我が国の学術雑誌は、主として学協会によって刊行されている。冊子体雑誌におけるこれまでの刊行形態は、学協会が独自に刊行するもの、出版・販売を商業出版社に委託するもの(自然科学系では海外出版社が中心)等、さまざまな形態がある。その性格は、学協会に所属する会員間での情報交換を目的とし主に学協会内で流通するもの、学協会外への情報発信を目的として価格をつけて販売するものなど、さまざまなものがある。
その数は、国立情報学研究所の調査では、約2,000誌であり、うち英文誌は約340誌となっている。
大学図書館においては、海外学術雑誌の大部分を個人講読よりも高く設定された機関購読価格により購入してきたのに対し、国内学協会の刊行する学術雑誌の購入に際しては、国内商業雑誌と同様の商取引習慣により一冊当りの単価による支払いを行うか、個人会員会費と大差のない機関会員価格で購読してきている。
海外の学術雑誌は、主として商業出版社、またはこれと同等の経営体力を持つ大規模な学協会、大学出版局等の非営利出版事業者によって刊行されている。商業出版社は学術雑誌の刊行により利益をあげることを第一の目的としている。大学等の研究機関は図書館を通じてこれらの学術雑誌を機関購読価格によって購入している。この価格は、論文の増加、電子化への投資等の理由により、年々上昇しており、大学図書館の経費を圧迫している。また、商業出版社は、近年吸収合併を繰り返しており、少数の出版社が多くの学術雑誌を抱える寡占化が進行している。
海外の学術雑誌には、その歴史と伝統により、国際的に研究者間で評価の高い雑誌があり、我が国の研究者は、学術論文を主にそうした海外の「トップジャーナル」に投稿したいという傾向を持っている。このため、国立情報学研究所の調査では、我が国の研究者は国際的に流通している学術論文の約12パーセントを生産しているが、そのうち約80パーセントは海外の学術雑誌に投稿されるという、論文の海外流出といわれる状況に至っている。
我が国の学協会が刊行する学術雑誌に関する主な施策としては、以下のものがあり、これらの施策は、学術情報発信の支援について、これまでに一定程度の成果を収めてきている。
海外学術雑誌は、商業出版社を中心として、近年、本格的な電子化に取組み、出版社ごとに電子ジャーナルを閲覧するプラットフォームを構築してきた。また、電子ジャーナルを機関ごとにまとめて利用契約するサイトライセンスへの移行、多数の電子ジャーナルをまとめてパッケージにして利用契約する形式など、経営上もさまざまな取組みがなされている。
一方、我が国の学協会は経営の脆弱なものが多く、学術雑誌の電子化への取組みが遅れていた。また、機関購読によるビジネスモデルを持たなかったため、主に会員からの会費により冊子体を刊行する従来型のモデルでの運営をしているところが多く、J-STAGE等を利用して電子ジャーナル化を行っても、電子ジャーナルによるビジネスモデルを持っている学協会はごく少数である。また、国内の電子ジャーナルの形態には、1.学協会単独で行う独自路線、2.J-STAGE等を利用する国内提携路線、3.電子ジャーナルを海外出版者に任せる海外提携路線、4.海外出版者に電子ジャーナル以外もすべて任せる海外委託路線、の4類型がある。
研究振興局情報課 学術基盤整備室