1.競争的研究資金制度改革の必要性

《競争的研究資金制度改革の背景》

○ 競争的研究資金は、競争的な研究開発環境の形成に寄与するとともに、研究者の能力を最大限に発揮させ、世界最高水準の研究開発成果の創出に貢献するものである。
 そのため、第2期科学技術基本計画においては期間中、競争的研究資金の倍増を目指すとともに、これと併せて、競争的研究資金の効果を最大限に発揮させるための制度改革の推進が盛り込まれている。

○ 米国では、日本の約10倍の規模の競争的研究資金を公正で透明性の高い評価に基づいて主に独立した配分機関(Funding Agency)が、大学等に配分し、競争的な環境での研究開発活動の下、世界最高の研究開発成果の創出と経済活性化のための技術革新を実現している。
 米国の大学等においては、競争的研究資金の獲得と活用に、能力主義を徹底し、若手研究者を任期付任用とする研究者のキャリアパスと相まって、競争的な環境を形成するための研究開発システムを構築している。

《日本の研究開発システムの現状と改革の視点》

○ 我が国において、現在、競争的研究資金の総額は、約3,500億円(平成15年度)、政府研究開発投資の約10%と着実に拡大している。しかしながら、

-多くの制度において、研究計画自体よりも研究者の経歴、業績重視の審査がなされ、結果として配分実績も50歳台を中心とする分布、一部の実績ある研究者への過度の集中といった傾向が見られる。

-研究開発の多くはグループによって行われ、かつ一人の研究者が複数の課題に参加している場合があり、責任と役割分担が不明確になっている。

-日本の大学等を中心とする研究開発システムは、1.競争的研究資金の獲得やその研究開発成果が必ずしも研究者の処遇、研究実施場所の配分等に反映されない、2.若手研究者の独立性が低い、3.人材の流動性が不十分等の問題を有している。

 この結果、研究者個人の発想や能力を発揮する研究開発を推進すべき競争的研究資金制度の効果が最大限に発揮されていない。
 さらに、不適切な経理処理問題が発生し、競争的研究資金制度そのものに対する信頼が損なわれかねない状況にある。

○ また、競争的研究資金制度をとりまく環境は、以下のとおり、質的に大きく変化している。

-国立試験研究機関の独立行政法人化に加え、国立大学の法人化が平成16年4月に予定され、競争メカニズムが導入される。

-産学官連携、大学発ベンチャー等、産学官の従来の垣根を越えた「協調と競争」という新しい潮流が生じている。

○ 以上を踏まえ、我が国の競争的研究資金制度の改革は、以下の基本的視点に立って推進する。

研究者間、研究機関間の競争の一層の促進若手研究者の活性化を図る。

-その際、競争的研究資金の約8割が配分されている大学の改革、研究者システム改革と一体的に取り組む。

-個々の制度における戦略性・機動性の確保と説明責任を果たし得るマネジメント体制を確立する。

-我が国の競争的研究資金全体として効率性と多様性の両立を図る。

(注)競争的研究資金とは、資金配分主体が、広く研究開発課題等を募り、提案された課題の中から、専門家を含む複数の者による、科学的・技術的な観点を中心とした評価に基づいて実施すべき課題を採択し、研究者等に配分する研究開発資金をいう。
 なお、第2期科学技術基本計画においては、「競争的資金」という文言が使われているが、本「まとめ」においては、資金の性格をより明確にするため、「競争的研究資金」とした。

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