科学研究費補助金の在り方について(中間まとめ) はじめに

 今をさかのぼること10年、科学技術基本法が平成7年に制定されて以来、我が国は、科学技術創造立国の実現に向けて種々の取組を着実に進展させてきた。
 その中心的な役割を担ってきたのは、同法に基づく科学技術基本計画である。
 同基本計画は、平成8年にはじめて策定されたものであるが、特に本年は第2期の最終年に当たっていて、平成18年からは第3期の基本計画に基づく取組が進められることとなっているところであり、その意味で、我が国の科学技術政策は一つの大きな節目を迎えつつあるといえよう。
 ここで今一度、現行の第2期基本計画を振り返ってみると、同計画においては、21世紀を展望しつつ、我が国の科学技術政策の基本的な方向として目指すべき国の姿として「知の創造と活用により世界に貢献できる国」、「国際競争力があり持続的発展ができる国」、「安心・安全で質の高い生活のできる国」の三つの理念を示した上で、これらの国を実現するため、科学技術の戦略的重点化、優れた成果の創出・活用のための科学技術システムの改革が重要な柱として掲げられたところである。また、第2期基本計画において打ち出された方針を踏まえ、総合科学技術会議においても様々な提言がなされている。
 とりわけ、我が国の科学技術の発展を支える重要な制度である競争的研究資金についてみても、第2期基本計画では、期間中の競争的研究資金の倍増を目指す旨がうたわれ、総合科学技術会議からは「競争的研究資金制度改革について(意見)」(平成15年4月21日)、「競争的研究資金制度の評価」(平成15年7月23日)といった提言の中で、若手研究者の活性化に向けた制度整備やプログラムディレクター(PD)、プログラムオフィサー(PO)による一元的管理・評価体制の整備、競争的研究資金の効率的・弾力的運用のための体制整備の必要性等が指摘されている。
 しかし、科学技術や学術を取り巻く環境の変化は、上記のようなことにとどまるものではない。
 近年の関連動向を見てみると、例えば、国立大学や公的研究機関の法人化が挙げられる。
 この法人化は、国立大学等の研究環境にも大きな変化を招来したものであり、結果として、競争的環境の醸成が進み、大学等の活性化をもたらしたことは確かである。しかし他面、長期的観点に立った研究環境の維持・向上にとって、様々な課題が生じており、科学研究費補助金の在り方をめぐっても大きな影響をもたらしている。本部会としてはこのような問題意識に立って科学研究費補助金に係る諸問題について検討を重ね、意見のとりまとめ・公表を行ってきたところである。
 このような中、昨年6月の中間まとめにおいては、科学研究費補助金が学術研究を対象としていることを踏まえ、応募資格の見直し、独立した配分機関体制の構築、研究種目の構成の見直し(重複応募制限の見直し)、不正な行為の防止について一定の結論・方向性が得られ、これに基づき所要の制度改正が行われたところである。
 以上のことを踏まえた上で、今回は、科学研究費補助金をめぐる喫緊の課題について審議を行ったところであり、いくつかの事項については後に述べるように一定の結論を得るに至ったところであるが、本部会としては今後とも科学研究費補助金に関する不断の見直し・改善を進めていくこととしているところである。

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