アルマ計画については、「1.(2)国内におけるアルマ計画に関する検討の経緯」のとおり、平成12年12月の学術審議会報告において、「早急に実現に向けて推進すべき計画」として学術的な意義の観点から評価されたところであるが、近年の我が国の経済・財政状況及び国際的な天文学研究における我が国の位置付けの観点から、我が国として適切な参加計画の在り方を検討するため、国立天文台が中心となって検討しているアルマ計画への参画に向けた「アルマ実施計画」について追加的に評価を行うこととした。
評価に先立って、国立天文台から提案されたアルマ実施計画は以下のとおりである。
国立天文台においては、これまで、未開拓の観測窓であるサブミリ波の重要性、チリ北部乾燥地帯が観測サイトとして最適であること、惑星系形成領域を0.01秒角(解像度という観点で比較すると、ハッブル宇宙望遠鏡の10倍)で観測できることを世界に先駆けて示すなど、計画立案に先進的な役割を果たしてきている。
このため、欧米が先行して整備するアルマ計画の基盤部分に、我が国の世界をリードする観測技術と高い技術力を背景に、サブミリ波に焦点をあて、観測精度を飛躍的に高度化させることを目標として、「アタカマコンパクトアレイ(ACA)システム」「サブミリ波帯等受信機」「高分散相関器」等最先端の観測装置を整備し、アルマ計画におけるサブミリ波観測能力を大幅に向上させ、欧米計画では不可能である宇宙の定量的研究を初めて実現し、星・惑星系の形成や銀河の歴史、さらには宇宙における物質進化などの研究を大きく前進させることを目的とする計画である。
ACAシステムとは7mアンテナ12台とその較正用アンテナである12mアンテナ4台で構成する。
これらのアンテナは、欧米計画では不十分な対象天体の正確な画像の取得、強度測定の大幅改善を図るとともに、視野の狭さを克服し、初めて天体の定量的な分析・解析を可能とするものである。
世界最高レベルのサブミリ波受信に係る技術力を基盤に、最短波長のバンド10(約790~950GHz)、バンド8(約390~500GHz)及びミリ波帯のバンド4(約130~160GHz)を整備し、欧米計画では欠落しているバンドをカバーする計画である。
欧米が整備する低分散相関器では欠落してしまう他種類の多くの分子を識別・検出し、物質の同定や新物質の発見を可能とする高性能な高分散相関器を整備する計画(個々のアンテナの観測データを干渉させ一つの天体画像とするシステム)である。
提案されたアルマ実施計画(「3.(2)」)については、次の観点から評価を行うこととした。
研究振興局学術機関課