大学図書館の整備について(審議のまとめ)-変革する大学にあって求められる大学図書館像- 概要

(平成22年12月 科学技術・学術審議会 学術分科会 研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会)

1.大学図書館の機能・役割及び戦略的な位置付け

(1)大学図書館の基本的機能

  •  大学図書館は、大学における学生の学習や大学が行う高等教育及び学術研究活動全般を支える重要な学術情報基盤の役割を有しており、大学の教育研究にとって不可欠な中核を成す総合的な機能を担う機関の一つ。

(2)環境の変化と大学図書館の課題

1.電子化の進展と学術情報流通の変化

  •  インターネット上の多様な情報資源に対して、学生、教職員が容易にアクセス可能となるなど情報環境が変化。学術情報流通においても、主要な海外学術雑誌が電子ジャーナルとして普及。

 2.大学を巡る環境変化

  •  18歳人口の減少、国立大学の法人化、国公私立大学の基盤的経費の削減傾向等により、我が国の大学は全体として厳しい環境。
  •  大学図書館は、学習、教育、研究活動の変化や新しい動向に対応し、より効率的な支援の展開とともに、利用者の情報リテラシー能力の向上に積極的に関与することが望まれる。

(3)大学図書館に求められる機能・役割

1.学習支援及び教育活動への直接の関与

ア.学習支援

  •  学生が自ら学ぶ学習の重要性が再認識され、ラーニング・コモンズ、大学図書館職員等によるレファレンスサービス、学習支援が重要。 

イ.教育活動への直接の関与

  •  情報を探索し、分析・評価し、発信するスキルを一層高める情報リテラシー教育は、大学図書館が主体となって取り組むことが求められており、カリキュラム開発や実施を教員と協同して行うだけでなく、図書館職員が教員を兼任するなどして、直接授業を担当することも視野に入れるべき。また、e-Learningへの貢献が期待される。

2.研究活動に即した支援と知の生産への貢献

  •  研究活動支援は、学術雑誌、図書等研究を進めるうえで必要な情報を確保することであり、いわゆるe-ScienceやCSIのシステムの構築・運用に当たって大学図書館側からの貢献も期待される。
  •  機関リポジトリは、研究者自らが論文等を登載していくことにより学術情報流通を改革するとともに、その公開の迅速性を確保。同時に、大学等における教育研究成果の発信を実現し、社会に対する教育研究活動に関する説明責任の保証や、知的生産物の長期保存などを図る上でも、大きな役割を果たすもの。今後、大学全体におけるリポジトリ事業の位置付けの明確化、大学図書館業務としての定着、システム構築と維持体制の整備などが課題。

3.コレクション構築と適切なナビゲーション

  •  従来は教員に負うところが大きかった学術図書等のコレクション構築において、図書館職員の果たす役割も増大。また、大学図書館の業務は、電子化された学術情報へのアクセス確保のための外国出版社等との調整や交渉へと大きく変化。さらに、既存のコンソーシアム連携により、電子ジャーナルの効率的な整備に向けた体制を強化するため、関係機関等の協力が必要。
  •  大学図書館には、多様な学術情報への的確で効率的なアクセスを確保することが求められており、例えばディスカバリーサービスのような、より適切で効果的なナビゲーションの在り方を検討することが重要。

4.他機関・地域等との連携並びに国際対応

  •  大学図書館の役割を果たすためには、学内の多様な組織との連携の他、学外の関連機関との連携も重要。また、MLA連携や公共図書館との連携も重要。
  •  大学の国際競争力向上の観点から、大学図書館においても、海外の大学図書館との連携や職員の国際対応能力の向上等を図ることが必要。

(4)大学図書館の組織・運営体制の在り方

1.各大学における戦略的な位置付けの明確化

  •  大学図書館は、その果たすべき役割・機能の変化を踏まえ、中・長期的な将来計画を策定し、全学的な理解を得ることを通して、大学全体の将来構想並びにアクションプランの中で、重要な学術情報基盤としての大学図書館の戦略的な位置付けを明確化し、学内外にアピールしていくことが重要。また、図書館長の学内的な位置付けを高めるとともに、リーダーシップを発揮できる体制の構築が必要。
  •  大学の認証評価機関等が大学図書館に関する評価を行う際、従来の施設としての観点のみならず、学習支援や教育研究に関する機能の観点から評価することを期待。

 2.財政基盤の確立

  •  大学図書館の機能を維持・向上させるため、各々の大学の教育研究の特色を踏まえた戦略的で安定的な経費の確保策を策定し、その実現を図ることが必要。具体的には、大学予算全体の一定割合を共通経費として図書館経費に充当するようなシステムを構築することが有効な手段。

3.専任職員及び臨時職員の配置並びに外部委託の在り方

  •  我が国の大学が現在求められている業務の効率化と人件費の削減の下では、専任職員と臨時職員が担うべき業務と、外部委託等に委ねることが可能な業務との区分けをも考慮した大学図書館の業務体制の在り方を模索することが必要。その際、大学図書館における業務の中核となる部分は、専門的な能力を有する人材が必要。

2.大学図書館職員の育成・確保

(1)大学図書館職員の業務内容の変化を踏まえた大学図書館職員の育成・確保の必要性

  •  大学図書館が重要な学術情報基盤としての機能を効果的に発揮していくため、大学図書館職員は、伝統的な業務の充実を図るだけでなく、学術情報を駆使して学習、教育、研究に、より積極的に関与する専門家としてその必要性を学内にアピールし、従来の事務職員とは異なる職種と位置付け、大学内の様々な情報管理業務に関与していくべき。

(2)大学図書館職員に求められる資質・能力等

1.大学図書館職員としての専門性

  •  大学図書館職員には、図書館に関する専門性に加えて教育研究支援を円滑に行い得る学生や教員との接点としての機能を含めて大学全体のマネジメントができる能力などが求められる。特に最近の状況変化に適切に対応するため、学術情報流通の仕組みに詳しく、学術情報基盤の構築ができる人材の確保が重要。

2.学習支援における専門性

  •  大学図書館職員には、各大学等において行われる教育研究の専門分野に関する知識も求められる。

3.教育への関与における専門性

  •  大学図書館職員が、情報リテラシー教育に直接関わることは新しい方向性であり、教員との協力の下に適切なプログラムの開発を行うことが課題。また、教員や学生とコミュニケーションを図りながら、教育課程の企画・実施に関わることも必要。

4.研究支援における専門性

  •  研究者が文献に容易にアクセスできるように必要な情報資源を関連付けたナビゲーション機能及びディスカバリー機能を強化することが必要。また、機関リポジトリの構築や新たなサービスの開発など従来の専門性をさらに発展させることが期待される。

(3)大学図書館職員の育成・確保の在り方

1.大学における養成

  •  大学図書館を巡る状況の変化に応じて、養成すべき大学図書館職員の技能も変化しており、異なる専門性を有する人材をいかに養成していくかが課題。

2.大学図書館の現場における育成

  •  大学図書館の現職職員の育成は、研修会への参加、海外研修の実施などが考えられるが、大学の規模等の事情もあり、大学間における人材の交流など、大学間の連携が重要。

3.大学図書館職員のキャリアパス

  •  大学図書館における優秀な専任職員を確保する観点から、キャリアパスの形成について検討していくことが必要。

おわりに

  •  「審議のまとめ」を踏まえて、大学図書館関係者は、各大学の事情に応じて、大学図書館機能の一層の高度化に努めることはもとより、アクションプランを策定するなど、取組みの一層の推進・拡大が期待される。また、大学の管理運営関係者には、その実現のために大学図書館の安定的な運営の確保に配慮していくことが求められる。さらに、文部科学省においては、各大学図書館の取組みをさらに促進するために支援していくことが必要。

お問合せ先

研究振興局情報課学術基盤整備室

(研究振興局情報課学術基盤整備室)

-- 登録:平成23年05月 --