競争的資金の在り方について(見解)(基本問題特別委員会) 本文

平成13年10月12日
科学技術・学術審議会

 現在、特殊法人改革等の場において競争的資金の在り方が議論されており、効率的な資源配分の観点からこれを統合することが論点となっている。競争的資金の在り方は我が国の科学技術・学術政策の基本に関わる重要な問題であり、単に行政改革の面からではなく、我が国の科学技術・学術の発展という観点に立って考えるべきことがらである。本審議会は、このような認識に立って、競争的資金の在り方について検討を行い、以下のとおり見解を取りまとめた。

1.目的に応じたマルチファンディングが効果的

 基礎研究から技術開発まで様々な研究開発を推進するためには、それぞれの目的に応じた多様な競争的資金が併存する「マルチファンディング」が効果的であり、これにより、研究活動が活性化され、創造性豊かな研究成果が期待できる。米・英においても研究費のマルチファンディングが研究力の強さをもたらしている。
 したがって、我が国の研究環境の更なる充実を目指すためには、競争的資金を一本化するのではなく、各競争的資金制度について、目的・性格の一層の明確化などの改善を図りつつ、それぞれの充実・強化に努めることが必要である。

2.競争的資金の総額の拡大が重要

 競争的資金の総額が米国と比べてまだ圧倒的に小さい我が国においては、まずその拡大を図ることが重要である。したがって、各制度が競争する中で、全体として競争的資金の拡大を実現すべきである。

3.競争的資金の効率的・効果的な運用

 競争的資金の効率的・効果的な運用のためには、総合科学技術会議が示す資源配分方針等に基づき、戦略的・重点的な制度運用を行うとともに、評価を適切に行うことにより、優れた研究活動について継続的に研究費が配分されるよう工夫することが重要である。
 なお、研究テーマの不必要な重複や特定の研究者に対する研究費の過度の集中については、研究費に関する政府全体のデータベースを活用するなどして調整を行うことが適当である。

4.ボトムアップ型研究先の重要牲

 次世代の発展につながる独創的・先駆的な研究を推進するためには、研究者の自由な発想に基づく多様な研究を幅広く支援することが必要であり、ボトムアップ型の研究費である科学研究費補助金の役割が重要である。
 したがって、科学研究費補助金について着実な充実を図りつつ、米・英等の事例からも競争的資金全体の中で一定の比率(少なくとも半分以上)を確保するとともに、他の研究費とは別個の制度として運用することが必要であり、また、研究者の自主性及び研究の多様性を保障する観点から、あらかじめ国が分野や課題の指定などを行うことは適当でない。

5.トップダウン型研究先の重要性

 我が国の新たな発展の源泉となる新技術の創製等を通じ、国民生活の更なる向上や経済・社会の発展を持続的に達成していくためには、国として取り組むべき重点分野、研究目標等を明確に定め、産学官の研究者を結集し、戦略的に研究開発を進めていくことが重要であり、国の戦略的目標を達成するためのトップダウン型の研究費は不可欠である。
 このため、戦略的基礎研究推進事業のように、国として経済的・社会的に必要な基礎研究を戦略的に推進することを目的とする制度については、他のトップダウン型研究費との制度の目的・性格の違いの一層の明確化を図りつつ、その充実に努めていく必要がある。

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