2 社会科学分野の研究動向(要旨)

◇当該分野の特徴・特性等

 社会科学分野は、時間的観点からは古代中国、ローマ帝国から現代までを扱い、また人間の脳機能の分析から宇宙空間の利用にいたるまでを研究対象とし、研究方法としても文献研究、実験データ分析、実態調査など、様々なレベルにおける多様性の存在が分野の重要な特徴となっている。かかる多様性は、自然科学、人文科学や他の社会科学領域との融合を通していっそう発展していくこととなろう。

◇過去10年間の研究動向と現在の研究状況

 社会科学分野の多様性からみて、分野共通の動向をあげることはミスリーディングであり、以下は科学研究費のデータベースから読み取れる限りで、各領域の研究者の関心が高いと見られる研究テーマの一端を示すものである。
 分科「法学」においては、過去10年に行われた司法制度改革や、多数の重要法令改正に関連する研究が目に付く。分科「政治学」においては、比較政治、行政学、政治過程論、政治史、安全保障論に採択件数が多い。分科「経済学」においては、マクロ経済のミクロ化、パネルデータによる実証、時系列分析、環境、東アジアといったテーマが目に付く。分科「経営学」においては、技術経営、IT、ベンチャー、環境、コーポレートガバナンス、ブランド、実証会計というキーワードが際だっている。分科「社会学」では、文化、環境、ジェンダー、社会階層、高齢者・児童・障害者福祉をテーマにした研究に採択数が多い。分科「心理学」では実験心理学(知覚、行動等)、社会心理学(文化、集団等)、教育心理学(カウンセリング、発達障害等)に多く採択されている。分科「教育学」では、教育改革、大学教育、学校経営・教育行政、軽度発達障害などに関する研究が増加し、身体教育学も増加している。

◇今後10年間で特に進展が見込まれる研究対象・推進すべき研究等(主要な例)

 法学においては、新領域法学とりわけ知的財産法、環境法が一層の重要性を獲得するであろうし、政治学では、「政府の信頼」を軸とする研究の国際的展開が注目に値する。経済学では、パネルデータの活用、ゲーム理論の応用、心理学・生理学との融合が注目を集めよう。経営学では、経済のグローバル化に伴って企業が直面する問題(企業価値の増大、企業活動のセーフティーネット等)を中心に展開すると思われる。社会学では、政策研究の進展、理論社会学と個別領域の理論的架橋、社会福祉政策論と技術論の統合が注目に値する。心理学では、文化的相違を考慮した国際比較研究、脳科学との協調が、また、教育学では、教育改革に関する理論的実証的研究、長期的・系統的データ集積が重要となろう。

◇諸課題と推進手法等(主要な例)

1) 研究成果の国際的発信さらには国際的競争力の向上
2) 他分野との協働・融合
3) 若手研究者の育成
4) 政策・実務と理論の架橋・融合推進
5) データベースの開発・充実化
6) 基礎的研究資金の確保

 

お問合せ先

研究振興局振興企画課学術企画室

(研究振興局振興企画課学術企画室)