科学技術・学術審議会
2001/11/19議事録第3回海洋保全委員会議事録 |
1.日時:平成13年11月19日(月)10:30〜13:30
2.場所:経済産業省別館T14号会議室
(1) | 当面取り組むべき海洋環境問題について |
(2) | 健全な海洋環境の維持・回復及び海洋環境に配慮した海洋利用,沿岸防災等に向けた施策の展開 |
(3) | 自然環境保護・海洋環境創造に向けた施策の展開 |
(4) | 海洋保全に関する総合的な推進方策について |
(5) | その他 |
5.会議経過:
○議題1
●事務局から資料3‐3に沿って説明がなされた。
【磯部主査】 この件については、特に前回具体的に議論を始めまして、枠組みについてきょう出していただいたものは、一つは「エネルギーフロー」ということと、「物質循環システム」という表現を使ってあります。別の説明の仕方をするとすれば、「沿岸域の場」に対する流入の負荷、あるいは境界条件で「物質・エネルギーフローの変化」としてとらえてあり、それが「人為的要因」とどう結びついているかを図1では左側につながり、右側に具体的にどのような問題に結びついているのかを、場とその場に対する境界条件や流入負荷という観点を真ん中に置きながらまとめていただいたと思います。
そして、きょうご説明があって議論していただきたいのは、その結果として右側にいろいろな問題を起こすのだが、その中で何が喫緊の課題であり、何が確実に問題が起こりそうなので予防的措置をしなくてはいけないのかというあたりについてご議論をいただきたいと思います。
【高橋委員】 非常によくわかりやすくアプローチを整理していただいたと思います。2点あります。まず1点目は、現在起こっている問題を解決しようという視点と、それから将来起こる可能性があるから予防しようという視点、この2つの視点が出たというのは、僕は非常にいいと思います。特に適切な予防措置を講ずるための施策、予防措置というのを非常に大きく後ろのほうでうたっていますが、当面取り組むべき問題とか、喫緊に取り組むべき問題のところで、何に取り組むかというのが出ていません。解決措置というような、今起こっていることを解決するというものを、予防措置に対応するような形でつけたほうがはっきりするという気がいたしました。まず1点です。
もう1点は、図1に3つコラムがあって、一番右側にあるのが問題という内容で、ここに現在起こっていること、それから近い将来起こる可能性があることをすべからく網羅して検討しなければならないと思います。ですから、私たちはどんな問題があるかという項目を、とにかく漏れがないようにすることに最大の努力をこの章では払う必要があります。その結果、環境負荷要因とか人為的要因というのが新たに出てくるかもしれないのですが、とにかくこの項目をしっかりする必要があるとおもいます。
【磯部主査】 これはあくまでも事務局案と書いてありますが、これをたたき台として出していただいたので、これについてはおそらく、各委員、これじゃ全然足りないというご指摘があろうかと思います。それはまた後で充実をさせていきたいと思います。そのほか、とにかく意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
どうぞ、伊藤先生。
【伊藤委員】 今の高橋先生のご意見と非常に合致すると思うのですけれども、この図1をもう一度、今度は問題のほうを整理して眺めてみるというようにすると大変わかりやすいのではないかと思いますが、要因から入るこの図と、それから結果を整理して、問題のほうからどういう要因があるかという2つの図を機械的につくると見えてくるのかなという気がいたします。ご面倒ですけれども、それを刷り合わせるとわかりやすいかなと思います。
【磯部主査】 前回も伊藤委員からは非常に細かい資料を出していただいていますので、あの資料も具体的な問題が大分拾えると思いますから、ぜひ活用していきたいと思います。
【來生委員】 図2ですが、一番下の沿岸開発による自然景観の変化が一番端にあります。そうなのかもしれないのですが、逆に一番大のほうにある干潟とか藻場等の消滅とも何か非常に密接に関連もしているような気がします。だから、これがここでいいのか、僕もあまり自信はないのですが、どこにこのようなものを位置づけるか若干の問題がありそうな気がします。
【磯部主査】 図1、図2の加筆訂正といいますか、そこのところについては、この直後にちょっと時間をとってご意見をまとめていただきたいと思います。
それで枠組みとして、前回も議論していただいて、重要度の重みづけのやり方がわかりにくいというご意見もいただいたので、それに対応して、事務局で修正案をつくっていただいたということだと思います。その中で、それぞれ文章で前半書いてありますが、これがおそらく図1に大きな枠組みとしては集約されていて、そこの枠組みで私が最初に申し上げましたが、「物質循環システム(場)の変化」と書いてありますが、そこがある沿岸域の場をあらわしていて、それに対して、その上の「物質・エネルギーフローの変化」というのは、そこに対する負荷とか、あるいは流入というか、境界条件が変わってきます。それをたどってくると、「人為的要因」として5つ大きく枠組みとして考えられて、そこらあたりから影響が起こるということです。
ただし、やってみたら、それに入らないその他の負荷要因が入ってきたので、これはその他ということで入れました。そういう枠組みについてはいかがでしょうか。
【難波委員】 非常にわかりやすくていいと思います。
【磯部主査】 それでは、これについての修正意見も含めていただいて結構なのですが、大体こんなイメージということであれば、特にこの右側の結果に入っているものが20個ぐらいありまして、それが次のページの図2のところに「環境問題としての深刻さ・社会的インパクト」というものを横軸にとり、そして前回は縦軸として、注に書いてある●とか▲とか■とかが縦軸になっていましたが、これはあまり軸としてはふさわしくないというご意見をいただいて、今回は「影響範囲の空間スケール」、時空間スケールというのもちょっと念頭に入っているかと思いますが、それを縦軸にとって書いてあります。これの枠組みそのものがどうか。縦軸、横軸がどうかということもそうですが、大体そのような軸でとれるとすれば、先ほど來生委員からご意見をいただいたように、これ自体の置く場所ですね、それぞれの沿岸開発による自然景観の変化というのを右下に置いていいのかという、これが事務局からは「エキスパートジャッジ」という言葉が出ていましたし、それからほかの言葉として「ベストプロフェッショナルジャッジメント」というような言葉もあるかと思います。
その意味は、今ここで定量的に証明をするという格好で場所を決めることは、情報も十分あるわけではないし、それから短時間にやらなくてはいけないということもあり、また、ここには専門家が集まっているわけですから、その専門家の今までの経験や知識に基づいてとりあえず置いてみようという趣旨だと思います。ここについて、場所を動かすという意味の修正意見もいただきたいし、それから図1に関連して、一番右側で大事なことが抜けているのではないか、その抜けているものを指摘し、さらにそれをどこに置いたらいいかというような、そんなことでご意見をいただけないでしょうか。これを見ると、いろいろご意見があると思います。
お考えいただいている間に私が申し上げますと、3つ、点線とか実線とかの丸がついていますけれども、右側のところは丸から外れていて、外れちゃうと、どうもこれは何もしなくてもいいのかと言われると、委員会、あるいは分科会の責任ということからすると、逆に切り捨てるというほうに気になるところがあると思います。
【伊藤委員】 今、先生のおっしゃったのは、景観の問題は、こうやって一つにすると、こっちかなという気もするけれども、いろいろ考え方というか、景観変化の要因みたいなもので分けると、もっと早くやらなければならないことと、長期的に右に行くものとあると思います。例えば、ここでは海岸浸食で砂浜の消失とありますけれども、それに対して何らかの手だてを打つとき、構造物をつくるときの思想、それは今も変化しつつあり、これは喫緊というか、既に着手されたような問題だし、それをもっと広く推進しようということは、かなり国民的な支持も得られる部分だろうと思います。
それから、現況の例えば東京湾をどう変えるかということは、かなり長期的な問題になるでしょうから、すぐできる部分、やったほうがいいというところと、なかなか政治的にも社会的にも難しいけれども、将来に向けて解決していこうという2つの部分があるのではないか。景観ということは、もう一つは、海岸にどのくらい我々がアプローチして生活をエンジョイできるかという視点も入ってくると思います。ここはもっと早くできるところと、将来に向けての部分と2つに分解できるのではないかという感じがしました。この景観の問題は早くしなければならないものについては、もっと早くやろうと言えば、案外、支持も得られるのではないか。これを2つに書き方を変えればどうかなと思います。
【磯部主査】 景観は、環境の中でも人によってとらえ方は違うかもしれないが、ただきれいに見えるとか、そういう意味ではなく、もう少し総合的なものであるとすれば、全体の物質循環なども含めた意味で、良好な状態ができて初めて自然景観があるべき姿に戻るということからすると、この図では、大きく右から左まで上から下まで全部囲うような、そういう位置づけが欲しいわけです。そのことについてそうではないというご意見がもしなければ、表現的な技術的な問題ということで考えさせていただくということでよろしいでしょうか。
【難波委員】 図1の中の「マリンレジャーに伴う水難事故の多発」というものだけがほかの表現と少し異質な感じがします。これは海洋の保全と水難事故多発、要するに人災事故のようなもので、ここには少しそぐわないような気がします。
【來生委員】 私も同じような印象で、水難事故もあるのかもしれないけれども、水難事故というよりは、環境に何か悪影響を与えるというか、例えば四輪駆動車で砂浜に入っていってウミガメの卵をつぶすとか、いろいろなことがあり得るわけです。そのようにむしろウエートを置いた表現のほうがこの場にはふさわしいという気がいたします。
【磯部主査】 これはおそらく図1の右側の列に何と何を取り上げるかということで、おそらくここで落ちている、いわゆる狭い意味で環境問題と定義できるようなものに比べると、マリンレジャーに伴う水難事故の多発は、もちろん環境問題の一つではあるとしても、若干ここに入れるほどのことではないのではないかということだと思います。むしろ先ほど出た四輪駆動車が砂浜に入る問題のほうが環境問題には密接だということでしょうか。
【小川委員】 この人為的要因の中で海砂の採取があります。これは今ほとんどの日本国内の大きなプロジェクト事業、空港であるとか、いろいろな問題の中で、海砂が環境破壊の元凶だということで瀬戸内海一円、今まで海砂の宝庫だった各県が海砂の採取の禁止を打ち出しています。大分、愛媛、広島、岡山は禁止の予定になっていますし、香川、兵庫は10年ほど前から禁止となっています。建設の骨材の中の砂が全国的に大きな業界の中で不足しています。
それでほとんどが今、私の知る範囲では、関西から瀬戸内圏一円のプロジェクトの中では輸入砂の使用に頼っているとのことです。ほとんどが東南アジア、韓国、中国等から入ってきます。河口域の海砂、深いところの海砂、いろいろな海砂が入ってきます。その海砂の輸入の中で、従来輸入物ということになりますと、貿易ということで非常に厳しいチェックがあるわけですが、ほとんどが野放しの状態で、何万トン単位の船で、水分をたくさん含んだ状態で国内に入ってくる。それをそのまま使うのです。ごく少量入ってくる、1,000トン単位とか2,000トン単位のものは瀬戸内の人が住んでいないような島で一応陸揚げをして、それで使うというのであれば、まだまだ納得がいくのですけれども、何万トン単位で入ってきて、どんなものが含まれているかほとんどわかっていません。
日本のそういうところでそういうやり方をやりますと、近い将来必ず生態系に大きな影響を及ぼすのではないか。大阪湾、別府湾、広島湾といったところの大きなプロジェクト事業の中で生態系の破壊がおきています。そういう外来種のものがどれだけ含まれて、日本の在来種のものと比較検討した場合、全然害がないとは言えないというのはだれもが認めるところであります。行政もそれは非常に大きな注意喚起をしているのですけれども、現状では、国も地方自治体もほとんど見て見ぬふりをした中でやられています。その辺を環境保全のこのフローの図1、2の中で、何らかの形で喫緊を要する手段として明記していってもいいのではないかと思います。
【磯部主査】 今のに関係するのは、「海砂等の採取」という項があって、採取のかわりに海砂等の輸入という項があって。
【小川委員】 この図2に「外来生物種の侵入による在来種の絶滅」というような項も入っているのですが。
【磯部主査】 「海砂等の輸入」というところから、図1でいうと、真ん中の「外来生物種」というところに結びついて、それがさらに右側でいくと「外来生物種の侵入による在来種の絶滅」というところへ結びつき、それがかなり緊急を要するのではないかということですね。
【高橋委員】 今の件ですが、生物貿易の立場からしますと、海産生物、海水は海がつながっているということから、日本では対象になっていません。ですから、その辺からここで問題を提起しておく必要があるような気がします。
【磯部主査】 大変重要なご指摘をいただいたと思います。大分増えてきています。勢いがありますので、特に国内で土砂がなかなかとれないというような事情も背景になっているので、これから非常に大きな問題になるのではないかと私も思います。
それでそういう図をバックグラウンドにして、文章のほうを見ていただきますと、3ページからスクリーニングがあるのですが、その結果4ページで「喫緊に取り組むべき問題とその解決に向けた施策」という中に、重金属・有害化学物質、沿岸域開発、藻場・干潟、それから海岸浸食という3つ。それから5ページに「適切な予防措置を講ずるための施策」ということで、POPs、油流出、海面上昇、二酸化炭素の海洋隔離の問題、それから異常気象・海象による沿岸災害、これが取り上げられていまして、文章本体の中としては、図1、図2を背景にして、この3項目、それから5項目、この辺のところが比較的詳しく書き込まれるということになりますから、今、小川委員から外来生物種もぜひ入れてほしいというご意見をいただきましたから、それを発展させて、この3種類、5種類に加えて入れるべきものがあるのかどうか。あるいはこの3項目、5項目で外してもいいのではないかということがあるのかどうか。その辺についてご意見はいかがでしょうか。
【文部科学省】 磯部先生、ちょっとその前に、事務局としても、もう少し今の輸入の海砂の問題、あるいはもう少し範囲を広げて、大量に輸入しているものがどういう影響を与えているか、調べたいと思います。そういう問題意識をお持ちのエキスパートなり、あるいは国内でいうと、どんな組織が今そういうことをやっていますか。
【小川委員】 三河湾、大阪湾、空港と名のつく神戸沖空港は80%は輸入砂です。内地産というのは20%ぐらいです。それで我々も現実に荷おろしの状況、荷揚げの状況を現場で確認しようとしています。国や県は、今高橋先生が言われていましたように、海洋はつながっているという観念から行政官庁はほとんと動いていない。これについてはタッチしていない。業者に任せっきりという状況です。
それで海砂も、我々素人が見ても、これは内地産の砂にまさるというような砂もないことはないです。韓国の一部分では。しかし、あとはほとんどが俗に言う発展途上の地域のものです。アメリカとかヨーロッパとか日本というようなところからでなく、中国の沿岸、また東南アジアのように、日常の生活状態が文明国並みにまだまだ進んでいないようなところの砂が主力です。私達も現場で確認ということで一、二回行った経験はありますけれども、具体的には申しませんが、「ああ、これは」というようなものを日本へ持ってきて日本の海域に捨てているということです。そのまま何万トンの船からサンドポンプですくってきて、そのままおろすのですから、生物は乾いていないからみんな生きています。どういう生物であろうとも。
それでサンプルをとって調べるということを、遅まきながら各県の漁連が動き出しています。私どもの兵庫県漁連は自前でそういう研究所を持っています。ノリの関係で発足した研究所ですが、そこで今ようやく砂の分析を始めました。専門の職員を入れて。そのぐらい遅れています。だからいいか悪いか、将来的にどうなるのか、それは未知数の部分です。私どもも、この生態系がつぶれてしまうというようなことは言い切れないところはあります。しかし、非常に危惧される状態ということは確かです。だから、なるべく早い機会に喫緊の中の項目に入れてほしいなと思います。すぐやっていただけるような方法を講じていただきたい。海洋保全ということになると、今一番大きな問題ではないかなという気がします。
【高橋委員】 同じような問題で、日本に原油を持ってきた船がバラスト水を日本近海から積んで戻るわけです。それが外国の海を汚染し、特にオーストラリアで日本に出ている赤潮が出現して被害を受けたということで、国際法廷に訴えられました。そのときは黒にはなりませんでした。ほんとうにオーストラリアに出てくる種が日本から来たものであるということが特定できなかったためです。今DNAによる判別ができるようになってきましたから、今後、どこから来たということが特定できるようになるかもしれません。そうなると、国際法廷上でそういう争いが日本を介していろいろなことで起こってくる可能性があると思います。
【磯部主査】 土砂の問題は環境省でも議論としては私もしたことがあります。環境省でどのくらいデータを集めているか、それほど具体的にわかっているという状況ではないと思いますが、どの程度わかっているか。それから埋め立てにかかわる問題なので埋立浚渫協会、近藤委員がそれに関係していると思いますので伺ってみたらということ。普通の意味の埋め立てとは違いますが、和歌山県の南紀白浜というところは白砂で有名で、それの浸食が進んだので、オーストラリアから白い砂を輸入してきていますので、和歌山県ではそういう事業を実際にやっています。普通の意味の埋め立てとは違います。その辺が情報ソースになろうかと思います。
【平委員】 もう一つ、実は砂を売るほうの立場からですけれども、太平洋の島で、温暖化の影響で海面水位が上昇し、島全体が没するかもしれないというところで、実は売るものが砂以外にはないため砂を売っているのです。そう言われれば、確かにそうですけれども、今の問題で、日本から見た問題と、そのために国際的にどうなのかということも、ここでは難しいかもしれませんが、そういう配慮も必要ではないかと思います。
【磯部主査】 そうですね、非常に大きな問題を含んでいると思います。フロリダで見たことがあるのですが、フロリダのマイアミなどにいいビーチがたくさんあるのですが、時々ハリケーンで浸食されるので養浜をしています。その海域の砂を調べてみると、養浜をするのに十分な砂がないから、これを輸入しようということです。対岸にバハマがありますけれども、そこから砂を輸入したときに、マイアミの砂よりもバハマの砂は白いので、光を反射します。このため砂の中の温度が下がるというわけですね。砂の中の温度が下がってもウミガメがふ化できるかどうかという実験をやっているとか、そういうことも見たことがありますので、相当この問題は大きな問題だと思います。
【小川委員】 普通建設骨材に使う、資材に使う砂は、どっちかというと茶色の色をした粒子の粗い砂が好まれます。強度の問題からいっても、色からいっても、環境衛生の面からいってもいいのです。しかし、今海外から輸入される砂のほとんどが泥か砂かわからないような粒子の細かい、色も少しネズミ色がかったような砂が多いのです。臭覚の問題もあります。私どもが現場に臨んだときにかなりきついにおいがありました。日本では、当然環境問題でいろいろと物議を醸すようなものでも大手を振って入ってきているというのが現状です。
○議題2
●資料3−4に沿って事務局から説明がなされた。
【高橋委員】 先ほども申し上げたことですが、2番目のところ、「海洋環境の維持・回復を講ずるための施策」は、既に起こっていることを解決する措置と、それから予防する措置とが明確にわかるような表現にされたほうが全体として非常に強くなるという気がいたします。
もう1点は、予防措置のところ、この場合ですと2.2のところだと思うのですが、「人間活動に伴う陸域・海域・大気等からの負荷の削減」というところにあると思うのですけれども、ここで私が抜けていると思うのは、人工化学物質はとにかく海には絶対入れないという措置をしないと、先ほど喫緊の部分で最初に有害物質云々がありましたが、ここにはそれが全く入っていないと整合性に欠けるので、ぜひそういう項を強く入れていただきたいと思います。
【伊藤委員】 2の「海洋環境の維持・回復を講ずるための施策」があります。下に線が引いてありますけれども、これを読むと、まず、こういうことを実行しようというよりも、最後に「技術開発が求められている」という締めくくりになっています。こういう書き方がよくあるのですが、これを読むと、何となく技術がないからやらなくてもいいというようににも受け取られかねません。こういう逃げの表現がよくレポートにありますが、現状の技術でもこのくらいできるのだというところから出発しようという力強い書き方のほうが望ましいという気がするので、こういう書き方は非常に書きやすいけれども、少しその辺を考えていただけないでしょうか。
【磯部主査】 このことはまた、全体の目次の中でも技術開発とか調査とかというものと、まさに事業そのものですね。環境修復でも保護でも創造でも、そういう事業との関係をどこでどういうふうに書き込むかということですか。
【伊藤委員】 この辺は手をつけられるのではないかということをまず提示した後で、さらにその後というようにできれば、いいレポートになるのではないかんと思います。
【磯部主査】 ありがとうございます。これは全体との調整があるので、ここをこう変えてという細かい話ではないと思うので、全体のトーンとしてご意見を承りたいと思います。
【文部科学省】 先ほどの資料3−3の資料の図2のほうで、大体今の技術レベルがどうなのかという目星はつけているので、そういうものをもとに、今ある技術を適用できるもの、それから新たな技術開発が必要なもの、その辺がわかるような形で整理したいと思います。
【來生委員】 質問ですが、3ページの3.1の海洋利用の一番上にある「枯渇する可能性がある水産資源の漁獲制限」というところの括弧のこの意味というのは、エビ、マグロ、サケというのが枯渇する可能性があるので、それを漁獲制限してサンマとかイワシとかアジとか、そういうものにシフトさせるべきだという、そういう意味ですか。
【文部科学省】 メモ的になってしまったのですが、前回、高橋先生のご発言がありまして、今、エビ、マグロ、サケとか、食生活がそういうものに偏っているので、もう少しサンマとかイワシとか、日本古来の近海ものにする。そういうことも一つの考えということです。表現が少し悪かったかもしれません。
【來生委員】 例えば、サケは今余っていると聞いています。だから漁獲制限というよりは、何か枯渇する可能性があるのは資源管理をしっかりしながらというようなイメージで書いたほうが、いろいろな意味を持ち得ると思いますので、表現を少し工夫されたほうがよろしいのではないかと思います。
【磯部主査】 これはまだ箇条書きの段階ですから、趣旨はおそらく事務局でも十分おわかりだと思います。
【伊藤委員】 これは、イワシをエビの形にしないで、イワシのまま食べろという意味ではないのですか。
【磯部主査】 なるべく低次消費者を人間が食べれば、たくさんのたんぱく質がとれるということですか。
【高橋委員】 私が申し上げたのは、日本近海でとれるものをメジャーにして、輸入をなるべく少なくするという意味です。
【小川委員】 このエビでもマグロでもサケでも、今ほとんどが輸入みたいですね。だから自給率を上げる。自給率という問題が出てくるのではないかと思います。
【平委員】 外洋の問題という点から見ると、先ほどの資料では随分外洋の問題を取り上げられていただいていると思ったのですが、今回の書き方だと、確かに含まれてはいますが、沿岸重視のような印象を受けます。あと最初に人間活動に伴う陸域・海域・大気等への負荷の削減ということには、もちろん外洋も入っているのですけれども、例示として考えているのが全部沿岸の問題であって、もう少し先ほどのご議論を反映できないのかなというふうに思いました。
【磯部主査】 海洋保全委員会では、海洋開発分科会なので、沿岸域と、それからもう少し沖合の海洋というのに分けて議論しました。従来深い海洋に着目してきたところが随分あって、今回は沿岸域も書こうというように書いたら、今度は深いところが少し手薄になったのではないかということですから、それもぜひ入れたいと思います。この辺は、特にこの海洋保全委員会のメンバーが、どちらかというと海洋の深いほうが若干数からして手薄のところがあるものですから、できるだけ意識してつけ足したいと思います。
○議題3
●事務局から資料3−5に沿って説明がなされた。
【磯部主査】 今、資料3−5までご説明いただきました。私も十分正しい理解かどうかわかりませんが、先ほど伊藤委員からご意見をいただいた技術開発ということで逃げてしまうのはもったいないということに関連して、私なりに解釈をすると、資料3−3の最後のほうは、何が大事かという3項目、5項目という話をしました。これは比較的調査をしましょうとか、技術開発をしましょうということがずっと重要だと言いながら書いてあって、何しましょうというのは書いていないという位置づけです。
そして、資料3−4は、現在の価値観、あるいは現在の国民的コンセンサスのもとでできることは実際にやろうということが書いてあって、例えば人工海浜、干潟の造成とかいう書き方がしてありますし、それから下水道整備であるとか、東京湾蘇生プロジェクトであるとか、実際に行動しようというところ、あるいは事業と言ったらいいのかもしれません。そこまでが書き込まれていて、そして資料3−5というのは、さらにもっと海洋の環境保全を考えると、価値勘定という価値の評価というところまでを強化しつつやっていく必要があるのではないかという位置づけで資料3−5を書いていただいたと見てよろしいのでしょうか。
そういうことですから、まず、今資料3−5をご説明いただいたので、資料3−5について議論をして、そして少し時間がありましたら、資料3−3から資料3−5まで通してまた議論をしたいと思います。資料3−5についていかがでしょうか。価値勘定ですけれども、なかなか難しいところに入ってきたかと思います。
事業をやるときに、最近では費用対効果を分析するということをよくやっているのですが、実際に海洋の問題であれば、利用とか、防災ぐらいまでですと貨幣価値に直すというのは比較的できていくのだけれども、環境という問題になると、今ある手段としては、CVMのようなものを使って価値評価をし、それでベネフィットのほうを貨幣価値に直すというようなことがアメリカから入ってきて、日本でも使われつつあるという現状かと思います。事務局としても、そこからさらにもう少し進んだことができないのかという思いもあるんだろうと思いますので、ぜひこの辺の価値勘定についてご意見をいただきたいと思います。
【難波委員】 前回も申し上げましたが、環境の保全ということになると、今の生活のリズムを変えるものが必ず出てくるわけです。ということは、必ず費用が発生するということになります。一般的な経済活動からいうと、必ず新しい費用を生み出すということになると思うのです。それをどういう形で負担するかということになると、消費者が負担する、もしくは税金という形で負担する、いろいろな形があると思いますが、それにある意義を持たないと、なかなか一般の経済社会の中では受け入れられないと思います。そういう意味では、価値勘定という意味が、私の解釈が正しいかどうかわからないのですけれども、社会通念に適合するというか、受け入れやすい一つの考え方をきちんとしないと、なかなか経済負担をするということに結びついていかないという気がします。これは非常に大切な問題だと思います。どんどん詰めていきますと、さわらないために、自然に戻すためにどんどん規制を強くする。生活を縛る。そういうことが必ず出てくるわけですから、どこかで妥協もしなきゃいけないものがあると思いますが、そういう意味では価値勘定をどのようにみんなにわかるように、土台をつくるかというのは非常に大切な問題ではないかという気がします。
【高橋委員】 僕の感じでは、その代償は安全だと思います。安全のために関係する人は費用負担するということが、多分、この事務局のバックに入っていると思いますが、それが表に出るような細書が要ります。そうでないと、何でやる必要があるかという気がいたします。
【來生委員】 安全ということもあるのかもしれないのですけれども、私はもう少し積極的に考えていて、多分、2つ目の○に書いてあるように、今までは結局我が国の経済の状況との関係で、製造業を中心で経済がずっと成長してきたという社会ですけれども、これから高齢化するなり何なりして社会全体の経済構造が変わるという中で、産業構造の重厚長大ではないところにシフトしていくわけです。シフトしていかざるを得ない。そうすると、当然社会全体の環境とか、そういうものに対する評価自体がかなり変わってくるのではないかという側面を少し強調したほうがいいんのではないかと思います。
【平委員】 この10年間、大きな動きとしては、国連海洋法条約の発効があって、もう一つは生物多様性条約が発効したわけですが、そこからの反映で、最初に「生物多様性を」ということでしょうが、私は生物多様性というのは、いつも縛られるほうですが、こちらに反映されるものがありますでしょうか。
【高橋委員】 生物多様性というのは、結局人類の滅亡から免れる安全というための措置の意味に私は理解しています。長期的な。
【平委員】 先ほど高橋先生がおっしゃったような視点でもあるし、そういうのがここに反映させればという、そういう質問です。
【難波委員】 先ほど小川先生のおっしゃった砂の話とか、そういったものは、これでいくと2ページ目の自然環境推進の中のバラスト水なんかと一括したような形で取り組むということになるのでしょうか。外来生物種に対する、バラスト水もそうです。例えば日本から持っていって、向こうでは外来種になるわけですし、ほかから持っていっても外来種になるのですけれども、同じことを取り扱いうことになるのですか。砂も同じ分類に入るのでしょうか。少し違うのでしょうか。
【小川委員】 水と砂、同一視は難しいのではないかという気がします。
【高橋委員】 ここで取り上げるとすると、自然環境保護の推進ということで、項目は2つにするにしても、この位置でやるというのが僕は一番おさまりがいいと思います。
【來生委員】 僕は全然科学的な知識がないのですけれども、例えば土壌汚染のような問題との関係は砂についてはないのでしょうか。日本でも土壌汚染は、一回汚染されたものをきれいにするのはすごく大変だという話を聞くのですが、砂も海砂か川砂か知りませんけれども、場合によっては化学的な汚染を受けている可能性があるのではないでしょうか。もしそうだとすると、何か生物種の話だけではない広がりを持つのではないかという気もします。
【高橋委員】 今は、DDTなどはすべて規制していますけれども、東南アジアあたりから来ると、そういう規制はほとんどないし、それから農薬についての規制も全く日本と違いますから、当然それもあり得ます。
【難波委員】 結局、水は浮遊物ですけど、小川先生がおっしゃったのは堆積物として持ってくるという意味で、もっとこれより広いですよね。もともとの歴史ある堆積物がついてくるわけだから。水は単純な浮遊物ですよね。もしくは溶存物ということになります。
【磯部主査】 今、生物・非生物という話が両方出てきたと思いますが、在来種と書いているのは少なくとも生物のことを頭に置いていたが、非生物、特にPOPsなどについても、これは書き込むべきだということでしょう。
【高橋委員】 それにしても、挙げられているところからすると、この位置だと思います。だから章立てはインデペンデントになる。
【難波委員】 産業界の一員で考えると、やはり保護するということは金がかかる。その合理性がわからないと反対意見が多くて、総論賛成各論反対という状況は必ず出てきます。このため価値観をきちんとしないと、なかなか通りにくいと思います。もともと日本の社会は、一般に比べると非常に費用のかかる社会にでき上がっているので、いよいよ日本の経済が沈滞するという議論は必ず出てくると思いますが、それを合理的にやるということをどこかでうまくコントロールしないといけない。ぜひそうしてほしいと思います。
【小川委員】 全漁連でもこういう問題はよく話題になるのですけれども、農業の場合とか森林の場合、それの持つ多面的機能というのは歴然としています。森林であれば、水源の涵養やいろいろな景観の分野などです。海の価値勘定、評価というのは、どういう尺度で、どういう物差しでやればいいかいつも議論の対象になるのですが、明確な答えは出ていません。
【磯部主査】 価値勘定という意味では、ミティゲーションという言葉がここに出ていますけれども、アメリカのミティゲーションの考え方は比較的明確で、現状の環境に関しては、それを悪くするというのは価値勘定は無限大の貨幣価値を持っているということで考える。したがって、一歩たりとも後退してはいけない。その一歩たりとも後退する場合には、回避最小化という手続きがありますが、その後代償措置にコストをかけて、開発のコストに加えて、ミティゲーションコストも加えたトータルのコストを開発コストだと思いなさいということです。それに対して事業者にとってベネフィットが十分あればやるし、なければやらないということですから、この環境の価値勘定を非常に明確化した考え方だと思います。
一方、最近よくある議論は、日本でそれが実行可能であるか、あるいはそれが適しているのかという議論です。なかなか議論の決着を見ないわけですが、別の考え方からすると、別のところに入れていただきましたけれども、沿岸域の総合管理があります。ある沿岸域で環境について総合的なビジョンを出さないと、コストをいかに負担するかという問題について国民的なコンセンサスが出てこないのではないか。現実にできないのではないか。一つ一つについて、これはこれだけコストをかける価値があるのかないのか。これらのことを、少しでもやりたいというのが事務局の案で、価値勘定をやるということでもあるけれども、一方では、局所的なところ一つ一つを個別にやっていくこともひつようである。しかし、やはりトータルとして環境管理をどうするのか。そのトータルな環境管理に抵触するようなことがあれは、当然コストはかけてもらわなければいけないし、その許す範囲内で利用するというのも高橋先生の必要悪という言葉もありましたけれども、必要悪としてやっていかなければいけない部分もあるという視点もここにはなければならないと思います。
【來生委員】 最初の○のところで、「価値を将来にわたって減ずることがないように」と書いてありますが、それだけでいいのかという気がします。今より悪くならなければいい、極端にいうとそういうことですね。現にできるかどうかわからないけれども、むしろ価値を高めていくというか、少なくとも減ずることがないということが大事ではないかと思います。
それともう一つは、先ほどの議論とも関係しますが、日本の産業構造が、特に中国のWTO加盟という話もあるとすると、やはり知的な付加価値の高い産業にシフトしていかざるを得ないと考えたときに、良好な環境が持っている、知的な付加価値を高めるという人間の活動に対してプラスに働く役割が、ある意味での生産力に着目した評価の中でも少し見直される可能性があるのではないかという気がします。
【磯部主査】 1の価値勘定については、少し難しい質問ですけれども、だれがという主語はどうなりますか。
【高橋委員】 今の來生先生のご意見に少し関係するのですが、食糧は各国が自給するということを世界のコンセンサスにしなければいけないと思います。現にヨーロッパはそのように動いてきていますし、イスラエルは建国時代からずっと砂漠地帯での自給をやっています。日本はどちらかというと外圧で自給は外される方向にあるのですけれども、僕は生態学を専門とする立場から、物質循環の維持ということを考えると、身の回りでとるというのが原則だと思います。ですから、ほかのものはすべて輸出入してもいいと思いますが、食料品だけは自給というのを原則にするということをどこかで日本は貫かなくちゃいけない。農水省は農業基本法、それから水産基本法をここ数年来改変されて、自給率がどんどん低下していたのをとにかく上げる方向に方向修正をされました。ですから、そういうのを受けて、僕はグローバリゼーションというのは食糧には適用すべきではないということを、この海洋保全の中も貫いたほうがいいと個人的には思います。
【來生委員】 それはすごく意見が分かれる可能性があると思います。実現可能性を考えたときに、日本の食糧自給率をあまり下げないほうがいいというのは、これはだれが考えても賛成すると思いますが、自給を目指すべきかというのは、ほんとうに可能かというところを逆に考えると、かなり難しいという気がします。その主張を全体の中に入れるというのは、かなり意見が分かれる可能性があると思います。
【高橋委員】 今のところはとにかく下がる一方という状況ですから、極端な場合、日本では一次生産はつくらないという感じになる。水産物はその傾向が非常に強いと思います。それを加速するのはよくないと思います。ですから、少なくとも現状維持か、少しでも向上するというような、そういう姿勢が大事ではないでしょうか。今、グローバリゼーションは非常に問題視されておりますので、ここ数年、特にワールドトレードセンターのテロは、いわゆるグローバリゼーションの結果がああいう問題を起こしているというような指摘も出ています。僕はもう少し配慮したほうがいいのではないかと思います。
【磯部主査】 ここのところは自給率を100%にするかどうかはなかなかコンセンサスの得られにくいところであるけれども、あまり下げないほうがよいというのも事実なので、そういうところについて書き込んだらどうでしょうか。
そうすると、ここのところは価値勘定ということで出てきましたが、海洋環境保全を支える考え方というか、フィロソフィーとして、価値勘定だけではなくて、食糧の自給というような面、それは物質循環をクローズさせるというところからも書けるのではないか。海洋保全の必要性、あるいはコストに対するベネフィットを明確にしましょう。こういうことだと思いますので、今、新しい観点を出していただいたと思います。
ほかにはいかがでしょう。2のあたりにもう少し具体的なところまで書いてあります。だれがというと少し気が重くなりますけれども、海洋の生態系の解明につてがこれだとまだどこにも書いてありません。つまり、全体としてのシステムが非常に重要なので、そのシステムを明らかにして、初めて局所的なところで何か起ころうとしたときに、その中で最低やらなければいけないこと。あるいは保全していかなければいけないことの位置づけが出てきます。そういう部分も入れておいたらいかがかと思います。
それでは、少し視点を変えますが、資料3−3、資料3−4、資料3−5と事務局で用意していただきました。別添を見ていただきますと、別添の報告書の目次案の中の4、5、6に対応するものになっているということです。その4、5、6に対応するものになっているということを前提にして、3、4、5の書き分けの仕方とか、それから書き分けの仕方を議論すれば、当然足りないもの、別の場所に移したほうがいいもの、そういうご意見があろうかと思いますので、そこら辺についてご意見をいただきたいと思います。
別添は「はじめに」があって、それから2番目で「取り組みの動向」、これは第1回目に各省庁からご報告をいただきましたようなものが国内であって、それから国際的なものについても調べて書きます。3は「基本的な考え方」で、これは前回以前にここで議論したものが出てくる。これを受けて4、5、6、それから後で7にかかわるところをご説明いただくことになりますが、4、5、6、7とつながっていくということです。
どんなところからでも結構です。実は先ほど申し上げたのですが、4の中に「喫緊に取り組むべき問題とその解決に向けた施策」とか、「予防措置を講ずるための施策」という「施策」という言葉が出ているけれども、この中身は今のところはいわゆる調査研究とか、技術開発とか、そういうところまでを書いたというように思っていいのですか。
【文部科学省】 そういうものが主流になってしまったのですが、既存の取り組みとか、技術の取り組みとか、例えば油流出ですと、個別条約の対応とか、そういうことを入れていますが、そういうものも今後、当然入れていくということになると思います。それとも技術開発とか、そういうものについては別途わかるように区別するとか、そういうほうがよろしいでしょうか。
【磯部主査】 むしろ逆に、それならそれで割り切ってタイトルの書き方を少し変えるという手もあるかなと思っています。つまり、私が読者として読んだときに、例えば「沿岸域開発による藻場・干潟等の消失と生態系への影響」という項目があって、それのもう少し上の項目が施策と書いてあるのだから、これは藻場とか干潟を回復するなり、創造するなりということが入っているのかなと思って読んでみると、機構の解明とか、技術の開発とか、モニタリングとか書いてあるので、実際に干潟を増やす話はここではないんだなというふうに見るわけです。「施策」と言われると、私は実際に藻場を増やすようなことを事業としてやりますということなのかなという印象を受けるのですが、そうではないですか。
【難波委員】 一般的な日本語の印象はそうですね。
【磯部主査】 ちょうど実際に事業化するところの手前で切っているような、そういう印象があります。そのことについて、実は資料3−4には入っています。例えば資料3−4の2ページを見れば、物質循環システムの修復の中に、太字のところで「安定地形を確保した人工海浜、干潟等の造成」というのが入っていますので、ここへつながってきます。つまり、資料3−3で技術開発をして、できるということになったら資料3−4でやりますということだから、全体としては書き込まれています。しかし、表題との対応が必ずしもぴったりではないと私としては感じています。その辺はまた、最終版にする段階で表題の工夫などをすることにして、何といっても大きいのは、この海洋保全委員会として、どんなことが喫緊に取り組むべきであるか、どんなことは予防措置をすべきであるかという、先ほど問いかけたことがかなり大きなインパクトを持つことになると思いますので、そこについて再度ご意見をいただきたいと思います。
【難波委員】 目次と今までのを見て、例えば資料3−5の「海洋環境における価値勘定」が、目次でいきますと6項に入っています。この海洋環境の価値勘定、2番が「自然環境保護・海洋環境創造を講ずるための施策」ということになって、2.2は具体的なことが書いていますね。例えば価値勘定というのは、知識がないのでわからないのですけれども、全般に例えばこういう環境評価しなさいとか、こういう因子に対して何をしなさいとか、こういうものであるのであれば、この価値勘定の項というのはもっと上にある、例えば題目でいきますと4項「取り組むべき問題とその解決に向けた施策の展開」とか、そういったところに入ってくる項目になるような気がするのですが、そうでもないのでしょうか。
【文部科学省】 本来的にはそういうことだと思いますが、とりあえず4、5につきましては、先ほど申しましたが、今ある技術的なというか、そういう視点で取り組んで、6については、人間や人文社会的な要素が入ってきます。まだそこまできちっと示せるような議論、研究がなされていないということで、少しこれを落として、今後やっていくべきものとしました。今後はこういうものがきっちり議論されて示されていけば、必然的にそれが前提となった施策ということになってくると思います。
【磯部主査】 先ほど申し上げましたが、4、5というあたりは、現在の価値観、現在のコンセンサスのもとでもできることを書いてあって、それを一層進めるためには、もう少し根源的な価値観までさかのぼらないと一層推進するのは難しいだろう。それを6に置いたということだと思います。6から始めてしまうと、話がそれこそまだ確立されていないところから議論をしなければならなくなるので事務局としても難しくなってきます。
【來生委員】 何か全体の考え方の基本的な枠組みというか、流れがわかるようにタイトルを少し工夫したほうが読むときにすっきりわかるような気がします。このままのタイトルだと、4と5と6のそれぞれの違いが、章の表題を見たときにぱっとわからない。それぞれのウエートがどこにあるのかというのがなかなかわかりにくいと思います。ねらいを端的に反映するようなタイトルに変えるといいのではないかという気がいたします。
【文部科学省】 タイトルについては、中身がだんだん今固まりつつあるので、それを反映するような形で考えたいと思います。
【磯部主査】 6.1と6.2というのはなじみますか。今、難波委員からもご意見が出たと思いますけれども、別添の目次案のところの6.1と6.2、きょうの資料で言えば、資料3−5の1と2です。価値勘定を言っておいた上で、2.1は価値勘定の話だから、確かにそれを具体的に高度化しようということですね。その上で自然環境保護の推進、先ほど出たバラスト水とか、土砂の輸入の話というのは、これはここでいいのでしょうか。今でもできることという中に入りそうな感じがします。つまり、喫緊というところで出てきたぐらいの問題ですね。文章化すると、もっとわかってくるのかもしれません。2.2はもっと自然保護的なことを入れたほうがわかりやすいのかもしれません。とにかくサンクチュアリーで守るというような、そういう話ぐらいのことを。
【來生委員】 考え方としていろいろな考え方があって、整理の仕方があると思いますが、この目次立てだと、4、5、6にそれぞれの総論的な議論がそれぞれの1のところで入っていると思います。目次のタイトルだけを見ると、海洋保全に関する基本的考え方というところに総論を全部集めて、4、5、6のところは各論的なところで整理をするというやり方もあるような気がして、いろいろな選択があると思うんですけれども、もう一度全体の配列をわかりやすくするためにいろいろやってみたらいいのではないでしょうか。
【文部科学省】 今のところは、「基本的考え方」に5つ書きましたが、そういうものが各章に対応するような形でやっているつもりですが、まだ個別の章にきちっと書き込めていないので、事務局としては、基本的考え方は総論の考え方で、あとは各論の考え方と考えています。
確認ですけれども、外来物質種については、喫緊に取り組むというか、適切な予防措置というところで取り上げるということでよろしいですか。
【高橋委員】 技術的に可能ならば、私はぜひやっていただきたいと思います。
【磯部主査】 予防というところに書くのか、喫緊で書くのか。つまり、意識としては喫緊だと思いますが、定義としては、喫緊のところは顕在化してということがあります。だから顕在化というところまでいっていないので、かなり確実だろうから「予防措置がぜひ必要である」という、そういう書き方はいかがでしょうか。
【來生委員】 分類としてはそうかもしれません。
【磯部主査】 かなりシビアな問題を含んでいると私も思っています。
【高橋委員】 予防もやっぱり喫緊というのがあるわけですね。
【磯部主査】 喫緊に予防措置が必要だということですね。そのとおりだと思います。
【伊藤委員】 きょうの議論をたどってみますと、図1と図2があって、まず海洋環境問題の分析があって、その中からテーマを抽出していったわけですね。
次は喫緊の問題についてどのような施策をするかというのと、表題は別にしまして、先ほどご意見がありましたように、次はやや中期的な課題についてどう取り組んでいくのかというのがありました。この6のところはそういうコンテキストは少し違った面で、全般的に、この施策を立てる上での価値勘定の問題があります。それで価値勘定はこういうアイデアがあって、6.2のところに評価方法の研究がありましたけれども、それも含めて価値勘定という考え方を持っていかないと、最終的には自然保護というものについての事業を行うにつけても、その事業の正当性をこれから示す上でも必要ではないか。あるいはそれに対して国民的な支持を得るためにもそういうプロセスが必要になるのではないか。そのようなところで、やはり事業者がやるのですよね。それが6.1で、6.2は、今までとは違った自然環境のソフトウェアで、どういう研究をするというような見方で切っていけば比較的書きやすいのではないでしょうか。
前のほうはわりあい施策というか、ハードウェアというか、今ある既存の技術、あるいはその延長上の上でこういうことをやっていこうというのが出てくるのでしょうけれども、そういう書き方をして、6のところはもう少しそれよりも難しいというか、どういうふうに環境保護の政策を立てていくかというベーシックなところを議論したら分けられるのではないでしょうか。羅列的に書くと、少し書きにくいところがあると思います。
【難波委員】 今のお話を伺うと、6と7を一緒にしたほうがいいのではないでしょうか。
【磯部主査】 そういうご意見も出るかと思います。つまり、4、5は比較的現状に近い格好でやっていて、さらにもっと全面的に展開するためにはどうしなきゃいけないのかというのを扱っている。一つが6でもあるし、7はこれからご説明いただきますが、7はそれで足りない部分をどう補っていくかという話なので比較的なじみやすいところがあります。ただ、3の「基本的な考え方」で目次のような格好になっていますので、その基本的な考え方に基づいて章割りをすると4、5、6、7になるということです。これはどちらでもいいというか、そういう面はあると思います。ただ、これだけをぱっと見直してみると、6と7は一緒にしたほうがむしろ書きやすいかもしれませんというサジェスションはあり得るかと思います。
【文部科学省】 それは検討しますけれども、そうすると、資料3−5の2に書いてある目次と6.2に該当する「自然環境保護・海洋環境創造を講ずるための施策」、特に「自然環境保護の推進」というところがなかなかしっくりいかなくなるので、その場合は4に持っていくのでしょうか。外来生物種だとか。
【難波委員】 そうではなくて、6.1だけが7に移ったら大体いいのではないでしょうか。そのような印象で見ていました。
【磯部主査】 6.2はどうしますか。
【難波委員】 6.2は6の中で何かまとめたときにあれば6だけで、6.2を動かしてまとめられてもいいと思います。
【文部科学省】 考えてみます。
【難波委員】 6の中で見ても、6.1と6.2が何となく結びにくいですね。総論と一遍に結論に来ちゃったような感じなので。だから6.1が7に入ったほうが早くないかなと、単純にそう考えました。
【伊藤委員】 読みやすいかもしれませんね。海洋政策のベーシックみたいなところで。
【文部科学省】 事務局としては、海洋保全委員会の売りというか、今までと違う視点からそういうことを出したいと考えているのですが。
【磯部主査】 2.2を書くと、サンクチュアリーというのが入ってくるのですか。
【文部科学省】 そうです。
【磯部主査】 サンクチュアリーをつくりましょうとか。
【文部科学省】 ええ。
【磯部主査】 つまり、まさに保護というかなり限定された強い言葉を書くためには、4や5では不十分で、やはり6を書くべきではないか。そのためには価値観というものが確立されないと、それだけのコスト負担に対する正当性が調達できない、こういうことですね。
【文部科学省】 逆の言い方をすれば、自然保護、そういう地域を指定する際にも、ただやみくもに指定するのではなくて、保護地域の価値をきっちり議論した上で規制をかけるならかける、そういう言い方だと思います。
【磯部主査】 整理の仕方のヒントは出てきたと思います。全体としても、特に委員の方でこう組みかえなければいけないという話ではなかったでしょうから、書くべき中身としては、おそらく大筋合意されていて、あと順番については、もし再検討があればしていただくということにしたいと思います。
○議題4
●事務局から資料3−6に沿って説明がなされた。
○閉会
(研究開発局海洋地球課)