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科学技術・学術審議会 学術分科会長声明について

平成28年11月17日
科学技術・学術審議会学術分科会

学術研究の持続的発展と卓越した成果の創出のために(声明)
-ノーベル賞三年連続受賞を祝して-


  この度、大隅良典博士がノーベル生理学・医学賞の栄誉に浴したことに対し、心からの敬意と祝意を表したいと思います。
  大隅博士は、細胞が自身のタンパク質を分解・再利用する仕組みである「オートファジー」を世界で初めて分子レベルで解明されました。「人がやらないことを手がけること」を信条にした研究によって、新たな研究分野を切り拓き、その後、この分野の研究が一気に進展することによって、生物学の発展に大きく貢献されました。大隅博士の研究は、その初期においては社会への応用が意識されたものではありませんでしたが、現在においては、神経変性疾患、癌、加齢に伴う病気等を治療する医療への応用も期待されている大変重要な研究でもあります。


  今回の受賞は、日本人研究者の3年連続の受賞であるとともに、自然科学系では、1987年の利根川進博士以来、3人目の単独受賞という快挙です。21世紀に入ってからの自然科学系の日本人の受賞者数は世界第2位に達し、日本人研究者による独創的な発想による真理の探求と新しい課題の発見が、人類社会の持続的な発展や国際社会に大きく貢献し、世界から高く評価されていることを、日本人の一人として誇りに思います。


  学術研究は、研究者の知的探究心や自由な発想に基づき自主的・自律的に展開される知的創造活動であり、その営み自体が、知的・文化的価値を有するものです。そのような学術研究は、個別の課題の即時的な解決以上に、新たな課題の発見とそれへの挑戦の循環によって、人類の未来の可能性を増すことを核心とし、試行錯誤を伴うことから、価値を創造するまでに一定程度の時間を要することが多いものです。
  大隅博士の御業績も、長期にわたる粘り強い知への熱望と深い理解に裏打ちされた知的試行の継続的な蓄積が、既存の知識やその応用を超えるブレークスルーを生み出したものであり、日本の学術研究の水準の高さを証すものです。また、今般の業績は、多年にわたる科研費による支援の成果としての側面を持っており、研究者の自由な発想を尊重したボトムアップの研究振興策の重要性を示唆するものと受け止めています。


  他方、大隅博士の受賞理由が1980年代の研究の成果であることからも窺えるとおり、ノーベル賞の受賞の多くは二十年から三十年前の研究成果が認められたものです。近年、多くの分野において、論文数や論文の引用状況から見た日本の地位が相対的に低下傾向にあり、科学研究の国際競争の中で、日本の存在感が薄れ、新たに台頭する国々の間で埋没する恐れが顕在化しつつあります。
  また、個々の研究者に目を向けると、様々な制約の下、研究時間が減少する中で、短期的な成果を挙げることを急いだり、すぐに役立つかどうかに過度にとらわれたりする反面、長期的な展望を持ち、未踏の領域への大胆な挑戦が少なくなってきていることが危惧されます。
  さらに、高い能力を持つ学生が、知の創出の中核を担う博士人材になることを躊躇するようになっており、学術研究を通じた日本の存在感を継続的に高めていくうえでも極めて深刻な問題となっています。


  日本の学術研究が、こうした懸念を払拭し、これからもノーベル賞級の卓越した成果を生み出し続け、「国力の源」としての真価を発揮していくためには、個々の研究者の独創的な発想を大切にし、その多様な挑戦を一層強力に支援していくとともに、組織の枠を越えて研究者の知を結集し、研究環境を整備していく必要があることは論を俟ちません。


  望ましい研究環境づくりに向けた様々な施策を総合的に講じていくため、公的投資を充実させる必要があります。当面、第5期科学技術基本計画に掲げる政府の研究開発投資の目標である対GDP比1%(5年間で26兆円)の達成が極めて重要です。その際には、基礎科学力を強化するため、応用研究・開発研究に偏ることなく、個人の多様で独創的な研究を支えている科研費や、未来を担っていく博士課程の学生やポスドクなど若手研究者への支援、大学等の研究機関を支える運営費交付金・私学助成等の基盤的経費など、学術研究・基礎研究の振興策への重点投資が必須だと考えます。
  併せて、投資効果を最大限発揮させるために、制度やルールの面でも、研究者の研究時間の減少に歯止めをかけ、研究に専念できる環境を整備する観点から、様々な実効性のある改善が必要不可欠です。


  科学技術・学術審議会学術分科会では、昨年1月に「学術研究の総合的な推進方策について」(最終報告)をとりまとめ、挑戦性、国際性などをより一層高める観点からの改革方策を提言しました。また、本年4月と8月には、この提言を踏まえた「科学研究費助成事業の審査システム改革について(中間まとめ)」、「科研費による挑戦的な研究に対する支援強化について(中間まとめ)」が関係部会において取りまとめられるなど、研究者の活動がより創造的、挑戦的となること等を促すための改革が具体化されています。これらの改革を着実に推進するため、今般、改めて、所要の予算の確保・充実と研究環境の改善に繋がる諸施策の実行を強く求めます。
  また、大学等の研究機関に対しては、本分科会の提言等を理解の上、学術研究をめぐる課題解決に向けて、自主的・自律的な改革を推進するとともに、そのことを社会に対して発信していくことを期待します。


平成28年11月17日
科学技術・学術審議会学術分科会長
佐藤 勝彦

お問合せ先

研究振興局振興企画課学術企画室

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(研究振興局振興企画課学術企画室)