2.改革のための具体的方策 6.競争的研究資金制度改革と関連する改革 -大学改革-

≪現状≫

○ 競争的研究資金制度の効果を、競争原理を通じて最大限に発揮するためには、競争的研究資金の獲得やその研究開発成果が研究者の業績として評価され、それが適切に給与や人事面の処遇に反映されるといったインセンティブメカニズムがシステムとして整備されることが必要である。

○ 現在、日本の国立大学の教職員(研究者)は給与の体系を法律により定められており、業績を反映したインセンティブの部分の割合が限定的である。特に競争的研究資金の獲得が給与のみならず、昇進(キャリアパス)にもほとんど反映されていない。

○ 他方、米国では、競争的研究資金に研究者本人の給与が計上されており、自らが研究活動をするための研究費を外部から獲得することが、その研究機関での研究実施を確保するための必要条件となっている。さらに、テニュアトラック(任期付きのポストの助教授)から、テニュア(終身的な地位である準教授以上。但し、職の継続について数年に一度厳しい審査がなされる)になる際の主要な評価基準の一つとされている。ドイツにおいては、2002年2月に大学教員の人事・給与システム改革が実施され、助手制度を廃止し、任期付任用の準教授制度を導入、さらに給与(教授)にインセンティブの割合を1/4以上とする業績評価を反映するシステムを導入した。

○ このようなインセンティブシステムの整備のためには、これまで述べた競争的研究資金制度そのものの改革はもとより、現在、競争的研究資金の配分実績において、約6割を占める国立大学の改革、さらには、研究者に係るシステム改革(2.(3))と一体的に取り組むことが必要である。

≪具体的方策≫

(1)競争的な給与・人事システムの構築

○ 国立大学においては、平成16年4月に予定されている、法人への移行により、経営に競争原理が導入され、また、教職員の身分が非公務員となる。

○ 法人化後の各大学においては、その自主的な判断により、競争的研究資金も含め、外部資金獲得やその研究開発成果を研究者の実績として適切に給与や人事に反映する給与・人事システムを積極的に導入し、競争的メカニズムを創っていくべきである。

○ 研究者の能力主義の徹底、競争的な環境の形成という観点からは、研究者本人の当該研究開発活動に係わる人件費を直接経費から充当し、それを研究者の給与に反映していくことが有効と考えられる。
 ただし、競争的研究資金の量的規模を考慮すれば、直ちに実施することは困難であるが、今後、各大学が新しい給与システムを導入する中で、具体的な対応の在り方を検討していくことが必要である。

(2)研究と教育の区分

○ 大学が研究と教育の2つの機能を両立していくためには、競争的研究資金の拡充と産学官連携の推進等が行われる中で、大学が責任を持って教職員のエフォート管理を行うことが必要である。

○ また、予算・経費の面においても「研究」と「教育」に区分し、競争的研究資金の活用による「研究」の活性化と併せて引き続き「教育」への必要に応じた予算措置を行っていく必要がある。

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研究振興局振興企画課学術企画室

(研究振興局振興企画課学術企画室)

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