4.共同利用・共同研究の強化の方策

 我が国の核融合研究が新しい段階に入り、国内の共同研究重点化装置及び国際協力によるITERや核融合材料試験装置による研究への展開が行われようとしている現在、これらを軸とする研究はもちろんのこと、新たな可能性を目指した研究機会を生み出すためにも共同利用・共同研究の一層の活性化が必要となる。従って、研究者コミュニティの総力を上げた共同利用・共同研究を実りあるものにするためには、これを担保する共同利用・共同研究促進措置が必要となる。具体的には、共同研究費の拡充をはじめとして、宿舎、旅費等の充実を図る等の方策の検討が必要である。
 以下に、これらの受け皿となる核融合科学研究所、大学、日本原子力研究所の果たすべき役割と、その促進のための方策を述べる。

(1)大学共同利用機関としての核融合科学研究所の在り方

 核融合科学研究所においては、核融合プラズマの学理とその応用の研究との創設の理念に基づき、我が国独自の方式である大型ヘリカル実験計画と理論シミュレーション研究を推進してきた。我が国の核融合分野における学術研究に資する役割の強化が一層求められている現状に鑑み、大学共同利用研究の中核機関として大学との強い連携・双方向性の強化等が必要であり、運営体制や研究の対象範囲等の見直しを行い、研究計画の一層の活性化を可能とする制度設計の充実を図る必要がある。
 LHDの一層の活用のためには、LHDの研究計画を立案するシステムの工夫、共同研究委員会の機能改革等、共同研究の推進機能を強化する方策を検討することが必要である。また、炉心プラズマに外挿可能な無電流プラズマ装置としての特徴を生かした環状プラズマの閉じ込め改善、定常プラズマ実験等の分野で、トカマク計画との連携を強める必要がある。
 提案されている高速点火(FIREX)計画を中心とするレーザー核融合研究の分野では、大阪大学等との連携を図り、関連する共同研究を積極的に推進することが必要である。さらに、大学の先駆的・萌芽的研究とも密接に連携・協力し、核融合のための学術基盤研究の拠点として、また新たな可能性への挑戦の場の一つとしての役割を担うことが期待される。
 加えて、炉工学研究の包括的・総合的な推進が今後益々重要となるため、特に、核融合材料試験装置での国際的な共同研究を初めとして、ブランケット工学、超伝導コイル技術、安全性研究、核融合炉設計等の炉工学に関連した幅広い分野における大学の炉工学研究を、大学共同利用機関として取りまとめていく役割が期待される。

(2)法人化後の大学の役割

 大学における研究は、学術基盤に貢献することを目的に計画が進められてきており、数千名規模の研究者コミュニティを支えるための不断の人材育成において中心的な役割を果たしている。従って、今後の核融合研究の展開を図るためには、大学における研究の展望が的確に把握され、振興策を提示していくことの必要性が確認されている。しかしながら、個々の計画についての今後の方策の策定についての議論は、個々の大学の自律性と自主性を尊重し、特に法人化後の各機関における研究の方針によるところが大であることの認識が必要である。
 大学においては、学術研究の推進と学生の教育が2つの大きな柱と位置づけられており、トカマク、ヘリカル、レーザー、炉工学等と広範囲な研究の体系化と連携が必要な核融合研究分野においては、大学共同利用機関である核融合科学研究所との連携や日本原子力研究所との共同企画・共同研究を強め、大学の学術研究の基盤を維持しつつ、学生への研究指導を行う必要がある。さらに、これらの研究基盤を有効に活用するためには、双方向性を持つ共同利用・共同研究の積極的な推進が必要である。
 大学における研究としては、学内協力の推進等自主的に競争力を高める施策も実施し、研究拠点としての学術的評価を高めることが双方向性ある共同研究の受け皿となるためにも必須である。人材養成の上でも、世界的な研究ビジョンを持った新たなリーダーの育成を学生教育に並行して重視すべきである。
 そのため、核融合科学研究所や日本原子力研究所等とのより強い連携を図る等、大学における先駆的・独創的研究の積極的な支援の方策を共同利用・共同研究をベースとして進めることが必要である。

(3)日本原子力研究所及び新法人の役割と共同研究の強化

 日本原子力研究所については、国からの付託によるITERを中心とするトカマク型核融合システムの開発研究を推進する役割が求められており、核燃料サイクル開発機構との統合による新法人においても、ITER計画、トカマク炉心プラズマ開発、炉工学開発を我が国の中核的な機関として推進し、核融合開発研究に必要な人材育成を進めることが必要である。
 現在、日本原子力研究所では、トカマク(JT-60)等による研究を大学、核融合科学研究所の研究者等との共同企画・共同研究に供する努力がなされている。この一環としてJT-60では、一部の研究テーマのリーダーを大学等の研究者とし、日本原子力研究所と大学等が一体となって研究を実施する試みがなされており成果が上がっている。今後、ITERを中心として長期的な人材の育成が必須となる状況を踏まえ、これを発展させた共同研究の運営体制を構築することは、我が国の核融合開発研究に不可欠である。このため、JT-60をトカマク国内共同研究の中核として位置づけ共同研究を推進するとともに、ITERの動向を踏まえつつ、トカマク国内重点化装置への転換を図る必要がある。
 また、炉工学分野では、核融合材料照射試験装置計画を大学等との連携の下で推進する役割、ブランケット、超伝導、加熱・電流駆動を含む所要の開発研究を、我が国の中核機関として推進する役割が求められる。
 平成17年度に予定される独立行政法人化後も、新法人に期待される核融合開発研究の中核機関として果たすべき役割は、より一層強く求められる。従って、トカマク国内重点化装置への転換の前後に関わらず、新法人に課せられる開発研究の目標の達成と継続的な人材の育成をより効果的に進めるために共同企画・共同研究の運用体制を早期に確立することが強く望まれる。

(4)共同利用・共同研究促進について

 すでに述べたように、これまで長年にわたりプラズマ研究を担ってきた多数の実験装置を整理、重点化・効率化し、トカマク、ヘリカル、レーザー、炉工学の大型装置による展開、さらには新たな可能性への挑戦を図っていく中で、共同利用・共同研究の推進が極めて重要である。以下に具体的な2つの点を示す。

1.双方向的共同研究の促進

 各機関にある装置が整理、重点化される中で、大学や研究機関にある装置や研究環境を利用して、双方向的に共同研究を可能にすることが研究機会を増やすための重要な施策になるものと考えられる。従来の共同研究は、大学の研究者が大学共同利用機関を研究の現場として共同研究を行うことが想定されていたが、今後の核融合研究の発展のためには、その逆の研究者の動き、すなわち、共同利用研究機関の研究者が大学(講座、センター、研究所等)、研究機関等へ出向いて共同研究を実施することが両者の研究資源の相乗的な活用のために必要になる。そのため、双方向性のある共同研究を制度的に定める等新たな方策が必要になる。
 なお、具体的な課題として、大学での先駆的実験への他機関からの参加、LHD計画共同研究のようなシステム(大学-大学間の研究者派遣のサポート)、必要な研究経費等の拡充、日本原子力研究所等の研究機関への研究参加機会及び共同研究費の充実、等が挙げられる。

2.連携研究の実施

 これら共同研究の中でも特に、相当規模の人的資源、物的資源、知的資源を互いに有効利用する等の連携研究の方策については、特別な措置が必要になることが想定されるため、これを具体的に検討していくことが、共同研究の推進のために特に有意義であると考えられる。

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