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科学技術・学術審議会

2002/11/07議事録
第2回海洋研究・基盤整備委員会議事録



第2回海洋研究・基盤整備委員会議事録


1.日時  平成13年11月7日(水)9:00〜12:00
 
2.場所  経済産業省別館825号会議室
 
3.出席者
(委員会)小池主査、奥脇、兼原、木下、平澤、松田各委員
(専門家)
平野海洋科学技術センター理事長
佐藤水路部海洋情報課上席海洋情報官
(事務局)
文部科学省:大塚海洋地球課長、渡邊課長補佐
外務省:大久保首席事務官
経済産業省:本城鉱物資源課長、宮崎海洋資源環境研究部門長
国土交通省:日当海洋室専門官、大沼海岸室課長補佐
4.議題
1海洋国家日本の国家戦略としての海洋研究・基盤技術の確立について
2国際海洋データ・情報交換と日本海洋データセンターにおけるデータ管理
3産業技術総合研究所における海洋開発関連事業概要
3我が国の海洋研究・基盤整備のあり方について
3その他
 
  ○議題1
●平野海洋科学技術センター理事長から海洋国家日本の国家戦略としての海洋研究・基盤技術の確立について説明がなされた。
  【松田委員】  何か展示されている場所はあるのでしょうか。最近よく科学未来館や生命科学でもいろいろ展示館をつくっています。
【平野理事長】  海の展示館はまとまったものが非常に少ないです。私どもの横須賀の追浜にありますキャンパスにも今そのようなものをつくろうとしております。それから現在、横浜に1つキャンパスをつくっておりまして、そこは地球シミュレーターのセンターと、それからフロンティア研究システムといいまして、地球変動を予測する研究拠点になっております。そこに今年度中に、地球情報館と称して、地球や海洋のデータをビジュアルに見るようなものを準備しております。実際マスコミでは海は頻繁に扱われるのですが、大体きれいなサンゴ礁で魚が泳いでいるというイメージで、実際はほんの表層だけの話で、深い海で何をやっているか、何がいるかということがなかなかわかっていただけません。
【松田委員】  今後10年のタイムチャート、いつぐらいに何ができて、最後になるとこんな技術が完成するというものも含めて、みんなに知らしめる。例えばテレビに毛利さんが出てよくやっています。あのようなことをやると相当理解も深まるのではないでしょうか。予算面でもです。よくロケットは1つ落ちて失敗すると、二百何十億円損したという批判が出ますが、それでもやはりやらなければいけないということ知らしめることが大事だと思います。
【平野理事長】  こういうことを言うと差し障りがあるかもしれませんが、海は宇宙に比べますと、比べものにならないぐらい少ないお金で世界の第一線になり得る可能性があります。例えば「しんかい6500」は世界で一番深く潜れますが、これは10年ぐらい前に動き出したのですが、1つが大体125億円です。母船を入れましても、母船が大体80億円ぐらいですから、大体200億円かその辺でできる。それで、いまだ10年たってもちゃんと使っておりますから、おそらく20年ぐらいは使えると思います。ロケットは、H2Aは80億円と言っていますが、打ち上げて30分でなくなってしまいます。衛星が2、300億円しましても、観測衛星ですとADEOSでも計画寿命は3年ですから、それで数百億円かります。
   そういう意味で、宇宙は宇宙で大変お金がかかりますが、海洋は文部科学省で取りまとめているものを見ると、1年間で大体700億円から800億円です。私どもは大体三百数十億円であります。そのうち船舶の運航費が、5隻ありますから、100億円ぐらいかかりますが、ある意味では安い。冒頭に申し上げましたように、そういう意味でビッグサイエンスかどうか、お金を使うばかりがビッグサイエンスではないのですが。先ほど申し上げましたように、私の勝手な夢ですけれども、陸上での拠点はいろいろな実験設備を含めてもせいぜい数百億円で全部そろうと思います。宇宙ですと、例えばスペースチャンバーという、衛星を入れるようなものでも、それだけでそれぐらいかかる。風洞でも、日本は低速からマッハ5まで航空宇宙技術研究所は持っています。9つぐらいありますが、それくらい大きいものですと、今つくりますと1,000億円近くかかると思います。それに比べますと、海はかわいらしいものだといえばかわいらしいものです。それでもいろいろなことができるのです。
【小池主査】  先ほどのお話で、いろいろな技術を開発して、例えばモニタリング的なことを今後続けていくときに、開発して、それを実際にモニタリングに移すとき、モニタリングも全部やられるのか。モニタリングは10年、20年ですね。その先はどのようにお考えですか。
【平野理事長】  先ほどのネット化は10年、20年、もっとやらなければならないかもしれません。地震の場合をお考えいただくといいのですけれども、地震のモニタリングは気象庁が全国で実施しており、淡路の大震災が起きた7年前の後に防災科学技術センターがすぐその年度に補正予算をいただいて、全国に1,000カ所強震計を入れました。それは強震ネットワーク(K−NET)という形で全部公開しています。それから、全国500カ所に微小地震計を入れています。従来、防災科学技術センターは愛知県から東、関東地域が中心でしたが、全国ネットにしなければならないということで、陸上はそのようなネットを開発しながら維持しており、そのほとんどは気象庁にもつながっております。私どもが持っています海底ケーブルが現在3本あるのですが、そのうちの2本は地震計、津波計が入っており、気象庁に直結するようになっています。
   ですから、それは1つの機関がやる必要は別にありません。先ほどのものも、別に全部私どもがやると言っているわけではなく、みんなが協力して分担してやればいいのです。しかし、これはまさにネット化されておりまして、どこかにセンターがあれば、情報は全世界に全部流れるわけです。現在、私どもは横浜研究所にデータを流し、それから加工する部分は沖縄でするという基地をつくっています。いずれにしろ使いやすい形で流すということは、これからIT化時代ですから、わりと楽になると思います。
   むしろ日本近海でやるときに一番問題は漁業者との調整です。私どもは、1号機は120、30キロ室戸岬から南海トラフに流しました。これはあまり問題なかったのですが、2号機を三陸沖に展開しようと思ったら、隣の県の魚連となかなか調整がとれないので、急遽北海道の釧路の沖に二百数十キロのケーブルを引きました。ケーブルを入れるときに沿岸から出すわけですから、底引きの網が引っかかるなど、実際はないと思いますが、いろいろなことを言われます。
   民間のケーブルの場合は補償と称していろいろ払っているのですが、私どもはそれができないのです。補償はできないので、理解をいただく努力をする以外に方法がない。したがって、予算があってもそれができないという可能性があります。
   その辺をどうするかは水産庁に助けていただく必要があります。そういう悩みが海で仕事をするときに、特に沿海域は多いのです。ですから、ネットワーク化はなかなか大変です。底のほうに行ってしまうといいのですが、大陸棚を通るときは必ずその問題が出てきます。
   
  ○議題2
  ●佐藤上席海洋情報官から国際海洋データ・情報交換と日本海洋データセンターにおけるデータ管理について説明がなされた。
  【松田委員】  J−DOSSのようなものは、全部各国が持つのですか。
【佐藤上席海洋情報官】  先ほど見せましたIODEでは、各国につきましては、それぞれの国で責任を持つということになっております。一方、世界データセンターは世界中で対応するのですが、インターネットの世界がまだ普及する前は郵送でデータを送っておりましたので、それぞれ各国が責任を持つという体制が守られていたのですが、インターネットになりますと世界中が相手になりますので、IODEの世界も時代とともに崩れてきているということになると思います。
【松田委員】  そうすると、各国が持つということは、地域的に割り振るような感じになりますが、そのようなやり方がいいのか、あるいは、データの属性ごとに各国が分担して、ナレッジのウエアハウスを持つようにするのがいいか。そのような相談はないでしょうか。
【佐藤上席海洋情報官】  一部そのようなことも始められています。例えばアメリカが中心になるのですけれども、プロジェクトを始めるときに、各国のデータセンターだけでは能力が足りないので、いろいろな研究機関にお手伝いをしていただいて、それぞれの項目ごとのデータを管理するという形で実施しているプロジェクトもございます。それを有機的につないで、データの管理とデータの提供をしていこうという話もございます。
【松田委員】  体系化しようという動きはあるわけですね。
【佐藤上席海洋情報官】  はい。まだがっちりした体系化をしようということにはなってないのですが、動きとしてはございます。
【松田委員】  1997年の初めにナホトカ号の事件がありました、そのときに拡散シミュレーション、海の表面の油の汚れがどのように広がっていくか、それを日本が即時にやり、それは世界初めてというような報告がありました。たしか日本財団が援助して、研究者が集まって発表会をしていたと思います。拡散シミュレーションはなかなか大変だと思います。ハード的にもソフト的にも。それを日本が最初にやってすごく役に立つのでしたら、そういうシミュレーションを日本は担当するというような分担の仕方もあると思います。
【佐藤上席海洋情報官】  シミュレーションになりますと、我々データセンターの範疇を超えておりますので、日本の海洋研究全体の問題になるかと思います。
【兼原委員】  データの収集はもちろんですが、収集する目的とか、あるいはデータの利用について、政策、戦略あるいは対策、いろいろな言葉が当てはめられるかと思いますが、どのようなつながりで捉えるかという観点から教えていただきたい。
   まず伺っていて、海上保安庁水路部の所掌の中でデータセンターが存在している。きょうご教示いただいたことの中心は、知的好奇心という学者が個人の営み、あるいは集団の営みとしてデータを作成するということがあり、それを国の1つの機関として総合的にまとめて、また紛失を防ぐ、あるいは漸進的に改正していくことを体系立って実施しており、非常に大切な目的のもとに活動しておられる。
   例えば私が水路部へ伺って教えていただいた具体例を挙げますと、1996年に国連海洋法条約を批准するに先立って、日本の領海の幅や排他的経済水域の幅をはかるための基線を見直すことになった。逆に言えば、直線基線という本来の海岸線を反映しない線を引いて、日本の領海、排他的経済水域をどこまで拡大していけるかという非常に重要な、ある意味で日本の領域を広げる試みになるような重要な国家の政策のために、地形やその他の水深等のデータを非常に詳しく見せていただいて、そうしたご専門の方と法学者、地理学者、いろいろな方々との共同作業で日本の基線をどのように設定していくかということに携わらせていただいたこともございます。
   きょうのご説明であったように、確かに個人の学者の営みよりも体系立って、かつ保存していく、改善していくという目的、あるいは利用という任務も非常に大きく負っておられると思いますが、他方、国の政策あるいは対策、ナホトカ号のような災害が起きた、あるいは起きるであろうことに対する対策とつながったデータ収集、あるいはデータ利用の具体例とかご方針、なぜ海上保安庁の水路部にデータセンターが帰属しているのかということについてご教示いただきたい思います。
【佐藤上席海洋情報官】  まず、なぜ海上保安庁水路部に存在しているかといいますと、当時は海洋調査機関といいますと、海上保安庁なり気象庁なりという形でした。海洋科学技術センターもまだ発足しておりませんでした。そういったところで、先ほど申しました海洋科学技術審議会で答申を受けて、旧運輸省にデータセンターを設置する。一方で、水産関係のデータの管理につきましては水産庁でやるということになりまして、それをもとに海上保安庁に設置されました。
   そういった経緯もございますので、海上保安庁でIOCの精神に基づいて広く利用していただけるような環境づくりをするということで、今まで日本海洋データセンターとしてはデータの収集と提供を行っております。
   一方で、先ほど日本の領土の話もございました。海上保安庁水路部では今の国連海洋法条約に基づきまして、大陸棚の範囲を確定するための調査を行っております。それは平成18年を目途として調書を作成するということになっています。当面の間、調書作成するまでは非公開にしておくべきようなデータにつきましては、日本海洋データセンターとしては取り扱わないようにしております。
   ですから、我々が取り扱うデータは、広く公開してもいいデータということになります。各国も基本的にはそうです。アメリカにつきましては、どんなデータでも基本的には公開するということになってはおりますが、一方で水産資源にかかわるデータにつきましては公開しないとはっきり言っております。それぞれ各国とも基本の精神といたしましては、広く世界中の方々に自分たちのとった海洋データを使っていただいて、地球のいろいろな現象の解明を行っていただく。そのためにデータを提供するんですが、国益にかかわる部分につきましては各国とも非公開にしております。
【奥脇委員】  その点に関係するのですが、この委員会でも海洋調査データの交換、公開は非常に重要だということをベースにいろいろ議論してきているわけですが、公開が進めば、先ほどあったような日本の科学調査が国際社会に対してどれだけ貢献しているかということも示せるし、そういう意味での日本の地位を確保していくためには非常に重要だろうと思います。
   そういう中で、今おっしゃったように、国益とか、従来いろいろな立場からデータが必ずしも全部公開できないという障害がありました。その社会的障害にどのようものがあったかを少し調査して取り除かないと、幾らデータ公開、あるいは共有、交換といってもこれはなかなかうまく進まないと思います。当初、データを収集した人が研究目的を一応終了するまでは非公開としても、その後は公開する。このような科学的なデータの公開についての考え方は、多分アメリカも非常に広く共有していることだと思います。ところが、アメリカは軍事機密とか漁業というものについてのデータは出さない。その国の国家戦略によって出てくるデータが違うということです。
   そうすると、先ほど拝見した塩分濃度に関するデータの密度の図も、実はアメリカはそれ以上のデータを持っているかもしれません。比較可能なのかどうかという問題があるだろうと思います。先ほど海洋科学技術センターの平野理事長の説明の中でも、例えば北極海のデータは、アメリカはもっと持っているというお話でした。そのようなデータの公開を妨げてきた要因は何であったかが、具体的にはよくわからない。しかもデータを交換することについては、生データの交換とおっしゃるけれども、それを加工する技術を同時に公開しないと生データ自身の意味が出てこないのかもしれない。そういう意味で大変なご苦労はあると思いますが、そういう社会的要因をどう突破していくか。水路部はもともとは国の安全保障にかかわる仕事をされていると思いますけれども、そういう意味では水路部がやりながらそこを突破していくというのは非常におもしろい仕事だろうという感じがします。
   特に宇宙からのリモートセンシングの場合にも、同じような問題が起こっていたと思います。商業化が進めば売れるデータが集められるということかもしれませんが、宇宙は先ほどのお話のように、非常に華やかで、商業化も進んでいるかもしれないけれども、海洋調査はなかなかそういうわけにいかないということになると、どこで突破していったらいいのか、何かお考えがあったら教えていただきたい。
【佐藤上席海洋情報官】  データの密度について、先ほどの塩分のデータや水温のデータは、今はどこもオープンになってきていると思います。例えば旧ソ連の水温のデータも、アメリカが中心になってGODER(GlobalOceanographicDataArchaeologyandRescue)という海洋データ発掘救済プロジェクトというのをやっていますが、プロジェクトの中で旧ソ連軍のデータも大量に出てきておりますし、日本ですと防衛庁の水温もこちらでいただいておりますので、そういった海水の物理的なデータにつきましては、どこの国も非公開とはなってないと思います。大体公開するという形になってきていると思います。
   ただ、それ以外のデータにつきましてはいろいろな難しい問題があると思います。それから、最初に世界データセンターがアメリカとロシアにあると言いましたが、90年代になりまして世界データセンターDを中国に設立されることになりました。中国にも海洋分野の世界データセンターが設置されて、海洋のデータセンターの中で人間の数が多いのは中国のデータセンターですけれども、中国からデータが出てくるということはなかなかありません。
   だから、世界データセンターとしての仕事を全くやってないが、名前だけ世界データセンターとなっているという状況もございます。そういった国もありますが、物理的なデータについては大体今は非公開ではなくなってきていると思います。
【平野理事長】  水路部はもと海軍の伝統がありまして、多分、戦前は軍機そのものだったわけです。それがだんだん公開されてきているということですが、私どもですと海底下の観測を行わなければいけません。例えばインドネシアあたりに行きますと、我々は資源を探しに行くわけではないのですが、そこでエアガンを撃って海底下の構造を調査すると、それは見る人が見れば何があるかというのがわかります。そのようなものを扱うときに、これは排他的経済水域(EEZ)の範囲に入るわけですから、許可を得るわけです。だから、JAMSTECとしては公開が原則ですけれども、その兼ね合いがこれからどんどん出てくると思います。
   インドネシアは海洋大国としてこれからやるというので、例えばスンダ海溝に「しんかい6500」を持ってきて調査してくれないかという話がありますが、そこに資源があって、我々が自由に発表できるかどうかという問題が出てくると思います。特に掘削をすると石油が出るかもしれないし、ガスも出る、ハイドレイトも出てくるといったときに、そういうデータが出ましたということは言えたとしても、経済活動に関係するようなものをどう扱うかというのは大変な問題になってくると思います。
   データの取り扱いは、日本の近郊ですと国内の問題ですみますが、国際的な問題が絡んでくるおそれがあり、幾ら科学掘削だといっても国によっていろいろ立場が違いますから、そういう国の利害に反するようなことをやれば、多分立ち入り禁止ということになるわけです。ですから、冒頭で申し上げましたように、国としてどのように基本的なことをやっていくかこのような場で大いにご議論いただきたいと思います。実態はこれからますます厳しい問題が出てくると思います。
   
  ○議題3
  ●経済産業省から産業技術総合研究所における海洋開発関連事業概要について説明がなされた。
  【小池主査】  産業技術総合研究所は新しくできたので、全体のこと少し質問したいのですが、研究ユニットは、センター研究部門、研究系、研究ラボと分かれていますが、どのようなカテゴリーで分かれているのですか。
【経済産業省】  大きく分けますと、先ほどご紹介したように、研究センターと研究部門という2つの大きな研究組織形態がございます。
   研究センターは、ある特定の目的のために研究資源を集中投資し、期限を限って目的を達するという性格のものです。例えば、次世代半導体研究センターがございます。これにつきましては、私はどれぐらいのスケールかはわかりませんが、現在のデバイススケールを凌駕する数値目標を定めまして、それを7年間で開発するものでございます。
   研究部門につきましてはセンターに対応するような形で、ここでは言ってみますと、それぞれの技術分野、あるいは対象分野を中心に継続的に基盤的な研究を行う。そして、研究のターゲット自身も、ある意味ではボトムアップの発想というものを重要視するという考えに基づいて設計されています。
   したがって、研究センターは少数精鋭で、正規の研究職は大体10名から20名。それに外部の共同研究者等がその数か、その倍の数集まりまして、1つのターゲットに向かって推進していくというものでございます。
   研究部門の正規研究者ですと、50名から100名規模のある研究の分野、あるいはターゲットを総合的に、かつ基盤的なところから研究していくという性格を持っております。
   研究系と研究ラボは取り扱う対象が違い、大雑把に言いますと、研究系は研究部門と組織的にはほぼ同じものでございます。研究ラボは研究センターとほぼ同じでございますが、センターほど大規模ではないと理解していただければと思います。

●議題4に先立って外務省から海洋の科学的調査の実施状況について説明がなされた。
【兼原委員】  数は明瞭に、かつ実施主体というか、事前同意の申請主体は非常に明確にご教示いただきましたが、事前同意は、例えば日本が申請する場合もあるし、それから日本が申請を受けて同意を与える場合があると思いますが、調査目的、調査内容、どういったものを通報しているのかという点と、また日本が同意を与える際にどういう点を確認、あるいは審査して、評価した上で同意をしているのか、そういった実態についていかがでしょうか。
【外務省】  国連海洋法条約に同意を与える場合、もしくは同意を申請する場合に必要な項目を列挙して、海洋調査の概要でございますが、目的から始まり、内容、海域です。あとは調査船の概要で、船の名前とか、船長とか、トン数とか、そういったものも事細かに書いてあります。そのような調査項目、申請項目があり、それをもって申請するということでございます。
   日本の場合は外国からそのような項目をもって申請してきますので、項目が抜けていたりしたら、その手続に瑕疵があるということで押し返して、正しいものを提出させます。手続的にすべて項目が正しければ外務省が窓口となってそれを受け付けますが、それを外務省の窓口課で各省庁に振り分けて、今回このような申請があったけれども、貴省において問題ないですかという具合に聞きます。それで、各省庁からいろいろな答えが来ます。例えば、今回の英国から来る調査については全然問題ないですと回答されます。そういう場合は問題ないと言って返しますけれども、例えば条件をつけてきて、今回の英国の調査海域では我が国のB大学の調査船がケーブルを引っ張って調査しているので、その海域の半径5ノーティカルマイルは調査を控えていただきたいとか、いろいろな条件をつけて英国に返すことによって、同意の許可ということになります。
【兼原委員】  基本的には、そうすると審査はしないということですか。
【外務省】  審査というか、外務省で受け取りまして、もちろん外務省の中でも調査内容を審査して各省庁にも送って、それを各省庁で審査するわけです。
【兼原委員】  審査と申し上げているのはレビューの意味で申し上げました。つまり条項に挙がっているものが入っていれば、基本的にはいいということですか。それ以外、こちらから要求を出すとか、あるいは条項に適合しているものを挙げていても、国の事情によって同意を与えないということもあり得るでしょうし、そうした意味でのレビューをしていて、かつそのレビューというのはどういう手続になっているのでしょうか。
【外務省】  国連海洋法条約に先ほど申し上げたような項目がございまして、それをクリアすれば調査自体許可ということでは当然ございませんで、それをクリアした最低限の手続を満たした上で我が国として審査します。
   ただ、大前提として、国連海洋法条約でもうたわれておりますし、我が国としてもとっている原則ですが、基本的に海洋の調査は、大げさに言えば人類の幸福と後世に寄与するということで、原則自由という建前をとっています。いろいろな諸条件、項目を満たしていれば基本的には問題なく許可します。ただ、その後、実際に調査が行われるまでの間に調査内容に変更があったり調査海域に変更があったりしたら、事前に連絡させるということは確実にやっています。調査が終わった後、中間報告ととりあえずの報告を先方がつくります。それと、最終報告を提出するように求めています。それを受け取っているということです。だから、そのようにして、相手の調査活動をコントロールすることは行っています。
【文部科学省】  実例を挙げるとわかりやすいかもしれませんが、基本的に学術的な海洋調査であればイエス、資源探査とみなされるとノーと言われます。日本は海洋調査と言っているけれども、実態は資源探査だからノーと言った例は最近ないです。海洋科学技術センターの調査の場合でも、インドネシアでは資源調査とみなされ、ノーと言われたことが過去にあったと思います。
   最近の例では、ロシアが昨年、理由はほとんど示さずに直前にノーと言ってきました。それは困るので、実は日ロ科学技術協定のもとに特別の委員会をつくりまして、海洋調査に特化して事前情報を交換して、包括的に情報を事前に出しているものはノーと言うなという方向で議論を進めようと思っております。
【兼原委員】  科学調査であれば原則として国際協力のためであって、排他的経済水域の沿岸国に、これは主権的権利ではなくて、管轄権しかないわけですから、その意味でマイルドな権利しか持っていないので、科学的調査であれば国際協力が優先されるのですが、まさにご指摘にあったとおり、科学調査の名をかりたそれ以外のものが入り込むこととどう仕分けしていくかは、条約ができただけでは全く仕分けの基準も仕分けの方法も確立しないので、その点で日本の実践を教えていただこうという趣旨でした。
【外務省】  補足の説明をさせていただきますと、先ほど私が伝えました、各国に対して基本的に許可を与えるけれども、条件を出すというときに、まさにそのようなことを聞くことがあります。例えば先方が調査にこういう機材を使うと言ってきます。ボーリング機材とか、エアガンとか、そういったいろいろな機材が書いてあったときに、どこかの省庁がそれは少しおかしいと思いまして、これはボーリングで海底を掘るような作業に使うものか、これは資源探査ではないのか、そこを確認してもらいたいという感じで先方に押し返すことはあります。
【奥脇委員】  ここにIAEAの調査が入っていますが、実態はどういう調査で、例えば放射能汚染濃度とかそういう話なのか、もっと別の調査なのか、もしご存じでしたら教えていただきたい。
【外務省】  これは東海大学の望星丸を使って、いわゆる共同研究のような調査でございます。もちろんあくまでも主体はIAEAの海洋研究所が行った調査でございますが、東海大学の船を使ってやっております。目的は海洋環境の放射能の調査、放射性核種の現状分析の把握ということで、具体的には海水、海底の土、海洋生物を採取して放射能の汚染などを調べたというふうに聞いております。
【小池主査】  ちょっとこの資料でお伺いしたいのですが、我が国のほうから外国に116件出していて、だめだと言われた件数は何件ぐらいありますか。
【外務省】  先ほど大塚課長からも言いましたように、国によってはいろいろな条件を付してきて、それが日本側として受け入れられなくてだめだと言ったり、そもそも申請を出したときにその国から調査自体だめだと言われたり、いろいろなケースがございます。
【文部科学省】  感覚としては、海洋科学技術センターが2年に一遍か3年に一遍ぐらいノーと言われる。そんな感じじゃないでしょうか。
【小池主査】  海洋研究所の研究ですとロシア、中国はかなり厳しいです。ほとんど今までうまくいった例がない。アメリカは問題ないです。オーストラリアも問題ない。フランスもまあまあみたいです。ですから、北のほうが一番大変でというか、一体どうやっていいかよくわからない。
【奥脇委員】  それは単独調査の場合ですか。
【小池主査】  海洋研究所の船が向こうに入っていく。それで、もちろんロシアの研究者もこちらとしては招いてして乗せるという形はとりますけれども、それでもなかなかうまくいきません。
【木下委員】  センターの場合も領海に入ってから、突如、研究項目、これとこれはだめだから全体がだめととめられていることがあります。科学者レベルで幾ら覚書(MOU)のようなもの、あるいは実施合意のようなものを持っていても、地方政府であるとか政党とか、それから中央政府、みんな見解が違うのです。
   それで、私の感じでは日本の場合、韓国、北朝鮮、中国、ロシアは、ある程度日本のガードに対する逆ガードです。これは戦争ごっこのようなもので、どっちが先に鉄砲を撃った、おまえだろうというような話が大分あります。こっちがやわらかく出れば向こうもやわらかく出る。例えばアメリカやドイツの観測船はロシアや北朝鮮の沿岸に深く入り込んで、ちゃんと調査ができるのです。それは例えばドイツはロシアに猛烈な投資をしていますから、お金の面でロシア人は、ドイツはいい国だと思っているようで、日本は何にも援助してくれないじゃないかという話で、それは我々の世界にも確実に影を投げています。
   私がやったときには96年のほんの寸前でしたが、地方政府も向こうの研究所も絶対に大丈夫だと言って協力を結んで、しかも日ソ科学協力協定の下でやっているわけです。それで、向こうの科学者もこっちの科学者も呉越同舟で乗っているのですが、EEZを越えようとした途端に、日本の自衛官と水路部が来てとめるのです。ここから先へ行ってはいだめだと。それで、我々はちゃんと情報を流して国の許可も取っている。外務省に聞けばわかると言うと、しばらく向こうで通信をやって調べて、15分か30分するとよくわかった。わかったけれども、我々の任務としておまえをここから先に行かすわけにはいかないということでした。国内法の未整備がよく見える瞬間でした。
【外務省】  ロシアはモスクワと極東の関係がそもそもよくないし、かつ連絡も悪いので、情報の行き違いが多くて困る例がかなりあります。
【木下委員】  例えば国連海洋法条約があるのですが、少なくとも私は素人で100%理解できないのですが、国内法を整備してきちんとする必要があります。要するにあれを読んだだけでは何事も実行できないというような感じになっているのです。例えばロシアと日本の国内法の整合性が全くないと話が通じないようなことになるので、それは国際的に少しずつでも解決していただければと思います。海洋地球課も外務省も含めて外国との対応をなるべく平滑化していただけると、いわゆる海の探査というのは世界の人民のためだという以上、我々はやってあげたいし、やりたいし、それを邪魔するものを少しずつ取り除いていただければというのが希望です。
【小池主査】  私も全くそのように思っております。
   
  ○議題4
  ●事務局から資料2−4−1、資料2−4−2に沿って説明がなされた。
  【小池主査】  2−4−1の基本的な考え方、これがある程度決まればその後の具体的な話のほうに移れることになります。それで、先ほどの最後のコメントでありました2つのものを入れるかどうかということはここで議論するのではなくて、どうされるのでしょうか。
【文部科学省】  体制について、今後、運営委員会のほうででもまとめて議論しようとは考えています。
【小池主査】  それと、あと国防はどうしましょうか。
【文部科学省】  国防は今まであまり盛り込んだものはありません。
【小池主査】  国防については、海洋開発分科会で出ました。というのは、どこの国の海洋政策を見ても、必ず国防というか、特に日本のように島国の場合は、海が周りにあることによって国のセキュリティが保たれているということは必ず言います。アメリカもそれは強調しています。だから、私は入れてもいいと思います。
【文部科学省】  入れ方ですね。例えば今小池先生がおっしゃったように、海に囲まれており、海は日本の国家安全保障上極めて重要な役割を果たしているというのは全く問題ないです。ただ、「海を知る」「守る」「利用する」をやるときに、安全保障を1つの柱として入れていくというと、具体的に国家の安全保障との関連でこういう研究はどうなっているのかと言われたときに、そこで窮してしまいます。
【小池主査】  さりげなく入れ込むのは構わないということですか。
【文部科学省】  ええ。事実関係としては間違いないです、海が極めて重要な役割を果たしていることはそういう言い方で入れられると思います。
【木下委員】  そういうものに役に立つ基礎データ、あるいは基本的な調査結果を提供するということは、多分ここに書かれるべき部分ではないかと思います。
   なぜかというと、これは国防のための具体的な推進方策ではなく、国防については海上保安庁とか、自衛隊とか、警察庁でちゃんと別のものを持っていると思います。我々は自衛官を従えて行くわけでもないし、海上保安庁の船を借りて、鉄砲を持って行くわけでもないし、やはり研究とか基礎整備というある程度こういうマンデトリーは与えられていますから、国防、安全保障についてはここで言及しても効き目が少ないと思います。事務局が苦労するだけで、余計なところへ口出すなと大抵言われるのではないかと思います。
【平澤委員】  防衛庁はそんなに調査はしてないのですか。
【佐藤上席海洋情報官】  防衛庁はされています、かなりの部分。
【平澤委員】  潜水艦の探知みたいなものですか。
【佐藤上席海洋情報官】  はい。潜水艦の探知のために水温の鉛直分布の結果を調べています。例えばXBTという投げ捨て型の水温のセンサーがありますが、それを日本で一番使っているところは防衛庁です。それから、海底地形の調査もされています。
【平澤委員】  そういうのはここの枠の外であるという意味でしょうか。だから、あまり言いたくないということもあるのですか。
【文部科学省】  端的な例を申し上げますと、防衛庁はこの関係省庁の枠組みには入っていません。彼らとはほとんどと言っていいぐらい交流はないです。
【小池主査】  それはどういう歴史的な背景があるのですか。
【文部科学省】  歴史的背景はわかりませんが、いわゆる平和利用ということだったと思います。海洋開発という概念に明示的には書いておりませんが、平和利用のための海洋開発ということがあってスタートしたのだと思います。
【奥脇委員】  それは海洋法条約でも軍事利用の問題は規律されてない問題のほうが多いわけです。だから、軍事利用の部分は機微に触れて、はっきり書けない部分があったのだろうと思います。基本的には平和利用ということでしょうが。
【木下委員】  しかし、軍事利用のグループと、純粋科学と言っていいか、応用科学の組み合わさったこのグループとの間でどこか橋渡しがないと、将来的には国税のむだ遣いという問題が出てくると思います。
   1つは、アメリカのデフェンスフォースが太平洋音波感知装置を持っていますけれども、今は科学者に公開しています。クジラの鳴き声を聞いて、あのクジラが今どこに行っているか調べています。それから我々が撃っているエアガンをアメリカ人はみんな知っていて、大体何月何日の何時ごろどこで何かやっていただろうと言われて、えっと思うことがあるくらいそういうデータは公開されています。
【奥脇委員】  それは1980年代以降ぐらいでしょうか。
【木下委員】  そうです。ところが、日本の防衛庁と文部科学省の間はものすごい断絶があって、何か橋渡しする方法がないのかと希望します。例えば古くてどうでもいいようなデータ、軍ですからちゃんと整理されているはずなので、そういうものを海洋科学者に提供してくれると、海洋科学のために使っている研究船の必要数があるいは減るのかもしれないし、黙っていてもデータを取り込んでくれたら、海洋研究所の先生は黙っていると仕事になるとか、いろいろなメリットがあると思います。30何年前のデータなんか隠しておいてもしようがないだろうと思いますが、我々が幾ら言っても風穴があかないので、政府のトップレベルくらいまでに持っていって、考えていただければ非常にありがたい。
【平澤委員】  これはデータだけではありません。技術も両方使える。音波を使って距離を測定するというのは、科学としても非常に重要です。海底で地殻変動をはかりたいというときにはそれが必要になってきますが、それは当然防衛庁でやっておられると思います。正確にはかろうとしているはずです。どこかの会社が開発しているんだろうと思いますが。
【奥脇委員】  その技術は軍用技術でしょう。
【平澤委員】  ええ。だけど、一方、我々のような地震関係ではそれは非常に重要になってきています。
【小池主査】  平委員から出てきている日本の海洋観測船等の船舶一覧の最後のほうに海上自衛隊の船が4隻、「しらせ」を入れると5隻載っています。ですから、これは基本的に海洋観測をやっている船です。先ほど海上保安庁からの説明で、自衛隊のデータもデータセンターのほうに入ってきているとおっしゃっていました。
【佐藤上席海洋情報官】  水温のデータだけですけれども、防衛庁がやっておられる観測の一部も水温のデータというのは入ってきておりまして、観測後、2、3年たてばこちらに来ておりますので、それはまたデータセンターのほうから皆さんに公開しております。
【木下委員】  私、知識不足で済みませんが、水温だけですか。ほかにもまだありませんか。
【佐藤上席海洋情報官】  防衛庁から今いただいているのは水温のプロファイルのデータです。
【奥脇委員】  砕氷船とか潜水艦とか、そういうのを使ってデータ収集すると、今度は収集されたデータを見ると砕氷船とか潜水艦の機能、能力がわかるという話です。だから、なかなか出さないという話をかつて聞いたことがあります。冷戦崩壊がはっきりしてきて、政治的な環境が変わって初めてアメリカでも秘密にしていたのをそうでなくしたということを聞いたことがあります。
【佐藤上席海洋情報官】  先ほどの話にちょっと補足させていただきますと、防衛庁からいただいているデータにつきましては、どの船で観測したかという情報は欠落しております。
【小池主査】  位置と時間さえあればいいということですか。
【木下委員】  それを全部出すと、行動パターンが全部読まれてだめだ。アメリカも多分同様で、私の知っている限り原子力潜水艦は科学者に渡した間だけは自由に行動させるが、そのほかのものどこで何をやっているか全然教えてもらえないのです。
【小池主査】  この問題は平和利用に限るというと、防衛庁関係は全然入ってこないのですか。
【文部科学省】  入ってきてないです。32年ぐらいやっていますが、今まで一切触れたことはないです。海上自衛隊からデータをもらう前に、もっとすべきことがたくさんあるのではないでしょうか。
【平澤委員】  しかし、相当なお金を投資しているという話も聞きますので。そうしたら、そういう技術ではもったいないなと思います。
【文部科学省】  厳密に言うと、今回の諮問の外だと思います。
【小池主査】  わかりました。
【奥脇委員】  「知る」「利用する」「守る」、これが横に並列されていると問題があるかもしれません。私がきのう書いて、本日配布してもらったものは、少しプライオリティをつけて、海洋研究の推進、この基本的考え方は未知の領域への挑戦、保全、利用の礎となる海洋研究と2層になっているような感じで、それに合わせた前書きをつけたほうがいいのではないかと思いました。最初に、「1つにつながっている」のすぐ次に「国々が対峙し」と、対峙というのが最初に出てくるのはあまり賛成ではないということで、少しつけ加えさせていただきました。
   もう1点だけお話ししておくと、最後のページですが、国際協力との関係なんですが、技術的な問題だけではなく、国際協力を支える枠組みの基盤整備みたいな図式に、社会的な問題になるのでしょうけれども、そういうものも少し入れておいいたらいいのではないか。こういうのが私の提案です。
【平澤委員】  奥脇委員のお書きになったものは非常に頭に入りやすいです。私は理学系で、さらに海洋と関係ないので、「海を知る」「海を守る」「海洋を利用する」を調和させるというのはどうしても頭に入らないのです。「守る」と「利用する」は相対立するから、調和させなきゃいけないと思いますが、「知る」ことと「守る」ことを調和させる意思は全然ないのではないかと思うのです。奥脇先生の提案は、「守る」「利用する」を大前提として「知る」ことがあるという書き方をされていますので、入り方としてはこのほうがずっと頭に入りやすいと思います。
【文部科学省】  海賊の関係はここでももちろん書きますが、海洋利用で大きく取り上げることにいたしました。外務省からもあちらでプレゼンテーションをいただきました。もちろん海賊行為は研究に対する阻害要因でもありますが、利用に対する阻害という意味で、海洋利用委員会で取り上げます。
【奥脇委員】  括弧に入れてあるのは、頭で想定しているのがこういうことだということであって、もう少し一般的に書いたらいいと思います。
【兼原委員】  非常に茫漠たる印象みたいなもので恐縮ですけれども、全体を拝見して、先ほど、国家の安全保障という言葉かどうかは別として、国家というスタンスがどのように入るかというご指摘があったと思います。
   また、拝読して、沿岸海域、つまり自分の国家の国内向けに対してどういうことをやっていくかが1つ当然あり得ます。沿岸海域の問題として具体的に出てくるわけですし、あるいは国民との協力体制ということもあると思います。他方で、そこから先は海だということで突然グローバルになっています。もちろんグローバルも国際も当然必要ですけれども、二国間とか地域ということも当然あり得るわけで、国際協力という言葉の中にそういうこともお含みおきの上で書いておられると思います。
   例えば最近の傾向として、国連海洋法条約が地球大のものであっても、海というものはまず一番近いもので共同資源開発なり共同の漁場を分け合って、あるいは完全にはクローズドではないけれども、この海域をどの程度汚染から守るかということは二国間でやり、その後、地域でやるということが必要なのではないでしょうか。
   突然、国連海洋法条約で地球大になったわけですが、それでも依然として書物において非常に大きな傾向を占めているのはAsianperspectiveonthelawoftheseaとか、それからEuropeanperspective、Africanperspectiveというものです。このようなものを打ち出してきているのは、そういう傾向のあらわれだと思いますので、決して排除されていると読んだわけではないのですが、二国間であり、地域的なもので日本が協力していくのであり、またリーダーシップをとっていくのであり、二国間としての政策も策定していく主体の1つだということも入っていたらいいのではないかと思いました。
【木下委員】  資料2−4−1の4ページの一番上の2行目ですけれども、どうすればいいかという指針になっていない。研究機関や関係省庁が適切に役割を分担しながら総合的に推進する。ここのところはもう少しフィロソフィーがないといけません。これでは何にもしないと言っているのと同じようなことです。せっかく海洋開発分科会から出る文書です。これでは平澤先生、みっともないと思いませんか。
【平澤委員】  これは外へのメッセージという形をとりたいと思います。財務省とのやり取りはあるかもしれないけれども、それは中で上手にやっていただいて、これ自体は外へのメッセージだというふうにとりたいので、格好をつけてほしいなという気がします。
【木下委員】  外へのメッセージであると同時に、これに文言とか、方針とか、方策とかがある程度書かれていると、何事か起こったときにそれを施策に転換する役所の武器にもなるはずです。国民が読んでもおもしろくて、役所としても武器になって、財務省としてもこれはやらなきゃならんなという概要を書いておくほうがいいと思います。ここだけ非常にぼやっとしている。ほかのところははっきりしているのに。
【小池主査】  私もいろいろなところを読んでいて、言いっ放しで、例えばすぐ下の人材育成でも、常に持つような施策が必要であると書いてあるけれども、これは確かにそのとおりだけれども、具体的にどういう施策があるかというと、なかなかこれも難しいです。
【平澤委員】  人材育成だとすると、今、大学を独立行政法人化しようとしています。トップ30とか何とかって言っています。そういう状況ですから海洋科学ということで、せめて10ぐらいとか5つぐらいの大学で学部なり学科があるべきであるとか何とかっていう、そういう提言をしてもいいと思います。どうしてそういう議論がないのかというのが僕は不思議です。
【小池主査】  これはどちらかというと前文にあたるわけです。それで、前文があって、具体的な細かい内訳があって、そこでおしまいになっています。それを受けてまたサマリーして、提言という格好のものが最後につく。
【文部科学省】  ですから、前回、目次を議論したと思いますが、2−4−1の基本的考え方があって、その後に具体的推進方策が来て、それで終わりです。具体的推進方策が提言です。
【小池主査】  もし今のようなことを書き込むとすると、具体的推進方策だが、これはあまりにも細かく分かれ過ぎている。だから、ここで非常に大事なメッセージを2つか3つ出したいというときに、多分これは40とか50とか、もっと出てくるかもしれません、その中に何となく埋没してしまってわからなくなるかもしれません。この中で何が大事なのかというプライオリティづけがどこかでなされないといけない。ですから、それはイントロダクションのところに具体的に細かい中からまたもう一遍拾い上げてこっちに書くのか、それともそこでウエートを置いて書くのか。ウエートもまたつけるかどうかという議論もしなければならないのですが。
【文部科学省】  資料2−4−1は基本的な考え方ですから、ここはあまり具体的なところと言われてもなかなか難しいかもしれませんので、むしろ資料2−4−2で何を盛り込むかということでないかと思います。例えば研究開発体制の整備であれば、ここもあまり具体的なことは書いておりませんが、資料2−4−2の1ページ目の一番下にどういう提言を入れていくかということになると思います。
【小池主査】  そうしますと、2−4−1はある程度こういうものを大切にしなければいけないと書いて、さっき言われたような幾つかの提言があれば、それは2−4−2のほうにそれを書き込むかどうかの議論をしなければいけないということですね。
【木下委員】  資料2−4−2はきょう全体としては新しく出てきたものです。例えば5の研究開発体制の整備の1行目を見ると、本文と書いてある書き方とここに書いてある書き方と非常にマッチしていて、具体的に何をしていいのかよくわからないということが幾つかあるので、実行部隊としてはもう少しクリアにさせていただけるとありがたいと思います。
【文部科学省】  2−4−2の柱立てはこれでよろしいでしょうか。
【小池主査】  これは先ほどのご提案があった、要は「海を知る」が上にあって、それで「海を守る」「利用する」ための大前提である。だから、基本的にはここは海を知るためにどういうことをしたらいいかということであって、「守る」と「利用する」は別のところで詳しく書かれるという理解でよろしいですね。
   だから、あくまでもここで書かれるのはそのための基礎であるというスタンスで資料2−4−2が出てくる。それで、資料2−4−2は枠の立て方も含めてコメントをいただくこととします。枠が立てば多分その中にどういうものが入ってくるかというのはおのずと決まってきます。では、基本的な考え方をについてはきょういろいろ意見をいただいているので、次までにフィックスして、それで資料2−4−2を次のときに主に議論していただくということでよろしいですか。
【文部科学省】  次回は全体の骨子をご議論いただきます。それはきょうの基本的考え方と推進方策をあわせたものになるかと思います。それで、年内に第4回は無理かもしれませんが、第4回でこの委員会のレポートを取りまとめたいと考えてございます。
【小池主査】  資料2−4−2の1つ1つの細目に関してはどういう形になりますか。
【文部科学省】  細目よりも、第1回でご紹介いただきました各省の施策もありますから、この柱立てでよければまず項目として各施策をここに列挙して、それを次回眺めていただいて、それでよろしければそれをさらに詳しく記述するということにしようと思っています。
  
  ○閉会
  ●次回は11月22日午後2時からというお知らせをして閉会した。

 

(科学技術・学術政策局政策課)

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