参考1 アルマ実施計画案に関する学術評価作業班の報告書概要

 本学術評価作業班に付託された作業は、国際プロジェクトであるアルマ計画における日本の実施計画、とくに、日本が提案しようと計画している構成要素について、学術的、技術的な評価を行うことであった。評価作業は、プロジェクト全体及び日本の実施計画概要の説明を国立天文台より受けた後、計画全体及び各構成要素の評価を行った。また、各装置の技術的評価や開発計画の妥当性に関して、3名の関連分野の専門家に出席を依頼して意見を聴取した。

1.アルマ計画における日本提案に対する全般的評価

 実施計画案は、日本の独自アイデアが計画全体に反映され、日本の技術基盤にマッチした先端的装置の提案であり、学術プロジェクトとして高い先進性が認められるものである。日本がリードしてきた電波天文学の蓄積を生かし、星・惑星系の形成過程、銀河の形成と初期進化及び膨張宇宙における物質進化等の課題において、幅広い科学テーマで、日本の科学界が国際的に貢献できるものとして期待できる。

2.ACA(アタカマ・コンパクト・アレイ)システムの評価

【科学的意義】

 電波強度を正確に測定し、物質量等の定量的な解析や他波長帯データとの定量的な比較を可能にするACAシステムの提案は、アルマを理想的な観測装置とするものとして高く評価できる。宇宙初期の銀河形成や惑星誕生過程における基本的物理量の確定等が、ACAシステムの威力が特に発揮出来る対象として挙げることができる。

【システムの運用形態】

 ACAシステムが必要な観測は主として広がった天体であるが、感度的に適合した台数構成及び運用形態になっていると判断できる。

【技術的妥当性】

  1. アンテナ口径及び台数に関するシミュレーションの結果から、必要最低限で適正な規模のシステムと判断できる。
  2. アルマ仕様12mプロトタイプアンテナで25μm精度を達成する技術的開発に目処が立っており、極めて先端性の高い日本の技術的成果と評価できる。

3.受信機の評価

【科学的意義】

 日本が製作することを提案しているバンド4(ミリ波)、バンド8、10(サブミリ波)の天文学的意義について精査した結果、それぞれの目的に応じた受信機を構成している点は高く評価できる。最高周波数帯のバンド10は、特に惑星形成の研究で最高の分解能と高い受信強度を実現するため、極めて重要である。

【技術的妥当性】

 バンド4及び8についての技術的目途は立っている。バンド10については、今後3年以内で実用化設計を完了し、量産化のための適切な開発計画が立てられている。

4.相関器の評価

【科学的意義】

 本装置は、従来の相関器に比較して広帯域かつ高分散に分光ができることから、様々な分子の「輝線の森」に隠されている微量の分子の発見も可能となり、提案されている高分散相関器の重要性は極めて高いと判断できる。

【技術的妥当性】

 高分散相関器は、日本が最も進んだ開発実績をもち、通常の開発体制で十分完成が可能と判断できる。

5.その他の事項

 学術評価作業班では主としてACAシステム、受信機、相関器等、主要な個別機器を中心に評価を行ったが、これら主要な個別機器以外にも1.国内の研究体制や開発装置の整備、2.完成後の運用や国内に設置を計画しているデータセンターの充実、3.建設サイトのインフラストラクチャーの整備、等重要項目があるとの指摘に留め、今後の検討に委ねることとした。

6.結論と提言

(1)日本提案によりアルマの基本的性能は飛躍的に向上し、それによって実現する学術的成果には大きな科学的意義が認められる。その成果は天文学に留まらず惑星科学や生命科学等広い分野への波及が見込まれる。
(2)アルマ実施計画における我が国のリーダシップの確保や米欧との共同運用体制から考えて2004年度からの実施が不可欠の条件と言える。
(3)ACAシステム(7mアンテナ12台+12mアンテナ4台)は、アルマに画像信頼性と定量的研究の実現を保証するため、全体計画の中で重要な位置を占める提案であり、その科学的効果は絶大である。アンテナの台数や口径は必要最小限の構成である。
(4)3つのバンド受信機を付加する提案の及ぼす科学的意義は高く、特にサブミリ波の重要性は大きい。バンド4、8については、量産化の見通しは明るく、高い技術レベルを必要とするバンド10においても開発計画は適切である。
(5)高分散相関器は、宇宙の物質進化や生命起源の物質探査(宇宙でのアミノ酸探査)等においてその意義は高い。技術の目途は立っている。
(6)日本提案の実施計画における技術開発の成果と科学成果の結びつきが明確である。開発過程では技術的に極めて先見性の高い要素を含み、我が国の天文学並びに学術研究等の発展を牽引する。

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