5.法人の制度

(1)法人の組織・運営システム

(管理運営組織の考え方)

○ 国立大学と密接な関係を有する大学共同利用機関の特性にかんがみれば、運営組織の考え方及び基本構造は国立大学法人を踏襲するものとした上で、以下の点を踏まえることが必要である。

  1.  大学共同利用機関は、国立大学の教員の共同利用・共同研究の拠点として、実態的には国立大学群の研究システム全体に不可分の組織として組み込まれた研究所ともいうべき機関であることから、国立大学長等が大学共同利用機関法人(仮称)の運営に参画すること。
  2.  法人化後の研究の方向性や研究計画等の決定については、機関職員の意向のみならず、研究者コミュニティの代表者を参画させるなど、利用者である研究者コミュニティの意向が反映されるような仕組みを維持すること。

○ 大学共同利用機関本来の自主性・自律性に加え、法人化に伴い運営上の裁量が大幅に拡大することを考慮すれば、意思決定過程の透明性の確保、役員間の適切な責任分担による一体的な運営、さらに適正な意思決定の担保といった観点から、大学共同利用機関運営上の特に重要な案件については、大学共同利用機関法人としての意思決定に際し、役員による合議制を制度的に導入することが適当である。

(管理運営組織の構成)

○ 管理運営組織に関しては次のようなシステムとすることが適当である。

  1.  主に研究及び共同利用に関する重要事項や方針を審議する評議会(仮称)と並んで、主に経営面に関する重要事項や方針を審議する運営協議会(仮称)を設け、そこに相当程度の人数の機関外有識者の参画を得る。
  2.  法人の長は、主に経営面に関する運営協議会の審議と、主に研究及び共同利用に関する評議会の審議を踏まえ、最終的な意思決定を行う。
  3.  ただし、特定の重要事項については、法人の長の意思決定に先立ち、役員会(仮称)(監事を除く役員で構成し、機関外者を含む。)の議決を経る。

(役員会)

○ 大学共同利用機関の役員の構成・名称については、法人化に当たって、4機構に再編成することとしていることから、「機構長(仮称)(=法人の長)」、「副機構長(仮称)」(複数名)、「監事」(2名)とする。

○ 役員の数については、国立大学法人の例を踏まえつつ、各機構の規模を勘案し、各機構ごとに適切に定める。

○ 機構長は、当該大学共同利用機関法人の最高責任者として、法人を代表するとともに、機構内の合意に留意しつつ、経営手腕を発揮し、研究・経営両面における最終的な意思決定を行う。

○ 副機構長は、機構長を補佐し、業務の一部を分担する。
 副機構長については、機構内から研究所長等を登用することなどが考えられるが、国立大学と同様に広く外部から大学共同利用機関の運営に高い識見を有する者を招聘することが必要である。

○ 役員会は、国立大学法人と同様に、監事を除く役員で構成し、経営及び研究の両面にわたり、中期目標・中期計画、予算、決算など特定の重要事項について、機構長の意思決定に先立ち議決を行う。

○ 監事は、法人の業務を監査し、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、機構長又は文部科学大臣に意見を提出することができることとする。実際の監査に当たっては、大学共同利用機関における学術研究及び共同利用の特性にかんがみ、基本的には各研究者の個々の研究内容については直接の対象とせず、研究分野ごとの研究の方向性や研究成果等について行うことが適当である。
 なお、監事のうち少なくとも1名は、大学共同利用機関の研究及び共同利用並びに機構運営に関し高い識見を有する機関外者から登用する。

(運営協議会)

○ 運営協議会は、機構長及び大学共同利用機関法人の経営に関する機関外の有識者及び経営に関する機構内の代表者(役員等)として機構長が任命する者で構成する。

○ 法人化後は、国の直接的な関与を制限する代わりに、公的な財政支出に支えられる機関として、国民や社会に対する説明責任が求められることから、納税者の代表としての民間の有識者も委員に選任し、監視する仕組みを整えることが必要である。また、大学共同利用機関は、国立大学の教員の共同利用・共同研究の拠点として、国立大学群の研究システム全体に不可分の組織として組み込まれた研究所ともいうべき機関であることにかんがみ、委員の一定数は、国立大学長等から選任することも適当と考えられる。

○ 運営協議会においては、主に財務会計(予算、決算、財産処分等)、組織編成、職員配置、職員給与、役員報酬など大学共同利用機関法人の経営面に関する重要事項や方針を審議する。

(評議会)

○ 委員は、機構長及び研究者コミュニティを代表する者として機構長が任命する者で構成する。

○ 委員数は、機構の規模(研究所数等)に応じた適切なものとし、機構内部及び外部の学識者(当該機構の業務に関連する研究に従事する者)からほぼ同数を選任する。

○ 機構長は、委員の任命に当たって、研究所長等に対して当該分野の委員候補者の推薦を求める。

○ 評議会においては、主に共同研究計画、共同利用、研究組織、研究教育職員人事など、研究及び共同利用面に関する重要事項や方針を審議する。

(研究組織)

○ 各機構における研究組織については、各機構の自主的な判断で柔軟かつ機動的に編成することにより、学術研究の動向や社会の要請等に適切に対応するため、内部組織は原則として法令に規定せず、各機構の予算の範囲内で随時設置改廃を行うこととする。
 ただし、研究所については、各機構の業務の基本的な内容や範囲と大きく関わるものであり、固有の業務を担う研究組織としてあらかじめ存在を明確にしておく必要があること、現行制度においても機構内の研究所について、名称及び目的が政令で規定されていることから、法令(具体的には省令)等で明確化する方法を工夫する。

○ なお、必要に応じて、運用上、当該研究所等の所長等候補者の推薦、研究所等の教員人事の選考、研究計画の企画等、当該研究所等に関わる重要事項を審議する運営会議(仮称)を各研究所に置く可能性を検討する。

(機構本部の機能)

○ 機構本部は、法人の事務全般(全体に関わる人事・予算・事業計画・評価・法務・渉外等)及びいくつかの研究所にまたがるような事業活動の企画調整(新規分野開拓・人材養成・大学附置研究所等との連携等)を行うことを主たる機能とする。

(2)法人の人事制度

(機構長の選考方法等)

○ 学術研究を担う機関としての自主性・自律性を確保するためには、業務を総理する機構長及び実際に学術研究を行う研究者の人事における自主性・自律性が確保される必要がある。このため、最終責任者であり職員の任命権を有する法人化後の機構長の選考に関しては、当該機関における選考機関の選考を経た上で、主務大臣が任命することが適当である。

○ 機構長は、経営・研究両面の最終責任者として、機構内の合意に留意しつつ、経営手腕を発揮することが求められる。このため、機構長には、研究面での高い識見を有すると同時に、法人運営の責任者としての優れた経営能力を有している者が選任される必要がある。

○ したがって、現行制度において、機関の長は、全員当該機関外の者からなる評議員会の推薦(運営協議員会の意見を聴いた上で)を受けて任命されることとなっている趣旨及び国立大学法人の学長選考方法を踏まえ、法人化後は、経営面についての審議機関である運営協議会と研究面での審議機関である評議会の双方の代表者からなる機構長選考委員会(仮称)において、機構長の選考基準、手続きを定め、機構長候補者を選考することとする。

○ 現行制度上、機関の長の任期は、再任の可否、再任を認める場合の任期を含め、教育公務員特例法により任命権者である文部科学大臣が機関の長の申し出に基づいて定めている。法人化後については、国立大学法人における中期目標の期間が原則として6年とされており、大学共同利用機関法人についても、国立大学法人との密接な関係から、原則として6年とすることが適当であることから、その範囲内で国立大学法人における検討を踏まえて定めることが適当である。

○ 法人の長としての機構長が不適任とされる場合には、国立大学法人の扱いと同様に一定の要件の下で文部科学大臣が、機構長の選考を行った機関の審査等の手続きを経て解任できるものとする。

(役員、研究所長の任免等)

○ 副機構長は、機構長を補佐し、その業務の一部を分担する者であることから、機構長が自らの責任において任命する。

○ 副機構長の任期の定め方については、機構長に任命されて、機構長を補佐し、業務の一部を分担するという職務の性格上、機構長の任期の範囲内とすべきである。

○ 監事は、機構の業務の適切な執行を担保するという職務の性質上、文部科学大臣が任免する。
 監事の任命に当たっては、機構の研究及び共同利用並びに機構運営に関し高い識見を有する者が選任される必要がある。

○ 研究所長等については、機構長が任命することになるが、その際、例えば、各機構の判断で研究所に置かれる運営会議において候補者を推薦すること等も考えられる。

○ 各研究所等の教員に関しても同様に、運営会議において選考すること等も考えられる。

○ 研究所等の教員の名称については、基本的には機構長の裁量に委ねられるものであるが、大学の教員との職務の類似性及び円滑な人事交流の必要性等を踏まえ、引き続き教授、助教授等の名称とし、資格要件も国立大学法人における制度を踏まえたものとすることが適当である。

○ 研究所等の技術職員については、研究所等の目的と実態に即した組織及び採用形態を工夫する必要がある。

(3)法人の目標・計画・評価

(中期目標及び中期計画)

○ 中期目標については、研究及び共同利用の自主性・自律性を尊重する観点から、国立大学同様、あらかじめ各機構が文部科学大臣に原案を提出するとともに、文部科学大臣が、この原案を十分に尊重し、また、大学共同利用機関の研究及び共同利用の特性に配慮して定める。
 こうした基本的考え方を制度的に担保するため、例えば、

  1. 機構から文部科学大臣への事前の意見(原案)の提出
  2. 機構の意見(原案)に関する文部科学大臣の配慮義務
  3. 機構の研究等の特性に関する文部科学大臣の配慮義務

 などの規定を「国立大学法人法」等で明確に位置付ける必要がある。
 また、中期計画については、各機構において、あらかじめ中期目標と中期計画の原案を一体的に検討しておいた上で、最終的に確定した中期目標に基づいて作成し、文部科学大臣が認可する。

○ 具体的に中期目標に記載すべき事項としては、大学共同利用機関の特性を踏まえ、次のとおりとすることが適当である。

  1. 中期目標の期間
  2. 機構全体としての基本的な目標
  3. 機構の研究及び共同利用等の質の向上に関する目標
  4. 業務運営の改善及び効率化に関する目標
  5. 財務内容の改善に関する目標
  6. 社会への説明責任に関する目標
  7. その他の重要目標

○ 具体的に中期計画に記載すべき事項としては、大学共同利用機関の特性を踏まえ、次のとおりとすることが適当である。

  1. 機構の研究及び共同利用等の質の向上に関する目標を達成するためにとるべき措置
  2. 業務運営の改善及び効率化に関する目標を達成するためにとるべき措置
  3. 財務内容の改善に関する措置
  4. 社会への説明責任に関する措置
  5. その他の重要目標に関する措置

(評価)

○ 大学共同利用機関の特性を踏まえ、より効率的・効果的な評価を実施するため、国立大学と同様に国立大学評価委員会(仮称)により評価を行う。
 国立大学評価委員会は、評価事項のうち、教育研究に関する事項について、評価に先立って、大学評価・学位授与機構の意見を聴き、尊重する。なお、具体の方法、手続き等については、国立大学法人と同様とする。

(注)平成14年3月26日の最終報告で既に提言されている事項についても、大学共同利用機関の法人化の制度設計の全体像を把握できるように必要な範囲で記述している。

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