4 化学分野の研究動向(要旨)

◇当該分野の特徴・特性等

 化学は、物質の「結合・反応・構造・物性」の4課題を研究し、それらの制御を通して、人類社会の繁栄、人類の幸福や精神の向上、生命の豊饒、さらには自然との調和を目的とする学問である。現代の化学は、新しいフロンティアを開拓しつつ、その周縁他分野との連携融合により膨大な領域に膨張し続けている。20世紀の科学・技術のすべての分野で、原子・分子さらにそれらの集合体レベルでの物質変換の重要性が認知され、化学は、「環境」、「エネルギー」、「情報」、「ナノサイエンス・ナノテクノロジー」、「ライフサイエンス」などの主要な課題を含む広範な分野の基盤となる学問領域である。

◇過去10年間の研究動向と現在の研究状況(主要な例)

 化学は以下の分野で、大きく発展した。
物理化学:超短パルスレーザー技術の確立および超精密時間分解分光学や強光子場化学の発展(分光学)、界面電子状態や微細構造の制御法、観測法、測定手法の開発、半導体微細加工技術の発展(界面化学)、電子相関を取り込んだ高精度計算、多電子相対論、FMOやONIOM法による大規模化(理論・計算化学)。
有機化学:選択的反応・合成、有機金属触媒、不斉合成、触媒設計、環境調和型反応、反応場、コンビナトリアル手法などをキーワードとした合成化学、ケミカルバイオロジー(化学生物学)の展開。有機ケイ素化合物の形成や生物活性天然有機分子の創製。
無機化学:弱い相互作用を分子設計に取り入れた集積型金属錯体や超分子化学の発展。
機能性物質化学:光電磁気物性に優れた機能物質(超伝導、多重機能、表示、エネルギー材料)、規則性ナノ空間の精密制御による多孔性材料、フラーレン・ナノチューブ、イオン液体等の新規物質の開発。
生体関連化学・生物分子科学:生物分子科学的手法を駆使した科学分野が発展。アクチンの重合阻害物質の機構解明、抗線虫剤エバーメクチンなどの各合成酵素の帰属、ATPaseにおけるイオンチャネル構造の存在の確認。抗がん剤タキソールやシガトキシンの化学合成達成。
高分子化学:ラジカル重合、メタセシス重合、配位イオン重合領域でのリビング的重合などの合成手法、高性能高分子、高機能性高分子・繊維の開発。
環境化学:地球温暖化、オゾン層破壊、酸性雨、エアロゾル、大気質(対流圏オゾン)の機構解明。

◇今後10年間で特に進展が見込まれる研究対象・推進すべき研究等(主要な例)

物理化学:新しい光源(自由電子レーザーなど)を駆使した測定(分光学)、異種界面の局所的電子状態や微細構造の複合的な解析(界面化学)、電子核同時動力学、強い動的極限場の理論、アト秒理論化学、ナノ-メゾ理論、多体系量子効果理論(理論・計算化学)。
有機化学:有機金属化学を駆使した新反応の開発。生物学への重心のシフト(ケミカルバイオロジー)。
無機化学:メゾスケール物質群(2-50ナノメートル程度)の精密構築。
機能性物質化学:新たな物質・材料開拓。社会ニーズからは、環境調和材料、高効率エネルギー変換材料、超微細・高機能材料、幸福・健康な生活のための調和材料、安心と平和の保障材料。微少摂動に迅速で大きな応答を示す新規多重機能物質。
生体関連化学・生物分子科学:DNAの複製・損傷修復・分配、RNAの機能、転写制御・スプライシング、翻訳・タンパク質折りたたみの解明、活性分子の高精度合成、抗菌、抗ウィルス物質の創製や合成の基礎概念の確立。
高分子化学:刺激応答性、リサイクル性、メモリー性、光電磁気物性などの機能発現。再生医療の足場材料、細胞や組織の培養・分離のための基材の開発。
環境化学:濃度・同位体計測技術、標準化、リアルタイム観測、観測プラットフォームや大気・海洋大循環モデルへの化学パラメータの導入、CO2(二酸化炭素)の固定化と破棄の実用化を目指した開発、影響対策技術。

◇諸課題と推進手法等

 人材・後継者育成、基盤設備・大型施設整備、国際交流や異分野との融合研究と新分野の開拓、機器分析法の開発、国際競争力の向上、研究組織の強化、化学倫理の確立。

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研究振興局振興企画課学術企画室

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