1.大学共同利用機関の設立経緯・実績

○ 大学共同利用機関は、昭和46年に高エネルギー物理学研究所を第1号として発足し、我が国独自の方式として、各々の分野において高度な学術研究を進めることのできる中核的な研究拠点として発展してきた。その精神は、昭和44年8月の学術審議会答申に示されているとおり、「大学における研究と同様の基礎科学の研究を行い、かつ、国立大学の教員その他の者でこの研究所の目的である研究と同一の研究に従事する者に利用させるものとして設置するものとし、文部省直轄の国立研究所とする。なお、この研究所は、大学院の学生の教育に協力するものとする。」である。

○ 現在までに、種々の学術分野の要請に基づき、15機関18研究所に拡充されたが、これは我が国の学術研究に対する研究者コミュニティ(国内外の関連分野の研究者群)が国際水準の発展を目指して努力する過程で必須の機能として求められ、それが学術政策に反映されたものであるといえる。この趣旨は、昭和59年2月の学術審議会答申の「共同利用機関が必要かつ有効と考えられるにもかかわらず未設置である分野については、今後、研究動向等を勘案しつつ附置研究所、所轄研究所等の転換も含め計画的にその整備を図る必要がある。」との提言に示されているとおり、我が国独自の学術研究の発展を実現することにある。

○ 大学共同利用機関では、当該機関外の学識者による評議員会、外部の学識者も含む運営協議員会が設置され、所長の推薦、共同利用計画の立案、教員の人事等、研究者コミュニティの意向を反映した形での必要な施策が効率的に実施されており、我が国のそれぞれの学術分野の振興に必要とされる共同利用・共同研究を推進してきた。また、我が国の研究拠点としての機能を果たすことはもちろん、種々の学術協定等に基づく国際協力を推進する役割も担ってきた。

○ 大学共同利用機関が複数の分野で長期にわたって成果を創出し続けることができたことについては、大学共同利用機関であるが故の研究者コミュニティとの関係に着目する必要がある。大学共同利用機関は、研究者コミュニティの求めに応じて可能な限り共同研究の機会を提供してきている。その結果、大学と大学共同利用機関双方の研究者にとって、多くの成果が得られ、その分野の学術基盤が着実なものになってきたと評価できる。これは、典型的なボトムアップ的手法に基づく研究の進め方の成果である。

○ 重要な点は、大学共同利用機関が共同利用・共同研究を通して、研究者コミュニティから厳しい評価に常にさらされているという点である。この点は、学会等での評価の定まり方に負うところはもちろん、制度的には、運営協議員会とその下の共同研究委員会によって担保され続けてきた大きなシステム上の特徴といえる。単なる利用者と研究拠点の関係に止まらないこの緊張感のある研究者コミュニティとの関係により、それぞれの分野の研究の健全性が維持され、国際的にも高い評価の得られる多くの研究成果の創出に結びついているといえる。

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