科学技術・学術審議会
2001/10/15議事録第1回海洋保全委員会議事録 |
1.日時:平成13年10月15日(月)9:00〜12:00 |
2.場所:文部科学省別館第6会議室 |
3.出席者 |
(委員)磯部主査,伊藤,小川,難波,來生の各委員 |
(関係省庁) |
文部科学省:大塚海洋地球課長,梅田 他 外 務 省:大久保首席事務官 農林水産省:丹羽企画課主席企画官 経済産業省:本城鉱物資源課長 国土交通省:岡部海洋室長,岸田海洋開発官,柴田専門調査官 環 境 省:川島係長 |
4.議題 |
(1) 海洋保全分野における関係省庁の施策について |
(2) 海洋保全に関する基本的考え方について |
(3) 当面取り組むべき海洋環境問題について |
(4) その他 |
5.会議経過: |
○議題1 ●資料1−2−1に沿って文部科学省,資料1−2−2に沿って農林水産省,資料1−2−3に沿って経済産業省,資料1−2−4に沿って国土交通省,資料1−2−5に沿って環境省からそれぞれの省の施策の説明がなされた。 |
【來生委員】 省庁によって資料の整理の視点に若干ばらつきがあるのかなという気がしました。海の汚染の防止では、陸域起源のものがかなりあると思います。例えば国土交通省だと下水が入っています。そういう視点で言うと、環境省には入っていない。例えば水質汚濁防止法みたいな、取り組みというところの関係法令のところに直接海洋に関係するところだけしか載っていない資料だというふうに理解していいのでしょうか。環境省についてもこのほかに陸域に関係して、海にも関係するのがあると理解していいでしょうか。 【川島係長】 本日の資料につきましては、代表例でございますので、ご指摘がありましたとおり、陸を起源といたします点につきましては、このほかにも水濁法でございますとか、そういった関係の法令を省においても担当しております。 【磯部主査】 海域についてもこれは2つの例として施策をお挙げになったということで、海域についてもまだあると考えるんですか。 【川島係長】 はい、そのとおりでございます。 【磯部主査】 今のご質問が出たところで、環境省関連は今のようなお答えだったのですが、今日どのような施策があって、予算とか、あるいは来年度の概算要求でどれくらいあるかというのをそれぞれ一覧表をつくってくださっているのですが、これは理解としては、最後の冊子にある一覧表から今日の資料にあるものを差し引くと保全には関係なのものが残るという理解でよろしいですか。逆の言い方のほうがいいいかな、この分の今日資料に入れていただいたものが保全である、したがって、全体に対する保全の割合というのはこれで割り算すればとという、そういう位置付けになるんですか。 【梅田係長】 そこはちょっと難しいと思いますが、今日各省から保全に関するところを全部、各省の重点的に推進しているものについて挙げていただきましたので、もう少し精査すると、特に環境省なんかはここに1例ずつしかありませんので、もう少し増えるか思います。 【磯部主査】 大さっぱに言うと、何割ということでしょうね。大体それがわかるといいですね。逆に、今日挙げていただいたものも、いわゆる保全だけとは限らなくて、知る、守る、利用するという、利用にも関係します、あるいは知るというほうにも関係しますというオーバーラップがあるのでわからないのですが、おおよそのイメージとしてはここで出てくるということですね。ちょっと難しそうですけどね、割り切るのは。 【梅田係長】 どこの省もそうですが、例えば文部科学省ですと、ここの「知る」に関するところと、保全に関するところはかなりオーバーラップしておりますし、国土交通省も、農水省も、「利用する」ところと保全というのは特にオーバーラップしておりますので、どこで区切るかによって随分数字が変わってくると思います。 【難波委員】 いろいろな形で各省庁の取り組みをご説明いただいたのですが、個別にこうやって聞いていると、例えば湾岸域の保全のためにどんな活動をしているということと、上流側の、例えば環境庁なんかが陸域側でどういう活動をその流れの中でやっているかというのは、すっと聞いているとつながりがよくわかりにくいと思いました。 例えば陸域の関係のものでの環境庁の取り組みのいろんな施策と、国土交通省が海の上でとられている湾岸域の施策というのがどう結びついているのかというのが理解しにいのですが、そういう整理をされたものというのは何かあるのでしょうか。 1例で言ったのですけど、各省庁それぞれある視点をお持ちになって、各省庁の主務業務に関連したいろんな施策をおとりになって、予算化もされている。それとテーマを今日お決めになっているのですけれども、国としてまとめてみたときに、各省庁の取り組みというのが省庁間でどういうつながりをやっておやりになっているのかというのが理解しにいくいと思う。予算規模的には保全に対して各省庁がどんな金をとっておられるというのはわかるんですけれども、具体的な取り組みテーマというのが、例えば環境省のおやりになっていること、国土交通省がおやりになっていること、文部科学省がおやりになっているというところが、1つのテーマに対してマトリクス的に取り組まれているのかどうかが理解しにくい。 【大塚課長】 それはそのとおりでございまして、ここは海の保全というテーマでございますが、それをとりましてもこれだけの省庁が関連しておりますので、それを1つにこういうふうにわかりやすくとりまとめたというものはなかなかございません。ここは保全ですけど、海洋開発分科会が海という全体をとりまとめているわけでございます。10年間の計画というのを今作成中でございますが、非常に広いものですから、あえて言うと、11年前に出た海洋開発審議会の答申が、そういう海という切り口を全体をとりまとめたものでございます。その中の保全のセクションがございまして、それが保全ということで1つまとめております。ごらんになっていただくと、各省の施策を束ねただけというところがございまして、そういう意味で、わかりやすくまとめた点はなかなかないというのが現実でございます。 【伊藤委員】 やっぱりその辺を少しわかりやすくまとめてみるという、全体でなくてもいいですから、どこかをスタディしてみるというようなことがないと、海洋保全に関する実際の施策というのは、これだと無機的で理解しにくい感じがします。 例えば国土交通省さレポートに大都市の整備計画というのがあって、東京湾の首都圏基本計画というのが出ていますが、これが実際はどういう位置付けなのか。それから、実際は地方公共団体でやると言っていますが、その辺がほんとうに東京湾での実情がどうなのかというのは、その辺を勉強するといろいろ見えてくるんじゃないかなという気がします。 同じ国土交通省の資料の中にも、後ろのほうでは旧運輸省の部局でしょうけれども、東京湾蘇生プロジェクトというのがある。それから自治体がある。それから国のレベルのいろいろな施策があって、それから各省庁でいろいろおやりになって、有機的にどんなふうになっているのか、そこでどんな全体像があるのかというのを何かまとめて議論すると、逆にわかりやすいのではないか。これを縦割りで見ていくと、今の難波委員のお話のように、ややわかりにくくて、これ以上議論が進みにくいかなという感じがするのですが、磯部主査、そういうことはこの委員会としてお願いできるのでしょうか。 【磯部主査】 当然できると思います。それは海洋開発分科会との関係もありますので、この委員会での意見として持ち上げていくというようなことになろうかと思います。具体的にもう少し議論をしてみたいのですが、国土交通省の資料の最後のページに、東京湾蘇生プロジェクトというのがあって、そこの中には海上保安庁、他省庁、地方自治体等の関係部局がそれぞれ実施していると書いてあります。これは、特に環境モニタリングの調査結果等を共有化・総合化しということだし、東京湾の汚染物質の挙動をシミュレートし、汚染源を解明するということで、これが今お2人の委員からご指摘のあったことの具体例として出てきているのではないかと思いますので、どうなっているか教えていただけますか。 【岡部海洋室長】 東京湾の蘇生プロジェクトに関しまして、本日、関係部局が実施しているモニタリングの調査結果を共有化・総合化すると、プロセスがどういう形になっているのかということが今のご質問の趣旨だと思います。今担当が、海上保安庁の実施機関ということになっておりまして、今ご説明できる十分な実資料がございませんので、持ち帰りまして、今のご指摘にかなうような附属的な資料を作成したいと思います。 【磯部主査】 全体像が見えないということだったかと思います。一方で、海洋は非常に広いですから、全体像をどうまとめていくかといっても、実際やるということになると、なかなか途方にくれるという面もあるかと思いますので、こんなやり方なら実際に意味があって、しかもできそうだというような、そういうアイデアはないかということも1つあると思います。 それでは、私のほうから、ちょっと関連で教えていただきたいのですが、今回は法律や計画についてご説明いただきました。私は法律のことは全くわかりませんけれども、上位の法律といいますか、海洋基本法のような概念、あるいは法律でなくても計画でもいいのですが、そういう上位の法律、あるいは上位の計画というのはあるのでしょうか。 【大塚課長】 先生がおっしゃるのは、今各省が紹介した法律の上に何かあるかということですか。 【磯部主査】 はい。場所としては、空間としてはいわゆる海洋を対象としているわけです。すべてが海洋を対象としていて、同じ場所を対象としていますから、もちろんそれの見方がいろいろ違うわけで、全く独立という面もあるだろうけれども、それぞれに関係が出てくるという面があって、それをどのように調整したらいいのだろうか、どのように総合的に考えていったらいいのだろうかということを考えるときのよりどころというのはどこかにあるのでしょうか。それは11年前の海洋開発審議会の答申ということになるのでしょうか。 【大塚課長】 そうですね。1例を挙げますと、例えば国土総合開発法というのがありますけれども、そういう国土関係の法律と科学技術関係の科学技術基本法と、海という切り口で何かあるかというと、それは今のところございません。法律は全く独立で、各省の施策レベルに下りたときに、海ということでまとめることしかできません。 その全体像をまとめるということきに、我々がやると、例えば法律なら法律ということでこうやって列挙して、束ねたもの、施策は施策でこうやってこれを束ねたものという感じになってしまうのです。もともと各省の分担というものがかなり分かれているところがございますので、そういうことになるかと思います。 【磯部主査】 私ももちろんそこまでやれればやりたいという気持ちですけれども、今、上位のよりどころと申し上げたのは、具体的に何かこういうふうにまとめるという前にまず何かよりどころのようなものがないと、なかなか全体をまとめるという話になりませんで、そこの1つ前のところからこの委員会として提案する手はあると思います。例えば今日、東京湾というのが出ましたけれども、閉鎖性内湾、有明海というのも今日出てきましたけれども、そういうものに対して1つの省ですべての問題が解決するわけではないので、これを総合的に見てどう解決するか、それを今どうやっていますかというと、実はなかなか整理がしにくいという状況はあるのだろうと思います。しかし、この分科会は、50年先をにらみ、次の10年でどういうことを重点的にやっていくべきかという、そういうことを議論する場ですから、もし整理がなかなか難しいとすれば、整理ができるようにこれから考えましょうという言い方はあると思います。 【來生委員】 私の直観的なイメージですけれども、さまざまな法律とか、さまざまな計画が扱っている対象で、共通の要素で重なっている部分があると思います。その計画対象なり、法律の対象事項で、複数の省庁が共通して取り扱っているものが何かというのが目に見えるような形でわかると非常に便利かなという気がいたします。 ですから、それは逆に言うと、保全に必要なというか、汚濁物質だったら汚濁物質とか、そういうものに着目して、そういうものにさまざまな計画ないしは法制度がどういうふうにかかわっているかという方向から、陸域から海に至るまでの、むしろ現に存在する要素に着目して、そこのところに法制度なり、計画なり、事業なりというのを絡ませて整理をしていただいた資料があると、何か立体的な理解がしやすいのかなという気がします。 【磯部主査】 今のを私なりに解釈をすると、当面取り組むべき課題というのが今日の議題の最後のほうに入っていて、当面取り組むべき課題というのだけじゃなくて、現在取り組んでいる課題というのもあるのかもしれませんけれども、逆にそういう課題を挙げて、その課題に対してそれぞれの省でどんな取り組みをしているかというのをまとめてみたら、横糸がどうつながっているかがわかるのではないか。このように考えていいですか。その中で有機的に、効果的にやるためにはどうしたらいいかという視点も出てくるのではないかと思います。 じゃあ、横糸の話はこんなところにして、ほかにただいまご説明いただいたところで何かご意見、ご質問はございませんでしょうか。何でも結構です。 【小川委員】 先ほどからずっと各省庁の資料説明をいただいておりますと、この海洋保全という1つの目的のためには、海洋、特に沿岸域についてはそれなりに人類共有の財産というような文言も入れまして、望ましい姿で子孫に引き継ぐべき貴重な国土空間として認識するものと思います。国土交通省の関係でも説得力のある文言が羅列されているのですけれども、沿岸域の保全を考える上では、やはり森は海の恋人と言われるように、河川域と沿岸域というのは密接不可分の関係にある。だけど現状では、特に内湾、閉鎖性海域あたりの漁業、沿岸域の漁業を振り返ってみますと、河川域から流入する河川水が、もう10年前、15年前とは全然違う水質になっているわけです。それがしいては沿岸域の漁業の衰退につながっている。現状では、有明海だけでなく、瀬戸紀伊圏の閉鎖性海域の中でも特に一級河川が流入する河川域は昔から非常に沿岸漁業の発達したところだったのだが、今ではこのような地域が一番衰退しています。瀬戸内海環境保全法などとという法もあって、瀬戸内海だとか、有明海は、表面上は以前から比べると、環境面では非常によくなってきたという現状はあります。しかし、河川域を振り返ってみますと、今まで河川の工法というのはほとんどが防災一辺倒で、やはり台風だとか、水害、そういうものの被害から住民を守るという意識で工事を進めてきた一面がありまして、自然環境にはほとんど配慮をしなかったつけが、今、大きな形で日本を代表する大きな河川域では生まれてきている。漁業者サイドから言いますと、ほとんどが河川の途中で、ダムや堰をつくってしまい、昔のようにいい水が海へ流れてこない。河川水の確保、漁業用用水の確保というのが、今後の沿岸域の漁業に一番大きな恩恵をもたらし、ウェートを占めるのではないかと思います。 このため、いろいろな環境問題の中で、もう既にやってきた工法で、これは失敗だった、これはどうしてもくくれるものでなかったというところが、各地方の建設局でわかっておられると思いますので、そういうものを復元するというような考え方も、1つは大きな今後のこれからの沿岸域の漁業の振興とか、沿岸域のそれぞれの発達につながるのではないかという気がいたします。 このことについて、予算処置だとか、各省庁の文言の中ではほとんど触れられておりません。その辺はどのようなお考え方でしょうか。一旦やってしまったものはそのままにしておくのでしょうか。それを壊して回復をするための1つの手立ても、これからの時代における何らかの考え方の候補の1つに入っていくのではないかという気がします。 【磯部主査】 今の件については、議題の(2)(3)で、基本的な考え方、あるいは取り組むべき課題というのが出ますので、それで私たち自身が委員として提言に入れていくということで議論をするのがよろしいかと思います。 それから、現状について、今日は5省庁からご説明いただいたということですので、現状に基づいて何か5省庁のほう、関連省庁のほうからお答えがあればいだきたいと思います。 【岸田海洋開発官】 河川局でございます。先ほど小川先生からご指摘がありました件でございますが、まさに河川と沿岸域のつながりは非常に重要だという認識は私どもも十分持っております。今日の資料で、水質の関連では下水のお話しかしなかったものですから、先生のご意見があったのではないかと思います。一級河川の状況は、水質改善しているのですが、その具体的なデータは今日は持ち合わせていませんので、データ整理しまして、ご説明をしたいと思います。 それからもう1つは、河川のよりどころになる河川法を、先ほど海岸法と同じように、平成9年に法改正しておりまして、その中、防災たけではなくて、環境という文字を入れました。従来から、水の利用はあったのですが、環境という文言が入っていなかったということで、河川法も改正されまして、「環境」を入れまして、その中で、河川の整備方針とか、整備計画を作成しております。その中でいろいろ議論しているのですが、ご指摘の工事についても多自然型川づくりということで、標準的に自然の豊かな形で整備をしていこうということでやっています。また、現状では少し突っ込んだ話になるかもしれませんが、来年度、自然再生ということで積極的に、直線化している可動を少し蛇行するような河川に戻すろいったさまざまな取り組みをやろうとしております。 【磯部主査】 小川委員のご指摘は、私も全くもっともなことだと思っていまして、非常に短い言葉で言えば、海洋の環境を考えるとき、流域に着目をしてやらなければいけないという、大きく言えば、そう受け取ってよろしいでしょうか。その辺のところ、特に私たちの委員会としての提言といいますか、まとめにぜひ入れていきたいと思います。ほかによろしいでしょうか。 |
○議題2 海洋保全に関する基本的考え方について |
●資料1−3、参考1−3に沿って事務局から説明がなされた。 |
【磯部主査】 基本的な考え方のところについては高橋委員のご指摘によっていわんとするところがクリアになるような、そういう文章をご提案いただいたかと思います。大きな柱としては、回復というのはなかなか難しくて、維持を先にしようということがありました。それを含めて、事務局でおつくりいただいた基本的な方向性といいますか、内容としてはそんなに違っているわけではなくて、さらにそれをクリアにした形で修文をしていただきましたので、ほぼ高橋委員が修文をしていただいたものを今日の原案として取り扱っていったらよろしいかと思いますが、まだほかの委員については初めてですので、この中身のもうちょっと大きなところでご意見を伺っていきたいと思います。 まず基本理念ですが、○が4つあり、海洋環境の問題は非常に重要な問題である。海洋というのは非常に脆弱性もあるので、安全性が大事だ。その上で、海洋環境は非常に重要なのだから、維持・回復を図りながら安全性も高め、そしてその上で持続可能な海洋の利用をしていく。さらに海洋の環境問題が地球規模の環境問題としてあるので、そこについて知見を増やす。科学的論拠となるような、「知る」というところに近いんだと思いますが、そこを増やして、それを政策の決定、あるいは合意形成の論拠にしていこうと、こういう構成になっています。いかがでしょうか。 【難波委員】 1つよろしいでしょうか。基本的にお考えになっての原案に対して、高橋先生のご意見も基本的には同じですので、内容として特に意見はないのですけれども、この中で総合的取り組みということを多く出していらっしゃいます。総合的取り組みというのを、ほんとうにどういう体制で取り組むか、海洋保全委員会の委員として、例えば協議体制や行政のあり方も含めて、ほんとうの「総合」というのは何だろうかということを報告書に盛り込むべきであると思います。 それともう1つ、海洋を考えると、地球規模という1つのとらえ方があって、全世界の大循環や熱循環というとらえ方と、もう1つは、利用という場から、湾岸域だとか、水産とか、そういった意味でのとらえ方と2通りございます。どうしても身近な話になると、湾岸域の話になってしまい、漁業をどうするのか、防災をどうするのかということなるのですが、海洋の保全ということを考えるときに、切り口を2つに考えて、日本の国民としての海洋保全というものをどう考えるかということと、地球というものの規模での海洋保全の考え方に対する取り組みをどうするかと、2つに分けないと、両方でいくと、高邁なものと身近なものとが一緒になってしまい、話もまとまらないのではないかという気がします。 それから、将来の研究開発として、本来環境保全を考えますと、海の保全はちょっとやそっとでできるものではありません。今までのものは自然の浄化作用を待つという要素が非常に大きかった。したがって現状維持というのは、確かに高橋先生のおっしゃる意味はよくわかるのですけれども、地球規模というのは次のシミュレーションがあるのでしょうが、東京湾とか、瀬戸内海だとか考えたときに、陸域から流れる1つの物質というものが海洋でどうなるか、1つのモデルがあって、それでは陸域をどうするか、地下水をどうするか、海洋のモニタリングをどうするかということにつながっており、法令とか、基準とか、守るべきもののバランスがとれていることが本来だと思います。すぐにはできないと思いますが、そういう体制にまず基本的に持っていくこと、そういう研究開発をどうするかということ、当面それを維持するためにできる手として何をやるかということがある。1つは長い目、1つは短い目、それぞれの地球規模とか、我々が利用すると見ているところの海域というものに対してのそれぞれの考え方を分けていかないといけないと思います。 【磯部主査】 今難波委員から出されのが、いわゆる地球規模の環境問題に出てくるような海洋と、それから、いわゆる沿岸域というのは、少し分けたほうが整理がしやすいのではないかということかと思います。もちろんつながることはあるのですか、やはり具体的な問題を取り上げて考えると、東京湾の問題、瀬戸内海、三大湾プラス瀬戸内海、そして有明海あたりというのは、いわゆる地球規模の環境問題、例えば地球温暖化と海面上昇といわれているような問題とはちょっと分けて整理をしたほうがいいだろうという、そういうご意見だったかと思います。いかがでしょうか。 【小川委員】 海洋開発、海洋利用するという1つの問題と、海洋保全、これは水と油のようなものです。全然別のものではないにしても、自ずと開発利用という観点と保全ということになりますと、難波委員のお話のように、グローバルに地球規模の視点でとらえてその中でまとめていくというのは、至難の業だと思います。このように2極に分けて考えたほうが、明解な1つのコンセプト、理念が生まれるのではないかと思います。このような2分した考え方というのは、今までにありましたか。 【大塚課長】 利用と保全というのは前回の答申でも扱いをなかなか苦慮しているところでございまして、併記したような形になっております。 【磯部主査】 前回の答申で理解しているのは、「知る」「守る」「利用する」ということですけれども、前回事務局からもご説明がありましたけれども、まず守るということがあった上で、その守る部分を悪くしない範囲内で、ここでは「持続的な利用」という言葉を使ってありますが、「持続的」ということは「守る」ということをちゃんとした上でという理解でよろしいでしょうか。その上で利用をするということだと思います。守るということをきちっとやった上で持続的な利用をするためには、海を知らなければいけない。それは知るということであると。そういう整理に全体としてはなっていると思います。 海洋保全委員会としては、その位置付けの中で「守る」という部分をどのように考えていくかという、そういう視点で議論をしていただいたらよろしいかと思います。 【伊藤委員】 2段階といいますか、地球規模の海洋環境と、とりあえず日本の我々の身近な沿岸域の環境というのは、別に分けるというか、これは連続的なものですけれども、とりあえずの政策のかけやすさとか、実行の可能性からいうと、2ステップで物事を考えたほうが、みんなも理解がしやすいのかなという難波さんのご意見には大変賛成します。 いずれにしても、まず陸域の活動を変えていかなくてはいけない。それで沿岸域が変わっていく。それから今度外洋ということになると思います。このように、1つの連続性はある中で、物事を整理していくと、非常にわかりやすいと思います。当面の課題と将来の課題を見たときに、やっぱり当面の課題はまず陸でどう生活するか、それから、沿岸域をどうするかということだと思いますので、そういう時系列的な考え方、エリアとしての考え方、そういうふうに分けて考えるとわかりやすいのではないかと感じます。 【來生委員】 利用と保全の関係について、過去の議論がどうだったかというのを十分認識しないまま直観的な議論をするのですけれども、これから10年ぐらいを見通してということを考えると、景気がますます悪くなり、国の財政も厳しくなる。そういう中で保全は受身ですから、社会全体の投資が十分に行かなくなる可能性がある。このように考えると、むしろ国として意識して積極的な投資を確保しないと、ある日気がついたら元も子もなくなってしまう。そういう危険な領域だと思います。保全に対して、民間の投資はある程度利用の部分で出されていくでしょうけれども、そういうものが少ない領域に国が積極的に、意識的に投資をするということの重要性は強調しなければならないと思います。 【磯部主査】 今いただいたご意見で、資料1−3の基本理念を考え直してみると、○の最初の「20世紀における」というところは、海洋環境問題は非常に重要であるということを言った段落ですので、今來生先生からご意見が出た、社会投資が少なくなる可能性もあるので、積極的に確保すべきであるというところにつながります。ここは基本理念ですから、投資という言葉にするのかどうかはまた考えるにしても、この文章に続けてさらに念を押すかのように、海洋環境というのは海洋のみではなくて、地球全体からも非常に重要なことで、取り組んでいかなければいけないという、そういう言い方を念押しで入れたらいいかもしれません。 その上で、○の2つ目というのが、3委員から出ましたけれども、沿岸域と地球規模の海洋という視点は、ある程度整理をしたらどうかということがあって、その中の○の2つ目は沿岸域に非常に密接にかかわるような人間活動があって災害があるという関係もありますので、ここには沿岸という言葉をどこかに入れて、少し沿岸という視点を出したらどうかということがあろうかと思います。 3番目は私もまだ整理ができていませんので、4番目に移って海洋環境問題と書いてありますので、地球規模の海洋という視点をさらに明確化しながら出していく。そして、おそらく3番目の○のところで、そうはいっても沿岸域と深いところの環境というか、地球規模の環境は分離しているわけではなく、つながっているという視点が出てくるような書き方にすると、今委員から出たご意見が整理できるのではないかと思います。 そうなると、○の2つ目は防護とか、防災ということについて述べているので、沿岸域の環境についても○の3つ目あたりでおそらく述べなくてはいけないと思います。生態系を含む健全な海洋環境機能と書いてありますが、海洋といっても沿岸域的な海洋と、地球規模の海洋というような、そういう2つの視点がありますというようなことを出してみたらどうだろうかと思います。 2の箇条書きで1)から5)に書いてあることと、それに連動させて、3ページ目ですが、1)というのが3ページ目の4に対応して、2)と3)をまとめて5に対応していて、4)が6に対応して、そして5)が一応7に対応して、7というのはそれ以外のことももう少しまとめとして含まれている、そういう格好になっているかと思います。この辺のことについて、ご意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。 大体基本的な整理としては、1)から5)のような整理でよろしいでしょうか。 それでは、またご意見をいただく機会もあろうかと思いますので、ここまでにしたいと思います。高橋先生のコメントについては、私の意見としては、高橋先生に直していただいたような文章のほうがわかりやすいと思いますので、そちらのほうを基本にして、今日出していただいた意見も盛り込んで再度修正をするというようなことでいかがでしょうか。 【來生委員】 1ついいですか。2)のところに入っていると理解すべきなのかもしれないのですが、私、先ほども出ていた総合的な取り組みということの意味が何かということとの関係で、一方で社会的な投資をしっかり確保するということも大事だけれども、無駄をなくするということもすごく大事で、海洋省をつくるかどうかというのは別にして、行政的なシステムのいろいろな調整をもっと効率的にするなり何なりというようなイメージも入ってもいいのではないか。 【磯部主査】 高橋先生のコメントのどこかに、7.1では「海洋省の創設も視野に入れるくらいの」というコメントがありました。これについては、高橋先生のコメントの主に5ページのところについてはまた今後中身を入れる段階で議論をしたらよろしいかと思います。今、ご意見としてそういうご意見があったということにさせていただきます。 【大塚課長】 1点だけ補足させていただきます。今、主査、それから來生先生からお話がございました全体的な行政のメカニズムについてどういう提言をするかという点でございますが、海洋研究・基盤整備委員会、海洋利用委員会からもご要望がございます。また、海洋利用開発分科会でも何回かそういう議論がございました。したがいまして、それにつきましては、運営委員会というのが各委員会の主査と数名の委員で構成されてございますが、この運営委員会で議論をさせていただきたいと考えてございます。そこの議論の結果はまた各委員会にフィードバックいたします。 【磯部主査】 私は主査なので、運営委員会のメンバーですから、ここの委員会の意見でもありましたということで忘れずに申し上げるということにしたいと思います。 |
○議題3 |
●資料1−4に沿って事務局から説明がなされた。 |
【來生委員】 私が先ほど申し上げたこととの関係で、一番下の当面取り組むべき問題の例というのがあります。例えば2番目で言うと、赤潮とか、貧酸素水塊の発生というような問題があるとして、いろいろな原因がある程度科学的にはわかるのでしょうから、そういうものの規制なり、コントロールに係わる法制度なり、計画なり、事業なりというのが、上流から海に至るまでどこでどのようにかかわってくるのかというのを、それぞれの担当の省庁の情報がわかるように整理したものがあると、いろいろ考える上で便利だという、そういうイメージで申し上げたということです。 【磯部主査】 ここで総合化という問題をおそらく前の段階で議論しているととても難しくてわかりにくい面もあると思います。それでは、赤潮貧酸素水塊の発生というのは総合化という面から見てどういう取り組みをしているのか。その整理については、現状がまずどうかというのをまとめてみた上で、ほんとうに総合化をするためには何をこれからやっていかなければいけないかという整理の仕方があると思います。 先ほど私も申し上げた課題を置いて、それぞれ制度とか、施策とか、どうなっていますかというのを整理したらどうかというのは、このそれぞれについて整理をしてみたらどうかと、そういうイメージです。 総合化という話が出ましたので、これは書くことは必要であるが、とりまとめを行った委員の立場として、どれだけ具体的なところに責任を持って説明ができるかという意味で大切なところだと思いますので、これについてもご意見をいただきたいと思います。 1の海洋環境問題とはということで、海洋環境問題の定義が書いてあります。この辺についてはいかがでしょうか。ここでの書き方というのは、いわゆる生態系とか、水質とかという、狭い意味での環境問題と、それから、海岸侵食とか、海面水位の上昇、沿岸域の冠水というような、少し災害とか、防災とかという言葉に近い意味の環境問題を含めて、環境問題というのは非常に広い意味を持っているということで定義されているかと思います。 それによって、先ほど議論していただいた基本的な考え方と整合をつけてやるということかと思います。 【小川委員】 私は、この環境問題の総体として定義するということで、上記の「環境問題とは」から「水産資源の枯渇・水質汚染・生態系の変化等も含まれるものであり」というところまで、大体海洋環境問題とはということに対する総体として定義するのはこの文言でいいんじゃないかという気がします。 【伊藤委員】 先ほど議論があったように、問題を沿岸域から地球規模にという議論がありましたので、例えば地球温暖化問題は、地球のシステムとしては最後に置くなど目で見てわかるようなこの問題の並べ方をされると、さきほどの議論にあっているのではないかと思います。 【磯部主査】 順番について少し工夫をして、ここで議論した沿岸域と地球規模の海洋というのを並べ替えてみたらどうかというご意見ですね。 【難波委員】 先ほどの話に戻りますけれども、例えば海岸の利用ということになると、都道府県に規制の輪を移されているというのがあるようです。そうすると、こういう施策というものをまとめるときに、国としての施策、実行にあたって都道府県なら都道府県に任せるというものがあるのであれば、読んだほうも受け取りやすい整理の仕方が必要と思います。例えば都道府県が地球規模の保全をしてもなかなかわからないというところもありますから、そういう整理の仕方というのはやっぱりあると思います。 【磯部主査】 後で読んだときに読みやすいようにという工夫ですね。ほかにはいかがでしょうか。 【難波委員】 環境保全というものの取り組みは、全沿岸も、地球全体も取り組むということを書かれているんだと思います。それについてはそれでいいと思います。 【磯部主査】 その上で当面取り組むべき問題ということで、今後重点的に取り組むべき問題を抽出する必要があるということで、以下の視点、環境問題としての深刻さ、社会的関心、対策手法の研究開発動向、技術的可能性、費用対効果等を考えた上で、例として以下に挙げたようなものということですが、これ以外にもおそらくあると思います。今日はいろんなものを挙げて、その中でまたスクリーニングがあるかもしれませんけれども、当面はこんなものもあるというのを挙げたらよろしいかと思います。何かご意見はいかがでしょうか。 【難波委員】 例えば当面取り組む課題というところで、環境問題としての深刻さとか、社会的関心というのは、1つ取り組む課題のバックグラウンドだと思います。 それで、対策手法の研究開発というのは、技術的にどういう取り扱いをしていきましょうという、研究開発投資のようなお話だと思います。技術可能性とか、費用対効果ということになるので、上の2つと下の3つはちょっと異質なものが並んでいると思います。 それと同時に、取り組んでいく課題として、例えば民間の設備投資というものの考え方でいきますと、何かの縦糸のつながりというのを気にします。例えば上流の工程を考えると、下流の工程はどう変えなければいけない。その次の製品としてはどうあるべきか、それをどういう手順でやっていくかというのを、我々の民間レベルだと、最初に決めて、分業を始める。同じように、国としての研究開発投資ということであれば、陸域から湾岸域、地球規模という、こういう流れを言うとすると、本来は先ほどの民間の投資みたいな考え方とすると、あるモデルがあり、モデルをどのようにつなげるかという努力をまずしなければならない。例えば人間の出しているものがどのような影響を与えるかということをもう少しロジカルにつかむ努力を長い目でするということが1つあって、当面何をしようということがあります。守るということになると、モデルという言葉は悪いのですけれども、何か1つの相関を持たす努力をしようではないか。1つ1つの取り組みというものも、相関をつなげる、そういう研究開発をベースとしてやりましょうということが必要ではないでしょうか。 【磯部主査】 私もおっしゃるとおりと思っていますし、そういう意味で、先ほどから出ている例としては、水環境のことを考えるのも、陸域から流域単位で考えなくてはいけない。その中で流域単位でどのような物質循環があって、どのような生態系モデルがあって、その中で内湾の水質を向上させていくためにはどうすべきかというところへ結びつけていかなければいけない。 現状では、それぞれ具体的に見ると、データが不足していて、モデルもあまりよくわかっていない。東京湾でさえデータがあまりない状態である。まして有明海になると、問題は起こりましたけれども、いざ問題が起こって、問題を解決するために現状どうなっているのかというと、体系的に理解されるような格好ではとれていない。それがわからないと、結局やれることからやるというところから1歩踏み込んで、将来どういう姿になるのかというビジョンを示しながら、やれることを着実に進めていくというところに結びつかないわけです。「知る」「守る」のあたりを有機的にしていほしいということだと思います。 まさに東京湾データセンターみたいなのがあって、そこにデータが集約されて、東京湾のことがわかり、それに基づいて、東京湾に対する流入負荷はどう押さえるのか。その視点の中で河川管理はどうするのか。下水処理はどうするのか。さらに沿岸の中で環境を回復するのは難しいというご意見ももちろん当然なのですが、その中でも、逆に難しいということは、相当力を入れてやらなきゃいけないということです。それがどのくらい全体の中で効果を持つのかということもちゃんと示していかないと、国民的な理解が得られにくいということがあると思います。そういう意味で、今日出ました1つのキーワードで、総合化ということをぜひ書くというのは決まっていると。決まった上で、その内容は何かということを少し掘り下げないといけない、どういうことで実現されるのか。それの考え方の1つが、海洋全体の総合化というよりはテーマを決めた総合化というあたりから議論したほうが話しはしやすいんだと思います。 【來生委員】 基本の考え方を教えていただきたいのですが、タイトルが当面取り組むべき問題となっていて、文章の中身は今後重点的に取り組むべきとなっている。期間はせいぜい10年ぐらいだから、重なっているということなのかもしれないんですけれども、そこの関係がどうなのか。具体的に言いますと、私も上の2つの「・」と下の3つの「・」はちょっと違うなという感じがするんですけれども、例えば上の2つで、環境問題としての深刻さと社会的関心というのは重なるところを当面取り組むべき問題にするのか、それとも、例えば環境問題としての深刻さ、今はそれほどでもないけれども、将来的に見ると、かなり重要な問題になるといって社会的関心があるということってあり得るような気がするんですね。そういう環境をどう考えるのか。特に私は、下の3つで、対策手法の開発動向とか、技術的可能性とか、費用対効果との関係をどう理解するのかよくわからないところがありまして、研究開発動向が今は盛んに進んでいれば、当然技術的可能性も高くなるだろうし、、そういうものは費用対効果で考えるとよくなると普通は考えられます。そういうところを当面取り組むべきというふうに考えるのか、それとも、違う考え方というのがあるのか。つくったそもそものコンセプトがどういうところにあるのかというのを教えていただきたい。 【磯部主査】 これは委員の中でも議論をしたいと思いますし、特に企業にいらっしゃる委員は、こういうことをいつもお考えだと思うので、ぜひ意見を伺いたいと思います。まずは事務局から、どのように今考えているのか伺った上で、委員で議論をしたいと思います。 【大塚課長】 これは、抽出にあたって考えられることを列挙したものでございまして、そういう意味であまり重みづけはしてございません。ただ、10年間ということで考えますと、今は対策的フィージビリティというのはあまりないものでも、重要なので挙げておくべきだというのがあると思いますので、一応すべてを列挙してございますが、やはり一番考えるべきは、この環境問題としての深刻さというところを主に念頭に置いて考えるべきではないかと考えます。 【難波委員】 ここは、当面取り組むべき問題ということの上の2つと下の3つを見ますと、下の3つはそれぞれの具体的な展開の具体例になっているわけですから、当面取り組むべき問題の例の一部を総称してここに書いておられるということだと思います。当面取り組むべき問題についてというところをどう考えるかですが、問題は、例えば環境がおかしくなっています。今度はそれが人間社会にフィードバックされて人間にどういう悪影響を及ぼしています。1番、2番を例で書くとそういうことになると思います。したがって取り組むべき問題の例がありますということだと思いますから、本来、取り組むべき問題の整理というのは、上の2つを整理するということではないでしょうか。下は具体的な、中長期的な、例えば20年なら20年で何をやりましょう、そのうちの10年はどうしましょうという中のいろんな例がここに書いてあるというとらえ方として、私は見ていました。 【磯部主査】 さらに言うと、社会的関心というよりは、環境問題としての深刻さというほうに当然重点があるのでしょうか。その社会的な関心というのは、客観的なこともありますけれども、やや主観的というか、時流に流されたという、そういう意味も含まれているわけですから、そういうことに影響を受けるということではなくて、必要なことはやるという意味では、最初の環境問題としての深刻さ、これを軸にして、問題の例というのを挙げる。その中で、技術的な可能性があるもの、ないもの、費用対効果の高いもの、低いものがあるかもしれない。その辺は何か書くときに使い分けるということになると思います。 【小川委員】 環境問題としての深刻さ、社会的関心、この2つを見事にとらえているのが、有明海の問題です。地球の温暖化による海洋環境への影響の問題にしても、私は有明海の昨年度のノリの不作の問題には地球温暖化が非常に大きな影響を与えていると思います。閉鎖性海域の中で、地球の温暖化によって、気温が昔から比べますと相当上昇しているのは、だれもが認めるところであります。気温が上昇すると水温が上昇します。特に水深の浅い閉鎖性海域においては、陸上の気温がストレートに海に作用します。九州は台風銀座と言われたように、南の海上で台風が発生したら、九州か四国の室戸岬あたりに上陸する可能性が80%ぐらいの高率でした。ここ2、3年台風がほとんど九州に上陸しません。そういう循環型のサイクルが狂ったというのが一面大きな問題でもあります。この有明海で一番の特産物というのはノリ養殖です、藻類の養殖です。日本のノリ生産量の45%ぐらいを有明海で占めるというぐらいのウェート。ノリの市場のマーケットというのは全国で約1,000億円市場で、その45%を有明海で占めてきた。そういう1つの九州の有明海沿岸における基幹産業なのです。これが昨年壊滅的な被害を受けた。私は、いろいろな複合的な要因が絡まれて、海洋における環境汚染という問題で非常に世の中の関心を集めているのですけれども、その中で一番作用しているのが地球の温暖化による水温の上昇だと思います。 九州あたりは南国ですので、岩手、宮城、愛知、瀬戸内圏のノリ養殖業者から比べると1カ月ぐらい時期が早いのです。2月になると漁期が終わっています。気温が上昇して、水温が高くなりますので。そのような関係があるところに持ってきて、海水温が下がらないのです。それが一番大きく影響をして、高水温の中で台風の来襲がここ2、3年ないというような循環が狂ってしまいました。また、生態系の波が少し違ったというような外的な要因も入って、今まであまり類を見ない植物性プランクトンのユーカンピアというような品種のプランクトンが異常発生をした。だから、今後考えられることは、地球の温暖化にどのように対応をするのか、その辺の科学技術はどこまで通用するのか、その辺が非常に大きな、閉鎖性海域または沿岸域の水産資源に与える影響が顕著になってくる。 今後の海洋の環境問題を考えるときに、この10年間で一番、特に漁業の分野では一番大きな問題になるのではないかと思います。 【磯部主査】 ちょうどご意見をいただいた有明海を含む閉鎖性内湾の水環境の問題は、これは非常に大きな問題の1つであるし、先ほど出た沿岸域と地球規模の海洋を結びつける1つの格好な例であります。これは今地球温暖化というお話も出ましたけれども、それよりはもう少し短いのですが、十数年周期の地球規模の循環の変動というのがあって、これよって東シナ海あたりの水温が今上がっています。水温が上がることによって海水面が上がり、海水面が上がると、潮汐の変動が少し減る。潮汐の変動が少し減ることによって流速も小さくなる。流速が小さくなって、水温も上がっていますから、赤潮が起きやすい、それが終息しにくいとかということがあります。内湾の問題ではあるのですが、もう少し外まで見なきゃいけない。その外というのは、100年オーダーの地球規模の温暖化という問題もあるし、十数年規模というような海洋の大循環も関係しているという問題もあります。委員会としてはそういう理解として、沿岸域というものと地球規模の海洋というものが非常に密接だという例がこういうところに出ています。しかも非常に深刻な問題です。取り組むべき問題の例でしょうということが言えるかと思います。 【來生委員】 資料1−3の2の基本方針というのがありますね。基本方針と、ここで当面取り組むべき海洋環境問題というのの関係、問題の例と具体に出てきていることとの関係をどう考えたらいいのかというのを教えていただきたい。もう少し言いますと、当面取り組むべき問題の例で、例えば2の基本方針の4)で、自然景観とか、親水空間というようなのが出てきていて、そこのところに関係するものが、例えば環境と調和した海岸防災みたいな形では出てきているのですが、ウェートが2のほうの片括弧で出ていて、比較的ここに少なくしか出ていないものがあるような気がするんです。そういうことを考えたときに、そういうものの関係をどう考えたらいいのか。 【磯部主査】 まだおそらくそこまで考えた上での案ではなくて、たたき台の状態だということなので、ぜひ委員の先生方に、補うべくいろいろ挙げていただきたいという理解でよろしいですか。どうでしょうか、まだ取りこぼしている分がたくさんあるのではないかと思います。 【來生委員】 ここでは、保全にとっての、直接環境を損なうような問題に焦点を当てて当面取り組むべきというものを考えるのか、先ほどから出ている、例えば情報をどうやって統合していくかとか、行政のシステムをどうするかというような、そういうことはあえてここに載せないというルールなのか、そこも含めて考えるというルールなのかというので議論の出し方が少し変わってくるような気がします。 【磯部主査】 当面は全部出していただいたほうがいいとおもいます。 【梅田係長】 一時的には、人間の生存に影響するような、とにかくすぐ手を打たなきゃいけないような問題というのを念頭に置いてやっていただいて、具体的な施策については、それを踏まえて展開していくという議論にしていただければよろしいかと思います。 【難波委員】 いずれにしてもいろんなものを保全という考え方を中心に議論したものを、最後は委員会で、これはどちらの省で見るということになるのでしょうか。 【磯部主査】 それはやります。それから、最終的には分科会がありますので、分科会で最終調整をしなければならないと思います。 【難波委員】 当面取り組むべき問題の例がございましたけれども、これは今、例ですから、これから審議してどういうものをするかということを決めていけばいいと思いますが、お願いなのですが、例えば整理の仕方として、人間の生活の中で有害なものを出しているものに対してどんなものがあるか、また、例えばダムをつくって、どういう問題だったかというような、そういう少しジャンル分けしたような、そういう段落で取り組みというのを1回整理し直したほうがいいと思います。例えば人間の有害物質ですと、プラスチックの話がございます。それから工場廃水。それはもし企業活動の規制などがあって、今度はダムという話になると、湾岸の防災と、いろいろなものの中で施策としてとらなければならばいという感じになってくる。そういうジャンル分けをした例示というのがあったほうが議論しやすいのではないでしょうか。議論がどうしても1つ1つに目が行ってしまうものですから、少しジャンル分けしたものでジャンルごとに1回議論するほうが議論しやすいと感じます。 【梅田係長】 事務局といたしましても、まずそういう区分を、例えば人間活動の種類によるものとか、問題の発生する場所によるものとか、いろいろ考えたのですが、うまくまとまりきりませんでした。むしろ今おっしゃっていただいたような、どういうジャンルで分けると今後整理がしやすいよとか、そういうところをご教授いただければいいかと思います。 【磯部主査】 経済産業省からご説明いただいた海洋資源の利用時の環境の問題は、ここに入っていると見ていいのですか。直接的にはそれはまだここには入っていないということですか。 【本城鉱物資源課長】 例えば流水による海洋汚染ということもありますけれども、海洋石油開発で仮に油が流出すれば、こういった中に入ってくると思います。 【磯部主査】 先ほどご紹介いただいたものについては、現にもう取り組まれているわけですね 細かいことですが、「干潟・内湾等の干拓による海洋環境への影響」というのは、「干拓」は「埋め立て・干拓」くらいでしょうか。 【來生委員】 「当面」と「重点的」というのは、少し僕は違うと思っていて、時間の長さが違うのかもしれないのですけれども、1−3の資料には、例えば国際貢献というようなこととか、かなり沖合いの、まさに排他的経済水域とか、公海部分も含むようなことがいろいろ出てくるわけです。当面だとすると、まあ、それは近いところに関心が集中するというのは当たり前だと思うのですけれども、例えば当面ではないかもしれないけれども、国境を越えた汚染みたいな話という問題というのはどのように考えたらいいでしょうか。そういうものをどう整理したらいいのかというのは、私自身もわかっていないのですけれども、全体の枠組みの中で、当面というのはまさに当面で考えるということだとすれば、そういうのを越境汚染がどれぐらい深刻なのかというのはわかっていないので、何も言えないのですが、少し長期でも考えるということで、重点的というのをどう考えたらいいのでしょうか。その整理いかんでは何か入ってくるものもありそうな気がします。 【磯部主査】 これが、「当面取り組むべき」ですから、当面解決すべきということではないので、当面とにかく手をつけなきゃいけないという意味です。ですから、重要であれば、とにかく手をつけなきゃいけないので、それは入れるという意味だと思います。 むしろ深いところの海洋の問題というのが、この中で言うと、最初の「流出による海洋汚染」というのと、最後の「地球温暖化による海洋環境への影響」、それから、「プラスチック系の廃棄物による海洋汚染」というがありますが、これは、あることはあるけれども、かなり沿岸域に関係している問題ですね。ゴミの漂着の問題は非常に大きな問題で、ひとしけ来ると、ゴミが海岸に山のように積み上がるという、そういう問題だと思います。 【難波委員】 問題の例というのは、これは1例として挙げてあって、これをまた事務局のほうで整理し直すというこでしょうか。それとも、例というものでほかにないかということで、今は議論することでしょうか。 【梅田係長】 あくまでも例示でありまして、むしろ何かいろいろな問題があって、その中で特に取り組まなければいけないという重点化です。そこを上に書いてある環境問題としての深刻さとか、そういう視点をもとに検討していただきたいと思います。 【難波委員】 そういうことでありますと、確かに、今主査がおっしゃったように、全体として、○の一番下はちょっと別にして、湾岸もしくは内海を利用することに対する汚染、保全をどうするのかということに重点がありますし、1の保全というものでいくと、例えば経済産業省で出ていたCO2をどうするかも一種の保全ですね。地球の保全をどうするのかという考え方の1つの問題とかがあるわけですけど、ここにあるのは、どれを見ても大体、人間が直接今利用するというところに対する保全をどうするかということが列挙されているわけです。ところが、もう1つ長い目で見たら、地球の保全がここで例としてはちょっと抜けているということだと思います。保全を地球環境で見ましょうと言っているところで考えたときの、先ほど言ったいろいろな切り口の例示をすることによって、一般に施策としてまとめやすいのではないか。省庁にまたがっているようなものでも、少しジャンル分けした考え方でまとめないと、1つ1つやっているとわかりづらいのではないか。 【磯部主査】 1回ブレークダウンをして、そういう項目を出してみたらどうか。総合化という言葉がありましたから、それですべて終わりというわけじゃないと思います。 |
○閉会 |
●次回(第2回)の海洋保全委員会は10月29日(月)に開催する。 |
●当面取り組むべき問題については,各委員から後日,事務局まで連絡することとする。 |