○ 大学附置研究所・研究施設は、学部・研究科では困難な特定領域の研究の総合的な推進や、複数領域に跨る学際的・先端的な研究の開拓、大型研究装置・機器の開発研究、先導的知的基盤整備などを行っており、それらを駆使して世界的な研究を進めている。
○ その一方で、大学附置研究所・研究施設は、大学院教育に深く参画してきた。特に、大学院が重点化された大学では研究科と協力しつつ大学全体の教育・研究活動に多様性と先端性を付加することでその役割を広げてきた。実際、研究所等における大学院教育においては、学生は最先端の学問領域における実際の研究に参画できるばかりではなく、複数領域にわたる調査や研究を経験し、あるいは複数の学部や研究科に跨るような大型実験装置の開発やそれを用いた研究を経験することにより、専門的な知識を習得し、広い科学的・文化的素養を身につけ、社会が要求する課題を解決する能力を身につけることが可能となっている。このように、研究所等は学部・研究科と並んで、個々の大学が社会に対して持っている「教育と研究」の2つの責任を遂行する際の活力の源泉となっている。
○ 大学附置研究所・研究施設の中には、全国共同利用の特徴を有しているものがある。それらは、研究面では、国内外の研究機関との連携の中心となっており、学部・研究科などの学内組織を越えて複数の分野に跨る学融合的研究や大型共同研究を可能とし、大学を横断する研究活動の要の役割を果たしている。また、教育面では、世界をリードする先端的研究の現場で教育を実施することにより、高度な大学院教育が可能となっている。共同利用という研究交流の現場での教育も、多様な視点を持つ研究者等の育成に効果を上げている。
○ 大学共同利用機関法人と大学附置研究所等との連携の形態としては、例えば、次のようなことが考えられるが、具体的な連携の在り方に関しては、各機構において検討する必要がある。
○ 学術研究を行う大学共同利用機関は、国際レベルの優れた研究環境を有しているため、それを有効に活用して高度な専門能力を有する人材の養成を行うことが求められている。
○ 総合研究大学院大学は、大学共同利用機関と緊密な連係及び協力の下に教育研究を行う大学として設置され、大学共同利用機関を基盤として、その最先端の研究成果を大学院教育に活かすことにより、高い専門性と広い視野を持つ人材の養成を目指してきた。
○ 総合研究大学院大学が法人化後の各機構と緊密な連係及び協力の下に、これらを基盤とし、学術研究の新しい流れに先導的に対応した優れた研究者養成のための大学院教育を行うことは重要である。したがって、国立大学法人法等において所要の規定を整備し、また、大学共同利用機関法人においても、大学院教育への協力を正規の業務の一つとして明確に位置付ける必要がある。
○ 総合研究大学院大学と大学共同利用機関との連係及び協力が円滑に行われるためには、双方が法人化されることを踏まえ、併任教員の取扱いをはじめとする連係・協力の在り方について十分整理しておく必要がある。
○ 今後、基盤となる大学共同利用機関が4機構に再編され、新たな中核的機能を担おうとすることを踏まえて、研究科の構成の在り方や国際的競争力を向上する観点からの博士課程の見直し等に関する検討が望まれる。
○ 大学共同利用機関法人に対する運営費交付金は、組織規模や研究・事業活動状況を踏まえた最適な算出方法を検討する必要がある。
○ 大型のプロジェクト研究等特別な事業を推進するための経費についても、基本的には、運営費交付金及び施設整備費補助金により確実に措置すべきと考えられる。さらに、我が国全体の共同利用体制の整備推進を図る観点から、大学附置研究所等も対象に含めて、その他の資金がプロジェクト研究に振り向けられるための措置の可能性を検討する必要がある。
○ 科学技術・学術審議会のもとに委員会を置き、大学共同利用機関の在り方、分野間の適切な資源配分、大学附置研究所等との連携の在り方等について、学術全体の動向を踏まえ審議することが適当である。
○ 大学共同利用機関の4つの新機構法人が、相互の連携を強化するため、共通する課題について協議、企画、調整する自主的組織の設立を検討することが望まれる。
○ 法人化後の学術研究の推進体制に関して、国内外の研究動向を的確に踏まえつつ、各分野の学術研究を一貫性をもって推進する仕組みについて、中長期的な視点で、諸外国の例も参考にしながら調査研究することは有意義と考えられる。
研究振興局学術機関課