第4章 公募・審査等について-公募要領の考え方-

 第1章から第3章までの審議の結果を踏まえると、本事業の公募に当たっては、基本的に次の内容を提示していくことが適切である。また、公募の際には、審査方法や評価基準も合わせて示していくことが適切である。
 なお、経理、権利関係も含む公募の詳細については、事務的にさらに検討されたい。

1.事業の概要

 本事業は、日本との関係で重要な世界の諸地域において、現在の政治、経済、社会制度等とそのバックボーンとなる思想、文化、歴史等との関係など、今後我が国が人的交流や国際貢献を進めるために必要な社会的・政策的ニーズに対応したプロジェクト研究を、大学等への公募・委託によって実施するものである。

2.事業の目的

 本事業では、国際社会に生きる日本人が研究対象地域に対する総合的な理解を得られるような研究を推進することにより、日本と研究対象地域との間で官民様々なレベルでの交流や協力が今後一層促進され、日本とこれらの地域との「協働」、「相互理解」さらには「共生」に資することを目的とする。

3.研究領域

 以下の2つの研究領域の下で、「中東」を研究対象とする研究課題、又は「東南アジア」を研究対象とする研究課題を公募する。

研究領域1 日本と諸地域との関係性の解明-協働に向けて-
(特に日本・日本人観をテーマとするもの)

研究領域2 地域のアイデンティティーの解明-相互理解を深めるために-
(特に東南アジアのイスラームをテーマとするもの)

※本事業における「中東」の範囲
アフガニスタン、アラブ首長国連邦、イエメン、イスラエル、イラク、イラン、エジプト、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、シリア、トルコ、バーレーン、パレスチナ、ヨルダン、レバノン

※本事業における「東南アジア」の範囲
インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、東ティモール、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレイシア、ミャンマー、ラオス

【申請に当たっての留意点】

  1. 申請課題は、本事業の目的を踏まえ、社会的・政策的ニーズを前提としたものであり、また、申請者の問題意識が現代的な課題に応えることを意図したものでなければならない。
  2. 研究課題の設定に当たっては、全域を対象とする必要はないが、研究テーマに応じて適切な地域設定を行い、複数の国々にまたがった研究とすることが望ましい。必ずしも、国単位での課題設定を条件とするものではない。
     また、例えば、「中東」ではマグレブ(北部アフリカ)、中央アジア、「東南アジア」では中国、インド等の周辺諸国等の一部も研究対象とすることを排除する趣旨ではない。
  3. 応募のあった研究課題について、研究コーディネーターが複数の研究課題の組み合わせや課題の修正、研究領域の変更、研究体制の組み替え等を提案することがある。
  4. すべての研究領域で研究課題が採択されるとは限らない。

4.申請可能な研究機関

 国内の大学(大学共同利用機関法人を含む)、短期大学、高等専門学校、独立行政法人試験研究機関、公設試験研究機関、及び独立行政法人、特殊法人又は民法第34条に基づき設置された法人が設置する研究機関とする(申請者は法人の長)。

5.研究実施体制

(1)研究代表者

 申請機関に所属する研究者とする。

(2)研究チーム

 研究代表者の下で研究を遂行する研究者等から構成される研究組織。
 研究チームには、研究代表者が所属する研究機関以外の研究機関に所属する研究者が参画することができる。また、研究課題の性質上、ジャーナリストやNGO等関係者が構成員となる場合も想定される。

(3)事務局

 研究代表者が所属する研究機関の事務局とする。

※なお、各研究課題は、「研究コーディネーター」の下で総合コーディネートされる。

6.研究期間

 3年以上5年以内とする。
 なお、本事業は、平成18年度新規事業のため、事務手続の関係上、契約締結及び研究開始時期は、平成18年夏頃となることが見込まれる。これに伴い、研究費の支給時期は契約締結時期以降となる。これらのことを予め見込んで研究計画を立てることが必要である。

7.研究費

 一研究課題当たり、年間2,000万円を上限とする。
 ただし、最終的には、申請数や各計画の内容・事業規模等を勘案して決定する。
 なお、研究費の10パーセントは、委託研究機関に対する「一般管理費」として交付する予定である(研究費の内数)。

8.採択課題数

 2つの研究領域を合わせて5~6件程度を想定しているが、申請数や各計画の内容・事業規模等を勘案して決定する。

9.審査方法

 審査は、研究成果の活用主体である政府・NGO関係者、企業関係者等の社会的・政策的ニーズの関係者及び学識経験者からなる「推進委員会」が、審査WGの協力を得て行う。審査WGは、推進委員のうち数名、研究コーディネーター及び専門の学識経験者から構成されるものとする。

(1)形式上の不備の確認

 提出された申請書類は、応募要領に記載された形式上の要件を満たしているかどうかについて事務局で確認を行う。応募の要件を満たしていないものは、以降の審査の対象から除外される場合がある。

(2)第1次審査(書類審査)

 審査WGのメンバーが書類審査を実施する。

(3)第2次審査(面接審査)

 第1次審査(書類審査)において適切と認められた研究課題について、審査WGが、面接審査を実施する。研究代表者等によるプレゼンテーションの後、審査WGのメンバーと質疑応答を行う。

(4)採択課題の決定

 第1次審査(書類審査)及び第2次審査(面接審査)における評価結果を踏まえ、推進委員会において採択課題を決定。

※審査の過程において、申請された研究計画を本事業の趣旨・目的に合致したものに変更できるかについて、申請者に相談する場合がある(適切な研究者の追加、別々に応募された複数の研究計画の一本化等)。

10.審査に当たっての主な観点

(1)研究内容について

  1. 本事業の目的及び研究領域の趣旨に合致したものであること。
  2. 提案の際に設定されている社会的・政策的ニーズが適切なものであること。
  3. 設定されている目標の実現可能性が高いものであること。
  4. 社会的・政策的ニーズに幅広くまとまりをもって応える研究を想定していること。
  5. 社会的・政策的ニーズに応える研究を遂行できる研究体制となっていること。
  6. 学術的に高い水準が確保されていること。

(2)研究実施体制について

  1. 研究代表者が提案課題を推進する上で十分な考察又は経験を有するとともに、研究実施期間中、継続して研究全体に責務を持つことができること。
  2. 研究チームが専門分野・専門領域、所属機関の異なる研究者から構成されるとともに、分野横断的かつ俯瞰的なアプローチが計画されていること。
  3. 研究者の養成の観点から、研究チームに若手研究者(ポストドクター等を含む)を積極的に参画させていること。
  4. フィールド研究調査におけるジャーナリストや地域の企業、NGO等との連携、海外の研究者・研究機関との共同研究等、多様な関係者との連携等が計画されていること。

(3)その他

  1. 研究遂行のための予算規模が適切であるとともに、予算執行体制(研究代表者の所属する研究機関の事務局の体制)が整っていること。

11.研究コーディネーターによるコーディネート等

 推進委員会が研究コーディネーターを選任する。研究コーディネーターは、審査に当たって、審査WGのメンバーとして審査に当たるとともに、研究開始後は、研究領域の下に置かれる各研究課題を総合的にコーディネートする役割を担う。

(1)審査への参加等

 選任された研究コーディネーターは、審査WGのメンバーとして、第1次審査、第2次審査に参画する。
 また、応募のあった研究課題について、研究コーディネーターが複数の研究課題の組み合わせや課題の修正、研究領域の変更、研究体制の組み換え等を提案することができる。

(2)研究領域の下に置かれる各研究課題のコーディネート

 研究開始後にあっては、推進委員会及び審査WGでの意見も踏まえ、研究領域の下に置かれる各研究課題を総合的にコーディネートし、研究の進捗状況を不断に管理する。
 各研究課題の研究代表者は、研究コーディネーターからの指導・助言を得ながら、各研究課題が、社会的・政策的ニーズに適合した研究成果を創出できるよう努めなければならない。

(3)研究連絡会の主宰

 研究コーディネーターは共同して、少なくとも年1回、すべての研究チームが一堂に会し、研究上の課題等について情報交換するための「研究連絡会」を主宰する。

12.研究成果の公開等

(1)成果発表会の開催(中間、最終)

 平成20年度に「中間報告会」、平成22年度に「研究成果報告会」を実施するとともに、その他文部科学省が依頼する場合において、研究成果を広く一般に発表する。

(2)進捗状況報告書の提出(毎年)

 本事業は、委託事業であることから、毎年度、委託契約を締結するとともに、年度末に報告書を提出する。

(3)研究成果報告書の提出(研究最終年度)

 研究最終年度に、研究成果報告書を提出する。英語による概要を付する。
 研究成果報告書には、研究成果を一般向けに分かりやすく説明した部分(一般普及版)を盛り込むものとする。一般普及版は、文部科学省その他の適切な機関においてデータベース化を図り、広く一般に閲覧を可能とする。

(4)報告書等の著作権の帰属

 本事業は、文部科学省から大学等の研究機関に対する委託事業であることから、上記(2)及び(3)の報告書の著作権は、国に帰属する。

13.研究評価

 平成20年度(研究開始後3年目)に中間評価、平成22年度(研究期間の最終年度)に事後評価を行う。

14.委託の終了

 次の場合には、推進委員会は当該研究プロジェクトへの委託終了を決定する場合がある。

  1. 研究組織や研究対象に事情の変更があり、研究の遂行が困難となった場合
  2. 研究が6か月以上中断していると判断した場合
  3. 委託の目的に合致した研究が遂行されていないと判断した場合
  4. 法令違反、研究費の不正使用等何らかの不適切な行為が行われた場合

お問合せ先

研究振興局振興企画課学術企画室

(研究振興局振興企画課学術企画室)