6.まとめ

 WGでは、核融合研究を進めるための学術・開発両面からの貢献の必要性に基づき、従来の複数の方式による炉開発路線から、重点化・効率化された路線への転換(パラダイムシフト)を進めるための検討を行い、報告書をとりまとめた。本報告書では、今後の我が国の核融合研究についてのグランドデザインを定めるとともに、これまで長期にわたり核融合研究を担ってきた多数の実験装置を整理し重点化・効率化を図ること、共同利用・共同研究を強化推進することを提言し、併せて新たな可能性を目指した研究、不断の人材育成等を可能とする方策が必要なことを述べている。
 ITER計画によって核燃焼プラズマを用いた研究機会が約10年後に実現することに鑑み、30年程度を目途に核融合炉を早期に実現すること、並びにさらに優れた核融合炉の可能性を追求するためには、その進行を制限する項目と課題(クリティカルパス)を定め、核融合研究を進める必要がある。従って、WGでは、研究者コミュニティによる既存の研究計画と提案された重点化すべき計画についての評価を行い、今後重点化すべき課題を、トカマク(トカマク国内重点化装置計画)、炉工学(核融合材料試験装置計画)、レーザー(レーザー高速点火計画)の3つに絞り込み、これに既存のヘリカル(LHD)を加えて4つの重点化の柱を策定した。
 WGでは、研究計画の中核となる国内装置(JT-60及びそれに続くトカマク国内重点化装置、LHD、GEKKO-X2及びそれに続くレーザー高速点火装置)を共同研究重点化装置として位置づけ、国際協力による炉工学分野の核融合材料試験装置(IFMIF)と併せて、共同利用・共同研究を積極的に促進することを提案するものである。その際、重点化計画の基盤となるJT-60とGEKKO-X2に関しては、次期装置建設に合わせて計画を完了させる必要がある。また、重点化の柱となる共同研究重点化装置以外の既存装置については、然るべき時期に計画を完了することが必要になると判断した。ただし、斬新な研究への展開による装置の運転延長の提案は、新たな可能性を目指した研究の候補として、次の展開につながり得るものである。
 一方、大型の装置への重点化と併せて、萌芽的・独創的なアイデアを積極的に伸ばす方策と人材育成の方策を確保することは、大変重要な課題である。我が国の学術研究の振興のためには、研究者が新たな可能性を目指した研究の機会を得てこそ独自性の高い研究を展開し、優秀な人材を育てることのできる環境が整うものである。従って、重点化後の当該分野の研究の推進のため、研究者コミュニティへの責任を負う大学共同利用機関等の共同利用・共同研究に関わる機能を活用して、新たな可能性に挑戦できる措置の実現が是非とも必要である。
 本報告書が提言する今後の核融合研究の重点化と共同利用・共同研究の推進のためには、国の施策に反映されるべき具体的な課題の解決が必要である。そのため、今後も、研究者コミュニティ内の継続的な意思疎通を図り、併せて行政との接点を維持することを目的として、本WGのような審議の場が継続的に設置されることが望まれる。

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