4.既存の附置研究所等の具体的な見直しの結果

○ 第3章に示した既存の附置研究所等の見直しの考え方に基づき、既存の58附置研究所及びこれに匹敵するような実態を有する研究施設に関して実態把握を行い、その結果を分析するとともに、多様な観点から選択した附置研究所及び研究施設に対し、活動状況等に関するヒアリングを行った。その結果、特記すべきことについては、以下のとおりである。

○ なお、今回の既存の附置研究所の見直しは、検討期間の制約があった中で、多様な観点から9つの附置研究所(東京大学社会情報研究所、東京大学史料編さん所、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、東京工業大学原子炉工学研究所、富山医科薬科大学和漢薬研究所、京都大学エネルギー理工学研究所、京都大学木質科学研究所、京都大学経済研究所、大阪大学社会経済研究所)を選び、これらについてヒアリングを実施した。したがって、以下に示す個々の附置研究所の問題点等は、今回ヒアリングを実施しなかった附置研究所においても該当する可能性があることについて、十分留意する必要がある。

○ 今後、本報告を参考にしつつ、各大学において、それぞれの研究所や研究施設の在り方について積極的な検討が行われることが望まれる。

(1)附置研究所の状況

1.目的の重要性

○ 附置研究所は、常に学術の動向を踏まえながら、その目的や研究方針の不断の見直しが求められている。ほとんどの附置研究所は、外部評価等の結果を踏まえながら、また、全国共同利用の附置研究所にあっては、利用者や共同研究者の意向を踏まえながら、組織の見直しを行っていたが、東京大学社会情報研究所や大阪大学社会経済研究所など、組織としての研究所の活動状況が十分に見えず、組織の見直しが長期間にわたって行われていない例も見受けられた。

○ また、東京工業大学原子炉工学研究所については、国の原子力政策に留意しつつ積極的に対象分野の見直しを図り、学術的な役割を一層明確にすることが必要と考えられる。

2.活動の全国的な意味

○ 全国共同利用の附置研究所については、研究活動等状況調査に基づき、運営や共同研究テーマの選定などに学外研究者が加わる運営協議会等の設置、共同研究の実施状況などについて分析した結果、特に大きな問題点があると思われる研究所は見られなかった。

○ すでに第1章でも言及したとおり、学術推進体制の充実の観点から、これまでも附置研究所の共同利用化が促進されてきたところであるが、今後大学が法人化する中で、全国の研究者のより積極的な利用を促進するため、その位置付けについて検討することが適当なものが見られる。
 例えば、東京大学史料編さん所については、所有する歴史史料の価値は非常に高いものがあり、全国の研究者による利用を促進する方策を積極的に検討するとともに、共同利用化の可能性を含めて見直しを行っていく必要があると考えられる。

3.組織性

○ 附置研究所は、当該分野の研究を推進する上で、全国的な役割を有しつつ、新たな領域の開拓や継続性を持った長期的な研究を進めるとともに、大学の基本的な組織として位置付けられることから、これらの機能を十分に発揮するためには、一定の人的規模が求められるところである。東京大学社会情報研究所のようにかなり小規模な組織では、法人化後、附置研究所として期待される役割を十分に果たすことは難しいと思われる。なお、同研究所では、現在人材養成への取組みを実施し、大学院に転換する方針を有しており、この方針は妥当なものと考える。

○ 富山医科薬科大学和漢薬研究所については、教官数が比較的小規模ではあるが、研究体制の充実に向け、大学の強い意欲や地域の大きな期待が伺われるところであり、今後の大学の取組みを見守ることが適当と考えられる。

○ また、京都大学木質科学研究所のヒアリングにおいては、既存の研究施設との再編・統合による新研究所の設置構想が示されたところである。このような新たな構想については、今後大学において十分な検討が行われるとともに、更に学術分科会等の場において検討することが適切であると考える。

(2)研究施設の状況

○ 研究施設については、人文社会系、理工系及び生物系の各分野において、ある程度の規模を有し、活発な研究を行っている京都大学東南アジア研究センター、東京大学先端科学技術研究センター及び熊本大学発生医学研究センターについてヒアリングを行った。これらについては、それぞれ重要な課題について十分評価できる研究活動を展開していることが認められる。

○ このうち、特に東南アジア研究センターと先端科学技術研究センターについては、いずれも附置研究所と比べて遜色のない活動内容と考えられるが、附置研究所への移行を考える場合には、東南アジア研究センターについては、関係機関や関連研究者との関係を整理した上で、地域研究という学問分野全体における役割をより明確にしていく必要がある。
 また、先端科学技術研究センターの場合は、COE性、組織性など附置研究所となる要件は十分満たしているが、当該組織の設置目的等を明確にする必要がある。

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