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科学技術・学術審議会

2001/10/19 議事録
第2回海洋利用委員会議事録



第2回海洋利用委員会議事録


1 日時 平成13年10月19日(金)9:00〜12:00
2 場所 経済産業省別館825号会議室
3 出席者 (委員会)
  吉田主査、
奥脇、小野、栗林、小林、橋口、堀  各委員

(専門家)
嘉門京都大学教授、渡邊新エネルギー・産業技術総合開発機構調査専門員

(事務局)
文部科学省: 大塚海洋地球課長
外  務  省: 佐藤海洋室長
経済産業省 本城鉱物資源課長
国土交通省:

岡部総合政策局海洋室長、大沼河川局海岸室課長補佐
      
4  議題
    1海洋における廃棄物処理について
    2海洋エネルギー・深層水利用について
    3海賊問題の現状と我が国の取り組みについて
    4我が国の海洋利用のあり方について
    5海洋利用の重点化のための仕組みについて
    6その他

5  会議経過
○議題1  海洋における廃棄物処理について
●嘉門教授からランドフィル島構想を中心に廃棄物処理について説明がなされた。
委員からの質疑・コメントは次のとおり。

【小林委員】    大変感動しました。なぜかといいますと、私はずっと東京で生まれて、東京で育って、東京で海に出ています。今現在、東京港の港外に埋立地が広がっています。今、埋め立てられていますが、あそこと有明海がずっと使われないでいたときに従来型で埋め立てて、そこを企業に売って収益にするという形ではなくて、もっともっと高く高く、埋め立てて山にして、あるいは山とはいかないまでも丘にして、そこに緑の木をたくさん植えて、埋立山をつくろう。そうすれば、周りの環境も変わるし、東京は緑がないですから、キャンピングスポットにもなる。そのように埋め立ててはどうかということをずっと提案してきたのですが、ずっと無視されてきました。それから、埋立地との間に水路をつくることとか、緩斜面をつくることによって、できるだけ自然に近い形で埋立地をつくれば、新しい、いい環境ができるのではないか。数値を別にして、このようなことをずっと主張してきました。それが、こういう形で数値を含めてまとめられて、すごく感激しました。基本的にはとてもすばらしいと思います。

【嘉門教授】    実は問題を抱えておりまして、実行は簡単ではないのです。考え方として、我々のアイデアをだんだん参考にしていただいております。海洋研でも、同じようなことを提案いただいて、一部は大阪のフェニックスの事業にも考え方を取り入れていただいきました。少し三次元的に埋立地を使ってみよう、すぐ、港湾用地とか、都市用地にするよりも、緑、公園にしていく。そこを市民に開放しましょうという考え方がどんどん取り入れられてきております。埋立護岸で浄化機能を持たせましょうということを積極的に考えていくという提案もされております。環境省のほうでも、その評価をしていただいているということです。

【橋口委員】    私、この委員会で、一度、廃棄物の話も真剣に考えないといけないと言って、総スカンという感じだったのですが、海洋を管理しながらやっていかないといけないと思います。廃棄物を負の位置づけだけでいくと、非常に変なことになっていく。邪魔者扱いで、これを例えばごみ焼却、石炭灰というのは、企業が引き取ったところに設備を発注する。もう対になっているのです。そのような変なことになっていますので、積極的に出るものをどうするかということと環境とを結びつけるという意味で私が考えていたこととよく似ていたなと思いました。

【吉田主査】    私から一委員としてお伺いしたいのですが、先ほど先生のほうからも、一般廃棄物、産業廃棄物があり、その産業廃棄物も、建設残土系のものもあれば、浚渫土もあるとお話がありました。浚渫土は海底のものもあるはずですが、東京湾は、今、青潮問題で、大きな穴が浚渫されて、それが貧酸素のもとになっているらしいのですが、そういうあらゆるものを、種別ごとに何か前処理があって、埋立地に持って行くとお考えでしょうか。

【嘉門教授】    今のご質問に答えるには、汚染レベルが問題です。浚渫土は実は産業廃棄物ではありません。浚渫土は、汚染がいくらあっても産業廃棄物ではございません。底土です。底土については、実は環境基準は今のところありません。底土については除去基準がございまして、例えばPCBに汚染されていたら取りなさい。その取っていったものを持って行く先は、管理型の処分場にしなさいということです。しかし、そのもの自身は廃棄物ではないんです。用材として使えます。
  東京港でも大阪港でもそうですが、鉛汚染とか砒素汚染が相当進んでいるようです。ダイオキシン汚染も、地下水環境基準に近いぐらいの汚染が進んでいるとのことです。
  そういうものに対してどうするかということでございますが、やはり水面の下は、このプロジェクトでも無害のものを捨てましょうと提案しております。水面下の管理は溶出の問題を無視できませんので、安定型を捨てるとしております。実は量的には問題なくて、建設発生土、これは廃棄物でございますが、ボリュームが非常に多いのです。浚渫土でも、内側へ取り囲んだ状態で入れるものについては、ほとんど問題がありません。東京湾の今の部分は還流があるものですから、ヘドロがたまっており、周辺では、数センチですが、中ではメートルオーダーの堆積がございます。1メートルまで行くどうかわかりませんが、50センチとかのヘドロがあります。そういうものを取り囲む。包み込む。汚染源としては大体3分の1は底土でございますが、それをまず、しまい込もうということです。川から流れてくるのは仕方がないのですけれども、そういうものはできるだけ減らして、東京湾を良好にする。
  有害物を含んだようなものは、基本的には海の中に入れるというのはよくないのですが地上では、しかるべき対策をした上で管理型の廃棄物も受け入れていくこともできるのではないかなと考えています。
  もう一つ、ここで我々が申しております特徴は、土地利用をすぐやるということではございません。今現在の技術では有害物で役立たないのだが、50年後になれば、今の技術革新から考えたら、有用なものになる可能性が非常に高い。そういうものを種類ごとにラベルをつけて格納する。格納の基地という意味でも、このエリアを利用したらどうかと提案をしています。それを海の中に入れてしまいますと、使い道がないので地上に格納し、そこを覆土して、緑にすることを考えております。

【吉田主査】    今おっしゃったようなことが、ある意味、前提条件として重要になるのではないかと思います。溶出というか、海水の中に溶け込むとか、海底を通して出ていく。これはまだ人間が知らないことが、いろいろあるはずだと聞いておりますので、非常に大規模なものであるだけに、その前提条件が満たされることが非常に重要なような気がします。

【嘉門教授】    管理した状態を保った上での埋め立てというのが必要になると思います。

【小林委員】    今おっしゃった、どういう廃棄物の種類をどういうふうに管理するかというきちんとした管理体系が、どうしても必要だと思います。その場合、例えば民間の団体をつくってやることも必要でしょうし、情報公開も必要でしょう。それから、廃棄物あるいは有害物質の処理の問題があります。有害物質をゴムのシートで覆ってもう出ませんという、見るからにいいかげんですけれども、そういうことではなくて、長期的に分解されないPCBやダイオキシンをどうするかという問題をきちんと処理することが必要と思います。また、瀬戸内海の豊島にならないようにしなければいけません。
  また、川の流れについてお話がありましたが、南から入ってくる潮流大きな役目を果たしていますので、そういう潮流の問題も考える必要があると思います。

【嘉門教授】    実は説明はカットしましたけれども、潮流と、広流というのがあります。それともう一つ、大規模気候変動までは解析の中に入っていますのでお手元の資料にありますので、もしよければ見ていただければと思います。

【小林委員】    わかりました。

【栗林委員】    私は、ほんとうに素人なので、初歩的な質問をさせていただきますけれども、特に廃棄物の処理と新しい環境の創造ということですが、大変興味あるお話でございましたけれども、これからの日本に限定にすると、空間の利用の仕方は、水平的に行くよりもむしろ垂直的だという話を伺ったことがございます。やはり人口密度が高い日本の場合には、横に水平的に物事を処理するよりも、この計画も250メートルという立体的なものを持っています。陸上にしろ、海底にしろ、その地下の活用ということを考えることのほうが、むしろ現在の生活環境と摩擦を起こさないような形で行われるんではないかという感じもしますので、専門家の間では、そのような立体的な活用の仕方はそのようにお考えでしょうか。

【嘉門教授】    地下空間の利用ということでは、もう30年ほど前から、いろいろな面で研究が進んでおります。海洋空間の研究も進んでおりますが、地下も進んでいます。地下のメリットはいろいろございますが、やはり恒温であるということ、地上との遮断ができることなど、いろいろメリットがございます。しかし、管理がなかなか難しい。
  それで特に廃棄物のようなものを無秩序に地下に入れてしまいますと、非常に危険でございます。岩盤というのは極めて透水係数は低いのですが、日本の場合はクラックが多いものですから、岩盤全体としての透水係数は必ずしも低くないのです。細かい砂粒を少し流れにくくした程度の水が流れています。そこへ有害物質が無秩序に入りますと、非常に危険でございます。あるいはガスが発生しますと、危険でございます。そういうことがございますので、できるだけ安全なものを地下に管理、格納するというのは非常にいいと思います。
  今、危険なものを地下に入れるということでは、高レベル放射性廃棄物を地下に埋めようとしていますが、これは日本のような岩盤層の中にほんとうに埋めていいのかどうかという研究を実は真剣にやらないといけないと思います。しかし、日本は研究するのが容易ではございません。NEDO等を中心に相当やられておりますし、日本のお金は結構外国まで出ています。それは日本で研究できないからです。しかし、それをやらないと、プルトニウムだけではなくて高レベル放射性廃棄物は、同量、日本に持って帰って来ているわけですから、青森の六ヶ所村のリスクは極めて高くなります。日本として、どうしていくのかということについては、ほんとうにやらないといけない。我々地盤をやっている者にとっては非常に問題が多いのですが、リスクのシナリオを考えて、どうやるべきかということを検討しています。

【堀委員】    今のお話、大変すばらしいと感動いたしました。ものの考え方として、例えば東京湾という大きな水槽の中に、循環器のような役割のものを、ぽんと置くような感じで、浄化するというような濾過循環装置を置いたような感覚で私は拝聴したのですが、そういう考え方でよろしいでしょうか。

【嘉門教授】    残念ながら、100%は濾過・循環というわけにはいかないと思います。海域を>3,
000ヘクタールもつぶしてしまいますので、それに見合う程度は、これでやりたいというのが私どもの考え方です。その周辺部分だけでも浄化できるようにしたいという程度で、全体を循環するというところまでは、今のところではいかないと思います。
○議題2  海洋エネルギー・深層水利用について
渡邊調査専門員から海洋エネルギー・深層水利用について説明がなされた。

【橋口委員】    深層水を発電所に使うとき、温水を排水するために魚の卵が死ぬのではないかというような面もあります。適当な温度に調節しますと、藻場ができたり、魚が増えたりするというようなことで、非常に環境によくなるという副次的な効果がある。さらに発電所の効率化につながり、全体的にCO2
の量が減るということになると思います。そうすると全体の問題になるので、だれがお金を払うのでしょうか。深層水をくみ取っていこうとすると、これは発電所だけの費用ではできないわけですね。そのあたりをご説明していただきたいと思います。

【渡辺調査専門委員】    実際、お手元の資料にもありますが、発電所で日量100万トンというと、コスト的には、取水管だけで100億円くらいのオーダーが計算されています。100億円以下を目指すような研究もやっているのですが、それをだれが負担するのかということになる場合、電力事業者が負担するだけでは、かなり難しいと思います。取った水を、いろいろな用途に使うという形で、最終ユーザーも負担側に入ってくるべきだろうと考えています。
  それから、日本の電力需要がずっと右肩上がりで伸びていたのですが、ここ三、四年は、ぴたっと横に寝てしまったので、電力事業者の経済的インセンティブを求めるという姿勢が、今はむしろ締め側に入っています。積極性という意味では、少し薄れておりますが、電力需要が今後伸びていくといったときにこの深層水を使うことによって、既存設備が生き返るような話になれば、メリットが出てまいります。取水管のコストがかなり高いということですが、実際の発電所の建設規模から考えますと、必ずしも、べらぼうに高いわけではございません。しかし、今新たに100億円の追加投資をするとかというと、それはかなり厳しいと思われます。当面は、経済の右肩上がりの状況が出てこないと、なかなか難しいかと思いますが、実際的な経済的なインセンティブが出てくるのもこういうところでございますので、こういうところを中心に一番上流側で冷熱を使ってくださいと。その後、水をちゃんと、それぞれの事業者が扱って、最後は、こういう形ですというようなスキームになってくるのではないかと思います。

【橋口委員】    直接的な費用だけではなくて、多分、漁業には、これは優しいことに結果的にはなると思いますが、現実問題として、取水管を伸ばしていると、漁業権が出て、また大変な負担になると思います。

【渡辺調査専門委員】    漁業権の問題は日本だけですが、実際にこの話をだれが始めるかというところに非常に大きく依存しています。電力会社がこういう話を始めた途端に、漁業権が発生いたしまして、なかなかうまくいかなくなるケースがございます。仮に、磯焼け修復のような、沿岸漁業振興という形でスタートしますと、そういう形の漁業権というのは多分出てこない。むしろ底引き漁に配管が邪魔だとか、そういうことは出てきますが、エネルギー利用から離れてしまいますけれども、一般的な水産や民生需要が最近上がっていますので、こういうところから沿岸振興みたいな形ができてくるというような形態がほんとうは望ましいと思っています。いきなり工業的に、これはエネルギーだという話よりも、徐々に徐々にという形ではないかと思います。

【堀委員】    少し付随するのでございますけれども、漁業権以外には、配管することの許認可とか、それは発生いたしますか。

【渡辺調査専門委員】    通常は漁業者、沿岸漁業をやっていらっしゃる方の了解が必要になってまいります。それから、認可は県が出します。深層水はだれのものかというようなところになるんですが、今のところ、僕のものだという人はだれもいませんで、主に県とか市が事業母体になる形になっておりますので、その辺はうまくいっておると考えます。

【堀委員】    民間も進出していらっしゃいますか。

【渡辺調査専門委員】    例えば三浦半島、相模湾側からやっていますが、漁業との絡みはなかったのでうまくいったのではないかと思います。

【小林委員】    深層水を取るということになり、これがすごくいいということになると、私はとっても心配しているんですが、全体としてどのぐらいの量を事業として取ることになってしまうのでしょうか。
  また、今の状態で、生物とか、化学物質とか、いろいろなものについて、海洋が今の状況のバランスが取れているわけです。そこに安定してあるものを、人工的にくみ上げて途中で使って、また戻すという形になった場合、バランスの問題がどうなるのでしょうか。
  3点目は、いわゆるCO2というのは、地球全体での量というのは決まっているわけです。それがどのような形で存在しているかということですから、減らすといっても実際は、全体量を減らしていくことはできないわけですから、その辺のバランスのあり方というのはどのようにお考えですか。

【渡辺調査専門委員】    まず、ものには限度があるだろう、少しぐらいなら取ってもいいのではないかということに対して、それは大丈夫かということですが、実際に取水しておる深度が、一番深くても320から330メートルでございます。深層水とは言っても、大循環に影響を及ぼすような深層ではなくて、例えば室戸で取っているのは北太平洋循環水という、大体30年周期で循環しているものと言われています。それを取ることが環境に対してどのような影響を及ぼすかということが研究対象になっていますが、個人的には、循環はあったほうが地球の気候そのものを維持するにはいい方向にあるだろうと思います。それが若干、温暖化によってなくなりつつあることが大きな問題であると思っています。
  それから、例えば発電所は、表層水を取って、約7度水温を上昇して戻しています。100万キロの発電所ですと、大体600万トン/日という水を取ります。これを深層水にしますと、表層水と同じ温度で戻すことができます。

【小林委員】    橋口委員がおっしゃったように、高い温度が戻って、周辺の海の生物が影響を受けるということは少ないということですか。

【渡辺調査専門委員】    はい、ただし、有機塩の濃度は高いですから、生物の発生はかなり促進されてしまいます。温度的には全く影響のない状態で戻すことはできるというのは、1つのメリットでございます。
  大循環の量に比べますと、正確な数字はわからないのですが、日本全体の発電所が深層水を使ったとしても、全く影響のないようなオーダーです。いかに大きな流れが、底にあるかということです。

【小林委員】  温暖化といったら、大気中にCO2がたくさん出てしまっていることが問題ではないでしょうか。

【渡辺調査専門委員】    大気中にCO2が、どんどんたまってしまったがために、輻射熱で熱が宇宙に逃げていかなくなりました。それが地球の気温を温めているのですが、大気の中には、大体毎年20億トンから30億トンぐらいの炭酸ガスが増えているのです。毎年毎年増えているわけです。これは産業革命以来です。今、380ppmというオーダーになっており、これがどんどん増えていくと、温暖化が進んでしまう。全体量は同じですが、大気中に残ってしまっているというところが温暖化の一番大きな原因ですので、それをいかに減らすかということが今、課題になっています。
○議題3  海賊問題の現状と我が国の取り組みについて
外務省から海賊問題の現状と我が国の取り組みについて説明がなされた。

【小林委員】    これは具体的にはどういう趣旨で、今回、海洋利用委員会の議題としたのですか。

【文部科学省・大塚課長】    海という問題を取り扱う中で、海賊問題というのは、ある程度認識していました。それを3つに分かれた委員会のどこで議論するかという検討の結果、海洋利用委員会に海の輸送が含まれていますので、ここで取り上げるのが適当という判断をいたしました。最終的には、海洋利用委員会の報告書、それから全体の答申の中で、海賊問題を取り上げていきたいという事務局の意図でございます。

【奥脇委員】    今のご質問との関係で、日本の国際的な輸送の全体量の中で海上運輸の割合と、特に、この海域における輸送の割合を示していただくと、わかりやすくなるのではないかと思います。航空運送と比較すると、海上運送のほうが圧倒的に多いと思います。

【外務省・佐藤室長】    おっしゃるとおりです。今、資料は持っておりませんので正確ではありませんが、世界全体の海運のうち、おそらく4割は東南アジア海域、マラッカ海峡を中心とする海域を通過していると記憶しております。後ほど、国土交通省とも相談してお答えしたいと思います。いずれにしても、非常に重要な海域であることは間違いないと思います。

【奥脇委員】    このアジア協力会議には、世界海事機関(IMO)や国際海事局(IMB)などの国際機関が介在しているわけですが、こういう機関の中でも、海賊問題が扱われていると思います。これについて、どのような段階にあるのか教えていただければと思います。

【外務省・佐藤室長】    ご承知のとおり、IMOの場でも海賊問題は非常に重要な問題として扱われております。その中で、去年ぐらいから議論が出てきたのは、地域協力が重要である。したがって、先ほど申しましたような地域協力協定をつくるべきだという議論が出てきております。
  しかしながら、具体的にどのような取り決めをつくるべきかについては、各地域で事情が大分違います。例えばアメリカ、ラテンアメリカとの協力は、これは海賊問題ではありませんが、麻薬問題で既にアメリカが各国の沿岸域まで警備艇を派遣して取り締まりを行うということが慣習として確立しております。しかしながら、東南アジア諸国においては、自分の海域にほかの警備艇が来て、捕まえていくというのは、とんでもない。アジアは多様な国家が集まっている地域でございます。また、微妙な政治関係も中国等を含めてありますので、地域による特殊性を反映した協力の枠組みをつくるべきだということを私どもは考えております。アジアにおいて、アジアでどういう協力ができるかということは、アジア諸国自体が考えないといけないということです。そうした考え方を踏まえて、IMOの持っている知見・経験を生かして、協力してやっていくのが一番理想的ではないかと考えております。

【小林委員】    お願いですが、この10月4、5日に行われました会議の概略はいただいておりますが、後で資料をいただけますでしょうか。

【外務省・佐藤室長】    わかりました。もう少し詳しい会議の記録をつくっておりますので用意します。

【小林委員】    それから、海賊の問題は、大塚課長から説明がありましたように、人間が海の上へ出だしてからの古典的な問題なので、歴史的な背景を理解しながら現代的な問題を解決していく必要もあると思います。
  また、今のご説明の中でご懸念されていることは、貨物や船にウェートを置かれていると思いました。人命に関しても、貨物の価格とは比べものにならないものですので、人命に対する配慮という視点も大変必要だと思います。
  そういうときに、例としてアロンドラ・レインボー号のことが出ています。海上保安庁も取り組みましたし、外務省も取り組みましたが、ここで基本的な問題が抜けていると思います。アロンドラ・レインボー号は外国の船です。外国船籍は、外国の法的主権がありますから、起きたところが外国の海域であるならば、日本はそれにかかわれない。しかしながら、船員が日本人の乗組員である。そういう複雑な背景の中で、日本人船員をどのように保護するかという問題があります。このとき、問題になるのは、便宜置籍、つまり紙1枚の外国船籍の船に日本人を乗り込ませるという仕組みが行われていることです。その中で、日本人船員をどのように保護するか。あるいは混乗の場合、どうするかという大変複雑な問題があると思います。国土交通省の海事局でしょうか、そちらと具体的な問題について、どうしたら解決できるかという方向でやる必要があると思います。日本の海運の仕組みという複雑なこととも絡んでくると思います。その点もご配慮いただきたいと思います。

【文部科学省・大塚課長】    海賊問題と直接関係はございませんが、関連する問題として、実は海の研究調査をする上でも、海賊的な行為が今問題になってございます。例えば海洋科学技術センターは、南太平洋に定置ブイを定置していますが、そこはよい漁場になっていることから、漁業者による、そこで魚を取るときにダメージを受けるということ以上に、明らかにブイを意図的に持って帰って、売りさばくというような被害が急増しております。それは海洋研究・基盤整備委員会でも議論することかもしれませんが、実はあらゆる面で、そういうことが起きていて、今、非常に大きな問題になっていることをご報告させていただきます。
○議題4  我が国の海洋利用のあり方について
○議題5  海洋利用の重点化のための仕組みについて
●議題4、議題5を同時に審議することとし、資料2−6−1に沿って橋口委員から説明がなされた。

【吉田主査】    内容に加えて、このご提案のお取り扱いの上で大変なご苦労というか、海洋問題の持つ困難性を象徴的にあらわしておられるようなお話が今あったようにお聞きいたしました。

【小林委員】    今の橋口委員のご説明は大変明快でよくわかりました。つまり、大変マンガチックな現状というのが、私たちの生活を取り囲んでいる行政的・政治的状況であるというのが、とてもよくわかりました。
  私は、審議会のあり方ともかかわってくると思います。これからの審議会、これからまとめる答申は、そういう縦割りとか、予算をたくさん持っている、あるいは魚にも投票権を与えるような状況ではない。つまり、核に何を置くかということを、きちんとみんなにアピールする審議会の存在というのも提案する必要があると思います。その核は何かといったら、一人ひとりの人間の存在です。そこから考えれば、今日、廃棄物の問題もありましたし、海賊の外交の問題もありましたし、発電の問題もありました。海洋のグランドデザインというのも、それと全部かかわってくると思いますので、人間、つまり一人ひとりの市民と社会と海とのかかわりを、海側からどういうふうに提案するかという基本的な考え方を皆さんにお出しして、お考えいただく。今までの縦割り行政の中での審議会の答申ではない、人間を中心にした、市民の視点からの、しかも海上の視点からの開発とか、箱物とか、そういう陸上のお金の問題ではなくて、市民と海という視点から提案をする切実な必要性を感じました。

【吉田主査】    今の橋口委員のお話、それから小林委員のコメントも、後からの議論にかなり深くかかわっているように私は感じますので、今の種類の議論は、ここまでにとめていただいて、後にまた機会があれば、そういうテーマをご議論させていただきたいと思います。

【栗林委員】    経団連のグランドデザインは、有名な提案でありまして、このデザインが出されて、海の総合的管理ということに我々は改めて目を向けた、そういう契機になったものだろうと思います。内容はもとかく、第2の国土という言い方に私は前提を置かないといけないと思います。200海里の水域というのは領域でありません。そういう意味では日本の領土の一部ではないわけで、そこで沿岸国たる日本が独占できる事項というのは、天然資源の開発、鉱物資源の探査・開発、それから先ほど渡辺先生が言われた波とか風とかを利用したエネルギーの生産、経済活動に限定されております。これらは主権的権利という権利の性質で独占的・排他的なものでありますが、そのほかの部分というのは、世界の海の一部であるということになっています。全部が全部、自分の国のもので排他的に処分・処理できるということではないので、余計難しい問題が含まれていると思います。そういう前提でお話をされていったほうがいいと思います。

【小林委員】    それから、基本的な疑問、素人的な疑問があります。浮体構造について、平らな大きなプラットホームのようなものを考えていらっしゃるのかどうかわからないのですが、海の上で浮かぶ一番合理的な形というのは、船の形だと思います。その船でも、嵐の荒天の中では沈むということがあるわけです。浮体構造そのものの有用性とか安全性、浅い海に置いた場合に、光を遮ることで、そこにいろいろな循環の問題とか、そういう基本的な問題というのを深めていただきたいなと素人としては思います。

【橋口委員】    2つあったと思います。1つは、安全にできるかという話。これは浮かべるといっても、海の途中に浮かべるというのもありまして、水中に沈めて、網を使うというような方法もありますし、このあたりは吉田先生のご専門で、工学的には非常に進んでいますので、そういう安全のものはできるようになっております。いろいろ前提がありますが、やり方はかなり昔と変わってきています。
  それから、環境の問題ですが、これは太陽光が行かないということは浮体空港の議論であったのですが、結局、実験したら魚が増えたというのが大体の結論です。

【小林委員】    今の魚が増えたというのは、例えば昔からあるいかだを浮かべておいてということですか。

【橋口委員】    いや、大型の浮体空港の実験をしました。その下に魚が寄ってくることがわかり、悪いほうには行っていないという結論が出ています。

【吉田主査】    それでは、このお話は、とりあえず、ここで終わらせていただきまして次へ移りたいと思います。どうも先生、ありがとうございました。 ●資料2−6−2、資料2−6−3について事務局から説明がなされた。また、資料2−6−2の吉田主査のアンケートに沿って吉田主査から説明がなされた。

【栗林委員】    2つございます。1つは字句の問題でございますが、目次案の3の3番目でしょうか、海洋保全との調和というのは、わかりにくいところがありまして、むしろ海洋環境保全とか、環境という言葉を入れられたほうがわかりやすいという感じがいたします。
  もう一つは今、吉田主査が言われたことと関連しますけれども、私も海洋開発分科会で発言させてもらいましたけれども、そういうポリシーメーキングをして、それを実行していく。その仕組みが重要だと思いますので、6という形でこのテーマを海洋利用委員会でも出したらどうかと思います。これは基盤整備で扱うべき問題でしょうか。

【文部科学省・大塚課長】    メカニズムの話は、運営委員会で議論するということにはなってございます。

【吉田主査】    私の意見を申し上げさせていただきますが、この海洋利用委員会が、ある意味で一番そのような問題とかかわりが深いのではないかと思います。海洋研究・基盤整備委員会で扱う純粋の科学は、わりあいまとまりのいいお話ではないかと私は想像いたします。それに対して鉱物資源、水産資源、運搬利用、海上交通、先ほどの海賊の問題も、ここの問題に大いに関係があるのは、先ほどのご指摘のとおりだと思います。このように極めて幅の広いテーマがあります。理工系から文科系まで、法律の問題を含めてです。そういう意味では、この委員会でも、栗林委員のおっしゃるように議論をしていただいて、もちろん海洋開発分科会でも議論されるべきテーマと思いますが、この委員会が3つの委員会の中でも関係の一番濃いものではないかという意味で、この委員会が一つ、下のというか、一次案の検討をしてはいかがかと考えます。

【小野委員】    私は委員長の提案に全面的に賛成です。ここへ委員長の私案も出ているわけですから。それから、運営委員会は、いわば上部の委員会でしょうが、我々がそういうのを議論してはいけない理由はどこにもないと思います。

【堀委員】    全く全面的に賛成でございます。先ほど橋口委員が大変すばらしい浮体式の構造のいろいろな利用像を提案されました。しかし、各省庁から予算がないということをおっしゃられたとありました。私も、資源関係の会で資源の研究が、周辺環境の協力なくして実現ならないということを発言されています。これから水産白書に出そうとしていることも考えますと、そういう調整機能とか、システムを考える必要があります。いろいろな問題は、省庁の序列は関係なく実施するしかないのではないかと考えております。

【奥脇委員】    私は海洋研究・基盤整備の委員ですが、海洋保全委員会についてはよくわかりませんが、今日のここでのご議論を聞いていて、海洋利用委員会は、現実的な海洋の利用が核にあるとのことです。その枠内で今日のお話の中での海洋保全、海洋環境、海を守るという話がありました。これは利用に伴って生ずる具体的な問題がどうであるかという、かなりローカライズされた人間の住んでいるところとの関係で議論されていると思います。海洋保全委員会では、想像ですが、相当にグローバルな要素が入ってくると思います。そこは必然的に同じ海を守るでも、かなり違った様相が出てくるのではないでしょうか。今日のお話でも、例えば東京湾にたまっているヘドロが真ん中にあり、そこを囲い込むとか、その場合に、どちらにしてもヘドロは出てくるわけで、今度はどこへ行くのかということがありました。あるいは深層水の話でも、全体としての海洋の熱は上がるはずで、それがどういう影響を持つかということがありました。今のところ、二、三百メートルだから、あまり関係はないということですが、それがどういう影響を持つのだろうか。あるいは、いろいろな浮体設備を設置した場合に、魚が増えるということですが、それは部分的にはそうかもしれないけれども、全体はどうなのか。実は魚の話をいろいろ聞いていると、国際的な漁業に関しても別に生態的アプローチと言えるほどの立派な生態はよくわかっていないということです。そうすると、海洋保全委員会で、例えばグローバルな環境のものを持ってこられたときに、この利用部会との調整というのは一体どこでやるのか。言葉の上では適当に書くことはできると思いますが、全体が戦略的にプライオリティーをつけて、何か言いたいということとずれが出てくるのではないかと危惧します。そういう意味では、運営委員会をおつくりになっているわけで、それが非常に重要な意味を持つとは思います。しかし、だからといって、個々の委員会は、運営委員会があるからということで抑制する必要は全くないと思います。

【吉田主査】    そうお考えでございますか。

【奥脇委員】    ええ。ただ、調整はいずれ必要になってくるかもしれません。

【吉田主査】    そうかと思います。それはおっしゃるとおりじゃないでしょうか。全体として、最後の結論というか、まとめになるわけですから、調整は必要です。

【奥脇委員】    うまく調整がつけばいいのですが、言葉の上では調整がつくけれども、そうでないだろうから、それぞれの報告が、多少、整合を欠いても、個々の分科会が、こういうことを言いたかったよというのを出せたほうが、むしろプライオリティーについていろいろな考え方があるということが表に出ていいのかもしれないという気もします。

【吉田主査】    そういうお考えもあるわけですね。必ずしも一枚岩になってなくてもとおっしゃるわけですね。

【小林委員】    今のご発言と関連しますけれども、それぞれのテーマがあるわけですから、そのテーマを深めて、矛盾するところが出てくるのは当然だと思います。矛盾するという言い方はおかしいですけれども、裏表、物事には立体的にありますから。こちらの面からだけ見た場合と、反対の面から見た場合とで、見方が違ったり、評価が違ったりすること自体が必要なことだと思います。どの委員会が上か下かとかいうことになると、そういう形の違いではないと思います。性質の違いがあるから違いが出て当然だと思います。それを1つの目的に向けて、どのようにアピールするか、矛盾した形で提言するのもいいのではないでしょうか。
  それともう一つ、海洋利用に関して、今回、日本に限定したいろいろな資料のご説明でしたから、それに関してのやり取りになったと思います。海というのを考えた場合、地球の7割を海が占めていますから、当然、グローバルな視点がなければあるエリアの特定した狭いエリアの利用というのもできないわけで、保全も循環型の利用も全然できないということになります。そういう視点は常に持っておくということは大変重要なご指摘だと思います。

【橋口委員】    吉田先生のご意見には全面的に賛成です。先ほど保全と利用と矛盾するかもしれないということがありますが、これについては、何も変えてはいけないということになると、何も結局進まないで、結局わからないまま終わってしまいます。前回、私は、いろいろフレキシブルに考えるべきではないかと発言しました。影響がわからないからやらないといったら、永久に何もできないということになりますので、そういうフィードバックを自由にやれるシステムが政策に必要なのではないか。一遍固定したら、これで進むというようなことであれば非常に危険ですが、いろいろフィードバックしていくというシステムができれば、それほど恐れる必要はないだろうと思います。そうでないと、何も改善されないのではないか。逆に環境もよくならないという気がします。
  それから、少し具体的なことですが、4.2のところでいいのかどうかわかりませんけれども、先ほどの廃棄物の問題は避けて通れないと思います。陸上で埋めるところがないということです。現実的にあと2年しかないとか、1年しかないとか、騒いでいるわけです。そういうことは避けていけないので、どこに入れるべきかということがあると思います。
  それから、海洋汚染の問題。これは利用というより、保全のほうに入るかもしれません。具体的には日本海にどんどん潜水艦が沈められているという国際問題が起きています。それから、船はIMOのおかげで、環境の規制が厳しくなりましたから、大分よくなってきたのですが、ほんとうは日本から提案していければよかったのですが、外国からの提案なのです。そういうところは、海洋保全委員会で、もう少し国際的に積極的な姿勢を示すことが要るのかなと思います。
  それから、4.5 の「国民の親しめる海洋に向けて」。ここの例で見れば、何か物を、建物をつくるとか、そういうようなイメージに見えるのですが、今、ひどいところは、海の崖にごみを捨てているところも見られます。それから海へのアクセスです。レクリエーションといっても、そういうことだけではなく、景観保持もあればいいのかなという気がします。

【吉田主査】    橋口委員のお話の中で、汚染の問題は海洋保全委員会でメインの問題の1つとして取り扱われると思います。
  一方で、最初におっしゃった今日のお話のような東京湾への廃棄物による大規模な人工島のお話にかかわるような、廃棄物処理という問題は、どこで取り上げられるのかというお話ですが、4.3でしょうか。ある意味で沿岸空間の利用ですよね。廃棄物処理のための利用と思うと、4.3に入るという気がいたしますけれども、いかがでございましょうか。
  廃棄物の問題はなかなか表に出にくいところがありますが、もうそんな状況ではないことだけは、橋口委員がおっしゃっておられる。また、嘉門先生のご提案も、そういうことへの対処法の1つだと思います。

【小林委員】    廃棄物というか、汚染物、有害物質でしょうか。

【橋口委員】    有害物質というか、例えば石炭灰の処理だけでも大変です。それは有害ではないのですが。

【吉田主査】    廃棄物ですか。それは例えば発電所からの廃棄物ですね。

【橋口委員】    ええ。それを道路に利用するとか、いろいろやっていますけれども。

【吉田主査】    いろいろな検討があるようですが、微小ですよね。

【堀委員】    それから、体系的に人材育成という意味で、教育とか、海に関する広報活動といったものも非常に大事だと思います。その辺をどこに置くかというのは、ここにないですね。

【吉田主査】    そうですね。最初のお話し合いでは、私の理解では、教育問題、私もアンケートでは少し触れているのですけれども、非常に重要だと思うから書いてはいるのですが、取り上げる委員会としては海洋研究・基盤整備委員会と理解しております。そこで教育問題は重要な議題になるはずだと思います。ですから、ここで出されたのをそっちへ集約していくという格好で、ここの中では必ずしも教育問題の節をつくるとか、そういうことにはしないということかなと私は理解しておりますが、どうお考えになられますか。

【堀委員】    それはそれで理解いたします。ただ、広報というのも、その中に入るのでしょうか。

【吉田主査】    はい。それも海洋研究・基盤整備委員会になるのかなと思います。

【小林委員】    具体論でお話ししますと、4.3で、「多機能で調和のとれた沿岸空間利用」というのがございますが、この沿岸というのは、当然、ウォーターフロントも含まれるということですか。

【吉田主査】    含むと私は広義に理解しています。

【小林委員】    そうですね。そうでないと、何メートル離れたところからということになりますから水陸両用と考えてよろしいのでしょうか。

【文部科学省・大塚課長】    はい。そういうことでございます。前回も、いろいろな分野のコンフリクトというか、協力というか、両方の側面があるというお話があったと思いますが、特に沿岸空間というのは、例えば漁業と川上の問題とか、いろいろな問題があるというご指摘がございましたので、そういうことで、「調和のとれた」というのを入れて、ここでそういうことを扱うという意図でございます。

【小林委員】    わかりました。その場合、ここに一つ加えていただきたい希望があります。それは原則的に、自然のウォーターフロント、自然の海岸線を崩さないで利用する。自然の海岸線をそのまま残して、さまざまなことをする。そういう配慮が、これからは必要だと思います。このままですと、従来どおりの埋め立て、コンクリート直立護岸、そういう印象を大変与えてしまうと思います。これは実際に、例えばアメリカのサンフランシスコ湾では、戦前から、そういう形で開発が進められているという実績がありますから、遅過ぎるという感じがあるのですが、そういう形でウォーターラインを挟んだ空間を保全利用するという一文を入れていただきたいと思います。
  それから、4.4で「効率的な海上輸送の実現」というところですが、その場合、基本になるものは、いわゆる海上技術を持った人がいるかいないか。そういう人的要素が一番の基本になると思います。支援のあり方の基本が船員教育とか、海上技術者の保護育成みたいなものも視野に入るのかなと思います。今、ほとんど日本では消えつつある存在です。

【吉田主査】    非常に減っているという認識を私も持っています。

【小林委員】    非常に減っています。海上技術者集団がいないところでの海洋国家というのは、大変矛盾していると思います。海賊の問題とも、それはかかわってくると思います。

【吉田主査】    かかわっていますね。

【小林委員】    それで、4.5で「国民の親しめる海洋へ向けて」ということですが、これは文章を読んでいますと、何か、とても箱物開発という今、橋口委員からの指摘がありましたけれども、多分、これをおつくりになった方の意図していらっしゃることは、それだけではないと思いますので、それがもっと文章として出るように修正できればと思います。

【吉田主査】    ありがとうございました。今、幾つか、特に4.3、4.4、4.5についてそれぞれご指摘とご要望があったと思いますが、何かございましょうか。

【栗林委員】    海洋汚染防止、つまり海洋環境保全の関係で、この海洋利用委員会が、必然的に触れていかなければならないものはあると思います。それで、その間をどういうふうに仕切るかという問題は、多分、海洋開発分科会を幾つかの各委員会に分けたときから、問題がそもそも含まれていたわけですけれども、ともかく海洋利用とか、基盤整備とか、環境保全とか、そういうことで分けていこうということで進んでいくわけですから、この委員会でも、私は海洋利用という側面にかかわっている限りにおいては触れていっていいのではないかと思います。
  小林委員も言われた4.4ですけれども、確かに海賊は現在、非常に重要な問題であることは間違いありません。同時に、船員の質の向上だとか、訓練だとか、いろいろな問題も、航行の安全に含まれている問題であります。海賊との関連で触れられましたけれども、例えば海賊は単に犯罪を抑圧するというだけではなく、海賊によって非常に危険物を搭載した船舶、特に大型の船舶が乗っ取られたときの海洋環境に対する悪影響、例えば、操船技術の不備なために座礁するとか、衝突するとかということになった場合の海洋汚染の脅威が指摘されています。そういう意味からすると、ここの問題はみんな、海洋汚染、海洋環境の破壊との関連を考えなければならないわけで、そういう意味で、総合的な海洋の管理とか、海洋環境保全とか事務局がつくられたところとかかわってくる。やはり私たちは、海洋汚染防止ということの視点は、海洋利用委員会においては視野に入れて置かなければいけないと思います。

【吉田主査】    今おっしゃったことはそのとおりでございます。先ほど、汚染は海洋保全委員会で扱うというようなことを言いましたが、その側面もあるかわりに、利用と海洋汚染という問題は裏腹という今のご指摘はそのとおりだと思います。危険の問題も含みます。タンカーにしても、LNG船等が乗っ取られたという話になったら途方もない話になる。もし爆発炎上、流出なんていうことになったら。それがマラッカ海峡で起きたら海峡閉鎖に当然なるし、すごいことになるはずです。

【小林委員】    今のご意見に賛成で、海洋汚染という、4のところに1つ海洋利用におけるという場合、海洋汚染の防止をという何か項目を立てるか、あるいはサブ項目でも必要だと思います。
  今の危険というお話とは少しずれるかもしれませんが、東京都内や首都圏でもたくさんの油を積んだタンカーが隅田川を頻繁に上下しています。それから、東京港内にもたくさんあります。それが例えば火災とか座礁とか、そういうことが起きた場合、例えばタンクローリー1つが横転して火事になったという問題ではない。ケミカルタンカーもございます。ほんとうに頻繁に川を運航しているものですから、日常生活でも少し怖いなと思って取材していました。

【吉田主査】    サブタイトルをというお話もありましたが、この段階ではまだまだ粗っぽい段階で、項目までを論理的に立てるという話にはまだなっていないと思いますので、今のお話は議論の中でとどめていただきながら、具体的な目次案のときにそういうご議論にさせていただきたいと思います。

【堀委員】    最後に、先ほどウォーターフロントの開発とか、レクリエーション施設の箱物という印象があると伺いましたけれども、やはり人間生活を豊かにするということは非常に重要でありますので、ある意味で、自然との共生を視野に入れたというような言葉を、何か含みながらやりますと、理解が得られるのではないかと思います。

【文部科学省・大塚課長】    先ほど、小林委員のウォーターフロントはどこかということで、4.3ももちろんそうですが、4.5の自然のウォーターフロントを残すということだと、「国民の親しめる海洋に向けて」という4.5に入れるメッセージも含まれると思います。
  それとやはり小林委員から、汚染防止をどうするかということですが、栗林委員からもご指摘があったように、3の「基本的考え方」の、今は「海洋保全との調和」ということになってございますが、先ほど栗林委員の意見で「環境」というのを入れたらどうかというのがございました。その中に汚染防止という概念を入れるか、あるいは新たに4番目の「基本的考え方」を起こすかして、ここに入れて、それで、さらに4.1から4.5までの個別の重点化の中にも文章として書き込むと。そういう形にしたいと思います。
  それから、冒頭の吉田主査のメカニズムをつくるところで若干ちょっと誤解がありますので、訂正させていただきます。文部科学省の所管事項の中に、各省の海洋施策を調整するという権限はございません。科学技術・学術審議会海洋開発分科会の事務局は文部科学省でございます。その海洋開発分科会の答申は、各省の施策全体を扱うということは事実でございますが、文部科学省として、それを調整するという権限はございません。あえて、そういうことを設けるとすると、それは内閣の中にあるかどうかということになってくると思います。そういう意味で、吉田主査が海洋政策統括室を文部科学省中心にと書いてございますが、若干誤解がありますので、訂正させていただきます。

【吉田主査】    今、大塚課長からご指摘のあった点については、必ずしも拘泥しているわけではございませんで、ただ、システムとして、なにがしかが必要だと思います。それがないと、我が国の国益を、何と言うか、損なうような可能性さえあると私は感じます。ですから、先ほどの提案の話は1例と申し上げているのは、そういうことでございます。

【文部科学省・大塚課長】    それでは、本日、大体、この基本的な考え方、それから重点化の方向性ということで、大体ご意見をいただきましたので、それを踏まえて、これをリファインするとともに、次回は、この5つの柱のもとに、今日、ヒアリングした施策、あるいは各省の施策等を入れ込む作業をした上で、その骨子というものをご議論いただきたいと思います。

【吉田主査】    先ほどの報告書の目次案で6番目というのを追加させていただくということが、この委員会としての結論であるとさせていただきたいと思いますが、委員の皆様方、よろしゅうございましょうか。
                            (「異議なし」の声あり)

【吉田主査】    はい。
  それで、この中身を、どういうふうに議論していくか。5つの柱とおっしゃっていますが、それは4章の中でおっしゃっていることかと思いますが、この柱も、ある意味で並んで議論をしていくべきテーマかなと思います。そう理解しておきたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。
                            (「異議なし」の声あり)

【吉田主査】    では、そのように進めます。

 

(研究開発局海洋地球課)

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