2.今後の体制に向けての考え方

(1)研究対象範囲

 上記のように、ミレニアム・プロジェクトは分子レベルでの神経細胞再生・発達、脳病態の解明、大脳細胞の特性解析などにおいて顕著な成果を生み出したが、反面神経回路機能の研究分野や情報の高次認知機能研究などの分野は研究対象に含まれていなかった。脳機能の統合的解明を目指すためには研究対象を拡げ、脳のシステムレベル、神経回路レベル、分子レベルにおける研究及び精神疾患・変性性脳疾患の脳病態解明に関する研究を対象範囲とする必要がある。さらにそれらの分野の学際的研究協力による統合的研究を推進することも重要な目標である。

(2)研究の推進体制

 脳研究に関する上記の現状分析と展望を勘案し、特定領域研究「先端脳」及び特定領域研究「神経回路」の研究活動、並びに「総合脳」による脳研究推進組織を継承し統合的に発展させることを目的として、下記の研究組織を統合脳領域に設置する。(組織図参照)。
 統合脳総括班は、1.脳研究の広い分野を俯瞰し、それぞれの分野における重点研究を企画立案し、計画研究・公募研究を含めた研究集団による研究を推進すると共に、2.異分野の研究者の相互理解を図り、さらに研究協力ないしは共同研究による統合的研究の実現を図る。
 そのために、「統合脳」領域内での研究方針の策定及び研究協力体制の構築、並びに研究内容の評価をするとともに、他の特定領域研究との積極的な連携を図ることを目的として、企画調整委員会及び評価委員会を設ける。
 企画調整委員会は「統合脳」における研究活動全体の推進方策を検討すると共に、統合脳総括班が立案した計画研究及び公募研究の原案を審議し、領域代表及び総括班に答申する。システム・神経回路・分子・病態脳の各領域における活動を有機的に統合し、必要な調整を行う。他方、統合脳領域で公募した若手研究者と4領域研究組織の連携を計る。
 評価委員会は、個々の研究活動を客観的かつ公正な立場から評価する。計画研究の公正な評価と透明性の高い運用は「統合脳」活動の最重要事項であり、領域代表者と総括班は企画調整委員会からの提案と評価委員会による評価に基づき計画研究と公募研究の見直しを随時実施する。
 企画調整委員会及び評価委員会は「脳高次システム」「神経回路」「脳分子」「脳病態」「統合脳」の各総括班の有機的な連携をはかり、両領域間での共同研究の支援及び共同シンポジュームを開催する。企画調整委員会はさらに他領域の脳研究組織との活動連携もその任務とする。
 対外委員会は、「5.社会との関わり等」で示す研究成果の発信及び国際交流業務を担う。
 統合脳執行委員会は、特定領域研究自体の研究成果とりまとめ・報告書作成及び領域内の研究集会の実施を任務とする。
 統合領域支援委員会は、萌芽的脳研究支援、脳研究の基盤形成及び研究データベースの作成を任務とする。

(3)計画研究と公募研究の位置付け

(ア) 5領域における採択課題は重複しないこととする。
(イ) 各領域において緊急性と重要性の高い課題を計画研究とするが、領域の研究者数が多数であることに鑑み、公募研究の比重を高める。他方、統合脳領域においては公募研究を重視し、萌芽的・先導的研究を行う若手脳研究者を公募する。
(ウ) 計画研究は3年目に見直し、再編成する。公募研究は初年度は1年で再審査するが、研究の継続性の必要から、その後は2年に一度公募する。
(エ) 計画研究と公募研究の連携を密にするために、研究班会議・ワークショップ等のグループ研究活動を行う。その際統合脳領域の公募班員は、脳高次システム・神経回路・脳分子・脳病態のいずれかの領域に参加する。

(4)研究内容と今後の方向性

 脳機能解明のための先端的な研究を統合的に行う。そのために分子レベル、神経回路レベル、システムレベルでの脳研究、さらに脳病態の研究領域の研究者が、それぞれ他分野における研究の進展を理解し、視野に入れながら最先端の研究を行う。さらに、異分野の研究者が領域を越えて研究協力を行い、学際的研究を進める。
 今後の方向としては、異分野の研究協力と提携による学際的研究を行う研究組織を継続的に設定することが極めて重要である。

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