研究種目の見直しに関しては、国際共同研究の支援や若手研究者育成の充実の観点から審議を行ったが、これ以外の事項についても、研究種目の見直しに関連して様々な意見がある。
現時点において、例えば、科学研究費補助金全体の予算額を増やす戦略、シームレスなファンディング体制の構築、特定領域研究の在り方の見直し(1伸び盛りの若手研究者による新しい分野の研究計画支援のための別枠の設定、2特定領域研究の審査方法の見直し、3我が国の学術の振興上重要な研究分野・研究領域等の支援の在り方)、萌芽研究の見直し、女性研究者の支援、新興・融合領域への対応、基礎研究の成果を実用化まで繋ぐ仕組み、「大学改革」や「教育問題」など政策関連の研究課題へのトップダウン的・政策的手法の導入、純粋なボトムアップ型では必ずしも対応できず、かつ応用開発研究などの他の競争的研究資金とは目的を異にした「明日の応用研究開発のシーズを生み出す」ような重要な研究分野・研究内容の政策的支援などがある。
本部会は、今後これらの提案の問題点の所在を吟味し、審議すべき事項を整理した上で、更に検討を進めることとしている。
近年、評価制度が充実されつつあり、評価結果を研究の支援にどのように反映していくかが新たな課題として生じてきている。
つまり、中間・事後評価は、当初は研究費が有効に活用されているかという観点からのチェック機能に力点が置かれて実施されてきたが、今日では、更に、こうした評価で優れた成果を挙げていることが認められる場合に、中間評価の場合にあっては残りの研究期間における研究費の増額、事後評価の場合にあっては研究支援の継続といった、研究者にインセンティブを与えるべきではないかとの議論がなされているのである。
また、政府全体の競争的研究資金の制度は年々増加し、平成17年度には政府全体で37制度、文部科学省所管のものだけでも13制度と、その数が増大している。
このような状況にあって、近年、限られた研究費を有効に活用できるようにするため、文部科学省内ばかりでなく、府省を越えて政府全体で、各研究費制度に共通した統一ルールを定め過度の集中や不合理な重複を避けようとするほか、制度間の調整の一方策として、ある研究費の支援を受けた後、その評価結果に応じ、他の研究費を受けるようにしていくことが求められるようになってきている。
因みに、こうした異なる制度による支援の継続の必要性は、基礎研究の中から応用の可能性を有する成果が生じた場合にも見られるものである。すなわち評価結果を踏まえて、基礎研究から応用を目的とする他の制度の支援に繋ぐことが求められるようになってきている。
他方、評価を受けた研究者の側には、中間・事後評価に多くの労力と資源を投入しているにもかかわらず、良い評価を得てもその後の研究費の配分に必ずしも反映されていないことから、こうした状況の改善を求める意見がある。
このようなことから、本部会では、評価結果を踏まえた支援の在り方について検討を開始し、以下の結論を得た。
現在科学研究費補助金における中間評価においては、最もよい評価を得たとしても「このまま研究を続ければよい」だけである。仮に中間評価で特に優れていると認められた研究や格段の成果が上がっている研究については、研究費の増額を認め、あるいは次回の新規の応募における審査の際に特典を与えるなど、研究者に対してインセンティブを与える様々なオプションを用意できれば、研究者も意欲的に研究に取り組むことになると考えられる。良い事後評価を得た場合にも、それがその後の研究費の審査に有利に働くとすれば同様である。
また、審査の場において他の適切な制度に連絡をとり、割り振ることができれば、貴重な研究資金を一体的に有効に活用するという観点から非常に有益であると考えられる。さらに、基礎研究の成果を実用化まで繋ぐ仕組みができるのであれば、研究開発の効率化の観点から好ましい。
科学研究費補助金制度において、中間・事後評価の結果が良いものについて、研究費の増額や、次の支援に繋げることについては、以下のように考える。
まず、中間評価の結果の反映については、特別推進研究や特定領域研究といった長期にわたる大型の研究種目については、執行面の工夫によりできるだけ配慮すべきであると考える。また、事後評価の結果の反映については、少なくとも新たな応募の審査に参照できるようにすべきであり、応募書類には、これまで受給した科学研究費補助金やそれ以外の資金にかかる事後評価内容を記載させることとすべきである。
しかし、例えば、科学研究費補助金の審査を行う側の判断で、特定の応募について、異なる制度に割り振るような制度をとることについては、実施に当たり解決すべき課題が多々あるものと考える。
例えば、競争的研究資金の各制度はそれぞれ募集の趣旨・条件や研究分野などの対象範囲において重点の置き方が異なっており、応募した本人の意思や他の制度の審査会の意向と合致できる場合は非常に限定的なものと思われる。
また、各制度とも採択率は必ずしも高いわけではなく、応募のあった特定の研究課題を他の制度に回付することを助長することも考えられ、それを受け入れるべきとした場合には、受け入れる制度において審査の公平性が問題とされることが想定される。さらに、審査の時期や日程の違いから、審査業務の円滑な運営に支障を生じさせることも考えられる。
このようにいわゆる「制度間のつなぎ」に関しては様々な課題がある。しかし、実現した場合の様々なメリットを考慮し、今後は、具体的事例を十分検証しながら、検討を継続すべきであると考える。
前期(第2期)の本部会においては、募集・審査の在り方の見直しについて審議し、昨年12月の報告において、次の点を指摘した。
このため、今期(第3期)の本部会では、今後審査評価を充実していくためには、現状の何をどのように変えて体制整備を進めるべきかについて検討する必要があり、審議事項として、1.審査評価結果の開示の在り方、2.評価体制の望ましい規模、3.若手研究者の審査員への登用の方策、4.審査員の育成、5.審査への貢献に対する評価の在り方の5つを掲げた。
本部会では、個人情報保護法との関係における情報開示の在り方について審議を開始したところであり、今後も引き続き審議を行っていくこととしている。
審議事項のうち、これまで審議を行っていない、「研究成果発信のための方策」については、今後審議を開始することとした。
研究振興局学術研究助成課企画室