1.附置研究所及び研究施設の現状等

(1)設立経緯及び現状

1 附置研究所

○ 昭和24年5月の国立学校設置法制定により、明治以来それまで勅令等により設立されていた研究所については「国立大学に研究所を附置する」と規定された。これが現在の附置研究所の嚆矢であり、この時点で48を数えた研究所は、学術の進展に伴い増加し、昭和49年の富山大学和漢薬研究所(当時)の新設で74研究所に達した。しかし、その後は、純粋に新設されることはなくなり、改組等により組織の活性化を図る一方で、大学共同利用機関や大学院等へ移行する研究所も見られ、平成14年度現在で58研究所となっている。

○ 戦前に設置された研究所は、当時の国家目的遂行のために役立つ研究を直接の目的として設立される傾向が強かったが、戦後設置された研究所の設立経緯は、大学の研究施設から研究所になったもの(大阪大学たんぱく質研究所等)、日本学術会議から政府に対する設置要望があったもの(東京大学海洋研究所等)、他の附置研究所等と統合したもの(東北大学多元物質科学研究所等)など多様である。

○ また、附置研究所の中には、大学共同利用機関として発展したもの(東京大学宇宙航空研究所→宇宙科学研究所、東京大学原子核研究所→高エネルギー加速器研究機構   等)、大学院等へ移行したもの(京都大学食糧科学研究所等)など、時代の要請等に的確に応えるため、附置研究所から設置形態を変えたものもある。

○ 教官定員の規模も様々であり、最大172人(東京大学生産技術研究所)、最小14人(東京大学社会情報研究所)となっている。

○ 現在、附置研究所を設置している大学数は、97の国立大学中、20大学(全体の約21%)である。

2 研究施設

○ 昭和24年5月の国立学校設置法制定により、それまで学内措置等で設置されていた研究施設については「国立大学の学部に研究施設を置く」と規定された。しかし、その大半は病院や農場・演習林であり、現在の研究施設に相当するものは3施設しかなかった。昭和39年度に附属病院、教育施設、研究施設という区分が明確化され、この時点で研究施設は89施設にまで増え、10年後の昭和49年度には209施設に達した。その後を10年おきに見ると、昭和59年度が320施設、平成6年度が404施設で着実に増加しており、平成14年度現在で482施設となっている。

○ また、教官定員の規模は、10人未満の小さなものが全体の84%であり、大きなものとしては、東京大学先端科学技術研究センターの45人が最大で40人台の施設は他になく、30人台が3施設、20人台が10施設という状況である。

○ 研究施設は、以下の類型に分類される。

ア.全国共同利用施設(筑波大学計算物理学研究センター等27施設)
 ・大学の学部等から独立した施設で、大学の枠を越えた全国の当該分野の研究者の共同利用に供し、研究等に資する施設である。

イ.学内共同教育研究施設(名古屋大学物質科学国際研究センター等322施設)
 ・大学の学部等から独立した施設で、学内の研究者の共同利用に供し、研究等に資する施設である。

ウ.学部附属教育研究施設等(大阪大学大学院工学研究科附属超精密科学研究センター等133施設)
 ・大学の学部等の教育研究を支え、特定目的の研究等に資する施設である。

○ また、上記の研究施設の中には、大学における研究基盤及び研究支援機能を提供する施設も含まれている。

  • 情報処理施設(43施設)
  • 共同研究センター(64施設)
  • 動物実験施設(39施設)
  • 遺伝子実験施設(33施設)
  • アイソトープ総合センター(21施設)
  • 機器分析センター(40施設) 等

なお、厚生補導を目的とする保健管理センター、主として教育を目的とする留学生センター、生涯学習教育研究センター等は、従来から研究施設とは区別されており、検討の対象とはしていない。

(2)基本的特徴

1 附置研究所

(大学における位置付け)

○ 附置研究所は、特定の研究領域に特化して、あるいは新たな研究領域の開拓を目指して、集中的に研究を深めたり、一定の広がりのある研究領域を対象に継続性をもって長期的に研究を進める機関として意義がある。

○ また、附置研究所は、大学の基本組織である学部及び研究科と並ぶ組織として位置付けられており、大学の特色や個性を打ち出す重要な役割も果たしている。さらに、全国共同利用の附置研究所(平成14年度現在で19研究所)は、当該分野の研究者コミュニティのための中核的研究拠点としても位置付けられている。

(研究の対象等)

○ 附置研究所の設置目的のほとんどが当該分野の学理(学問上の原理・理論)及びその応用の研究、あるいは当該分野の総合研究であり、中・長期的視野に立ち学問分野を確立すべく継続的に高度の研究を推進している。したがって、附置研究所自体に時限を付すことはない。なお、研究所に置かれた研究部門や附属施設には一定期間後に適切な評価を行い改廃する時限付き組織とされているものもある。

2 研究施設

(大学における位置付け)

○ 研究施設は、学部及び研究科において、それぞれの特定目的の研究を推進するために附属の施設を設置したのが始まりであり、その発展形態として、一部局を越えて学内の共同利用に供するために学部等から独立した組織(学内共同教育研究施設)や、大学の枠を越えて全国の当該分野の研究者の共同利用に供する組織(全国共同利用施設)が整備されている。

(研究の対象等)

○ 研究施設は、各大学の戦略に基づく先駆的・先導的研究を推進する拠点であることから、短期的な達成目標を掲げつつ段階的な研究展開を図るものや、緊急対応的な個別課題の解決に向けた研究体制を機動的に形成しているものが多く、これらの施設には時限が付されている。一方、継続的な観測等を行う施設や各大学における研究基盤及び研究支援機能を提供する施設には時限は付されていない。

(3)附置研究所に関するこれまでの政策

1 共同利用体制の確立

○ 大学における研究体制については、近年における学術研究の発展、特に研究手段や研究手法の高度化等に伴い、多くの研究分野で研究者が共同して研究を進める必要性とその有効性が格段に増大している。

○ さらに、経費や人材等の効率的な活用を図る観点からも、施設設備の共同利用や研究情報の相互利用等を積極的に推進することが要請されている。

○ このような状況に対応するために、学術審議会(現在の科学技術・学術審議会)の答申等に示された方向に沿い、学術研究の動向、社会的要請等を考慮しながら、共同利用体制の一層の推進を図っている。平成14年度現在、58研究所のうち19研究所が共同利用化されている。

○ 附置研究所の共同利用化にかかる検討の視点は、
 ア.研究所全体のコンセンサスが得られていること、及び、大学として、共同利用化することの了承が得られていること(大学からの概算要求として提出されていること)
 イ.日本学術会議、各種学会、他大学関係者等、学外からの強い要望があること
 ウ.共同研究の実績、施設・設備等研究環境の状況、共同利用化の緊急性・必要性
 エ.大学共同利用機関との関係
等である。

○ 全国共同利用の附置研究所は、政令に共同利用の研究所として明記され、研究所には運営協議会を設置し、管理・運営について、学外の意見を取り入れるシステムが構築されている。また、共同研究者のための共同研究費、共同研究旅費等が措置されている。

2 研究組織の弾力化(大部門制)

○ 附置研究所には、通常、研究上の基本的な組織として、当該研究所の研究に関連する研究課題ごとに研究部門が置かれていたが、近年の学術研究の多様化、複合化、大型化等の急速な進展を背景に、従来の研究部門より規模が大きく、隣接の課題を大くくりに担当する組織(いわゆる大部門)によって研究を推進することが必要かつ適当なケースが増えてきている。

○ そのため、従来の複数の研究部門を一つに統合するほうが、当該研究分野の研究動向等に的確に対応できるものについて、大学からの要求に基づき、適宜改組が進められてきた。附置研究所における大部門制は、昭和53年に一橋大学経済研究所に初めて導入されて以来、平成14年度現在、58研究所のうち52研究所に導入されるに至っている。

○ 大部門制のメリットとしては、隣接した研究分野の研究者によって研究部門を構成することにより、共同研究を容易にし、新分野、境界領域の学問にも対応しやすいこと、また、隣接した研究分野の研究者との交流が容易になることにより、研究者の視野を広げやすいことなどが挙げられる。

3 流動性の促進(客員研究部門)

○ 客員研究部門は、学問体系の流動化やそれに伴う開かれた研究の要請に対応し、学際領域の研究や関連する学問分野が複雑に交錯する研究等を進めるため、固有の定員を配置せず他大学等の研究者を充てる研究部門として設けられたものである。平成14年度現在、58研究所のうち55研究所で客員研究部門を有している(客員研究部門以外で客員研究員を受け入れている研究部門も含む。)。

○ 客員研究部門は、
 ア.附置研究所の既設部門における研究、又は附置研究所のプロジェクト研究等を効果的に推進するため、必要に応じ境界領域等の関連分野から研究者の参加を得ることができる。
 イ.附置研究所の研究水準を高めたり、柔軟で創意あるアイデアを導入するために、必要に応じ当該組織の専門とは異なる分野の研究者を研究計画の立案等に参画させることができる。
 ウ.外部の研究者との密接な連携を保つことにより、効果的な共同研究を推進するための研究の組織化を図ることができる。
というような利点を有している。

お問合せ先

科学技術・学術政策局政策課

(科学技術・学術政策局政策課)