3.附置研究所及び研究施設の見直し

○ 国立大学の法人化にあたっての附置研究所及び研究施設の見直しについては、
ア.既存の附置研究所等の見直し
イ.今後の附置研究所及び全国共同利用の研究施設に対する定期的な評価及び組織の見直し(新設を含む)
ウ.大学自身により行われるべき、点検及び組織の見直し
というような、3つの視点があることに留意する必要がある。

(1)既存の附置研究所等の見直し

○ 国立大学の法人化に際して、従来の附置研究所等について適切な観点に基づき科学技術・学術審議会として見直しを行う必要がある。見直しに当たっては、その観点の明確化・妥当性に留意するとともに、見直しの手続等の透明性を確保する必要がある。
 また、見直しの観点については、我が国全体としてバランスのとれた研究体制の構築を念頭に置きつつ、当該附置研究所等の果たす役割・機能を考慮する必要があり、長期的視野に立った見直しを行うべきである。

○ 今後の附置研究所に期待される役割・機能を踏まえ、次のような観点から既存の附置研究所及びこれに匹敵するような実態を有する研究施設について見直しを行い、附置研究所と位置付けることの適否について改めて判断することが必要である。

1.全国共同利用の附置研究所

○ 当該分野の研究を推進する上で全国共同利用の形態が必要かつ有効であること、その機能が十分に発揮され研究活動が展開されていることを要件とすべきである。
 具体的には、
ア.大型設備やデータの活用が十分なされているなど、共同利用のシステムが機能しているか。

イ.定期的な第三者評価に基づく改善や、新たな学術動向や研究者コミュニティの要請に対応した組織運営の見直しがなされ、組織として活性化しているか。

ウ.共同研究プロジェクトの応募及び採択の状況、国際共同研究の実施状況等の実績が上がっているか。
などを総合的に判断することが必要である。さらに、その他の附置研究所と同様、適切に組織の見直しが行われていること、COE性があることも重要である。

2.その他の附置研究所

○ 次の点に関して、附置研究所と位置付けることがふさわしいかを総合的に判断すべきである。

ア.目的の重要性

 目的が学術研究上重要であり、重点的に発展させるべき分野に関わるものであることが必要である。その意味で、第三者評価に基づく適切な組織の見直しが行われていることが重要である。具体的には、過去10年以上まったく組織の見直しが行われていないような附置研究所については問題があろう。

イ.活動の全国的な意味

 全国共同利用の形態はとっていないが、全国的に意味のある研究活動を行っていることが必要である。「全国的に意味がある」かどうかを一般的な指標で測ることは難しいが、全国の関連研究者の知の集積の場と考えれば、全国共同利用の研究所と同様、共同研究や国際共同研究の実施状況や情報データの蓄積及び提供の状況、さらには、研究体制の流動性の観点から、教官の任期制が導入されていることなどが重要である。また、自然科学系の研究所にあっては、産学連携、外部資金など研究成果の社会的な還元の状況も要素となる。

ウ.COE性

 研究活動の状況が国際的な水準にあり、我が国の研究機関としてCOE性を有していることが必要である。
 具体的には、学術審議会建議で示されている条件を満たすことが重要であるが、科学研究費補助金の採択状況、論文掲載・引用数、著名な外国人研究者の招聘、学術国際交流への取り組み状況等の要素をもとに、総合的に判断する必要がある。

エ.組織性

 研究機関として、継続的に機能を発揮するに十分な一定の人的規模を有することが必要である。
 附置研究所が、全国的な機能を有しつつ、研究者個人の成果を有機的に結合し、最大限の効果を発揮して、新たな分野領域の開拓を目指すとともに、学部及び研究科と同様に学内においても基本的な組織として位置付けられ、大学の運営にも参画するなど諸般の要因を考えれば、当然、学部及び研究科に準ずる程度の教官規模が求められることになる。必要規模としては学問分野やその研究所の目的・使命により異なるものの、学部や研究科の規模や、基本的組織としての位置付け等を考慮すれば、30人程度がその目安となろう。

○ なお、この目安については、硬直的に適用することは避け、役割・機能の重要性にも配慮して弾力的に運用すべきである。

(2)今後の定期的な評価及び見直し

○ 附置研究所等とされたものが十分に役割・機能を発揮しているか等をフォローアップしていくため、附置研究所や全国共同利用の研究施設について定期的な評価を行うとともに組織見直しを検討する必要がある。これらを含め各国立大学法人の評価については、文部科学省に国立大学法人評価委員会(仮称)を設けて行うことが検討されているが、他方、我が国の学術体制全体の観点から附置研究所等に求められる役割・機能については、科学技術・学術審議会等で学術政策の観点から検討を行うことが適当であり、両機関の間の適切な連携が必要である。また、同様に、大学における研究活動から発生してきた研究組織が附置研究所等として発展する可能性についても留意することが必要である。

(3)大学における積極的な見直し

○ 各大学における研究組織の自己点検・評価の必要性については、研究組織に属する研究者が活発な研究活動を展開し、研究組織自体が常に活性化した状態を維持する観点から、過去の審議会答申等においても指摘されているところである。

○ 国立大学法人化後においては、大学の研究体制は制度的に柔軟性・流動性が増大し、設置改廃への国の関与は限定される。その結果、大学ごとの自主的な判断による戦略的な研究の展開が進むであろう。そのような中においては、そうした研究組織活性化能力をさらに高める評価システムについて、学長のリーダーシップの下に構築する必要がある。

○ 必要とされるリーダーシップは、現場から生まれる創意と意欲を、既存の教育研究の枠組みとの調整を踏まえて、実効性のある組織改編に結実させる性格のものである。そうした意味でのリーダーシップ発揮を可能とするような評価と組織改編のシステムを整備する必要がある。

○ 研究組織にとって、定期的に研究活動の自己点検を行うことは当然であるが、特に附置研究所は、大学にあって研究活動に専念する組織であり、第三者による研究評価等が適切に行われるとともに、学問の体系と自己の研究の発展に応じて機動的にダイナミックな点検・見直しが行われなければならない。

○ 附置研究所は、基本的には、目的志向の研究組織としての性格から、学部及び研究科に比べれば、学問状況の変化に対応して、より柔軟に組織の在り方を変化させていくことが想定されている組織である。今後とも、そうした柔軟な組織見直しにより、附置研究所の機能が一層発揮できるよう、大学において積極的に検討が行われる必要がある。

○ 研究施設の多くは、一定の目的達成を目指す時限付きのプロジェクト研究の場という一面を持っている。その目的は、先端的基礎研究から産業化を目指した応用開発研究まで幅広いが、時間軸に沿って考えれば、附置研究所以上に柔軟な研究組織と位置付けられ、そうした特徴が十分発揮されるように適切な見直しが行われる必要がある。

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