょっと大きさがあって、やや荒れたところでも行けたほうがいいと思いますし、先ほど山室さんが言われたような双胴船みたいなもので、いろいろ喫水の調査ができるようなもののほうがいいかもしれないですし、ただその辺の細かい機能を言っているのではなくて、大体このぐらいの分類かなということです。

【平(啓)主査】
 私が非常に心配するのは、5隻というと、今7隻もあって、ということが始まるので、その辺の影響がないでしょうかということです。

【平(朝)委員】
 影響は甚大だと思います。でも、現実とその分野を初めから考えれば、このぐらいの整理が効率よく、なおかつ装備を最先端にするにはアップグレードして技術者を常に育ててということが、今できていないわけですから、そういう装備のアップグレードも、数年たったら学術研究船だってあっという間にお古な船になってしまう。そういう状態ですので、アップグレードした装備を常に持っていったら、5隻といえども7隻以上に確実にお金がかかります。ですから、世界最先端の装備を常にもつ、そういう意味です。

【平(啓)主査】
 ほかに何か、このコメントでいかがでしょうか。こういう種類、大きさもいろいろ考えなければいけないからという議論だと思いますが、あまり議論しても、いかがでしょうか。その2つくらい上にありますが、沿岸域の研究でも我が国はすぐ6,000メートルになるので、そういう深い調査に対応可能な装備が必要というのは、また日本の特徴だと思います。大西洋では、それほど深いところは限られているわけですが、東京から600キロ東に行っただけで、9,000メートルになりますので、そういうところは特徴になると思います。

【大塚委員】
 私は研究についてはあまりよく知らないのですけれども、次にこの課題についてもっと詳しくお話しになるということで伺っておきたいのですけれども、今、ここに5つ並んでいるように、全部分けていかないと船はだめなのでしょうか。もっと総合的に、例えばスタッフとかも全部関係してくるわけです。研究者の方が研究しやすいスタッフを育てていくとか、サポートしていくスタッフの方のことも考えていかなくてはならないわけです。そうしたときに、こういう化学とか物理とか生物学が別々に船を持たなければいけないものなのですか。今ほんとうにそういうふうになっているのでしょうか。

【平(朝)委員】
 目的とした総合ですので、決してこれは1分野と言っているわけでは全くありませんので、それは先ほどから誤解を招いているのですけれども、味つけが違うと言っているだけの話です。
 しかし同時に、この3隻、4隻、5隻の間で人を回していけば、ほんとうにいろいろな機能を持った人が育ちます。ある意味では少し専門性を持たせたような技術者も育ちます。ですから、別にこの1隻に乗ったから永遠にその1隻に乗り続けるということではなくて、総合的に管理すれば、その5隻の中をサポートと支援スタッフは順次乗りかえて、目的、年に応じて乗りかえていろいろな機能を身につけていくということもできると思います。

【大塚委員】
 これは今、書かれたのはこのJAMSTECに置く船の理想として5隻を書かれた。ということは、日本全体としてはまた違う絵がかけるわけですか。

【平(朝)委員】
 残念ながら日本全体では、今研究船と言われているのは7隻しかございません。

【大塚委員】
 そうなのですけれども、でも、必ずしも5隻に限らなくても、例えば浅い海の調査船がありますね。例えばそういうものだと、管理はJAMSTECがしたとしても、現場に近いところに船がなくてはいけないのではないかと思ったのですけれども、浅いところ用の船も、いちいちJAMSTECからどこか沿岸に行ってという使われ方をするのでしょうか。

【平(啓)主査】
 今のところそうしています。陸上輸送で資材と人員を交代しながら全国一周することもありますけど、原則として母港があって、そこが基地になっている。

【大塚委員】
 例えば、そういった浅いところを研究する船というのは、もちろん深いところほどお金がかかるわけではないですね。幾つかもつという可能性はないのですか。

【平(朝)委員】
 JAMSTECが例えば全国10カ所に、そういう浅海用のステーションを展開して、そこに10隻、例えば300トンクラスの船を持って沿岸を全部カバーしよう、というのは無理です。これは大変なことで、ただ松山先生が言われたように、今、大学は独法化して、要するに、これは文科省が悪いのですけれども、練習船の縛りとか何とかを解き放って、もうちょっと彼らの持っている船の使い方について、大学の実情をはっきり出して、それで大学が、あるいはほかの省庁の臨海実験のようなものとタイアップしながら、新しい展開ができるように、そういう制度の問題だと思います。

【大塚委員】
 そういう意味では、そういうのも含めて全体を見直す必要があると。

【平(朝)委員】
 それは大きなピクチャーの中では、この報告書にはそれを書いていただきたい。この5隻なら5隻のやることと、そういう仕事の関係というものははっきり報告書には書くべきだと思いますけど、JAMSTECがそこまで全部展開しろというのは、それはもう無理です。個人的にはそうだと思います。JAMSTECの経営者、理事長ではないのでわかりません。

【大塚委員】
 例えば、UNOLSはちょっとどういうふうになっているかわかりませんけれども、どこかそういった船を管理とかスケジュールするとかというような部署をJAMSTECが持っていて、それで全国にある船を見ながら配置していくとか、研究を分担していくということは可能なのですか。

【平(啓)主査】
 連携ということですか。

【大塚委員】
 はい。そうすると、何かむだのない動きができるのではないかと思います。

【平(啓)主査】
 そういうこともありますけど、これは例えば、一斉観測をするとか、あるいは逆に効率よくある定点を毎月行けるようにするとか、そういうことでは調整を行うことはありますけれど、多くの研究は各機関で行うということも多いと思います。

【大塚委員】
 もちろん研究そのものはそうにしても、全体の船の使い方や人の配備などは、そういうふうに大きくは考えなくていいのですか。

【平(朝)委員】
 そのように、小型船も全国見渡しながら運航できるのは非常に理想だと思いますが、そういうことをどこがやるべきか。あるいはどのように行うべきか、というのは、この委員会が1つのいい提案の場所だと思います。それを急にJAMSTECがと言われても、なかなかできないとは思います。

【小池委員】
 JAMSTECが行う研究と、JAMSTECが今運行している船とはやはり区別すべきです。JAMSTECは沿岸を行っていないかもしれないけど、やはり全国の研究者で半分以上は沿岸を行っています。それをJAMSTECの研究者が行っていないからといって、JAMSTECで管理はしたくないというのはやはりおかしい。JAMSTECは運行の責任を負わされているけれども、それを使って研究するのは全国の研究者です。

【平(朝)委員】
 運用の仕方はまた次で話をしましょう。

【平(啓)主査】
 例えば船の「淡青丸」は、水産生物の研究分野が多く、沿岸域に特化して、小型船のニーズは高いということも書いてあります。
 ほかにいかがでしょうか。この次に、人材養成についても少しだけ触れていきたいと思います。

【佐藤海洋地球課長】 4、5のところについては、何か不足しているだとか、強調したいことがあれば、意見を出していただければ、またその後の整理をさせていただきたいと思います。

【平(啓)主査】
 海洋はフィールド・サイエンスでありながら、大学で理科離れが心配されているという記載があります。実際の船に乗船した研究が非常に重要だという強調があると思いますけど、この辺に関して、何か欠けている点や、もっと補足がございますか。

【瀧澤委員】
 全般的な話ですけど、研究船の今後を考えるときに、危機感というと、この現状を維持できにくい環境にあると思っています、お金の面で。どのように研究船を維持していくか、できれば増やしていくかと考えた場合、今、求められているのは社会貢献とか、アウトリーチ、あるいはそういうものをかなり打ち出していかないと、財務省あるいは総合学術会議から予算を獲得できない状況があるのではないかと思っています。その辺が我々JAMSTECもそうですが、あまりやってこなかったことだと思っています。今後、答申を書くにしても、そういう面をある程度打ち出していくのが今の環境だと思っています。人材教育もそうですし、いろいろな議論はあるのですけれども、もう学術研究だけでは、それはもちろん最重要課題だと思うのですけど、1つは社会教育、あるいは大学院教育でもいいと思いますが、その視点はもう少し持たないと、率直に言って、おそらく7隻が5隻になり、そのうち3隻になるという危機感を、予算状況を見ていて感じています。

【玉木委員】
 教育ということで現実的な問題ですけれども、大学にいて船に学生を乗せる場合、学術船の「白鳳」、「淡青」には大学院生までで、学部生は今も乗れないのです。

【小池委員】
 乗せることはできます。ただ指導教官が乗る必要があります。

【平(朝)委員】
 人材養成ですけど、大学院生や学生に積極的に乗ってもらいたいというのが基本中の基本で、海洋研究開発機構の船も、基本的には全国共同利用を中心とした展開をすべきで、そこに大学院生や学生が積極的に乗っていただかないと、海洋科学自体の将来が危ぶまれてきます。まさにその部分が危ぶまれてユーザーが減り、成果が上がらなければ5隻が3隻になり、2隻になりという循環に陥るわけです。ただし、今大学の先生や大学院生や学生もなかなか簡単に乗れるような状況になくて、少し全国区のネットワークでこれをサポートしてもらわないといけないのではないかと思います。ですから、何大学と何大学が乗り合わせて1つの授業のもとで、だれだれ先生の指導のもとに乗る、というような、コンソーシアムというのかどうか知りませんけれども、そういう体制をますます強化していただいて、海洋研究船を積極的に利用していただくという体制をつくっていただくというのが大事になっていくものと思います。

【加藤委員】
 平先生がおっしゃることのもう少し、我々の学部の中での話ですけれども、やっぱりそういう1つの枠組みをつくって、幾つかのカリキュラムをとると、学内ですけどある資格を取らせるということで、海洋観測、あるいは測量も含めた基礎コースをつくっているのですけれども、それは既に東京海洋大学さんがつくりました。だから、私たちはそれと東京海洋大学、あるいは長崎ということで、ニーズがあれば、こういうふうな連携を提案したいと着々と進めて、学長のゴーサインも出てきょうまで来ましたので、来年度あたりから積極的にそういう枠組みで、何とか連携したものをつくっていこうと思っています。

【瀧澤委員】
 1つ、単位の認定について。どうしてもJAMSTECの船は、1航海が長いので乗りづらい。だから、そこに学生が乗ったときに単位として大学に認定していただければ、また乗りやすくなると思います。日本も一部ではあると思いますが、例えば外国の、例えば2003年に私どもが大航海を行ったときに、チリの学生がかなり乗ってきたわけです。そうすると、チリ大学では単位が認定されたそうです。これは大学の制度の問題かもしれないですけれども。

【玉木委員】
 最近の大学のシステムでは、民間会社に行っても単位になりますし、船に乗っても、それなりに手続きをとれば、単位になるはずです。

【松山委員】
 その問題と別に、船ではないのですが、臨海実習はかなりあちこちでお互い単位認定をしています。

【小池委員】
 共通でやっていますね。

【松山委員】
 やっています。

【玉木委員】
 今、むしろ卒論研究の中でとか、卒論研究自身が単位となっていますから、それと別個に単位はつけられない、ということだと思います。

【小池委員】
 今度海洋研究所が1つ大学院のコースを新領域、今磯部先生のところにつくるのですけれども、そこで海洋の実習の単位をつくって、それは指導教官が一緒に乗って何週間かやれば、単位を出せるというシステムにしています。だから、大学の場合、そこで単位を出せる。それでも大学でシステムが違うので、なるべくそれが共通してできるようになればと思います。
 もう1つの問題は、「淡青」、「白鳳」もそうですけど、修士の学生が自分の研究、論文のための研究で乗ってくるわけです。修士論文が単位になっていますから、関係あると言えば関係ありますが、直接は単位とは関係ない。ほとんどの場合、その時は海洋研の教員が実際に船に出たら面倒を見ているわけです。そういう形で既にどんどんそういうふうになっています。ですから、ある程度、その方向というのは今後も同じような傾向になると思います。

【平(朝)委員】
 そういう意味で、機構はあまりそういう面で熱心でなかったということは事実だと思います。海洋研究、それはお互いに役割が違うみたいなことを言っていたわけですけれども、そういう時代は終わって、海洋研究開発機構も人材育成を行い、研究船全体もそういう目的のために積極的に使っていくという姿勢を打ち出さないと、将来海洋研究の将来が危ぶまれるということだと思いますので、これは大学側もそうしてほしいし、受け入れる機構側も変わらなければだめだということだと思います。

【瀧澤委員】
 単位の場合、指導教官が乗っていないと単位にならないということですが、我々の船の場合、期間が長いので、先生は忙しくて乗れないですね。白鳳ですらそうだったのです。学生さんだけ乗ってくるケースが非常に多いと思います。それでも単位を出せるか出せないか、ということが大きなことと思います。

【平(朝)委員】
 機構の研究員が、あるときには単位を出せるような仕組みに入れてもらえばいいわけですね。

【瀧澤委員】
 認定していただければ。我々には、そういう意味で教えることに関しては、優秀な人材はいっぱいいますので。

【山室委員】
 私はMSFのサマーインスティテュートという制度でアメリカの学生を2人ほどこれまで引き受けているのですが、彼女たちの話を聞くと、人材育成ということでいろいろなところで船に乗るというよりは、全然関係はないのだけれども、指導教官もなしで、自分の研究とも関係ないのだけれども、知見を広めるというセンスで船に乗っている人がいました。それはバミューダだったと思うのですけど、乗ればそれだけで単位になる。ハワイからわざわざ東海岸に行って乗ってきたと言うのです。彼女自体はほんとうに全然船とは関係ないし、これからも海洋学はやる気はないのだけれども、非常に優秀な学生で、ああいう学生がフィールドではないところで、一度船に乗ったという経験があるということが、彼女自身は海洋の人材にならないけれども、フィールドへの学問への理解が深まるのではないかと思いました。ですので、今の小池先生が、指導教官が乗ったらと限定されているのですけれども、そういう枠は外す方向で行けると、また違った側面が出てくるかと思います。

【小池委員】
 学部の学生を乗せることについて。今までの海洋研の「淡青」、「白鳳」は大学院の学生は乗せていたのです。学部の学生に広げるという議論があって、そのときにやはり学部の学生が乗ってきた場合、みんなが面倒を見られるかという議論があって、やはり指導教官、あるいはそれに準ずる人が乗ってほしい、そうしないと、結局船の上というのはかなりできることが限られているし、全然経験のない人が乗ってきて、知らない人がその人の面倒を見て、というのは非常に難しいです。ですから、1人で学部の学生が乗ってこられても困るということで、そういう制限を置いた。

【山室委員】
 アメリカだったらアメリカ、さっきもチリの学生が乗ってきたと言われていたのですけれども、どうしてそれが可能なのかというところも、できれば今後検討していただければと思います。

【平(啓)主査】
 私は今、大学の役員なのですけれど、この後期の授業を1回試しに持ったことがあります。そうすると、カリキュラムで見ますと、木曜日ですけれど、ほんとうに授業をできるのが15時間しかないのです。その辺が大きな問題で、今、人材ということですけど、研究者が乗れなくなっている。私が今主張しているのは、せめて20回ぐらい授業の機会をください、そのうちの5回ぐらいは、つまり40日ぐらいは船に乗るなり、フィールドワークをできるような体制にしてほしいということを申し上げています。学内で言っているだけです。何かその辺に関しまして、磯部先生、どうでしょうか。

【磯部委員】
 試験期間を含めて15回を確保するというのは決まっていますので、きちんとそれでやっています。

【平(啓)主査】
 それで、で例えば1か月間船に乗るなんていうのはとても生み出せないですね。

【磯部委員】
 研究所の方ならいらっしゃると思いますけど、研究科で教育をやっていると、ほとんど不可能だと思います。

【平(啓)主査】
 その辺、どうでしょう。これは学術審議会、あるいは学術会議の問題でもあると思うのですけれども、日本のフィールド・サイエンスはこういう大学教育ではだめになるのではないでしょうか。要するに、研究者がフィールドに行けない。

【磯部委員】
 それは、大学にもよりますけれども、私たちのところはおおらかにやっているので、講義はここでまとめてやりますとか、そういうことはできるのです。集中講義もできますので、そこで集中講義をしておいて、別のところは全部あけるということは可能だと思います。それは工夫次第でできる。むしろ、それができないぐらい先生が忙しくなってしまっているのではないでしょうか。

【平(啓)主査】
 私の今の大学はみんなほかにもたくさん授業を持っているために、それができないのですね。教育過重負担だと言うのですけれど、ですから、結論からいくと、あと5週ぐらい授業可能な日数を増やせば簡単にいくような気もするのですけど、夏休みや冬休みが減ってしまうわけです。

【玉木委員】
 海洋研究所が学部を持てば非常に自由にできるのではないでしょうか。海洋研究所が学部を持ち、海洋学部であればできるわけです。そうでない学部だと、ほかの講義もありますから、学期中に実習を組み込むのはなかなか難しいです。

【平(啓)主査】
 私は、今、真剣に考えているのですけど、何とか1か月ぐらいは授業期間の間でも余裕が持てないとだめではないかと思います。
 こういう調子でいきますと、あと5にその他のご意見等があります。先ほど申し上げましたが、冒頭からどう進めていくかということなのですけれども、もう次回は多分落とし込んで、こういう章立てにして、ここでこういう意見をというたたき台をもとにして報告書をと思うのですけど、いかがでしょうか。これはまだまだやりましょうか。

【佐藤海洋地球課長】
 構成上というと、報告書の構成まではまだ思いに至っていないのですが、少なくともきょう議論した1、2、4については、意見として書いてあるのですが、本日いただいた意見も含めて、何か報告書に使える文章としてある程度、もう1回事務局のほうで1と2と4については整理させていただきたいと思います。それから、3についてはもう少し本格的に議論をしたいと思いますので、その議論をするためのたたき台というのは、きょう出た意見も踏まえまして、事務局のほうで用意させていただきたいと思います。それから、議論が1つ残っているのは、先ほど途中、平先生からあったと思うのですが、運用上、何かもう少し考慮すべき事項というのがあるかと思うので、それについてはまたちょっとアンケートなどで、何か運用するときに当然連携を図るべきことみたいなことでご提案があればいただくような形にしたいと思います。

【平(啓)主査】
 そうすると、次回はどういう議論になりますでしょうか。

【佐藤海洋地球課長】
 次回はきょうの1、2、4について少し報告書に使えるような文章調にしたときに、これでよろしいかという確認みたいな話と、3について、ほんとうにどういう機能を持たせるべきか、どのようなタイプの船が必要かということになるかもしれませんけれども、そういう議論をして、どういうふうにとりまとめていくかという方向性を決める。それと、そういうものができ上がったとしても、当然運用上の連携の仕方としてこういうことをしておかないとうまくいかない、というような話が当然あると思いますので、そのことについて先生方の意見をもとに議論をしたい。そのときに報告書の章立てのようなものが出せるかどうか、事務局で検討いたします。

【山室委員】
 今、運用についてアンケートと言われたのですが、いろいろな知識レベルが違うと思うので、どう答えていいかわからない場合もあるかと思うのですが、どういうものをイメージされていますか。

【佐藤海洋地球課長】
 例えば、海洋研究船が何隻になるのかはわかりませんけれども、それがあって、今の使い方というのは、片や学術研究船、片や海洋機構の船みたいなことで歴史的には来ているわけです。それがいま海洋機構に全部集まったわけですけれども、そうしたときに、今までの使い方のままでいいのかどうかというような視点の中で、こういう使い方があるのではないかとか、こういう連携の仕方もあるのではないかとか、そういう感じでしょうか。

【山室委員】
 つまり、先ほどの議論でいくと、大学の研究船は抜きにして、JAMSTECの研究船の運用について、今までこうだったけどどう思われますかみたいなアンケートが来ると思っていてよろしいですか。

【佐藤海洋地球課長】
 学術研究船に対して、もう一緒の船になったからすべて一緒にして考えるべきではないかというようなご意見もあるのかもしれませんし、それは別々にある程度、船の性格があるのだから、そういうもとを基盤にやるべきではということをもとにしながら、このままの連携では全く別々にしか動いていないように見えるから、それはもう少しこういう連携のとり方があるのではないかとか、それはそれぞれの専門の人によって、意見が異なってくると思います。小池先生のように学術研究船のほうから見たらどうなのかというのと、ほかの研究所の方から見れば、やっぱりどうなのかというのは少し意見が異なってくるのではないかと思いますので、そういう中からどういう連携のあり方がいいのかみたいなことで考えさせていただきたいと思います。別にどういう意見でも結構です。要するに、自分の置かれた立場というか、経験の中からご意見がいただければたくさんの先生方がそろっていますので、そういう中から方向性を考えていきたいと思います。

【平(啓)主査】
 よろしいですか。

【山室委員】
 現状がわからないので、今大学の船が何隻あるかとかさえ、私は白嶺しか知らないものですから。

【佐藤海洋地球課長】
 極端なことを言えば、山室先生が例えば学術研究船に乗りたいとか、あるいはまたJAMSTECのもともとの海洋研究船に乗りたいとか言ったら、どうしたらいいのか。あるいはまた、そういうような制限が、例えば学生だとか研究者とか民間の人でもいいのですけれども、すべきなのかどうかとか、いろいろ見方の視点はあると思います。

【平(朝)委員】
 やっぱり究極の問題は学術研究船、「淡青」、「白鳳」2隻と、もともと機構にあった「みらい」「なつしま」「よこすか」「かいれい」「かいよう」があるわけですけれども、それが今違う運用になっているわけです。それをやっぱりオールジャパン体制で海洋研究のために真に一番理想な姿で動かすにはどのようにしたらいいのか。今までの体制を維持するのがいいのか。僕はもう一括するしかないと思っています。これは当たり前のことだと思いますけれども、そういう意見と、小池先生はやはり学術研究船をきちんと守るのが大事だと、別にその意見の対立だけが軸ではないと思うのです。ただ、そういう運用のあり方というのは、きちんとこの中で議論するべきだとは思っています。

【平(啓)主査】
 では、もとへ戻りまして、きょうの議論はここまでにします。
 資料4-2が去年の10月12日の第3回の議事録が出ていますが、この扱いはどういうふうにすればよろしいですか。まだ案の段階ですが。

【大洞海洋地球課課長補佐】
 一度ご意見をいただいていますので、特に意見がなければ、これで公開させていただくということにしたいと思いますけれども、もしお気づきの点がありましたら、またもし帰ってからということでありましたら、1週間以内に事務局のほうに訂正をいただければ、その分は直して公開をしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【平(啓)主査】
 それと資料として、日本学術会議の海洋科学研究連絡委員会の17年7月の報告というのがございます。これについてはアンケートの中でも両方連携してというか、まとめる上でこれが参照になるのではないかということと思います。多くのことが書いてありますが、私のぱっと見た感じでは、4ページのほうで海洋科学に関して今のところばらばらという意味は大学の学部、学科編成に戻ると、海洋学の扱いがばらばらであるということと、海洋科学として最後にあるように、1日も早く海洋の科学を大学院レベルで糾合することを検討しなさいということがありますし、それから5ページに行きますと、やはり、これも農学、工学だけではなくて、社会科学等というのも含めて総合的な海洋科学に高める必要がある。それから、5ページの5.になりますと、日本の周辺というか、その隣接海域に関する総合研究が重要ですということが書いてあると思います。同じように、7ページに行くとEEZの権利享受と義務ということで、これも我が国の周辺の海のことですが、この辺は十分に考える必要があると思います。これも参考資料ということです。

【佐藤海洋地球課長】
 ということで、会議の中で今後の整理の方針をお話ししましたので、あとは次いつ開催するかという話ですけれども、先生方がまたご都合の良いときにさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 以上ですので、本日はどうもありがとうございました。

―了―

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