○ITER計画は、核融合燃焼の実証を主目的とする実験炉であるため、ITERの次の核融合原型炉に向けて、核融合炉の経済性向上を目指して無衝突プラズマ領域の高ベータ・定常化についての研究を並行して進める必要がある。
○この分野は、JT-60及びWT-3、TRIAM-1M等の大学の研究が世界のフロントランナーとしての中心的役割を果たしてきた。トカマクの高ベータ定常化研究は、今後30年程度で発電実証プラントを実現するためにクリティカルな炉心プラズマ開発研究であることから、国際協力であるITER計画と有機的に連携しつつ、国内に臨界プラズマクラスの、ITERを上回るβNを準定常的に維持できる先進的なトカマク装置を持ち、核融合エネルギーの早期実現に向けて我が国のトカマク研究のポテンシャルを引き上げて世界を牽引することが極めて重要である。
○高ベータ化と定常化を目指すという点で共通である3つの提案(JT-60改修計画、球状トカマク計画、TRIAM-1M計画)を統合し、“高ベータ定常トカマク実験装置(仮称)”とし、高ベータ(βN=3.5-5.5)非誘導電流駆動プラズマを100秒程度以上保持することを目指すこととする。
○高ベータ定常トカマク実験装置(仮称)は、日本原子力研究所のJT-60のプラズマ加熱装置、計測装置等の研究資産を生かすことが必要で、日本原子力研究所/後の原子力新法人(現、那珂研究所)に設置することが望ましい。
○高ベータ・定常化研究は、環状磁場閉じ込めの物理が共有する共通の研究課題である。高ベータ定常トカマク実験装置に加えて、球状トカマクによる高ベータ研究を大学レベルでの先駆的研究と国際協力を活用して展開し、また、LHDを用いた定常化研究を共同利用・共同研究として進める等、日本原子力研究所・核融合科学研究所・大学の連携の下、その学術基盤の確立にも総力を上げることが重要である。
○14MeV中性子による重照射に耐える材料及び発電ブランケットの開発の成否は、閉じ込め方式の如何によらず核融合エネルギー開発上のクリティカルパスである。
○材料・ブランケット開発の設定目標は、原型炉以降の炉材料とブランケットの開発及びその建設のための工学データベースの構築にあり、そのために、その中核となる国際協力による核融合材料試験装置IFMIFの速やかな建設が必要である。
○2004年からの開始が提案されている工学実証・工学設計活動(EVEDA)の遅滞ない開始が必要である。
○IFMIFの建設や実施形態については、将来EVEDA活動の成果をみて判断することが適当である。
○IFMIF計画の推進に並行して、材料・ブランケット開発研究のための基盤整備を行うことが重要である。
○レーザー高速点火方式による核融合点火温度の実現を目指すFIREX第一期計画は、原理実証段階にある研究である。高速点火は我が国独自の方式であり、FIREX計画の早期遂行により、世界に先駆けて核融合点火・燃焼が実証される可能性がある。
○我が国の研究は、レーザー核融合の基本原理である高密度圧縮の達成、高速点火の概念実証等世界をリードする実績を上げている。また、ペタワットレーザーを用いたプラズマ追加熱実験により、核融合会議計画推進小委員会の設定した目標(1000万度加熱)を達成した。これらの実績を踏まえて、高速点火研究を次の段階に進めることが適当であると判断される。
○レーザー核融合研究は、磁場閉じ込め分野とは異なる基礎学術・産業技術へのインパクトが期待できるため、学術研究としてFIREX計画の第1期(目標:爆縮プラズマを核融合点火温度まで加熱)の原理実証を進め、その結果により点火・燃焼の実現を目指す第2期)を再構築することが適当。
○レーザー核融合研究については、大阪大学レーザー核融合研究センターが中心となって推進してきたが、今後、大学の法人化に際し、FIREX計画を研究者コミュニティ全体の計画とするために大学共同利用機関との連携の方策等を、具体的に検討する必要がある。
研究振興局学術機関課