2.改革のための具体的方策 4.競争的研究資金の効率的・弾力的運用のための体制整備

≪現状≫

○ 研究費交付時期が遅く、予算の単年度主義のため、年度末に予算消化的な研究費の執行が行われる場合がある。また、複数年度にわたる研究課題の継続年度について、多くの場合は研究費の空白時期が生じ、これが不適切経理問題の誘因となっているとの指摘がある。

○ 平成15年度予算で科学研究費補助金及び厚生労働科学研究費補助金が繰越明許費として指定され、既に指定されている制度と合わせて全体の約8割の資金が繰越明許費の対象となっている。
 なお、米国のNIHやNSFでは、プログラム実施期間内において、次年度への繰越は、研究機関側の裁量である。

○ 我が国は、配分機関の独立行政法人化後に通年公募を予定している制度があるものの、現状の申請書受理は年1回である。
 一方、米国のNIH、NSF等では、申請書を年複数回または通年で受理している。

○ 評価者の選任に当たっては、年齢や肩書きが重視されているとともに、配分機関が主体的に行っていない場合がある。また、利害関係者の排除規定が厳正かつ十分なものになっていない(例えば、同じ所属機関であっても利害関係者としてみなされず、評価者となることができる制度がある)。

○ 採択、不採択に係る評価内容の開示は、一部の制度及びプログラムにおいて実施されているが、その開示内容も、科学的・技術的な意見や不採択の理由ではない場合があるなど、不十分である。

○ 一部の制度は、採択課題の中間評価・事後評価において、外部評価を含め配分機関による評価を実施していないものがある。

○ 課題の事後評価、追跡調査等を通じた競争的研究資金制度の評価が実施されておらず、各制度の目的・計画の見直し、運用の改善が十分なされていない。

○ 我が国の競争的研究資金制度では、一部の制度が電子メールによる申請書の受付を行っているだけで、電子システム化が進んでいない。欧米では、米国のNSFに代表されるように、電子システムの導入が進んでいる。

○ 政府研究開発データベースの構築、運用により、研究費の配分実績が事後的に把握できるようになったが、事前審査段階での重複等の確認はできない。また、政府研究開発データベースへの入力時期が制度によってまちまちである。

≪具体的方策≫

(1)年度間繰越及び年複数回申請

○ 各制度において公募・審査時期を早める(例:科学研究費補助金は9月1日に公募開始)ことで、研究費交付時期の一層の早期化に努めるとともに、引続き年度間繰越を柔軟に行えるようにすべきである。

○ 本省が運用する制度については、平成16年度予算において、必要に応じ全ての制度が繰越明許できるよう措置を検討する。また、繰越明許の事務手続きの簡素化・合理化を併せて検討する。

○ 他方、安易な年度間繰越を抑制するため、各制度はプログラムオフィサーを中心として年度間繰越の必要性・妥当性を評価する体制を整備する。

○ 研究者に多くの競争的研究資金獲得の機会が与えられるよう、年複数回の申請書の受理を検討する。

 -独立行政法人化される配分機関にあっては、運営費交付金制度を活用し、できるだけ早期に実現を図る。
 -本省が運用する制度であって、業務体制そのものが制約となっているものについては、業務の独立行政法人への移行を進める等在り方を検討する。

○ 以上のような体制整備を図ることにより、競争的研究資金にかかる予算(補正予算を含む)の積極的な活用を図る。

(2)公正で透明性の高い評価システムの確立

○ 評価者の選任に当たっては、プログラムオフィサーが中心となって、利害関係者の排除に留意しつつ、年齢や肩書きにとらわれず、真に研究計画を評価できる大学や企業等の第一線の研究者・技術者を選任する。

○ その際、各省及び配分機関が構築・管理しているデータベース(各課題毎の研究者、資金、研究開発成果、評価者、評価意見等)を活用するなどして、優秀な若手研究者・技術者を積極的に選任する。
 評価者プールの形成や評価者の選任は、学会等を含む他の機関からの推薦に基づくのではなく、配分機関自らが制度の政策目的や特色、研究開発の内容に応じて評価者を選任する。
 また、各競争的研究資金制度において、厳正な利害関係者の排除規定(注)と実施要領を作成する。

(注) 利害関係者の詳細な範囲は、NSFおいては、主に1.同じ機関に所属する場合、2.過去4年間、論文の共著者である場合、3.指導した学生、指導教官である場合等としている。さらに、NIHでは、1.申請者が家族や親しい友人である場合、2.過去一定期間内に申請者と契約締結の履歴をもつ場合、3.申請者と極めて近い研究開発を行っている場合、4.評価者と長年にわたって対立する考え方を有する場合等としている。
 評価者は、課題毎に事前に利害関係者に入ることを申し出て、該当した課題の評価を辞退することが求められている。

○ 申請者に対して、評価意見等の開示を行う。その際、プログラムオフィサーが、評価意見や不採択理由を開示するとともに、申請者からの問い合わせや申請書の研究内容の相談に対応する。

○ 各配分機関は、研究課題についての中間評価や事後評価を適切に行い、その結果を踏まえて、必要に応じて研究の見直し・中止を行う。その際、制度や課題によっては、ピアレビューによる評価のみならず、プログラムオフィサーによる評価等柔軟性をもって対応する。

○ 各配分機関の競争的研究資金制度の改革が適切に行われるよう、各省あるいは配分機関は、所管する制度全体を把握した上で、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」に基づいて研究課題の事後評価や追跡評価を実施し各制度の成果の波及効果や活用状況等を把握して制度評価を行う。その結果を踏まえ、目的・計画の見直し、運用の改善を図り、さらに、制度の統合・廃止・拡大・縮小等へ反映させる。

(3)電子システム化とデータベースの拡充

○ 平成17年を目途に、申請書の受付、書面審査、評価結果の開示等に電子システムの導入を図る(これにより、事前審査における重複申請の把握・不合理な複数課題獲得の排除、配分機関における評価業務の効率化・作業量の削減、政府研究開発データベース入力の迅速化・効率化等を図る)。

○ その際、各省が導入する電子システムを有効かつ効率的に活用するため、政府研究開発データベース(内閣府)を配分実績のみならず、事前審査にも活用できるよう、各省のシステムと政府研究開発データベースの連携を図る。

お問合せ先

研究振興局振興企画課学術企画室

(研究振興局振興企画課学術企画室)

-- 登録:平成21年以前 --