1.背景と現状

(1)背景

1.遺伝子からゲノムへ

 ゲノム研究はDNA二重らせん発見50周年の今年、ヒトゲノム配列決定完了という大きな節目を迎え、ゲノム時代の生物学を興しつつある。
 二重らせん発見に引き続く20世紀の後半は「遺伝子」の時代であった。分子生物学の勃興、そして組み換えDNA技術の開発によって、生命を遺伝子の働きとして研究できるようになったからである。遺伝子DNAを細胞からとりだし、DNA配列を決定・改変し、細胞さらには個体へ戻す、このような作業により、遺伝子研究は爆発的に進展した。DNA複製、転写、翻訳、細胞周期、細胞分化、細胞死、発生、再生、老化、がん、神経、行動、各種疾患などの生命科学のあらゆる局面で遺伝子を軸とした理解が進んだことは周知の通りである。
 遺伝子研究の特徴は研究材料がボーダーレスになったことである。研究者はコンピュータ端末の前に座れば、自分が研究する遺伝子が他の生物にもあるのかどうか、どのような働きをしているのか、といった情報を縦横に得ることが可能である。このような情報をもとに適切な生物を使ってその遺伝子の研究を深めることができるのである。これは地球上の生物はDNAを軸に共通の祖先から進化してきたからである。遺伝情報はDNAの4種の塩基の並びで規定され、情報発現のルールはウィルスからヒトまで共通である。進化の過程で遺伝子は変化していくが、重要なものは保存される。シグナル伝達などの遺伝子カスケードは多様ではあるが、基本骨格が共通のものも多い。細胞死に係わるある遺伝子の場合ではヒトと線虫で入れ換えることすら可能である。遺伝子をパラダイムとした分子生物学は生命の共通性、普遍性を解くことを目的とし成功した。
 生命のもうひとつの特質は多様性である。共通又は類似のメカニズムを使いつつも、地球上には多様な生物種が存在するし、また同じ種においても性質は個性的である。ゲノムには進化の歴史を経て作り上げられたこのような生物の普遍性と多様性の両面が書き込まれている。ゲノムは個々の生物をつくりあげる遺伝情報の総体である。ゲノムを明らかにすることの意義や革新性はゲノム研究の当初から理解されていたわけではない。しかし、まず細菌で全ゲノムの解読がおこなわれるようになってこの認識は一変した。全ゲノム配列決定によってそれぞれの細菌がもつ遺伝子セットがすべて明らかになり、数千遺伝子の働きによって普遍的な細胞機能の全貌を明らかにする展望が開けた。また、種の違いをゲノムに生じた遺伝子種類の違いや遺伝子構造の変化によって明らかにすることが可能になった。さらに、細菌ゲノムの比較によって細菌の系統や進化の関係が明らかになっただけでなく、細菌と環境の相互作用について遺伝子セットを用いて議論できるようになったのである。すなわち、ゲノムを単位として考えることによって、ゲノムから生命の普遍性と多様性を共に読み取ることが可能になったのである。
 ゲノムを単位として扱うと、研究の進め方も一変する。生物の持つ遺伝子は有限でありその全貌が明らかになった結果、特定の生物現象に係わる遺伝子すべてを扱うことができるようになるからである。これまでの遺伝子研究のアプローチでは突然変異体などからカギとなる遺伝子が得られて初めて研究できることになるが、機能重複遺伝子の存在など様々な理由で突然変異体が得られないことがある。また、遺伝子は単独で働くのではなく、多くの場合相互作用などによるネットワークを形成している。たとえ有限とはいえ個別遺伝子研究には多くの困難と限界が見える。一方、ゲノム配列が明らかになれば、発現様式や変異株の表現型、さらには相互作用の情報が全遺伝子セットについて体系的に得られる。このような情報を前提にして、仮説を立て、遺伝子機能の発見、遺伝子ネットワークの構築、さらに、ネットワークの相互作用による生命システムの理解に迫れるのである。ゲノムの塩基配列がライフサイエンス研究に必須になったように、ゲノムを単位とした体系的な研究はライフサイエンスに新しいパラダイムを生むと期待できる。
 ヒトゲノム配列決定における大きな驚きは予想外に遺伝子が少なかったことである。線虫とショウジョウバエのゲノムの比較でも、より高等な体制をもつハエの方が線虫より遺伝子数が少ないことが示されている。ゲノムは遺伝子の使い方について、われわれの想像をはるかに超える巧妙な仕組みを獲得していることが示唆される。おそらく選択スプライシングや翻訳・修飾制御などにより遺伝情報の発現が巧みに制御されることや、遺伝子間の相互作用の組み合わせによって、遺伝子の数からは想像もつかない多様な機能をもつことを可能にし、このことによって細胞増殖・発生・分化・行動といった複雑な生命現象が動かされているに違いない。
 これらの生命現象の素過程を司る遺伝子のシステムを解明するだけでなく、そうした遺伝子のシステムがどのように統合されて生物が形作られ、働くのか、その仕組みを明らかにして初めて生命の理解に近づくのである。この仕組みを「生命システム」と定義する。次に、個体の生命現象を司る「生命システム」の進化、多様化を理解するためには、個体を超えて、生物間の相互作用や環境との相互作用といった地球規模の視点が必要である。これを「生物システム」と定義する。生命システム・生物システムは共にゲノムに書き込まれているのであり、これを解くために、ゲノムを単位としてそこに書き込まれた全遺伝子を対象にした機能や相互作用の解析などのアプローチと得られた情報を統合解析しシステムの構造について予測・理論化していくアプローチ、そしてこれらの間の連携が求められているのである。遺伝子からゲノムへのパラダイムシフトであり、ゲノム配列は正にこのアプローチの出発点なのである。
 ゲノム研究を推進するには、他の領域との緊密な連係が不可欠である。生命システム理解の前提となる遺伝子システムの理解には、がん、免疫、等の領域における分子生物学的な研究、細胞レベル、多細胞レベルのシステムの解明には、発生、分化、脳、等の領域における細胞生物学的な研究、さらに生物システムの理解には、進化、生態、等の領域との連携なしには正しい展開は望めない。ゲノムが目標とするパラダイムシフトは他領域における研究との適切な対応によって検証されるものと考える。
 さらに、ゲノム研究は生命・生物システムの解明という基礎科学の深化だけでなく、人の健康問題や地球の環境問題等の社会的な諸課題の解決へ、その成果の機動的な還元が期待されている。ミレニアムプロジェクトにおいても、ヒトゲノム情報を基盤にした病因遺伝子の発見と病態機序の解明が取り組まれ、また、我国で単離された病原微生物のゲノム解析が進められている。こうした、応用的な性格を持つゲノム研究も重要であり、研究の進展にあわせて、ゲノム研究の成果と方法を関連分野の研究に機動的に活用していくことにも留意する必要がある。

2.ゲノム研究における科学研究費補助金(特定領域研究)の役割

 ここに至る15年のゲノム研究の歩みの中で科学研究費補助金(科研費)の役割は非常に大きいものであった。第0期ともいえる総合研究A「ヒトゲノムの推進に関する研究」(代表・松原謙一、1989-1990年)とそれに続く第1期(1991-1995年、創成的基礎研究「ヒト・ゲノム解析研究」代表・松原謙一、及び、重点領域研究「ゲノム情報」代表・金久實)、第2期(1996-2000年、重点領域研究「ゲノムサイエンス」代表・榊佳之)においては多面的な研究推進、基盤整備、人材の育成が行われてきた。これは科研費が大学研究室を結集するものであり、わが国の主要な人材、研究資源が大学にあったからである。この時期には、ヒト染色体地図作り、body mapping、線虫cDNA解析、 枯草菌ゲノム解析などの成果をあげた。cDNA研究で世界をリードし、さらに、バイオインフォマティックス研究を立ち上げ、大量配列決定と情報解析技術の基盤つくりに成功したことも特筆される。この背景にはわが国のゲノム研究は単にヒトゲノムの解読だけを目標とするのではなく、様々な生物のゲノム研究を並行して進めることが生物学・医学の発展に不可欠であるとの共通認識がある。ゲノム研究の中核として東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターが設立され、また、京都大学化学研究所とともにGenomeNetなどの情報基盤の整備が進められたのも第1期においてである。ゲノム研究の進展とともにDNAシーケンシングなど大規模な設備・施設が必要となり、これは個別研究支援を基本とする科研費の範疇を超え、他府省のプロジェクト経費や理化学研究所などの機関に負うことが主であった。そのような中でも実験科学と情報科学の融合など研究者の結集の場そして人材養成の場として科研費重点領域研究が果たした役割ははかりしれない。
 2000年にミレニアムプロジェクトが始まり、ゲノム研究はヒトゲノム多様性、バイオインフォマティックスなどの中に位置づけられ、その一環として科研費特定領域研究(ミレニアム)も立ち上がった。これが現在進行中の特定領域研究ゲノム4領域(統合ゲノム、ゲノム医科学、ゲノム生物学、ゲノム情報科学)である。この特定領域研究ではミレニアムプロジェクトのミッションを背負ってはいるが、大学研究室連合としての特定領域研究の特長を活かした運営がおこなわれてきた。その中では生命のシステム的理解に向けて枯草菌、線虫、ショウジョウバエというゲノム配列が決定されたモデル生物について徹底的機能解析が開始され、世界をリードする成果を得たことや、ホヤゲノムや原始紅藻ゲノムの配列決定に代表されるように発生、進化といった既存研究分野の研究の飛躍的な展開を促進したこと、さらに医科学については、ゲノム情報を基盤にした病因遺伝子発見と病態機序解明に格段の進歩を得たことが特筆される。情報科学においても世界最高速のゲノムアセンブラの開発などの成果が得られている。これらの成果は、これまで科学研究費では困難であったDNAシーケンシングセンター、多型タイピングセンターなどの中核センター機能によるところが極めて大きい。中核センター機能と個別研究が有機的に推進できる体制ができたからである。ミレニアムプロジェクト3年目までの成果とミレニアム・ゲノム・プロジェクト評価・助言会議の評価は「(3)ミレニアムプロジェクトとしての成果・評価」の項に示す通りであるが、ゲノム研究のような新しいパラダイムにとっては一定以上の規模の特定領域研究が非常に有効であることが示されたと言える。ミレニアムプロジェクトはあと2年で終了するが、特定領域研究ゲノム4領域では多くの成果が出はじめ、開花の時期にさしかかっている。この流れを断ち切ることなく適切に発展させることが肝要である。
 本報告書は、このような時期にあたり、ミレニアムプロジェクトとしての成果及びそれによって整備された基盤を受け、今後のゲノム研究の推進方策を立案するものである。

(2)科学研究費補助金(特定領域研究)においてゲノム研究を推進する必要性と意義

 上述のように、生命・生物システムの解明に向けたゲノム研究とその成果の社会への還元を推進するためには以下に述べるように、新たに特定領域を設定し、計画研究、公募研究および基盤情報取得とデータベース構築のための体制を充実することが不可欠である。
 第1に、ゲノム研究の推進には量と質のバランスが極めて重要であることである。これからのゲノム研究は非常に幅広く、深いものであるので、一定規模以上の網羅的体系的解析と個別研究の有機的推進が必要なのである。このどちらが欠けてもこれからのゲノム研究は成り立たない。このような体制としては、ひとつには大規模中核機関と個別研究の共同研究が考えられるが、中核機関にはそれぞれにミッションがあるため個別研究との有機的かつ機動的な研究推進体制作りは必ずしも容易ではない。ミレニアムプロジェクトで実証されたように、一定規模の特定領域研究の方が、そのような体制を作るのに有効である。
 第2に、ゲノム研究は波及効果が大きく、既存研究分野の大発展につながる可能性をはらんでいることである。微生物においては個々の微生物研究のためにゲノム配列情報を基盤とすることが常識になってきたし、発生研究や進化研究はゲノム研究と一体になった発展を始めている。医学においても、従来不可能と思われた多因子疾患の疾患感受性遺伝子の探査や個人に合った医療に向けての取り組みが始まっており、疾患メカニズムを解明して診断治療につなげていくことが社会的にも期待されている。このような動きをさらに促進するためには諸分野の研究コミュニティとゲノム研究との機動的な融合が必要であるが、これを可能にするのはやはりアカデミア結集の場としての特定領域研究である。
 さらに、がん、脳、免疫などの他の戦略的な分野の特定領域研究と連携をとることにより、ゲノム研究をより効率的に発展させることができるし、またゲノム研究の成果をより効果的に研究コミュニティや社会に還元できるようになるからである。
 ライフサイエンスにおいては、網羅的体系的な解析と個別研究の有機的な推進という研究の進め方のパラダイムシフトがおこっていることを認識すべきである。新分野の開拓・牽引そして人材養成は特定領域研究の本来の意義であるから、このような有機的体制を特定領域研究で作ることがこれらの分野の発展のために相応しいし必須である。ミレニアムプロジェクトを単純に延長することは不適切であるが、そこで得られた成果や基盤を適切な体制に引き継ぐことがこれまでの投資を活かす道であろう。

(3)ミレニアムプロジェクトとしての成果・評価

1.統合ゲノム

<目標>

ヒト遺伝子システムの解明をめざして
(a)モデル生物(線虫・ハエ)ゲノムの体系的機能解析と発生の計算機モデル化
(b)脊椎動物への進化過程をホヤ、メダカなどの比較ゲノム解析から解明する。
(c)霊長類比較ゲノム解析を通じてヒトへの進化メカニズムを解明する。
(d)その他様々な動物植物の遺伝子システムの解明

<主な成果>

(a)ホヤゲノムのドラフト解読をおこない、脊椎動物の成り立ちの基礎情報を得た。
(b)線虫ゲノムの体系的発現解析をおこない世界の発現情報センターとして機能した。
(c)ショウジョウバエゲノムの世界最大の異所発現系統セット、RNAi系統セットを構築し、研究コミュニティのスクリーニングによる多数の重要遺伝子を同定した。
(d)動物縞模様など位置情報生成の反応拡散波による理論を構築し、計算機シミュレーションと生物実験の一致を見た。
(e)メダカゲノムのホールゲノムショットガンシーケンシングが今年中に終了予定である。
(f)霊長類横断的な一定領域配列比較やチンパンジーゲノムのBACマップ構築など世界を先導する霊長類比較ゲノム研究を進めた。
(g)オオムギ、コムギ、アサガオ、ヒメツリガネゴケなどに植物について世界有数のESTデータベースを構築し、系統間識別SNPの発見(特許出願)などにつながり、これらの植物研究の基盤を提供した。
(h)発表論文、データベースなど299件(登録済みのもの)

<ミレニアム・ゲノム・プロジェクト評価・助言会議評価>

  • 基礎的な研究でありミレニアムにはあまり馴染まないが、ヒト以外の生物のゲノム研究(特に線虫、ショウジョウバエなどのモデル生物)を行うことは必要であり、その役割をする大事なグループである。
  • ボトムアップの研究をうまく統合して進めている。ゲノムシクエンスセンターを開いたことにより、ヒト以外の生物のゲノム解析のスピードアップが達成されている。
  • 研究の成果は大いに評価できる。ミレニアムプロジェクトの視点から、ヒトゲノムとの比較ゲノム学に引き続き力を入れてほしい。

2.ゲノム医科学

<目標>

(a)ゲノム資源を活用し多因子疾患特に高血圧などの循環器疾患、糖尿病等の代謝性疾患、気管支喘息等の免疫・アレルギー性疾患を中心に遺伝的要因の同定をおこなう。
(b)疾患発症の分子レベルの解明をおこなうための実験的・理論的方法開発をおこなう。

<主な成果>

(a)日本人サンプルを用いた全ゲノム罹患同胞対解析と候補遺伝子解析から、喘息で9遺伝子、関節リュウマチで3遺伝子、橋本病で1遺伝子との相関を見出した。
(b)日本人サンプルを用いた全ゲノム罹患同胞対解析により、糖尿病候補領域に存在するアディポネクチンとの相関を見いだした。
(c)高血圧、糖尿病、各サンプル1000例、対照1000例の収集を終了。全ゲノムマイクロサテライト相関解、網羅的候補遺伝子のSNP解析を開始。
(d)日本人サンプルによる統合失調症(精神分裂病)罹患同胞対解析を142家系について400マーカーの解析を完了し、suggestiveな領域3ヶ所を見いだした。
(e)Dahlラット、DSSラットにより、高血圧・心肥大・心不全の段階で、発現変化する遺伝子群を同定した。また、プロテアソーム複合体遺伝子が心内圧依存的に発現上昇することを見いだした。
(f)約4万の医学用語の相互関係をコンピュータ上にマップし、それを用いて、遺伝子発現パターンを自動解釈するシステムを開発した。
(g)ヒト約9000の遺伝子についてプロモーター領域を特定し、SNP情報を張り付けた。
(h)論文・データベース発表 361件(登録済みのもの)

<ミレニアム・ゲノム・プロジェクト評価・助言会議評価>

  • 疾患遺伝子プロジェクトを補完するものとして重要である。糖尿病、気管支喘息、自己免疫性甲状腺疾患のSNPを解析している。糖尿病及び気管支喘息に関しては関連遺伝子の同定のみであるが、数個の遺伝子の同定まで達成されている。ことに自己免疫性甲状腺疾患に関しては遺伝子の機能まで検討し、疾患発症における遺伝子の作用機序と結びつけて考察しており、この点でゲノム解析の研究としてレベルが高い。
  • 日本では困難である患者からの試料の採取システムを作り、研究を進めているのは評価できる。
  • 方法論が多様でつながりが分かりにくい。とりあえず出た成果の直接比較が必要。
  • 内容が雑然としており、人員の規模が大きすぎるので、評価を行い研究費の配分を重点化すべき。「がんの診断と治療」の研究との関係を明らかにすべき。

3.ゲノム生物学

<目標>

ゲノムに書き込まれている全機能情報を配列情報から読みとる原理を解明するために、
(a)基軸微生物の遺伝子機能情報の体系的収集する。
(b)それらの遺伝子システムの徹底的な解明をおこなう。
(c)多様な細胞機能をもつ様々な生物ゲノムとの比較研究をおこなう。

<主な成果>

(a)枯草菌の機能未解析遺伝子の変異株バンクの完成と必須遺伝子の同定を含む機能解析
(b)メタボローム解析技術の開発
(c)モデル微生物(枯草菌、大腸菌、シアノバクテリア)のアレー解析による転写制御ネットワークの解明
(d)全ゲノムPCRスキャンニング法の開発と病原性大腸菌O157株のゲノム比較解析
(e)シアノバクテリアの光応答、ストレス応答に関与する新規遺伝子の同定
(f)原始紅藻の全ゲノム配列決定
(g)細胞性粘菌の完全長cDNA解析
(h)論文・データベース発表 488件(登録済みのもの)

<ミレニアム・ゲノム・プロジェクト評価・助言会議評価>

  • 様々な生物のゲノム解析から興味深い成果が出ており、生物学の進展として興味深い。ここからヒトに対する情報も出ることが期待される。
  • 遺伝子情報から効率よく機能解析を行うための実験手法の開発を行っており、cDNAからタンパク質レベルまで幅広く展開して結果を出している。遺伝子情報が蓄積されたあかつきにはハイスループット機能解析技術が必要となることは明らかであり、今後さらに展開が必要な分野である。
  • メタボロームの研究は進展が期待される。
  • 病原菌ゲノム研究の最終目的がいまひとつ分かりにくい。
  • ミレニアムプロジェクトとは少し遠い領域であり、ゲノム科学の基盤としては重要であるが病原菌の研究が望ましい。ミレニアム・ゲノムの中にも、領域設定のみで完全なボトムアップ公募があれば最高の場と考えられる。
  • 研究のオリジナリティにやや乏しい。各個研究的な感が否めず、統合ゲノムまたはゲノム情報科学の一環と考えた方がよいかもしれない。バイオインフォマティクスグループとの連携を深めるべきである。

4.ゲノム情報科学

<目標>

(a)分子間相互作用や遺伝子発現などのデータと配列データとの統合化や高次生命現象に関する知識の体系化技術の開発
(b)大規模統合データベースから種々の生物学医学の知識を発見する技術の開発
(c)タンパク質立体構造とその相互作用、及びそれらの予測手法を基盤にしたゲノムの機能解明
(d)転写制御カスケードなど遺伝子間ネットワークを実験データから推測したり、その数理的特性を明らかにする方法の開発

<主な成果>

(a)高精度ヒト遺伝子地図の効率的作成技術の開発およびこれに基づいたヒトゲノムデータベースの構築と公開
(b)世界最高速のゲノムアッセンブラの開発
(c)文献からの知識の抽出と表現に関する情報技術の開発とそれによるデータベース構築
(d)タンパク質の構造と機能に関するデータベースの構築(41生物種のゲノムについて、SOSUIにより水溶性タンパク質を選別し、GTOPにより立体構造と機能をアサインし、FAMSに基づいてホモロジーモデリングを行い、FAMSBASEとして公開した)
(e)高精度ヒト遺伝子構造予測システムの開発とこれを用いたヒトゲノムアノテーションデータベースの構築によるヒトゲノム計画への貢献
(f)ハイブリッドペトリネットによるシミュレータの開発
(g)論文・データベース発表 272件(登録済みのもの)

<ミレニアム・ゲノム・プロジェクト評価・助言会議評価>

  • 研究成果、今後の計画、過去2年半の反省が適切になされている。内容的には見事な成果を上げており高く評価できる。
  • ヒト遺伝子の機能に関連した情報を簡単な方法で抽出できるデータベースとその検索ソフトウェアの開発を行っている。このソフトウェアで抽出できる情報は立体構造の予測およびホモロジーなどである。今後ゲノム情報が蓄積整備されるとその有効利用には高機能の解析ソフトウェアが必須となるためこのような研究の重要性は益々高まるものと考えられる。
  • 今後遺伝子の相互作用の研究への挑戦はどうか。

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(研究振興局振興企画課学術企画室)