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科学技術・学術審議会

2001/10/29議事録
第2回海洋保全委員会議事録

第2回海洋保全委員会議事録


1.日時:平成13年10月29日(月)14:00〜17:00

2.場所:経済産業省別館825号会議室

3.出席者:
  (委員)
      磯部主査,高橋,難波,來生の各委員
  (関係省庁)
    文部科学省:花岡地球科学技術推進調整官,梅田 他
    外  務  省:大久保首席事務官
    経済産業省:武田課長補佐
    国土交通省:岸田海洋開発官,日当専門官

4.議題:
(1)海洋環境問題の現状について
(2)当面取り組むべき海洋環境問題について
(3)海洋環境の維持・回復及び海洋環境に配慮した海洋利用・沿岸防災等に向けた取り組みについて
(4)その他

5.会議経過:
○議題1
●高橋委員から資料2−3に沿って説明がなされた。
【磯部主査】  先生がお話になった基本姿勢は、この海洋開発分科会では逆の言い方をしており、「知る」・「守る」・「利用する」は、知った上でそのメカニズムをよく理解し、まず海洋を守る。守ることを前提にして、その中でできる利用をしていくということですから、これは前提ですね。先生は、逆に必要悪という表現をなさって、これもやはり守るというのが基本であって、利用するというのは、守るということができる範囲内でやるということですね。
【高橋委員】    そうです。
【磯部主査】    海洋開発分科会で述べられていることを、いわば引っくり返しにおっしゃったと理解していいわけですね。
【高橋委員】    そうですが、より強く言いたいということです。
【磯部主査】    そうすると、一つ、具体的な問題として、ミティゲーションのようなことが出てきます。環境アセスメントも出てきましたが、環境アセスメントの特に計画アセスというようなものを事前にやるということ、これが評価をするだけではだめで、評価がなされて、その中でマイナスのインパクトをできるだけ小さくしなければならないが、それでも最後に必要悪というマイナスのインパクトが残ってしまえば、何か代償措置をすることも含めて、先生のお話を理解すればよろしいでしょうか。
【高橋委員】    はい。
【外務省】    ただいま、当省は海賊行為に対する努力を傾注しております。先生の今のご講演の、8)において海洋の安全性という中で、海賊問題を取り上げていただきましたところ、本当に感謝しております。ただ、私どもにとりましては、海洋環境と海賊問題が今一つ結びつかなかったものですから、それについてもう少しご説明をいただきたいと思います。私の理解では、先生は海洋環境をより広い概念でとらえられて、海賊行為も入れていただいたのかなと思います。
【高橋委員】    そうです。この海賊行為は、多分、海洋保全委員会でないと、3つの委員会の中に入らないのではないかと思い、最後に入れました。このため、次の整理には入っておりません。ですから、こちらの影響を受ける範囲に新しい項目を足さなければならないかもしれません。
【外務省】    さしでがましいようで大変恐縮ですが、海賊行為は、利用委員会のほうで議論させていただいております。
【高橋委員】    そうですか。それでは、ここでは取り上げなくてもよいのでしょうか。
【外務省】    いや。ここでも広くとらえていただいて、入れていただくことは当省といたしましては、一向に構いません。と非常にうれしいと思います。
【磯部主査】    環境というのは、安全という言葉が入りますので、安全という切り口から、この海賊問題をとらえらるという意味で、ここでお話を伺うのがいいと思います。ただ、ここだけでクローズするという意味ではありません。
【高橋委員】    影響を受ける範囲で、海洋の安全性という項目を一つ付け加て、この8)やほかのものが入ってくると思いますが、そういう視点もあると思います。
【難波委員】    先生のお話は非常によくわかります。保全という立場からすると、非常に聞きやすいものです。反対に、今度は利用するという側から考えてみたときに、保全というのは、リサイクルなどを考えますと、必ず利用する人間が、それぞれ費用負担をしなければいけない。どんな費用負担かは知りませんが、例えばリサイクルするために費用がかかるとか、もしくは選別するための労力を提供するということも含めて、利用する側が費用を負担することに対する価値観が醸成されないと、なかなかうまくいかないと思います。法で規制することも考えられますがいずれにしても、皆さんがなにがしかの形でお互いに負担するのですということの得心がまずつくれないと難しい話だなというのが1点目です。
  もう一つ、得心させるためには、そうすることが自分のために還元されるということが、何かわかるストーリーが必要です。それは前回の議論の中でも、いろいろな循環がどのような形で生活にインパクトを与えているか、もしくは、どういう因子が影響を与えるかなと、何かつながりを持てるような研究開発をしなければならない。時間がかかっても、そういう研究開発をやるべきではないかという議論が出ておりました。
  先生の話は非常によくわかりますが、これをまともに持ち出そうとすると、まず納得するのに非常に難しい議論が中にあると思います。
【高橋委員】    僕がずっと言っているのは、健康とか安全というものは、日本では非常に大きいと思います。これは飲み水とか食べ物とか、いろいろな問題が絡んできますから。水産物はまさにそうです。陸上の水の問題もそうです。それから農業の問題もそうです。今みたいに、よそから、わけのわからないものを買ってきて、食べているという形だと、ものすごく危険です。
  それから、自分たちの安全を守るために、ものすごくお金を投入しても、そんなには困らないと思います。うまく言えないのですが、日本では、安全はだれが守るんだという感じになっていて、結局、だれも守っていない。ですから、少なくとも海に関して、私たちの生活に関するものは、まず安全を最初に最優先するということです。
  そういう意味で、基本的考え方に、人類が快適で安全に生活できる社会とありますが、快適よりも、まず安全を先に出してほしいと言いました。安全でないところに快適はあり得ないと思います。とにかく快適なんかは取ってしまってもいいと思うのです。安全な市民生活をつくり出すために、海洋はどうあるべきか。例えばリサイクルの場合、リサイクルをしないと健康に影響してくるものがたくさんあります。安いけれども、健康に危険なものを取りますか。それとも、絶対に安全だけれどもちょっと高いものを取りますか。そういう選択肢に、これからなってくると思います。
  それで、ヨーロッパ、例えばデンマークに行きますと、ペットボトルとか、缶ビールとかは一切ありません。すべて分別されているのです。それは、大西洋が汚染されてしまい、アザラシが病気になって死んでしまいました。アザラシの抵抗力がなくなったのは何かということで実験をして、南大西洋の魚を食べさせたアザラシはぴんぴんしているのに対し、北大西洋の魚を食べさせたアザラシは病気になってしまいました。それで、みんな、海が汚染したということに危機感を持ったのです。15年ぐらい前ですけれども。それだけではまりませんが、これも含めて、結局、安全な生活をつくるために、リサイクルしなければいけないということが徹底されてきました。
【來生委員】    さきほどの海賊との関係、安全という今の言葉との関係でも、私自身も整理がついていないのでお教えいただきたいのですが、直観的には、海洋の安全というときに、海賊が安全ではないというのは、海洋で利用する人の安全性が、海賊行為によって犯されているということがあると思います。ほかの要因は、海を利用する人ではない第三者というのか、直接の利用者ではない人の安全性にも影響があるという意味だと思います。むしろ、こちらの安全性が海洋保全委員会の主要なターゲットではないかと思いますので、海洋の安全性というところに海賊というのが入ことのつながりが薄いような気がします。
  むしろ例えば船舶のいろいろな基準を守らない船が、船籍地や監督の関係で、運航していて、突然沈んで、それがいろいろ悪いものを海に排出してしまうことのほうがここで言う安全に近いのかもしれないという印象がありました。この整理はどうなるのかなというのが、お話を伺っていたときの1つの疑問です。
  それからもう一つは、先ほどの磯部主査のお話との関係で、先生のお話は、私は4ページあたりの議論というのは、ミティゲーションはほとんど何の意味もないというご趣旨かと思っていたのですが、必ずしもそうではないということでしょうか。
【高橋委員】    日本でやられているような意味のミティゲーションは何の意味もないと思います。あれは、どちらかというと実験という感じがします。ただ、実験であるけれども、いかにもやっているのは実験的じゃなくやっています。だから、やるのであれば、本格的なミティゲーションをやらなければならない。その場合、何もしないで放っておくこともミティゲーションだと思います。そうすれば、海が必要なものは、そこにちゃんとつくり出すわけですから。
【磯部主査】    幾つかのことに関連して、まず、難波委員から出たことで言うと、干潟があってもなくても、そんなに要るものでもないから、いくら埋め立ててもいいというのが、おそらく例えば20年前だったら、そう考える人が多かったと思います。今は、干潟の機能がかなり科学的に明確にされてきて、その機能とが非常に貴重であるということがわかったので、国民的にも多数の人が、干潟を保全することが大事だということがわかってきた。そういうことで、私たち大学にいる者として、そのメカニズムをきちんとわかりやすく説明をしていく。そのために知ることが大事で、知ったら、それから、いわゆる環境教育、最後の教育で出てきたことです。知って理解した上で、教育をするというところをつなげながら、そのコストシェアリング、費用負担につなげていくというのが、1つの考え方です。
  その上で、干潟の重要性がわかって、先生から出てきたもので言うと、横浜の金沢八景の海の公園。あそこは地形が安定しているので、アサリが稚貝をまかなくても自然に発生するという状況になってきました。それと似たものは、三番瀬の中でも船橋海浜公園は浚渫土砂を使った人工の海浜です。干潟をどう定義するかにもよりますが、形態で言うと、いわゆるどろ干潟ではない砂質の干潟ですが、これは安定しており、底生生物も随分いるようなものができている。一方で、東京湾の例で言えば、稲毛とか幕張とかというのは人工海浜をつくったけれども、浸食されてしまって、ものすごく大変なことが起きています。そういう失敗例、成功例があります。特に私は、個人的には、地形が安定することが非常に大きなファクターであると考えておりまして、それを無視してつくっているところが多いと思います。
【高橋委員】    そうです。私も同感ですが、ちょっと言葉が足りませんでした。あと、関西国際空港の藻場も成功の例だと思います。
【磯部主査】    あそこは、大阪湾の中でも藻場の面積にして5%ぐらいあるそうなので。なかなか人工といいながら、箱庭とも言えませんね。湾内の5%ですから。
【來生委員】    もう一つ、よろしいでしょうか。先生の今日のお話、特に生命の安全ということを中心に、それを第一義的に考えるというスタンスは、総論としては、ある意味で非常によくわかるお話ですが、私がやっているのは法律で、経済学部にも属していて、経済の人間といろいろ話をする機会が多いのですが、経済学者が今のお話を聞いてどういう反応をするか頭の中でシミュレーションをしてみると、皮肉な言い方をすると、ケインズの言葉ではないですが、中期ないしは長期に見れば、人はいずれ死んでしまう存在です。そうあるときに、抽象的に安全を第一義にするということ、さきほどの先生のお話で高くても絶対安全なものにするか、少々安くて、安全度が相対的には少し低いものにするかという選択になるという想定があって、先生は、高くて絶対安全なものを選択するとおっしゃいましたが、そのようにうまく割り切れるだろうか。人間が絶対死なない存在ならそういう選択もあり得るのかもしれないけれども、結局、その社会が与えられた状況の中でのコスト判断、どの程度のコストをかけて、どの程度の安全を確保しようとするのか、その社会が持っている命のコストというのをどのぐらいに評価するかということになると思います。先ほどのヨーロッパの例というのは、ある意味で非常に興味深かったのですけれども、あれは多分周りの環境がものすごく悪化したために、生命の価値というものが大きくなっているのではないでしょうか。
【高橋委員】    そうです。ペットボトルとガラスの瓶があるとき、リサイクルの費用は、ペットボトルは10倍ぐらいです。ガラス瓶は10分の1ぐらい。そうすると、中身を考えると、消費者のほうは、ガラス瓶を買ったほうが、ちょっと重いけれども、安いわけです。そうすると、みんな、ガラス瓶になってしまったわけです。ですから、缶ビールも何もないそうです。ですから、自然にそういう選択が消費者の側から働くみたいです。
【來生委員】    だから、教育をして、消費者の英知を高めていくことは重要な問題で、社会にとって大きな価値があると思いますが、一方で、どこまでの強制が許されるかという話があって、例えば漁業資源で、近海で取れるいろいろなものを利用しないで、外国から取れるわけのわからないものを食べるということが、ひいては自分たちの安全にも大きな影響を与えていることについて、観念としてはわからないではないのですけれども、逆に、外国のものを食べないように強制をどこまでできるかというのは、すごく難しい話になります。そのメカニズムをどう考えたらいいのでしょうか。
【高橋委員】    それを理想だとすれば、どうやって、そういうスタンスにしていくかということだと思います。これは無理だからやめてしまおうとなってしまうと、全然違う方向に行ってしまうので、いいと思われる場合には、やはりそれをどうにか精神の中で生かせないかとかです。だから、そういう目でだれかがこれを読んだときに、確かに、この人たちはきちんと考えていると思ってもらうことが重要だと思います。そうでないと、読んだときにちっとも考えていないではないかというのは非常に残念だと思います。
【磯部主査】    少し時間が過ぎていますが、後につながる話で先生の復元力の範囲を見極めて、その範囲内におさめることであるということがあって、それが例えば内湾のどの辺のイメージなのか。あるいは、そういうイメージのようには単純には言えないのか。おそらく、そういうことだと思いますが、東京湾があり、それを広げた三大湾、伊勢湾、大阪湾があり、もう少し復元力の範囲内に順番に立てると、有明海もあり、睦奥湾があって、北海道の野付崎あたりというのがあって、どの辺の感覚が復元力の範囲内と見たらいいのでしょうか。これはみんなで議論することでもあるのですが。
【高橋委員】    なかなか直接的な答えにはならないのですが、例えば東京湾の場合、窒素、リンなどのインプットと、湾内から出てくるアウトプットがあります。その差が結局、たまることになります。入ってくるものが多く、出るものが少ないと。やはり東京湾の場合は、例えばたまらないようなインプットに抑えることが必要と思います。
【磯部主査】    そこはまた議論したいところで、例えば東京湾を具体的にとると、負荷のうち90%は海水交換で外へ出ています。たまる量といっても知れていて、そのたまる量というのは、底泥の中にうめてしまえば、これは系外に出たのと同じになります。実は私も物質循環はものすごく大事で、これを中心に議論したいと思っています。ただ、それをさらにもう少し深く考えてみると、東京湾も、それなりに物質収支は取れているわけです。入ってくる負荷量が莫大に多くて、莫大に多いのを莫大に多く外へ出していて、ほんのちょっと残って分は、底泥とともに堆積している。堆積しているから、あっと言う間に、何かがあると巻き上がる。特にリンでいえば、貧酸素水塊ができると溶出し、それが赤潮のもとになっている。それでも、周年変動はちゃんとしているのです。その中で、この復元力の範囲をどう考えていくかが、ここまでいくと、少しヒントが出てきたような気はしているのですが、そこら辺は詰める必要があるという気がいたします。

○議題2
○事務局から資料2−4、資料2−5の説明がなされた。
【磯部主査】    今まとめていただいたものを別の観点で見てみると、1ページから最初に「海洋環境問題とは」と、まず定義があって、その中で重点化の考え方ですが、要因というのは、見方によっては、1)の「環境負荷物質の流入」はその言葉のとおり流入で、何ものかを海洋という場に付加する、余分に投入するという側面です。それに対して「沿岸域の開発」は、そこで起きている何らかのプロセスを、今までと違ったプロセスに変えてしまう。そういう見方ができて、3)の「海洋資源の利用等」と書いてあるのは、今度は、その場から取り出すという側面。そして4番は、地球環境問題で、少しそういうこととは外れて、まさにグローバルな側面が挙げてあると見られるかと思います。
  そして、その上で、別添の図1というのがありますが、この図1というのは、最初の「環境負荷物資の流入」という余分に場に加えたことによって環境負荷要因と書いてあるところは、何が増えてしまうのか。減ってしまうのかというのもあってもいいのですが、基本的には何が増えてしまうのかというのが、それぞれ書いてあるし、それから、「沿岸域の開発」というところも、そのプロセスを変えることによって、どこが減ったり増えたりするのか。例えば淡水流入の変化と書いてありますが、おそらく物質収支というので高橋先生のお話にも出てきたものは、海ですから、まず水があるかと思います。その水から始まって、水に含まれている物質が水質という言葉に代表されるところがありますし、土砂もあります。それから水産資源は物ではありませんけれども、物質収支の中の1つだと思えば水産資源も入るし、鉱物資源も入ると思います。そのような物質収支の物質という言葉を非常に広く取ったときの物質が、この環境負荷要因というところに、少なくとも「海洋資源の利用等」というところまでは書いてあります。これを循環型にしなければいけませんという話で、そこがどう崩れてしまうのかというあたりが、ここに書いてあると見ていいわけです。
  地球環境問題については、非常にスケールが大きいので、むしろ、ここの欄には現象が書いてあって、その現象から異常気象・海象というところから、さらにまた上へ行って、海岸浸食につながるとか、そういうところへつながってきます。これは1枚の図では表現し切れないのですが、そのような構造になっていると思います。だから、そのような見方もあるということを少し述べておくのも、読んだ人にわかりやすくするという意味でいいのではないかと思います。
  その上で、こんな構造でどうかというのが、事務局からご提案がありましたので、まず大きな構造、枠組みですね。そのあたりからご議論いただき、その後、各項目について、どんなものだろうかという議論をしていきたいと思います。
  関連することとしては、今日、伊藤委員から、別添3という、このA3のご意見をいただいていまして、非常によく整理された表になっていますので、とても参考になると私は思います。ちょうど、こういう枠組みでいくか、あるいは、こういう枠組みで整理してくださったので、事務局がつくってくださった資料で抜けている項目が、随分、ここから取り出せるような気がします。そのような使い方もあろうかと思います。原因と書いてあるところが、それなりの環境要因に近いところで、事務局のものは、もう少し一般化をして取りまとめをしてあるようなイメージですから、これをまとめて、その結果というのが、環境負荷要因か、あるいは影響の種類か、そのあたりに対応しますから、ここで比べてみて足りないものを順次、さきほどの図に取り込んでいくということができると思います。
【來生委員】    質問があるのですが、海洋保全委員会の基本的スタンスがどこにあるかということですけれども、例えば別添の表の「海洋資源の利用等」というところで、水産資源の枯渇とか、鉱物資源の枯渇とあります。これは、例えば水産資源の枯渇は、むしろ利用にかかわることではないか。水産資源というと、何か経済的な利用についての傾斜がかかっているような気がして、保全
はそういう見方でもいいのかどうかよくわからないので教えていただきたい。
【磯部主査】    水産資源は、それを取って初めて、水産業というなりわいになるので、水産資源が枯渇するということ自体は環境問題としてとらえてもいいのではないかと思います。つまり、ある生態系が存在して、その生態系の中で人間が利用可能なものというのが水産資源と言われているわけで、これは生態系全体が存在しない限り、有用な魚だけがいるということはあり得ないのですから、そういうものとしてとらえるのがいいし、とらえてよろしいと私は思います。
  細かいことを言うと、この1枚の図で全部見られるようにしてしまうので無理がありますから、基本的には、何か原因があって環境に関係するような、何ものかの物質がおかしな状態になりますというのをまとめてみたということになれば、よろしいかと思います。
【高橋委員】    まず、いろいろな環境問題がここへ出てきていて、そしてその中を整理して重点化を出しています。見るほうにとってみれば非常に大変です。2つのことを見なければいけないという感じがあります。環境問題を別に整理して、ある程度整理されたものから、重点化みたいな形に分けて考える。重点化だけ関心を持った人には、すっと入ってこられるような気がするのですが。
【磯部主査】    事務局でやっていただいた作業は、前回の議論で、海洋に関する環境問題はたくさんあります。それをピックアップした。出された意見は、どうもそういうふうにランダムに出されても、何だか、網羅しているのか、していないのかよくわからないので、ちゃんと整理してピックアップしてみたらどうかというご意見が出されて、事務局では、この1)から4)に一応分類をしてみたということでしょう。その上で、このような問題がどこにつながっているかということを整理してみたわけです。
【高橋委員】    そこに重点化ということを入れないで、その次に重点化という視点を入れると、もっとすっと行くのではないかという気がします。
【事務局】    磯部先生のお話と一緒になってしまいますが、いろいろな問題を図1で整理をしました。それで、環境負荷要因というのは、事務局でイメージしている、いわゆる取り組むべき問題群です。事務局で抽出したものでもこれだけあるわけですが、これらを重点化するため,図2のように抽出した問題群を、インパクトと技術レベルで整理しました。例えば、社会的インパクトが非常に強い問題で、すぐにでも取り組めるような技術レベルの問題については、喫緊に対応する問題とするとか、もう少し長期的に見て研究開発を着実に進めなければいけない問題等といったことが分かるよう図2を使って整理しました。
【磯部主査】    今の問題は、私が最初、よく理解してなかったのですけれども高橋先生のおっしゃる意味は、この1ページの2.の「重点化の考え方」という目次が読みにくいという意味だと思いますが。
【高橋委員】    そうです。
【磯部主査】    だから、2.というのは、要するに海洋環境問題の項目拾い出しというのが2.であって、2.を2つに分けたらどうかということですね。
【高橋委員】    ええ。
【磯部主査】    そういうことだそうです。全く中身を変えるというよりは、別添の図1と図2があるのだから、図1に相当するものを1章というのか、1節というのか、一つ出して、海洋環境問題の構造などで整理して、その構造の中に、どんな問題があるかピックアップしてみました。その中で、まさに、その次の項目としては、重点化の考え方があって、それに別添2という図がつく。ですから、1ページの2.のタイトルが例えば変わったとして、その中に人為的要因があり、地球環境問題、そして負荷要因がある。影響を受ける範囲からは、節の名前を変えたらどうか。そのほうが、どれが大事か明確化されるということです。
  先ほど出たお話で、安全ということが随分出ていました。それで、資料2−4にも丸の3つ目で、「一方で、四方を海に囲まれ、沿岸に人口……が集積している我が国では、津波、高潮、波浪等による災害や海岸浸食等について脆弱性を有している」という記述があり、ここでは、こういう意味での自然災害とか防護とかといった意味の安全性がこの委員会の構成ですと、「知る・守る・利用する」なので、どこにも入らなくなってしまいます。ここの委員会で扱わないと。そういう意味で、資料2−4に入れましたので、資料2−5のほうも、そういう部分は入れたほうがいいのではないかと思いますがどうでしょうか。
  例えば別添の図1があって、その中で、海岸浸食・砂浜等の消失がありますけれども、その結果として、津波・高潮が来たときに、波のエネルギーを吸収するという意味で、防護がなく、自然災害を受けやすくなるという面がありますので、影響の種類には、例えば沿岸災害の深刻化という言葉を入れて、安全にもきいてきますということを明確に書いておいたほうがいいのではないかと思います。同じ海岸災害の深刻化で、例えば、その中で海流の変化や土砂等流入の変化。さらに地球環境問題で、異常気象・海象がありますけれども、これはまさに沿岸災害の深刻化が関係していますので、対策を何か考えるべきである、気をつけなさいというようにしてみたらどうかと思います。
  それで、そのように入れたからには、全体のつじつまを合わせるという意味で、資料2−5の1ページに「海洋環境問題とは」という定義がありますが、その定義も、前に基本的な考え方で書いたのと同じように、海岸災害という意味の安全も関係していることを入れてみたらどうかと思いました。アンダーラインのところに、「気象・海象の異常現象,」となっていますが、そこを「異常現象とそれに伴う沿岸災害」というような書き方をして、沿岸災害もここに入っているという意味の安全性が入っていることを書いておけば、基本的な考え方と定義と、それから最後に図表に出てくるものとが整合してくると思います。
  そうしましたら、全体のこういう枠組みで、「解決に向けた施策の展開について」というのを取り扱っていくという方向でよろしいでしょうか。
  もしそうであれば、別添の図1、図2あたりについて、具体的なところで少しご意見をいただきたいと思います。先ほどの高橋先生のご講演でも、関係するところが幾つかあったと思いますし、伊藤委員からの意見の中でも、参考になることが随分あるかと思いますどこからでも結構です。
【來生委員】    図2の項目の整理の言葉づかいと、図1との関係はどうなっているのですか。
【事務局】    本来であれば、環境負荷要因というところの言葉が、ここにストレートに入ってこれば一番いいのですが、それだと、この図2だけを見ただけでは,非常にわかりにくいので、それを補足するようなやり方をせざるを得ませんでした。
【來生委員】    いや、例えば環境負荷要因で、河川とか、沿岸地形の変化とあります。そういうことでよく言われるのは、例えば日本の海岸線がみんな人工的なものになってしまって、自然海岸線が大変少なくなっているという問題は、図2で言うと、例えば干潟の消失と生態系への影響というのはあるのですが、それに相当するものは、比較的よく言われているわりに出てこないという気がしました。
  これはまだ全部の項目を網羅的にリストアップはしていないのだろうと思いますけれども、そこをどのように整理していったらいいのか、一見して自分でもまだうまく整理がつかないところがあります。
【磯部主査】    おそらく來生先生のご指摘はそのとおりだと思います。私は今のご指摘には具体的問題として一番専門が近いので責任があるのですが、中身としては、図2ですけれども、土砂収支の不均衡に伴う海岸浸食・砂浜等の消失があります。要するに、その表現の仕方が必ずしもわかりにくいという指摘はそのとおりだとは思います。
【來生委員】    これには埋め立ても入るのですか。
【磯部主査】    そうです。つまり、ここは高橋先生のご講演にもまさに関係するところで、要は津波・高潮というものに対して、とにかく人命を守るということで成功したと言えるけれども、その反面、実は物質収支、その中でも土砂の収支、循環を十分に考えてこなかったので、気がついたら、護岸だらけになっていたということです。そこの部分を何とかもう少し考えないといけない。それこそ、ここは復元とか、回復とかをしないといけないだろうと思います。その物質収支をきちんと考えるという側面から、今の問題を解決していきたい。そういう意味で、ここは書いてあるのですね。
【事務局】    そうです。
【磯部主査】    ただし、今ご指摘がありましたのは、私なりに思うと、図1の環境負荷要因と影響の種類という単語を何か組み合わせると、図2になってくる。つまり、事務局からご説明があったように、環境負荷要因だけの単語で、図2にしてしまうとわからないし、影響の種類だけというわけにもいかないので、だれが見てもわかるような組み合わせで図2ができるというようにしようということ、逆にそうするために図1を変えたほうがいいかもしれない。そういうことでしょうか。
  図1が最終的に出ますと、海洋保全委員会は環境問題として、これだけしか考えなかったのかということにもつながりますから、よく見ていただきたいと思います。これだけ考えれば、将来に向けて、よい海洋環境ができるのかということです。
  なかなか難しそうなのは、高橋先生からご紹介をいただいた海洋深層水の長所が非常に多いということはよくわかっているのですが、短所は何もないのか。環境に対する影響は何も考えなくてもいいのかというと、そうではないわけですね。
【高橋委員】    ええ。大容量になれば、いわゆる海洋電池とか、風力発電を持っているのと同じような問題は起こります。
【磯部主査】    今の風力発電は海洋エネルギー利用に入っているのでしょうか。
【事務局】    それを含めて、海洋エネルギーとしております。【高橋委員】    この人為的要因等という中に挙がっている項目に、何が具体的に入っているのかがわかるような表があったほうがいいのかもしれません。
【磯部主査】    注釈みたいなものですね。
【高橋委員】    そうすれば、そこにありとあらゆるものを入れておいて、それをこのように分けたということになるわけです。この人為的要因に全部挙げてしまうのは無理だと思いますが。
【磯部主査】    これは、委員のお知恵を拝借して、まとめるようなことを考えましょうか。
【來生委員】    例えば海洋資源の利用等に、レジャー活動のようなものは入らなくていいのでしょうか。資料2−3の絵で、釣糸は何百年ということですが、それがすごい問題という話も聞きますし、資源の枯渇だけではなく、まき餌についても、漁師はそれほど使わないけれども、素人はじゃんじゃんまいて水質を悪化するという話もききます。それが全体としてどれくらい影響があるのかは、僕も全然わからないのですが。
【事務局】    私たちの資料のほうにも、レジャーのことは含めることにします。
【磯部主査】    泥浜の海岸では、プレジャーボートのつくる波でも浸食を起こすので、スピードを上げてはいけません。スローダウンという看板が立っていたりします。それもおそらく地形を変化させないという意味で環境保全するために、そういう手段を取らなければならないということだと思います。
  今のことに関連して、一方で、言葉のとらえ方として、ごみの問題はどこに入るのしょうか。
【事務局】    ごみ問題につきましては、環境負荷物質の流入のところで、廃棄物処分場からの漏洩というのを1つ挙げています。あとは、海洋投棄のところです。
【磯部主査】    今、私が言ったごみについて、この2つから、ごみを思い浮かべるような人はいないような気がします。
  ごみの問題というのは大きくて、しけの後、海岸にごみがものすごく打ち上がっています。これは普通の人が人力で取るには多過ぎて、やる気がしないし、お金をかけてやるにはお金もないのです。
【來生委員】    うまく処理されない一般廃棄物みたいなものが、流れ流れて海岸に出てくる。
【磯部主査】    それから、外国からも流れてきます。国際問題ですね。韓国からとかです。
【高橋委員】    事務局で海洋保全に関係すると思われる人為的要因を細かく全部だして、それをどの項目に分類したのかという資料をつくっていただくことは可能ですか。そして、それを各委員の方がそれぞれごらんになって、補足すると。
【高橋委員】    たたき台でいいわけですから、別に完全を期する必要はありません。それは委員の我々が、できるだけ完全を期するように専門分野で努力するということです。図1には、その他というのが全部に入っているのですが、最終的にまとめるときには要らないのではないかと思います。なるべく、これをわかりやすいシンプルな図にされると非常にいいかと思います。
【磯部主査】    ありがとうございます。事務局にとにかくたたき台的な枠組みだけつくっていただいて、中身を委員が埋めていくという作業をしたいと思います。
  あと、図2で、対策の技術レベルと環境問題としての深刻さ・社会的インパクトとありますが、この辺も言葉自体が少し変わるかもしれませんが、現段階で見ていただいていかがでしょうか。
【高橋委員】    この縦軸が上に行くほど難しくて、下へ行くほど易しいという感じになっていますが、これがぴったりと頭に入ってこないような気がします。
【事務局】    技術開発という視点から、このような分類をしました。本来、施策として難しいとか易しいということは別の問題があって、この難易という表現がよくないのかもしれないのですが、技術レベルで見た場合、もう既に現象自体もある程度わかっていて法的な整備もされているものと、今ある技術を使えば何とかなるとか、それから新たな技術開発が必要なもの、現象自体もよくわかってないもの、観測や分析などの物質自体の研究ができないもの、そういうレベルで、たたき台として分けさせていただきました。
【來生委員】    一番下と下から2番目の関係で少しわからないところがあります。そもそも法令というのは、全然性質が違うもので、既存の対策技術を適用すべきものは、大体、法令に基づく規制の強化をしようというときには、既存の対策技術が確立していて、というところと重なるような気がします。
【事務局】    そういう意味だと、一体的なものかもしれません。
【磯部主査】    別のとらえ方をすると、法令という言葉を出す必要がありますか。
【來生委員】    なくてもいいのかなと思います。
【磯部主査】    何か、その先の意味があるとすれば、出しておくほうがいいのですが、意味がないとすれば、混乱するのでそこは削ったほうがいいと思います。
【難波委員】    この一つ一つのレベル1から5とか、既存技術の適用、一番上のジャンルに入るものとのつながりが、我々には非常にわかりづらいところがあります。これは、どこかご専門の方がもう一度整理していただいたほうがいいのではないかと思います。例えば一般の人が読んだときに、土砂収支の不均衡に伴う問題があります。これはレベル5です。これと例えば外来生物種の侵入による在来種の絶滅とか、いろいろなものが、レベル5と2というのは、どういう考え方でジャンル分けされているのか。一般的に言うと、新たな技術開発が進めるべきものという面で見たときに、海岸浸食・砂浜等の消失というものが、技術的に何を難しい課題であり、この面で分けているという見方も出ます。レベルの話は、どこかで学校の先生かご専門にやられている方が、ウェート分けをしていただいたほうがいいと思います。
【磯部主査】    ここは、委員の中でも議論しなければならないところでもあるし、だれかが見て修正したものをまた提出し、それでまた議論するということでしょうか。
【難波委員】    そのほうがいいのではないでしょうか。非常につながりがわかりにくくなっています。
【高橋委員】    先ほどの重点化の考え方で、いわゆる計量スケールみたいなものが読めない。あそこで詳しく読めれば、それをスケールにして考えるけれども、多分、これは事務局のほうが頭の中で考えたことだと思います。そこは見えるようにして、みんながコンセンサスを得られるようなものにしなきゃいけないと思います。
【難波委員】    難しいですね。
【磯部主査】    エキスパートジャッジというところでクリアしようということですか。
【事務局】    そこをもう少し客観的な、定量的な指標で示せれば一番いいと思います。
【磯部主査】    これは見方によるとおもいます。そこは、とにかく生態系を考えると、生態系の場が非常に大事だという考え方で、これは整理ですね。
【高橋委員】    先ほど、私が申し上げた視点1と視点2が共存しているわけです。視点1で考えると、例えば外来性生物種の云々というのは非常に高いほうにくるかもしれないが、ここではレベル2の低いほうにきています。それがわかるような形にしておかないといけないのではないでしょうか。場合によっては、2つのグラフが要るのかもしれない。こういう視点で見た場合には、こうなるというような。
【難波委員】    それともう一つ、例えば図2をまとめたとして、ある程度、政治に反映するということになってくると思います。そのときに、ある程度系統的に政策に反映するというときに、反映しやすいジャンル分けというのが当然ないと、これまた難しいですね。環境一本で、全部をどこかでやればいいのですが、各省庁にまたがっているとなると、省庁がわかりやすいジャンル分けが、ある程度ここにつながっているということにしないと、反映も非常に難しくなると思います。
【高橋委員】    多分、環境問題の深刻さと社会的インパクトは同じ尺度ではないのではないでしょうか。環境問題の深刻さで、レベル1から5まで分けた場合と、社会的インパクトとか、緊急性で1から5まで分けたものとは違って出てきて、今おっしゃっていたようなことは、もしかすると、政府が緊急的なところを探そうとすると、これじゃ読めないのではないでしょうか。
【難波委員】    対策の技術レベルとインパクトとか、そういう因子を、このようにするのは無理があるのかもしれません。
【磯部主査】    ここは、どうやっても難しいところと思います。さて、どうしようかというと、今出てきたもので言うと、深刻さと緊急性という2つの尺度があるわけです。問題としての大きさと、とにかくこれだけはというのです。
【難波委員】    逆に言いますと、対策の技術レベルを逆に読むと、当面の課題中期展望、長期課題とか、そのように見るのでしょうか。
【事務局】    そういうニュアンスもあって、その後に、すぐ取り組むべき問題と長期的に取り組むべき問題として目次案に記しております。むしろ、もっと違う指標があれば、それを提示していただいて、個別の施策のところで、技術レベルに応じた施策を書くという書き方もあるのかもしれません。
【來生委員】    環境問題の深刻さと社会的インパクトとは、私も確かに違うなという感じがして、狭い範囲で人が1人死ぬという話と、死にはしないけれども、軽いダメージだけれども、ものすごく多くの人が影響を受けるという話と、それはなかなか比較しがたいと思います。インパクトというと、何となく死ぬほうが大きいような気がして、そこをどうやってうまく切り分けるかということがあるかもしれないという気します。
【磯部主査】    少なくとも、この2軸というのは、縦軸は、上にあるので、知るという調査の委員会にがんばってくださいというメッセージを送りたいという軸です。横軸は、これを受けて、実際の行政的な施策に反映していきたいというように見ていいと思います。ですから、そういう趣旨は生かしたいです。それはわかりやすくていいと思います。そういう面から見て、縦軸の表現も若干修正してもいいし、その上で、上下の入れかえがあってもいいと思います。つまり、調査をたくさんしてくださいというのが上にあって、固形廃棄物というのは、それはごみが海岸にどれぐらい打ち上がるかという調査は要るのかもしれないけれども、科学的な意味で、それとは少しニュアンスが違っており、ことさら研究が要るかというと、そういう問題ではないということだと思います。横軸のほうが、施策に反映するといったときに、深刻さと緊急性と、いろいろ軸がありそうだとうことですが、何か名案がありませんでしょうか。
【來生委員】    僕は全然、専門ではないのですが、思いつきですが、個人に対する影響大きさと、それの影響を受ける人の積のようなものがうまく表現できないかなと思います。
【高橋委員】    分けておいたらいいのではないでしょうか。そうすれば、そのときに、緊急性を取って生かすか、あるいは長期的に生かすかできます。例えば環境省の場合は、ある程度長期的にお考えになられるかもしれないし、農林水産省の場合には、かなり緊急のところをお考えになるかもしれません。
【磯部主査】    そうすると、全部、菱形でなっていますが、菱形や四角形があって、この四角形は、ローカルだけれども、限れた人数に対するインパクトが大きいのでここに入っていますとか、丸印は広く影響の範囲が大きいのですぐ死ぬというわけじゃないけれども入っていますとか、そういうやり方もありますね。もちろん図を2枚に分けることも考えられます。
  それでは、そのように整理をした上で、最終的には、また委員の皆さんに見ていただいて、最終案をつくる。それは、エキスパートがやりましたということで考えていきたいと思います。

○議題3
●事務局から資料2−6に沿って説明がなされた。
【難波委員】    一つよろしいでしょうか。非常に初歩的な質問ですが、循環型の社会とか、言葉としては非常によくわかりますし、そういうものであるべきだというのもわかりますが、例えば、循環型社会があって、システムの許容量を超えないということにしなければならないという理屈はわかるのですが、システムの許容量はについて、何かターゲットがあるのでしょうか。
【高橋委員】    それははっきり言ってないのですが、そういう姿勢が大事で、研究を進めていただかなくてはいけないというのが、理解レベルだと思います。
【磯部主査】    例えば、東京湾はどうして物質循環がよくないのかというと、食物連鎖網があっても低次の生物が高次の生物にエネルギーとか物質とかという格好で輸送される格好になってないのです。赤潮が発生すると、一次生産がものすごく増えて、例えば珪藻赤潮であるとすれば、それを食べる動物プランクトンがいて魚がいて、もちろん貝類もいる。このように、だんだん高次の生物に移っていかなければならないのに、あまりにも一度に植物プランクトンが発生するため、ただひたすら死ぬだけで、下に落ちていってしまう。それをバクテリアが分解するという格好になるものですから、それは循環と言えないことはないのですが、低次の生産が高次の生産に生かされていないという意味で、生態系が不健康なのです。
  ところが、東京湾、伊勢湾、大阪湾、有明海、何とかと見ていったときに、どこまでが、これのシステムの許容範囲なのか単純に質問をすると、なかなかどこまでということは言えないのです。【高橋委員】    全くそのとおりです。
【磯部主査】    ですから、全く言えないわけではないのです。
【來生委員】    「健全な海洋環境とは」のその他の要件は何かというときに、海洋環境問題の定義が資料2−5の1.にあります。そこでカバーされている問題で、今挙がっていないのは、アメニティー的な要素というか、景観の喪失が2−5の1.の定義の中に入っていて、それが「健全な海洋環境とは」というところには出てきないと思うので、うまく対応するように要素を考える必要があると思います。
【磯部主査】    おっしゃるとおりです。ここは先生方、一家言あるところだと思いますが、まとめるほうは事務局にお願いするとして、いろいろな情報とか、キーワードとかを出していただければいいと思います。
  先ほど、人類も死ぬべき運命ということがありましたが、東京湾で、特に湾央ですが、大体、ヘドロのような格好で土砂が年間約0.1グラム/平方センチメートル、押しつぶしたとして、大雑把に言うと、年間1ミリぐらい堆積します。平均水深が15メートルですので、割算すると15,000年。15,000というのは全然信用できないのですが、オーダーとして1万年。1万年で東京湾が埋まるとすれば、人間は1万年以上についてあまり考えなくてもいいけれども、1万年後ぐらいは何か考えなければいけない。それが私たちにとっての無限大の年数だろうと思います。1万年になったらもう無限大で、全然違う要素で決まってしまう。そのぐらいは循環しなければならないわけで、海岸浸食の問題は土砂の収支の問題ですから、それを収支がバランスするように海岸保全をしていかなければならないし、それが生態系にとっても、生態系を支えるまさに生息場をつくるということにもなるので藻場・干潟という言葉が出ていましたけれども、そのぐらいの視点は考えていきたいということでございます。
【高橋委員】    健全な海洋環境で、今考えていたのですが、例えば東京湾が泳げなくなっています。泳げるような海洋環境というのは1つの目安になるかもしれません。そうすれば、泳げるところですから、その他の活動というのも、いろいろ泳げるのが維持されるような活動ならば、かなり許されるんじゃないかと思います。
【磯部主査】    そうですね。今出てきたのは目標レベルといいますか、それを設定する必要があって、いろいろ東京湾で言うと、昭和20年を基準にしてそこへ戻すのか、40年代なのかといろいろな議論があると思いますが、私も高橋先生と全く同意見で、東京湾で人が泳げるレベルにする。これはまさに人の健康とか、安全とかに直接結びつくところなので、終戦直後に戻そうというよりは根拠があると思います。
【高橋委員】    すべての海岸を、例外はあるとしても、泳げるような環境を目指す。
【磯部主査】    泳ごうとすれば、大腸菌とか有害物質の問題がありますし、それから、東京湾で貧酸素水塊が発生しないようにすることも含まれるわけです。そこにものすごく集約されたことで、僕はいいことだと思います。
【高橋委員】    それから、ごみも、みんな入れなくなるわけです。
【難波委員】    しかし、泳げるような海をつくろうということは、泳げるような水以外のものは入れるなということになるわけです。そうすると、利根川とかいろいろな川がありますが、あそこで泳ぐという話はあまり聞いたことがありませんので、川の水が入ってきたら困るということになると思います。そこを直さないといけないということになりますね。入ってくる水質自体を、泳げるレベルの水質に変えていかなければいけないということでしょうか。
【高橋委員】    現在、工業排水は非常にきれいになっていて、生活排水が問題です。それが川に処理されて入ってくる。今の川は、三面護岸ですが、多自然型にしてそういうものを取り除くような仕組みが今進んでいますので、川の水はだんだんきれいになる方向です。
【磯部主査】    これは前にも出た流域から考えないと、東京湾の水質はよくならないので、今日も資料をカラーでいただきましたけれども。これは、ぜひやりたいプロジェクトでもあり、先ほどのコストという言葉で言うと、ものすごいコストがかかる話でもあります。
【高橋委員】    官主導でやればコストがかかるのですが、みんなの意識がそうなれば安くいく可能性があります。例えば僕はつくば市に住んでいますが、つくば市は官主導でつくられたので、だれもごみは拾いません。それを全部、自治体がやらなければならないのです。もし民意でつくられたとしたら、そういうものは一切なくて、かなり早く自活していると思います。官主導でいくと、なかなかコストは見えにくくなるのです。
【磯部主査】    「健全な海洋環境とは」ということで、さらにご意見はいかがでしょうか。
  生態系本来の食物連鎖網というのは先ほどの話でもあるし、プランクトンをクラゲが食べてしまうのではだめなのです。クラゲが食べると、もうそれ以上、上に行かないので。クラゲがあまりにも多い海は、あまり適当な海とは言えない。そういう内容ですね。
【高橋委員】    ここはもう少し、一般の人がわかりやすい表現が必要かもしれません。
【磯部主査】    中身はいいとして、表現の問題ですね。
【高橋委員】    そう。中身は、とてもいいと思います。
【磯部主査】    3番目は具体的には、どういうことになるでしょうか。3番目の有害物質の蓄積・濃縮が、人体あるいは生態系に影響を及ぼさない範囲で維持されていることは、例えば水俣湾のようなところは、有機水銀の濃度が許容範囲を明らかに超えたということで、蓄積されたということでしょうか。
【事務局】    そうです。
【磯部主査】    これも、一つ一つの物質について、濃度はどのぐらいでいいのかと言われると難しいと思いますが。
【高橋委員】    それにはならないでしょうが、有害物質としてこのようなものがあるということでしょう。例えば今先生がおっしゃった水銀とか、ダイオキシンとか、テトラクロロエチレンとか、農薬だとか、そういったような幾つかの例を挙げて、それが例えば水道基準を上回らないようなという感じの表現でいいのではないでしょうか。
【磯部主査】    わかりました。これは環境基準のようなものを念頭に置けば説明ができるということだと思います。
  物質循環については、循環という言葉と収支という言葉を組み合わせて、一般の家庭でも収入と支出がアンバランスではだめという理解で普通の人が理解できるようにということを考えるのでしょうか。
【高橋委員】    物質循環というのは、皆さんに知ってもらいたい言葉です。これを別の言葉で言わないほうがいいと思います。
【磯部主査】    言うときは、土砂収支という言葉は要らない。これも物質循環の1つだと思っていれば。物質循環の物質の中身を広くとらえればいいと思います。その結果として、人が泳げるということは、生物も環境に制約されずに活動ができるということですから。
【高橋委員】    先ほど申し上げたのですが、これは今の問題だけを解決しようとするのではなく、なぜ起こったかというところまで含めたメッセージを入れていただくといいのではないでしょうか。できる、できないは別として、そうするおとによって、ほかの分野の審議会とも接点ができてくると思います。
【磯部主査】    例えば、どのようなことを入れましょうか。
【高橋委員】    物質負荷が出てきたとき、ただ入れないでくださいと言うのではなく、社会システムとして、そういう物質、廃棄物が出ないような社会、例えば厚生労働省に考えてもらいたいことがわかるようなものにしてはどうでしょうか。
【磯部主査】    要は下流側で手当をするだけではなく、上流側でもできるようにということですね。
【高橋委員】    そうです。
【難波委員】    この中の例えば浚渫だとか、砂を入れるとか、海水を交換するとかというのは物理的にわかりやすいのですが、干潟・藻場の造成というのは、物理的につくることはできるのでしょうが、ほんとうに自然環境として干潟とか藻場の造成は、工学的手法でできるものなのでしょうか。
【高橋委員】    限られた場所ならできますが、一般には、まずできないと思います。
【難波委員】    ということは、この干潟とか藻場の造成というのは、基本的に、そうなってはいけない限界であって、人工的につくることは、なくなるもののほんの一部しかできないという感じでしょうか。
【高橋委員】    現実はそういうことです。
【磯部主査】    今まで非常に難しかったというのは現実だと思います。先ほど申し上げた船橋海浜公園とか、金沢八景の海の公園とか、幾つかの例があって、私が見たところでは、外力に対して底質の状況を考える、地形をよく考えるということがよくできているところが成功している。初期条件が普通の干潟と同じ地形だから、それでいいだろうと思ったものは失敗している場合が多い。そういうことです。そういう意味では、技術的な知見は相当たまりつつある。それから、もう既に先ほどのどこが基準かというのを考えると、その基準レベルより下がっているところが多いので、それを増やしたいというところはたくさんあるわけです。
【高橋委員】    これであまり悲観的になってもらうと困るのですが、あまり単純に書かれて、楽観的に、どこでもつくろうとなっても困ります。現状を踏まえたような認識ができるような表現が必要です。
【難波委員】    例えば潮の流れがあまりなくて、潮の干満だけはあるところは、確かにつくりやすいかもしれません。
【磯部主査】    先ほどの例で言うと、昔の底線がここでした。ここまで埋め立てをしました。埋め立てをしたので、その先に人工的に干潟をつくります、砂浜をつくりますというと、昔の勾配に比べるときつい勾配になります。同じ外力であればきつい勾配のときは浸食されます。昔と同じ勾配になりたがるのです。そうすると、初めはつくったとしても、結局、だめになるのです。
【高橋委員】    千葉のところがだめだったということですね。
【磯部主査】    あの辺はそうです。それは外力を小さくするか、それでなければ、流形を昔より大きくすることです。そういうことが少しわかりかけています。そのぐらいは私でも言えるぐらいになっているということです。
【難波委員】    やはり利用する立場の委員会から言うと、これは何も利用するなと言っているのと同じではないかということになりかねないです。
【高橋委員】    そこまで妨げたくはないです。
【難波委員】    したがって、一般的に利用する場合、バランスを考えてやるということであれば一向に構わないのですが、強く取ると、これはにっちもさっちも動けないようになるということになってしまいます。
【高橋委員】    そこで、代償という違うところに、そういう環境を。ここは難しいから別のところで、その分を復元しようと。そういうオプションはしばらくは必要だと思います。
【難波委員】    例えば環境アセスメントがありますね。例えば発電所をつくるときに環境アセスメントをやる。同じように、埋め立てをやるときにも環境アセスメントはあります。こういう影響がどう出てくるのか。
【高橋委員】    それは日本の場合、現実的にほとんど機能していません。開発的な視点でアセスメントを実施するのが現実です。ですから、アセスメント法は、いまだにきちんとしたものではないのです。
【磯部主査】    そこが変わりつつあります。現実に藤前干潟を最終処分場とするというのは中止になりましたし。それから、三番瀬の埋め立ても、740ヘクタールという計画が101ヘクタールになり、今は千葉県としては白紙撤回ということになりました。
【高橋委員】    あれはNGOの活動が両方とも非常に大きかったからそうなったので、それがなければ計画どおり実施されたと思います。
【磯部主査】    千葉県は、環境会議などのいろいろな仕組みがあり、仕組みとかNGOの人とか、社会的な関心とか、いろいろなものが集まってこうなったと思います。
  これでいくと、回避・最小化・代償措置というようなアメリカで実施しているミティゲーションの考え方に近い考え方が出てくるので、最後の代償措置というのが、どこに出てくるのかわからないのですが、まず、回避する、最小化をすることだと思います。そこは、どんな開発でも必ず伴ってくると思います。
【高橋委員】    この辺の表現のニュアンスが非常に難しいところです。先ほど、難波委員がおっしゃったように、これでは全然やる気をなくしてしまうのではないか。それだと困ると思います。しかし、バラ色でどんどん行けというのも困る。
【難波委員】    確かに困ります。例えば環境アセスメントを充実させるということになっていくとは思うのですが、基本的に開発というのは、現状を保全するということと開発というのをバランスをよく考えていくという趣旨で行わなければいけないと思います。
【磯部主査】    雑談のようになってしまいますが、そういうことがあるので、私は1の物質循環が非常に大事で、東京湾では、先ほど高橋先生がおっしゃったように、人が泳げるということでいいですけれども、それを言ったときは、最低限の物質循環はこういう状態だということを決めたということです。その物質循環の状態は保った上で利用するべきところは利用していく。普通の言い方をすれば、保った上で最大限利用するということでもありますし、高橋先生の表現をお借りすれば、必要悪の分はそこでやるということです。そうなってくるので、少し話が飛んでしまいますが、各湾について環境計画が要ると思います。それなしには何もできないとおもいます。
  つまり、一つ一つの利用に対して、環境保全の側から厳しい条件があると、実は利用は何もできなくなるという可能性が一方ではある。先ほどから難波委員のご指摘のように。他方で、環境アセスメントを初期のころのように、ただやっただけで、あまり実質的な意味がないということにすると、なし崩し的に環境は破壊されてしまう。その間を縫っていくとすれば東京湾について環境のビジョンがあって、そのビジョンに従って、環境の回復もしていき、保護という意味の保全もしていく。その中で余った部分について利用をしていくという側面がないといけないから、前半がものすごく大事だと思います。この前半が崩されるようでしたら、開発はできないという話でしょうし、その範囲内で経済活動は当然しなければならないので、それはしていきましょう。そこに調和という部分を残しておかないといけないと思います。
【難波委員】    これは厳密には海洋と関係ないのですが、例えば私どもの産業界でいきますと、100年も工場をやっています。その工場は売りようがないのです。百何年にわたって、工場排水の規制がどんどん変わってきました。昔は地下排水でした。これを認めていたのです。一回浸透したものは、残っているので、工場は、町の真ん中に広いものがあっても売りようがないのです。土質の改良には地価の何倍も金がかかるのです。すると、工場は放っておこうということになります。単純に言うと売らないで、木を植えたほうが安いということです。
  いろいろな面で、確かに環境というものが時代とともに変わっていくことは構わないのですが、極端なことをすると、どんどんそういうのが増えていくということになるから、早めにいろいろなことをやっておかないと、利用価値のないものがどんどんできてしまいます。今も多分、日本中の工場は、工場以外に使いようのない土地です。
【磯部主査】    土壌汚染の問題は非常に深刻ですね。
【難波委員】    ええ。もうどうにもならないのです。
【磯部主査】    お金という問題もあるけれども、お金以前に技術もあまりきちんと開発されてないところがあります。
【難波委員】    これは余談ですけれども、前提になるものというのは、時代とともに変わるのでしょうが、きちんとした理念というのがないと、産業活動そのものがおかしくなってしまう感じがあります。
【高橋委員】    東京湾を犠牲にするとか、そういうことが出てきてもしょうがないのでしょうか。
【磯部主査】    そのかわり、ほかはちゃんとするということで。
【高橋委員】    そう。
【難波委員】    先ほどの「健全な海洋環境とは」という、ここの定義をわかりやすく示すことが一番でしょう。
【磯部主査】    この議論は、また戻ってもいいのですが、今の議論全体からすると、1.の「健全な海洋環境とは」は、相当わかりやすくなったと思いますし、方向性はわかったと思いますので、それをやるとして、そして2番目で「講ずるための施策」があって、「物質循環のシステムの修復」は、文言の細部は別としても、方向性としては、特にご異論がないところかと思います。それから「負荷の削減」も、これはそのとおりなので、特に高橋先生からのなぜそうなったのかを書いてほしいというところが、ここにもつながってくるとことだと思います。
  その上で、3番の「海洋環境に配慮した海洋利用・沿岸防災等に向けた施策」になります。ここについて、すこし話は出ていますが、一番クリティカルなところになると思いますので、余った時間でそこを議論していただきたいと思います。
【來生委員】    具体的な施策というときに何をイメージするかは、いろいろだと思います。2番と3番の両方にかかわりますが、例えば東京湾だったら東京湾に面した自治体が、東京湾をどうするかという協議を現在でもやっているという話は聞きます。今度の議論は、川の上流からずっと海に至るまでを一貫してとらえるという視点があります。そういうときに、もっともっと多くの自治体がかかわってきます。そのメカニズムは、既にあるのかどうか僕はわからなくて、例えば水道水でよく聞くのは、否が応でも自治体として放さざるを得ないというので、いろいろな連絡があると聞いています。海の環境で、最後にみんな海に出てくるので、そういう視点で自治体がいろいろなことを協議するような場というのがあるのでしょうか。現在あれば、それはそれでいいのですけれども、もっと活発に議論させるということだろうと思いますが、もし存在しないとしたら、そういうものを考えていかなくていいのかという気がします。
【磯部主査】    組織というのは、どうですか。各省から出ていただいていますが、そういう組織というのは、どこかにあるのでしょうか。
【高橋委員】    農林水産省は、森と海とそういう水産業の盛んなところの自治体で、そういう呼びかけをしたりして、農林水産省として把握しておられると思います。
【難波委員】    大きな河川は国土交通省ですね。一級河川はみんなそうですね。
【国土交通省】    河川の場合は2つありまして、水質汚濁防止協議会を主要な水系でつくって、水質を保全しております。それは海の水質がどうのこうのというフィードバックまではしてないのですが、河川水質をよくしていこうというスキームがあります。それからもう一つは、水質という話ではありませんが、先ほど高橋先生がお話しになったように、多自然型川づくりで、いわゆる川の整備をどうしていくのかということを主体的に、流域全体で議論するということで、河川整備計画に基づきまして、そういう沿川の市町村の意見を聞くいろいろな仕組みがあります。それは現在進行形で、すべてできているというわけではありませんが、そういうスキームが2つほどあります。
【難波委員】    海洋保全委員会は海洋という視点で今やっているわけですね。当然、陸域から流れてくるもので海洋というのができているわけだから、陸域を考えなきゃいけない。これは正しいことですけれども、例えば陸域について、この海洋開発分科会が答申を出したときに、何か衝突が起こるものがあるのでしょうか。全くないのでしょうか。
【国土交通省】    全体の中で、どのようなご議論になるかが、多分、前提になると思いますが、少なくともそれぞれの施策に関しては、あるいは、おのおの管理しているところについては、審議会のようなスキームがありますから、それに基づいた審議会での議論というのがあります。この中での議論では、文部科学省の大塚課長が最初にお話しになったと思いますが、その中で、こちらのほうの審議会なり分科会でのご審議、あるいは提言の状況というのに応じて、お互いに意見交換をしながら、あるいは各省で意見交換をしますから、その中で施策として進められるものは進めていくということです。私どもは、こうやって委員会や分科会に出させていただいているのも、私どもの施策をご紹介させていただいて、先生方の参考にしていただけたらと。そういうようなスキームで、この中でできるものをやっていくという形になるという感じです。
【難波委員】    そうすると、特に問題はないということですか。
【国土交通省】    問題がないということではなくて、各省の中で意見交換をしながら、必要なところを調整していくという形になると思います。
【來生委員】    言ったことがすべてできるという保証はないけれども、海に関連していることで、少なくとも、ここが言わないとほかに言うところがないから、言うのはここが言って、それがそのとおりに実現できるかどうかというのは、それはありとあらゆることはわからない。そういう話かもしれません。
【磯部主査】    まず科学的な立場から、合理的な議論をする。そこが重要ではないかと思います。それがすぐに実現可能であるかどうかについては、現実問題ですから、あると思いますが、來生先生がおっしゃったようにそれを言わないとだれも理解しないので、この2.に書いてある丸の中で、2つ目の「人間活動に伴う陸域・大気等」と書いてありますが、特に内湾の水環境問題ととらえたときには、流域単位でとらえないと、その根本的な解決というのはできない。それは物質循環という立場から考えるとすれば、当然そうである。答申に直接入るかどうかわかりませんが、一般家庭からの排水の問題は当然あるし、その排水をどう下水処理場で処理をするのかということもあるし、あるいはその処理をする前に、最近テレビでよくやっている合流式でやるかどうかということがあります。なかなか分流式にするというのは難しいでしょうが、そういう問題や上流の処理の問題もあります。それから内湾の中で、干潟などで水質浄化機能を使ってどうするかという問題があるし、それから外洋とのやり取りの問題もあるし、全体について述べなければならないのではないでしょうか。
【難波委員】    この2.も3.もそうですが、本来、維持・回復が大事だということはわかるのですが、維持・回復の前提というのは、それ以上悪くならないことが1つの前提になりますから、本来は、物質が供給される側の規制をしましょうということになります。その次に、今、たまったものをどう回復しましょうか。そういう順番になるのだろうと思います。そうすると、一番初めに来るのは環境に負荷する供給側の規制になります。その次に、たまったものの回復はどうしましょうか。その中で、そういうものを考えた上で、海洋利用というのはどうしましょうかという順番になるでしょう。そうすると、書いていく順番もその順番ではないかと思って、そこを順番で最初に来たときに、上のほうは困らないのですかという質問をしたかったのですが、今、科学的に、ここは答申を出し、施策はどうやるかはまた別に考えるということであれば、筋道はきちんとして出しておくのがいいと思います。
【磯部主査】    2番、3番あたりでいかがでしょうか。
【來生委員】    2.の丸の1番の「物質循環のシステムの修復」と「海洋環境に配慮した海洋利用」とは同じようなことになのではないでしょうか。
【事務局】    重複するような問題も当然あると思いますが、考え方としては、海洋環境というか、場の修復をまず前提に置いて、次の3.というのは、その回復された場を、さらに元に戻らないようにということです。
【難波委員】    そういう感じですか。
【事務局】    例えば3.の先ほど、「海洋利用、沿岸防災に向けた施策」で推進する上での留意事項は、具体的に言うと、私の認識ですが、先ほどから磯部先生が地形の勾配の話をされていますが、あのようなものがイメージとしてあります。
【磯部主査】    2番までは、まだ環境という立場だけからどうしたいかというのを一方的に言っておいて、そして3番では、「知る・守る・利用する」ということで、ほかのジャンルとの整合性をどうつけていくのか、調整をどう取っていくのかという視点を3番で書こうということになると思います。
【來生委員】    3番に関連して、これもソフトの話ですけれども、結局、都道府県を中心にした自治体が、うまく総合管理の計画的なシステムをつくって、そこに先ほどの千葉県の話じゃないけれども、NGOみたいな、いわゆる経済的なコミットメントだけではない要素を入れてという提案というのは、ここ数年、いろいろ国土庁からもされているし、河川局のほうからもされているし、ああいうことを、もっと積極的に、いろいろなところで実現しやすくしていくということは非常に重要な提案になると思います。
【磯部主査】    今、來生先生のお話で、イメージとして東京湾協議会というのが要ると思います。あるいは高橋先生の言葉で言えば、むしろ日本全体の海域協議会というのが要るのですが、それで各湾の役割分担をどうしようかというのも1つの視点です。瀬戸内海だけが今あるわけですね。あとほかのところについても、それぞれあって、全体をどうしていくのか。その中でまた利用も考えていかないといけないのではないでしょうか。そういうものがないと利用がしにくくなる可能性もある。これは大きい話なので、答申に書くかどうかというのは、もう一度考え直してみるということが必要だと思いますが、直観的には、そういうことをしないと、東京湾で人が泳げるようになるなんていうのは、とてもできそうには思えません。
【高橋委員】    そうですね。現実に、もう東京、千葉、神奈川が自分だけで考えるわけで、3つが集まってやっているというのは、あまり聞かないです。
【磯部主査】    東京湾の沿岸の2県1都、それから市町村というのはあります。それはありますが、それだけでは足りないのです。東京湾をやるには。流域から考え直さないといけません。それから、そこがどれだけの権限を持つか、発言を持つかということにもよります。そこで決まったことは何でもやるというのであればできると思いますが。
  海洋保全委員会としては、流域、ウォーター・シェッド・アプローチというのは英語でもかなりはやり言葉ですから、そういう流域管理という視点から広く、内湾、あるいは沿岸域、ひいては海洋というものを考えなければならないということを最低限書くことにして、その上で具体的な組織の提案をするかどうかについては、私たちには行政のことはわかりませんので、行政の方とも相談をさせていただくということにしましょう。

○閉会
  次回を11月19日10:30から13:30に開催することをお知らせし、閉会した。


(研究開発局海洋地球課)

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