4 年複数回応募の試行

(現状と問題点)

 年複数回応募の実施に関しては、前期(第2期)の本部会において審議され、2回にわたって報告を行っている。
 平成15年5月に報告した「科学研究費補助金制度の評価について」においては、迅速かつ機動的な研究助成という点では利点もあるが、一方で、同じ応募を何度も繰り返すなど応募件数の増加も予想され、その実現には審査・事務体制の充実をはじめ、解決すべき課題も多く、引き続き十分な検討が必要であるとした。
 平成16年12月に報告した「科学研究費補助金の在り方について(報告)」においては、「仮に、全員に対して複数回の公募を行うこととなれば、例えば、1回目の公募において採択されなかった研究者が2回目の公募においても応募できることとなり、配分機関の作業量が2倍になるばかりでメリットが少ない。」、「また、試算型を採る基盤研究の審査においては、初回の応募分と公平感を持たせて審査するための方法が問題となる。」、「さらに、現状の審査評価体制を前提とした場合、予算単年度主義の原則の適用除外や複数回の公募のための予算額の倍増、審査評価体制の抜本的な拡充等がなければ、それに費やす労力に比してメリットが少なく現実的でない」ことから、「審査評価・事務体制の充実など、解決すべき課題も多く、現状においては全ての者に複数回の応募を認めることは適当でない」とした。
 ただし、上記の平成16年12月の報告においては、「研究者が科研費を有効に使えるようにするという観点に立てば、複数回の応募ができれば好ましいことであって、その必要に応じ体制を整えるべきとの意見もある」ことから、「年度途中に応募資格を得た研究者や、外国から来た研究者など、限られた人数を対象とするのであれば、柔軟性を持った運用を行うことにより、年複数回応募の導入を検討する余地もある」とし、その実施方策を今後更に検討することとした。

(年複数回応募の実施方法)

 このようなことから、本部会において、限られた人数を対象とする年複数回応募の実施方法について審議し、概ね次のような方法で試行することが望ましいとの結論を得た。

  1. 年複数回応募は、当面、研究種目「特別研究促進費」により試行することが望ましい。
  2. 対象者としては、公募終了後(現状では毎年11月)に応募資格を得た者が想定されるところである。このほか、さきの「(現状と問題点)」で述べたように「研究者が科研費を有効に使えるようにするという観点に立」って「柔軟性を持った運用を行う」上では、育児休業等により研究活動を中断していたが、これを終えて公募終了後に研究現場に復帰する者への対応も必要であり、これらの研究者に限って応募を認めることが適当である。
  3. 研究内容や研究費の規模は、基盤研究(A)、基盤研究(B)及び基盤研究(C)相当のものについて認めることが望ましい。なお、上記2.で挙げた「育児休業等により研究活動を中断していたが、これを終えて公募終了後に研究現場に復帰する者」が応募する可能性が高い研究種目としては、「若手研究」が想定されるところであり、37歳以下の者にあっては、若手研究(A)、若手研究(B)相当のものについても認めることが望ましい。
  4. 研究期間は相当する研究種目と同様に、基盤研究相当のものについては2~4年、若手研究相当のものについては2~3年とすることが望ましい。
  5. 審査は日本学術振興会が行う二段審査制相当の方法で実施することが望ましい。審査に当たっては、審査部会の審査担当委員、学術調査官、事務局が連携を密にして行うことが望ましい。
  6. 試行により、複数回応募を実施するために必要な問題点等の把握に努めることが適当である。

 なお、複数回応募の試行を実施に移すまでには、予算の確保、審査評価体制及び事務体制の構築などについて、様々な課題が生じてくるものと考えられることから、配分機関である文部科学省においても実現に向けて適宜検討して適切に対処することが望まれる。

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